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台湾における特許および実用新案の分割出願

2019年に改正された台湾専利法第34条および第107条は、分割出願に関して以下の通り規定している。

台湾専利法第34

特許を出願した発明が、実質上2以上の発明である場合、台湾智慧財産局の通知または出願人の請求により、出願を分割することができる。

分割出願は次の各号に掲げる期間内にこれを行わなければならない。

1.原出願の再審査の査定前

2.原出願の特許査定書または再審査の特許査定書の到達日から起算して3か月以内。

分割後の出願は、原出願の出願日を出願日とする。優先権がある場合は、優先権を主張することができる。

分割の明細書等は、原出願の出願時の明細書、特許請求の範囲または図面に開示された範囲を超えてはならない。

第2項第1号の規定により分割を行った後の出願は、原出願で既に完了した手続から審査を続行しなければならない。

第2項第2号の規定により分割出願する発明は、原出願の明細書または図面に開示されたものであって、特許査定された請求項に係る発明と異なるものでなければならない。分割を行った後の出願は、原出願が特許査定される前の審査手続を続行するものとする。

原出願は、特許査定された明細書、特許請求の範囲または図面を変更してはならず、特許査定時の特許請求の範囲および図面をもってこれを公告するものとする。

(1)台湾専利法第34条第1項に規定されている分割出願の要件

「1つの発明ごとに出願しなければならない」との台湾専利法第33条第1項の規定に従い、1つの発明ごとに出願すべきだが、例外の「2以上の発明が、1つの広義の発明概念に属する場合、1出願において出願することができる。」との台湾専利法第33条第2項の規定に合致する場合、1つの出願にまとめて出願することも可能である。

ここで、単一性を有していない2つ以上の発明、または単一性を有し、まとめて1つの出願で出願された2つ以上の発明に対して、出願人が「1つの発明ごとの出願」に戻すことができるよう、台湾専利法第34条第1項に、特許出願した発明が、実質上2以上の発明である場合、分割出願することができると規定された。

一般的に、分割出願には、主に次の場合がある。

(i)請求の範囲に単一性を有さない2つ以上の発明が含まれる場合

(ii)単一性を有する2つ以上の発明について、出願人が2つ以上の出願に分けるほうが有利であると認めた場合(例えば、そのうち1つの発明が、拒絶査定された場合)

(iii)請求の範囲のうち、1つまたは複数の発明が審査によって新規性または進歩性がないとされ、他の発明との単一性がなくなった場合

(iv)請求の範囲に記載されておらず、原明細書に開示されていた発明を補正で請求の範囲に追加しようとしたが単一性がない場合

(2)台湾専利法第34条第2項に規定されている分割出願の時期に関する要件

(i)台湾専利法第34条第2項第1号には、原出願の再審査の査定前に分割出願することができると規定されているが、分割する際に、原出願は台湾智慧財産局により審査中でなければならない。原出願が取下げられまたは受理されず、すなわち、審査中でない状態の場合は、分割しようとするもの(すなわち、原出願)がなくなるので分割することができない。

よって、初審査において拒絶査定され分割出願しようとする場合は、原出願は法定の期限までに再審査を請求し審査中の状態に戻して初めて分割出願することが可能となる。

なお、分割後の原出願が、取下げられ、または受理されなくとも、分割後の全ての分割出願に影響はない。

(ii)台湾専利法第34条第2項第2号には、原出願の初審査の特許査定書、再審査の特許査定書の到達日から起算して3か月以内に分割をすることができると規定されている。2011年改正台湾専利法には、初審査における特許査定から30日以内に分割出願することができるとの規定が追加された。

また、台湾の審査には初審査と再審査の2つの段階があるが、2019年改正台湾専利法では、初審査および再審査のいずれも、特許査定書の送達後3か月以内であれば、出願を分割することができる旨が規定され、分割可能期間が大幅に緩和された。

一方、再審査を経て拒絶査定された場合については、これまでどおり分割出願を行うことができない。

(3)台湾専利法第34条第3項には、分割出願の出願日の認定と優先権の主張について規定されている。分割出願は、原出願の出願日を出願日とする。原出願が優先権を主張を伴う場合は、分割出願もその優先日を有する。

(4)台湾専利法第34条第4項には、分割出願に新規事項を追加してはならないと規定されている。分割出願は、原出願の出願日を出願日とするので、その明細書、請求の範囲または図面の内容は、原出願の明細書、請求の範囲および図面に開示されている範囲を超えてはならず、すなわち、新規事項を追加してはならない。

(5)台湾専利法第34条第5項には、審査における、分割出願にかかる原出願と分割出願の審査段階について規定されている。原出願は、補正が提出された場合には、補正にかかる手続きにて審査を続けなければならない。分割出願については、分割出願毎に審査を行わなければならない。また、分割出願に対して審査を繰り返し行うことを避けるために、分割出願毎に、分割出願が行われた原出願の完了した手続きに合わせて審査を続行しなければならない。例えば、原出願が再審査の段階にある場合は、各分割出願とも再審査段階から審査を続行しなければならない。

(6)台湾専利法第34条第6項によれば、まず、分割出願するときは、原出願の明細書または図面で開示された発明、かつ特許査定された請求項に係る発明と同じではない発明から、出願を分割しなければならない。すなわち、その際の分割出願の請求の範囲は、特許査定された原出願の請求の範囲から分割をするものではなく、かつ、原出願の明細書に記載された技術の内容を超えてはならない。

専利法第34条第6項には、特許査定後に分割をした原出願と分割出願の審査段階についても規定されている。この場合、原出願の審査手続きが査定により終了したにもかかわらず、分割出願の審査が同一の処理手続きの繰り返しにより遅れるということがないように、分割出願は、特許査定前の審査を続行することが明記された。

(7)台湾専利法第34条第7項によれば、原出願の明細書、請求の範囲および図面は、分割により変更されることがないので、原出願は、依然として、その特許査定された時点の請求の範囲および図面で公告が行われる。

台湾専利法第107

実用新案登録を出願した実用新案が、実質上2以上の実用新案である場合、特許主務官庁の通知または出願人の請求により、出願を分割することができる。

分割出願は次の各号に掲げる期間内にこれを行わなければならない。

1.原出願の処分前

2.原出願の登録処分書の到達日から起算して3か月以内。

(1)専利法第107条第1項に規定されている分割出願の要件

実用新案登録出願の分割出願の要件は、基本的に特許出願の分割出願と同様である。

(2)専利法第107条第2項に規定されている分割出願の時期に関する要件

(i)専利法第107条第2項第1号の規定により、分割出願は、原出願の処分(登録処分、または却下処分)の前に行わなければならない。実用新案登録出願について、台湾では、考案の内容に関する実体審査を行わずに、方式審査のみが行われて、要件の不備がないと認められた場合、登録処分書が発せられる。一方、補正指令が発せられて、要件の不備が解消されていない場合は、却下処分書が発せられる。

(ii)2019年改正専利法には、専利法第107条第2項第2号の規定が追加され、特許出願と同様に、実用新案登録出願の原出願の登録処分から3か月以内に分割をすることができると規定されている。

留意事項

(1)分割出願した際に、原出願の種類を変更することはできない。すなわち、特許出願は、分割後も依然として特許出願のままである。分割出願を実用新案登録出願として続行しようとする場合は、改めて出願変更しなければならない。

(2)分割出願は、原出願に開示されている範囲を超えてはならない。すなわち、各分割出願の内容は、原出願の明細書、請求の範囲または図面に開示されている事項でなければならないが、同時に、各分割出願の請求の範囲の内容が原出願の請求の範囲と完全に同一であってはならない。同一である場合、専利法第31条第2項に規定されている出願日、優先日が同日である場合の、出願人が同一人である同一の発明にかかる規定に違反することになる。

(3)分割出願において実体審査を請求しようとする場合、原出願の出願日から3年以内に行わなければならない。分割出願する時期が既に3年の期間を超えている場合は、分割出願した日から30日以内に実体審査を請求しなければならない。

(4)原出願(以下、親出願)から分割出願した後に、親出願が分割時期の要件を満たさなくなった場合、分割要件と分割時期の要件を満たす分割出願(以下、子出願)があれば、当該子出願からさらに分割出願(孫出願)をすることができる。

(5)2011年の専利法改正では最後の拒絶理由通知の制度が導入され、原出願と分割出願の審査について、次の事情があれば台湾智慧財産局はただちに最後の拒絶理由通知を行うことができる。

(i)原出願に対して行う通知が、分割出願において既に通知されている内容と同じである場合

(ii)分割出願に対して行う通知が、原出願において既に通知されている内容と同じである場合

(iii)分割出願に対して行う通知が、その他の分割出願において既に通知されている内容と同じである場合

なお、最後の拒絶理由通知がなされた場合、出願人は通知された期間内において、次の事項についてのみ、特許請求の範囲を補正することができる。

(a)請求項の削除

(b)特許請求の範囲の縮減

(c)誤記の訂正

(iv)不明瞭な記載の釈明

(6)実用新案登録出願の分割時期について

原出願の処分(登録処分、または却下処分)の前だけでなく、登録処分書の送達後3か月以内であれば、分割をすることができるよう規定が緩和された。

(7)2019年改正専利法の経過規定について

専利法第34条第2項第2号、第107条第2項第2号に規定される分割可能期間が法改正により特許査定書・登録処分書の送達から3か月間に拡大されるとともに、経過規定として、専利法第157条の3において「…施行前に、すでに査定または処分された専利出願が第34条第2項第2号および第107条第2項第2号に規定された期間を超えていない場合、改正施行後の規定を適用する」ことが定められた。

よって、上記条文が適用される専利出願には、改正専利法施行日の2019年11月1日以降に査定または処分されたものだけでなく、当該施行日前3か月以内に(2019年8月1日以降に)査定または処分されたものも含まれる。

台湾における商標関連手続に必要な書類

【詳細】

台湾特許庁(台湾智慧財產局)における商標の手続きは、出願、取り下げ、補完、変更出願、登録延長、商標権異動、争議処理等に分けることができ、商標出願人又は商標権者は、それぞれの手続において関連法律条文により定められた書類を提出しなければならない。例えば、各種商標の出願時には商標登録願を、当該商標を分割したい場合には分割願を提出しなければならない。以下では、商標出願人又は商標権者の各手続きにおける必要書類についてそれぞれ紹介し、関連法律条項を注記する。

 

(1) 出願時に必要な書類

商標法の出願客体には商標、団体商標、証明標章及び団体標章の4つのタイプがあり、いずれも文字、図形、記号、色彩、立体形状、動態、ホログラム、音声等又は前記を組み合わせたものを出願対象にできる。更に、商標法には出願対象について制限がないため、「におい」(中国語「氣味商標」)に至っても出願対象とすることができる(現時点では、商標登録審査を受けているものはあるが、登録された実例はない)他、各種形態を組み合わせることもできる(商標法第2条、第18条、第80条、第85条、第88条、第94条)。

このように出願の形態が多岐にわたるため、願書の書式は特に統一したものを求められることはないが、比較的よく見られる商標、団体商標、証明標章及び団体標章の出願時に必要な書類は以下の通りである。

 

・登録願

〇商標登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第12条)

〇色彩商標(中国語「顏色商標」)登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第14条)

〇立体商標登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第15条)

〇音声商標(中国語「聲音商標」)登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第18条)

〇全体図(Hologram marks)商標登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第17条)

〇動態(Motion marks)商標登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第16条)

〇その他商標登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第12条)

〇団体商標登録願、色彩団体商標登録願、立体団体商標登録願、音声団体商標登録願、全体図団体商標登録願(※)、動態団体商標登録願(※)

(商標法第18条第1項、第88条、第94条、商標法施行細則第12条、第14至18条、第48条)、

〇証明標章登録願、色彩証明標章登録願、立体証明標章登録願、音声証明標章登録願、全体図証明標章登録願(※)、動態証明標章登録願(※)

(商標法第18条第1項、第80条、第94条、商標法施行細則第12条、第14至18条、第48条)

 

・委任状(商標法第6条、商標法施行細則第5条)

 

(2) 出願から公告に至るまでに必要な書類

(i) 出願取下時

出願取下願(商標法施行細則第6条)

 

(ii) 変更時

(a) 出願人及び代理人の基本資料の変更時

登録前における変更願(商標法第24条、商標法施行細則第24条)

 

(b) 登録前における図の変更又は商品・役務の減縮変更時(商標法第23条但書による変更を指し、当該商標の指定商品・役務の減縮、又は商標の図に実質上変更をきたさない変更に限られる*。)

登録前における図の変更又は商品・役務の減縮変更願(※)(商標法第23条、商標法施行細則第24条)

*:具体例としては以下の状況が挙げられる。

・識別性を有さないおそれがある箇所や公衆が商品又は役務の性質、品質又は産地を誤認・誤信するおそれがある箇所の削除。

・商品の重量又は成分標示、代理業者又は小売業者の電話番号、住所又はその他単なる情報に係る事項の削除。

・国際的に通用する商標又は登録番号の削除。

・商標に属さない部分を点線に変更する。

 

(c) 登録前における図の変更または商品・役務の減縮時(商標法第25条による変更を指す**)

登録前における図の変更又は商品・役務の減縮願(※)(商標法第25条、商標法施行細則第26条)

**:商標の同一性に影響せず、又は指定商品・役務の範囲を拡大しないことを前提とした、出願人の名称又は住所の誤り、文字・用語若しくは記入事項の誤り等について「訂正」を申請することができる。

 

(iii) 登録前における分割時

登録前における分割願(商標法第26条、商標法施行細則第27条)

 

(iv) 登録更新(中国語「延展」)時

登録更新願の書式(商標法第34条、商標法施行細則第35条第1項)

 

(v) 書類の補完時

出願書類補完願(実務において、各種商標、証明標章、団体商標、団体標章出願案、登録前における変更、出願案の分割、出願案の取り下げ願等の提出時に書類を補完するために使用)

 

(3) 公告後に必要な書類

(i) 商標権の分割時

分割願(商標法第37条、商標法施行細則第36条)

(商標権の分割とは、登録商標の指定商品・役務を分割するものであり、商標の図の構成部分を分割するものではない(商標法第37条)。団体商標、証明標章は、その性質上、指定商品・役務に関係するため分割申請ができるが、団体標章は商品・役務に関係しないので、分割申請することはできない)。

 

(ii) 商標権の異動時

・登録変更願(商標法第38条第2項、商標法施行細則第37条)

・登記移転願(商標法第42条、商標法施行細則第39条)

・登録商品・役務減縮願(商標法第38条第1項、商標法施行細則第37条)

・権利許諾登記願(商標法第39条第2項及び商標法施行細則第38条)

・権利許諾登記の廃止願(商標法第41条及び商標法施行細則第38条)

・権利再許諾登記願(商標法第40条第3項及び商標法施行細則第38条)

・権利再許諾登記の廃止願(商標法第41条及び商標法施行細則第38条)

・質権設定登記願(商標法第44条及び商標法施行細則第40条)

・質権消滅登記願(商標法第44条及び商標法施行細則第40条)

・商標権放棄願(商標法第45条)

 

(iii) 争議関連

(a) 審判等請求時

・異議申立(中国語「異議」)の請求書(商標法第48条、第49条)

・無効審判(中国語「評定」)の請求書(商標法第57条、第62条)

・取消審判(中国語「廃止」)の請求書(商標法第63条、第67条)

 

(b) 取下げ時

異議申立、無効審判及び取消審判請求の取下げ願(※)(商標法第53条、第62条、第67条)

 

(c) 異議申立、無効審判及び取消審判請求手続きにおける公聴

公聴願、(利害関係者)公聴出席願、一般民衆公聴出席願(行政手続法【中国語「行政程序法」】第107条)

 

(v) その他

・登録証の再発行(中国語「補発」)又は更新(中国語「換発」)願(商標法施行細則第41条)。

・商標併存同意書(商標法第30条第10号但書)

・中国語・英語による証明書の発行願

(※)台湾特許庁の申請書ダウンロードリストの中に含まれていない書類。

 

【留意事項】

(1) 台湾特許庁が提供するダウンロード式の申請書書式は、商標法及び商標法施行細則の改正または関連規定の改定によって、申請書の細部事項が更新された。このため、使用時には、当該申請書書式にアクセスして、最新版の書式をダウンロードすることが望ましい。

(2) 商標法又は商標法施行細則に記載のある申請書中、一部の申請書については、台湾特許庁の申請書ダウンロードリストの中に含まれていない(「※」マークにて表示)。

ダウンロードリストに含まれていない申請書については、特に形式上の制約はなく、申請事項を明確に表現することができる書式であればよい。また、台湾特許庁が提供する書式についても、必ずしも当該書式で申請しなければならないというわけではない。

タイにおける特許出願の補正

【詳細】

○明細書、請求項、要約および図面の補正

 特許出願の提出後、審査官は方式要件について審査し、さらにクレームが特許可能であり、明確かどうかについて審査する(予備審査として知られている)。出願はその後、特許庁により発行される公報において公開される。出願人は、当該出願の公開後5年以内に、新規性、進歩性および産業上の利用可能性に関する審査(実体審査として知られている)を審査官に請求することができる。

 特許出願手続(予備審査および実体審査の双方)の過程で行われる補正は、出願当初の発明の範囲を拡大しないことを条件として出願人により自発的に行われる補正(自発補正)、またはオフィスアクションの応答時に行われる補正のいずれかである。後者の場合、オフィスアクションの受領日から90日以内に補正書を提出しなければならない。特許権付与の前のあらゆる時点で、補正は認められる。特許権付与後の自発補正は許されない。

 特許法(B.E.2522)に基づく省令第 21 号(B.E.2542)の規定に従い、出願人が発明の範囲を拡大せずに自己の特許出願の補正を望む場合、出願人は、長官により許可されない限り、出願の公開前に補正請求を提出しなければならない。

 タイ特許庁における特許出願の補正に関する実務は、審査ガイドラインに定められている。審査ガイドラインは、発明の範囲を拡大しないと見なされる補正の例を、以下のように示している。

・審査官により提案されたあらゆる補正。

・発明の理解、調査および審査にとって有益と見なされる詳細を「関連背景技術」の項目に追加し、関連文献を引用する補正。

・クレームを直接裏づけるための詳細な説明の補正、または詳細な説明に直接的な裏づけを見出せるようなクレームの補正。例えば、詳細な説明が50-100℃の範囲の温度を開示している一方で、クレームが70-100℃の範囲の温度を記載している場合、出願人は詳細な説明をクレーム部分に整合させるため70-100℃の範囲の温度に修正することができる。クレームで広い範囲を開示し、詳細な説明で狭い範囲を開示している場合もまた同様である。

・詳細な説明またはクレームをより明確かつ簡潔にするための補正。

・誤訳の訂正。

 また、審査ガイドラインは、発明の範囲を拡大すると見なされる補正の例を、以下のように示している。

・新規事項を詳細な説明に取り入れること、または出願当初の詳細な説明には開示されていない新規事項をクレームに記載すること。例えば、詳細な説明で、容器を製造するための構成要素からなる容器製造装置を開示しており、これがクレームに記載されている場合に、後で出願人が当該容器の製造方法を詳細な説明に追加する、または当該方法をクレームに記載することを望めば、そのような補正は、当該発明の範囲を超える新規事項を追加すると見なされる。

・その発明の開示から当業者が予期しないものをもたらすようなあらゆる補正。例えば、様々な成分からなるゴム組成物が、出願当初の明細書およびクレームにそれぞれ開示および記載されている場合に、後で出願人が開示していない特定の成分を追加し、その特定の成分をクレームに記載すると、その追加は当該発明の範囲を拡大すると見なされる。

 別の例として、弾性支持体に設置された装置が、その弾性支持体の特性を具体的に記載することなく出願当初のクレームおよび詳細な説明に開示されていた場合、後に出願人が詳細な説明およびクレームにおいて「弾性支持体」という用語を「巻きバネ」に差し替えると、この差し替えは、当該発明の範囲を拡大すると見なされる。

 クレームに記載された発明に対して、出願当初には開示されていなかった新規な技術的効果をもたらすような補正は許されない。

 逆に、詳細な説明またはクレームを明確にするためだけの補正であり、出願当初に開示された内容と本質的に同一であると当業者が明確に認識または理解することを、出願人が証明できるのであれば、上記に例示された補正であっても許される。例えば、「弾性支持体」から「巻きバネ」への用語の差し替えは、当業者が図面に照らして「弾性支持体」は「巻きバネ」であると見なすことができるのであれば、許される。

 出願人により行われた補正が省令を満たしていないと審査官が判断する場合、審査官は、その旨の拒絶理由を出願人に通知する。

 審査官は実体審査において、タイ特許出願のクレームがUS、AU、EP、JPまたはCNなどの審査国で発行された対応外国特許の特許可能と判断されたクレームと一致しているかどうか、さらに選択された対応外国特許の審査結果に照らして、当該出願のクレームがタイ特許実務に基づき新規性があるか、進歩性があるかを審査する。タイ特許出願のクレームは、実体審査の請求時に自発補正として、上記の国における特許可能と判断されたクレームと一致するように補正することができる。さらに実体審査請求が提出された後、オフィスアクションへの応答時に補正することもできる。

 選択された対応外国特許の特許可能と判断されたクレームと同等であるタイ特許出願のクレームが、タイ特許省令を満たしていない場合、審査官は、その拒絶理由を出願人に通知する。例えば、選択された対応外国特許のクレームと一致するように補正されたタイ特許出願のクレームが、タイでは許容されない多項従属クレーム形式である場合、審査官はオフィスアクションを発行し、多項従属クレームを他のクレーム形式に補正するよう要求する。

 選択された対応外国特許の審査結果には説得力がないと審査官が判断した場合、審査官は、別の新規性または進歩性に関する拒絶理由を示す。出願人は、先行技術と区別されるように発明の範囲を減縮することによりクレームを補正する、またはより限定されたクレーム範囲を有する別の対応外国特許と一致するようにクレームを補正することができる。ただし、補正されたクレームは、出願当初の開示された内容への直接的な裏づけがなければならない。

 

○出願人、発明者の氏名および住所、譲渡に関する訂正

 発明者の氏名および住所、出願人の名義変更を証明する書類、譲渡証書、当該発明に対する出願人の権利を正当化する陳述書、または委任状が、出願時に不正確であった場合、特許庁は出願人に通知し、当該通知の受領日から90日以内に補正書を提出し、補正のための所定の料金を支払うよう要求する。

 出願係属中または特許権付与後に出願が他者に譲渡された場合、他者への出願譲渡に関する手続を特許庁に対して速やかに行うことが推奨される。譲渡証書と一緒に、譲受人により署名された委任状を提出しなければならない。この手続の期限は存在しない。

 

○出願変更

 特許または小特許の出願人は、特許出願が特許庁に係属中(登録前)であれば特許出願を小特許出願へ変更することができる。この出願変更では、省令に定められた規則および手続に従い変更前の出願日が有効に存続する。

タイにおける特許審査基準関連資料

【詳細】

 ASEAN主要国及び台湾における特許及び商標の審査基準・審査マニュアルに関する調査研究報告書【特許編】(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第Ⅲ部5

 

(目次)

第Ⅲ部 調査対象国・地域の審査基準関連資料の詳細

 5 タイ P.123

参考 調査対象国・地域の知的財産権担当官庁及び、ウェブサイト公開されている関連法規、審査基準関連資料の情報

 5 タイ P.214

マレーシアにおける特許審査基準関連資料

【詳細】

 ASEAN主要国及び台湾における特許及び商標の審査基準・審査マニュアルに関する調査研究報告書【特許編】(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第Ⅲ部6

 

(目次)

第Ⅲ部 調査対象国・地域の審査基準関連資料の詳細

 6 マレーシア P.151

参考 調査対象国・地域の知的財産権担当官庁及び、ウェブサイト公開されている関連法規、審査基準関連資料の情報

 6 マレーシア P.215

ベトナムにおける特許審査基準関連資料

【詳細】

 ASEAN主要国及び台湾における特許及び商標の審査基準・審査マニュアルに関する調査研究報告書【特許編】(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第Ⅲ部4

 

(目次)

第Ⅲ部 調査対象国・地域の審査基準関連資料の詳細

 4 ベトナム P.95

参考 調査対象国・地域の知的財産権担当官庁及び、ウェブサイト公開されている関連法規、審査基準関連資料の情報

 4 ベトナム P.212

ロシアにおける特許、実用新案および意匠特許の審査手続にかかる法改正

台湾における特許の分割出願

【詳細】

2011年に改正された台湾専利法第34条は、分割出願に関して以下の通り規定している。

 

台湾専利法第34条

特許を出願した発明が、実質上 2以上の発明である場合、台湾特許庁の通知または出願人の請求により、出願を分割することができる。

分割出願は次の各号に掲げる期間内にこれを行わなければならない。

1.原出願の再審査の査定前

2.原出願の特許査定書の到達日から起算して30日以内。ただし、再審査を経て査定されたものは、分割することはできない。

分割後の出願は、原出願の出願日を出願日とする。優先権がある場合は、優先権を主張することができる。

分割後の出願は、原出願の出願時の明細書、特許請求の範囲または図面に開示された範囲を超えてはならない。

第2項第1号規定により分割を行った後の出願は、原出願で既に完了した手続から審査を続行しなければならない。

第2項第2号規定により分割を行った後の出願は、原出願が査定される前の審査手続きを続行するものとする。原出願は、査定時の特許請求の範囲および図面をもってこれを公告するものとする。

 

 

(1)第1項に規定されている分割出願の要件

「1つの発明ごとに出願しなければならない」との専利法第33条第1項の規定に従い、1つの発明ごとに出願すべきたが、例外の「2以上の発明が、1つの広義の発明概念に属する場合、1出願において出願することができる。」との専利法第33条第2項の規定に合致する場合、1つの出願にまとめて出願することも可能である。

 

ここで、単一性を有していない2つ以上の発明、または単一性を有し、まとめて1つの出願で出願された2つ以上の発明に対して、出願人が「1つの発明ごとの出願」に戻すことができるよう、専利法第34条第1項に、特許出願した発明が、実質上2以上の発明である場合、分割出願することができると規定された。

 

一般的に、分割出願には、主に次の場合がある。

(i)請求の範囲に単一性を有さない2つ以上の発明が含まれる場合

(ii)単一性を有する2つ以上の発明について、出願人が2つ以上の出願に分けるほうが有利であると認めた場合(例えば、そのうち1つの発明が、拒絶査定された場合)

(iii)請求の範囲のうち、1つまたは複数の発明が審査によって新規性または進歩性がないとされ、他の発明との単一性がなくなった場合

(iv)請求の範囲に記載されておらず、原明細書に開示されていた発明を補正で追加しようとしたが単一性がない場合

 

(2)専利法第34条第2項に規定されている分割出願の時期に関する要件

(i)専利法第34条第2項第1号には、原出願の再審査の査定前に分割出願することができると規定されているが、分割する際に、原出願は台湾特許庁による審査中でなければならない。原出願が取下げられまたは受理されず、すなわち、審査中でない状態の場合は、分割しようとするもの(すなわち、原出願)がなくなるので分割することができない。

 

よって、初審審査において拒絶査定され分割出願しようとする場合は、原出願は法定の期限までに再審査を請求し審査中の状態に戻して初めて分割出願することが可能となる。なお、分割後の原出願が、取下げられ、または受理されなくとも、分割後の全ての分割出願に影響はない。

 

(ii)専利法第34条第2項第2号には、原出願の初審審査での特許査定後に分割をすることができると規定されている。出願は初審審査の実体審査の段階または初審審査の拒絶査定に対する再審査を請求した後の再審査の段階の何れにおいても、再審査の査定前に分割出願することができる。改正前の専利法には、初審審査で特許査定された場合に分割することができるとの規定がなかった。実務では、出願人が分割出願する前に出願が既に特許査定されてしまった例がある。

 

このようなことを避けるため、初審審査の特許査定後、公告の前に出願人がその発明の内容に対して分割出願する必要があると考える場合は、分割をする機会が与えられる必要があった。そこで、出願人は初審審査での特許査定後に分割出願することができるとの規定が追加された。ただし、権利を早めに確定するために一定の時期の制限をしなければならない。

 

そこで、初審審査の特許査定通知書の送達後30日以内に、分割出願しなければならないと規定された。また、台湾の審査には初審審査と再審査の2つの段階があり、第2号には初審審査の特許査定の場合について規定されているが、初審審査で拒絶査定された場合、出願人は再審査を請求した後に再審査の段階で分割出願することもできる。よって、審査の時期が遅れることのないように、但書きとして、再審査の拒絶査定または特許査定のいずれの後にも分割出願することはできないことが明記された。

 

(3)専利法第34条第3項には、分割出願の出願日の認定と優先権の主張について規定されている。分割出願は、原出願の出願日を出願日とする。原出願が優先権を主張した場合は、分割出願もその優先日を有する。

 

(4)専利法第34条第4項には、分割出願に新規事項を追加してはならないと規定されている。分割出願は、原出願の出願日を出願日とするので、その明細書、請求の範囲または図面の内容は、原出願の明細書、請求の範囲および図面に開示されている範囲を超えてはならず、すなわち、新規事項を追加してはならない。

 

(5)専利法第34条第5項には、審査における、分割出願にかかる原出願と分割出願の審査段階について規定されている。原出願は、補正が提出された場合には、補正にかかる手続きにて審査を続けなければならない。分割出願については、分割出願毎に審査を行わなければならない。また、分割出願に対して審査を繰り返し行うことを避けるために、分割出願毎に、分割出願が行われた原出願の完了した手続きに合わせて審査を続行しなければならない。例えば、原出願が再審査の段階にある場合は、各分割出願とも再審査段階から審査を続行しなければならない。

 

(6)専利法第34条第6項には、初審審査での特許査定後に分割をした原出願と分割出願の審査段階について規定されている。この場合、原出願の審査手続きが査定により終了したにもかかわらず、分割出願の審査が同一の処理手続きの繰り返しにより遅れるということがないように、分割出願は、初審審査の特許査定前の審査を続行することが明記された。すなわち、その際の分割出願は、特許査定された原出願の請求の範囲から分割をするものではなく、原出願の明細書に記載された技術の内容のみから、分割をするものでなければならない。原出願の明細書、請求の範囲および図面は、分割により変更されることがないので、原出願は、依然として、その特許査定された時点の請求の範囲および図面で公告が行われる。なお、その際の分割出願は初審審査の段階にあると認められた。

 

【留意事項】

(1)分割出願した際に、原出願の種類を変更することはできない。すなわち、特許出願は、分割後も依然として特許出願のままである。分割出願を実用新案登録出願として続行しようとする場合は、改めて出願変更しなければならない。

 

(2)分割出願は、原出願に開示されている範囲を超えてはならない。すなわち、各分割出願の内容は、原出願の明細書、請求の範囲または図面に開示されている事項でなければならないが、同時に、各分割出願の内容が原出願の請求の範囲と完全に同一であってはならない。同一である場合、専利法第31条第2項に規定されている出願日、優先日が同日である場合の、出願人が同一人である同一の発明にかかる規定に違反することになる。

 

(3)分割出願において実体審査を請求しようとする場合、原出願の出願日から3年以内に行わなければならない。分割出願する時期が既に3年の期間を超えている場合は、分割出願した日から30日以内に実体審査を請求しなければならない。

 

(4)原出願(以下、親出願)から分割出願した後に、親出願が分割時期の要件を満たさなくなった場合、分割要件と分割時期の要件を満たす分割出願(以下、子出願)があれば、当該子出願からさらに分割出願(孫出願)をすることができる。

 

(5)2011年の専利法改正では最後の拒絶理由通知の制度が導入され、原出願と分割出願の審査について、次の事情があれば台湾特許庁はただちに最後の拒絶理由通知を行うことができる。

(i)原出願に対して行う通知が、分割出願において既に通知されている内容と同じである場合

(ii)分割出願に対して行う通知が、原出願において既に通知されている内容と同じである場合

(iii)分割出願に対して行う通知が、その他の分割出願において既に通知されている内容と同じである場合

 

なお、最後の拒絶理由通知がなされた場合、出願人は通知された期間内において、次の事項についてのみ、特許請求の範囲を補正することができる。

(i)請求項の削除

(ii)特許請求の範囲の縮減

(iii)誤記の訂正

(iv)不明瞭な記載の釈明

 

(6)実用新案登録出願の分割時期は、原出願の処分(許可処分、または拒絶処分)前でなければならない。

フィリピンにおける発明の特許と実用新案の登録

模倣対策マニュアル フィリピン編(2010年3月、日本貿易振興機構)Ⅱ-2

 

(目次)

Ⅱ 知的財産権の取得

 2 発明の特許と実用新案の登録 P.17

  2-1 発明の特許 P.17

  2-2 実用新案  P.18

  2-3 特許出願の方式要件 P.19

  2-4 PCT国内移行手続のための方式要件 P.20

  2-5 特許出願手続 P.20

  2-6 実用新案 – 方式審査と公告 P.22

  2-7 先行技術調査 P.23

  2-8 職務発明 P.23

  2-9 特許の維持 P.23

  2-10 特許強制実施許諾 P.24

  2-11 侵害事件における立証責任の転換 P.24

  2-12 均等論 P.24

  2-13 特許の失効(取消し) P.25

  2-14 侵害に対する防護としての無効性 P.25

  2-15 発明特許の譲渡およびライセンシング P.25

付属資料一覧

 資料5 特許願 P.94

 資料6 特許権譲渡申請書 P.96

 資料7 国内移行手続申請書 P.98

 資料8 実用新案登録願 P.99

 資料15 特許出願登録手続 P.120

 資料17 実用新案/意匠出願登録手続 P.122

タイにおける特許権及び小特許権の取得

模倣対策マニュアル タイ編(2008年3月、日本貿易振興機構)第1編第2章及び第3章

 

(目次)

第1編 産業財産権の取得

 第2章 特許権の取得 P.6

  2-1 保護対象、根拠法 P.6

  2-2 発明の定義、特許の種類 P.6

  2-3 特許出願人の要件 P.6

  2-4 被雇用者の特許出願権 P.6

  2-5 出願の際の譲渡行為 P.6

  2-6 タイに居所がない出願人の場合 P.6

  2-7 特許弁理士制度 P.7

  2-8 特許の登録要件 P.7

  2-9 特許の不登録事由 P.8

  2-10 特許検索システムについて P.8

  2-11 特許権の出願から登録までのフローチャート P.9

  2-12 出願の起算日 P.10

  2-13 出願に必要な書類 P.10

  2-14 優先権主張 P.10

  2-15 特許出願から登録までの手続き P.11

  2-16 分割出願 P.12

  2-17 不服審判請求について(特許登録前/登録後) P.12

  2-18 特許委員会 P.13

  2-19 特許の保護期間 P.13

  2-20 権利取得により付与される権利 P.14

  2-21 国際特許出願(PCT) P.14

  2-22 特許又は小特許の出願変更 P.14

  2-23 特許の譲渡 P.14

  2-24 特許の放棄 P.15

 第3章 小特許権の取得 P.16

  3-1 保護対象、根拠法 P.16

  3-2 小特許権の出願から登録までのフローチャート P.17

  3-3 小特許出願から登録までの手続き P.18