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チリにおける特許法の概要

1.チリにおける特許法(産業財産法)の概要

1-1.発明者および出願人
 発明者、および、発明者からの譲受人(自然人であるか法人であるかを問わない)のいずれもが、特許出願の出願人となることができる(産業財産法第2条)。

 特許出願に際して、発明者の氏名の記載が必要である(チリ産業財産規則(以下「産業財産規則」という。)第11条)。

 外国人およびチリに居住していないチリ国民は、特許出願に際して、チリに居住する代理人を指定しなければならない。外国人に与えられる保護は、チリ国民に与えられる保護と同一である(産業財産法第2条)。

1-2.特許を受けることができる発明
 発明とは、産業の分野において生じる技術的課題の解決手段をいう(産業財産法第31条)。発明の対象は、製品および方法のいずれでもよい(産業財産法第31条)。

 発明は、新規性および進歩性を有し、産業上利用可能である場合に、特許を受けることができる(産業財産法第32条)。

1-2-1.新規性
 チリにおける特許出願日前に世界のいずれかの国で公衆に開示された先行技術がない場合、その発明は新規性を有する。先行技術には、出願日時点において公開されていない先行のチリ特許出願が含まれる(産業財産法第33条)。

1-2-2.新規性喪失の例外
 出願前の12か月以内に行われた公衆への開示が、出願人自身に開示されたものである場合、出願人の許可に基づき開示されたものである場合、または、出願人自身による開示に基づいて更に開示されたものである場合、発明の新規性を判断する際にその開示は考慮されない(産業財産法第42条)。

1-2-3.進歩性
 当業者にとって発明が自明でない場合、その発明は進歩性を有する(産業財産法第35条)。

1-2-4.産業上の利用可能性
 発明に係る物または方法を何れかの産業分野において製造または使用できる場合、発明は産業上利用可能性を有する(産業財産法第36条)。

1-2-5.特許保護の例外
 以下のものは、特許を受けることができない(産業財産法第37条、第38条)。

(1) 発見、科学的理論および数学的方法
(2) 植物または動物の品種。植物または動物を生産するための生物学的方法。ただし、微生物学的方法は特許を受けることができる。
(3) 経済上、金融上、商業上の、制度、方法、原則、計画。精神的活動または知的活動をするための規則。ゲームをするための規則。
(4) 外科または治療による人体または動物体の処置方法。人体または動物体に対して行う診断方法。ただし、これらの方法において処置や診断に使用する製品は、特許を受けることができる。
(5) 既に使用されている物または要素の、新しい用途、形状の変更、寸法の変更、比率の変更、または、材質の変更。ただし、従来は解決策がなかった技術的問題を解決し、新規性および進歩性を有し、産業上利用可能である場合、特許を受けることができる。
(6) 自然界において見出される生命体の一部、自然界の生物学的過程、自然界に存在する生物学的材料または分離することのできる材料。これにはゲノムまたは生殖質が含まれ、ゲノムまたは生殖質は特許を受けることができない。一方、生物学的材料を使用する工程および生物学的材料を使用する工程から直接に得られた製品は、特許を受けることができる。
(7) 法律、公の秩序および国家の安全に反する発明、道徳もしくは公正な慣行、人もしくは動物の健康もしくは生命、または植物もしくは環境の保全に反する発明。

2.出願時の書類
2-1.特許出願に必要な書類(産業財産法第43条、産業財産規則第11条、第60条)

(1) 委任状(代理人にチリ工業所有権局への手続きを委任する場合)。委任状には、公証認証や領事認証は不要である。
(2) スペイン語の要約、明細書およびクレーム
(3) 図面(必要な場合)
(4) 優先権証明書(優先権を主張する場合)。優先権証明書の公証認証や領事認証は不要である。

 以上の必要書類が不足した状態でも特許出願を行うことができる。ただし、予備審査(方式審査に相当)により不足書類が明らかになった場合、出願人は、60日以内(延長不可)に不足書類の補充を行う必要がある。不足書類が補充されない場合、出願はなかったものとみなされる(産業財産法第45条)。

 チリ工業所有権局に対する手続のための委任状には、公証認証や領事認証は不要である(産業財産法第15条)。一方、裁判所に対する手続のための委任状には、領事認証が必要である。このため、外国企業などがチリ特許出願時に使用する際に代理人への委任状にチリ領事の認証を受けておけば、出願後に裁判所に対する手続きが必要になった場合、裁判所に対してこの委任状を使用できる。

 2021年の法改正により、仮出願制度が導入され、産業財産法第43条の提出書類の要件を満たさない場合は、仮出願をすることができることになった(産業財産法第40条)。仮出願をした者は、仮出願の日から12か月以内に特許出願をすることにより、仮出願の出願日の利益を享受することができる。仮出願には、発明を十分に明確かつ完全に説明するスペイン語または英語による文書を添付しなければならない。なお、特許権の存続期間は、仮出願の日から20年となる。

2-2.チリ工業所有権局を受理官庁とするPCT出願(国際段階)
 日系の現地企業以外、日本企業が使うことは基本的にないと思われるが、チリ工業所有権局を受理官庁とする国際特許出願(PCT出願)をする際には、出願書類としてスペイン語で作成した要約書、明細書、クレーム、図面(必要な場合)が必要である(産業財産法第115条)。

 チリ工業所有権局を受理官庁とする国際特許出願では、チリ工業所有権局、欧州特許庁、スペイン特許商標庁または米国特許商標庁を国際調査機関として選択可能である。国際調査機関として欧州特許庁または米国特許商標庁を選択する場合、要約書、明細書、クレーム、図面の英語訳を、PCT出願日から1か月以内に提出しなければならない。

2-3.PCT出願のチリへの国内移行
 PCT出願のチリへの国内移行期限は、優先日から30か月である(産業財産法第117条)。

 国際出願がスペイン語以外の言語で記載されている場合、チリへの国内移行に際してスペイン語翻訳文が必要である(産業財産法第118条)。具体的には、明細書、クレーム、図面のテキスト部分、要約書のスペイン語翻訳が必要である。

3.審査の流れ
 審査に際して、予備審査および実体審査が実施される(産業財産法第6条、45条)。

3-1.予備審査
 出願されると、予備審査が行われ、実務上、出願日から6~8か月で予備審査通知が発行される。出願人は、予備審査において指摘された方式要件の不備に対して、予備審査通知から60日以内に応答する必要がある(産業財産法第45条)。すべての方式要件が満たされると、出願は受理される。出願受理から60日以内に出願(出願番号、出願人、要約書)が官報に公告されるよう、出願人(若しくは代理人)自らが、チリ官報局に手配しなければならない(産業財産規則第14条)。チリ工業所有権局は、官報における公告まで出願を秘密に保てる。

3-2.出願の公告
 官報に出願が公告されると、出願は公衆の閲覧に供される。公告日から45営業日以内に、第三者は異議申立が可能である(産業財産法第5条)。異議申立がない場合、実体審査を進めるために審査官が指名される(産業財産法第6条)。

3-3.実体審査
 審査官は、技術水準、産業上の利用可能性、発明の新規性および進歩性について、実体審査を行い、審査報告書を発行する(産業財産法第7条)。発明に拒絶理由があった場合に出願人が審査報告書で指摘された拒絶理由に対して応答することができる期限は、審査報告書の発行から60日である。一方、拒絶理由がない場合に特許付与が決定されると、出願人は、特許付与の決定から60日以内に手数料を納付しなければならない(産業財産法第8条)。

3-4.分割出願
 出願人は、第一回の審査報告書が発行される前であれば、自発的に分割出願を行うことができる(産業財産規則第49条)。第一回の審査報告書が発行された後は、審査官による発明の単一性不備の指摘に対してのみ、分割出願を行うことができる(産業財産規則第40条)。

4.特許付与および保護
4-1.存続期間
 特許権の存続期間は、出願日から20年である(産業財産法第39条)。

4-2.追加の保護
(1) 特許付与に際して不当な行政上の遅延(例えば、チリ工業所有権局による審査手続の遅延)があり、かつ出願日から起算して5年以上または審査請求から3年以上にわたって審査が行われた場合、特許権者は特許権の追加の保護期間を請求することができる。追加の保護期間の請求期限は、特許付与後60日である(産業財産法第53条の1)。この請求期限は、2021年の法改正により、従来の6か月から短縮されたものである。

(2) 医薬品の承認手続において不当な行政上の遅延(例えば、チリ公衆衛生局による医薬品の承認手続の遅延)があった場合、特許権者は特許権の追加の保護期間を請求することができる。追加の保護期間の請求期限は、医薬品の承認日から60日である(産業財産法第53条の2)。この請求期限は、2021年の法改正により、従来の6か月から短縮されたものである。

 なお、特許出願または医薬品の承認手続に影響を及ぼす以下の事情は、不当な遅延とはみなされない(産業財産法第53条の3)。

(a) 異議申立または司法手続
(b) 審査に必要とされる国内もしくは国際機関からの報告書の受領に要した期間
(c) 出願人の行為または怠慢

4-3.特許表示
 特許に係る発明を実施している商品には、「Patente de Invención(発明特許)」または「P.I.」という記載、および、特許番号が付されなければならない(産業財産法第53条)。この要件を満たさなくても特許の有効性に影響を与えることはないが、この要件を満たしていない場合、特許侵害者を刑事訴追することができない。

4-4.特許権
 特許権者は、特許製品または方法を、製造、販売、販売の申出、輸入、またはその他の方法で商業的に利用する排他的権利を享受する(産業財産法第49条)。方法の特許にあっては、方法から直接得られた製品にも特許権による保護が及ぶ。

一方、医薬品の承認を取得する目的のためであれば、第三者は、発明特許の対象を輸入、輸出または製造することができる。ただし、特許権者の許可なく販売することはできない(産業財産法第49条)。

4-5.無効または取消手続
 利害関係人は、特許の登録日から5年以内に、特許の無効を請求することができる。(産業財産法第18条の2G、50条)。

チリにおける商標制度の概要

1.保護可能な商標の種類
 写実的に表現可能であり、市場において商品、役務を識別できる下記の標識は、商標として登録可能である(産業財産法第19条)。
(1) 人名(その人物の同意、または亡くなっている場合はその人物の相続人の同意が必要)
(2) 文字(単一の文字だけの場合、文字と図案を組み合わせた出願が推奨される)
(3) 数字(単一の数字だけの場合、数字と図案を組み合わせた出願が推奨される)
(4) 絵、図柄、シンボル、色の組合せなどの図案的要素
(5) 音
(6) 匂い(匂い商標)
(7) 立体的形状
(8) 比喩的な要素を含む単語
(9) 上記の標識の任意の組合わせ
(10) 販売促進または広告スローガン(登録商標を伴い、当該登録商標と同一の権利範囲で出願することを条件とする)

 なお、法律では明示的に規定されていないがチリ産業財産庁(Instituto Nacional de Propiedad Industrial;INAPI)のホームページには、マルチメディア、ホログラム、動き、位置、触覚(テクスチャ)についても、商品または役務について十分に識別力のある範囲で、商標登録の対象となり得ることが言及されている(INAPIホームページ「商標 種類に応じて」)。

 また、2021年の改正によって団体商標と認証商標(証明商標)が明確化され、規定が制定された。団体商標は、第三者の商品または役務に関して、団体の構成員の商品または役務を市場で区別できる任意の記号または記号の組み合わせでなければならない(産業財産法第23条の2A)。また、認証商標は、市場で第三者の商品または役務を区別できる記号または記号の組み合わせが含まれており、それらが共通の要件および特性を満たしていることを保証するものでなければならない(産業財産法第23条の2B)。

2.商標出願の提出
 自然人か法人か、チリ人か外国人かを問わず、あらゆる者は、チリ産業財産庁(Instituto Nacional de Propiedad Industrial;INAPI)に商標出願を提出することができる(産業財産法第2条)。ただし、外国の自然人または法人は、チリにおける代理人を指名しなければならない。

 商標の登録出願は次の事項を含まなければならない(産業財産法第21条、産業財産規則第9条、第10条)。
(a) 出願人およびその代理人(いる場合)の識別情報(名前、住所、納税者番号、電子メール)
(b) 商標の詳細。図形商標または文字と図案の組み合わせ商標の場合は、当該商標のコピーを提出する必要がある
(c) 商品または役務の説明
(d) 公定出願料

 優先権を主張する場合は、上記要件に加えて、下記が必要となる(産業財産規則第60条)。
(a) 優先権の番号、日付および国の詳細
(b) 優先権証明書の原本(INAPIへの出願日から90日以内に提出されない場合、優先権は考慮されない)

 商標が外国で出願された場合、出願人はチリに出願を提出するための優先期間として、その外国出願日から6か月を与えられる(産業財産法第20条の2)。
 代理人委任状は,私署証書によって付与される(産業財産法第15条)。

 商標は特定の商品または役務に関して、かかる商品または役務が属する国際分類の1つまたはそれ以上の分類(区分)を指定して、出願および登録することができる(産業財産法第23条)。INAPIは現在、ニース分類第11版に対応する分類を使用している。個別出願またはマルチクラス(多区分指定)出願が認められているが、料金納付の目的上、マルチクラス出願または登録は、そこに含まれる商品または役務の数にかかわらず、分類(区分)ごとの個別出願または登録として扱われる(INAPIホームページ「商標 国内手数料」)。
 マルチクラス出願を2つまたはそれ以上の個別出願に分割することもでき、分割した場合のそれらの出願日は原出願と同じとなる(産業財産法第21条)。マルチクラス出願の分割は、料金の納付を条件とし、不服申立手続の期間中を含み、登録前のあらゆる時点において請求することができる。また、登録後の分割も認められている(産業財産法第21条)。

 また、本法およびそれに基づく規則に規定する日数による期間は、変更できない期間とし、就業日をいうものとする。これらの目的上、土曜日は就業日とはみなされない(産業財産法第11条)。

3.方式審査
 商標出願書が提出されると、INAPIは産業財産法により要求されるすべての方式要件が満たされているかを審査する(産業財産法第22条、産業財産規則第24条)。この方式審査は、出願の提出から2から3か月以内に行われる。

 INAPIが出願における誤記または記載漏れを見つけた場合、出願人は登録官の通知日から30日以内に当該出願について訂正または説明するよう求められる。訂正が行われない、または主張が却下された場合、その出願は取下げられたものとみなされる(産業財産法第22条)。

4.実体審査前の公告
 方式審査が済むと、官報において公告される(産業財産法第4条)。公告費用を公告決定日より20日の法定期限内に納付しなければならない(産業財産規則第14条)。未納の場合は、その出願は放棄されたものとみなされる。
 INAPIにより重大ではないとみなされる公告記載上の誤記は、その訂正を命じる決定により訂正することができる(産業財産法第4条)。重大な誤りがある場合、長官は,新たな公告を命じるものとし,これは新規公告を命じる決定の日から10日以内に新規に公告されなければならない。

5.異議申立および実体審査
5-1.異議申立

 あらゆる利害関係人は、官報における公告日から30日の期限内に、商標出願に対する異議申立書を提出することができる(産業財産法第5条)。異議申立期間が満了すると、INAPIは出願の実体審査を行い、拒絶理由を発行するかどうかを判断する(産業財産法第22条、産業財産規則第24条)。

5-2.出願人の応答書
 異議申立および/または拒絶理由が正式に出願人に通知された後、その異議申立および/または拒絶理由への応答書を提出する期間として、通知日から30日が与えられる(産業財産法第9条)。

5-3.証拠提出期間
 応答書が提出された後、証拠を提出するための期間として応答書提出期限の満了日より、さらに30日が与えられる(産業財産法第10条)。この期間は、INAPIが認める場合には(通常、いずれかの当事者が外国人である場合に認められる)、30日間の延長ができる。

6.INAPI長官の決定
 商標出願書が提出され、方式上の訂正をする必要がなく、または訂正が行われた、もしくは異議申立または拒絶理由がなかった場合、または応答書が提出され、要求された手続上の他の措置が完了した場合、INAPI長官は直ちに、出願を許可または拒絶する最終決定を下す(産業財産法第22条)。

6-1.公定登録料
 登録を許可する最終決定の日付から60日以内に、所定の料金を納付しなければならない(産業財産法第18条の2E)。納付されない場合、その出願は取下げられたものとみなされる。

6-2.不服申立手続
 INAPIにより下された決定を不服とする場合、産業財産権裁判所(the Industrial Property Court; IPC)に対して不服申立を提起できる(産業財産法第17条の2B)。不服申立は、決定が正式に送達された日から15日以内に提起しなければならない。

7.上訴
 IPCの判決に対しては、最高裁判所へ上訴することができる(産業財産法第17条の2B)。上訴は、判決が正式に送達された日から15日以内に提起しなければならない。ただし、この手続に関する15日の期限は、民事訴訟規則にしたがって計算されるため、産業財産法で就業日と規定されてない土曜日も含まれ、その他の休日も含まれる。

8.更新
 商標登録は、登録日から10年間有効である(産業財産法第24条)。更新費用の納付を前提として、商標登録の所有者は、その有効期間中に、または当該期間の満了後6か月以内に、同じく10年間にわたる登録権利の更新を申請することができる。所有者が法定期間内に更新の申請をしなかった場合は,当該商標は放棄されたものとみなされ,権利は失効したものとみなされる(産業財産規則第30条)。

9.登録取消の手続
 利害関係人は、産業財産権登録の無効による取消しを請求することができ(産業財産法第18条の2G)、産業財産法第20条にいう禁止事由の一に違反してなされたとき、商標の登録は無効とされる(産業財産法第26条)。商標の登録を取消すことについての請求は、登録日から起算して5年経過した後は禁止される(産業財産法第27条)。ただし、取消の請求は、不正に取得された登録に関しては、当該期間を経過した後でも禁止されない。

 2021年の改正によって、商標の不使用と識別力の喪失が取消しの新たな理由として追加された。登録日から5年が経過しても、所有者または所有者の同意を得た第三者によって、商標が国内で現実的かつ効果的に使用されていない場合は、商標の不使用とされる(産業財産法第27条の2A(a))。商標の使用の立証責任は、当該商標の所有者が負う(産業財産法第27条の2B)また、商標が登録されている商品または役務の市場の取引において、普通名称に変化した場合は識別力が喪失したとされる(産業財産法第27条の2A(b))。

 取消請求の通知は、INAPIより該当する所有者に送達され、取消請求に応答するための期間として通知日より30日が与えられる(産業財産法第18条の2I)。上記応答期間の満了後、INAPIは、証拠を提出するための期間として30日を与え、長官が適正に認定する場合は更に30日間延長することができる。(産業財産法第18条の2L)。INAPIはその後で決定を下す。この決定に対して、IPCに対する不服申立手続、さらに最高裁判所への上告ができる(産業財産法第17条の2)。

 取消された登録は、その取消決定日(発効日)から無効とみなされる(産業財産法第18条の2N)。

チリの模倣被害に対する措置および対策

 「模倣被害に対する主要各国による措置及び対策に関する実態調査報告書」(平成29年3月、日本国際知的財産保護協会)第3章8、第2章

 

(目次)

第3章 各国の模倣被害に対する措置及び対策

 8 チリ P.161

  8.1 エンフォースメントに係る制度の内容及び運用状況 P.161

   8.1.1 水際措置の内容及び実施状況 P.161

   8.1.2 刑事措置の内容及び実施状況 P.171

   8.1.3 民事措置の内容及び実施状況 P.174

 

第2章 概括表 P.7

チリにおける意匠制度の概要

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チリでの特許審査迅速化および早期特許付与のための実務上のポイント

チリにおける特許ライセンスおよび技術移転に関する留意点

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チリにおける商標権に基づく権利行使の留意点

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チリにおける営業秘密保護に関する法規概要

【詳細及び留意点】

 チリにおける営業秘密の保護は、チリ産業財産法第Ⅷ編および第Ⅹ編に規定されている。 産業財産法第86条は、「工業製品もしくは手順に関する知識であって、その秘密性が当該知識の所有者に向上、進歩もしくは競争上の優位を提供するものは、営業秘密とみなされる」と規定している。

 営業秘密は、必ずしも独創的な発見や努力の産物である必要はなく、所有者の商業活動における優位性が情報によってもたらされている限り、どのような内容、性質のものであってもよい。情報が秘密であるという事実ゆえに、営業秘密が一定の経済的価値を有することはいうまでもない。営業秘密の価値とは、常に市場における他の行為者との比較に依存するものである。

 なお、ノウハウとは、製品の生産もしくは役務の提供に関連して特定の者が有する知識もしくは情報であって、容易にアクセスしえず、かつ、その者に市場における利益を与えるものをいう。ノウハウは秘密である場合も、そうでない場合もあり、営業秘密に該当する場合も、しない場合もある。ノウハウについて、特許を取得することが可能である場合も不可能な場合もある。

 

  1. 営業秘密の要件

 特定の情報が営業秘密とみなされるためには、以下の一定の要件を満たしていなければならない。

 (1)秘密であること。当該情報は、第三者に全く知られていないものでなければならない。当該情報を知る者が、守秘義務または情報保護義務を伴う関係を企業と結んでいる場合(その者が従業員、サプライヤー、請負業者、顧客である場合や、ライセンス契約の中に守秘義務条項がある場合等)も秘密性は維持される。

 (2)競争上の優位に関係していること。当該情報は、その所有者にとって、それを知らない競業者をしのぐ商業上または財務上の優位をもたらすものでなければならない。工業上または商業上使用される情報のみが営業秘密とみなされる。

 (3)秘密性を保護するための手段が講じられていること。情報は、文書、電子媒体、磁気媒体、光ディスク、マイクロフィルム、フィルムその他これらと同様の媒体の中に安全に保管されていなければならない。

 

  1. 営業秘密の長所

 (1)秘密性が維持されている限り、保護期間が無期限となる。

 (2)属地主義の適用がなく、世界全域において保護されうる。

 (3)他の手段による保護に比べて維持コストが安い。

 

  1. 営業秘密の短所

 (1)保護要件を満たすためには、情報を保護するための手段を講じ、自社の従業員の間で秘密性の認識を徹底し、秘密保持に関する社内規定の順守を常に監視しなければならない。

 (2)産業スパイ、情報漏洩を通じて秘密が失われる可能性がある。

 (3)他者が同じ発明(独自開発)をすることを妨げられない。

 

  1. 権利行使

 産業財産法第87条は以下のように規定している。

「営業秘密の不法な取得、所有者からの許可を受けないでなされる開示、および適法に入手したものではあるが守秘義務を伴う営業秘密の開示または使用は、営業秘密の侵害を構成する。ただし、自己または第三者の利益のために使用し、その所有者に損害を与える意図を以て侵害された場合に限る」

 さらに、第88条は以下のように規定し、営業秘密の所有者が、営業秘密の不正取得、不正使用に対する刑事訴追の権利を保持しつつも、他の知的財産と同じように民事上の救済を得る権利を有することを認めている。

「対応する刑事責任を害することなく、工業所有権の順守に関して本法第Ⅹ編に定める規則は、営業秘密の侵害にも適用されるものとする」

 

  1. 保護および登録

 営業秘密の保護を受けるために登録や形式的要件などは存在しないが、営業秘密は常に有形の媒体(物理的媒体か電子媒体かを問わない)に収録しておくことが望ましい。営業秘密の存在を証明する有形の証拠を確保するためである。

チリにおいては、営業秘密を著作物(言語著作物)の形で知的財産権庁に預託することも可能である。知的財産庁は著作権により保護される著作物を預託される機関となる。

 自社の営業秘密を保護するために企業が採りうる重要なことは、やはり企業自身の管理である。そのためには、次のような措置が必要となる。

 (1)火災、地震その他の天災から守られた安全な場所に情報を保管する。

 (2)情報を会社全体に流布しない。限定された社内の関係者だけが守秘義務の下で情報にアクセスできるようにする。

 (3)情報を電子媒体に保存する場合、バックアップと暗号化を行わなければならない。

 

7.提言

 企業にとって有益な「ノウハウ」となる重要な情報(たとえば、企業戦略、マーケティング手法、ビジネスモデル、原価および価格に関する情報)が特許によって保護できない場合には、その情報を営業秘密によって保護することが望ましい。

 また、さまざまな商取引において、自社の技術情報、商業情報、企業戦略情報が相手の企業等に提供される場合、秘密保持契約を締結することが非常に重要である。かかる契約の締結は、自社の革新的な知識が第三者(顧客、ライセンシー、請負業者、開発業者等)に提供される前に行われなければならない。

チリにおける特許法の概要

【詳細】

1.チリにおける特許法(チリ産業財産法)の概要

1-1.発明者および出願人

発明者、および、発明者からの譲受人(自然人であるか法人であるかを問わない)のいずれもが、特許出願の出願人となることができる(チリ産業財産法第2条)。

特許出願に際して、発明者の氏名の記載が必要である(チリ産業財産規則第11条)。

外国人およびチリに居住していないチリ国民は、特許出願に際して、チリに居住する代理人を指定しなければならない。外国人に与えられる保護は、チリ国民に与えられる保護と同一である(チリ産業財産法第2条)。

1-2.特許を受けることができる発明

発明とは、産業の分野において生じる技術的課題の解決手段をいう(チリ産業財産法第31条)。発明の対象は、製品および方法のいずれでもよい(チリ産業財産法第31条)。

発明は、新規性および進歩性を有し、産業上利用可能である場合に、特許を受けることができる(チリ産業財産法第32条)。

1-2-1.新規性

チリにおける特許出願日前に世界のいずれかの国で公衆に開示された先行技術がない場合、その発明は新規性を有する。先行技術には、出願日時点において公開されていない先行のチリ特許出願が含まれる(チリ産業財産法第33条)。

1-2-2.新規性喪失の例外

出願前の12ヶ月以内に行われた公衆への開示が、出願人自身に開示されたものである場合、出願人の許可に基づき開示されたものである場合、または、出願人自身による開示に基づいて更に開示されたものである場合、発明の新規性を判断する際にその開示は考慮されない(チリ産業財産法第42条)。

1-2-3.進歩性

当業者にとって発明が自明でない場合、その発明は進歩性を有する(チリ産業財産法第35条)。

1-2-4.産業上の利用可能性

発明に係る物または方法を何れかの産業分野において製造または使用できる場合、発明は産業上利用可能性を有する(チリ産業財産法第36条)。

1-2-5.特許保護の例外

以下のものは、特許を受けることができない(チリ産業財産法第37条)。

(1)発見、科学的理論および数学的方法

(2)植物または動物の品種。植物または動物を生産するための生物学的方法。ただし、微生物学的方法は特許を受けることができる。

(3)経済上、金融上、商業上の、制度、方法、原則、計画。精神的活動または知的活動をするための規則。ゲームをするための規則。

(4)外科または治療による人体または動物体の処置方法。人体または動物体に対して行う診断方法。ただし、これらの方法において処置や診断に使用する製品は、特許を受けることができる。

(5)既に使用されている物または要素の、新しい用途、形状の変更、寸法の変更、比率の変更、または、材質の変更。ただし、従来は解決策がなかった技術的問題を解決し、新規性および進歩性を有し、産業上利用可能でる場合、特許を受けることができる。

(6)自然界において見出される生命体の一部、自然界の生物学的過程、自然界に存在する生物学的材料または分離することのできる材料。これにはゲノムまたは生殖質が含まれ、ゲノムまたは生殖質は特許を受けることができない。一方、生物学的材料を使用する工程および生物学的材料を使用する工程から直接に得られた製品は、特許を受けることができる。

(7)法律、公の秩序および国家の安全に反する発明、道徳もしくは公正な慣行、人もしくは動物の健康もしくは生命、または植物もしくは環境の保全に反する発明。

2.出願時の書類

2-1.特許出願に必要な書類(チリ産業財産法第43条、チリ産業財産規則第11条)

(1)委任状(代理人にチリ工業所有権局への手続きを委任する場合)。委任状には、公証認証や領事認証は不要である。

(2)スペイン語の要約、明細書およびクレーム

(3)図面(必要な場合)

(4)優先権証明書(優先権を主張する場合)。優先権証明書の公証認証や領事認証は不要である。

一以上の必要書類が不足した状態でも特許出願を行うことができる。ただし、予備審査により不足書類が明らかになった場合、出願人は、60日以内(延長不可)に不足書類の補充を行う必要がある。不足書類が補充されない場合、出願はなかったものとみなされる(チリ産業財産法第45条)。

チリ工業所有権局に対する手続のための委任状には、公証認証や領事認証は不要である。一方、裁判所に対する手続のための委任状には、領事認証が必要である。このため、外国企業などがチリ特許出願時に使用する際に代理人への委任状にチリ領事の認証を受けておけば、出願後に裁判所に対する手続きが必要になった場合、裁判所に対してこの委任状を使用できる。

2-2. チリ工業所有権局を受理官庁とするPCT出願(国際段階)

日系の現地企業以外、日本企業が使うことは基本的にないと思われるが、もしチリ工業所有権局を受理官庁とする国際特許出願(PCT出願)をする際には、出願書類としてスペイン語で作成した要約書、明細書、クレーム、図面(必要な場合)が必要である。

チリ工業所有権局を受理官庁とする国際特許出願では、チリ工業所有権局、欧州特許庁、スペイン特許商標庁または米国特許商標庁を国際調査機関として選択可能である。国際調査機関として欧州特許庁または米国特許商標庁を選択する場合、要約書、明細書、クレーム、図面の英語訳を、PCT出願日から1ヶ月以内に提出しなければならない。

2-3. PCT出願のチリへの国内移行

PCT出願のチリへの国内移行期限は、優先日から30ヶ月である。

国際出願がスペイン語以外の言語で記載されている場合、チリへの国内移行に際してスペイン語翻訳文が必要である。具体的には、明細書、クレーム、図面のテキスト部分、要約書のスペイン語翻訳が必要である。

3.審査の流れ

審査に際して、方式審査および実体審査が実施される。

3-1.方式審査

出願されると、方式審査(予備審査)が行われ、実務上、出願日から6~8ヶ月で予備審査通知が発行される。出願人は、予備審査において指摘された方式要件の不備に対して、予備審査通知から60日以内に応答する必要がある(チリ産業財産法第45条)。すべての方式要件が満たされると、出願は受理される。出願受理から60日以内に出願(出願番号、出願人、要約書)が官報に公告されるよう、出願人(若しくは代理人)自らが、チリ官報局に手配しなければならない(チリ産業財産規則第14条)。チリ工業所有権局は、官報における公告まで出願を秘密に保てる。

3-2.出願の公告

官報に出願が公告されると、出願は公衆の閲覧に供される。公告日から45営業日以内に、第三者は異議申立が可能である(チリ産業財産法第5条)。異議申立がない場合、実体審査を進めるために審査官が指名される。

3-3.実体審査

審査官は、技術水準、産業上の利用可能性、発明の新規性および進歩性について、実体審査を行い、審査報告書を発行する。発明に拒絶理由があった場合に出願人が審査報告書で指摘された拒絶理由に対して応答することができる期限は、審査報告書の発行から60日である。一方、拒絶理由がない場合に特許付与が決定されると、出願人は、特許付与の決定から60日以内に手数料を納付しなければならない。

3-4.分割出願

出願人は、第一回の審査報告書が発行される前であれば、自発的に分割出願を行うことができる(チリ産業財産規則第49条)。第一回の審査報告書が発行された後は、審査官による発明の単一性不備の指摘に対してのみ、分割出願を行うことができる(チリ産業財産規則第40条)。

4. 特許付与および保護

4-1.存続期間

特許権の存続期間は、出願日から20年である。

4-2.追加の保護

(1)特許付与に際して不当な行政上の遅延(例えば、チリ工業所有権局による審査手続の遅延)があり、かつ出願日から起算して5年以上または審査請求から3年以上にわたって審査が行われた場合、特許権者は特許権の追加の保護期間を請求することができる。追加の保護期間の請求期限は、特許付与後6ヶ月である(チリ産業財産法第53条の21)。

(2)医薬品の承認手続において不当な行政上の遅延が(例えば、チリ公衆衛生局による医薬品の承認手続の遅延)あった場合、特許権者は特許権の追加の保護期間を請求することができる。追加の保護期間の請求期限は、医薬品の承認日から6ヶ月である(チリ産業財産法第53条の22)。

なお、特許出願または医薬品の承認手続に影響を及ぼす以下の事情は、不当な遅延とはみなされない(チリ産業財産法第53条の23)。

(1)異議申立または司法手続

(2)審査に必要とされる国内もしくは国際機関からの報告書の受領に要した期間

(3)出願人の行為または怠慢。

4-3.特許表示

特許に係る発明を実施している商品には、「Patente de Invención(発明特許)」または「P.I.」という記載、および、特許番号が付されなければならない(チリ産業財産法第53条)。この要件を満たさなくても特許の有効性に影響を与えることはないが、この要件を満たしていない場合、特許侵害者を刑事訴追することができない。

4-4.特許権

特許権者は、特許製品または方法を、製造、販売、販売の申出、輸入、またはその他の方法で商業的に利用する排他的権利を享受する(チリ産業財産法第49条)。方法の特許にあっては、方法から直接得られた製品にも特許権による保護が及ぶ。

一方、医薬品の承認を取得する目的のためであれば、第三者は、発明特許の対象を輸入、輸出または製造することができる。ただし、特許権者の許可なく販売することはできない(チリ産業財産法第49条)。

4-5.無効または取消手続

利害関係人は、特許の登録日から5年以内に、特許の取消を請求することができる。(チリ産業財産法第18条の2G、50条)。

チリにおける商標制度の概要

【詳細】

チリにおける商標に関する規定は、1991年1月25日に施行された産業財産に関する法律第19,039号(以下、「IP法」)に定められている。

 

1.保護可能な標章の種類

写実的に表現可能であり、市場において商品、役務または産業または商業施設を識別できる下記の標識は、商標として登録可能である。

(1)人名(その人物の同意、または亡くなっている場合はその人物の相続人の同意が必要)

(2)文字(単一の文字だけの場合、文字と図案を組み合わせた出願が推奨される)

(3)数字(単一の数字だけの場合、数字と図案を組み合わせた出願が推奨される)

(4)絵、図柄、シンボル、色の組合せなどの図案的要素

(5)音

(6)上記の標識のあらゆる組合せ

(7)匂い(匂い商標)

(8)広告スローガン(登録商標を伴い、当該登録商標と同一の権利範囲で出願することを条件とする)

 

ホログラム、動き、立体的形状、商品またはパッケージの形状または色彩、および色彩自体に関する出願は、認められていない。

 

2.商標出願の提出

自然人か法人か、チリ人か外国人かを問わず、あらゆる者は、チリ工業所有権庁(Instituto Nacional de Propiedad Industrial;INAPI)に商標出願を提出することができる。ただし、外国の自然人または法人は、チリにおける代理人を指名しなければならない。

 

出願要件:

(a)出願人およびその代理人(いる場合)の識別情報(名前、住所、納税者番号、電子メール)

(b)商標の詳細。図形商標または文字と図案の組み合わせ商標の場合は、当該商標のコピーを提出する必要がある

(c)商品または役務の説明

(d)公定出願料

 

優先権を主張する場合は、上記要件に加えて、下記が必要となる。

(a)優先権の番号、日付および国の詳細

(b)優先権証明書の原本(INAPIへの出願日から90日以内に提出されない場合、優先権は考慮されない)

 

商標が外国で出願された場合、出願人はチリに出願を提出するための優先期間として、その外国出願日から6か月を与えられる。

代理人への委任状の認証は必須ではない。

商標は特定の商品または役務に関して、かかる商品または役務が属する国際分類の1つまたはそれ以上の分類(区分)を指定して、出願および登録することができる。INAPIは現在、ニース国際分類の第10版に対応する分類を使用している。

個別出願またはマルチクラス(多区分指定)出願が認められているが、料金納付の目的上、マルチクラス出願または登録は、そこに含まれる商品またはサービスの数にかかわらず、分類(区分)ごとの個別出願または登録として扱われる。

また、マルチクラス出願を2つまたはそれ以上の個別出願に分割することもでき、分割した場合のそれらの出願日は原出願と同じとなる。マルチクラス出願の分割は、料金の納付を条件とし、不服申立手続の期間中を含み、登録前のあらゆる時点において請求することができる。

また、登録後の分割も認められている。

産業財産法の解釈上、法定期限は就業日のみである(土曜日、日曜日、祝祭日を除く)。

 

3.方式審査

出願書が提出されると、INAPIはIP法により要求されるすべての方式要件が満たされていることを審査する。この方式審査は、出願の提出から2‐3か月以内に行われる。

INAPIが出願における誤記または記載漏れを見つけた場合、出願人は登録官の通知日から30日以内に当該出願について訂正または説明するよう求められる。

訂正が行われない、または主張が却下された場合、その出願は放棄されたものとみなされる。

 

4.公報での公告

方式審査が済むと、官報において公告される。公告費用を公告決定日より20日の法定期限内に納付しなければならない。未納の場合は、その出願は放棄されたものとしてみなされる。

INAPIにより重大ではないとみなされる公告記載上の誤記は、その訂正を命じる決定により訂正することができる。重大な誤りがある場合、長官は,新たな公告を命じるものとし,これは新規公告を命じる決定の日から10日以内に新規に公告されなければならない。

公告後30日以内に、第三者は異議申立を提出することができる。

 

5.異議申立および拒絶

あらゆる利害関係者は、官報における公告日から30日の期限内に、商標出願に対する異議申立を提出することができる。

異議申立期間が満了すると、INAPIは出願の実体審査を行い、拒絶理由を発行するかどうかを判断する。

 

6.出願人の応答書

異議申立および、または拒絶理由が正式に出願人に通知された後、その異議申立および、または拒絶理由への応答書を提出する期間として、通知日から30日が与えられる。

 

7.証拠期間

応答書が提出された後、証拠を提出するための期間として応答書提出期限の満了日より、さらに30日が与えられる。この期間は、INAPIが認める場合には(通常、いずれかの当事者が外国人である場合に認められる)、30日間の延長ができる。

 

8.INAPI長官の決定

願書が提出され、方式上の訂正をする必要がなく、または訂正が行われた、もしくは異議申立または拒絶理由がなかった場合、または応答書が提出され、要求された手続上の他の措置が完了した場合、INAPI長官は直ちに、出願を許可または拒絶する最終決定を下す。

 

9.公定登録料

登録を許可する最終決定の日付から60日以内に、所定の料金を納付しなければならない。そうしない場合、その出願は放棄されたとみなされる。

 

10.不服申立手続

INAPIにより下された決定を不服とする場合、工業所有権裁判所(the Industrial Property Court; IPC)に対して不服申立を提起できる。不服申立は、決定が正式に送達された日から15日以内に提起しなければならない。

 

11.上訴

IPCの判決に対しては、最高裁判所への上告ができる。

上訴は、判決が正式に送達された日から15日以内に提起しなければならない。ただし、この手続に関する15日の期限は、民事訴訟規則にしたがって計算されるため、IP法で就業日と規定されてない土曜日も含まれ、その他の休日も含まれる。

 

12.更新

商標登録は、登録日から10年間有効である。

更新費用の納付を前提として、商標登録の所有者は、その有効期間中に、または当該期間の満了後30日以内に、同じく10年間にわたる登録権利の更新を申請することができる。

 

13.商標の使用

商標登録出願をする上で、さらに商標権を維持する上で、商標の使用は義務では無い。

このため、商標権者が商業において商標を実際に使用していなくても、商標登録を取得することができ、さらに登録者は適時に更新を申請するだけで、商標の使用を証明することなく商標を更新することができる。

 

14.取消

商標登録の取消は、あらゆる利害関係者が請求することができ、その理由は、識別性の欠如など、異議申立の理由と同じである。

取消請求の通知は、INAPIより該当する所有者に送達され、取消請求に応答するための期間として通知日より30日が与えられる。

上記応答期間の満了後、INAPIは今度は証拠を提出するための期間として30日を与え、通知日より証拠提出期間は60日ある。INAPIはその後で決定を下す。この決定に対して、IPCに対する不服申立手続、さらに最高裁判所への上告ができる。

取り消された登録は、その取り消し決定日から無効とみなされる。