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タイにおける「商標の使用」と使用証拠

 タイ商標法に基づき登録が可能な商標は、「識別性」のある商標であり、商標法に基づき禁止されていない商標、他人が登録した商標と同一または類似でない商標である。タイでは、近年、2つ以上の定義語を含む多くの独創的な商標が、商標登録を認められず、困難に直面している。これは、登録官が商標を個々の要素ごとに分解して、当該商標出願の指定商品もしくは指定役務の特徴や品質と関連づけて、識別性の欠如を理由に、商標登録を認めないためである。しかし、当該商標が使用を通じて識別性を獲得したことを出願人が証明できれば、商標登録が認められる可能性がある。

 本稿では、「使用」の判断基準および使用を通じて識別性を獲得したことを証明するために必要な証拠について論述する。また、商標の使用の認定に関する知的財産局とCIPITCの異なるアプローチについても述べる。

 現行のタイ商標法の正式名称は、「B.E.2559(2016年)法律(No.3)により改正されたB.E.2534(1991年)10月28日法律」であり、旧商標法「B.E.2534」が改正され、2016年7月28日に施行されたものである。タイ商標法の第7条によれば、識別性が欠如している商標を、通商大臣が定めた規定に従い、当該商標の指定商品および指定役務について、広く販売または宣伝されている商品に使用されており、かつその規定が正しく遵守されている場合、その商標は識別性を有するとみなされることがある。

 タイ商標法の第7条に加えて、2003年3月12日付商務大臣告示では、出願された商標を付した商品もしくは役務は、公衆が十分に商品および役務を認識できるようになるまで、継続して適切に販売もしくは宣伝をされなければならないと規定されていた。この2003年3月12日付商務大臣告示はその後2012年10月11日付商務大臣告示によって改正され、タイ商標法第7条における「公衆に広く知られるまでに商標,サービスマーク等が付された商品またはサービスが,販売,頒布または広告によって識別性を獲得したこと」の証明については下記のような内容となっている。

 

・商品または役務が,一般公衆または関連分野の公衆が当該商品または役務が他のものと異なることを認識し理解できる程度にまで,一定期間,継続的に販売されまたは頒布されなければならない。

・商品または役務の販売,頒布または広告によって標章がタイで広く知られるようになった場合,当該標章はその標章が付された商品または役務についてのみ識別性を有するものとみなす。

・この告示に基づいて識別性が証明された標章は,登録された商標と同一でなければならない。

 

 この識別性の証明について,出願人は,登録しようとする標章が使われた商品または役務の販売,頒布または広告に関する証拠を提出しなければならず、この証拠とは,商品や役務を購入した領収書の写し,商品やサービスの広告費用の領収書の写し,請求書の写し,商品または役務の注文書の写し,工場の認可証の写し,メディアを使った広告の証拠の写し,商品のサンプルまたは必要に応じて証人(もしあれば)を含むその他の証拠などをいう。

 

 使用証拠提出の時期は、前記2003年3月12日付商務大臣告示においては出願と同時にされなければならないとされており、その後の追加は認められていなかったが、2012年10月11日付商務大臣告示においては、商標出願に添付して期間延長請求を提出すれば出願後60日以内に使用証拠の追加提出が認められるようになり、柔軟な対応が認められるようになった。

 使用証拠を審査する機関は2つある。商標委員会とCIPITCである。商標の使用の判断基準に関しては、これら2つの機関は似たような見解を示している。だが、CIPITCは、通常、商標委員会に比べて寛大でビジネス寄りのアプローチを採用する。商標委員会の決定に不服がある場合には、CIPITCへ抗告することができる。また、この抗告によって、出願人が使用を通じて識別性を獲得したことの立証に成功する可能性は高くなると考えられる。

 商標委員会の近年の審決を踏まえていえば、タイにおいて商標を付した商品もしくは役務の使用、宣伝もしくは販売がなされてきた期間を出願人がはっきりと証明できない場合、商標委員会はそれを十分な使用とはみなさないと推測することができる。基本的に、継続した(3年以上)使用の証拠の量に着目する商標委員会とは異なり、CIPITCは、タイにおける商標の使用の量や期間だけに頼ることはしない。逆に、他の国での使用証拠も認容するだけでなく、掘り下げた理由付けを適用し、様々な要因(当該商標の外国での登録等)を考慮するのである。商標委員会の審決を不服としてCIPITCへ抗告を行い、そこでも主張が認められない場合には、最高裁判所へ上告するという選択肢がある。ただし、すべての申請が受理されるわけではなく、多額の費用と時間がかかることにも留意すべきである。

 2017年にタイはマドリッド協定議定書への加盟を行い、これに伴う国内法の改正を行った。しかし、識別力獲得に関する商標委員会やCIPITCの判断傾向は、現在のところ、これらの改正に伴う影響は受けていないようである。

 タイ商標法第7条に関する直近の判例として、商標権侵害が争われた最高裁判決2766/2559号(原告:TOA Paint (Thailand) Co., Ltd. 被告:Cera C-Cure Co., Ltd.)がある。本事件では、原告が建物用ペンキ等に「Supershield」という商標を保有していたところ、被告がこれに類似する「Super-shield」という商標を使用していたため原告が商標権侵害を主張した事案である。

 本事案において被告は、「Supershield」という名称は「高い保護機能を有する」程度の内容を需要者に想起させるに過ぎないと主張し、その語について原告は専用権を独占する権利を有しないと主張した。

 しかしながら最高裁判所は、2006年に出願された原告商標が出願時に1984年(B.E.2527)からの使用証拠を提出していること等を考慮し、このような長期間にわたる使用の結果、原告商標は識別力を獲得していると判断し、被告の主張を退けた上で原告の請求を認めた。

 本事件は法改正前から争われていた事案ではあるが、このように使用の期間が最も重視される識別性獲得判断の傾向は、法改正後もしばらく変わらないことが予想される。

 

インドネシアにおける特許出願の実体審査と特許庁からの指令書に対する応答期間

2016年8月26日施行された2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)は、実体審査や方式の期間について、以下のように規定している。

 

1. 方式審査に対する応答期間

2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)第34条は、出願日を確保するために必要な最低要件を規定している。その最低要件とは以下のとおりである。

  • 出願年月日、発明者の氏名・住所・国籍、 出願人の名称・住所、代理人の氏名・住所(第25条第1項)
  • 発明の名称、明細書(外国語可)、特許請求の範囲、要約、存在する場合は図面(第25条第2項a~e号、第3項)
  • 出願手数料納付の証明

 

最低要件の明細書は外国語で記載されていてもよいが、インドネシア語に翻訳された明細書は出願日から30日以内に提出されなければならず(第25条第3項)、期間内に提出されない場合、出願は取下げられたものとみなされる(第4項)。

これ以外の方式要件は、委任状、発明者宣言書、譲渡書、微生物寄託証明書である。方式要件が満たされていない場合、大臣は出願人に対し書面をもって、通知発送の日から起算して3か月以内に方式要件を充たすように通知する(第35条第1項)。この応答期間は最大2か月間延長でき(第2項)、さらに手数料の支払いにより1か月間延長できる(第3項)。また、自然災害等特別な事情のある場合はさらに6か月間の延長が可能である(第5項、第6項)。延長期間内に要件が満たされない場合、出願が取下げられたとみなされる(第36条)。

 

2. 審査請求期間

特許出願の実体審査は実体審査請求を待って行われる。出願人は特許法第51条第1項に定めるとおり、手数料を納付し、実体審査を請求しなければならない。実体審査請求のできる期間は、出願日から36か月以内である(第2項)。実体審査は、出願公開後6か月の異議申立期間(第48条第1項、第49条第1項)が経過した後着手される(第51条第5項)。

 

3. 実体審査と応答期間

実体審査官は、出願された発明の産業上利用性、新規性、進歩性、記載不備等を審査する(第54条)。審査官が特許出願された発明が登録要件を満たさないと報告した場合、大臣は出願人に対して書面によりその要件を満たすよう通知する(第62条第1項)。通知には、a)充足されるべき要件、b)実体審査において用いられる理由と引用文献が記載される(第62条第2項)。

実体審査を受ける出願が優先権を伴う場合、大臣は出願人に対して、他国での審査結果に関する書類の提出を求めることができる(第55条)。その特許出願の発明が既に他国において特許が付与されている場合には、後述のとおり、審査官から出願人に対して、係属中の出願を対応国で登録された特許に一致させるような補正を提案することが多い。発明が単一性を満たさない場合、審査官は分割出願を行うよう提案することもできる。

 

出願人は、通知書の日から3か月以内に意見書および/または補正書を提出しなければならない(第62条第3項)。その期間は、2か月延長でき(第4項)、さらに手数料の納付を条件として1か月延長できる(第5項)。また、自然災害等特別な事情のある場合はさらに6か月間の延長が可能である(第7項、第8項)。

期間内に応答しない場合、大臣は書面で出願人に対し2か月以内に出願は取下げられたとみなされる旨通知する(第10項)。

なお実情では、2回目の拒絶理由への応答期間は2か月のみである。2回目の拒絶理由通知の応答期間は、審査官の裁量により認められる場合がある。

特許法第57条は、実体審査請求日または公開期間満了日のうち遅い方から30か月以内に登録または拒絶の査定をするように規定している。この期限が迫っている場合は、応答期間の延長が認められない。

応答期間の起算日は、通知の送達日ではなく、通知の日である。現状として通知が起案されてから代理人等に送達するまで1か月程度要しているため、出願人が応答を準備するために与えられる時間は十分でないことがある。

審査官が、2回目の通知への応答を審査しても、やはり特許出願は特許要件を満たさないと判断した場合、審査官は拒絶査定書を発行する。拒絶査定を不服とする場合、出願人は、拒絶査定書の日から3か月以内に、当該拒絶査定に対して審判請求をすることができる。一方、通知に対する応答により、拒絶理由が解消されたと認められる場合、特許査定書が送付され、その後の特許付与の段階へと移行する。

 

4. 優先権を主張する特許出願および国際特許出願(PCTルート)の実体審査

特許法第55条では、優先権を主張する特許出願について、他国の審査において先行技術調査または実体審査が行われている場合、または特許査定が下されている場合、審査官は、他国の審査結果を参照することができる旨が定められている。ただし大臣令により、以下の国の官庁の審査結果は参照できない。

  1. ASEAN加盟国(シンガポールを除く)
  2. アフリカ諸国
  3. 東ヨーロッパ諸国(ロシアとEPO加盟国を除く)
  4. 台湾

PCTルートの場合、審査官は、国際調査報告、見解書または国際予備審査報告を、発明の特許性を判断するための主たる参考資料として参照する。ただし、これらは審査官を拘束するものではなく、特許査定の可否は、あくまでインドネシア特許法に定められた不特許事由を考慮した審査官の判断に委ねられるのは言うまでもない。

 

【留意点】

拒絶理由通知の発送に遅延が生じているため、出願人の応答準備期間が不十分になってしまうことがあるが、審査官は期間延長に柔軟に対応している。

 

台湾における経済部での行政不服(中国語「訴願」)決定の調べ方

 経済部訴願審議委員会(經濟部訴願審議委員會)のウェブサイトhttp://www.moea.gov.tw/Mns/aa/home/Home.aspxを開いてください。30TW19_1

経済部訴願審議会ウェブサイト

 

(1) 訴願の裁決書の検索画面に入るために、カーソルを「訴願案件査詢」に移動させ、プルダウンメニューから「決定書檢索」をクリックすると決定書検索画面が表示されます。

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プルダウンメニュー

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決定書検索画面

 

(2) 画面の左側に表示される検索項目における「▶」をクリックすると、画面の右側に入力欄が表示され、そこに検索条件又はキーワードを入力できます。また、同一の検索項目に複数の検索条件を入力したい場合、さらに「▶」をクリックすることで欄を増やすことができます。全ての検索条件またはキーワードを入力した後、最も右側の「執行検索」をクリックすることで検索を実行します。

(当検索システムでは当年度とその前年度との決定書しか検索できません。当検索システムに収録されていない決定書を閲覧したい場合は、台湾経済部に赴き検索することが可能です。)

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決定書検索画面入力方法

画面の左側に表示される検索項目を上から順に紹介します。

① 「案號」:案件番号

② 「全文檢索」:フリーワード(キーワードや、専利・商標番号等を入力できます)

③ 「決定書起始日期」:検索対象とする最初の裁決日

④ 「決定書結束日期」:検索対象とする最後の裁決日(上記③と併せて期間を絞ることができます)

⑤ 「決定文號」:裁決書番号

⑥ 「訴願人」:行政不服申立人

⑦ 「關係人」:利害関係人

⑧ 「主文」:裁決の主文(キーワードで検索できます)

⑨ 「案由」:案件の種類(キーワードで検索でき、例えば「商標」と入力すれば、商標案件の裁決書のみが表示されます)

⑩ 「事實」:事実(キーワードで検索できます)

⑪ 「理由」:裁決の理由(キーワードで検索できます)

 

(3) 例として、「案由」に「商標」を入力し、「事実」に「輪胎」(タイヤ)と入力して検索すると、タイヤを指定商品とする商標に係る裁決書計8件が表示されます。

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検索結果は、案件ごとに「案號(案件番号)」「決定日期(裁決日)」、「決定書文號(裁決書番号)」、「訴願人(行政不服申立人)」、「案由(案件内容)」、「主文」、「事實(事実)」及び「理由」が表示され、「原始檔(オリジナルファイル)」の右側における「決定書」の文字をクリックすると、裁決書のPDFファイルをダウンロードできます。

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 また、他に検索条件又はキーワードを加えたり、改めて検索を実行したりしたい場合、「再検索」をクリックし、画面の一番上に戻り再度検索を実行することができます。

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 なお、入力は中国語「繁体文字」で行う必要があります。また、経済部の訴願案件は専利と商標に係るものに限られるわけではありませんので、専利と商標と関係がない検索結果が表示されることを避けるため、より精密に検索条件を入力することが望まれます。

 

インドネシアにおける特許出願の実体審査と特許庁からの指令書に対する応答期間

【詳細】

1. 方式審査に対する応答期間

インドネシアにおいて、特許出願されると、インドネシア特許庁(以下、特許庁という。)は方式的要件が満たされているか否かの方式審査を行う。方式的要件に不備がある場合、特許庁は出願人に対し(なお、代理人がある場合には代理人、以下、単に出願人とする)、当該不備を補完するよう通知する。出願人は、通知の日付から3ヶ月以内に当該不備を補完(出願時に準備できなかった補正を含む追加の書面を提出すること)しなければならない。この補完期限は、出願人の申請により2ヶ月延長することができる。また、追加の手数料を納付することを条件にさらに1ヶ月の延長も可能である。

 

2. 審査請求期間

特許出願の実体審査は実体審査請求を待って行われる。出願人はインドネシア特許法(特許に関する法律第14/2001号、以下、特許法という)第48条(1)に定める通り、手数料を納付し、特許庁に実体審査を請求しなければならない。実体審査請求のできる期限は、出願日から36ヶ月以内である(特許法第49条(1))。なお、出願公開後6ヶ月の異議申立期間(特許法第44条)の経過前に実体審査が請求された場合であっても、当該異議申立期間の経過後に実体審査が着手される(特許法第49条(4))。

 

3. 実体審査の応答期間

公開後6ヶ月の異議申立期間内には、何人も、特許出願に対する異議申立を提出することができる(特許法第45条)。異議申立が提出された場合、当該異議申立の内容は、実体審査において、審査官が内容検討を行い、審査報告書の参考資料または判断資料として使用される。

特許法第54条に基づき、特許出願に対する特許付与または拒絶の決定は、実体審査請求の日から36ヶ月以内になされなければならない。ただし、実体審査請求が公開期間満了前に行われた場合には、異議申立期間の経過から36ヶ月以内に上記決定がなされなければならない。小特許(実用新案)の場合は、出願日から24ヶ月以内になされなければならない。

 

4. 実体審査の内容

実体審査は、原則インドネシア特許庁の審査官により行われるが、特許法第50条(1)の規定により、特許庁が外部の専門家や他国の特許庁の審査官の支援を要請することもできる。

実体審査において、特許法第52条(1)に基づき、審査官は審査報告書を作成する。特許が請求されている発明が不明瞭、新規性なし、進歩性なし、またはその他の拒絶理由が含まれていると判断される場合、出願人に対して、拒絶理由に対する意見または補正を求める指令書を発行する。

指令書には、出願人の明細書に対する審査官からのコメントが記載される。第1回指令書に対しては、出願人は、通知から3ヶ月以内に応答書を提出しなければならない。第2回指令書が発行される場合は通知から2ヶ月以内に、第3回指令書が発行される場合は通知から1ヶ月以内に応答書を提出しなければならない。なお、実務上、最大3回まで指令書が発行される場合があるが、審査官が、出願人のさらなる応答を求めても特許出願は特許要件を満たさないと判断した場合、第1回目の指令書の後でも、審査官は拒絶査定を発行する場合がある。

なお、出願人が期限内に応答することができない場合、出願人は、審査官にその旨を説明し、期限延長を請求することができる。特許法は、期限延長については規定がなく、期限延長を認めるか否かは審査官の裁量に委ねられている。

指令書において、拒絶理由の記載は、問題となる請求項や記載部分の指摘とともに通知される。さらに、審査官から、拒絶理由を解消するための提案を行うことができる。

また、その特許出願の発明が既に他国において特許が付与されている場合には、後述のとおり、審査官から出願人に対して、係属中の出願を対応国で登録された特許に一致させるように提案することもできる。発明が単一性を満たさない場合、分割出願を行うよう提案することもできる。

出願人の応答で拒絶理由が解消されていないと審査官が認める場合、さらに、第2回目以降の指令書を発行することができる。審査官が、出願人のさらなる応答を求めても特許出願は特許要件を満たさないと判断した場合、審査官は拒絶査定を発行する。拒絶査定を不服とする場合、出願人は、拒絶査定の送付の日から3ヶ月以内に、当該拒絶査定に対して審判請求をすることができる。

一方、指令書に対する応答により、拒絶理由が解消されたと認められる場合、特許査定が送付され、その後の特許付与の段階へと移行する。

 

5.  指令書への応答の実務上の留意点

指令書への応答の実務上の留意点として、以下が挙げられる。

(1)審査官の提起するすべての拒絶理由に応答しなければならない。

(2)出願人は、クレームを補正すること、またクレームに記載された発明と引用文献と相違を主張することができる。

(3)明細書の補正が可能であるが、新規事項を追加することはできない。

(4)出願人は、審査官との面談(電話面談も含む)を行うことができる。

(5)応答期限内に指令書に応答しなかった場合、出願は取り下げたものとみなされる。

 

6. 優先権を主張する特許出願および国際特許出願(PCTルート)の実体審査

特許法第28条(2)では、優先権を主張する特許出願について、他国の審査において先行技術調査または実体審査が行われている場合、または特許査定が下されている場合、審査官は、他国の審査結果を参照することができる旨が定められている。外国特許庁の審査結果については、通常、欧州特許庁(European Patent Office)、米国特許商標庁(United States Patent and Trademark Office)、日本国特許庁(Japan Patent Office)およびオーストラリア特許庁(Austrian Patent Office)の結果を参照する。

PCTルートの場合、審査官は、通常は、国際調査報告、見解書または国際予備審査報告を、発明の特許性を判断するための主たる参考資料として参照する。ただし、これらは審査官を拘束するものではなく、特許査定の可否は、あくまで審査官の判断に委ねられている。審査官は、国際調査報告、見解書または国際予備審査報告の内容にかかわらず、インドネシア特許法に定められた不特許事由(特許法第7条)に関する規定を考慮して特許査定の可否を判断しなければならない。

 

7. 特許審査ハイウェイプログラム

インドネシア特許庁は、日本特許庁と、特許審査ハイウェイプログラム(PPH: Patent Prosecution Highway Program)を実施している。日本の出願人は、このPPHプログラムを適用し、インドネシアにおける特許出願において早期権利化を図ることができる場合がある。

タイにおける「商標の使用」と使用証拠

【詳細】

タイ商標法に基づき登録が可能な商標は、「識別性」のある商標であり、商標法に基づき禁止されていない商標、他人が登録した商標と同一または類似でない商標である。タイでは、近年、2つ以上の定義語を含む多くの独創的な商標が、商標登録を認められず、困難に直面している。これは、登録官が商標を個々の要素ごとに分解して、当該商標出願の指定商品もしくは指定役務の特徴や品質と関連づけて、識別性の欠如を理由に、商標登録を認めないためである。しかし、当該商標が使用を通じて識別性を獲得したことを出願人が証明できれば、商標登録が認められる可能性がある。

 

本稿では、「使用」の判断基準および使用を通じて識別性を獲得したことを証明するために必要な証拠について論述する。また、商標の使用の認定に関する知的財産局とCIPITCの異なるアプローチについても述べる。

 

現行のタイ商標法の正式名称は、「B.E.2543(2000 年)法律(第 2 号)により改正された B.E.2534(1991 年)10 月 28 日法律」であり、旧商標法「B.E.2534」が改正され、2000年6月30日に施行されたものである。タイ商標法の第7条によれば、識別性が欠如している商標を、通商大臣が定めた規定に従い、当該商標の指定商品および指定役務について、大々的に広告したり、使用したりした場合、その商標は識別性を獲得したとみなされることがある。

 

タイ商標法の第7条に加えて、2003年3月12日付商務省告示では、出願された商標を付した商品もしくは役務は、公衆が十分に商品および役務を認識できるようになるまで、継続して適切に販売もしくは宣伝をされなければならないと規定している。

タイ商標法によれば、商標は、知的財産局に出願された態様と同一の態様で、登録出願の指定商品もしくは指定役務に使用されなければならない。提出が要求される使用証拠の種類や形式は定められていない。ある商標が、指定商品もしくは指定役務に対して実際に使用されたと証明できる限り、それは使用証拠とみなされる。一般的に、使用証拠には、商標が付された製品サンプルの写真や、商標が付された出願対象商標の指定商品もしくは指定役務の宣伝広告等が含まれる。宣伝広告には、印刷媒体(新聞、雑誌)等の各種媒体を通じた宣伝ならびに放送メディア(テレビ、ラジオ、インターネット)による宣伝が含まれる。宣伝広告が公衆に広く提供されていない場合、出願人は、年間のマーケティング予算および支出に関する情報や、その他の詳細情報(売上情報の細目、利用者のレビュー、対象となるマーケットでの認知度調査等)を宣伝広告の代わりに提出することができる。

 

使用証拠を審査する機関は2つある。商標委員会とCIPITCである。商標の使用の判断基準に関しては、これら2つの機関は似たような見解を示している。だが、CIPITCは、通常、商標委員会に比べて寛大でビジネス寄りのアプローチを採用する。商標委員会の決定に不服がある場合には、CIPITCへ抗告することができる。また、この抗告によって、出願人が使用を通じて識別性を獲得したことの立証に成功する可能性は高くなると考えられる。

 

商標委員会の最近の審決を踏まえて言えば、タイにおいて商標を付した商品もしくは役務の使用、宣伝もしくは販売がなされてきた期間を出願人がはっきりと証明できない場合、商標委員会はそれを十分な使用とはみなさないと推測することができる。基本的に、継続した(3年以上)使用の証拠の量に着目する商標委員会とは異なり、CIPITCは、タイにおける商標の使用の量や期間だけに頼ることはしない。逆に、他の国での使用証拠も認容するだけでなく、掘り下げた理由付けを適用し、様々な要因(当該商標の外国での登録等)を考慮するのである。商標委員会の審決を不服としてCIPITCへ抗告を行い、そこでも主張が認められない場合には、最高裁判所へ上告するという選択肢がある。ただし、すべての申請が受理されるわけではなく、多額の費用と時間がかかることにも留意されるべきである。

 

現在、タイではマドリッドプロトコルに加盟するための手続きが進められており、商標の国際登録制度に期待が寄せられている。これを契機として、商標委員会には、CIPITCのように、商標の使用を判断する際に、より寛大なアプローチを採用することが期待される。

インドにおける意匠制度の運用実態

【詳細】

 ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-IV-D

 

(目次)

第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果

 IV インド共和国

  D 意匠 P.291

   1 産業財産権制度の枠組 P.291

   2 出願・登録の手続 P.297

   3 審査業務 P.298

   4 統計情報 P.300

   5 ハーグ協定ジュネーブアクト P.303

 参考資料 総括表

  D 意匠 P.415

ロシアにおける意匠制度の運用実態

【詳細】

 ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-V-D

 

(目次)

第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果

 V ロシア連邦

  D 意匠 P.369

   1 産業財産権制度の枠組 P.369

   2 出願・登録の手続 P.380

   3 審査業務 P.382

   4 統計情報 P.383

   5 ハーグ協定ジュネーブアクト P.385

 参考資料 総括表

  D 意匠 P.415

ブラジルにおける意匠制度の運用実態

【詳細】

 ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-Ⅰ-D

 

(目次)

第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果

 Ⅰ ブラジル連邦共和国

  D 意匠 P.50

   1 産業財産権制度の枠組 P.50

   2 出願・登録の手続 P.58

   3 審査業務 P.60

   4 統計情報 P.65

   5 ハーグ協定ジュネーブアクト P.69

 参考資料 総括表

  D 意匠 P.415

中国改正商標法について留意すべき点

【詳細】

 中国・改正商標法マニュアル(2015年3月、日本貿易振興機構 進出企業支援・知的財産部 知的財産課)四

 

(目次)

四 日本ユーザーが留意すべき点 P.81

 1 商標出願、更新等の申請案件の変化 P.81

  (1) 音声商標の導入 P.81

  (2) 「一出願多区分」制度の導入 P.82

  (3) 商標登録更新期間の変更 P.82

  (4) 商標権譲渡手続きの変化 P.82

  (5) 商標使用許諾届出の変化 P.83

 2 商標権利保護に関する変化 P.83

  (1) 審査・審理期限の明文化 P.83

  (2) 異議申立プロセス及びその後続救済手段の変化 P.83

  (3) 冒認出願対策の強化 P.84

  (4) 未登録商標に対する保護の強化 P.84

  (5) 登録商標の使用義務の強化 P.85

  (6) 懲罰的賠償制度の導入 P.85

  (7) 「馳名商標」表示の広告宣伝における使用の禁止 P.85

ブラジルにおける商標制度の運用実態

【詳細】

 ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-Ⅰ-E

 

(目次)

第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果

 Ⅰ ブラジル連邦共和国

  E 商標 P.71

   1 産業財産権制度の枠組 P.71

   2 出願・登録の手続 P.81

   3 審査業務 P.84

   4 統計情報 P.88

 参考資料 総括表

  E 商標 P.418