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ブルネイにおける著作権関連法規の概要および運用実態

1.適用法および保護対象等
 ブルネイにおいても、多くの国と同様、独創的な著作物が保護されるためには登録の必要はなく、創作と同時に著作権が発生する。
 著作権について規定するブルネイの法律は、「1999年緊急著作権令」(”EMERGENCY COPYRIGHT ORDER,1999”以下「著作権令」)である。著作権令第3条(1)項は、保護される著作物として以下の作品を列挙している。
・独創的な言語著作物、演劇著作物、音楽著作物もしくは美術の著作物
・録音物、映画、放送もしくは有線放送の番組
・出版物の組版面
 著作権の保護期間は、基本的に著作者が死亡した暦年の翌年1月1日から50年経過後、録音物、映画、有線放送番組の場合には著作物の制作もしくは公開がなされた暦年の翌年の1月1日から50年経過後に満了する(著作権令第14条~17条)。

2.著作権の権利行使
 著作権は自動的に発生する(登録等を必要としない)権利であり、著作権の権利行使時にも登録は要求されない。著作権者が他者による著作権侵害を発見した場合、被疑侵害者に対して、民事訴訟または刑事訴訟を提起することができる。
 著作権侵害に関する民事訴訟において、著作権者は損害賠償、差止命令などの救済を求めることができる。他に、侵害品の引渡や差押などの裁判所命令を得ることも可能である。
 著作権令は、以下の行為を著作権者の同意なしに行った場合、著作権侵害が発生すると規定している(著作権令第18条(1)項)。
・著作物の複製
・著作物の複製を公衆へ提供する行為
・著作物の上演、上映または演奏の公開
・著作物の放送(有線放送サービスによる放送を含む)
・著作物の翻案制作もしくは翻案に関わる何らかの行為の実行
・著作物を公衆へ伝達する行為

 上記行為に加えて、著作権令では「二次的侵害」とみなされる行為について、以下行為を規定している(著作権令第26条~30条)。
・著作権者の許諾なしに、侵害製品であることを知っているか、侵害製品であると信ずべき理由がある物品を輸入すること(自宅での私的な使用を除く)
・著作権者の許諾なしに、侵害製品であることを知っているか、侵害製品であると信ずべき理由がある物品について以下の行為をなすこと
・物品の占有、販売、貸出もしくは賃貸、販売もしくは賃貸のための申出、もしくは展示を業として行うこと
 〇物品の公の展示もしくは頒布を業として行うこと
 〇業としてではないが著作権者に不利な影響を及ぼす程度に物品を頒布すること
 〇侵害製品を製作するための手段を提供すること
 〇侵害行為のために施設の使用を許可すること
 〇侵害行為のための装置を提供すること

 なお、著作物の使用が公正使用(fair dealing)に該当する場合、著作物の使用に関して著作権者からの事前許可は不要である。公正使用には、研究目的もしくは私的学習、批評もしくは評論、付随的利用、教育・試験その他教育機関での使用などが含まれている。(著作権令第33条、第34条)

3.刑事上の犯罪
 2013年に著作権令が改正され、著作権侵害に関する刑事責任が強化された。ブルネイ著作権法に基づく主な刑事上の犯罪には、以下の行為が含まれる(第204条~第207条)。
・販売もしくは賃貸を目的とした著作権侵害製品の製作
・著作権侵害製品の占有または保管もしくは管理
・著作権侵害製品の輸入(自宅での私的な使用を除く)
・著作物の公衆への伝達
・著作権者に不利な影響を及ぼす程度に侵害製品を頒布すること
・以下の行為を業として行うこと
 〇著作権侵害製品の販売もしくは賃貸
 〇著作権侵害製品の販売もしくは賃貸のための申し出もしくは展示
 〇著作権侵害製品の公開展示
 〇著作権侵害製品の頒布

 上記侵害行為による犯罪が成立するためには、対象製品が著作権を侵害していることを侵害者が知っていた、またはそう信ずべき理由があったことを立証しなければならない。
 上記犯罪に対する刑罰は、侵害製品1点につき10,000ブルネイドル以下の罰金および/または5年以下の懲役である。再犯または累犯の場合、刑罰は侵害製品1点につき20,000ブルネイドル以下の罰金および/または10年以下の懲役となる。
 著作権令に基づき、ある者が同一の著作権侵害製品を5点以上占有、保管もしくは管理している場合、それに反する証拠がない限り、それら著作権侵害製品は自宅での私的な使用以外の目的および/または業務上の使用に供されるものと推定される。

4.水際取締
 著作権者は、著作権侵害製品が税関管理下にあるか、または税関の管理下になった時点で、それらを輸入禁制品として処理するよう税関長に申請できる。申請は最長5年間にわたって有効に存続する。
 上記申立が税関長宛に提出された後、申立に記載されていた製品が輸入され、税関の管理下に置かれた場合、税関職員は製品を調査し、それらが著作権侵害製品であるか否かを判定する。製品が侵害製品であると税関職員が判定した場合、製品は税関により拘留される。

5.ブルネイにおける企業活動
 ブルネイで企業活動を行う場合、第三者による侵害行為があり得ることに留意しなければならない。ブルネイで侵害製品が製造されるのではなく、近隣諸国から侵害品が輸入されるケースがしばしば見受けられる。警察官や税関職員は、侵害品の差押えや侵害者の逮捕といった大きな権限を有しているが、彼らの主体的な侵害品調査は稀であり、そのような調査は知的財産権利者が自発的に行うこと期待していると思われる。そのため、特に製造業者に関していえば、著作権保有者が、市場で侵害品を定期的にチェックし、できる限り早期に必要な対策をとることが望ましい。

ブルネイにおける著作権関連法規の概要および運用実態

【詳細】

1. 適用法および保護対象等

ブルネイにおいても、多くの国と同様、独創的な著作物が保護されるためには登録の必要はなく、創作と同時に著作権が発生する。

著作権について規定するブルネイの法律は、「2006年著作権令」(”Copyright Order, 2006”以下「著作権令」)である。著作権令第3条(1)項は、保護される著作物として以下の作品を列挙している。

○独創的な言語著作物、演劇著作物、音楽著作物もしくは美術の著作物

○録音物、映画、放送もしくは有線放送の番組

○出版物の組版面

著作権の保護期間は、基本的に著作者が死亡した暦年の翌年1月1日から50年経過後、録音物、映画、有線放送番組の場合には著作物の制作もしくは公開がなされた暦年の翌年の1月1日から50年経過後に満了する(著作権令第14条~17条)。

 

2.著作権の権利行使

著作権は自動的に発生する(登録等を必要としない)権利であり、著作権の権利行使時にも登録は要求されない。著作権者が他者による著作権侵害を発見した場合、被疑侵害者に対して、民事訴訟または刑事訴訟を提起することができる。

 

著作権侵害に関する民事訴訟において、著作権者は損害賠償、差止命令などの救済を求めることができる。他に、侵害品の引渡や差押などの裁判所命令を得ることも可能である。

 

著作権令は、以下の行為を著作権者の同意なしに行った場合、著作権侵害が発生すると規定している(著作権令第18条(1)項)。

○著作物の複製

○著作物の複製を公衆へ提供する行為

○著作物の上演、上映または演奏の公開

○著作物の放送(有線放送サービスによる放送を含む)

○著作物の翻案制作もしくは翻案に関わる何らかの行為の実行

○著作物を公衆へ伝達する行為

 

上記行為に加えて、著作権令では「二次的侵害」とみなされる行為について、以下行為を規定している(著作権令第26条~30条)。

○著作権者の許諾なしに、侵害製品であることを知っているか、侵害製品であると信ずべき理由がある物品を輸入すること(自宅での私的な使用を除く)

○著作権者の許諾なしに、侵害製品であることを知っているか、侵害製品であると信ずべき理由がある物品について以下の行為をなすこと

  • 物品の占有、販売、貸出もしくは賃貸、販売もしくは賃貸のための申出、もしくは展示を業として行うこと
  • 物品の公の展示もしくは頒布を業として行うこと
  • 業としてではないが著作権者に不利な影響を及ぼす程度に物品を頒布すること
  • 侵害製品を製作するための手段を提供すること
  • 侵害行為のために施設の使用を許可すること
  • 侵害行為のための装置を提供すること

 

なお、著作物の使用が公正使用(fair dealing)に該当する場合、著作物の使用に関して著作権者からの事前許可は不要である。公正使用には、研究目的もしくは私的学習、批評もしくは評論、付随的利用、教育・試験その他教育機関での使用などが含まれている。(著作権令第30条以下)

 

3. 刑事上の犯罪

2013年に著作権令が改正され、著作権侵害に関する刑事責任が強化された。ブルネイ著作権法に基づく主な刑事上の犯罪には、以下の行為が含まれる(第204条~第207条)。

○販売もしくは賃貸を目的とした著作権侵害製品の製作

○著作権侵害製品の占有または保管もしくは管理

○著作権侵害製品の輸入(自宅での私的な使用を除く)

○著作物の公衆への伝達

○著作権者に不利な影響を及ぼす程度に侵害製品を頒布すること

○以下の行為を業として行うこと

  • 著作権侵害製品の販売もしくは賃貸
  • 著作権侵害製品の販売もしくは賃貸のための申し出もしくは展示
  • 著作権侵害製品の公開展示
  • 著作権侵害製品の頒布

 

上記侵害行為による犯罪が成立するためには、対象製品が著作権を侵害していることを侵害者が知っていた、またはそう信ずべき理由があったことを立証しなければならない。

上記犯罪に対する刑罰は、侵害製品1点につき10,000ブルネイドル以下の罰金および/または5年以下の懲役である。再犯または累犯の場合、刑罰は侵害製品1点につき20,000ブルネイドル以下の罰金および/または10年以下の懲役となる。

著作権令に基づき、ある者が同一の著作権侵害製品を5点以上占有、保管もしくは管理している場合、それに反する証拠がない限り、それら著作権侵害製品は自宅での私的な使用以外の目的および/または業務上の使用に供されるものと推定される。

 

4. 水際取締

著作権者は、著作権侵害製品が税関管理下にあるか、または税関の管理下になった時点で、それらを輸入禁制品として処理するよう税関長に申請できる。申請は最長5年間にわたって有効に存続する。

上記申立が税関長宛に提出された後、申立に記載されていた製品が輸入され、税関の管理下に置かれた場合、税関職員は製品を調査し、それらが著作権侵害製品であるか否かを判定する。製品が侵害製品であると税関職員が判定した場合、製品は税関により拘留される。

 

5. ブルネイにおける企業活動

ブルネイで企業活動を行う場合、第三者による侵害行為があり得ることに留意しなければならない。ブルネイで侵害製品が製造されるのではなく、近隣諸国から侵害品が輸入されるケースがしばしば見受けられる。警察官や税関職員は、侵害品の差押えや侵害者の逮捕といった大きな権限を有しているが、彼らの主体的な侵害品調査は稀であり、そのような調査は知的財産権利者が自発的に行うこと期待していると思われる。そのため、特に製造業者に関していえば、著作権保有者が、市場で侵害品を定期的にチェックし、できる限り早期に必要な対策をとることが望ましい。