韓国における不正な目的をもって出願された模倣商標への対策
(1) 関連条文
模倣出願の防止と関連する条項は、商標法第34条第1項第13号と商標法第34条第1項第14号である。
商標法第34条第1項第13号「国内又は外国の需要者間に特定人の商品を表示するものであると認識されている商標(地理的表示を除く)と同一又は類似の商標であって不当な利益を得ようとするか、その特定人に損害を加えようとする等の不正な目的を持って使用する商標」は登録を受けることができないと規定している。
また、商標法第34条第1項第14号では「国内又は外国の需要者間に特定地域の商品を表示するものであると認識されている地理的表示と同一又は類似の商標であって、不当な利益を得ようとするか、その地理的表示の正当な使用者に損害を加えようとする等の不正な目的を持って使用する商標」は、登録を受けることができないと規定している。
以下、この条文の解釈を記載する。
(i) 「需要者」
必ずしも複数国家の需要者であることを要せず、1か国で認識されていれば足る。
(ii) 「特定人の商品を表示するもの」
その商標の使用者が具体的に誰であるかまで知らなくても、ある特定の出所があることを認識されていればよい(商標審査基準第5部第13章)。
(iii) 「不正な目的」
本号で規定する「不当な利益を得ようとするか、その特定人に損害を加えようとする等の不正な目的」は次のとおりである。
(a) 外国の正当な商標権者が韓国内市場に進入することを阻止しようとするか、または代理店契約締結を強制する目的で、商標権者がまだ登録していない商標と同一または類似の商標を出願した場合
(b) 著名商標と同一または類似の商標であって、他人の商品や営業と混同を起こすおそれはないとしても、著名商標の出所表示機能を希釈化させる目的で出願した場合
(c) 創作性が認められる他人の商標を同一または極めて類似に模倣して出願した場合
(d) その他、他人の先使用商標の営業上の信用は顧客吸引力等に便乗して不当な利益を得る目的で出願した場合
(iv)「不正な目的」判断時の留意事項
(a) 審査官は職権でインターネット検索等によって出願商標が本号に該当するのか否かを調査し、その結果を根拠として拒絶理由を通知することができる。
(b) 本号は、商品が非類似であるか、経済的牽連関係がない場合にも適用が可能であり、先使用商標の創作性が非常に高い場合、先使用商標と出願商標間の同一・類似性が非常に高い場合、先使用商標が周知・著名な場合、出願人と特定人間の事前交渉があって出願人が特定人の商標を事前に認知していたと思われる場合等においては、出願商標と先使用商標の指定商品間の牽連関係を広く見て、不正な目的の有無を判断することができる。
(c) 指定商品の一部について不正な目的があると判断して拒絶理由を通知した場合、出願人が先使用商標と経済的牽連関係がある商品を削除補正しても、不正な目的は治癒されないものとみなす。
(v) 判断時点
上本号を適用するにおいて、他人の商標が国内外の需要者らに特定人の商品を表示するものであると認識されている商標に該当するか否かは、商標登録出願をした時を基準として判断する。
なお、地理的名称に関しても正当な地理的表示使用権者ではない第三者が商標登録を受けて正当な地理的表示使用権者の地理的表示使用を排斥したり、高額の商標権移転料を要求する等の弊害を防止したりするために、これと関連した模倣出願は登録を受けることができないように実務上運用している。
(2) 模倣出願および登録に対する対策
(i) 出願段階
商標出願後15日程度でKIPRIS(http://eng.kipris.or.kr/enghome/main.jsp)に公開される。査定が下りるまでの間はいつでも、誰でも「情報提供」を行うことができる(商標法第49条参照)ので、積極的に情報提供を行い登録されるべきでない出願が登録されるのを防ぐ。また、出願公告日から2か月以内であれば誰でも「異議申立」をすることができる(商標法第60~66条、71条参照)。もし時間が不足であれば、まずは期間内に異議申立をし、異議申立の理由は異議申立期間経過後30日以内に補正をすれば良い。
(ii)登録段階
(a)無効審判
模倣出願が登録された後に発見されれば、登録無効事由(商標法第34条第1項第13号、同第14号、同第21号)を検討して、無効審判請求をすることができる。請求人は利害関係人でなければならない(商標法第117、118、122条参照)。無効審判は情報提供または異議申立に比べ手続きが複雑で相当な費用を要し、また当事者系に該当するため、お互いに攻防をするようになり口頭弁論(1回)をする可能性が高い。相手方の主張を明確に把握し、対応をしなければならない。
なお、韓国内外における周知・著名性については、例えば、周知性が高ければ不正な目的であると認められやすく、逆に、不正な目的であれば周知性がそれほど高くなくても認められることもある。どちらにしても、証拠資料はできる限り多数提出するのが望ましい。
(b)不使用取消審判(商標法第119条第1項第3号)
登録商標について最近3年間の使用事実があるかを調査し、使用事実がない場合には、不使用取消審判請求をする。(本データバンク内コンテンツ「韓国における商標の不使用取消審判制度」参照)
(c)不正使用取消審判(商標法第119条第1項第1号および第2号)
商標権者が故意で指定商品に登録商標と類似の商標を使用するか指定商品と類似の商品に登録商標又はこれと類似の商標を使用することにより、需要者をして商品の品質の誤認または他人の業務に関連した商品との混同を生じさせた場合等には、不正使用取消審判請求をする。
(d) その他
先使用権が主張できるかどうか(商標法第99条)を検討したり、登録者から商標権を譲り受けたり、使用権を設定してもらうかどうかについて検討する。
(3) 模倣出願として商標登録を受けることができない商標(商標法条文)
・商標法第34条第1項第9号:
他人の商品を表示するものであると需要者らに広く認識されている商標(地理的表示は除く)と同一・類似した商標として、その他人の商品と同一・類似した商品に使用する商標
・商標法第34条第1項第10号:
特定地域の商品を表示するものであると需要者らに広く認識されている他人の地理的表示と同一・類似した商標として、その地理的表示を使用する商品と同一であると認識されている商品に使用する商標
・商標法第34条第1項第11号:
需要者らに顕著に認識されている他人の商品若しくは営業と混同を起こさせるかその識別力または名声を損傷させるおそれがある商標
・商標法第34条第1項第13号:
国内又は外国の需要者らに特定人の商品を表示するものであると認識されている商標(地理的表示は除く)と同一・類似した商標として、不当な利益を得ようとするか、その特定人に損害を負わそうとする等、不正な目的で使用する商標
・商標法第34条第1項第14号:
国内または外国の需要者らに特定地域の商品を表示するものであると認識されている地理的表示と同一・類似した商標として、不当な利益を得ようとするか、その地理的表示の正当な使用者に損害を負わそうとする等、不正な目的で使用する商標
・商標法第34条第1項第20号:
同業・雇用等の契約関係若しくは業務上の取引関係またはその他の関係を通じて他人が使用するか使用を準備中の商標であることを知りながらその商標と同一・類似した商標を同一・類似した商品に登録出願した商標
・商標法第34条第1項第21号:
条約当事国に登録された商標と同一・類似した商標であって、その登録された商標に関する権利を有した者との同業・雇用等の契約関係若しくは業務上取引関係又はその他の関係にあるかあった者がその商標に関する権利を有した者の同意を受けずにその商標の指定商品と同一・類似した商品を指定商品として登録出願した商標
【留意事項】
商標出願は、出願後15日程度で、韓国特許情報検索サービス(www.kipris.or.kr)で出願情報が公開されて検索することができるので、これを活用する等して常に情報収集に努めることが望ましい。
エジプトにおける模倣品被害実態調査
「エジプトにおける模倣品被害実態調査」(2016 年5 月、日本貿易振興機構ドバイ事務所)
(目次)
- エジプト:国の背景 p.1
- エジプトの主要経済指標 p.1
- エジプト経済の変遷 p.1
- 重要な数値 p.2
自動車部門 p.2
家電 p.2
アパレル/衣料 p.3
化粧品業界 p.3
- エジプトにおける模倣品 p.4
- 概要 p.4
- 模倣品の影響 p.4
III. 国内の模倣品市場 p.5
- AL-ATABA 地区 p.6
- AUSIM地区 p.7
- AL GAMALIYA 地区p.7
- Al MOSKI 地区 p.8
- AL BARAJIL 地区 p.8
- BULAQ AD DAQRUR 地区 p.9
- 10th of Ramadan city 地区 p.9
- Al Mansoura 地区 p.10
- エジプトの生産現場:p.11
- Al tawfikiya 地区 p.12
- Souk al Hirafiyin 地区p.12
参考文献p.13
トルコにおける模倣品被害実態調査
「トルコにおける模倣品被害実態調査」(2016 年5 月、日本貿易振興機構ドバイ事務所)
(目次)
1 はじめに p.1
2 トルコにおける知財権行使の現状 p.2
3 模倣品市場—自動車部品 p.6
4 製造地域—自動車部品 p.26
5 模倣品市場- 装飾品/時計 p.29
6 製造地域—装飾品および時計 p.34
7 模倣品市場- プリンターカートリッジやトナーなどの事務用品 p.36
8 製造地域—プリンターカートリッジやトナーなどの事務用品 p.43
9 模倣品市場- 衣料品/繊維製品 p.44
10 製造地域—衣料品/繊維製品 p.63
11 模倣品市場- 家電製品/電気部品 p.68
12 製造地域 —家電製品/電気部品 p.76
13 模倣品市場- スキンケア商品/化粧品 p.76
14 製造地域—スキンケア商品/化粧品 p.87
サウジアラビア王国における商標権取得・行使に関する制度概要
「サウジアラビア王国における商標権取得・行使に関する制度概要調査」(2016 年6 月、日本貿易振興機構ドバイ事務所)
(目次)
第1章 – 概要 p.3
第1節 – サウジアラビアにおいて施行される法と手続きの概要 p.3
第2節 – 統計 p.4
第3節 – 登録商標の必要条件 p.4
第4節 – 登録期間 p.6
第5節 – イスラム法(シャリーア) p.6
第6節 – 商標登録出願の手続き(フローチャート付) p.7
第2章 – 商標登録出願 p.9
第1節 – 商標登録出願の事前検索 p.9
第2節 -商標登録出願の提出 p.9
第3節 – 商標 登録の利点 p.10
第3章 – 商標登録後 p.11
第1節 – 登録の取消 p.11
第2節 – 合併または名前の変更 p.11
第3節 – エンフォースメント p.12
第4節 – 行政アクション p.12
第5節 – 訴訟 p.12
第6節 – 税関 p.13
第7節 – 商標登録の譲渡 p.13
第8節 – ライセンス p.14
第9節 – オンラインにおける問題 p.14
付録A – 特定委任状サンプルp.15
イランにおける模倣品被害実態調査
「イランにおける模倣品被害実態調査」(2016 年5 月、日本貿易振興機構ドバイ事務所)
(目次)
1 イランにおける知的財産権保護状況の概要 p.1
2 はじめに —市況報告 p.9
3 自動車部品 p.11
4 家電製品および電気部品 p.14
5 装飾品および腕時計 p.18
6 化粧品およびスキンケア商品 p.20
7 事務用品 p.23
8 服飾品および衣類 25
9 イランにおける模倣品対策の取組 p.27
韓国における特許製品の並行輸入
【詳細】
特許製品の並行輸入とは、外国で流通している真正品(特許権者の意思に基づいて適法に製作・流通された特許製品)を特許権者や権利者の許諾なく輸入する行為であり、並行輸入が特許権侵害を構成するか否かが問題となる。
韓国では、ソウル地方法院東部支院1981年7月31日宣告第81 GaHap 466号(特許権侵害差止)判決が、法院が並行輸入と特許権の消尽との関係について判断した唯一の事例である。
上記判決の事案において、原告は抗癌剤であるアドリアマイシン剤およびその製造方法について、イタリアと韓国で特許権を保有するイタリアに本社を置く製薬会社であり、原告はイタリアでアドリアマイシン剤の一種であるアドリブラスチナを自ら製造した後に、イタリア卸売商を経てスイス企業に販売した。被告は、抗生物質であるアドリブラスチナを輸入して韓国で販売していた韓国の製薬会社であり、原告が製造・販売したアドリブラスチナを原告の承諾なしに上記スイス企業から韓国に輸入、販売した。
原告は、被告を相手取り自社の韓国特許侵害を主張し、訴訟を提起した。訴訟過程において原告は、各実施行為は特許の効力上互いに独立したものであり、登録された国別に特許権もそれぞれ独立したものであるので、たとえ原告がイタリアで特許権を行使して製造した後に販売したものであっても、原告の承諾なく被告がこれを国内に輸入、販売、配布する行為は原告の韓国特許侵害にあたると主張した。
法院は、各国における特許権は互いに独立的し、個々の特許実施行為も互いに独立しているとしても、原告の本件特許権は原告が上記薬品を独占的に製造し、スイスに輸出することで既に行使され消尽し、その後の上記製品の流通・消費は原告の製造、販売行為に基づいて、その製品が実需要者に分配される過程に過ぎず、原告が関与する事情ではないとした。そして、上記薬品が適法に輸出された第三国から並行輸入業者である被告が再度輸入する場合にまで原告が追及権を行使することはできず、被告が特許権者の承諾なく第三国から上記特許製品を輸入したとしても、原告の特許権が侵害されたとみることはできないと判示した。
さらに法院は、たとえ第三国に特許権者の特許登録がなされていないため、原告が上記製品を輸出し特許実施料を徴収する等の特許権を行使する機会がなかったとしても、少なくとも特許権者の手を離れた当該製品に関する限り特許権行使なく流通・消費されるであろうということを特許権者も容認したとみるのが妥当であると判示した。
上記判決は国際的消尽を認め、並行輸入の特許権侵害を否定した立場に立っているものであるが、上記1981年下級審判決の立場が韓国の現在の状況に照らしても継続維持されるか否かについては明確ではない。
インドネシアにおける商標権の権利行使と模倣意匠への対応
【詳細】
1.インドネシアにおける商標権に基づく権利行使の検討
インドネシアは先願主義を採用しており、商標権侵害で侵害者に対して措置を講じるには、商標を登録し商標権を得ておかなければならない。商標が先に登録され、その保護範囲が広範であるほど、商標権者は、自らの権利を行使し知的財産を保護するための有利な立場を得ることが出来る。
しかしながら、商標権侵害において侵害者に対して法的措置を講じる前に、商標権者は以下のような事項を事前に理解しておく必要がある。
1-1.刑事手続き
親告罪である知的財産権侵害事件は、インドネシア知的財産権総局(Directorate General of Information and Public Relations: DGIPR)の捜査局または警察により着手される。当局が侵害に対する手続きを進める前に、権利者は正式な告発状を提出しなければならない。
告発状を受理すると、DGIPR捜査局の捜査官は、知的財産権侵害に関する捜査の実施に関して警察と同様の権限が与えられる。通常、捜査はレイド(摘発)へとつながるが、滞貨案件と捜査官不足のため、実際にレイドが実施されるまでには数ヶ月かかることもある。
1-2.民事手続き
登録商標の商標権者またはライセンシー(適切なライセンス契約の登録を条件として)は、損害賠償請求または登録商標の不正使用に関する行為を止めさせるために、商標権侵害者を相手取り、商務裁判所に訴訟を提起することができる。
訴訟審理中のさらなる損失を防ぐため、商標権者(原告)は、侵害者(被告)に対して商標権者の被侵害商標を使用した製品またはサービスの生産、流通および取引を停止することを命じるよう、裁判所に差止請求することができる。
商務裁判所は裁判所の判決が最終的なものとなり、法的拘束力を有した後に初めて商品を処分するよう命じることができる。また、商務裁判所の判決に対しては最高裁判所に上告することができる。
1-3.水際取締り
インドネシア関税法には、税関登録や輸出入商品に関する知的財産疑義侵害物品の差止命令の申し立ては規定されていないが、差止め命令および仮処分に関する2012年最高裁判所規則に基づき、要求することが可能となった。この規則に基づき、知的財産権者は、疑義侵害商品の通関を一時的に差し止める申し立てを商務裁判所に請求することができる。
税関職員は、商務裁判所の発効した令状を受理すると、輸入者、輸出者または商品の所有者に対して書面で通知を行い、令状の受理日をもって商品の通関を差し止めなければならない。知的財産権者は、商務裁判所長から許可が得られれば、疑義侵害物品を調査することができる。
差止期間は10営業日で、商務裁判所から追加の令状が発行されることにより、さらに10営業日延長することができる。この期間内に、知的財産権者は自らの権利を維持するために必要とされる法的手続きを行っていることを税関職員に通知しなければならず、通知がなければ税関職員は商品の差止を終了する。
しかしながら、この規則にもかかわらず、実際にこの手続きを進めることは非常に難しい。貨物に関する十分な情報と裏付け証拠がない場合が多く、商品が模倣品であるか否かを判断することは難しい。
2.権利侵害された場合の準備
侵害者に対して措置を講じる前に、知的財産権者は、自らの権利に関して瑕疵が無いことを確認し、侵害者が反訴を提起してくることも想定しておく必要がある。こうした対応には、知的財産権の有効性確認、市場における知的財産権の使用状況調査、知的財産権権利者の確認、証拠の保全等が含まれる。
インドネシアでは知的財産権者は侵害者を訴追するよりも侵害者と和解することを選択することが多く、和解では通常、模倣品の破壊、誓約および侵害者による公的謝罪を行う。
権利侵害された場合の対応の第一歩として、侵害者および被侵害商標の使用に関する可能な限り多くの情報を集める調査を行うことが重要である。この調査結果を基に侵害者に対する戦略構築を行う必要がある。調査は、DGIPRの捜査官を通じて実施することが可能ではあるが、調査結果を速やかに入手し、秘密を保持する観点から調査会社等を使用することが推奨される。侵害製品が食品または医薬品に関するものである場合、インドネシア食品医薬品監督庁(Badan Pengawas Obat dan Makanan: BPOM)における調査も実施されなければならない。
警告状は、調査により得られた情報に基づき作成する。ただし警告状はインドネシア語で記載しなければならない。警告状送付の後、追加書面の提出や相手側との交渉等が行われる。
3.侵害請求した場合のリスク
商標権者が商標登録に関して商標権を主張した場合、当該商標をインドネシアにおいて3年間継続して使用していない場合、相手方から不使用取消審判請求されると当該商標は取り消され得る。したがって、相手方による権利濫用の抗弁等を回避するためには、商標に関する有効性の確認および使用状況を確認することは重要である。
知的財産権者が疑義侵害商品の通関を一時的に差し止める令状を商務裁判所に請求したが、当該商品が侵害していないことが判明した場合、当該商品の所有者は、知的財産権者に対して逆告訴し、商品の留置に対する損害賠償請求を求めることができる。
4.「商標を使用している」の定義と証拠
登録商標は、登録後継続して3年間使用されていない場合、不使用取消の対象となる。商標が取り消されることを防ぐためには当該商標が使用されていなければならないが、その際、商標権者は、「商標の使用」の定義を念頭に置かなければならない。
インドネシア商標法第61条によると、登録商標は、その商標の使用が登録商標と合致していない場合、取消の対象となる。ここで言う「合致」とは、製品上における商標の実際の表示と商標登録証における商標の表示が、言葉、文字および色の表現など全て同一でなければならないことを意味する。
(参考)インドネシア商標法第61 条
(1)商標登録簿からの商標登録抹消は、DGIPRにより職権でまたは当該商標の所有者の請求に基づいて行われる。
(2) DGIPRの職権による商標登録抹消は、次に掲げる場合に行うことができる。
(a)商標が、DGIPRにより認められる理由がある場合を除き、登録の日または最後に使用した日から継続して3年以上商品またはサービスの取引に使用されていない場合
(b)商標が、登録商標と合致しない商標の使用を含め、登録出願された商品またはサービスの種類と一致しない商品及び/またはサービスの種類に使用されている場合
(3)(2)(a)にいう理由とは、次に掲げることである。
(a)輸入の禁止
(b)当該商標を使用した商品の流通の許可に関する禁止する権限のある当局からの暫定的な決定、または
(c)政令で定められたその他の同様の禁止
(4)(2)にいう商標登録抹消は,商標登録簿に記録され、商標官報に公告される。
(5)(2)にいう商標登録抹消の決定に対する不服申立は、商務裁判所に提出することができる。
例えば、商標が平易なブロック文字で登録されているが、製品上で様式化、すなわちデザイン化された文字などで表現されている場合、登録商標は「使用された」と見なされないことを意味する。また、商標が登録証において白と黒で表示されているが、製品上では赤色で表現されている場合も「使用」とは見なされない。
商標の使用証拠には、商標が付され登録後3年間継続して使用された証拠として日付が付された出版物、広告物、請求書、カタログ、製品やサービスの包装などが含まれる。
また、各ライセンス契約が適切にDGIPRに登録されていれば、ライセンシーによる登録商標の使用が当該商標の適切な使用であると見なされる。
5.盗用(模倣)意匠出願に対する対策
インドネシア工業意匠法第26条によると、利害関係人は、意匠公開日から3ヶ月以内に公開された意匠出願に対して異議を申し立てることができる。
(参考)インドネシア工業意匠法第 26 条
(1)第25条(1)に規定する公開開始日以降、何人も実体的な事由の異議をDGIPRに対して書面でかつ本法に規定する手数料の支払って申し立てることができる。
(2)(1)の規定における異議は、公開開始日から3ヶ月以内に申し立てることができる。
(3)(2)に規定する異議は、DGIPRから出願人に通知される。
(4)(2)に規定する異議に対して、出願人はDGIPRからの通知送付の日から3ヶ月以内に答弁することができる。
(5)(1)に規定する異議申立があったときは、審査官による実体審査が行われる。
(6)DGIPRは異議および答弁を当該出願の登録または拒絶の審査における参考資料として提供する。
(7)DGIPRは(1)に規定する異議を認めるか否かの決定を(2)に規定する公開の終了日から6ヶ月以内に下す。
(8)(7)に規定するDGIPRの決定は、出願人または代理人に対して当該決定の日から30日以内に書面で通知される。
異議申立の通知を受領した後、当該意匠出願人は、当該通知がDGIPRにより送付された日から3ヶ月以内に答弁を提出することができる。
その後、審査官は、異議申立および答弁の双方を考慮し、当該意匠出願の実態審査を行い6ヶ月以内に決定を下す。登録を拒絶された出願人は、拒絶通知の日から3ヶ月以内に商務裁判所に訴訟を提起することができる。
盗用(模倣)意匠出願が既に登録されている場合、インドネシア工業意匠法第37条および第38条は、利害関係人が工業意匠権の登録取り消しを求める訴訟を商務裁判所に提起することを認めている。
(参考)インドネシア工業意匠法第37条
(1)登録された意匠は、意匠権者の書面による請求に基づいて、DGIPRにより取り消すことができる。
(2)(1)に規定する意匠権の取消は、意匠一般登録簿に記録された実施権者が、当該登録取消の請求に添付される書面において承認を与えない場合は、認められない。
(3)意匠権の取消の決定はDGIPRにより次の者に書面で通知される。
(a)意匠権者
(b)意匠登録簿の記録に従い、ライセンスを得ている実施権者
(c)取消請求をした者。この場合は、取消の決定の日以降に意匠権がもはや有効でないことを記載する。
(4)(1)に規定される意匠の取消の決定は、意匠登録簿に記録され、意匠公報により公告される。
(参考)インドネシア工業意匠法第 38 条
(1)意匠登録の取消訴訟は、利害関係人によって第2条(2)または第4条に規定する理由を伴い商務裁判所に提起することができる。
(2)(1)の規定における意匠登録の取消に関する商務裁判所の判決は、判決の日から14 日以内にDGIPRに送付される。
しかしながら、意匠登録原簿に登録されているライセンシーが、登録の取消請求に添付されなければならない承認書を提供しない場合、取消を行うことができない。したがって、すでにライセンス登録されている場合、第三者にライセンスされた意匠登録の権利取下げをすることは難しい。
意匠権者は、異議申立の機会を逸しないように、模倣および類似の意匠を監視するために民間のウォッチサービス企業を活用する方法もある。企業が多くの登録意匠を有する場合、主要な意匠分類についてのみ監視することも費用削減のために考慮する必要がある。
潜在的な侵害者に対して、意匠をコピー使用すると侵害として見なされ得るということを警告するために、すべての製品上に「登録意匠」という語を記載することが推奨される。