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中国における明細書のサポート要件、および開示要件に関する無効審判事例

〔詳細〕
 本事件は、新規な除草組成物の発明に関する特許権に対し、審判請求人が、「請求項記載の発明は明細書に十分に開示されておらず当業者は実施できない。また、請求項の範囲は明細書で開示した範囲を超えている。」として無効を請求した事件である。
 本事件の争点は、「請求項記載の発明は明細書に支持されているか否か、および明細書は発明を十分に開示しているか否か」である。

 明細書のいわゆるサポート要件については、中国専利法(以下「専利法」という。)の第26条第4項に、明確性要件については同第3項に規定されている。

専利法 第26条
(第3項)明細書では、発明又は実用新案に対し、その所属技術分野の技術者が実現できることを基準とした明確かつ完全な説明を行い、必要時には図面を添付しなければならない。要約は発明又は実用新案の技術要点を簡潔に説明しなければならない。
(第4項)権利要求書は明細書を根拠とし、専利保護請求の範囲について明確かつ簡潔に要求を特定しなければならない。

 なお、第4項のうちサポート要件に関する規定は、「権利要求書は明細書を根拠とし」の部分であり、その他の部分は明確性要件に関するものである。

 次に、知識産権局が策定した中国専利審査指南(日本の「審査基準」に相当。以下「審査指南」という。)には、中国専利法第26条第3項について、明細書は、当業者が当該発明または実用新案を実現できる程度に発明または実用新案を明確に記載し、具体的な実施形態を詳細に記述し、発明または実用新案の理解と実施に欠かせない技術的内容を完全に開示しなければならない旨規定されている(審査指南第2部分第2章2.1.3)。

 また、中国専利法第26条第4項について、請求項は、通常は明細書に記載された一または複数の実施形態または実施例を概括してなるものであり、この概括は、明細書に開示された範囲を超えてはならないが、当業者が明細書に記載されている実施形態の同等な代替方式または明らかな変形方式がすべて同一の性能または用途を具備することを合理的に予測できる場合は、請求項の保護範囲をそのすべての同等な代替方式または明らかな変形方式を含むよう概括することを容認すべきであり、審査官は関連する従来技術を参照して判断しなければならない旨、規定されている(審査指南第2部分第2章3.2.1)
 
※2023年に審査指南が改正されて、サポート要件を否定する際の理由が厳格化された。詳細は、後段の〔留意事項〕で解説する。

 無効請求の対象となった本特許権(中国発明専利第92112424.4号(公開番号CN1033201C))の請求項1に記載された発明は、次のとおりである。

「除草組成物であって、
 0.5-95重量%の分子式(I)で示されるピリミジン誘導体あるいはその塩であり、

 任意に選択される担体、表面活性剤、エマルジョン及び/又は農業用補助剤を含有し、分子式(I)において、Rは水素原子、-CH2CH2S(O)nR1(R1は低級アルキル基、nは0~2の整数)又は

(R1は低級アルキル基)であり、Aは塩素原子又はメトキシ基であり、DおよびEは同一又は同一でなくてもよく、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基又はフッ素に置換された低級アルコキシ基を含有することを特徴とする、
 除草組成物。」

 請求人の無効理由は、大きく以下の2つである。

1. 本特許は、専利法第26条第3項の規定に違反する。具体的には、
(1) 本特許明細書に記載された技術案は、不完全あるいは不明瞭である。
(2) 本特許明細書に記載された方法は反応条件を記載していない。
(3) アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属の実施例は記載されておらず、一部の遷移金属は塩を形成できない。
(4) 本特許明細書に記載された方法は実施例と無関係である。
(5) 本特許明細書は一部の化合物組成物について配合方法を記載していない。
(6) 全ての化合物の製造方法を記載していないため、発明を実施できない。

2. 本特許は、専利法第26条第4項の規定に違反する。具体的には、
(7) 請求項1に記載された化合物の保護範囲は広範であるのに対し、本特許明細書の実施例で開示された化合物は限定的である。よって本特許明細書は請求項1に記載された広範な化合物を支持しておらず、かつ実施例に記載された化合物の含有量も請求項1に記載された含有量の範囲を支持していない。

 これに対し、特許権者は、「無効請求人の主張は独善・独断に過ぎず、本特許発明が実施不可能であるという理由を具体的に説明していない。例えば、アンモニウム塩以外の塩の製造方法および除草剤の配合比率は全て当業者が技術常識に基づいて任意に決定できるものであり、また明細書には除草機能の測定方法が記載されており、当業者は分子式(I)で示される化合物の除草機能を容易に測定でき、かつ大量の化合物の試験結果を開示している。よって本特許明細書の記載は明瞭かつ十分であり、本特許は専利法第26条第3項の規定に合致している。また請求人は、どの種類の塩類、配合比率が明細書に支持されていないのか、その具体的理由を説明していないが、本特許明細書には関連する塩類が記載され、実施例にはアンモニウム塩の製造方法および具体的な配合比率例が記載されており、請求人が主張する問題は存在しない。さらに本特許明細書の実施例および関連する記載は、0.5-95重量%の含有量範囲を支持するに十分であって、請求人が主張する理由は理解できない。よって本特許の請求項の記載は専利法第26条第4項の規定に合致している。」と反論した。

 審判部合議体は、請求人の主張(1)、(2)および(4)について「請求人が主張する内容は、明細書に記載の技術ではあるが、請求項で保護する発明とは直接関係なく、かつ当該技術が指摘する問題と、本特許請求項で保護する発明との間に必然的な関係性があるとの説明もなく、その理由は不明であり、請求人の理解は当業者レベルのものではない。専利法第26条第3項に関する審査は、明細書の記載内容全体を考慮し、かつ保護を求める技術に対して明瞭で完全な説明をしているか否かを判断するもの、すなわち当業者が実施できる程度に開示されているかどうかを考察するものである。」として退けた。

 また審判部合議体は、請求人の主張(3)、(5)および(6)について「具体的な金属が塩を形成する実施例がないことをもって、当業者が実施できないとはいえない。当業者は、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属であっても、前記金属が形成したアルカリ化合物と酸とが反応して塩を形成することを容易に予期できる。また、本発明は、除草組成物の活性の革新に基づくもので、明細書には組成物の配合方法および製造方法について詳しく記載されている。一部の除草組成物についてその製造法に関する実施例はないものの、一連の製造方法は明細書に十分に記載され、26個の化合物の実施例および11個の製造実施例が、さらに実験例によって26個の化合物の組成物が優れた除草性能を有することが証明されている。当業者は明細書の記載に基づき、本発明を完全に実施することができる。」として退けた。

 さらに審判部合議体は、請求人の主張(7)について「本特許発明は、『より優れた除草効能を有する新規な化合物を製造すること』を目的としており、請求項に記載した活性成分使用量の数値範囲は比較的広いといえるものの、数値範囲端の実施例を詳細に記載しなくとも、当業者は本特許明細書の開示内容全体に基づいて、請求項で規定する保護範囲内まで実施可能であることを容易に理解できる。」として退け、請求人の無効理由はいずれも成立せず本特許権は有効との審決を下した(第8823号審決)。


《参考》(知識産権局審判部無効審決2006年11月3日付第8823号より抜粋)
・・・专利法第26条第3款是对权利要求所保护的技术方案提出的要求,是指该技术方案必须在说明书中满足“充分公开”的要求。请求人所主张的上述内容却均仅针对说明书・・・记载的・・・技术方案,而非直接针对权利要求所保护的技术方案,且并未说明其在上述说明书技术方案中所指出的问题与本专利权利要求保护的技术方案之间有何必然的联系。・・・其次,专利法第26条第3款的判断主体应定位于所属领域的技术人员・・・此外,对专利法第26条第3款的审查应考虑说明书的全部内容,并在此基础上判断说明书是否清楚、完整地对保护的・・・技术方案作出说明,以及考察这种说明是否达到所属领域技术人员能够实施的程度。・・・说明书实施例是对技术方案的具体实施方式的举例说明,其作用在于帮助理解和实现技术方案,但是,对于一项经概括而成的技术方案而言,如果要求必须针对其概括的保护范围内的每一个点均给出实施例,则夸大、曲解了实施例的作用,且往往在实践中难以做到。・・・

・・・对于权利要求的概括是否恰当的判断应当立足于说明书所公开的全部内容,而不应局限于具体实施方式,尤其不应仅仅局限于实施例。对于一项已授予的专利权,如果权利要求中涉及到数值范围,而说明书中既对该范围有明确具体的公开,又提供了该范围内的一些实施例,且本领域技术人员根据说明书的整体内容能够容易地将发明・・・扩展到权利要求的保护范围内,则在没有相反证据和理由的情况下,不应否认该权利要求得到说明书的支持。

(日本語訳「・・・専利法第26条第3項は請求項が保護する技術案に対する要求であり、当該技術案は明細書において“十分開示”という要求を満たさなければならないことを指す。請求人が主張した内容は、明細書・・・に記載された・・・技術案に対するものであって、直接に請求項が保護する技術案に対するものではなく、かつ前記明細書の技術案が指摘する問題と本特許請求項が保護する技術案との間に必然的な関連性があるかについて説明していない。・・・次に、専利法第26条第3項の判断主体は当業者と位置づけるべきであり・・・さらに、専利法第26条第3項の審査は明細書全体の内容を考慮し、かつこれに基づいて明細書が明瞭であるか否か、保護する・・・技術案に対し、完全な説明をしているかを判断し、当業者が実施できる程度であるか否かを考察すべきである。・・・明細書の実施例は技術案の具体的な実施方式に対する挙例説明であり、その作用は技術案の理解および実施の手助けとなるものであるが、概括を経てなる技術案が、概括した保護範囲内の全てを実施例で記載することが要求されるとすれば、実施例の作用を誇張し、曲解し、かつ実践することは困難である。・・・

 ・・・請求項の概括が適切であるか否かに対する判断は、明細書に開示された全体の内容に立脚すべきであり、具体的な実施方式、特に実施例だけに限定すべきではない。登録した特許権について、請求項が数値範囲発明に関わり、明細書は当該範囲について明確・具体的に開示し、又は当該範囲内の一部の実施例を提供し、かつ当業者が明細書の全体の内容に基づいて、発明・・・を請求項の保護範囲内まで容易に広げることができれば、相反する証拠および理由がない限り、当該請求項は明細書の支持を得られていないと否認すべきではない。」)

〔留意事項〕
 本事件における無効審判請求人の主張は、根拠に乏しく、言い掛かりともいえるような論理であり、審判部合議体はその点を指摘しつつ的確に判断をしている。本件の結果は当然のこととしても、侵害事件がらみでは訴訟の先延ばし等のために、無理とわかりながらも無効審判制度を使うケースが多々あり、過去にはこうした根拠に乏しい審判請求でも無効になったケースがあることに注意が必要である。ちなみに、本件の特許権者は日本企業、無効審判請求人は中国企業である。

 2023年に審査指南が改正されて、サポート要件を否定する際の理由が厳格化された(審査指南第2部分第2章3.2.1)。改正前の審査指南では、「発明または実用新案が解決しようとする技術的課題を解決して同じ効果を得ることができないと疑う理由を有するようになるのであれば、当該請求項は明細書にサポートされていないとみなさなければならない」とされていたが、改正された審査指南では、「疑うのに十分な理由」がなければサポートされていないとは認定できないとされた。

 したがって、今後無効審判において、サポート要件に違反するという主張をするためには、十分な理由を述べる必要があり、分析を欠いた状況における直接的、断言的な主張では、サポート要件は否定されないと考えられる。

中国における数値限定発明の進歩性判断に関する事例

 本事件は、審判部合議体が下した特許無効との審決に対し、一審である北京市第一中級人民法院(日本の「地裁」に相当)で審決維持の判決が下され、これを不服として北京市高級人民法院にて争われた事件である。

 本事件の争点は、「数値限定発明の進歩性判断」についてである。

 知識産権局が策定した審査指南(以下「審査基準」という。)には、「当該発明が、可能かつ限られた範囲内で具体的なサイズ、温度範囲または他のパラメータを選択するものであって、これらの選択が当業者の通常の手段で得られ、且つ予期できない技術的効果を奏しない場合、当該発明は進歩性を有さない。」と規定されている(中国特許審査基準第2部分第4章4.3の関連規定を参照)。

 本件特許は、無鉛柔軟はんだ合金に関し、訂正後の独立請求項は以下のとおりである。

「訂正後の請求項1

 0.3-0.7wt%の Cuと、0.04-0.1wt%の Niとを含有し、残りはSnであることを特徴とする無鉛はんだ合金。

訂正後の請求項4

 0.3-0.7wt%の Cuと、0.002-1wt%の Niと、0.001-1wt%の Geとを含有し、残りはSnであることを特徴とする無鉛はんだ合金。」

 無効審判請求人(中国の個人)は、「請求項1記載の発明は、証拠文献1(US5366692)に開示された発明に対して進歩性を有しておらず、請求項4記載の発明は証拠文献1と証拠文献8(特公平3-28996号公報)に記載の発明との組み合わせにより進歩性を有していない。

 証拠文献1には、半導体に用いる合金接合材料を開示し、実施例の表19中の第17種目の合金の組成が、0.5wt%のCuおよび0.5wt%のNiを含み、残りはSnであることが開示されている。

 請求項1に記載された発明と証拠文献1に開示された発明とを対比すると、その相違点は、請求項1に記載された合金の重量比がNi0.04-0.1wt%であるのに対し、証拠文献1に開示された合金の重量比がNi0.5wt%である点である。

 一方、証拠文献8には、はんだにGeを添加することで、当該はんだが溶けるときの酸化物の生成を抑制し、且つはんだ付性(ぬれ性、カット性、伸縮性等)を改善することが開示されている。また、Geを0.1wt%以上含有すると、高価なGeを大量に使うことになり、合金の価額が高騰するので実用的ではなく、上記はんだにおけるGeの含有量が0.001-0.05wt%であることが好ましいことも開示されている。よって、これらの各請求項記載の発明は、中国特許法第22条第3項に規定された進歩性の基準を満たしていない。」と主張した。

 これに対し特許権者(日本企業)は、「証拠文献1が開示するのは、固体合金線(糸はんだ)を使用してはんだ付けを行う『突起はんだ付け法』であるが、本件特許発明は、溶融はんだを使用してはんだ付けを行う『噴流はんだ付け法』であり、技術分野、発明目的のいずれも異なる。且つ証拠文献1の表19は、単に複数の数値点をばらばらに開示しているだけであり、当業者は証拠文献1に開示された限られた情報から技術的示唆を得て、本件特許発明を得ることができない。」と主張した。

 審判部は、

「(1)請求項1には、適用される工程が突起はんだ付け法であるか、或いは噴流はんだ付け法であるかが限定されていない。

(2)請求項1に記載されたNiの含有量範囲は、当業者が有限回数の実験により容易に選択して得られるものであり、創造的な労働を必要としない。

(3)請求項4に記載の発明と証拠文献1に開示の発明との相違点は、請求項4記載の発明が0.001-1wt%のGeが更に添加されたものであるが、この点は証拠文献8に開示されており、且つその作用は本特許発明の作用と同一である。したがって、当業者にとって、証拠文献1と証拠文献8とを組み合わせて請求項4記載の発明を得るのは自明である。」として当該特許権のすべてを無効とした(第15158号審決)。

 この決定を不服とした特許権者は、北京市第一中級人民法院に同審決の取消しを求めて上訴したが、中級人民法院は、同審決を維持する判決を下し(第1113号判決)、これを不服とした特許権者は、北京市高級人民法院に上訴した。高級人民法院は、

「本件特許発明は『柔軟はんだ合金』分野に属し、証拠文献1には半導体製造に用いる合金接合材料を開示しており、両者は同一の技術分野に属する。証拠文献1には多種多様な発明が記載されているが、当業者であれば、これらの技術情報の中から本件特許発明をなし得るための技術的能力がある。請求項4記載の発明と証拠文献1に開示された発明との相違点は、0.001-1wt%のGeがさらに添加されている点だけであるが、証拠文献8にはこの点が開示されており、且つGeの添加によって酸化物生成の抑制効果を奏する点も開示されている。よって当業者であれば、証拠文献1と証拠文献8に開示された発明を組合せて請求項4記載の発明を得ることができる。」として、一審判決を維持した(第528号判決)。

参考(北京市高級人民法院2012年8月2日付(2012)高行終字第528号より抜粋):
日本語訳「進歩性とは、出願日前に存在する技術と比較し、当該発明が突出した実質的な特徴と顕著な進歩を有することを指す・・・もし発明が具体的な数値範囲に限定するものであれば、当該数値範囲が先行技術と比較して、技術的効果に「質」的な変化をもたらしたか、新しい機能を有しているか、または「量」的な変化が生じて人々の予期を超えたか否かを考慮すべきである。

 証拠文献1の表19の実施例には・・・開示された第17種の合金の組成・・・と請求項1との差異は、単にNiの含有量が異なることである。当業者にとってNiは、はんだ合金に通常添加する材料であり、良好な流動性を保持し、且つはんだ継手が十分な強度のはんだ付性を示すために、Niの添加量を一定の範囲内に制御すべきであり・・・当業者は、錫を基礎材料とする無鉛はんだ合金の各組成の基本的機能を把握した上で、証拠文献1から技術的示唆を得ることができ、Niの含有量を選択するのは有限回数の実験で得られる。且つ、本特許明細書において、Niの添加量が0.002wt%~1wt%であるとの基礎において、さらに0.04~0.1wt%に制御することで、どのような予期しない技術的効果があるか記載されておらず・・・本特許は、はんだ合金中のNiの含有量の相違と伸び率または流動性の技術的効果との間に、どのような必然的な関係があるかについて、確定または教示できない。請求項1のNi含有量の選択は、先行技術に対して新たな機能を生じさせず、予期できない技術的効果も奏していない・・・。

 ・・・請求項4と・・・証拠文献1との差異は・・・、単に請求項4において0.001-1wt%のGeが添加されているだけであり、証拠文献8は、・・・:はんだにGeを添加することで、酸化物の生成を抑制する効果を奏すること・・・。また、もしGeを0.1wt%以上含有すると・・・合金の価額が高くなり、実用的ではないため、・・・Geの含有量が0.001-0.05wt%であることが好ましい・・・と記載している。このように、証拠文献8は・・・技術的示唆を開示している。・・・したがって、当業者は証拠文献1および証拠文献8を組合せることで請求項4の技術案を得ることができる。」

【留意事項】
 北京市高級人民法院による判断の妥当性については、当該技術分野における専門家の技術的知見に基づいた分析が必要ではあるが、証拠文献1との関係について、やや短絡的に判断された印象を受ける。審査実務においてはありがちなことであるとしても、審判・裁判でも(場合によっては)こうした判断がなされることについて、日本企業として注意が必要である。

 なお、中国の当事者系審決取消訴訟の被告は、審決を下した行政庁である知識産権局の審判部であり(一方当事者は第三者として訴訟参加。単独で上訴可能。)、行政事件訴訟の性格を有する。

中国における専利審査指南の改正(後編)

記事本文はこちらをご覧ください。なお、「中国における専利審査指南の改正(前編)」も併せてご覧ください。