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中国における判例の調べ方—中国裁判文書網

(1) 中国裁判文書網のウェブサイト(http://wenshu.court.gov.cn/Index)にアクセスし、そのホームページでキーワードを簡体字で入力すれば、検索できます。

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中国裁判文書網トップページ

 

(2)検索画面には、刑事案件、民事案件、行政案件、赔偿案件(賠償案件)、执行案件(執行案件)という5タイトルが表示されますので、任意のタイトルをクリックして判決文を表示させることができます。

画面下部中央に文书总量(文書総量)が表示され、リアルタイムで収蔵数が増加していきます。

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中国裁判文書網検索ページ(民事案件の例)

 

検索画面トップページに表示されていない判決文を検索したい場合は、ページの一番上にある「高級検索」右側の入力欄に、案件番号、当事者名称、裁判所名称などのキーワードを簡体字で入力し、「搜索」(検索)ボタンをクリックすると、検索条件にヒットする判決の案件名が一覧表示されます。

 

また、「高級検索」ボタンをクリックすると、表形式の入力画面が表示され、検索条件を直接入力することもできますが、ここでは説明を省略します。右側の「?」ボタンをクリックすると操作説明が表示されます。

 

(3)画面の左側に案件の検索を補助する類型化された選択肢「所有类目(すべてのカテゴリー)」が表示され、各検索項目をクリックすると検索条件を設定できます。

検索項目として「按关键词筛选(キーワード)」、「按案由筛选(案件理由)」、「按法院层级筛选(裁判所レベル)」、「按地域及法院筛选(地域及び裁判所)」、「按裁判年份筛选(年度)」、「按审判程序筛选(裁判審級)」、「按文书类型筛选(文書種類)」が選択できます。

トップページから「民事案件」を選択し、検索語に「专利」を入力して「搜索」をクリックしたときの「所有类目」を以下に示します。

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「民事案件・专利」で提示される「类目(カテゴリー)」選択肢

 

「按关键词筛选(キーワード)」には、「专利(特許・実用新案・意匠)」、「侵权行为(侵害行為)」、「技术特征(技術特徴)」、「赔偿数额(賠償金額)」などがありますので、検索したいキーワードを選択できます。キーワードの後の括弧にある数字は、当該キーワードに係る案件の件数を示しています。「查看更多(もっと見る)」をクリックすれば、より多くのキーワードが表示されます。

「按案由筛选(案件理由)」には、「知识产权与竞争纠纷(知的財産権と競争紛争)」、「侵害发明专利权纠纷(権利侵害紛争)」などの項目がありますので、検索したい案件理由を選択できます。各案件理由の後にある数字は、当該案件理由に係る案件の件数を示しています。

「按法院层级筛选(裁判所レベル)」には、「最高法院(最高裁判所)」、「高级法院(高等裁判所)」、「中级法院(中等裁判所)」、「基层法院(基礎裁判所)」の4つの項目があります。

「按地域及法院筛选(地域および裁判所)」には、行政区画通りに各地域の各レベルの裁判所が表示されます。例えば、北京市の下には、北京市第一、二、三、四中等裁判所及び知的財産裁判所があり、各中等裁判所の下に、基礎裁判所があります。

しかし、この項目の下には、高等裁判所がありません。例えば、北京市高等裁判所を検索したい場合、「按法院层级筛选(裁判所レベル)」の高等裁判所を選択し、「按地域及法院筛选(地域および裁判所)」の北京を選択すれば、北京市高等裁判所に関連する結果が検索されます。

「按裁判年份筛选(年度)」には、1996年からの年度が表示されます。この年度は、案件の受理日ではなく、裁判日です。

「按审判程序筛选(裁判審級)」には、「一审(一審)」、「二审(二審)」、「再审(再審)※1」、「再审审查与审判监督(再審審査と審判監督)※2」、「其他(その他)」の5つの項目があります。

「按文书类型筛选(文書種類)」には、「判决书(判決書)」、「裁定书(裁定書)」、「调解书(調停書)」のほか、ここには表示されていませんが、「决定书(決定書)」、「通知书(通知書)」、「令(注意)」の項目があり、検索したい法律文書の種類から選択できます。

 

※1 「再審」は、何らかの理由により再審査された事件に係る裁判文書です。

※2 「再審審査」は、再審申立てについて、再審理を行う必要性について審査した裁判文書です。また、「審判監督」は、判決に対しての当事者からの再審査申立て、裁判所の自発的な再審査、検察院の控訴による再審査に関する裁判文書です。

 

例として、案件理由の「知识产权与竞争纠纷(知的財産権と競争紛争)」、裁判所レベルの「高级法院(高等裁判所)」、地域及び裁判所の「北京」、年度の「2018」、審級の「二审(二審)」、文書種類を「判决书(判決書)」をそれぞれクリックすると、以下の画面が表示されます。

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検索結果

 

各案件の案件名をクリックするとその判決書を読むことができます。

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判決書

 

【留意点】

サイトの収録案件数が多いためか、または、アクセス件数が多いためか、条件を選択または入力して「搜索(検索)」ボタンをクリックしても、目的の表示が完結せず、途中で終了してしまう現象が見られます。このような場合、ブラウザの更新ボタンを何度かクリックしていると最後まで表示されます。

(台湾)専利審査・無効審判、訴願中の第三者による閲覧について

(1) 第三者による専利審査あるいは無効審判のファイルの閲覧について

(i) 請求人と閲覧できる資料

(a) 一般的な第三者(専利閲覧規則(中国語「専利閲覧作業要點」)第2点)

 誰でも閲覧できる情報は下記のとおりである。

・開示された特許出願案件。

・公告された特許、実用新案又は意匠の案件。

・取下げられた案件、受理されなかった案件、審決済みの異議申立案件、無効審判案件、訂正請求案件、特許権期間延長案件又は強制実施案件。

・取下げられた実用新案技術評価書の案件、受理されなかった実用新案技術評価書の案件、又はすでに作成された実用新案技術評価書。

(b) 利害関係のある第三者(専利閲覧規則第4点)

 係争専利権に対し、その権利あるいは法律上の利益を有する関係者(例えば専利の出願人が実際の発明者でなく、真正の発明者が閲覧請求をする場合)が閲覧できる資料は、上述のような一般的な第三者が閲覧できる資料の他、以下の資料がある。

・審査中の訂正請求案件、無効審判案、特許権期間延長案件、強制実施案件、又は実用新案技術評価書請求案件。

・無効審判請求人は当該無効審判案件のすべてのファイルを閲覧請求することができる。

・利害関係人は鑑定人又は代理人(専利師及び専利代理人に限らない)に依頼して閲覧請求することができる。

 

(ii) 請求手続き(専利閲覧規則第8点)

(a) 一般的な第三者

 一般的な手続き:台湾特許庁への閲覧請求は文書で行う必要があり、その際、閲覧請求書に閲覧内容及び趣旨を記載しなければならない。

・特許庁E網通ウェブサイト(http://tiponet.tipo.gov.tw/TipoMenu/)でのオンライン検索の場合は、閲覧請求書の提出は不要である。このサービスは、2011年3月1日から実施されている。

(特許庁のお知らせ:

https://www.tipo.gov.tw/ct.asp?xItem=319270&CtNode=7526&mp=1)

・オンラインで閲覧できる具体的な項目

請求書の電子ファイル、明細書の補正、図面、補正請求理由書、応答意見書、訂正請求理由書、再審査請求理由書、分割請求理由書、変更理由書、最初の外国語明細書、特許庁公文書の控え又は添付された映像ファイル(検索報告書なども含まれる)。

・開示された専利情報を日本語で検索できる(閲覧できるデータは中国語であるが、データの種類によりウェブページに実装されているMicrosoft Translatorで日本語を含む諸外国語に翻訳することが可能である)。

特許庁E網通、開示された専利情報の検索(https://tiponet.tipo.gov.tw/S090/UC090-C06/InquiryPatentCaseCensorInfo.do)

(b) 利害関係を有する第三者(専利閲覧規則第8点)

・利害関係人は、閲覧請求書に閲覧請求の根拠となる自己の法律上の利益について釈明し、関連証明資料のコピーを添付しなければならない。

・現在、特許庁のE網通ウェブサイトで提供されている情報は、一般の第三者が閲覧できるものであり、これには応答意見書等がある。利害関係を有する第三者が、非公開の書類、即ち一般の第三者に開放されていない書類を取り寄せたいときは、書面をもって台湾特許庁に請求しなければならない。

(c) 閲覧請求時に注意すべき事項及び閲覧規則(専利閲覧規則第8、9、10点)

・閲覧請求に形式的なフォームに該当しない場合、または不備がある場合、特許庁は7日内に補正するよう請求人に通知しなければならない。補正できない場合や、期限を過ぎても補正しない場合は直ちに却下することができる。

・特許庁は閲覧請求を受理後10日以内に決定を下し、請求人に通知しなければならない。なお、必要である場合はこれを延長することができるが、延長期間は10日を過ぎてはならない。特許庁が閲覧を許可したときは、合わせて閲覧の期日及び場所を指定する。

・閲覧は指定された場所でしなければならず、閲覧場所からファイルを持ち出すことはできない。

・専利案件が電子ファイルによって保存されている場合、原則として映像ファイルまたは複製品を閲覧させる。

 

(iii) 閲覧できないもの(専利閲覧規則第7点、行政手続法(中国語「行政程序法」)第46条)

 他人の営業秘密又はプライバシーに関係するもの。

 特許庁内部文書、内部の稟議書、書簡の原稿、意見あるいはその他の下準備における文書。但し特許庁の同意を得て提供する場合は、この限りでない。

国防上、軍事上、外交及び一般的な公務上の機密に係わり、法律により機密保持しなくてはならない事項。

 行政手続法第46条第2項(処分が下される前のドラフト又はその他の下準備における文書、プライバシー、職務上の秘密、営業秘密、法律により機密保持の必要のある事項、第三者の権利を侵害する恐れがあるもの等)、政府情報公開法(中国語「政府資訊公開法」)第18条第1項、あるいはファイル法(中国語「檔案法」)第18条各号規定の状況。

 

(iv) 請求に要する期間(専利閲覧規則第9点)

 特許庁は、閲覧請求の受理後10日以内に決定を下す。必要である場合これを延長できるが、遅くとも請求後20日以内には決定がなされる。

 

(2) 専利案の訴願手続きにおける第三者の閲覧について

(i) 請求人の資格と閲覧できる資料(経済部訴願案件閲覧規則(中国語「經濟部訴願案件閲覧作業要點」)第3点)

(a) 一般的な第三者

 訴願請求人の同意を得て、かつ訴願受理機関の許可を得た者は、訴願受理機関に対しファイルの文書の閲覧、謄写、コピー又は撮影を請求することができ、政府料金を先に納付した場合は副本、控え又は謄本を請求することができる。

 

(b) 利益利害関係を有する第三者

・第三者は閲覧請求の根拠となる自己の法律上の利益について釈明し、訴願受理機関の許可を得た場合、訴願受理機関に対しファイルの文書の閲覧、謄写、コピー又は撮影を請求することができ、政府料金を先に納付した場合は副本、控えまたは謄本を請求することができる。

・第三者である無効審判請求人が訴願委員会により訴願参加人とされ、その通知を受けたものは、訴願参加人として訴願受理機関に対しファイルの文書の閲覧、謄写、コピーまたは撮影を請求することができ、政府料金を先に納付した場合は副本、控えまたは謄本を請求することができる。

 

(ii) 請求のプロセス及び留意事項(經済部訴願案件閲覧規則第4、5点)

 閲覧請求する際は請求書をもって、案件毎に經済部に請求しなければならない。請求書には、請求事項、請求人の氏名、住所、電話番号、本件との関係、訴願人の氏名、要旨、案件番号等の事項を記載しなければならない。

 第三者が請求する際は、訴願人の同意を得た証明、あるいは法律上利害関係があることを釈明する文書を添付しなければならない。

 經済部は、閲覧請求の受理後10日内に閲覧期日及び場所を指定し、請求人及びと案件の担当者に通知する。ファイルと証拠の準備が整っていないとき、又はその他正当な理由があるときは、ファイルと証拠の準備が整った後に改めて期日を指定し、当該事由を請求人に通知するものとする。

 

(iii) 閲覧できないもの(經済部訴願案件閲覧規則第8点

・訴願裁決のドラフト。

・訴願裁決の準備あるいは審議の資料。

・第三者の正当な権益を守るために機密保持される必要があるもの。

・法律または公益により,機密保持される必要があるもの。

 

(iv) 請求に要する期間(經済部訴願案件閲覧規則第5点)

 經済部は、閲覧請求の受理後10日以内に許可するか否かの決定を下す。但しファイルと証拠の準備が整っていないとき、又はその他正当な理由があるときは、改めて新たな場所と期日を指定するものとする。

 

【留意事項】

 台湾の特許出願、実用新案登録出願、または意匠出願の審査手続きにおける往復書類を閲覧したい場合は(実用新案の場合は、2012年5月以降に公告されたものに限られ、意匠の場合は、2012年6月以降に公告されたものに限られる)、台湾特許庁E網通で検索することが可能である。

 現在、日本語バージョンも提供されている。

 台湾特許庁E網通https://tiponet.tipo.gov.tw/S090/UC090-C06/InquiryPatentCaseCensorInfo.doにアクセスすると下記検索画面が表示される。

30TW09_1検索画面

30TW09_2入力欄(拡大)

 検索画面左上の入力欄に出願番号、公開番号、または登録番号(入力欄下部の「ex:」参照)を入力し、「檢核碼(チェックコード)」欄に、その右側に網掛け表示される4文字のアルファベットを入力し「進行篩選(検索)」ボタンをクリックする。この時、さらに右側の言語選択ボタンから「日本語」を選択すると入出力案内が日本語で表示される。

インドにおける特許審査および口頭審理

記事本文はこちらをご覧ください。

インドにおける商標権に基づく権利行使の留意点

記事本文はこちらをご覧ください。

台湾における権利非侵害確認訴訟

【詳細】

 台湾の現在の実務によれば、被疑侵害者は専利権(日本における特許権、実用新案権、意匠権に相当)侵害訴訟において権利非侵害の抗弁および専利無効の抗弁を提出することができ、智慧財産裁判所(知的財産裁判所)(日本の知的財産高等裁判所に相当)は審理後、この2つの抗弁のうち、いずれか1つが成立すると認める場合、被疑侵害者に勝訴判決を下すことができる。知的財産裁判所の審理効率は高く、被疑侵害者が直面する権利侵害紛争は、通常、比較的短期間で解決することができる。

 

 ただし、仮に専利権者が警告状を送付するだけであったり、市場に情報を広めるだけで、裁判所に専利権侵害訴訟を提起していない場合には、被疑侵害者は台湾経済部智慧財産局に無効審判請求を提起して、前記専利権者の専利権を取り消すよう請求することができるものの、無効審判請求事件の審理は通常少なくとも1年、場合によってはさらに長い時間を要するため、この間、被疑侵害者はずっと不安定な法律状態に置かれることになる。特に被疑侵害者が自らの権利不侵害の主張または専利無効の証拠に相当の自信を有する場合、それにもかかわらず、権利侵害訴訟が提起されていないため裁判所の勝訴判決を早期に勝ち取ることができず、ひいては、その市場での業績に影響を及ぼすことになる。

 

 こういった状況に直面した場合、被疑侵害者は、知的財産裁判所に確認訴訟を提起して、専利権者に関連請求権が存在しない旨の確認を求めることを検討することができる。知的財産裁判所はかかる類の案件についてすでにいくつかの判決を下しており、結果はいずれも被疑侵害者に有利なものである。いくつかの判例を以下に紹介する。

 

 知的財産裁判所の102年(2013年)度民専訴字第102号民事判決は、被告(専利権者)が、原告(被疑侵害者)が売り場または陳列棚を設けている各大手流通業者に対して書簡を送付し、原告製品(疑義侵害品)が係争専利を侵害していると主張し、原告製品を撤去するよう要求したが、原告に対して訴訟を提起しなかったため、原告の製品が被告の係争専利を侵害するか否か不明確な状態に陥ったことを理由に、「原告は確認判決を受ける法律上の利益を有するため、確認訴訟を提起することができる」と判示した。この判決は係争専利が進歩性を備えないことを理由に、被告には、原告による係争製品の係争専利侵害に対する損害賠償請求権、侵害排除請求権および侵害防止請求権が存在しないことを確認している。

 

 知的財産裁判所の102年(2013年)度民専訴字第54号民事判決も、係争専利が進歩性を備えないことを理由に、被告(専利権者)には原告(被疑侵害者)に対する侵害排除請求権および損害賠償請求権がいずれも存在しないことを確認する判決を下している。その背景となる事実も、被告が書簡を送付して原告の権利侵害について警告したが、訴訟を提起していなかった点である。

 

 知的財産裁判所の99年(2010年)度民専訴字第166号民事判決では、原告(被疑侵害者)の主張を採用して、その製品の製造プロセスが被告(専利権者)の係争専利の範囲に含まれないことを理由に、被告には原告に対する侵害排除請求権および損害賠償請求権がいずれも存在しないことを確認する判決を下している。この事案の理由は、被告がすでに原告に対し証拠保全を行っている点であり、特筆すべきは、被告が事実上、すでに専利権利侵害訴訟を提起しているにもかかわらず、裁判所が依然として「原告は確認訴訟を提起する法律上の利益を有する」と判示している点である。

 

 以上のように、確認訴訟の制度は、被疑侵害者が積極的に攻勢に出るための1つの選択肢を提供するものである。

韓国における競合事業者の取引先への警告状発送による損害賠償責任

【詳細】

 ソウル中央地方法院は、特許権侵害を断定することができないにもかかわらず、特許権の侵害を理由に製品の販売中止を要求する警告状を競合事業者の取引先に発送した行為に対して、過失による営業活動妨害を認め損害賠償を命じる判決を言い渡した(ソウル中央地方法院2015年5月1日付第2014ガ合551954号判決)。

 

1.事実関係

 原告Aは「Quick Milk Magic Sipper」という商品名のストロー(以下「本件製品」)を外国のP社から輸入して流通する会社であり、原告BおよびCは、原告Aから本件製品の供給を受け国内大型マートであるホームプラス、ハナロマート、イーマート(以下「取引先」)に納品していた。

 国内で「飲み物の味を出すストロー」に対する特許(以下「本件特許」)を保有する外国法人Q社は国内の弁護士を通して、原告BおよびCの取引先に本件製品がQ社の本件特許権を侵害しているため原告らとの取引を中止し、直ちに販売を中止せよとの趣旨の警告状を発送した。警告状を受け取ったホームプラスとハナロマートは本件製品の買い入れを中止し、または買い入れ量を大幅に減らした。

 この事実を知った原告Aは外国でP社の本件製品がQ社の特許権を侵害しないとする判決が下された事実を挙げ、警告状の発送行為に対する謝罪文をホームプラス、ハナロマート、Eマートなどの取引先に発信することを要請したものの、Q社がこれに応じなかったため、本件製品が本件特許の権利範囲に属さないという趣旨の権利範囲確認審判を提起し、特許庁から権利範囲に属さないとする審決を受けた。その後、原告は被告(特許権者のQ社を代理して警告状を送付した弁護士)を相手取り、警告状発送行為の違法性を主張し、損害賠償請求訴訟を提起した。

 

2.法院の判断

2-1.警告状発送行為の違法性

 競合事業者の警告状を発送する行為が、違法かどうか問題になったが、法院は(1)本件の警告状は単純に特許権侵害の可能性に言及したのではなく、本件製品が本件特許を侵害していると断定している点、(2)取引先は本件製品が本件特許を侵害しているか否かを判断する客観的な能力があると見難い点、(3)警告状を受け取った取引先は法的紛争に巻き込まれるリスクを負ってまで本件製品の販売を強行することは難しい点、(4)競合事業者の取引先に対する警告状発送によって競合事業者と取引先間の取引関係が中断される場合、その取引関係を再び原状回復させるのは難しく、競合事業者が回復し難い打撃を受ける可能性がある点などを総合的に考慮し、警告状発送行為の違法性を認めた。

 

2-2.故意、過失の有無

 競合事業者の警告状を発送した行為について、過失を認めることができるかどうかが問題になったが、法院は(1)一部の国の裁判所で本件製品が本件特許を侵害しないという趣旨の判決が下され、特許権侵害の有無を簡単に判断することができなかった点、(2)それにもかかわらず、被告は法院に特許権侵害を原因とした仮処分申請をしないまま侵害すると断定して警告状を発送した点、(3)被告は警告状発送後、原告Aから海外での本件特許を非侵害とする判決文などの具体的な判断根拠資料まで受領したのにもかかわらず、特に措置を取らなかった点、(4)警告状を原告に先に送らず、原告の取引先に先に警告状を発送する行為は競合事業者から取引先を奪う手段として悪用される可能性があるという点などを認め、少なくとも被告が過失によって原告の営業活動を妨害したと見られると判示した。

 最終的に、法院は特許権侵害を断定することができないにもかかわらず、特許権者を代理して競合事業者の取引先に警告状を発送する行為は違法であり過失も認められ、原告の取引先に対する納品中断や減少にともなう財産上の損害賠償の支払いを命じる判決を下した。

 

【留意事項】

 本判決により、特許権者が訴訟前に侵害問題の円満な解決のために警告状を発送する行為自体が違法であるとはされていない。

 しかし、競合事業者の取引先に直ちに警告状を発送するのではなく、まずは競合事業者に警告状を発送した方が望ましく、それでも侵害品の輸入、販売中止などの是正がなされない場合には、競合事業者に対して訴訟などの法的救済手段を取り、その上で必要であれば取引先に対して訴訟提起の有無などの客観的な「事実」のみを知らせた方が安全であると思われる。また、事前侵害分析を通して、侵害に確信を持てる場合以外には警告状に「侵害している」などの断定的な表現は使わないようにすべきである。

インドにおける特許出願の補正の制限

【詳細】

1.はじめに

インドにおいて、特許出願書類の補正は、自発的な補正と非自発的な補正の2つの分類することができる。これらの補正は特許出願後から特許が有効である間いつでも行うことができる。なお、本稿において、別段の定めがない限り、「特許出願書類」には完全明細書および特許出願に関連する文書が含まれる。

ここで、インド特許法では、仮明細書を添付する場合(仮出願)と、完全明細書を添付する場合(本出願)の2つの出願様式が認められており(インド特許法第7条(4))、上記完全明細書とは、本出願に添付される明細書を意味する。なお、仮出願は、簡易化された出願手続により優先日を確保することにより、主として研究成果などについて特許による早期の権利保護を図るための制度で、米国の仮出願制度や、日本の国内優先権出願制度に類似した制度である。

 

2.非自発的な補正

非自発的な補正とは、特許庁長官が要求する補正のことで、出願人が特許庁から特許出願書類の補正を求められる状況としては、次のような場合がある。

(1)長官が、出願審査後に特許出願がインド特許法の要件を遵守していないと判断した場合。この場合、長官は、出願人に対し補正を要求する(インド特許法第15条)。出願人がその補正を行わない場合、長官は当該特許出願を拒絶することができる。

(2)分割出願がなされた場合で、長官が、クレームされている主題が重複しないよう親出願または分割出願の補正を求める場合(インド特許法第16条)。

(3)長官が、クレームされた発明がすでに公開されているものであると認めた場合。この場合、長官は、出願人に対し、完全明細書を補正するよう要求する(インド特許法第18条)。

(4)特許出願に開示されている発明を実施しようとした場合に、他の特許のクレームを侵害する虞があると、長官が認め、かつ、出願人が当該他の特許についての言及を特許出願に含めることを拒む場合。この場合、長官は、出願人に対し完全明細書を補正するよう要求する(インド特許法第19条)。

 

3.自発的な補正

出願人はインド特許法第57条に基づき、特許出願書類を自発的に補正する機会を有している。自発的な補正を行うにあたっては、所定の特許庁費用とともにForm13による補正申請書をインド特許庁に提出する必要がある。補正申請書には、その補正案の内容および当該申請の理由を記載する必要がある。長官はその裁量によりインド特許法第57条に基づき補正を拒絶もしくは許可すること、または適切と認める条件を付して補正を許可することができる。ただし、特許権侵害訴訟または特許取消手続が高等裁判所に係属している間は、補正申請を拒絶または許可することはできない。

特許付与後に提出された補正申請は、その内容が本質的なものである場合には、インド特許庁により公開される。「利害関係人」は、補正申請の公開後3カ月以内に当該補正に異議を申し立てることができる。インド特許法第2(t)条によれば、「利害関係人」には、当該発明に係る分野と同一の分野における研究に従事し、またはこれを促進する者を含む。補正に対して異議申立がなされた場合、長官は出願人にこれを通知し、決定を下す前に出願人と異議申立人の両方に対し聴聞の機会を与える。補正に対する異議申立手続は、特許の異議申立手続と同じである。特許付与後に提出された補正が許可された場合も、公報に公開される。

 

4.審判部または高等裁判所における明細書の補正

知的財産審判部(Intellectual Property Appellate Board:IPAB)または高等裁判所における特許無効手続において、特許権者は、自己の完全明細書の補正許可を申請することができる。IPABまたは高等裁判所は、適切と認める条件を付した上で特許権者の申請を許可できる。Solvay Fluor GmBH v.E.I. Du Pont de Nemours and Company事件(2010年6月4日決定第111/2010号)において、IPABは「出願人が補正理由の詳細を十分に提示しない場合」には、補正許可の申請を却下可能であるとの決定を下している。

当該補正許可申請の通知は、手続上特許庁長官に対しても発せられ、補正を許可する内容のIPABまたは高等裁判所の命令の写しは、当該命令がなされた後に長官に送付され、長官は特許登録簿への登録を行う。なお特許の発行後に、長官、IPABまたは高等裁判所により特許の補正が許可された場合、次のようになる。

(1)当該補正は明細書の一部を構成するものとみなされる。

(2)明細書その他の関連書類が補正されたという事実はできる限り速やかに公表される。

(3)出願人または特許権者の補正請求の権利に対しては、詐欺を理由とする場合を除きその有効性を争ってはならなくなる。

 

5.特許出願書類の補正の制限

インド特許法第59条は、特許出願書類の補正に対する制限を定めており、「権利の部分放棄、訂正もしくは説明以外の方法によって一切補正してはならず,かつ,それらの補正は事実の挿入以外の目的では,一切認められない」と規定している(なお、「それらの補正は事実の挿入以外の目的では、一切認められない」とは、補正の目的が、誤りを訂正することに関係したものでなければならないということを意味していると考えられるが、この点の解釈を争った判例がないのが実情である)。また補正の範囲についても、新規事項を追加するような補正は認められず、また、クレームの範囲を拡大するような補正も認められない。また異議または審判の手続中の補正に関しても、M/s. Diamcad N.V. v. Mr. Sivovolenko Sergei Borisovish事件(2012年8月3日決定第189/2012号)において、知的財産審判部(IPAB)は、「インド特許法第58条および第59条は、異議または審判の手続中に、認可された特許クレームを、最初に認可されたクレームの保護範囲を拡大するような方法で補正することはできないことを要求するものであるとしている」との判断を下している。

 

6.結論

上述の通り、インド特許法第59条は、認められる補正の内容および範囲を制限するものである。よって、後の段階になって補正を行う必要がないように、明細書作成の時点で、完全なものとしておくことが極めて重要である。

台湾における特許寄与率に関する知的財産裁判所の認定

【詳細】

 台湾では、智慧財産裁判所(知的財産裁判所)(日本の知的財産高等裁判所に相当)は特許権侵害損害賠償の算定について、従来、特許権者が主張する損害賠償算定方式(例:具体的な損害賠償算定説、差額説、総利益説、合理的な権利金説;専利法第97条)および当事者双方が提出するファイル証拠資料に基づいて斟酌し決定していた。

 

 訴訟に係る特許の権利侵害製品における寄与率については、権利侵害者が訴訟において「裁判所は損害賠償決定の基礎とすべきである」と主張した例が過去にもあったが、知的財産裁判所の見解は、法的根拠を欠くことを理由に特許寄与率による損害賠償の算定を採用しないもの、特許寄与率により損害賠償を算定するもの、特許寄与率の概念を認めてはいるものの個別案の事情により損害賠償算定の基礎として採用しないものなど、さまざまである。本稿では、知的財産裁判所の関連判決を列挙し、知的財産裁判所の特許寄与率に関する認定を研究する。

 

1.法的根拠がないことを理由に特許寄与率による損害賠償算定を採用しない判決

 知的財産裁判所102年(2013年)度民専上字第4号民事判決(判決日:2013年10月17日)および知的財産裁判所102年(2013年)度民専上字第16号民事判決(判決日:2013年11月28日)。これらの案件の権利侵害者は、損害賠償算定時に係争特許の係争製品の収益に対する寄与率または係争特許の係争製品に占める割合を斟酌すべきであると主張したが、裁判所は、改正前の「専利法」(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第85条第1項第2号に「損害賠償算定時に係争特許の係争製品の収益に対する寄与率または係争特許の係争製品に占める割合を斟酌すべきである」と規定されていない以上、侵害者が侵害行為によって得た利益により損害を算定すべきであるとして、特許寄与率による損害賠償算定を採用しなかった。

 

2.損害賠償の算定には特許寄与率を考慮すべきであることを認める判決

2-1.特許寄与率により損害賠償を算定する判決

(1)知的財産裁判所99年(2010年)度民専訴字第156号民事判決(判決日:2010年2月22日)は、裁判所が合理的なロイヤリティを斟酌、決定する際、係争特許技術の権利侵害製品の利益および技術に対する寄与率を斟酌要素に入れている。

 「当裁判所は上記の推計された数字および証明済みの権利侵害事実を斟酌し、ならびに、原告が研究専門機関であること、被告が国際的に著名な携帯電話のブランドであること、係争特許についてはこれまで他人に実施許諾がされていないこと、係争特許技術の権利侵害製品の利益および技術に対する寄与率、係争の権利侵害製品の市場占有率、原告が損害賠償額を立証することの困難度など、すべての事情を考慮した結果、原告は合理的なロイヤリティとして少なくとも300万新台湾元を連帯して支払うよう被告に請求することができると認める」。

 

(2)知的財産裁判所100年(2011年)度民専訴字第63号民事判決(判決日:2011年12月28日)。当該案件の裁判所は、特許権侵害損害賠償を算定する際、係争製品(タイヤ周縁部固定板)のタイヤに対する寄与率を考慮し、ならびに、一般消費者または小売業者は当該タイヤ周縁部固定板を単独で購入することはないものの、タイヤ販売時にはすべて当該タイヤ周縁部固定板が一緒についており、タイヤ販売に不可欠な製品で、これがなければ、タイヤの運搬または重ね置きが困難で、一定の効用を有するため、上記のすべての状況を総合して、係争製品からコストを差し引いた後、タイヤに対する寄与率は1つあたり少なくとも5新台湾元である、と認め、ならびに、これに基づいて権利侵害者である被告の得た利益を算定した。

 

(3)知的財産裁判所102年(2013年)度民専上字第3号民事判決(判決日:2013年11月14日)は、裁判所が当該案の損害賠償金額を査定する際、特許技術の権利侵害製品の利益または技術に対する寄与率も考慮要素に入れることを明示している。

 「裁判所は衡平原則(関連する事情を考慮し、法を適用する原則)により、近似する技術特許のロイヤリティ、権利侵害事実をもって推定されるライセンス契約の特性および範囲、ライセンサーとライセンシーの市場における地位、特許技術の権利侵害製品の利益または技術に対する寄与率、権利侵害製品の市場占有率など、すべての情況を斟酌して、適切な合理的ロイヤリティを定め、ファイル内の証拠資料により、本件損害賠償金額を斟酌、決定する」。

 

2-2.特許寄与率に係る概念を認めるものの、個別の事情により、損害賠償算定の基礎として採用しない判決

(1)知的財産裁判所100年(2011年)度民専訴字第61号民事判決(判決日:2012年6月28日)。当該案件の権利侵害者が「係争特許はDVD6Cの400件の特許の1つでしかないため、特許権者が請求できる金額は400で割るべきである」と申し立てたが、裁判所は、以下に述べる理由により、当該権利侵害者の主張を採用しなかった。

 (i)権利侵害者が製造した光ディスクはすべてDVD6Cの400件の特許を使用しなければならないか否か、係争特許とその他399件の特許のロイヤリティの分担率、いずれについても権利侵害者は立証していない、

 (ii)係争特許はDVD規格書の一部分であり、その技術特徵は光ディスク全体に付帯するものであり、単独で切り離すことはできず、かつ、もし係争特許を欠くのであれば、当該光ディスクは価値がなく、このことから、係争特許の当該光ディスクに対する寄与率は100%を占めていることがわかり、400分の1をもって特許権者の損害を賠償すべきとする権利侵害者の認識には理由がない。

 

(2)知的財産裁判所101年(2012年)度民専訴字第34号民事判決(判決日:2013年1月25日)。当該案件の権利侵害者は、「特許権侵害損害賠償を算定する際、侵害者が権利侵害製品を販売して得る利益に対する特許侵害行為の実際の寄与率を検討しなければならない」と主張し、ならびに、市場調査資料をかかる主張の証左とした。裁判所は、どのくらいの消費者が係争特許と関連する「造型」を副次的または再副次的とするのか市場調査には開示されておらず、ゆえに、「造型」が消費者のバイク購入に及ぼす影響の真の比重がどうであるのか全面的に明示することができていないことを理由に、特許寄与率による損害賠償の算定を採用しなかった。

 

(3)知的財産裁判所101年(2012年)度民専上字第7号民事判決(判決日:2012年12月27日)。当該案件の権利侵害者は「係争製品(ブラジャー)の価格により損害賠償額を算定するのではなく、特許寄与率により算定すべきである」と主張した。しかし、裁判所は、係争製品のカタログにより、権利侵害者が係争製品を販売する際、当該製品が係争特許の技術特徴であるN型ストラップを具えることを強調しており、かつ、当該バックベルトは係争製品と分離して販売することができないため、係争製品の価格により権利侵害者が侵害によって得た利益を算定すべきである、と認定している。

 

3.まとめ

 現行の専利法には、損害賠償の算定時に特許寄与率を斟酌すべきである旨の明文規定が置かれていないものの、裁判所が特許寄与率によって特許権侵害の損害賠償を算定することには法的根拠がある。すなわち、当事者が専利法第97条の規定により特許権者が受けた損害額を算定するのが困難である、または証明には明らかに重大な困難を伴う場合、裁判所は民事訴訟法第222条第2項の規定により、関連する事実や証拠(例:近似する技術特許のロイヤリティ、権利侵害事実をもって推定されるライセンス契約の特性および範囲、ライセンサーとライセンシーの市場における地位、特許技術の権利侵害製品の利益または技術に対する寄与率、権利侵害製品の市場占有率など、すべての状況)を総合して、損害賠償金額を斟酌、決定する。

 

 前記知的財産裁判所の判決から、裁判所が特許寄与率を損害賠償算定の基礎として採用するか否か斟酌する際、当事者の提出する事実や証拠が重要な役割を果たしていることがわかる。権利侵害者が、特許技術の権利侵害製品の利益および技術に対する寄与率に係る事実や証拠を具体的に提出することができれば、裁判所は、権利侵害者が権利侵害製品につき得た利益すべてをもって損害賠償を算定するのではなく、特許寄与率による算定を採用する傾向がある。

 

 これに対して、仮に特許権者が、係争特許の係争製品に対する寄与率が100%であることを立証することができれば、権利侵害者が権利侵害製品につき得た利益すべてをもって損害賠償を算定するよう裁判所を説得するチャンスもある。現在、実務において、特許寄与率を損害賠償算定とする抗弁を権利侵害者が提出する例はわずかであり、裁判所の特許寄与率認定についての具体的な基準については、なお考察が必要である。

台湾における景品での使用が商標使用と認められる可能性

【詳細】

 商標の使用は核心的な問題の1つである。商標が連続して3年使用されていない場合、当該商標の商標登録取消事由を構成する可能性がある。また、著名商標にかかる保護については、商標の使用状況が著名を構成するか否か考慮しなければならない。さらに、商標権侵害が成立するか否かは、商標の使用を前提としなければならない。

 商標法第5条は以下の通り規定する。

 

台湾商標法第5条

 商標の使用とは、販売を目的として、ならびに次に掲げる各号のいずれかに該当し、関連する消費者にそれが商標であると認識させることができることをいう。

 (1)商標を商品またはその包装容器に用いる。

 (2)前号の商品を所持、展示、販売、輸出または輸入する。

 (3)提供する役務と関連する物品に商標を用いる。

 (4)商標を商品または役務と関連する商業文書または広告に用いる。

 前項各号の状況は、デジタルマルチメディア、電子メディア、インターネットまたはその他媒介物の方式で行う場合も同様である。

 

 また同法第57条第3項には「前項の規定により提出する使用に関する証拠は、商標が真実、使用されていることを証明でき、ならびに商業取引の一般慣習に合致しなければならない」と規定されており、これは商標取消に関する第67条第2項に準用される。

 

 商標法第5条の規定により、商標の使用は「販売の目的」に限られている。これまでの実務見解によれば、いわゆる「販売の目的」は有償の行為に限定され、無償行為は含まなかった。したがって、景品は通常、商標の使用と認定されない。しかし、台湾経済部智慧財産局(日本の特許庁に相当)が智慧財産裁判所(知的財産裁判所)(日本の知的財産高等裁判所に相当)およびその他各界の専門家および学者を集めて共同で議論し、ならびに外国の立法例および実務見解を参酌した後、智慧財産局または知的財産裁判所は特定の条件下での景品について、商標の使用と認定した。

 

 知的財産裁判所の103年(2014年)度行商訴字第140号行政判決は、VALENTINO商標商品の景品に関する商標登録取消事件において、VALENTINOの各種商品を一定額購入した消費者にVALENTINOの「香水」を景品として提供する行為について、「VALENTINOの香水類商品を景品として提供する行為は、香水類における商標使用を構成する」と判示した。また、知的財産裁判所の103年(2014年)度行商訴字第128号行政判決も、VALENTINOの別のシリーズの商標に係る景品紛争について、同一の見解を採用している。

 

 知的財産裁判所は、次のように指摘している。係争のVALENTINO商標を「香水」商品およびそのパッケージに用いて商品と結合することは、消費者に係争商標を認識させるに足るものであり、かつ、販売を促進するという商業取引プロセスを利用して、係争のVALENTINO商標を標示する香水商品を景品として提供し、マーケットにおける販売というメッセージを伝達し、商品出所表示という機能を果たしており、香水の景品を通じて係争商標を消費者に認識させ、商標法第5条にいう「商標の使用」に合致する。

 

 智慧財産局または知的財産裁判所は商標使用に関する見解を変更し、一部の条件付きの景品について商標の使用と認定しており、今後の類似案件の審理について、かなりの影響を及ぼすと予想される。

インドにおける遺伝資源の利用と特許制度

「各国における遺伝資源の利用と特許制度に関する調査研究報告書」(平成28年2月、日本国際知的財産保護協会)第Ⅰ部11.

(目次)

第Ⅰ部 各国・地域の名古屋議定書の実施状況

 11. インド P.123

第Ⅲ部 概括表

 概括表 各国における名古屋議定書の実施状況 P.201, 203, 205