オーストラリアにおける特許出願書類
【詳細】
1.パリルート出願
オーストラリアにおいてパリルート出願として特許出願を行う際に必要な書類は、以下の2つである。
特許願書(出願人の氏名および住所、発明者の氏名、優先権出願の情報を含む)
英語の明細書(クレームおよび要約書を含む)および図面(該当する場合)
なお、オーストラリア特許庁に要求されない限り、優先権証明書の提出は不要である。
また、出願人または発明者が特許願書に署名をする必要はない。
2.PCTルート出願
オーストラリアにおいてPCTルートを利用して特許出願を行う際に必要な書類は、以下の1つ乃至4つである。
特許願書(国際出願番号または国際公開番号、国際予備審査請求の有無)
国際予備審査報告書(報告書がある場合)および付随書類として添付された補正(国際予備審査が請求された場合)
明細書の英語の翻訳文および翻訳が正しい旨の宣誓書(もしPCT出願が英語以外の言語で公開された場合)なお、宣誓書は翻訳文に添付され、翻訳者の署名が必要である。
国際予備審査請求の際の条約第34条における補正(国際予備審査報告書の附属書類として添付された補正)の英語の翻訳文および翻訳が正しい旨の宣誓書(補正が英語以外の言語の場合)なお、宣誓書は翻訳文に添付され、翻訳者の署名が必要である。
また、出願人または発明者が特許願書に署名をする必要はない。
3.標準特許明細書
1991年特許規則 (以下、「規則」という。)附則3では、出願書類に記載すべき要件が列挙されている。特許明細書に記載する要件は以下の通りである。
特許明細書は、以下の順序で提示されなければならない(規則附則3-5)
(1)発明の詳細な説明
(2)クレーム
(3)要約書
(4)図面
1990年特許法(以下、「特許法」という。)第40条2項によると、標準特許の明細書は、当業者により実施されるのに十分明確で完全に発明を開示し、出願人の知る限り最良の発明の実施形態を開示しなければならない。
3-1.発明の詳細な説明
詳細な説明の各ページには、1から始まる連続した番号が振られ、残りのページは2,3,…と続けられる。 詳細な説明は、通常、以下の情報を(以下の順序で)含む。
発明の題名
分野(発明が関連する分野)
発明の背景
発明の目的
発明の要約
図面の簡単な説明(図面がある場合)
実施例の説明
配列表(配列表がある場合)
引用文献(引用文献がある場合)
詳細な説明は図面を含んではならないが、化学式、数式、および表は含んでも良い(規則附則3-8(2))。
3-2.クレーム
クレームは発明を規定する(特許法第40条2項(b))。クレームは詳細な説明とは別の用紙から始めなければならない(規則附則3-3(1))。各クレームは、1から連続して番号を振られなければならない(規則附則3-5(4))。クレームは図面を含んではならないが、必要に応じて化学式、数式、および表は含んでも良い。
特許法第40条3項、3(a)および4項によると、クレームは、(a)明瞭かつ簡潔であり、明細書に開示された事項によりサポートされていなければならない。(b)発明を規定するために絶対的に必要でないかぎり、詳細な説明または図面を参照してはならない。(c)単一の発明のみに関連するものでなければならない。
なお、マルチクレームは、オーストラリアでは許可されている。
3-3.要約書
要約書は別の用紙から始めなければならず(規則附則3-3(1))、番号が振られてはならない。規則附則3.3(1)および(2)によれば、要約書は好ましくは50語乃至150語であり、詳細な説明、クレームおよび図面に含まれる技術的な開示の簡潔な要約でなければならない。図面により記載される各主要な技術的特徴は、括弧に入れた参照符号を付さなければならない(例えば部材(10))(規則附則3.3(4))。さらに、要約書は図面を含まなくても良いが、必要に応じて化学式、数式、および表は含んでも良い(規則附則3-8(2))。
3-4.図面
図面は別の用紙から始めなければならない(規則附則3-3(1))。図面のページは、ページ番号と全体のページ数を示さなければならない(例えば1/5、2/5等)(規則附則3-5(3))。 各図面は、詳細な説明とは別に1から番号を振られなければならない。(規則附則3-11(15))。
図面は、色をつけてはならず、色あせない、黒色で、濃く、均一な太さおよび鮮明な線で複写に耐え得るように作成しなければならない。オーストラリア特許庁がデータ取り込みのためにスキャンした際に情報が失われる可能性があるので、グレースケールの画像は通常使用すべきではない。図面の各要素は、他の要素と互いに同じ寸法比率にしなければならない(規則附則3-11(9))。
図面は、理解に必要な語以外の文言を含んではならない(規則附則3-9)。図面において参照符号が付される場合、その参照符号は発明の詳細な説明において言及されなければならない(規則附則3-11(16))。逆に図面に付されていない参照符号は発明の詳細な説明において言及されてはならない(規則附則3-11(17))。
4.イノベーション特許
オーストラリアには、イノベーション特許と呼ばれる、標準特許とは異なる権利保護の制度が存在する。イノベーション特許は、通常短い商品サイクルの発明を保護するもので、20年間保護する標準特許と比較して、8年間という短い保護期間となっている。イノベーション特許は、最大で5つのクレームまでしか含むことはできず、上述の標準特許の書類に関する全ての要件を満たさなければならない。
イノベーション特許には、特許査定前の審査制度がないため、通常は出願から1ヶ月以内で特許査定される。イノベーション特許を権利行使するには、査定後に「認定」審査が必要となる。イノベーション特許は、進歩性に準ずる革新性を有するか評価はされるが、革新性のレベルは、標準特許で求められる進歩性よりも低い。イノベーション特許が「認定」されると、出願人は権利行使することができる。この認定審査のプロセスに通常およそ6ヶ月かかる。