ロシアにおける商標出願の拒絶理由通知に対する対応策
実体審査の結果、商標出願に拒絶理由があると審査官が判断したときは、直ちに拒絶査定をすることなく、拒絶理由を出願人に通知する。応答期間は拒絶理由の発送日から6か月である(ロシア民法第1499条第3項)。拒絶理由通知に対する対応策としては、以下のものがある。
(1)意見書の提出
(i)識別力を有しないとの拒絶理由の場合
出願商標が指定商品等の品質表示に過ぎないと認定されたが、当該認定は審査官の誤解によるものであって不適切なものである場合は、意見書にてその旨を主張する。
出願商標の一部に識別力がない部分が含まれている場合も拒絶理由が通知されるが、当該部分が当該出願商標の主要部分でなく、当該出願商標全体として識別力を有する場合は、当該部分について、権利不要求をするとともに、その旨を意見書にて主張することにより、拒絶理由の克服を狙うこともできる(ロシア民法第1483条第1項)。
また、識別力を有しないとの拒絶理由の場合、長年の使用により識別力を獲得したことの主張および立証を行うことにより、拒絶理由の克服を狙うこともできる(ロシア民法第1483条第1項)。
(ii)他人の先願登録商標と類似する、との拒絶理由の場合
他人の先願登録商標と類似する、と認定された場合は、称呼、観念および外観のいずれの点からも出願商標とは非類似である旨の反論を意見書で行うことにより、拒絶理由の克服を試みることができる。
また、後述する指定商品・役務(以下、「指定商品等」という)の補正や不使用取消訴訟等により拒絶理由が解消した場合には、意見書にてその旨を主張する。
(iii)先行する商号・取引上の表示と類似する場合
この理由は職権審査の対象ではなく、第三者より情報提供された場合に限り、先行する商号・取引上の表示と類似する、との拒絶理由が通知される。商号は、ロシアで登記されている場合に限り保護され、取引上の表示に関する権利は、識別力がありロシアの特定の地域で使用され知られるようになった場合に発生し、1年間全く当該地域で使用されない場合は消滅する。したがって、引用された先行する商号がロシアでは未登記の場合や引用された取引上の表示が1年以上不使用の場合は、意見書にてその旨を主張することにより争うことができる。また、引用された先行する商号や取引上の表示が使用される商品等が指定商品と非類似の場合も意見書にて争い、拒絶理由の克服を試みることができる。
(2)指定商品等の補正
指定商品等の補正により拒絶理由を克服することもできる。例えば、指定商品等の一部のみが先願登録商標の指定商品等や先行する商号等を使用する商品等と類似する場合に、当該類似する指定商品等を削除することにより、拒絶理由を克服できる。
(3)商標出願の分割
拒絶理由のない指定商品等については、分割出願を行うことにより、早期に登録を受けるとともに、拒絶理由を有する指定商品等については、別途争うという対応を取ることもできる。
(4)先願商標権者または登録周知商標の所有者(以下、「先願商標権者等」という)との交渉
拒絶理由が先願登録商標または登録周知商標と類似することを根拠とする場合、先願商標権者等と交渉を行うことにより、拒絶理由の克服を試みることができる。交渉の内容としては、以下のものがある。
(i)商標登録を受けることについて、先願商標権者等の同意を受けるための交渉
交渉により後願の出願商標の登録を受けることについて先願商標権者等より同意を受けることができれば、拒絶理由を克服できる可能性がある(ロシア民法第1483条第6項)。ただし、先願商標権者等の同意に審査官は拘束されず、同意を受けて拒絶理由を解消させるか否かは審査官の裁量に委ねられているので、前記同意を受けたとしても、拒絶理由を克服できない場合もある。
また、先願登録商標と後願の出願商標が同一であって、かつ、先願の指定商品等と後願の指定商品等も同一の場合には、先願商標権者の同意を受けたとしても、拒絶理由を克服することはできない。
(ii)先願商標権を譲り受けるための交渉
上記交渉により、先願商標権を譲り受けることできれば、先願商標権者と後願の出願人が同一人となるため、拒絶理由を克服することができる。
先願商標権者等の交渉の結果、同意書を得ることができたとしても、これだけでは拒絶理由は解消せず、当該同意書を上記意見書とともに提出しなければならない。
同様に、先願商標権の譲り受けの交渉に成功した場合も、これだけでは拒絶理由は解消しない。譲渡契約は書面により締結していなければならず、登録しなければならない(ロシア民法第1234条および第1490条)。譲渡契約が書面によらない場合や登録されていない場合は、いずれも商標権の譲渡は無効である(ロシア民法第1234条第6項)ため、前記譲り受けの交渉が成功した場合は、譲渡契約書を作成の上、移転登録申請を行って移転登録をしなければならない。
(5)不使用取消訴訟の提起、無効審判の請求
拒絶理由が先願商標と類似することを根拠とする場合、当該先願商標の登録に対して不使用取消訴訟の提起や無効審判の請求をし、当該商標登録を消滅させることにより拒絶理由の克服を試みることが可能である(ロシア民法第1483条第6項第2項、第1486条、第1512条)。
(6)留意事項
(i)上記のような先願商標権者等との交渉を行っている場合や不使用取消訴訟の提起や無効審判の請求を行っている場合であっても、応答期間経過後に審査手続が中止されないため、交渉成立や不使用取消訴訟の判決前に拒絶査定が出されてしまう可能性がある点に留意する必要がある。
(ii)先願商標権の放棄か譲渡を求める書簡を権利者に送付し、2か月以内に放棄申請の提出、譲渡契約の締結のいずれもされなかった場合に、前記2か月経過後30日以内に不使用取消訴訟が提起可能である点に留意が必要である。
(iii)無効審判の請求や不使用取消訴訟の提起をするためには、取消、無効にすることについて利害関係を有することを要するが、無効審判等の被請求登録商標を引例とした拒絶理由通知がされた、という事実のみでは「利害関係あり」とはいえない点に留意が必要である。例えば、ロシア以外の国で使用しており、ロシアで使用意図がある、といった事実があれば、利害関係を有すると認められる。
台湾における特許無効審判制度の概要
【詳細】
台湾における特許無効審判の流れ
(1) 請求人
原則、誰でも請求可能(専利法第71条第1項、第2項)。ただし、共同出願違反と冒認出願の場合は、利害関係人のみ請求できる(同上第3項)。
(2) 請求期間
特許権存続期間中のみならず、消滅後も無効審判の請求が可能である。ただし、特許権消滅後は、特許権を無効にすることにより回復する法律上の利益を有する者のみ請求できる(専利法第72条)。つまり、特許権存続中であれば原則として誰でも審判請求ができる。無効理由についても、特許権消滅後は、特許を無効にすることで回復する法律上の利益を有する者でなければ、審判請求できない。
(3) 無効理由
以下の法定列挙された理由に限り、無効審判の根拠にできる(専利法第71条第1項)。無効審判を請求する理由があるかどうかは、その特許査定時の規定に基づくが、第34条第4項、第43条第2項、第67条第2項、第4項又は第108条第3項の規定に違反する事由を以て無効審判を請求する場合は、無効審判請求時の規定による(専利法第71条第3項)。
条文番号 | 概要 |
第21条 | 発明の定義違反 |
第22条第1項柱書 | 産業上の利用性違反 |
第22条第1項 | 新規性違反 |
第22条第2項 | 進歩性違反 |
第23条 | 拡大先願違反 |
第24条 | 特許を受けられない発明違反 |
第26条 | 明細書・請求項の記載要件違反 |
第31条 | 先願主義違反 |
第32条第1項、第3項 | 特許実用新案同日出願違反 |
第34条第4項 | 分割における新規事項追加違反 |
第43条第2項 | 補正における新規事項追加違反 |
第44条第2項、第3項 | 外国語出願の中国語翻訳文の原文超過違反 |
第67条第2項~第4項 | 訂正における出願時新規事項追加違反等 |
第108条第3項 | 出願変更における新規事項追加違反 |
第71条第1項第2号 | 特許権者が属する国が台湾の特許出願を受理しない場合 |
第71条第1項第3号 | 共同出願違反または冒認出願該当 |
第71条第1項第3号のみ、審判請求の際に利害関係が要求される。また、冒認出願については、特許公告日から2年以内に無効審判を請求しなければ、冒認出願された特許を取り戻すための出願手続きができなくなる(専利法第35条第1項)。
(4) 審判手続
(i) 書類
無効審判の声明および理由を明記した申請書並びに証拠を提出する(専利法第73条第1項)。利害関係人のみが請求できる無効理由に基づく審判請求の場合、請求人は無効審判請求書によって利害関係人に該当することを声明し、証拠を提出しなければならない。証明書類が提出されず、または証明が不足である場合、台湾特許庁は補正するよう請求人に通知しなければならない。そして、請求人が所定の期間内に補正しない場合、台湾特許庁は無効審判の請求を受理しない決定をしなければならない(専利審査基準第5編第1章2.1.2「利害関係人」)。
(ⅱ) 手続
無効審判請求受理後、台湾特許庁は副本を特許権者に送達する(専利法第74条第1項)。特許権者は送達の翌日から1か月以内に答弁書を提出する。先に理由を述べて期日の延長が認められた場合を除き、期日までに答弁しないときは、そのまま審理を進めるものとする。(専利法第74条第2項)。
(ⅲ) 補正
請求理由および証拠の補足は請求日から1か月以内にしなければならないが、審決前に提出した理由および証拠であれば、参酌される(専利法第73条第4項)。
(ⅳ) 訂正
特許権者は特許の内容を訂正することが可能であり(専利法第67条第1項)、無効審判係属中に訂正を行うと、その訂正手続と無効審判手続は併合審査される。その訂正が認められる場合、訂正後の明細者等が審判請求人に送達される(専利法第77条第1項)。訂正の効果は出願日まで遡及し、訂正後の内容で出願されたことになる(専利法第68条第3項)。
(v) 審査
指定された審査官により審査が行われ、審決書が作成され、審判請求人および特許権者に送達される(専利法第79条第1項)。審査においては、台湾特許庁は請求または職権により、相当の期間を指定して、特許権者に対し面接、必要な実験、模型または見本の提出をするよう命じることができる(専利法第76条第1項)。無効審判の対象となる特許が権利侵害訴訟に関係する場合、無効審判が優先的に審査される場合がある(専利法第101条)。
(ⅵ) 取下げ
審判請求人は審決が出される前まで、無効審判を取り下げることができるが、特許権者が既に答弁書を提出した場合、特許権者の同意を得なければ無効審判を取り下げることができない(専利法第80条第1項)。特許権者は取下げ通知送達後10日以内に反対の意思表示をしないと、取り下げに同意したものとみなされる(専利法第80条第2項)。
(5) 審決
無効理由の有無は、各請求項単位で判断される(専利法第82条第1項)。無効にする審決が出た後、審決を不服として訴願手続を行わない場合、或いは訴願手続によっても審決が覆らない場合に審決は確定し、特許権は最初から存在していなかったことになる(専利法第82条第2項)。特許維持審決が出た場合、一事不再理の原理により、何人も同一事実または証拠に基づいて、再度無効審判を請求することができない(専利法第81条)。
(6) 不服申立
審決書送達日の翌日から30日以内に、経済部に訴願書を提出して、審決への不服を申し立てることができる(訴願法第4条、同第14条)。
【留意事項】
2013年1月1日より現行法が施行されたが、無効審判における主な改正点として、複数の無効審判請求の併合審査(専利法第78条)、無効審判請求人が提出しなかった無効審判請求範囲における理由若しくは証拠についての職権審査(専利法第75条、第120条および第142条)、および、訂正請求と無効審判請求が同時継続の場合の併合審査(専利法第77条第1項、第120条および第142条)などを挙げることができる。加えて、分割請求、変更出願、訂正請求において出願時の範囲を超え、または実質的に公告時の専利権範囲の拡大・変更された場合の無効理由の適用について、現行法施行前に登録査定がなされた専利権に対しても無効審判を請求できるとした点は、注意を要する(専利法第71条第3項、第119条第3項および第141条第3項)。
シンガポールにおける登録特許の取消手続と特許出願に対する第三者情報提供について
【詳細】
シンガポール特許の有効性について、取消手続によって、特許の登録後に争うことができる。一方、特許登録局(以下、シンガポール特許庁と記載)に係属中の特許出願に対する異議申立制度はない。また、公式な第三者情報提供の制度も設けられていない。
以下、シンガポール特許出願または登録特許の有効性を争うための手続について説明する。
1.登録特許についての取消手続
シンガポール特許法では、登録官(Registrar、特許庁長官に相当)は、シンガポール特許庁に提出された申請に基づき、取消理由に該当する特許を取り消すことができる(シンガポール特許法第80条)。この取消手続は、何人も申請することができる。したがって、第三者は、登録特許の有効性に関して、取消手続によって争うことができる。
なお、(1)侵害訴訟における無効の抗弁により、(2)非侵害の確認判決を求める訴訟において、(3)特許侵害を理由とした脅迫に対する訴訟(シンガポール特許法第77条)における請求または反訴の請求として、特許の取消を求める場合は、シンガポール高等裁判所に取消手続を提起することができる(シンガポール特許法第82条)。
1-1.シンガポール特許庁による取消手続における取消理由
シンガポール特許庁の登録官は、以下の理由のいずれかに基づき、特許を取り消す権限を有する(シンガポール特許法第80条)。
(a)特許の新規性または進歩性が欠如している、または、特許を産業上利用することができない
(b)特許が、特許を受ける権原のない者に付与された
(c)特許明細書が、当業者が実施することができるように発明を明確かつ完全に開示していない
(d)特許明細書に新規事項が追加されている
(e)特許明細書に、認められるべきでなかった補正または訂正が行われた
(f)特許が不正に取得された、もしくは、不実表示、所定の重要な情報の不開示または不正確な開示があった
(g)特許が、同一の優先日を有し、同一の者またはその権原承継人により出願された、同一の発明に関する2以上の特許の1である
1-2.シンガポール特許庁による取消手続の流れ
取消手続の流れ(出典:シンガポール知的財産庁ウェブサイト)
(1)取消申請
取消申請人が特許の取消を申請。取消申請に際して、取消申請人は理由陳述書を提出する。理由陳述書には、取消理由、関連事実、を記載する。
(2)答弁書
特許権者は、取消申請に対して、答弁書を提出することができる。特許権者から答弁書が提出されない場合、取消手続の審理は、特許権者が不参加の形式で進められる。
(2a)補正案
特許権者は、答弁書の提出と同時に、明細書(クレームを含む)の補正案を提出することができる。
(2b)補正案の公開
特許権者による補正案提出から2か月で、補正案は公開される。
(2c)補正に対する異議
何人も、補正案の公開から2か月以内に、補正案に対して異議を申し立てることができる。
(3)事件管理協議(1回目)
答弁書が提出された後に、両当事者の参加の下、事件管理協議が実施され、取消手続の進行に関して協議する。
(4)取消申請人による証拠提出
取消申請人は、特許権者の答弁書および補正案(ある場合)を受領してから3ヶ月以内に、取消を裏付ける証拠を提出することができる。
(5)特許権者による証拠提出
取消申請人が提出した証拠の受領から3ヶ月以内に、特許権者は、特許の有効性を裏付ける証拠を提出することができる。
(6)取消申請人による追加証拠の提出
特許権者が提出した証拠の受領から3ヶ月以内に、取消申請人は、特許権者が提出した証拠に対する応答として、追加証拠を提出することができる。
(7)事件管理協議(2回目)
取消申請人による追加証拠の提出期間が終了した後1か月で、シンガポール特許庁の登録官は、2回目の事件管理協議を開催する。事件管理協議において、登録官は、取消申請人に対して再審査を請求するよう指示することができる。登録官による再審査の請求指示から2か月以内に、取消申請人は、シンガポール特許庁に再審査の請求を行わなければならない。登録官による再審査の請求指示に対して取消申請人が再審査の請求を行わなかった場合、取消申請は放棄されたものとみなされる。
(8)再審査
取消申請人によって再審査が請求された場合、シンガポール特許庁の審査官による再審査が行われる。
再審査では、両当事者の主張および明細書に対して行われた補正が考慮される。再審査報告書には、特許が取り消されるべきか否かに関する勧告が記載される。
(9)事件管理協議(3回目)
登録官は、再審査報告書の結論を考慮して、さらなる事件管理協議を開催することができる。さらなる事件管理協議において、登録官は、両当事者の代理人に対して、口頭審理の前に追加書面を提出するよう命令することができる。
(10)口頭審理
口頭審理において、両当事者の主張を聴取した後、登録官は決定を下す。
(11)決定
登録官は、口頭審理中に決定を両当事者に伝える。口頭審理中の決定が留保された場合、登録官は、決定理由を記載した書面を作成し、両当事者に通知する。
(12)控訴
シンガポール特許庁での取消手続の決定を不服とする当事者は、登録官の決定が通知されてから28日以内にシンガポール高等裁判所に控訴することができる。
2.特許出願に対する第三者情報提供
シンガポール特許庁に直接出願された特許出願、またはシンガポールに国内移行された後のPCT出願には、第三者が情報提供を行うための公式な手続はない。ただし、情報提供を希望する第三者は、シンガポール特許庁に書面で情報を提供することにより、非公式の情報提供を行うことができる。情報提供された資料を審査に採用するか否かはシンガポール特許庁の裁量に委ねられている。
PCT出願の国際段階において第三者情報提供がなされた場合、この第三者情報提供による情報は、PCT出願がシンガポールに国内移行された際に、WIPOの国際事務局からシンガポール特許庁に送付される。シンガポール特許庁の審査官が、特許出願の審査における新規性および進歩性を検討する際に、PCTの国際段階で提出された第三者情報提供の情報を考慮するか否かは裁量に委ねられている。
インドにおける特許出願の補正の制限
【詳細】
1.はじめに
インドにおいて、特許出願書類の補正は、自発的な補正と非自発的な補正の2つの分類することができる。これらの補正は特許出願後から特許が有効である間いつでも行うことができる。なお、本稿において、別段の定めがない限り、「特許出願書類」には完全明細書および特許出願に関連する文書が含まれる。
ここで、インド特許法では、仮明細書を添付する場合(仮出願)と、完全明細書を添付する場合(本出願)の2つの出願様式が認められており(インド特許法第7条(4))、上記完全明細書とは、本出願に添付される明細書を意味する。なお、仮出願は、簡易化された出願手続により優先日を確保することにより、主として研究成果などについて特許による早期の権利保護を図るための制度で、米国の仮出願制度や、日本の国内優先権出願制度に類似した制度である。
2.非自発的な補正
非自発的な補正とは、特許庁長官が要求する補正のことで、出願人が特許庁から特許出願書類の補正を求められる状況としては、次のような場合がある。
(1)長官が、出願審査後に特許出願がインド特許法の要件を遵守していないと判断した場合。この場合、長官は、出願人に対し補正を要求する(インド特許法第15条)。出願人がその補正を行わない場合、長官は当該特許出願を拒絶することができる。
(2)分割出願がなされた場合で、長官が、クレームされている主題が重複しないよう親出願または分割出願の補正を求める場合(インド特許法第16条)。
(3)長官が、クレームされた発明がすでに公開されているものであると認めた場合。この場合、長官は、出願人に対し、完全明細書を補正するよう要求する(インド特許法第18条)。
(4)特許出願に開示されている発明を実施しようとした場合に、他の特許のクレームを侵害する虞があると、長官が認め、かつ、出願人が当該他の特許についての言及を特許出願に含めることを拒む場合。この場合、長官は、出願人に対し完全明細書を補正するよう要求する(インド特許法第19条)。
3.自発的な補正
出願人はインド特許法第57条に基づき、特許出願書類を自発的に補正する機会を有している。自発的な補正を行うにあたっては、所定の特許庁費用とともにForm13による補正申請書をインド特許庁に提出する必要がある。補正申請書には、その補正案の内容および当該申請の理由を記載する必要がある。長官はその裁量によりインド特許法第57条に基づき補正を拒絶もしくは許可すること、または適切と認める条件を付して補正を許可することができる。ただし、特許権侵害訴訟または特許取消手続が高等裁判所に係属している間は、補正申請を拒絶または許可することはできない。
特許付与後に提出された補正申請は、その内容が本質的なものである場合には、インド特許庁により公開される。「利害関係人」は、補正申請の公開後3カ月以内に当該補正に異議を申し立てることができる。インド特許法第2(t)条によれば、「利害関係人」には、当該発明に係る分野と同一の分野における研究に従事し、またはこれを促進する者を含む。補正に対して異議申立がなされた場合、長官は出願人にこれを通知し、決定を下す前に出願人と異議申立人の両方に対し聴聞の機会を与える。補正に対する異議申立手続は、特許の異議申立手続と同じである。特許付与後に提出された補正が許可された場合も、公報に公開される。
4.審判部または高等裁判所における明細書の補正
知的財産審判部(Intellectual Property Appellate Board:IPAB)または高等裁判所における特許無効手続において、特許権者は、自己の完全明細書の補正許可を申請することができる。IPABまたは高等裁判所は、適切と認める条件を付した上で特許権者の申請を許可できる。Solvay Fluor GmBH v.E.I. Du Pont de Nemours and Company事件(2010年6月4日決定第111/2010号)において、IPABは「出願人が補正理由の詳細を十分に提示しない場合」には、補正許可の申請を却下可能であるとの決定を下している。
当該補正許可申請の通知は、手続上特許庁長官に対しても発せられ、補正を許可する内容のIPABまたは高等裁判所の命令の写しは、当該命令がなされた後に長官に送付され、長官は特許登録簿への登録を行う。なお特許の発行後に、長官、IPABまたは高等裁判所により特許の補正が許可された場合、次のようになる。
(1)当該補正は明細書の一部を構成するものとみなされる。
(2)明細書その他の関連書類が補正されたという事実はできる限り速やかに公表される。
(3)出願人または特許権者の補正請求の権利に対しては、詐欺を理由とする場合を除きその有効性を争ってはならなくなる。
5.特許出願書類の補正の制限
インド特許法第59条は、特許出願書類の補正に対する制限を定めており、「権利の部分放棄、訂正もしくは説明以外の方法によって一切補正してはならず,かつ,それらの補正は事実の挿入以外の目的では,一切認められない」と規定している(なお、「それらの補正は事実の挿入以外の目的では、一切認められない」とは、補正の目的が、誤りを訂正することに関係したものでなければならないということを意味していると考えられるが、この点の解釈を争った判例がないのが実情である)。また補正の範囲についても、新規事項を追加するような補正は認められず、また、クレームの範囲を拡大するような補正も認められない。また異議または審判の手続中の補正に関しても、M/s. Diamcad N.V. v. Mr. Sivovolenko Sergei Borisovish事件(2012年8月3日決定第189/2012号)において、知的財産審判部(IPAB)は、「インド特許法第58条および第59条は、異議または審判の手続中に、認可された特許クレームを、最初に認可されたクレームの保護範囲を拡大するような方法で補正することはできないことを要求するものであるとしている」との判断を下している。
6.結論
上述の通り、インド特許法第59条は、認められる補正の内容および範囲を制限するものである。よって、後の段階になって補正を行う必要がないように、明細書作成の時点で、完全なものとしておくことが極めて重要である。
インドにおける特許異議申立制度-付与前異議と付与後異議
【詳細】
1.付与前異議申立
付与前異議申立は、対象特許出願の公開の日から登録の日まで提出可能である。ただし、申し立てられた異議について審査管理官(Controller)が検討するのは、当該出願について審査請求がなされた後である。付与前異議申立の制度は特許に対して異議を申し立てる機会を公衆に与えることを意図しているため、「何人も」申し立てることができる。異議申立人が付与前異議申立を提出する十分な時間を確保するため、特許出願の公開から6か月間は特許権が付与されないことが、特許法に規定されている。
1-1.付与前異議申立の理由
付与前異議はインド特許法第25条(1)に規定された11項目の異議理由に基づき、申立が可能である。このうち代表的な異議理由として、以下の4点が挙げられる。
- 出願に開示された発明が、出願人によって不正に取得された
- 発明が、何れかの請求項の優先日の前に公開されていた
- 発明が、進歩性を有さない
- 出願人が、インド特許法第8条の要求(たとえば、他国で出願された同一または実質的に同一発明に関する詳細情報のインド特許庁への提出)を順守していない
1-2.付与前異議申立の手続
付与前異議申立は、所定の書式(Form 7A)を用いて、インド特許庁に提出する。申立を考慮した審査管理官が当該出願を拒絶すべきという見解を持った場合、異議申立人が作成した異議申立書の副本を添えて出願人へ通知される。出願人は異議の通知に対して、通知の発行日から3か月以内に、応答書を(証拠と共に)提出しなければならない。出願人は、審査管理官の付与前異議申立に対する決定が下されて手続が終了する前に口頭手続の機会を求めることができる。
出願人の意見を考慮した後、審査管理官は、出願の特許付与を拒絶するか、または、特許付与前に出願の補正を求めるか、のいずれかを行う事ができる。通常、審査管理官は、付与前異議申立手続きの終了から1か月以内に、決定を下さなければならない。管理官による決定に対して、知的財産審判部(Intellectual Property Appellate Board:IPAB)への不服申立が可能である。
2.付与後異議申立
付与後異議申立は、インド特許法第25条(2)に規定されている。付与後異議は、特許登録の公開の日から1年以内に申し立てなければならない。付与前異議と異なり、付与後異議は、「利害関係人」のみが申し立てることができる。インド特許法第2条(1)(t)によれば、「利害関係人」は、当該発明が関係する同一分野の研究に従事している、または、これを促進する業務に従事する者を含む。Ajay Industrial Corporation v. Shiro Kanao of Ibaraki事件(1983)においてデリー高等裁判所は、「利害関係人」とは、「登録された特許の存続によって、損害その他の影響を受ける、直接的で現実の、かつ具体的な商業的利害を有する」者と解釈している。付与後異議申立の異議理由は、付与前異議申立の異議理由と同様である。
2-1.付与後異議申立の手続
所定の書式(Form 7)を用いて、特許庁に異議申立書を提出する。異議申立書の受領後、特許庁は付与後異議申立の合議体として審査管理官3名からなる異議委員会を設置する。当該出願を審査した審査官は、委員会メンバーとしての適格性をもたない。通常は、次席審査管理官(Deputy Controller of Patents)または審査管理官補(Assistant Controller of Patents)が異議委員会の委員長として任命され、2名の上級審査官が残りのメンバーとして任命される。付与後異議申立手続きにおいて、異議申立人は、自らの利害や基礎となる事実、求める救済措置について述べる異議申立陳述書を作成し、証拠(ある場合)ともに異議申立書に添付して、特許庁に提出し、その異議申立陳述書と証拠(ある場合)の写しを特許権者に送付しなければならない。
特許権者が異議申立に対して争う場合、異議申立人から異議申立書を受領した日から2か月以内に、特許庁に、証拠(ある場合)とともに異議に争う理由を記述した答弁書を提出し、その写しを異議申立人に送付しなければならない。特許権者が答弁書を提出しない場合、特許は取り消されたものとみなされる。特許権者の答弁書を受領した異議申立人は、受領の日から1か月以内に、弁駁書を提出できる。ただし、そのような異議申立人の弁駁書は、特許権者が提出した証拠に関する内容に厳しく限定される。両者(特許権者、異議申立人)からのさらなる答弁は、審査管理官が許可した場合にのみ提出可能である。答弁書の提出完了後に、異議委員会は、異議委員会の勧告を審査管理官に提出する。
その後、審査管理官は、口頭手続の期日を指定する。口頭手続の通知は、口頭手続期日の10日以上前に両者(特許権者、異議申立人)に送付されなければならない。異議委員会の勧告について、審査管理官が口頭手続の期日を設定する前に、異議申立人と特許権者に通知しなければならない。この異議委員会に対する手続き上の要件は、知的財産審判部(IPAB)の過去の決定で示されたものである(M/s. Diamcad N.V. v. Asst. Controller of Patent and Ors. (2012))。また、知的財産審判部(IPAB)は、異議申立手続における異議委員会の勧告および審査管理官の決定には、充分な理由づけが必要、と示した決定もある(Sankalp Rehabilitation Trust v. F Hoffmann-LA Roche AG (2012))。審査管理官は、異議委員会メンバーに口頭手続への同席を指示することができる。口頭審理後、審査管理官は決定を下す。決定に対しては、知的財産審判部(IPAB)への不服申立が可能である。
3.異議申立と取消手続との違い
「利害関係人」は、インド特許法第64条に基づき特許の取消を求めることができる。異議申立と取消手続との主な違いは、以下の通りである。
・異議申立(付与前、付与後)は、特許庁に申請する。一方、取消手続は知的財産審判部(IPAB)または、侵害の訴えに対する反訴として高裁に提訴する。
・異議申立の異議理由とは別に、取消手続には、取消理由が規定されており、異議理由には該当しないが、取消理由に該当する場合もある。たとえば、秘密保持指令(インド特許法36条 国防上の秘密保持の指令)への違反は、異議理由ではないが、取消理由となる。
・付与前異議は特許の登録前の申立が必要。付与後異議は特許登録の公開の日から1年以内に申立が必要となる。一方、取消手続は、特許の登録の後、いつでも申請が可能である。
・インド政府は、異議を申し立てることはできない。一方、取消手続はインド政府も申請することができる。
韓国における著名商標の保護
【詳細】
(1)韓国特許庁の立場
韓国特許庁は、出願された商標が下記条項に該当すると判断した場合、出願人にその該当事由を通知して意見書を提出する機会を与え、意見書を参照しても依然として該当事由が解消されないと判断した場合、出願された商標の登録を拒絶している。
(i)商標法第7条第1項第6号:著名な他人の氏名・名称または商号・肖像・署名・印章・雅号・芸名・筆名もしくはこれらの略称を含む商標
解説:必ずしも商標でなくても、著名人の名前または著名企業の商号はこの規定に基づいて保護を受けることができる。
(ii)商標法第7条第1項第9号:他人の商品を表示するものとして需要者間に顕著に認識されている商標と同一または類似の商標であってその他人の商品と同一または類似の商品に使用する商標
(iii)商標法第7条第1項第10号:需要者間に顕著に認識されている他人の商品や営業と混同を起こさせ、またはその識別力または名声を損傷するおそれがある商標
解説:本条項における「需要者間に顕著に認識」されている程度とは、第7条第1項第9号における「需要者間に顕著に認識」されている程度よりも高い著名性を意味すると解釈されている。同条項は、「著名」に至る程度に著名商標が使用されている商品と関連がない商品の領域でも保護を受けることができるようにした条項である。
(iv)商標法第7条1項第11号:商品の品質を誤認させ、または需要者を欺瞞するおそれがある商標
解説: 韓国法院(日本における裁判所に相当)は後段の「需要者を欺瞞するおそれがある」を著名商標保護のための規定と解釈してきた。判例によれば、需要者間に特定人の商品を表示するものとして認識されている商標と同一または類似の商標であって、その特定人の商品と同一または類似、もしくは経済的結合関係にある商品に使用される商標は、需要者を欺瞞するおそれがある。この解釈によれば、第7条第1項第9号よりも緩和した条件で著名商標として保護を受けることができるため、本条項により第7条第1項第9号は事実上死文化している。
(v)商標法第7条第1項第12号:国内または外国の需要者間に特定人の商品を表示するものとして認識されている商標と同一または類似の商標であって、不当な利益を得ようとし、もしくはその特定人に損害を加えようとする等の不正な目的をもって使用する商標
解説: 他の条項はすべて韓国内で著名な場合を要求しているが、本条項は外国でのみ著名な場合にも適用されるため、著名商標の保護に有用である。
(2)著名商標権者の立場
上記条項に該当する商標であるにもかかわらず、韓国特許庁が審査時にこれを事前に発見できずに登録される場合がある。著名商標権者は韓国特許庁に出願される商標をモニタリングし、自己の著名商標に類似する商標を発見した場合、情報提供または異議申立等の手続を通じてその登録の阻止を図ることができる。また、既に登録がなされた商標であれば、無効審判を通じてその登録の無効を図ることができる。情報提供、異議申立、無効審判時に最も重要なものは著名性を立証することができる証拠であるが、売上高、広告費、市場占有率に関する信憑性ある資料、広告物、新聞雑誌の記事等が主に証拠として提出される。
○著名商標保護の強化
これまでは先願主義という名のもとに著名商標の保護が不十分であったが、インターネットの発達、海外旅行や交易の増加等により海外著名商標保護の必要性、さらに国際的な制度調和による必要性が高まったことを受け、韓国特許庁は審査時にインターネット検索等を積極的に活用し、海外著名商標を他人が無断で登録することを未然に防ぐ努力をしている。
○不正競争防止法上の著名商標の保護
韓国商標法は、著名商標と同一または類似の商標を他人が無断で登録することを防ぐ規定があるだけで、そうした商標の使用を禁ずる規定はない。一方、不正競争防止法は、韓国において登録されていない著名商標と同一または類似の商標を他人が無断で使用することを禁じている。ただし、不正競争防止法により保護を受けるためには韓国で広く認識されている必要があり、その程度は「需要者間に顕著に認識」されている程度よりは低く「需要者間に特定人の商品を表示するものとして認識」されている程度であれば十分であると解釈されている。
インドにおける意匠制度の運用実態
【詳細】
ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-IV-D
(目次)
第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果
IV インド共和国
D 意匠 P.291
1 産業財産権制度の枠組 P.291
2 出願・登録の手続 P.297
3 審査業務 P.298
4 統計情報 P.300
5 ハーグ協定ジュネーブアクト P.303
参考資料 総括表
D 意匠 P.415
ロシアにおける意匠制度の運用実態
【詳細】
ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-V-D
(目次)
第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果
V ロシア連邦
D 意匠 P.369
1 産業財産権制度の枠組 P.369
2 出願・登録の手続 P.380
3 審査業務 P.382
4 統計情報 P.383
5 ハーグ協定ジュネーブアクト P.385
参考資料 総括表
D 意匠 P.415
ブラジルにおける意匠制度の運用実態
【詳細】
ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-Ⅰ-D
(目次)
第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果
Ⅰ ブラジル連邦共和国
D 意匠 P.50
1 産業財産権制度の枠組 P.50
2 出願・登録の手続 P.58
3 審査業務 P.60
4 統計情報 P.65
5 ハーグ協定ジュネーブアクト P.69
参考資料 総括表
D 意匠 P.415
中国における技術常識(中国語:「公知常識」)の立証責任の所在
【詳細】
公知常識
専利審査指南第二部分第四章の進歩性審査において、「公知常識」は、当該分野において技術的問題を解決する通常の手段、または教科書もしくは参考書などで開示された技術的問題を解決するための技術的手段、および当該分野において特定の技術的問題を解決する通常の手段が含まれると例示されている。すなわち、関連技術分野の具体的な技術問題を解決するために、当該分野における一般技術者が容易に想到しかつ用いる技術的手段のことを示している。「公知常識」の判断主体は「発明が属する技術分野の通常知識を有する者」であり、通常知識とは、世間の民衆全員が知っている事実であるとは限らず、出願日より前に当該分野の一般技術者に公知となっていた一般的な技術常識を示している。
この他、以前は革新的と認められていた技術が、科学技術の発展に伴い、多くの分野、商品で広範に利用され、また多くの特許文献もしくは科学出版物等で開示され、多くの特許文献で引用された結果、これらの広範に開示された技術は、当該分野の技術者に熟知され「公知常識(公知技術)」になると中国における実務でも認められている。
「公知常識」の立証責任
(1) 実体審査段階
専利審査指南第二部分第八章第4.10.2.2節では「審査官が審査意見通知書(拒絶理由通知書)において引用した当分野の『公知常識』は、確実なものでなければならない。出願人が審査官の引用した『公知常識』について異議を申し立てた場合には、審査官は理由を説明するか、或いは相応の証拠を提供して、これを証明できるようにしなければならない」と規定されている。出願人が審査官の引用した「公知常識」について異議を申立て、かつ審査官に立証を求めた場合、審査官は申立てを直接却下することはできず、改めて審査意見書を通知することになる。
審査意見において、通常は「公知常識」は引用証拠と組み合わせて用いられる。「公知常識」が当該特許の技術的特徴を開示し、引用証拠がその他の技術的特徴を開示している場合、公知常識と引用証拠を組み合わせて当該特許の進歩性が否定される。
(2) 無効審判段階
専利審査指南第四部分第八章第4.3.3節では、当事者である請求人もしくは被請求人がある技術的手段は「公知常識」であると主張した場合には、その主張を行った者がその主張に対して立証責任を負うことになる、と規定されている。立証の形式には、教科書、技術用語辞典、技術マニュアル等の提出といった法律で規定された一般的方法による立証や、当該技術的手段が既に広範にわたり使用されていることを証明する証拠、例えば、特許文献、学術文章、商品説明等を提出し立証することが可能である。
(3) 行政訴訟段階
行政訴訟法第32条により、原告が専利復審委員会による「公知常識」の認定に明確な異議を申立てた場合、専利復審委員会が「公知常識」の認定に対し立証責任を負うことになる。