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日本と中国における特許審査請求期限の比較

1.日本における審査請求期限
 日本においては、特許出願の審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ(特許法第48条の3第1項)、この期限内に出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第48条の3第4項)。ただし、所定の期間内に出願審査の請求がなされなかったことにより特許出願が取り下げたものとみなされた場合であっても、当該期間を徒過したことについて「故意によるものでない」ときは、出願審査の請求をすることができるようになった日から2か月以内で、期間経過後1年以内に限り、出願審査の請求を行うことができる(特許法第48条の3第5項)。

 出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は、優先日(先の出願の出願日)ではなく、優先権主張を伴う出願(後の出願)の実際の出願日である(工業所有権法逐条解説 特許法第48条の3趣旨)。
 PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。この場合の審査請求期限は、国際出願日から3年である。

 なお、審査請求は出願人だけでなく、第三者も行うことができる。(特許法第48条の3第1項)。
条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第184条の17

日本国特許法 第48条の2 特許出願の審査
 特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまって行なう。

日本国特許法 第48条の3 出願審査の請求
 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。

2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。

3 出願審査の請求は、取り下げることができない。

4 第一項または第二項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。

5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。

(第6から第8項省略)

日本国特許法 第184条の17 出願審査の請求の時期の制限
国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあっては第百八十四条の五第一項、外国語特許出願にあっては第百八十四条の四第一項または第四項および第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第百八十四条の四第一項ただし書の外国語特許出願にあっては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。

2.中国における審査請求期限
 中国においては、特許出願の実体審査を受けるためには実体審査請求を行う必要がある(専利法第35条)。出願審査請求は出願日から3年以内に行うことができ、出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(専利法第35条)。
 なお、実体審査請求を行うことができるのは、出願人のみである(専利法第35条第1項)。
 また、中国では、所定の場合を除き、専利法に言う出願日とは、優先権を有する特許出願については優先日を指すので(専利法実施細則第11条)、審査請求期限の起算日が日本では出願日であるのに対し、中国では優先日となることに注意する必要がある。

条文等根拠:専利法第35条、専利法実施細則第11条

専利法 第35条
発明特許出願の出願日から三年間、国務院専利行政部門は出願者が随時提出する請求に基づき、その出願に対して実体審査を行うことができる。出願者に正当な理由がなく、期限を過ぎても実体審査を請求しない場合、当該出願は取り下げられたものと見なされる。
国務院専利行政部門は必要と認める場合、自ら発明特許の出願に対して実体審査を行うことができる。

専利法実施細則 第11条
専利法第二十八条および第四十二条に規定する状況を除き、専利法に言う出願日とは、優先権を有するものについては優先権日を指す。

 日本の基礎出願に基づいて優先権を主張し中国に特許出願した場合には、以下のようになる。

日本と中国における特許審査請求期限の比較

日本 中国
審査請求期間 3年 3年
起算日 日本の出願日 優先日(日本の出願日)

日本と中国の特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

1.日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長

(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月

条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10 1.(2)ア、2.(2)ア

日本国特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。

日本国特許法第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

方式審査便覧04.10 法定期間及び指定期間の取扱い
1.手続をする者が在外者でない場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
ア.意見書(特50条、商15条の2、15条の3第1項、商附則7条)
2.手続をする者が在外者である場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は1.(11)及び(12)を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1.(2)の期間とする。
ア.意見書(1.(2)ア.において同じ。)

(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能

・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能
 (*特許庁「出願の手続」第二章 第十八節 IV指定期間の延長、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_18.pdf

条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10 1.(16)ア、2.(12)ア、イ

日本国特許法第5条期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。
2審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。

方式審査便覧 04.10 1.(16)ア、2.(12)
1 手続をする者が在外者でない場合
(16) 次に掲げる特許法、実用新案法及び意匠法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.(2)ア.の意見書(特50条及び意19条の規定によるものに限る。)ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2 手続をする者が在外者である場合
(12) 特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
ア.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができる。
イ.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。

2.中国の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長

(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・1回目の拒絶理由通知書の場合、応答期間は4か月
・2回目の拒絶理由通知書の場合、応答期間は2か月

条文等根拠:専利法第37条、専利審査指南第2部分第8章4.10.3、専利審査指南第2部分第8章4.11.3.2
※専利法とは日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。実施細則とは日本における特許法施行規則に相当。審査指南とは日本における特許審査基準に相当。

中国専利法 37条
 国務院専利行政部門は、発明特許出願に対して実体審査を行った後、本法の規定に合致していないと認める場合、出願者に通知を行い、指定の期限内に意見を陳述するか、あるいはその出願を修正するよう要求する。正当な理由なく期限を過ぎても回答しない場合、当該出願は撤回されたものと見なされる。


中国専利審査指南第2部分第8章4.10.3 応答期限
 審査官は審査意見通知書において、応答期限を指定しなければならない。当該期限は、審査官が出願に関連している要素を考慮した上で確定する。これらの要素には、審査意見の数と性質、出願で補正となり得る作業量及び複雑さなどがある。1回目の審査意見通知書の応答期限は4ヶ月である。

中国専利審査指南第2部分第8章4.11.3.2 2回目の審査意見通知書の内容及び要求
 1回目の審査意見通知書の作成方式及び要求は同様に2回目の審査意見通知書にも適用する。
 審査意見通知書への応答において、出願人が補正書類を提出した場合には、審査官は補正書類に対して審査意見を提示し、新たに補正された権利要求書及び説明書にある問題点を指摘しなければならない。
 出願人が応答において意見を陳述しただけで、出願書類については補正していない場合、通常審査官が2回目の審査意見通知書の正文において、前に述べた意見を堅持してもよいとする。ただし、出願人が充分な理由を提示した、又は本章第4.11.3.1節に述べたような状況があった場合には、審査官は新たな審査意見を考えなければならない。
 審査官は2回目の審査意見通知書において、出願人が提出した意見陳述書における弁明意見について必要なコメントをしなければならない。
 審査手続を加速させるために、2回目の審査意見通知書では出願に対する審査の結論を出願人に明確に告知しなければならない。2回目の審査意見通知書で指定される応答期限は2ヶ月である。

(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
 出願人が正当な理由により期限内に拒絶理由通知書に対して応答することができない場合は、最大2か月まで延長が可能。延長は一般的には1回のみとなっている。

条文等根拠:専利法実施細則第6条第4項、専利法実施細則第99条第2項、専利審査指南第5部分第7章4.2

中国専利法実施細則第6条第4項
 当事者より国務院特許行政部門が指定した期限の延長を申請する場合は、期限の満了日までに国務院特許行政部門に理由を説明し、且つ関係手続きを取らなければならない。

中国専利法実施細則第99条第2項
 期限延長請求費は相応する期限満了日前に納付しなければならない。期限が満了になっても未納付又は納付不足の場合は、請求を提出しなかったと見なす。

中国専利審査指南第5部分第7章4.2 期限延長請求の許可
 期限延長の請求について、対応した通知と決定を行った部門、又は手続管理部門が審査許可を行う。
 延長期限が1ヶ月未満である場合は、1ヶ月として計算される。延長期限は2ヶ月を超えてはならない。同じ通知又は決定において指定された期限について、許可される延長は一般的に1回のみとする。
 期限延長の請求で規定に合致しない場合、審査官は延長期限審査許可通知書を出し、期限延長しない理由を説明しなければならない。規定に合致した場合は、審査官は延長期限審査許可通知書を出し、コンピュータシステムにおいて当該期限の満了日を変更して、当該期限の監視を継続しなければならない。

日本と中国の特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

日本 中国
応答期間 60日(在外者でない場合)
3か月(在外者の場合)
1回目の拒絶理由通知書:4か月
2回目の拒絶理由通知書:2か月
応答期間の延長の可否
延長可能期間 最大2か月(在外者でない場合)
最大3か月(在外者の場合)
最大2か月

中国における専利無効宣告請求(特許無効審判)に関する制度

 「『日中韓における特許無効審判についての制度及び統計分析に関する調査研究』報告書」(平成28年11月、日本国際知的財産保護協会)第II部1.2、1.4

 

(目次)

第II部 調査研究結果

 1.2 中国における専利無効宣告請求(特許無効審判)に関する制度 P.15

  1.2.1 審判部の構成 P.15

  1.2.2 専利無効宣告請求制度の概要 P.16

  1.2.3 専利無効宣告手続における専利書類の補正(訂正)について P.20

  1.2.4 口頭審理について P.22

  1.2.5 中国における証拠の提出について P.24

  1.2.6 専利無効宣告請求から裁判までの流れ P.27

 1.4 日中韓の対比(対比表) P.45

  1.4.1 日中韓における特許無効審判の一般的な制度の対比 P.45

  1.4.2 日中韓における特許無効審判の無効理由の対比 P.48

  1.4.3 口頭審理に関する制度の対比 P.50

  1.4.4 特許無効審判中の訂正の対比 P.52

中国における権利化後の補正(訂正)の制限

 「『日中韓における特許無効審判についての制度及び統計分析に関する調査研究』報告書」(平成28年11月、日本国際知的財産保護協会)第II部4.2.2

 

(目次)

第II部 調査研究結果

 4 ヒアリング

  4.2 中国におけるヒアリング調査結果の詳細

   4.2.2 権利化後の補正(訂正)の制限について P.104