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中国における技術常識(中国語:「公知常識」)の立証責任の所在

【詳細】

公知常識

専利審査指南第二部分第四章の進歩性審査において、「公知常識」は、当該分野において技術的問題を解決する通常の手段、または教科書もしくは参考書などで開示された技術的問題を解決するための技術的手段、および当該分野において特定の技術的問題を解決する通常の手段が含まれると例示されている。すなわち、関連技術分野の具体的な技術問題を解決するために、当該分野における一般技術者が容易に想到しかつ用いる技術的手段のことを示している。「公知常識」の判断主体は「発明が属する技術分野の通常知識を有する者」であり、通常知識とは、世間の民衆全員が知っている事実であるとは限らず、出願日より前に当該分野の一般技術者に公知となっていた一般的な技術常識を示している。

 この他、以前は革新的と認められていた技術が、科学技術の発展に伴い、多くの分野、商品で広範に利用され、また多くの特許文献もしくは科学出版物等で開示され、多くの特許文献で引用された結果、これらの広範に開示された技術は、当該分野の技術者に熟知され「公知常識(公知技術)」になると中国における実務でも認められている。

 

「公知常識」の立証責任

(1) 実体審査段階

 専利審査指南第二部分第八章第4.10.2.2節では「審査官が審査意見通知書(拒絶理由通知書)において引用した当分野の『公知常識』は、確実なものでなければならない。出願人が審査官の引用した『公知常識』について異議を申し立てた場合には、審査官は理由を説明するか、或いは相応の証拠を提供して、これを証明できるようにしなければならない」と規定されている。出願人が審査官の引用した「公知常識」について異議を申立て、かつ審査官に立証を求めた場合、審査官は申立てを直接却下することはできず、改めて審査意見書を通知することになる。

 審査意見において、通常は「公知常識」は引用証拠と組み合わせて用いられる。「公知常識」が当該特許の技術的特徴を開示し、引用証拠がその他の技術的特徴を開示している場合、公知常識と引用証拠を組み合わせて当該特許の進歩性が否定される。

(2) 無効審判段階

 専利審査指南第四部分第八章第4.3.3節では、当事者である請求人もしくは被請求人がある技術的手段は「公知常識」であると主張した場合には、その主張を行った者がその主張に対して立証責任を負うことになる、と規定されている。立証の形式には、教科書、技術用語辞典、技術マニュアル等の提出といった法律で規定された一般的方法による立証や、当該技術的手段が既に広範にわたり使用されていることを証明する証拠、例えば、特許文献、学術文章、商品説明等を提出し立証することが可能である。

(3) 行政訴訟段階

 行政訴訟法第32条により、原告が専利復審委員会による「公知常識」の認定に明確な異議を申立てた場合、専利復審委員会が「公知常識」の認定に対し立証責任を負うことになる。

日本と中国の特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長

(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間

・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日

・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3ヶ月

条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10

 

日本特許法 第50条 拒絶理由の通知

審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号または第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。

 

日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正

特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。

一  第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき

二  拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。

三  拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき

四  拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

 

日本方式審査便覧 04.10

1 手続をする者が在外者でない場合

(3)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許および実用新案に関しては60日、意匠および商標に関しては40日とする。ただし、手続をする者またはその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許および実用新案に関しては60日を75日と、意匠および商標に関しては40日を55日とする。

ア 意見書

特50条{特67条の4、159条2項〔特174条1項〕、特163条2項、意19条、50条3項〔意57条1項〕}

・商15条の2{商55条の2第1項〔商60条の2第2項(商68条5項)、商68条4項〕、商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条}

2 手続をする者が在外者である場合

(3)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1 (3)の期間とする。

ア 意見書

イ 答弁書

ウ 特許法第39条第6項※5、意匠法第9条第4項または商標法第8条第4項の規定に基づく指令書に応答する書面

エ 特許法第134条第4項もしくは実用新案法第39条第4項の規定により審尋を受けた者または特許法第194条第1項の規定により書類その他の物件の提出を求められた者が提出する実験成績証明書、指定商品の説明書等、ひな形・見本、特許の分割出願に関する説明書等

オ 命令による手続補正書(実用新案法第6条の2および第14条の3の規定によるものに限る。)

 

(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長

・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大1ヶ月まで延長可能

ただし、拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験を行うとの理由(理由(1))を付して応答期間の延長を請求する必要がある

・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3ヶ月まで延長可能

ただし、拒絶理由通知書や意見書・手続補正書等の手続書類の翻訳を行うとの理由または上記理由(1)を付して応答期間の延長を請求する必要がある

条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10

 

日本特許法 第5条 期間の延長等

特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。

2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。

 

日本方式審査便覧 01.10

1 手続をする者が在外者でない場合

(16)特許法第50条の規定による意見書または同法第134条第4項の規定による審尋に関しての回答書等の提出についての指定期間は、「拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験のため」という合理的理由がある場合、1月に限り、請求により延長することができる。

2 手続をする者が在外者である場合

(11)特許法第50条の規定による意見書または同法第134条第4項の規定による審尋に関しての回答書等の提出についての指定期間は、合理的理由がある場合に限り、請求により延長することができる。合理的理由と延長できる期間は以下のとおりとする。ただし、同法第67条の4に係る拒絶理由通知については、下記ア 対比実験のため)の理由による延長請求は認められない。

ア 「拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験のため」という理由により1月単位で1回のみ期間延長請求をすることができる。

イ 「手続書類の翻訳のため」という理由により1月単位で3回まで期間延長請求することができる

ウ アおよびイの組み合わせによる期間延長請求は、合計3回までとする

 

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中国の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長

(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間

・最初の拒絶理由通知書の場合、応答期間は4ヶ月

・再度の拒絶理由通知書の場合、応答期間は2ヶ月

条文等根拠:専利法第37条、専利審査指南2.8.4.10.3、専利審査指南2.8.4.11.3.2

 

※専利法とは日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。以下「専利法」。

※実施細則とは日本における施行規則に相当。以下「実施細則」。

※審査指南とは日本における審査基準に相当。以下「審査指南」。

 

中国専利法 37条

国務院専利行政部門は、発明特許出願に対して実体審査を行った後、本法の規定に合致していないと認める場合、出願者に通知を行い、指定の期限内に意見を陳述するか、あるいはその出願を修正するよう要求する。正当な理由なく期限を過ぎても回答しない場合、当該出願は撤回されたものと見なされる。

 

中国専利審査指南 2.8.4.10.3 応答期限

審査官は審査意見通知書において、応答期限を指定しなければならない。当該期限は、審査官が出願に関連している要素を考慮した上で確定する。これらの要素には、審査意見の数と性質、出願で補正となり得る作業量および複雑さなどがある。最初の審査意見通知書の応答期限は4ヶ月である

 

中国専利審査指南 2.8.4.11.3.2 2回目の審査意見通知書の内容および要求

最初の審査意見通知書の作成方式および要求は同様に再度の審査意見通知書にも適用する。 審査意見通知書への応答において、出願人が補正書類を提出した場合には、審査官は補正書類に対して審査意見を提示し、新たに補正された権利要求書および説明書にある問題点を指摘しなければならない。

出願人が応答において意見を陳述しただけで、出願書類については補正していない場合、通常審査官が再度の審査意見通知書の正文において、前に述べた意見を堅持してもよいとする。ただし、出願人が充分な理由を提示した、または本章第4.11.3.1節に述べたような状況があった場合には、審査官は新たな審査意見を考えなければならない。

審査官は再度の審査意見通知書において、出願人が提出した意見陳述書における弁明意見について必要なコメントをしなければならない。

審査手続を加速させるために、再度の審査意見通知書では出願に対する審査の結論を出願人に明確に告知しなければならない。再度の審査意見通知書で指定される応答期限は2ヶ月である

 

(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長

出願人が正当な理由により期限内に拒絶理由通知書に対して応答することができない場合は、最大2ヶ月まで延長が可能。延長は一般的には1回のみとなっている。

条文等根拠:専利法実施細則第6条4項、専利法実施細則第99条2項、専利審査指南5.7.4.2

 

中国専利法実施細則 6条4項

当事者より国務院特許行政部門が指定した期限の延長を申請する場合は、期限の満了日までに国務院特許行政部門に理由を説明し、かつ関係手続きを取らなければならない。

 

中国専利法実施細則 99条2項

期限延長請求費は相応する期限満了日前に納付しなければならない。期限が満了になっても未納付または納付不足の場合は、請求を提出しなかったと見なす。

 

中国専利審査指南 5.7.4.2 期限延長請求の許可

延長期限が1ヶ月未満である場合は、1ヶ月として計算される。延長期限は2ヶ月を超えてはならない。同じ通知又は決定において指定された期限について、許可される延長は一般的に1回のみとする

 

日本と中国の特許実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較

  日本 中国
応答期間 60日(ただし在外者は3ヶ月) 最初の拒絶理由通知書:4ヶ月

再度の拒絶理由通知書:2ヶ月

応答期間の

延長の可否

条件付きで可
延長可能期間 最大1ヶ月(在外者は最大3ヶ月) 最大2ヶ月

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における拒絶理由通知への応答期間の延長の可否等については、下記のとおりである。

 

特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する各国比較

2.拒絶理由通知

*1(JP):延長の条件は上述の詳細を参照

*2(CN):再度の拒絶理由通知書の場合は2ヶ月

*3(HK):実体審査制度なし

*4(IN):アクセプタンス期限(最初の拒絶理由通知から12ヶ月)が設定される

*5(IN):ヒアリングの申請を行うことで係属状態は維持可能

*6(RU):旧法適用出願(2014年10月1日より前に出願されたもの)が2ヶ月、改正法適用出願(2014年10月1日以降に出願されたもの)が3ヶ月。

*7(SG):シンガポール特許庁に審査を請求した場合、応答期間は5ヶ月。シンガポール特許庁に補充審査を請求した場合、応答期間は3ヶ月。