ブラジルにおける商標の調べ方―ブラジル産業財産庁(INPI)の調査サイト
1. ブラジル産業財産庁のウェブサイト
ブラジル産業財産庁(Instituto Nacional da Propriedade Industrial、以下「INPI」という。)ウェブサイト(https://www.gov.br/inpi/pt-br)へアクセスする。なお、同サイト(図1)の画面右側にある「ES」または「EN」をクリックすると、スペイン語または英語の表示に切り替わる。以下、ポルトガル語版のウェブサイトを元に説明する。
図1のトップページの「MARCAS(商標)」をクリックすると、図2の画面が表示される。
表示される図2の画面「Marcas」から「BUSCA DE PROCESSOS/Base de dados de marcas(プロセス検索/商標データベース)」をクリックすると、図3のログイン画面が表示される。
既にログインIDを作成済の場合は、「Login(ログインID)」、「Senha(パスワード)」を入力する。ログインIDを作成していない場合は、空欄のまま「Continuar(続行する)」をクリックすることで利用できる。本稿では、ログインIDを作成しないで検索する方法を説明する。
なお、ログインIDの作成・システムへの登録方法は、本データバンク内の別の関連記事「ブラジルの特許・実用新案の登録証その他関連書類の入手方法(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/39432/)」を参照されたい。
「Continuar(続行する)」をクリックすると、図4のINPIデータベースの選択画面が表示されるので、「Marca(商標)」のアイコンをクリックする。
「Marca(商標)」のアイコンをクリックすると、図5の「Base Marcas(商標データベース調査)」の「Pesquisa Básica(基本検索)」のページに移行する。
2. 商標の検索
4種類の検索方法が提供されており、デフォルトで「Pesquisa Básica(基本検索)」が表示される。この他に「Marca(商標)」、「Titular(所有者)」、「Cód. Figura(図形分類)」による検索が可能である。
2-1.「Pesquisa Básica(基本検索)」(番号検索)
図5は、「Pesquisa Básica(基本検索)」の画面である。検索項目を上から説明する。
Nº do Processo – 出願番号
Nº Guia de Recolhimento da União – GRU(ブラジル納税者番号)、
Nº do Protocolo(プロトコル番号、不服申立等の請願番号)
Nº da Inscrição Internacional(国際登録番号)
なお、入力欄の右側の「?」をマウスオーバーすると、簡単な入力例の説明が表示される。
検索条件を入力し、下方左側の「pesquisar(検索する)」をクリックして検索する。また、その右横にある「limpar(消去する)」をクリックすると、入力した内容を消去することができる。 例えば、「Nº do Processo(出願番号)」の右の入力欄に出願番号「904155196」を入力し、検索した結果を図6に示す。
表示される情報は、「Número(出願番号)」、「Prioridade(優先日、出願日)」、「標章の形態(記号表示)」、「Marca(商標)」、「出願の状況(記号表示)」、「Situação(状況)」、「Titular(所有者)」、「Classe(分類)」である。
・「標章の形態」としては、以下の4種類がある。
「N」:Apresentação da Marca – Nominativa、文字標章
「F」:Apresentação da Marca – Figurativa、図形標章
「M」:Apresentação da Marca – Mista、結合標章
「T」:Apresentação da Marca – Tridimensional、立体標章
・「出願の状況(記号表示)」としては、以下の3種類がある。
「✓」:Situação do Processo – Aguardando decisão administrativa、審査中
「R」:Situação do Processo – Registro、登録
「×」:Situação do Processo – Arquivado、消滅
ここで、「Número(出願番号)」の数字(904155196)をクリックすると、図7、図8に示す詳細が表示される。
本件では、出願が拒絶され、審判請求でも拒絶となり、控訴審で却下となった履歴が表示されている。
2-2.「Marca(商標)」による検索
図5の画面で、上部の選択肢から「Marca(商標)」をクリックすると、図9に示す「商標」「ニース分類」検索画面が表示される。
この画面で、「Tipo de Pesquisa(検索のタイプ)」には、「Exata(完全一致)」と「Radical(部分一致)」の選択肢がある。
「Marca(商標)」の入力欄では、3文字以上の入力が必要であり、感嘆符(!)などの特殊文字は考慮されない。
「Classificação de Nice – NCL(ニース分類番号)」の入力欄を使用すると、ニース分類での検索が可能である。例えば、1類の場合「01」と入力する。
「Nº de Processos por Página(ページ当たりの表示数)」では、1ページ当たりの検索結果表示件数を20件から100件の間で選択できる。
検索条件を入力し、「pesquisar(検索する)」をクリックして検索する。また、右横の「limpar(消去する)」をクリックすると検索条件が消去される。
各入力欄の右側の「?」にマウスオーバーすると、入力についての解説が表示される。
例として、「Tipo de Pesquisa(検索のタイプ)」に「Exata(完全一致)」を選択し、「Marca(商標)」の入力欄に「Samson」と入力したときの検索結果を図10に示す。
検索結果(図10)の「Número(出願番号)」の数字をクリックすると、各出願の詳細が表示される。
2-3.「Titular(所有者)」による検索
図5の画面で、上部の選択肢から「Titular(所有者)」をクリックすると、図11に示す「Titular(所有者)」検索画面が表示される。
「CNPJ/CPF(法人税務登録番号/個人納税者番号)」の入力欄に、法人または個人の納税者番号を入力して検索できる。
「Nome(名称)」の入力欄に、法人名または個人名を入力して検索できる。この欄の入力には、ブーリアン検索(AND、OR、NOT等の演算子を用いた検索)が可能であり、また「*」を用いたワイルドカードも利用できる。
検索条件を入力し、「pesquisar(検索する)」をクリックすると検索が実行される。また、右横の「limpar(消去する)」をクリックすると検索条件が消去される。
各入力欄の右側の「?」にマウスオーバーすると、入力についての解説が表示される。
2-4.「Cód. Figura(図形分類)」による検索
図5の画面で、上部の選択肢から「Cód. Figura(図形分類)」をクリックすると、図12に示す「Cód. Figura(図形分類)」検索画面が表示される。
「Classificação de Viena – CFE(ウィーン分類)」の入力欄にウィーン分類番号を入力して検索できる。
例えば、NCLを入力せず、CFEの欄に「3.13.7」「4.5.13」「27.5.25」の分類番号をそれぞれ入力すると図6と同じ画面が出力される。
このように、CFE欄への入力は、大分類、中分類および正小分類を入力する。ただし、入力する際には、「03.13.07」で入力すると、検索結果が出力されないので、「3.13.7」とし入力することにご注意いただきたい。
「Classificação de Nice – NCL(ニース分類)」の入力欄にニース分類番号を入力して検索する。ウィーン分類検索との併用により、検索結果の精度と検索速度を向上させることができる。この画面では、ニース分類番号単独での検索はできない。CFEとともにNCLを入力する際には、例えば、1類の場合「01」と入力する。
なお、「Classificação de Viena – CFE(ウィーン分類)」の入力欄の右の「«Classificação de Viena»」のアイコンは、記事作成日時点で、動作しない。
検索条件を入力し、「pesquisar(検索する)」をクリックすると検索が実行される。また、右横の「limpar(消去する)」をクリックすると検索条件が消去される。
各入力欄の右側の「?」にマウスオーバーすると、入力についての解説が表示される。
2-5.「Finalizar Sessão(セッションの終了)」
図5の画面で、5番目の選択肢「Finalizar Sessão(セッションの終了)」をクリックすると、図13に示す検索終了の確認画面が表示され、「SIM(はい)」をクリックすると図3のログイン画面に戻る。
ブラジルの特許・実用新案の登録証その他関連書類の入手方法
(1) ユーザー登録
特許・実用新案の登録証その他関連書類に関する情報は、ユーザー登録をしなくても閲覧が可能である。しかし、出願書類のダウンロード、電子請願手続、電子請願書の閲覧、電子請願手続に必要なブラジル連邦徴税用紙の発行、手続の監視についてはユーザー登録をしなければ行うことができない。本稿では、これらの活用の可能性も踏まえて、始めにユーザー登録の仕方を説明する。なお、ユーザー登録を行わない場合は、下記第(4)項に進み、ログインページにアクセスして検索を進めることができる。
ブラジル産業財産庁(INPI)ウェブサイトのトップページ(https://www.gov.br/inpi/pt-br)へアクセスして、トップページをスクロールダウンし、「Acesso rápido(クイックメニュー)」メニューにたどり着いたら(図1)、「Cadastro no e-INPI(e-INPIへの登録)」をクリックする。
以下画面(図2)が表示され、次の(i)および(ii)のユーザーが登録できる。
(i)「Cliente – Pessoa física ou jurídica domiciliada no país que não possua um procurador(クライアント、ブラジル国内に代理人を有していない、ブラジルに所在する個人または法人)」
(※ただし、ブラジル国内に住所等のない外国企業または個人の場合も登録可能となっている。後述の「(3-1)「Natureza Jurídica(法人の性質)」の選択・入力」を参照。)
(ii)「Advogado ou Pessoa física com o instrumento de procuração para representar um cliente nos serviços solicitados(ブラジルにおける産業財産権登録手続きを、顧客を代理して行うための委任状を有する弁護士または個人)」
ここでは(i)のクライアントがユーザー登録する方法を紹介する。
まずは、以下の(i)の右側の青色「cadastre-se aqui(ここで登録)」の文字をクリックする。
(2) 表示される以下の画面(図3)では、INPIの電子システム(SISTEMA e-INPI)の利用条件に関する説明(Termo de adesão ao Sistema e-INPI(利用条件))がポルトガル語で記載されている。利用条件に合意できる場合は、「Aceito(利用条件に合意する)」をクリックする。
(3) 表示される以下の画面(図4)で、ユーザー情報を入力する。必要な場合にINPIからのユーザーへの通知・連絡が行いやすいよう、できるだけ全ての項目を入力することが推奨されている。ただし、INPIのウェブサイトにおける個人情報の保護の水準については情報が得られておらず、安全性については保証できない。ユーザー情報の入力にあたり、各人の責任において利用されたい(ユーザー登録しなくても、(4)で「continuar(続行する)」をクリックすることで検索は可能である。)。
(3-1)「Natureza Jurídica(法人の性質)」の選択・入力
法人または個人を選択する欄で、法人の場合はその性質を選択する。右側の欄をクリックすると、プルダウンメニュー(図5)で以下の選択肢が表示される。
選択肢は、上から順に以下のとおり。
Associação com intuito não econômico(非営利の協会)
Cooperativa assim definida em lei(法律が定義する通りの組合)
Empresa Simples de Inovacao(新興企業)
Empresa de Pequeno Porte assim definida em lei(法律が定義する通りの小規模企業)
Instituição de Ensino e Pesquisa(教育・調査機関)
Microempreendedor Individual – MEI(個人零細事業者)
Microempresa assim definida em lei(法律が定義する通りの零細企業)
Pessoa Física(個人)
Pessoa Jurídica(法人)
Sociedade com intuito não econômico(非営利の団体)
Órgão Público(公的機関)
(3-2) その他の情報の入力
その他の入力すべき情報は、上から順に以下のとおり。
CNPJ(ブラジル法人登録番号)
Razão Social(nome empresarial)(会社名)
País(所在国)(プルダウンメニューから選択)
Estado(州)(プルダウンメニューから選択)
Cidade(市)(プルダウンメニューから選択)
Endereço(住所)
Cep(郵便番号)
Telefone(opcional)(電話番号、任意の記入)
Celular(opcional)(携帯電話番号、入力は任意)
Fax(Fax番号、入力は任意)
E-Mail(メールアドレス)
Login(任意のログインID)
Senha(任意パスワード、6文字以上で最大10文字)
Confirmar Senha(パスワードの再入力)
ただし、「País(所在国)」で「Japão(日本)」と選択した場合(図6)、以下のように、入力項目は「法人の性質」「会社名」「住所」「電話番号」「携帯電話番号」「Fax番号」「Eメール」「ログインID」「パスワード」「パスワードの再入力」のみとなる。
(3-3) 「Declaração(宣言)」のチェック(図6最下部)、「salvar(保存)」
「Resolução INPI Nº 274/2011(INPI決議274/2011号)」が定める、INPIへの手数料に関する手数料の減免措置(個人、零細企業、個人零細事業者、小規模企業、法律が定める組合、教育・調査機関、非営利団体、公的機関に対しては、出願・登録手続きに伴うINPIへの手数料の最大60%免除が適用される)が適用されることを申告する場合、チェックボックスをクリックしてチェックを入れる。(「Resolução INPI Nº 274/2011(INPI決議274/2011号)」をクリックすると、当該決議のページに移行し、内容を確認できる。)
入力終了後に「salvar(保存)」をクリックする。
保存後、移行したページで「O login _____ foi cadastrado com sucesso」(ログインID____が登録されました)」と表示されたら、登録完了となる。
(4) ログインID、パスワードが登録されたら、ログインページ(https://busca.inpi.gov.br/pePI/jsp/patentes/PatenteSearchBasico.jsp)にアクセスすると、以下の画面(図7)が表示される。赤枠で示す部分に、登録したログインID、パスワードを入力する。入力後は、「continuar(続行する)」をクリックする。また、ユーザー登録をせずに検索する場合は、ログインID、パスワードは空欄のまま「continuar(続行する)」をクリックする。
(5) 表示される以下の画面(図8)で、「patente(特許)」をクリックする。
(6) 移行する以下の画面(図9)では、簡易検索ができ、「Número do Pedido(出願番号)」、「Nº de Recolhimento da União – GRU(手数料納付票番号)」、「Número de protocolo(受理番号)」のほか、キーワードで検索することができる。
例として、「Contenha o Número do Pedido(出願番号の入力)」欄に「PI 0404277-8」と入力し、「pesquisar(検索)」をクリックすると、番号に一致する出願の情報が表示される(図10)。
「Pedido(出願番号)」をクリックすると、以下のような出願情報が表示される(図11)。
出願情報詳細の画面(図11)の赤枠で示すpdfのアイコンから、INPIの意見書を含む関連書類をダウンロードできる。上記画面の赤枠で囲まれた登録証のアイコンをクリックすると、図12のように表示され、ファイルをダウンロードして閲覧、保存、印刷することができる。
ブラジルにおいてOIモデル契約書ver2.0秘密保持契約書(新素材編、AI編)を活用するに際しての留意点
記事本文はこちらをご覧ください。
ブラジルにおける商品・役務の類否判断について
1.はじめに
日本では、先行商標と出願商標が非類似とされているケースで、ブラジルでは、同じ商標の出願について、同じ先行商標と類似と判断され、拒絶査定を受けることがある。この相違は、両国の指定商品・役務に関する審査実務の違いによって生じる場合がある。例えば、日本の商標審査では、「類似群」と呼ばれるグループ分けを採用しており、商品・役務が同じグループに属さない限り、原則として非類似とみなされる。しかし、ブラジルの商標審査ガイドライン(以下、「審査ガイドライン」という。)では、商品・役務を事前にグループ分けしていないため、判断が異なる可能性がある。そこで本稿では、審査ガイドラインに基づく商品・役務の類似・非類似の判断について紹介する。具体的には、審査ガイドラインに基づく商品・役務の類否判断の主となる市場親和性について概説し、具体的な併存登録例を紹介するとともに、日本の出願人に関心があると思われる類見出しと「小売」役務について述べ、日本の出願人がブラジルにおける商品・役務の類否を判断する際の一助としたい。
2.商標の審査方法について
ブラジルにおける審査方法は、以下の順番で行われる。
① 商標の合法性、識別性、真実性の分析
② 商標の登録可能性の分析
③ 実体審査前の異議申立の有無および異議申立に対する反駁を考慮した評価
④ 商標の性質と表示形式による必須書類の評価
ここで②の「商標の登録可能性の分析」について、ブラジル産業財産法第124条に、登録を受けることができない標識が列挙されているが、具体的には同条の(I)~(XXIII)項を順番に分析することになる。なお、商品・役務の相対的要件は、同条(XIX)項に規定されている。
また、④は、商標見本の性質及び形状を理解するための必須書類の評価に加え、団体標章の禁止事項および使用規則ならびに証明標章の管理規約などの必須書類の評価を意味する。
3.商品・役務の類似・非類似について
類否判断は、市場親和性の程度を評価することで行う。具体的には、商品・役務の以下の特徴が考慮される(審査ガイドライン5.11.2「市場親和性の検討」(Manual de Marcas » 05 Exame substantivo » 5.11.2 Exame da afinidade mercadológica))。
商品・役務の間の親和性の評価における特徴について、各項目の重みづけは、商品・役務が位置する市場セグメントの特徴に従って評価され、公衆を混乱または不当な関連付けに導く能力の大小によって決まる。
同一商品・役務間では当然であるが、異なる種類の商品・役務間であっても、それらが類似の特性を持っている場合、また、それらの間に密接な関係がある場合には、混同や不当な関連付けの危険性が生じるため、市場親和性の程度を評価するために、商品・役務についての以下の項目を観察する。
a) 性質
性質とは、商品・役務について知られている本質的な性質、その種類、ジャンルまたは特定のカテゴリーを指す。商品の場合、性質は通常、組成(成分、構成要素、原材料など)、動作原理(電動、機械的、電気的、生物学的、化学的など)、物理的状態(液体/固体/気体、柔軟性/剛性など)といった要素の組み合わせによって評価される。役務の場合は、通常、その役務が該当するカテゴリーで評価される(金融関連、医療関連、輸送関連など)。
b) 使用目的および使用形態
商品・役務に期待される効用および機能、ならびに使用、または、役務に関する契約の形態、その条件もしくはその状況を指す。
c) 補完性
一方の商品・役務が、他方の商品・役務の使用にとって不可欠または重要である場合、補完性があるとみなされる。
d) 競争性または互換性
互いに代替可能な商品・役務は、競争性または互換性があるとみなされる。一般的には、同じ目的を持ち、同じ対象者を対象とした商品・役務である。
e) 流通チャンネル
流通チャンネルや販売・供給拠点が同じである商品・役務は、マーケティング上の親和性が高く、消費者に同じ出所から生まれたものとして認識されるリスクが高まる。ただし、この項目は、マーケティングの親和性の特徴づけにとって決定的なものとは考えられない。スーパーマーケットやデパートのような中・大規模の商業施設は、それらの間に類似性や市場親和性はなく、多様な性質の商品を提供しているからである。
f) 対象消費者
同じ消費者(一般消費者または専門消費者)を対象とする商品・役務は、マーケティングの観点から類似していると考えられる。しかし、この項目は単独で、多くの全く異なる商品・役務が同じ一般消費者によって消費されたり、契約されたりするため、市場の親和性を特徴づける決定的な項目とはみなされない。
g) 注意の度合い
商品購入時や役務契約時での対象消費者の注意の度合いも、商標間の競合の可能性を評価する上で重要である。対象となる一般消費者がほとんど注意を払わない場合、混同のリスクは増大する。例えば、日常的に使用される場合、商品・役務の購入時において計画をたてることはほとんど必要ないが、高額、購入頻度の低い商品・役務、リスクの高い商品・役務を購入する場合、一般消費者は購入時にその商品・役務に関する追加情報を求めて慎重に吟味する傾向がある。また、専門的な消費者は、その市場に関する経験や知識が豊富であるため、より高い注意を払って購入する傾向がある。
h) 通常の起源
通常の起源とは、商品の製造、販売または役務の提供を担う出所を指す。ここで出所とは、実際の生産や供給の場所ではなく、商品・役務を一般的に担っている企業等の組織を指す。この項目は、特定の市場で活動する代理店が市場の拡大を図る慣行に加え、製造・供給方法や設備、関連する技術的知識などの要因に影響される。
4.同一商標について、指定商品・役務の類似および非類似の例
市場親和性について理解を深めるため、審査ガイドラインにおいて示された、同一商標について指定商品・役務が類似とされる4例と非類似とされる1例を示す。
商品・役務 | 該当する市場親和性 | ||
牛乳 | 類似 | チーズ | 性質、通常の起源、流通経路 |
スポーツウェア | 類似 | テニスラケット | 対象消費者、補完性、流通経路、 通常の起源 |
繊維産業機械 | 類似 | 産業機械の修理 | 対象消費者、通常の起源、補完性 |
タブレット | 類似 | 電子機器用 皮革カバー |
補完性、対象消費者、通常の起源 |
洗濯用洗剤 | 非 類似 |
牛乳 | 一般大衆を対象とし、同一の施設で販売されているが、性質、起源、使用目的が異なり、補完性、互換性がないことから、市場親和性はない。 |
5.Class Heading(類見出し)の取り扱いについて
ブラジルでは、ニース国際分類の類見出しは分類適格性について事前承認されていることから、記載された表示をそのまま商品・役務として指定して出願し、それを登録することができる(審査ガイドライン5.4.3)。この場合、類見出しを指定するということは、その分類に含まれるすべての商品・役務の保護を求めるということである。一方、産業財産法第128条では「・・・事業に関連する標章に限り登録出願をすることができ,その事情を実際の請求において宣言しなければならない。当該宣言を実施しなかったときは,法律上の処罰が科せられる。」と規定されている。類見出しを指定することで関連しない事業について宣言することがないように留意しなければならない。
6.小売役務について
先に示したブラジルの産業財産法第124条のとおり、先行商標と同一または類似の商標であって、商品・役務について同一または類似の出願商標が、混同を引き起こす可能性がある場合、当該出願商標の登録は禁じられている。したがって、「小売」役務の先行商標が存在すれば、その識別力によっては、商品商標に対して排他的になる可能性がある。
不使用に基づく商標取消は、全てまたは一部の商品・役務について請求することができるが、商品名を限定しない「小売」役務の場合は、小売されていない商品については不使用による取消理由が存在することになる。
日本とブラジルにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較
1.日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
日本国特許法第44条は、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば、2以上の発明を包含する特許出願の一部を1または2以上の新たな特許出願とすること(分割出願すること)ができることを規定している。
(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。
(i) 出願から特許査定の謄本送達前(登録通知を受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
(ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
(iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)
(iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)
(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)
(i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
(ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。
(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3か月以内(第44条第1項第3号)
(3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間に限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。
日本国特許法第44条(特許出願の分割) 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。 2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。 3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。 4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。 5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。 6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。 7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。 |
2.ブラジルにおける特許出願の分割出願の時期的要件
ブラジルでは、審査が終了するまではいつでも分割出願を行うことができる(ブラジル産業財産法(以下、「産業財産法」という。)第26条)。
「審査が終了するまで」とは、特許査定または拒絶査定で記載された日付または、それら査定の官報への公開前の30日のいずれか遅い方を意味する。このため、拒絶理由(指令書)発行後であってもその応答期間により制限されないものの、拒絶査定後の審判段階では、分割出願を行うことができない(特許規則(明細書の書き方)INSTRUÇÃO NORMATIVA No 030/2013)。
産業財産法 第26条 特許出願は,出願審査が終了するまでは,職権又は出願人の請求により2以上の出願に分割することができる。ただし,分割出願が次の要件を満たしていることを条件とする。 (I) 原出願に明確に言及していること,及び (II) 原出願に開示されている内容の範囲を超えていないこと 補項 本条の規定に従っていない分割請求は却下する。 |
特許規則(明細書の書き方)INSTRUÇÃO NORMATIVA No 030/2013 第32条 Para os efeitos dos artigos 26 e 31 da LPI, considera-se final de exame em Primeira instância, a data do parecer conclusivo do técnico quanto à patenteabilidade, ou o trigésimo dia que antecede a publicação da decisão de deferimento, indeferimento ou arquivamento definitivo, o que ocorrer por último. 産業財産法第26条及び第31条の規定の適用上,特許性に関する審査官の結論的見解の日,又は,付与又は拒絶の官報への公開前30日のいずれか遅い方を,審査の終了とみなす。 |
日本とブラジルにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較
日本 | ブラジル | |
分割出願の時期的要件*) | 補正ができる期間 | 出願から審査が終了するまでの期間 |
*) 査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較
日本とブラジルにおける特許審査請求期限の比較
1.日本における審査請求期限
日本においては、特許出願の審査を受けるためには出願審査請求を行う必要がある。出願審査請求は出願の日から3年以内に行うことができ(特許法第48条の3第1項)、この期限内に出願審査請求がされない場合は、その特許出願は取り下げられたものとみなされる(特許法第48条の3第4項)。ただし、所定の期間内に出願審査の請求がなされなかったことにより特許出願が取り下げたものとみなされた場合であっても、当該期間を徒過したことについて「故意によるものでない」ときは、出願審査の請求をすることができるようになった日から2か月以内で、期間経過後1年以内に限り、出願審査の請求を行うことができる(特許法第48条の3第5項)。
出願が国内優先権の主張を伴う場合や、パリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は、優先日(先の出願の出願日)ではなく、優先権主張を伴う出願(後の出願)の実際の出願日である(工業所有権法逐条解説 特許法第48条の3趣旨)。
PCTルートの場合は、国内書面を提出し、手数料の納付を行った後(外国語特許出願である場合はさらに翻訳文を提出した後)でないと、出願審査請求をすることができない(特許法第184条の17)。この場合の審査請求期限は、国際出願日から3年である。
また、特許出願の分割に係る新たな特許出願、意匠登録出願または実用新案登録出願の変更に係る特許出願、実用新案登録に基づく特許出願については、原出願から3年の期間経過後であっても、分割または変更による特許出願の日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
なお、審査請求は出願人だけでなく、第三者も行うことができる。(特許法第48条の3第1項)。
条文等根拠:特許法第48条の2、第48条の3第1項、第2項、第3項、第4項、第5項、第184条の17
日本国特許法 第48条の2(特許出願の審査) 特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまって行なう。 |
日本国特許法 第48条の3(出願審査の請求) 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。 2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。 3 出願審査の請求は、取り下げることができない。 4 第一項または第二項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。 5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、経済産業省令で定める期間内に限り、経済産業省令で定めるところにより、出願審査の請求をすることができる。ただし、故意に、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をしなかつたと認められる場合は、この限りでない。 (第6から第8項省略) |
日本国特許法 第184条の17(出願審査の請求の時期の制限) 国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあつては第百八十四条の五第一項、外国語特許出願にあつては第百八十四条の四第一項又は第四項及び第百八十四条の五第一項の規定による手続をし、かつ、第百九十五条第二項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(第百八十四条の四第一項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。 |
2.ブラジルにおける審査請求期限
ブラジルにおいては、特許出願の実体審査を受けるためには実体審査請求を行う必要がある。実体審査請求は、ブラジル出願の日から36か月以内に行うことができる(産業財産法第33条)。実体審査請求がされない場合は、その特許出願は却下されるが、却下されてから60日以内に出願人が回復の請求をし、特定の手数料を納付した場合は、出願を回復させることができる。前記の手続をしなかった場合は、出願は最終的に却下される(産業財産法第33条 補項)。
ブラジル出願がパリ条約による優先権の主張を伴う場合においても、請求期間の起算日は実際にブラジル特許出願がされた日である。
なお、ブラジルにおいては、出願人または利害関係人が実体審査請求を行うことができる。
条文等根拠:産業財産法第33条、第34条
ブラジル産業財産法 第33条 出願人またはその他の利害関係人は、出願日から36月の期間内に特許出願の審査を請求しなければならない。請求をしなかったときは、その出願は却下される。 補項 特許出願は、出願が却下されてから60日以内に出願人が回復の請求をし、特定の手数料を納付した場合は、回復させることができる。前記の手続をしなかった場合は、出願は、最終的に却下される。 |
ブラジル産業財産法 第34条 審査請求がなされ及び審査請求をするときは,60日の期間内に次のものを提出しなければならない。提出しなかったときは,その出願は却下される。 (I) 優先権を主張している場合は,他国における対応する出願の特許付与に係る反論、先行技術調査書及び審査結果 (II) 出願に係る手続及び審査を適正に行うために必要な書類;及び (III) 第16条(2)にいう適切な書類の簡単な翻訳文であり、同条(5)に規定された宣言書により置き換えられた翻訳文 |
日本の基礎出願について優先権を主張し、ブラジルに特許出願した場合には、以下のようになる。
日本とブラジルにおける特許審査請求期限の比較
日本 | ブラジル | |
審査請求期間 | 3年 | 36か月 |
起算日 | 日本の出願日 | ブラジルの出願日 |
日本とブラジルの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
1.日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10 1.(2)ア、2.(2)ア
日本国特許法 第50条 拒絶理由の通知 審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。 |
日本国特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。 一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第二項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。 二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。 三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。 四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。 |
方式審査便覧04.10 法定期間及び指定期間の取扱い 1.手続をする者が在外者でない場合 (2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。 ア.意見書(特50条、商15条の2、15条の3第1項、商附則7条) 2.手続をする者が在外者である場合 (2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は1.(11)及び(12)を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1.(2)の期間とする。 ア.意見書(1.(2)ア.において同じ。) |
(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能
(*特許庁「出願の手続」第二章 第十八節 IV指定期間の延長、https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/document/syutugan_tetuzuki/02_18.pdf)
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10 1.(16)ア、2.(12)ア、イ
日本国特許法 第5条 期間の延長等 特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。 2審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。 |
方式審査便覧 04.10 1.(16)ア、2.(12) 1 手続をする者が在外者でない場合 (16) 次に掲げる特許法、実用新案法及び意匠法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。 ア.(2)ア.の意見書(特50条及び意19条の規定によるものに限る。)ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。 2 手続をする者が在外者である場合 (12) 特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。 ア.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができる。 イ.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。 また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項第1号又は第3号に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。 |
2.ブラジルの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・拒絶理由通知書への応答期間は90日
条文等根拠:産業財産法第36条
ブラジル産業財産法 第36条 前記の見解書が,出願の非特許性,クレームの内容に対する出願の不適応性を確認するものであるか又は何らかの要求が設定されて場合は,出願人は,90日の期間内に意見書を提出するよう通知を受けるものとする。 要求に対する応答が提出されなかったときは,出願は最終的に却下される。 要求に対する応答が提出されたときは,要求が満たされていない場合又は要求の設定に異論がある場合,特許性又は妥当性に関して提出されている議論があるか否かに拘らず,審査は継続されるものとする。 |
(2) 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・拒絶理由通知書への応答期間の延長は、原則、不可。ただし、正当な事由が認められた時は、認められた期間について延長可能。
条文等根拠:産業財産法第221条
ブラジル産業財産法 第221条 本法に定める期限は継続するものとし,それが経過したとき,手続をする権利は自動的に消滅する。ただし,当事者が,手続をしなかったことについて正当な事由があることを証明したときは,この限りでない。 (1) 正当な事由とは,当事者が手続をすることを妨げた,当事者の制御外にある不測の事態とみなされる。 (2) 正当な事由が認められたときは,当事者は,INPIによって当事者に認められた期間内に,手続をしなければならない。 |
日本とブラジルの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 | ブラジル | |
応答期間 | 60日(在外者でない場合) 3か月(在外者の場合) |
90日 |
応答期間の延長の可否 | 可 | 原則不可、条件付きで可となる場合もあり |
延長可能期間 | 最大2か月(在外者でない場合) 最大3か月(在外者の場合) |
認められた期間 |
ブラジルにおける特許・実用新案の調べ方―ブラジル産業財産庁(INPI)の調査サイト
(1) ブラジル産業財産庁(INPI)のウェブサイトのトップページ(https://www.gov.br/inpi/pt-br)へアクセスする。
(2) トップページをスクロールダウンし、「Acesso rápido(クイックメニュー)」メニューにたどり着いたら(図1)、「BUSCA DE PROCESSOS Bases de dados de marcas, patentes e outros ativos(出願・登録番号検索 商標、特許やその他のativosのデータベース)」をクリックする。
図1 INPIトップページから「Acesso rápido」メニューの「BUSCA DE PROCESSOS Bases de dados de marcas, patentes e outros ativos」を選択
(3) 次にログイン画面が表示されるので(図2)、登録済の場合は「Login(ログインID)」、「Senha(パスワード)」を入力する。登録していない場合は、空欄のまま「Continuar(続行する)」をクリックすることで利用できる。
ログインIDの作成・システムへの登録の方法は、本データバンク内コンテンツ「ブラジルの特許・実用新案の登録証その他関連書類の入手方法」を参照されたい。
図2 ログイン画面
(4) INPIデータベースの選択画面が表示されるので(図3)、「Patente(特許)」のアイコンをクリックする。
図3 INPIデータベース選択画面
(5) INPI特許検索トップページである「Base Patentes(特許データベース調査)」の画面に移行する(図4)。下記画面が表示されるが、ここは「PESQUISA BASICA(簡易検索)」のページで、リーガルステータスの確認と一般検索ができる。
図4 INPI特許検索トップページ
(6) 特定の出願・登録番号についてリーガルステータスの確認をするには、「Contenha o Número do Pedido(出願・登録番号を記入する)」に出願番号を入力して、「pesquisar(検索する)」をクリックする。なお、入力事項を消去するためには、「limpar(消去する)」をクリックする。
例として、出願・登録番号の箇所に「PI 0101161-8」を入力して、「pesquisar(検索する)」をクリックすると、下記の画面が表示される。表示される情報は「Pedido(出願・登録番号)」、「Depósito(出願日)」と「Título(タイトル)」である。出願・登録番号、つまり、この例では「PI 0101161-8」をクリックすると出願・登録の詳細情報ページが表示される(図5、図6)。
図5 「PI 0101161-8」検索結果
図6 「PI 0101161-8」詳細情報(一部)
(7) 一般検索をするには、(5)の画面(図4)で、入力箇所の4行目の「Contenha(含む)」の欄に検索事項を入力する。(図7)
図7 INPI特許検索トップページ(再掲載)
(i) 左端の欄をクリックすると、以下を含むプルダウンメニューが表示され(図8)、
「todas as palavras(全てのキーワードを含む)」、
「a expressão exata(語順も含め完全一致)」、
「qualquer uma das palavras(いずれかのキーワードを含む)」
「a palavra aproximada(キーワードに類似する言葉を含む)」
これらの中から一つ選ぶ。
図8 INPI特許検索トップページで表示されるプルダウンメニュー(1)
(ii) 中央の欄にはキーワードをポルトガル語で記入する。文字数や単語数の制限はない。
(iii) 右端の欄をクリックすると、以下を含むプルダウンメニューが表示され(図9)、
「Título(タイトル)」
「Resumo(要約)」
「Nome do Depositante(出願人)」
「Nome do Inventor(発明者)」
「CPF/CNPJ do Depositante(出願人の個人/法人納税者番号)」
これらの中から一つ選ぶ。
図9 INPI特許検索トップページで表示されるプルダウンメニュー(2)
例として、(i)で「todas as palavras(全てのキーワードを含む)」を選択し、(ii)に「MATERIAL DE GRAVAÇÃO SENSÍVEL A CALOR(感熱記録材料)」を入力し、(iii)で「Título(タイトル)」を選択し、「pesquisar(検索)」をクリックすると、下記の検索結果ページが表示される(図10)。
なお、表示される情報は「Pedido(Processo、出願・登録番号)」、「Depósito(出願日)」と「Título(タイトル)」である。
図10 「MATERIAL DE GRAVAÇÃO SENSÍVEL A CALOR(感熱記録材料)」検索結果
(8) ここで個別の登録番号・出願番号をクリックすると各案件の詳細が表示される。例えば上から8つ目の「BR 11 2018 009656 3」という出願・登録番号をクリックすると、次のような詳細情報ページが表示され(図11)、pdfファイルのダウンロードも可能である。
図11 個別案件(BR 11 2018 009656 3)の詳細
ブラジルにおける商標審査効率化・ユーザー出願支援のための指定商品・役務に関する料金等施策及び出願支援ツールについての調査
「商標審査効率化・ユーザー出願支援のための指定商品・役務に関する料金等施策及び出願支援ツールについての調査研究報告書」(令和4年3月、知的財産研究教育財団 知的財産研究所)
目次
Ⅲ.調査結果
1.公開情報調査
(10)ブラジル P.124
(ブラジルにおける商標出願および審査の状況、オンライン出願の普及状況、指定商品・役務に関する料金等施策および文化的表現に関する商標の優先審査の試行プログラムについて紹介している。また、ブラジル産業財産庁(National Institute of Intellectual Property、以下「INPI」という。)のWEBサイトからアクセスできるオンライン出願手続システム「e-marca」について紹介している。)
3.海外ヒアリング調査結果
(10)ブラジル P.229
(INPIが承認している商品・役務を掲載した「Pre-approved Specification」(INPIにおける「事前承認リスト」)利用による減額制度、「Pre-approved Specification」(事前承認リスト)およびオンライン出願支援ツールの各々について、現地専門家に対して行ったヒアリング調査結果を紹介している。)
資料Ⅱ 海外ヒアリング調査
(10)ブラジル P.322
(海外ヒアリング調査において現地専門家に提示した質問項目を開示している。具体的には、指定商品・役務に関する料金等施策について5項目25問、審査効率化・ユーザー出願支援のためのオンライン出願支援ツールについて3項目14問の質問内容を開示している。)