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アルゼンチンにおける商標異議申立制度

 アルゼンチンにおいて、異議申立手続は、商標法第12条から第16条に規定されている。アルゼンチンの異議申立制度は独特であり他の国の制度とは異なっているが、世界のほとんどの異議申立制度と同様に、商標出願に対して異議を申し立てる機会を第三者に与えている。

 

 全ての商標出願は、方式審査を通過した後、商標公報において公告される。この商標公報は毎週水曜日に発行されている。公告された全ての商標出願は異議申立手続の対象となる。

 

 上記の公告日から30日間にわたり、正当な利害関係を有する第三者は正当な理由に基づく異議申立を提起できる。この30日の期間内であればいつでも異議申立を提起できるが、注意すべき点として、いかなる手段によってもこの期間を延長することはできない。

 

 異議申立書が上記の期間内に提出されなかった場合、第三者は異議申立を提起する権利を失うが、期間外に非公式な異議申立書を提出することはできる。ただし、この非公式な異議申立書は、審査官に対する拘束力がなく、実体審査においてほとんど考慮されない。

 

 異議申立は、書面により特許庁に提出しなければならず、異議申立人の正式名および詳細を明記し、異議申立の理由を明確に述べなければならない。また、異議申立を裏づける補足文書を同時に提出することができる。

 

 正当な利害関係を有するいかなる第三者も、異議申立を提起できる。このような利害関係には、いかなる国内または外国の事柄や関係が含まれる。

 

 正当な利害関係の概念は、極めて適用範囲が広い。保護に値する既存の先行権利、登録または先使用を証明できる者は、異議申立を提起する正当な利害関係を有する。言い換えれば、異議申立人は、自己の事業がその新規の出願により影響を受ける可能性があることを証明しなければならない。

 

 異議申立は、一般的に商標法第3条に定められた不登録事由の一つを根拠とする。例えば、先行商標と同一商品もしくは役務に関して出願された同一もしくは類似の商標、登録不可能な原産地名称、または特定の商品もしくは役務の性質、品質、製造技術、機能、出所その他の特徴に関して公衆の誤認を招くおそれのある商標などが挙げられる。アルゼンチン国家、地方自治体または他の国家により使用されている名称、言葉または象徴も登録できない。

 

 第三者が異議申立を提起する最も一般的な理由は、同一または類似の商品または役務に用いられる先行商標との混同のおそれである。しかし、他にも異議申立を提起できる状況は数多く存在する。例えば、登録された先行商標を所有していなくても、異議申立人の業務上の信用や知名度を利用して利益を得ようとする出願人を阻止する場合;出願が先行する商号と類似している場合;または出願が著作権やキャラクター名などの他の権利を侵害するおそれがある、もしくは他の規定に反するおそれがある場合、などが挙げられる。

 

 異議申立を提起する上で、登録された商標を所有している必要はない。使用されている商標であれば未登録であっても商標の所有者は異議申立を提起できる。ただし、当該所有者が相当の期間にわたり商取引において当該商標を継続して使用しており、当該先行商標に関する顧客を獲得していることを最終的に証明できなければならない。

 

 異議申立期間が終了すると、特許庁は当該出願の実体審査を行い、相対的拒絶理由となり得る先行商標の有無について調査する。この実体審査が行われた後、異議申立および審査官の引用する先行商標が一緒に、商標公報において公示されることで出願人に通知される。

 

 上記の通知から1年以内に、出願人は異議申立の友好的な取下げについて異議申立人と交渉しなければならない。この1年間の期間は延長することはできない。

 

 上記の通知の日以降、特許庁は異議申立に対する管轄権を失う。つまり特許庁は、提出された異議申立に関するいかなる問題も解決する権利がない。商標法は、異議申立の理由が何であれ、提起された異議申立に関して、特許庁が何らかの決定を下すことを認めていない。

 

 上記の1年の期間内に、異議申立の友好的な取下げについて交渉するのは、両当事者のみに委ねられている。

 

 友好的な異議取下げに到達する手段として、異議申立人の商標の商品または役務と重複しないように出願の指定商品または役務を限定する、同じ理由により出願の指定商品または役務を削除する、異議申立人の商標を買い取る、または何らかの異議取下げ条件に関する合意書に署名することが挙げられる。

 

 上記のいずれかの合意に達した場合、上記の1年の期間内に合意書が特許庁に提出されなければならず、その後に特許庁は当該商標出願の登録を認可することができる。

 

 異議申立人が複数存在する場合は、全ての異議申立人に対してこの手続を取らなければならない。

 

 一方、上記の1年の期間内に当事者間で合意に達しない場合は、商標法第16条の規定に従い、出願人は当該1年の期間が満了する前に、異議申立に対する訴訟を連邦裁判所に提起しなければならない。

 

 注意すべき重要な点として、異議申立に対する訴訟を提起する前に、出願人は強制調停手続を遂行しなければならない。つまり上記の1年の期間内に、調停手続を遂行した上で、異議申立に対する訴訟を提起しなければならない。調停手続を遂行しない場合は、当該出願は自動的に放棄したものと看做される。

 

 上記の訴訟が提起された場合、出願人の出願は、裁判所が最終決定を下すまで、特許庁により保留にされる。