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中国におけるコンピュータプログラムに関わる特許出願

1. 発明の定義
1-1. 技術的解決手段
根拠規定:中国専利法(以下「専利法」という。)第2条第2項、専利審査指南(以下「審査指南」という。)第2部第1章2、第2部第9章1~2、6

 専利法第2条第2項によれば、発明とは、製品、方法、またはその改良について提案された新しい「技術的解決手段」(中国語「技术方案」)をいう。コンピュータプログラムに関わる発明について中国で特許を受けたい場合、その前提として、当該コンピュータプログラムに関わる発明そのものが、専利法にいう「技術的解決手段」に該当しなければならない。コンピュータプログラムに関わる発明とは、発明で提示する課題を解決するためのものであって、コンピュータプログラムの処理フローが全部または一部の基礎となっており、コンピュータが前記フローに沿って作成されるプログラムを実行することにより、コンピュータ外部または内部の対象を制御、または処理する技術的解決手段をいう。

 「技術的解決手段」は、技術的手段、技術的課題、技術的効果をともに備えなければならない。したがって、明細書では、本発明が解決しようとする技術的課題、課題を解決するための技術的手段(技術的特徴)および得られる技術的効果を、できるだけ明確に記載すべきである。

 請求項に記載される発明は、専利法にいう「技術的解決手段」の要件を満たさなければならない。請求項に記載される発明は、技術的手段により技術的課題を解決し、技術的効果を奏するものでなければならない。

・「技術的解決手段」に該当する具体例
(a) コンピュータプログラムに関わる請求項において、プログラムを実行する目的が、技術的課題を解決すること(例えば、産業上の制御、測定や試験のプロセスを実現すること、または外部技術データを処理すること、またはコンピュータシステムの内部性能を改良すること)にあり、コンピュータでプログラムを実行することにより外部または内部の対象に対して行う制御または処理が、自然法則に従う技術的手段であり、かつこれにより自然法則に適合する技術的効果(例えば、プロセス制御効果、技術データ処理効果、コンピュータ内部性能の改良効果など)を得られる場合は、技術的解決手段に該当する。

(b) アルゴリズムの規定を含む発明(当該アルゴリズムに基づく請求項)が、ある技術分野に適用され、技術的手段を利用してこの分野の技術的課題を解決し、それ相応の技術的効果を得られる場合は、技術的解決手段に該当する。

1-2. 知的活動の法則および方法
根拠規定:専利法第25条第1項第2号、審査指南第2部第9章2

 発明そのものが知的活動の法則および方法に該当する場合、特許を受けることができない。

・知的活動の法則および方法に該当する具体例
(a) 請求項を限定するすべての内容が、計算方法あるいは数学上の計算規則、もしくはプログラム、またはゲームの規則や方法のみに係るものである場合には、実質的に、知的活動の規則および方法のみであり、専利法の保護対象とはならない。

(b) 記憶されたプログラムそのものによってのみ限定されるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体、またはコンピュータプログラム製品、あるいは、ゲーム規則のみによって限定されており、いかなる物理的な実体も含まない特徴によって限定されるコンピュータゲーム装置は、実質的に、知的活動の規則および方法のみに係わるものであるため、専利法の保護対象とはならない。

 ただし、記録媒体自身に発明があり、単なるプログラムが記録された記録媒体に該当しない場合、記録媒体は一般の物を記載した請求項として扱う。
 また、コンピュータプログラムのフローにより特定される記録媒体は、知的活動の法則および方法に該当せず、特許を受けることができる。

2. コンピュータプログラムに関わる請求項の作成
根拠規定:審査指南第2部第9章5.2

 コンピュータプログラムに関わる請求項は、方法を記載した請求項として作成してもよく、例えば、当該方法を実現させる装置、コンピュータ可読記録媒体、コンピュータプログラム製品などの物を記載した請求項として作成してもよい。以下の点に留意する必要がある。

2-1. 明細書による請求項の記載のサポート
 方法を記載した請求項か、あるいは物を記載した請求項かを問わず、請求項の記載は、明細書によりサポートされるものでなければならない。具体的には、課題を解決するための手段を記載しなければならず、コンピュータプログラムが具備する機能、およびその機能による効果のみの記載では足りない。

2-2. 方法を記載した請求項の作成
 方法を記載した請求項を作成する場合、方法の手順に従って、このプログラムにより実現する各機能、およびそれらの機能をどのように実現するかを詳細に記載すべきである。

2-3. 装置を記載した請求項の作成
 装置を記載した請求項を作成する場合、装置の各構成要素および構成要素同士の関係を具体的に記載しなければならず、ハードウェアだけでなく、プログラムを構成要素に含んでもよい。

2-4.コンピュータプログラムに関わる請求項の作成の具体例
 コンピュータプログラムに関する装置に関する請求項の書き方として、審査指南第2部第9章5.2では、【例4】として、次の具体例が挙げられている。

【例4】「画像ノイズの除去方法」に関する特許出願は、以下のように方法、装置、コンピュータ可読記録媒体およびコンピュータプログラム製品の請求項を作成することができる。

【請求項1】・・・取得ステップと、 ・・・算出ステップと、 ・・・読み取りステップと、 ・・・判断ステップと、Yesの場合には、当該画素のグレースケール値を修正せず、Noの場合は、当該画素がノイズであり、当該画素のグレースケール値を修正することにより、ノイズを除去するステップと、を含むことを特徴とする画像ノイズの除去方法。

【請求項2】メモリ、プロセッサおよびメモリに記憶されたコンピュータプログラムを含むコンピュータ装置/デバイス/システムであって、前記プロセッサが前記コンピュータプログラムを実行することで請求項1に記載の方法のステップを実現することを特徴とするコンピュータ装置/デバイス/システム。

【請求項3】コンピュータプログラム/命令を記憶したコンピュータ可読記録媒体であって、当該コンピュータプログラム/命令がプロセッサにより実行されると、請求項1に記載の方法ステップが実現されることを特徴とするコンピュータ可読記録媒体。

【請求項4】コンピュータプログラム/命令を含むコンピュータプログラム製品であって、当該コンピュータプログラム/命令がプロセッサにより実行されると、請求項1に記載の方法のステップが実現されることを特徴とするコンピュータプログラム製品。

2-5. 方法を記載した請求項もしくはコンピュータプログラムのフローの各ステップと対応する機能モジュールを有する装置を記載した請求項の解釈
 コンピュータプログラムのフローのみに基づき、当該コンピュータプログラムのフローの各ステップもしくは当該コンピュータプログラムのフローを反映した方法を記載した請求項と完全に一致するように装置を記載した請求項を記載する場合、即ち、装置を記載した請求項の各構成要素は、当該コンピュータプログラムのフローの各ステップまたはこの方法を記載した請求項の各ステップと完全に一致する場合、このような装置を記載した請求項の各構成要素は、プログラムのフローの各ステップまたはこの方法の各ステップを実現するために必要なプログラムモジュールであると解される。このような1組のプログラムモジュールにより特定される装置を記載した請求項は、主に明細書に記載のコンピュータプログラムによりこの解決手段を実現するプログラムモジュール構造として理解すべきであり、ハードウェア方式により技術的解決手段を実現する実体的な装置と解してはならない。

2-6. コンピュータプログラム製品の解釈
 コンピュータプログラム製品は、主にコンピュータプログラムによってその解決手段を実現するソフトウェア製品であると解される。

3. コンピュータプログラムに関わる特許出願の審査に関する規定
根拠規定:審査指南第2部第9章6

3-1. 2019年12月31日公表の専利審査指南改正で新規追加された規定
 2019年12月31日公表の改正された専利審査指南の第2部第9章6に、「アルゴリズムの特徴、またはビジネスルールおよび方法的特徴を含む発明専利出願の審査関連規定」が追加された。

(1) 中国専利法第25条第1項第(2)号(知的活動の法則および方法)の審査
 請求項が抽象的なアルゴリズムまたは単純なビジネスルール・方法に関するものであり、かつ技術的要件を一切含まない場合、この請求項は、専利法第25条第1項第(2)号に規定する知的活動の法則および方法に該当するため、特許を受けることができない。請求項がアルゴリズム要件またはビジネスルール・方法要件だけでなく、技術的要件も含む場合、当該請求項は、全体としては知的活動の法則および方法ではないため、専利法第25条第1項第(2)号によりその特許保護の可能性を否定することができない。

(2) 中国専利法第2条第2項(技術的解決手段)の審査
 アルゴリズムまたはビジネスルール・方法を含む請求項が技術的解決手段に該当するかどうかを審査する際に、請求項に記載のすべての要件を全体的に考慮する必要がある。当該請求項には、解決しようとする技術的課題に対して自然法則を利用した技術的手段を採用することが記載されており、かつこれにより自然法則に合う技術的効果が得られる場合、当該請求項に係る解決手段は、専利法第2条第2項に記載の技術的解決手段に該当する。
 例えば、請求項において、アルゴリズムに関係する各ステップが、解決しようとする技術的課題と緊密に関連しており、例えば、アルゴリズムで処理されるデータが、技術分野において確実な技術的意味を有するデータであり、アルゴリズムの実行が、自然法則を利用して特定の技術的課題を解決する過程を直接反映し、かつ技術的効果を奏した場合、通常、当該請求項に係る解決手段は、専利法第2条第2項に記載の技術的解決手段に該当する。

3-2. 2023年12月21日公表の審査指南の改正
 2023年12月21日公表の改正された審査指南の第2部第9章6「アルゴリズムの特徴、またはビジネスルールおよび方法的特徴を含む発明専利出願の審査関連規定」では、人工知能、ビッグデータおよびブロックチェーンなどの特許出願に関する審査が追加された。

(1) 中国専利法第2条第2項(技術的解決手段)の審査
 請求項の解決手段がディープラーニング、クラシフィケーション、クラスタリングなどの人工知能、ビッグデータアルゴリズムの改良に関し、当該アルゴリズムがコンピュータシステムの内部構造と特定の技術的関連性を有するものであり、データ保存量の低減、データ伝送量の低減、ハードウェアの処理速度向上などの、ハードウェアの演算効率や実行効果の向上に係る技術的課題を解決でき、これにより自然法則に適合するコンピュータシステム内部性能の改良に係る技術的効果を取得した場合、当該請求項に係る解決手段は専利法第2条第2項に記載の技術的解決手段に該当する。
 請求項の解決手段の処理対象が具体的な応用分野のビッグデータであり、クラシフィケーション、クラスタリング、回帰分析、ニューラルネットワークなどにより、データの自然法則に適合する内的相関関係を発掘し、これに基づいて具体的な応用分野のビッグデータ分析の信頼性や精度の向上に係る技術的課題を解決し、技術的効果を奏する場合、当該請求項に係る解決手段は、専利法第2条第2項に記載の技術的解決手段に該当する。

(2) 中国専利法第22条第3項(進歩性)の審査
 請求項のアルゴリズムが、コンピュータシステムの内部構造と特定の技術的関連性を有するものであり、コンピュータシステムの内部性能の改善を実現し、データ保存量の低減、データ伝送量の低減、ハードウェアの処理速度向上などのハードウェアの演算効率や実行効果の向上につながる場合、当該アルゴリズムの構成と技術的な構成が、機能上互いに支え合い相互作用関係にあると判断することができ、進歩性の審査に際して、そのアルゴリズムの構成による発明への貢献を考慮しなければならない。
 特許出願の解決手段がユーザ体験の向上をもたらすことができ、かつ当該ユーザ体験の向上が技術的な構成によってもたらされる、もしくは生み出されるものである場合、または、技術的な構成と、これと機能上支え合い相互作用関係にあるアルゴリズムの構成、もしくはビジネスルールや方法の構成との両方によりもたらされる、もしくは生み出されるものである場合、進歩性審査の時に考慮しなければならない。

4. 留意事項
 日本においてはコンピュータプログラムを物として保護するが、中国では、現時点ではコンピュータプログラム自体について特許を受けることはできないものの、2023年12月21日に公表された改正審査指南の第2部第9章5.2において、コンピュータプログラム製品を請求項の主題の名称とすることが明確に許容された。

 コンピュータプログラム自体が記録された記録媒体は、特許を受けることはできないが、2017年4月1日より改正後の専利審査指南が施行され、コンピュータプログラムのフローが記録された記録媒体に特許権を付与できるようになった。「コンピュータプログラム自体」とは、例えばコード化された指令の組み合わせ(例えば、C言語プログラム)を指し、「コンピュータプログラムのフロー」とは自然言語で記述される方法ステップを指す(例えば、・・・のためのステップA、・・・ためのステップB等)。

 主題がコンピュータプログラムである請求項、またはコンピュータプログラム自体が記録された記録媒体に関する請求項については、実務上、技術的範囲が不明確であり、専利法第2条第2項に規定される「発明の定義」に該当しなく、または専利法第25条第1項第2号に規定される「知的活動の法則および方法」に該当するとして拒絶されることがほとんどである。したがって、コンピュータプログラムに関わる発明については、方法を記載した請求項、または物を記載した請求項で保護を図るのが望ましい。

 中間処理時において、コンピュータプログラムの請求項が拒絶された場合、当該出願に対応する物を記載した請求項、方法を記載した請求項、記録媒体に関する請求項、コンピュータプログラム製品に関する請求項があるかを確認し、存在しない場合は、それらを削除せずに、物を記載した請求項、方法を記載した請求項または記録媒体に関する請求項、コンピュータプログラム製品に関する請求項に変更する補正を行うことが望ましい。実務上、このような補正は多く認められている。

 中間処理時において、請求の範囲に記録媒体に関する請求項がある場合、または明細書にコンピュータプログラムまたは記録媒体に関する内容がある場合は、コンピュータプログラム製品に関する請求項の追加を行うことが望ましい。実務上、このような補正は多く認められている。

中国におけるコンピュータプログラムに関わる特許出願

1.発明の定義
1-1.解決方策(発明/考案)(専利法第2条2項、審査指南第2部分第1章2、第2部分第9章1~2)

・専利法第2条第2項によれば、発明とは、製品、方法、またはその改良について提案された新しい「解決方策(発明/考案)」(中国語「技术方案」)をいう。コンピュータプログラムに関わる発明について中国で特許を受けたい場合、その前提として、当該コンピュータプログラムに関わる発明そのものが、専利法にいう「解決方策(発明/考案)」に該当しなければならない。なお、コンピュータプログラムに関わる発明とは、発明で提示する課題を解決するためのものであって、コンピュータプログラムの処理フローが全部または一部の基礎となっており、コンピュータが前記フローに沿って作成されるプログラムを実行することにより、コンピュータ外部または内部の対象を制御、または処理する解決方策(発明/考案)をいう。

・「解決方策(発明/考案)」は、技術的手段、技術的課題、技術的効果をともに備えなければならない。したがって、明細書では、本発明が解決しようとする技術的課題、課題を解決するための技術的手段(技術的特徴)および得られる技術的効果を、できるだけ明確に記載すべきである。

・クレームに規定される発明は、専利法にいう「解決方策(発明/考案)」の要件を満たさなければならない。クレームに規定される発明は、技術的手段により技術的課題を解決し、技術的効果を奏するものでなければならない。

「解決方策(発明/考案)」に該当する例(審査指南第2部分第9章2):

(a)コンピュータプログラムに関わるクレームにおいて、プログラムを実行する目的が、技術的課題を解決すること(例えば、産業上の制御、測定や試験のプロセスを実現すること、または外部技術データを処理すること、またはコンピュータシステムの内部性能を改良すること)にあり、コンピュータでプログラムを実行することにより外部または内部の対象に対して行う制御または処理が、自然法則に従う技術的手段であり、かつこれにより自然法則に合う技術的効果(例えば、プロセス制御効果、技術データ処理効果、コンピュータ内部性能の改良効果など)を得られる場合。

(b)アルゴリズムの規定を含む発明(当該アルゴリズムに基づくクレーム)が、ある技術分野に適用され、技術的手段を利用してこの分野の技術的課題を解決し、それ相応の技術的効果を得られる場合。

1-2.知的活動の法則および方法(専利法第25条第1項第2号、審査指南第2部分第9章2)
発明そのものが知的活動の法則および方法に該当する場合、特許を受けることができない。

知的活動の法則および方法に該当する例:
(a)クレームの対象が実質上プログラムそのものである場合(例:「プログラム」、「プログラム製品」、「パッチ」、「コマンド」などをクレームする場合)。

(b)アルゴリズム、数学演算法則、ゲームのルール若しくは方法、記憶したプログラム自体のみにより特定される記録媒体等をクレームする場合。

 ただし、記録媒体自身に発明があり、単にプログラムが記録された記録媒体に該当しない場合、記録媒体は一般の物クレームとして扱う。
 また、コンピュータプログラムのフローにより特定される記録媒体は、知的活動の法則および方法に該当せず、特許を受けることができる。

2.コンピュータプログラムに関わるクレームの作成(審査指南第2部分第9章5.2)
 コンピュータプログラムに関わるクレームは、方法クレームとして作成してもよく、例えば当該方法を実現させる装置などの物クレームとして作成してもよい。以下の点に留意する必要がある。

2-1.方法クレームか、物クレームかを問わず、クレームは明細書によりサポートされるものでなければならない。具体的には、課題を解決するための手段を記載しなければならず、コンピュータプログラムが具備する機能およびその機能による効果のみの記載では足りない。

2-2.方法クレームとして作成する場合、方法の手順に従って、このプログラムにより実現する各機能、およびそれらの機能をどのように実現するかを詳細に記載すべきである。

2-3.装置クレームとして作成する場合、装置の各構成要素および構成要素同士の関係を具体的に記載しなければならず、ハードウェアだけでなく、プログラムを構成要素に含んでもよい。

2-4.コンピュータプログラムのフローのみに基づき、当該コンピュータプログラムのフローの各ステップもしくは当該コンピュータプログラムのフローを反映した方法クレームと完全に一致するように装置クレームを記載する場合、即ち、かかる装置クレームの各構成要素は、当該コンピュータプログラムのフローの各ステップまたはこの方法クレームの各ステップと完全に一致する場合、このような装置クレームの各構成要素は、プログラムのフローの各ステップまたはこの方法の各ステップを実現するために必要なプログラムモジュールであると解される。このような1組のプログラムモジュールにより特定される装置クレームは、主に明細書に記載のコンピュータプログラムによりこの解決方策を実現するプログラムモジュール構造として理解すべきであり、ハードウェア方式により解決方策を実現する実体的な装置と解してはならない。

3.留意事項
・日本においてはコンピュータプログラムを物として保護するが、中国では、現時点ではコンピュータプログラム自体について特許を受けることはできない。

・コンピュータプログラム自体が記録された記録媒体は、特許を受けることはできないが、2017年4月1日より改正後の審査指南が施行され、コンピュータプログラムのフローが記録された記録媒体に特許権を付与できるようになった。「コンピュータプログラム自体」とは、例えばコード化された指令の組み合わせ(例えば、C言語プログラム)を指し、「コンピュータプログラムのフロー」とは自然言語で記述される方法ステップを指す(例えば、・・・のためのステップA、・・・ためのステップB等)。

・主題がコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品であるクレーム、またはコンピュータプログラム自体が記録された記録媒体クレームについては、実務上、技術的範囲が不明確であり、専利法第2条第2項に規定される「発明の定義」、または専利法第25条第1項第2号に規定される「知的活動の法則および方法」に該当しないとして拒絶されることが殆どである。従って、コンピュータプログラムに関わる発明については、方法クレーム、または物クレームで保護を図るのが望ましい。

・コンピュータプログラムに関する装置クレームの書き方として、次の例が挙げられる。
(1)記録媒体+コンピュータプログラムのフロー。例えば:コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、当該プログラムがプロセッサによって実行されるときに、以下のステップ・・・を実行するコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

(2)方法のステップと完全に一致する1組のプログラムモジュールで特定される装置クレーム。例えば、・・・のための第1のプログラムモジュールと、・・・のための第2のプログラムモジュールと、・・・のための第3のプログラムモジュールとを備えるXXX装置。

(3)構成要素としてプログラムを含む装置クレーム。例えば、コンピュータプログラムが記憶されたメモリと、プロセッサとを備え、前記プログラムが前記プロセッサによって実行されるときに、以下のステップ・・・を実行するXXX装置。

・中間処理時において、コンピュータプログラムのクレームが拒絶された場合、当該出願に対応する物クレーム、方法クレーム、記録媒体クレームがあるかを確認し、存在しない場合は、それらを削除せずに、物クレーム、方法クレームまたは記録媒体クレームに変更する補正を行うことが望ましい。実務上、このような補正は多く認められている。

・2021年8月に発表された専利審査指南改訂案(意見募集稿)には、コンピュータプログラムに関する発明については、例えば、「プロセッサによって実行されると、請求項1に記載の方法のステップを実施するコンピュータプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品。」というように、クレームの主題名を「コンピュータプログラム製品」とすることができるとの記載がある。採択された専利審査指南改訂案にもこの記載が残った場合、コンピュータプログラムに関する発明を「コンピュータプログラム製品」として権利化することができるようになることを、留意されたい。

4.2019年12月31日付け指南改訂で新規追加された規定
 2019年12月31日付け改訂審査指南第2部分第9章の6.には、「アルゴリズム要件またはビジネスルール・方法要件を含む発明専利出願」に関する特別な規定が追加されているる。

(1)中国専利法第25条第1項第(2)号(知的活動の法則および方法)の審査
 請求項が抽象的なアルゴリズムまたは単純なビジネスルール・方法に関するものであり、かつ、技術的要件を一切含まない場合、この請求項は、専利法第25条第1項第(2)号に規定する知的活動の法則および方法に該当するため、特許を受けることができない。
請求項がアルゴリズム要件またはビジネスルール・方法要件だけでなく、技術的要件も含む場合、当該請求項は全体としては知的活動の法則および方法ではないため、専利法第25条第1項第(2)号によりその特許可能性を否定することができない。

(2)中国専利法第2条第2項(技術的解決方策)の審査
 アルゴリズム要件またはビジネスルール・方法要件を含む請求項が技術的解決方策に該当するかどうかを審査する際に、請求項に記載のすべての要件を全体的に考慮する必要がある。当該請求項には、解決しようとする技術的課題に対して自然法則を利用した技術的手段を採用することが記載されており、かつこれにより自然法則に合う技術的効果が得られる場合、当該請求項に係る解決方策は、専利法第2条第2項に記載の技術的解決方策に該当する。
 例えば、請求項において、アルゴリズムに関係する各ステップが、解決しようとする技術的課題と緊密に関連しており、例えば、アルゴリズムで処理されるデータが、技術分野において確実な技術的意味を有するデータであり、アルゴリズムの実行が、自然法則を利用して特定の技術的課題を解決する過程を直接反映し、かつ技術的効果を奏した場合、通常、当該請求項に係る解決方策は、専利法第2条第2項に記載の技術的解決方策に該当する。

中国における医薬用途発明の保護制度

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