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台湾における特許および実用新案の分割出願

2019年に改正された台湾専利法第34条および第107条は、分割出願に関して以下の通り規定している。

台湾専利法第34

特許を出願した発明が、実質上2以上の発明である場合、台湾智慧財産局の通知または出願人の請求により、出願を分割することができる。

分割出願は次の各号に掲げる期間内にこれを行わなければならない。

1.原出願の再審査の査定前

2.原出願の特許査定書または再審査の特許査定書の到達日から起算して3か月以内。

分割後の出願は、原出願の出願日を出願日とする。優先権がある場合は、優先権を主張することができる。

分割の明細書等は、原出願の出願時の明細書、特許請求の範囲または図面に開示された範囲を超えてはならない。

第2項第1号の規定により分割を行った後の出願は、原出願で既に完了した手続から審査を続行しなければならない。

第2項第2号の規定により分割出願する発明は、原出願の明細書または図面に開示されたものであって、特許査定された請求項に係る発明と異なるものでなければならない。分割を行った後の出願は、原出願が特許査定される前の審査手続を続行するものとする。

原出願は、特許査定された明細書、特許請求の範囲または図面を変更してはならず、特許査定時の特許請求の範囲および図面をもってこれを公告するものとする。

(1)台湾専利法第34条第1項に規定されている分割出願の要件

「1つの発明ごとに出願しなければならない」との台湾専利法第33条第1項の規定に従い、1つの発明ごとに出願すべきだが、例外の「2以上の発明が、1つの広義の発明概念に属する場合、1出願において出願することができる。」との台湾専利法第33条第2項の規定に合致する場合、1つの出願にまとめて出願することも可能である。

ここで、単一性を有していない2つ以上の発明、または単一性を有し、まとめて1つの出願で出願された2つ以上の発明に対して、出願人が「1つの発明ごとの出願」に戻すことができるよう、台湾専利法第34条第1項に、特許出願した発明が、実質上2以上の発明である場合、分割出願することができると規定された。

一般的に、分割出願には、主に次の場合がある。

(i)請求の範囲に単一性を有さない2つ以上の発明が含まれる場合

(ii)単一性を有する2つ以上の発明について、出願人が2つ以上の出願に分けるほうが有利であると認めた場合(例えば、そのうち1つの発明が、拒絶査定された場合)

(iii)請求の範囲のうち、1つまたは複数の発明が審査によって新規性または進歩性がないとされ、他の発明との単一性がなくなった場合

(iv)請求の範囲に記載されておらず、原明細書に開示されていた発明を補正で請求の範囲に追加しようとしたが単一性がない場合

(2)台湾専利法第34条第2項に規定されている分割出願の時期に関する要件

(i)台湾専利法第34条第2項第1号には、原出願の再審査の査定前に分割出願することができると規定されているが、分割する際に、原出願は台湾智慧財産局により審査中でなければならない。原出願が取下げられまたは受理されず、すなわち、審査中でない状態の場合は、分割しようとするもの(すなわち、原出願)がなくなるので分割することができない。

よって、初審査において拒絶査定され分割出願しようとする場合は、原出願は法定の期限までに再審査を請求し審査中の状態に戻して初めて分割出願することが可能となる。

なお、分割後の原出願が、取下げられ、または受理されなくとも、分割後の全ての分割出願に影響はない。

(ii)台湾専利法第34条第2項第2号には、原出願の初審査の特許査定書、再審査の特許査定書の到達日から起算して3か月以内に分割をすることができると規定されている。2011年改正台湾専利法には、初審査における特許査定から30日以内に分割出願することができるとの規定が追加された。

また、台湾の審査には初審査と再審査の2つの段階があるが、2019年改正台湾専利法では、初審査および再審査のいずれも、特許査定書の送達後3か月以内であれば、出願を分割することができる旨が規定され、分割可能期間が大幅に緩和された。

一方、再審査を経て拒絶査定された場合については、これまでどおり分割出願を行うことができない。

(3)台湾専利法第34条第3項には、分割出願の出願日の認定と優先権の主張について規定されている。分割出願は、原出願の出願日を出願日とする。原出願が優先権を主張を伴う場合は、分割出願もその優先日を有する。

(4)台湾専利法第34条第4項には、分割出願に新規事項を追加してはならないと規定されている。分割出願は、原出願の出願日を出願日とするので、その明細書、請求の範囲または図面の内容は、原出願の明細書、請求の範囲および図面に開示されている範囲を超えてはならず、すなわち、新規事項を追加してはならない。

(5)台湾専利法第34条第5項には、審査における、分割出願にかかる原出願と分割出願の審査段階について規定されている。原出願は、補正が提出された場合には、補正にかかる手続きにて審査を続けなければならない。分割出願については、分割出願毎に審査を行わなければならない。また、分割出願に対して審査を繰り返し行うことを避けるために、分割出願毎に、分割出願が行われた原出願の完了した手続きに合わせて審査を続行しなければならない。例えば、原出願が再審査の段階にある場合は、各分割出願とも再審査段階から審査を続行しなければならない。

(6)台湾専利法第34条第6項によれば、まず、分割出願するときは、原出願の明細書または図面で開示された発明、かつ特許査定された請求項に係る発明と同じではない発明から、出願を分割しなければならない。すなわち、その際の分割出願の請求の範囲は、特許査定された原出願の請求の範囲から分割をするものではなく、かつ、原出願の明細書に記載された技術の内容を超えてはならない。

専利法第34条第6項には、特許査定後に分割をした原出願と分割出願の審査段階についても規定されている。この場合、原出願の審査手続きが査定により終了したにもかかわらず、分割出願の審査が同一の処理手続きの繰り返しにより遅れるということがないように、分割出願は、特許査定前の審査を続行することが明記された。

(7)台湾専利法第34条第7項によれば、原出願の明細書、請求の範囲および図面は、分割により変更されることがないので、原出願は、依然として、その特許査定された時点の請求の範囲および図面で公告が行われる。

台湾専利法第107

実用新案登録を出願した実用新案が、実質上2以上の実用新案である場合、特許主務官庁の通知または出願人の請求により、出願を分割することができる。

分割出願は次の各号に掲げる期間内にこれを行わなければならない。

1.原出願の処分前

2.原出願の登録処分書の到達日から起算して3か月以内。

(1)専利法第107条第1項に規定されている分割出願の要件

実用新案登録出願の分割出願の要件は、基本的に特許出願の分割出願と同様である。

(2)専利法第107条第2項に規定されている分割出願の時期に関する要件

(i)専利法第107条第2項第1号の規定により、分割出願は、原出願の処分(登録処分、または却下処分)の前に行わなければならない。実用新案登録出願について、台湾では、考案の内容に関する実体審査を行わずに、方式審査のみが行われて、要件の不備がないと認められた場合、登録処分書が発せられる。一方、補正指令が発せられて、要件の不備が解消されていない場合は、却下処分書が発せられる。

(ii)2019年改正専利法には、専利法第107条第2項第2号の規定が追加され、特許出願と同様に、実用新案登録出願の原出願の登録処分から3か月以内に分割をすることができると規定されている。

留意事項

(1)分割出願した際に、原出願の種類を変更することはできない。すなわち、特許出願は、分割後も依然として特許出願のままである。分割出願を実用新案登録出願として続行しようとする場合は、改めて出願変更しなければならない。

(2)分割出願は、原出願に開示されている範囲を超えてはならない。すなわち、各分割出願の内容は、原出願の明細書、請求の範囲または図面に開示されている事項でなければならないが、同時に、各分割出願の請求の範囲の内容が原出願の請求の範囲と完全に同一であってはならない。同一である場合、専利法第31条第2項に規定されている出願日、優先日が同日である場合の、出願人が同一人である同一の発明にかかる規定に違反することになる。

(3)分割出願において実体審査を請求しようとする場合、原出願の出願日から3年以内に行わなければならない。分割出願する時期が既に3年の期間を超えている場合は、分割出願した日から30日以内に実体審査を請求しなければならない。

(4)原出願(以下、親出願)から分割出願した後に、親出願が分割時期の要件を満たさなくなった場合、分割要件と分割時期の要件を満たす分割出願(以下、子出願)があれば、当該子出願からさらに分割出願(孫出願)をすることができる。

(5)2011年の専利法改正では最後の拒絶理由通知の制度が導入され、原出願と分割出願の審査について、次の事情があれば台湾智慧財産局はただちに最後の拒絶理由通知を行うことができる。

(i)原出願に対して行う通知が、分割出願において既に通知されている内容と同じである場合

(ii)分割出願に対して行う通知が、原出願において既に通知されている内容と同じである場合

(iii)分割出願に対して行う通知が、その他の分割出願において既に通知されている内容と同じである場合

なお、最後の拒絶理由通知がなされた場合、出願人は通知された期間内において、次の事項についてのみ、特許請求の範囲を補正することができる。

(a)請求項の削除

(b)特許請求の範囲の縮減

(c)誤記の訂正

(iv)不明瞭な記載の釈明

(6)実用新案登録出願の分割時期について

原出願の処分(登録処分、または却下処分)の前だけでなく、登録処分書の送達後3か月以内であれば、分割をすることができるよう規定が緩和された。

(7)2019年改正専利法の経過規定について

専利法第34条第2項第2号、第107条第2項第2号に規定される分割可能期間が法改正により特許査定書・登録処分書の送達から3か月間に拡大されるとともに、経過規定として、専利法第157条の3において「…施行前に、すでに査定または処分された専利出願が第34条第2項第2号および第107条第2項第2号に規定された期間を超えていない場合、改正施行後の規定を適用する」ことが定められた。

よって、上記条文が適用される専利出願には、改正専利法施行日の2019年11月1日以降に査定または処分されたものだけでなく、当該施行日前3か月以内に(2019年8月1日以降に)査定または処分されたものも含まれる。

中国における特許・実用新案の分割出願

(1)分割出願(中国語「分案申请」)できる時期

(i)審査係属中の出願については、特許権、実用新案権を付与する旨の通知書を受領した日から2か月(登録手続期間)以内であれば、出願人は、いつでも分割出願を提出することができる(実施細則第42条)。ただし、上記登録手続期間が満了した後、拒絶査定が確定された後、取り下げされた後(みなし取下げの場合を含む)等には、分割出願をすることができない(審査指南第一部分第一章5.1.1)。

 

(ii)拒絶査定を受けた出願については、不服審判請求の有無を問わず、拒絶査定の通知書を受領してから3か月以内であれば、分割出願を行うことができる。また、不服審判の係属中および不服審判の審決に対する審決取消訴訟係属中においても、分割出願を行うことができる(審査指南第一部分第一章5.1.1)。

 

(iii)単一性欠如で拒絶理由通知が出された場合、出願人は応答期間内に単一性のないクレームを削除する補正を行う必要がある。削除されたクレームについては、拒絶理由に応答する際に、または、上記(i)または(ii)を参考に、適時に分割出願を行うことができる(審査指南第一部分第一章5.1.1)。

 

(iv)2019年11月1日に改正された特許審査指南が施行され、審査指南第一部分第一章5.1.1(3)では「ただし、審査官が、分割通知書または審査意見通知書において、分割出願に単一性の不備が存在していることを通知し、出願人が審査官の審査意見に従って分割出願を再度提出した場合、該分割出願の申請書を再度提出すべき時期は、単一性の不備のある分割出願に基づいて判断するものとする。」として、単一性不備の指摘を受けた場合に、従来の規定では不明確であった再分割出願の申請書の提出時期を、親出願ではなく子の出願(分割出願)が係属中に行わなければならないことを明確にした。また、「規定に適合していない場合、上記分割出願に基づく分割は認められず、審査官は、当該分割出願を提出されなかったものとみなす通知書を発行し、案件終了の処理を行う。」と示している。

 

(2)分割出願は親出願(第1次に提出した出願)に基づき提出しなければならない(実施細則第43条、審査指南第一部分第一章5.1.1、第一部分第二章10)。

(i)分割出願の種類(特許/実用新案/意匠)は、親出願の種類と一致しなければならない。

(ii)分割出願は親出願の優先権を享有できる。

(iii)分割出願の出願人は親出願の出願人と一致しなければならない。

(iv)分割出願人の発明者は親出願人の発明者の全員またはその中の一部でなければな

らない。

(v)分割出願が認められた場合、分割出願の出願日は実際の提出日ではなく、親出願の

出願日が援用される。

 

(3)分割出願に必要な書類(審査指南第一部分第一章5.1.1)

・分割出願の願書、特許請求の範囲、明細書、図面、要約など

・親出願の出願書類の謄本

・親出願における本分割出願と関連する他の書類(例えば、優先権証明書)の謄本

・親出願の国際公開が外国語の場合、親出願の国際公開公報(中国語「国际公开文本」)の謄本

 

(4)分割出願の補正

分割出願は、審査官によって、専利法実施細則第42条、第43条に基づいて、形式要件や、親出願に記載された範囲を超えていないかどうか、単一性を満たすかどうか等の審査が行われ、分割要件を満たしていない場合には補正命令(中国語「补正通知」)が出される。出願人が所定の期限内に補正命令に応答しなかった場合、分割出願は取り下げられたものとみなされる(審査指南第一部分第一章5.1.1)。

また、補正しても分割要件の不備を克服できなかった場合には、分割出願は拒絶される。

 

(5)分割出願の費用

分割出願の費用は、明細書の中国語への翻訳料が不要(親出願の中文明細書利用可)である他は、通常の新規出願の料金と同様である。

 

(6)留意事項

・分割出願を提出した後の各法定期限は、親出願の出願日(優先権を主張する場合は優先日)から起算する。既に満了になった、または分割出願を提出したその日から期限日まで2か月を切ってしまった各種の期限に対しては、分割出願を提出したその日から2か月以内または受理通知書を受領してから15日以内に各種の手続を補完する必要があることに留意すべきである(審査指南第一部分第一章5.1.2)。

 

・「分割出願は親出願に記載された範囲を超えてはならない(審査指南第二部分第六章3.2)」との基準は、日本と同じく、新規事項の判断と同様に行なわれている。しかし、中国の審査実務において、新規事項に該当するかどうかの判断は日本と比べて厳しい。たとえば、親出願の明細書に記載された実施例を概念化するようなクレーム(具体例+自明事項)を新たな分割出願として出願することは難しい。中国の実務上、親出願で削除されたクレームを分割出願として出願することが多く、その意味では、親出願の出願時に必要と思われる概念をできるだけクレームしておくべきであろう。

 

日本とマレーシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

  1. 日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件

・平成19年(2007年)3月31日以前に出願された特許出願であるか、平成19年4月1日以降に出願された特許出願であるかにより、時期的要件が異なる。

・平成19年3月31日以前に出願された特許出願については、下記の(1)の時または期間内であれば分割出願を行うことができる。

・平成19年4月1日以降に出願された特許出願については、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願を行うことができる。

 

(1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内(第44条第1項第1号)

 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

  (i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

  (ii)審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

  (iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)

  (iv)拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

 

(2)特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i)前置審査において特許査定がされた場合(第163条第3項において準用する第51条)

 (ii)拒絶査定不服審判において拒絶査定が取り消され、審決により審査に差し戻され、特許査定がされた場合(第160条第1項)

 

 なお、拒絶査定不服審判を請求した場合の特許をすべき旨の審決の謄本送達後は分割出願することはできない。加えて、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条又は第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

 

(3)最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

 

条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法 第44 特許出願の分割

特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。

 

一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。

 

二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定及び第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から30日以内にするとき。

 

三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3月以内にするとき。

 

2~4(略)

 

5 第1項第2号に規定する30日の期間は、第4条又は第108条第3項の規定により同条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

 

6 第1項第3号に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

 

7 第1項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第2号又は第3号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては、2月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後6月以内にその新たな特許出願をすることができる。

 

  1. マレーシアにおける特許出願の分割出願の時期的要件*1

(a)指令分割(単一性要件違反の指摘を含む審査報告書に対して行う分割出願)の場合、特許規則19A(a)に基づき、当該審査報告書の発行日から3か月以内

 

(b)自発分割(出願人が自発的に行う分割出願)の場合、特許規則19A(b)に基づき、最初の審査報告書の発行日から3か月以内

 

*1: 2016年6月1日発行のPractice Direction No. 2/2016により分割出願期限の起算日が「the date of mailing」から「the date of examination report」に改正された。

 

条文等根拠:特許法第26B条、特許規則19A

 

マレーシア特許法 26B 出願の分割

(1)出願人は、所定の期間内に、その出願を2以上の出願に分割することができる(「分割出願」)。

ただし、個々の分割出願は、原出願における開示を超えてはならない。

 

(2)個々の分割出願は、原出願の優先日を享受するものとする。[法律A648:s.14による挿入、法律A863:s.13による改正]

 

マレーシア特許規則 19A 出願の分割

特許法第26B条(1)の適用上、

(a)ある出願が、特許法第26条の違反を理由に同法第30条(1)または第30条(2)の下になされた審査に関する審査官の報告書中の異論に従い分割される場合、かかる分割の申立は、当該報告書が発行された日から3か月以内になされなければならず、また

 

(b)その他の場合は、出願は、出願人自身の自発的意志により、特許法第30条(1)または第30条(2)に基づき作成された審査官の最初の報告書の発行日から3か月以内に、分割を申し立てることができる。

 

日本とマレーシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本

マレーシア

 

 

分割出願の時期的要件(注)

 

 

補正ができる期間

(指令分割の場合)
審査報告書の発行日から3か月以内

(自発分割の場合)
最初の審査報告書の発行日から3か月以内

(注)査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較

 

 

マレーシアにおける特許の単一性要件と分割出願

(1)特許出願の単一性要件

 マレーシアにおいて、特許出願は、発明の単一性を満たさなければならない(マレーシア特許法第26条)。

 

 次の場合は、発明の単一性を満たしているとされる。

・対象となる製品に関する独立クレームに加えて、その製品の製造のために特に採用される方法についての独立クレーム、および、その製品の使用に関する独立クレーム

 

・対象となる方法に関する独立クレームに加えて、その方法を実施するために特に工夫された装置または手段に関する独立クレーム

 

・対象となる製品に関する独立クレームに加えて、その製品の製造のために特に採用された方法に関する独立クレーム、および、そのような方法を実施するために特に工夫された装置または手段に関する独立クレーム

 

(2)単一性要件の不備を是正するための分割出願*1

 単一性要件を満たさない出願については分割出願によって、その不備を是正できる(マレーシア特許法第26B条(1))。

 実体審査において、出願された特許が単一性の要件を満たしていないと判断された場合、単一性要件を満たしていない旨の報告書が審査官から発せられ(マレーシア特許法第30条(1)(2)に基づく報告書)、その報告書について意見書を提出するためおよびこれらの要件を遵守するために出願を補正するための機会を与えられる。出願人は、この報告書の発行日から3か月以内であれば、当該特許の分割出願を行うことができる(マレーシア特許規則19A(a))。

 なお、単一性要件の不備を補うための分割出願を行う場合、分割出願について実体審査(または修正実体審査)を求める請求は、出願の分割を申し立てるときに行わなければならない。

 

(3)自発的な分割出願*1

 上記(1)の単一性要件の不備を補うための分割出願のほか、出願人は自発的に分割出願することもできる。この場合、審査官から最初に送付される報告書(マレーシア特許法第30条(1)(2)に基づく報告書)の発行日から3か月以内に分割の申立てをしなければならない(マレーシア特許規則19A(b))。最初の報告書の受領前に自発的に出願を分割することはできない。

 なお、自発的な分割出願を行う場合も、分割出願について実体審査(または修正実体審査)を求める請求は、出願の分割を申し立てるときに行わなければならない(マレーシア特許規則27(2)、27A(2))。

 

*1: 2016年6月1日発行のPractice Direction No. 2/2016により分割出願期限の起算日が「the date of mailing」から「the date of examination report」に改正された。

 

(4)分割出願の範囲

 分割出願においては、原出願の明細書に記載された範囲を超えてはならない(マレーシア特許法第26B条(1))。分割出願に新規事項が含まれていると判断され、出願人が当該新規事項を除外することを拒んだ場合には、分割出願は拒絶される。

 

(5)分割出願の出願日

 分割出願は、原出願の出願日に出願したものとして取り扱われる。(マレーシア特許法第30条(2))。

 

(6)分割出願の手数料

 分割出願に係る手数料は、通常の特許出願と同じく、オンラインで行う場合には260マレーシアリンギット、それ以外の場合には290マレーシアリンギットである。

 

(7)留意事項

・一般的に、出願と関連する競業他社の製品を市場で発見し、他社製品を技術的範囲に含むようにクレームを構成したい場合、他社製品の構成が含まれるように親出願のクレームを補正しつつ、自社製品との関係でより広い特許を取得するべく分割出願を行う等の方法で分割出願を戦略的に利用し得る。

・ただし、マレーシアにおいて特許出願の分割を行うことができる時期は、上述の通り、限定的であるため、このような戦略的な分割出願が活用できる場面も限定的になる。

 

ロシアにおける商標出願の拒絶理由通知に対する対応策

 実体審査の結果、商標出願に拒絶理由があると審査官が判断したときは、直ちに拒絶査定をすることなく、拒絶理由を出願人に通知する。応答期間は拒絶理由の発送日から6か月である(ロシア民法第1499条第3項)。拒絶理由通知に対する対応策としては、以下のものがある。

 

(1)意見書の提出

 (i)識別力を有しないとの拒絶理由の場合

  出願商標が指定商品等の品質表示に過ぎないと認定されたが、当該認定は審査官の誤解によるものであって不適切なものである場合は、意見書にてその旨を主張する。

  出願商標の一部に識別力がない部分が含まれている場合も拒絶理由が通知されるが、当該部分が当該出願商標の主要部分でなく、当該出願商標全体として識別力を有する場合は、当該部分について、権利不要求をするとともに、その旨を意見書にて主張することにより、拒絶理由の克服を狙うこともできる(ロシア民法第1483条第1項)。

  また、識別力を有しないとの拒絶理由の場合、長年の使用により識別力を獲得したことの主張および立証を行うことにより、拒絶理由の克服を狙うこともできる(ロシア民法第1483条第1項)。

 

 (ii)他人の先願登録商標と類似する、との拒絶理由の場合

  他人の先願登録商標と類似する、と認定された場合は、称呼、観念および外観のいずれの点からも出願商標とは非類似である旨の反論を意見書で行うことにより、拒絶理由の克服を試みることができる。

  また、後述する指定商品・役務(以下、「指定商品等」という)の補正や不使用取消訴訟等により拒絶理由が解消した場合には、意見書にてその旨を主張する。

 

 (iii)先行する商号・取引上の表示と類似する場合

  この理由は職権審査の対象ではなく、第三者より情報提供された場合に限り、先行する商号・取引上の表示と類似する、との拒絶理由が通知される。商号は、ロシアで登記されている場合に限り保護され、取引上の表示に関する権利は、識別力がありロシアの特定の地域で使用され知られるようになった場合に発生し、1年間全く当該地域で使用されない場合は消滅する。したがって、引用された先行する商号がロシアでは未登記の場合や引用された取引上の表示が1年以上不使用の場合は、意見書にてその旨を主張することにより争うことができる。また、引用された先行する商号や取引上の表示が使用される商品等が指定商品と非類似の場合も意見書にて争い、拒絶理由の克服を試みることができる。

 

(2)指定商品等の補正

 指定商品等の補正により拒絶理由を克服することもできる。例えば、指定商品等の一部のみが先願登録商標の指定商品等や先行する商号等を使用する商品等と類似する場合に、当該類似する指定商品等を削除することにより、拒絶理由を克服できる。

 

(3)商標出願の分割

 拒絶理由のない指定商品等については、分割出願を行うことにより、早期に登録を受けるとともに、拒絶理由を有する指定商品等については、別途争うという対応を取ることもできる。

 

(4)先願商標権者または登録周知商標の所有者(以下、「先願商標権者等」という)との交渉

 拒絶理由が先願登録商標または登録周知商標と類似することを根拠とする場合、先願商標権者等と交渉を行うことにより、拒絶理由の克服を試みることができる。交渉の内容としては、以下のものがある。

 (i)商標登録を受けることについて、先願商標権者等の同意を受けるための交渉

 交渉により後願の出願商標の登録を受けることについて先願商標権者等より同意を受けることができれば、拒絶理由を克服できる可能性がある(ロシア民法第1483条第6項)。ただし、先願商標権者等の同意に審査官は拘束されず、同意を受けて拒絶理由を解消させるか否かは審査官の裁量に委ねられているので、前記同意を受けたとしても、拒絶理由を克服できない場合もある。

 また、先願登録商標と後願の出願商標が同一であって、かつ、先願の指定商品等と後願の指定商品等も同一の場合には、先願商標権者の同意を受けたとしても、拒絶理由を克服することはできない。

 

 (ii)先願商標権を譲り受けるための交渉

  上記交渉により、先願商標権を譲り受けることできれば、先願商標権者と後願の出願人が同一人となるため、拒絶理由を克服することができる。

  先願商標権者等の交渉の結果、同意書を得ることができたとしても、これだけでは拒絶理由は解消せず、当該同意書を上記意見書とともに提出しなければならない。

  同様に、先願商標権の譲り受けの交渉に成功した場合も、これだけでは拒絶理由は解消しない。譲渡契約は書面により締結していなければならず、登録しなければならない(ロシア民法第1234条および第1490条)。譲渡契約が書面によらない場合や登録されていない場合は、いずれも商標権の譲渡は無効である(ロシア民法第1234条第6項)ため、前記譲り受けの交渉が成功した場合は、譲渡契約書を作成の上、移転登録申請を行って移転登録をしなければならない。

 

(5)不使用取消訴訟の提起、無効審判の請求

 拒絶理由が先願商標と類似することを根拠とする場合、当該先願商標の登録に対して不使用取消訴訟の提起や無効審判の請求をし、当該商標登録を消滅させることにより拒絶理由の克服を試みることが可能である(ロシア民法第1483条第6項第2項、第1486条、第1512条)。

 

(6)留意事項

 (i)上記のような先願商標権者等との交渉を行っている場合や不使用取消訴訟の提起や無効審判の請求を行っている場合であっても、応答期間経過後に審査手続が中止されないため、交渉成立や不使用取消訴訟の判決前に拒絶査定が出されてしまう可能性がある点に留意する必要がある。

 

 (ii)先願商標権の放棄か譲渡を求める書簡を権利者に送付し、2か月以内に放棄申請の提出、譲渡契約の締結のいずれもされなかった場合に、前記2か月経過後30日以内に不使用取消訴訟が提起可能である点に留意が必要である。

 

 (iii)無効審判の請求や不使用取消訴訟の提起をするためには、取消、無効にすることについて利害関係を有することを要するが、無効審判等の被請求登録商標を引例とした拒絶理由通知がされた、という事実のみでは「利害関係あり」とはいえない点に留意が必要である。例えば、ロシア以外の国で使用しており、ロシアで使用意図がある、といった事実があれば、利害関係を有すると認められる。

日本と台湾における特許分割出願に関する時期的要件の比較

1.日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件

 平成19年3月31日以前に出願された特許出願であるか、平成19年4月1日以降に出願された特許出願であるかによって、時期的要件が異なる。

 平成19年3月31日以前に出願された特許出願については、下記の(1)の時または期間内であれば分割出願することができる。

 平成19年4月1日以降に出願された特許出願については、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

 

(1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内(第44条第1項第1号)

なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

 (ii)審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

 (iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)

 (iv)拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

 

(2)特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i)前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)

 (ii)審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定

 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条又は第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

 

(3)最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法 第44 特許出願の分割

特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。

一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。

 

二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定及び第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から30日以内にするとき。

 

三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から3月以内にするとき。

2~4(略)

 

5 第1項第2号に規定する30日の期間は、第4条又は第108条第3項の規定により同条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

 

6 第1項第3号に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

 

7 第1項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第2号又は第3号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては、2月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

 

2.台湾における特許出願の分割出願の時期的要件

・原出願の再審査の査定前に分割出願が可能

・原出願の特許査定書の送達日から3か月以内*1に分割出願可能

 

条文等根拠:専利法(日本における特許法、意匠法、実用新案法に相当。以下「専利法」。)第34条、第157条の3

 

台湾専利法 第34

特許を出願した発明が、実質上2以上の発明である場合、特許主務官庁の通知または出願人の請求により、出願を分割することができる。

 

分割出願は次の各号に掲げる期間内にこれを行わなければならない。

原出願の再審査の査定前

原出願の特許査定書の送達日から起算して3か月以内*1

 

分割後の出願は、原出願の出願日を出願日とする。優先権がある場合は、優先権を主張することができる。

 

分割後の出願は、原出願の出願時の明細書、特許請求の範囲または図面に開示された範囲を超えてはならない。

 

第2項第1号規定により分割を行った後の出願は、原出願で既に完了した手続から審査を続行しなければならない。

 

第2項第2号規定により分割を行った後の出願は、原出願が査定される前の審査手続きを続行するものとする。原出願は、査定時の特許請求の範囲および図面をもってこれを公告するものとする。

 

台湾専利法 第157条の3*2

本法中華民国108年(西暦2019年)4月16日改正法の施行前に、すでに査定又は処分された専利出願について、第34条第2項第2号、第107条第2項第2号に規定された期間を越えていない場合、改正施行後の規定を適用する。

 

*1: 2019年11月1日施行予定の改正専利法により特許査定後の分割出願の可能な期間が30日から3か月になることが公表されている。第157条の3に基づき2019年8月1日の登録査定から遡及適用される。

 

*2: 2019年11月1日施行予定の改正専利法に新設された。

 

日本と台湾における特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本

台湾

分割出願の時期的要件(注)

補正ができる期間

出願係属中
原出願が初審査、または再審査係属中に可

(注)査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較

日本とインドネシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

1. 日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件

 

 日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件については、①平成19年3月31日以前の出願、②平成19年4月1日以降の出願、の2つの出願時期によって異なる。

 ①平成19年3月31日以前に出願された特許出願については、下記、特許分割出願の時期的要件(1)の時または期間内であれば分割出願することができる。

 ②平成19年4月1日以降に出願された特許出願については、下記、特許分割出願の時期的要件(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。なお、平成27年4月1日以降に出願された特許出願については、特許分割出願の時期的要件(2)または(3)の期間内に不責事由により分割出願できないときは、下記(4)の延長期間内に分割出願することができる。

 

<特許分割出願の時期的要件>

(1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(特許法第44条第1項第1号)

 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(特許法第17条の2第1項本文)

 (ii)審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(特許法第17条の2第1項第1号、第3号)

 (iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(特許法第17条の2第1項第2号)

 (iv)拒絶査定不服審判請求と同時(特許法第17条の2第1項第4号)

 

(2)特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(特許法第44条第1項第2号)

 (i)前置審査における特許査定(特許法第163条第3項において準用する第51条)

 (ii)審決により、さらに審査に付された場合(特許法第160条第1項)における特許査定

 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(特許法第44条第5項)。

 

(3)最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(特許法第44条第1項第3号)

 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(特許法第44条第6項)。

 

(4)その不責事由がなくなった日から14日(在外者にあっては2月)以内で、(2)または(3)の期間の経過後6月以内(特許法第44条第7項)

 

 条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法 第44条 特許出願の分割

特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一または二以上の新たな特許出願とすることができる。

 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内にするとき。

 二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定および第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があった日から30日以内にするとき。

 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から3月以内にするとき。

2~4(略)

5 第1項第2号に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により同条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

6 第1項第3号に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

7 第1項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第2号又は第3号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては、2月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後6月以内にその新たな特許出願をすることができる。

 

2. インドネシアにおける特許出願の分割出願の時期的要件

 

 インドネシアにおいては、出願から(特許または拒絶)査定が発行されるまでは、いつでも分割出願を行うことができる。

※指令書(拒絶理由通知書)発行後であってもその応答期間に関わらず、(特許または拒絶)査定が発行されるまでは、いつでも分割出願を行うことができる。

 

 条文等根拠:特許法第38条(1)(2)、第58条(1)(2)、第62条(1)(3)(9)、特許規則第7条、第8条(1)(2)

 

インドネシア特許法 第38条

(1)特許出願は、出願人の自発および/または大臣の提案により補正または分割することができる。

(2)(1)項における補正または分割は、特許付与の決定が与えられる前に行うことができる。

 

インドネシア特許法 第58条

(1)実体審査の結果に基づき、特許を申請された発明が第54条の規定を満たす場合、大臣は出願を認容する。

(2)出願が認容された場合、大臣は出願人または代理人に当該出願が特許を付与される旨書面をもって通知する。

 

インドネシア特許法 第62条

(1)審査官が特許出願された発明が第54条の規定を満たさないと報告した場合、大臣は出願人またはその代理人に対して書面により当該規定の要件を満たすよう通知する。

(2)(1)項における通知は以下を含む:

(a)充足されるべき要件;及び

(b)実体審査において用いられる理由と引用文献

(3)出願人は、通知書の日から3か月以内に意見書を提出しおよび/または通知書に記載される要件を満たさなければならない。

(4)~(8)(略)

(9)(3)項、(4)項、(5)項および/または(8)項にいう期間内に出願人が意見を表すも通知書に記載される規定の要件を満たさない場合、大臣は、書面で出願人に対し2か月以内に出願は拒絶される旨通知する。

 

インドネシア特許規則 第7条

1特許出願は,1発明に対してのみすることができるという規定を遵守して,(次のように出願を分割することができる。)

(a)既になされた特許出願は,当該特許出願が 2 以上の発明を包含することが判明した場合は,2以上の出願に分割することができる。

(b)(a)にいう分割により生じた各特許出願は,別個の出願としてすることができ,当該特許出願に対しては,当初の特許出願の受理の日と同一の特許出願の受理の日を付与することができる。

 

インドネシア特許規則 第8条

(1)第7条にいう特許出願の分割は、特許局に対して書面でなされるものとする。

(2)(1)にいう特許出願の分割出願は、当該特許出願に対して実体審査が行われて既に終了している場合は、拒絶される。

 

日本とインドネシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本

インドネシア

分割出願の

時期的要件

1.補正ができる時または期間

(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)

(ii)審査官から拒絶理由通知を受けた場合の指定応答期間内

(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の指定応答期間内

(iv)拒絶査定不服審判請求と同時

 

2.特許査定の謄本送達後30日以内(以下の(i)(ii)の特許査定を除く)

(i)前置審査における特許査定

(ii)審決により、審査に付された場合における特許査定

 

3.最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内

 

4.不責事由がなくなった日から14日(在外者にあっては2月)以内で、2.または3.の期間の経過後6月以内

1.出願から(特許または拒絶)査定の発行まで

 

日本とシンガポールにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件

 平成19年3月31日以前に出願された特許出願であるか、平成19年4月1日以降に出願された特許出願であるかによって、時期的要件が異なる。

 平成19年3月31日以前に出願された特許出願については、下記の(1)の時または期間内であれば分割出願することができる。

 平成19年4月1日以降に出願された特許出願については、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

 

(1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)

 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

 (ii)審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

 (iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号

 (iv)拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

 

(2)特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i)前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)

 (ii)審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定

 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

 

(3)最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

 (3)に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

 

条文等根拠:日本特許法第44条

 

日本特許法 第44条 特許出願の分割

特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一または二以上の新たな特許出願とすることができる。

 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内にするとき。

 二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定および第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があった日から30日以内にするとき。

 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から3月以内にするとき。

 

2~4(略)

 

5 第1項第2号に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により同条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

 

6 第1項第3号に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

 

7 第1項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第2号又は第3号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から14日(在外者にあっては、2月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後6月以内にその新たな特許出願をすることができる。

 

—————————————————————————————

 

シンガポールにおける特許出願の分割出願の時期的要件

 2014年2月14日以降になされた、シンガポール出願、シンガポール国内移行および分割出願を対象とする時期的要件は、以下の(i)または(ii)の手続前までとなる。

 

(i)原出願の登録料の納付

(ii)原出願の拒絶、放棄または取下げ

 

条文等根拠:シンガポール特許法第26条(11)

 

シンガポール特許法 第26条 出願日

(11)特許出願が行われた後であって、第30条(c)の条件が満たされる前、若しくは出願が拒絶、取下げ、取下げ擬制、放棄擬制または放棄になる前に、

(a)当該先の出願に含まれる主題の一部に関して、規則に従って、原出願人またはその権原承継人により新出願が行われ、かつ

(b)当該新出願に関して、第84条に違反することなく、(1)(a)、(b)および(c)(i)または(ii)の条件が満たされた場合には、

当該新出願は、その出願日として当該先の出願の出願日を有するものとして取り扱われる。

 

(参考)

シンガポール特許法 第30条 特許付与

以下の条件がすべて満たされた場合,登録官は出願人に特許を付与する。

(a)すべての方式要件が満たされていること,

(b)出願人が第29条A(1)又は29条B(5)(b)(i)に基づく特許付与手続を進める許可の通知を受領したこと,かつ

(c)特許付与に係る所定の文書が提出されていること。

 

日本とシンガポールにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本

シンガポール

分割出願の

時期的要件

1.補正ができる時または期間

(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)

(ii)審査官から拒絶理由通知を受けた場合の指定応答期間内

(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の指定応答期間内

(iv)拒絶査定不服審判請求と同時

 

2.特許査定の謄本送達後30日以内(以下の(i)(ii)の特許査定を除く)

(i)前置審査における特許査定

(ii)審決により、審査に付された場合における特許査定

 

3.最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内

1.原出願の登録料の納付の前まで

2.原出願の拒絶、放棄または取下げの前まで

日本と中国における特許分割出願に関する時期的要件の比較

<日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件>

 

 特許法第44条は、特許出願の分割に関する規定であり、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

 

(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)

 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)

 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

 

(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)

 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定

 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

 

(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法 第44条(特許出願の分割)

 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。

 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。

 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。

 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。

2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。

3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。

4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

 

 

 

<中国における特許出願の分割出願の時期的要件>

 

1.出願係属中および出願人が特許査定通知を受領した日から2月(すなわち登録手続きの期限)の期間が満了するまで分割出願可能

2.拒絶査定通知を受領した日から3か月以内であれば、不服審判請求提出後、または不服審判に対する審決取消訴訟期間中でも分割出願可能

3.二次分割出願をする場合、原出願の時期的要件が上記1、2を満たさなければ、一次分割出願がそれを満たしていても、分割出願が認められない。ただし、一次分割出願に単⼀性の不備があるため、出願⼈が審査官の拒絶理由通知書に基づき再度分割出願をする場合は例外とする

 

 原出願からの分割出願(一次分割出願)から更に分割出願(二次分割出願)をする場合、その二次分割出願の時期的要件は、原出願に基づいて審査される。すなわち、二次分割出願の出願日が原出願に基づいた上記時期的要件が満たされない場合には、一次分割出願が出願係属中であっても分割出願することができない。

 ただし、一次分割出願の単一性の欠陥を審査意見通知書で指摘された場合に、その審査意見に基づいて再度分割出願することはできる。

 

条文等根拠:専利法実施細則第42条、専利法実施細則第54条、専利審査指南第1部分第1章5.1.1.(3)

 

※専利法実施細則とは日本における特許法施行規則に相当。専利審査指南とは日本における特許・実用新案審査基準に相当。

 

中国専利法実施細則 第42条

 一つの特許出願に二つ以上の発明、実用新案または意匠が含まれる場合、出願人は本細則第54条第1項に規定する期限が満了するまでに、国務院特許行政部門に分割出願を申し出ることが出来る。但し、特許出願が既に却下され、取り下げられまたは見なし取り下げとされた場合、分割出願を申し出ることは出来ない。

 国務院特許行政部門は、一つの特許出願が専利法第31条と本細則第34条または第35条の規定に合致しないと考える場合、指定期限内にその出願について補正を行なうよう出願人に通知しなければならない。期限が満了になっても出願人が回答しない場合、当該出願が取り下げられたものと見なす。

 分割出願は元の出願の類別を変更してはならない。

 

中国専利法実施細則 第54条

 国務院特許行政部門が特許権を付与する旨の通知を出した後、出願人は通知を受領した日より起算して2ヶ月以内に登録手続きを取らなければならない。出願人が期限内に登録手続きを取った場合、国務院特許行政部門は特許権を付与し、特許証を交付し、公告しなければならない。

 期限が満了になっても登録手続きを取らない場合、特許権を取得する権利を放棄したものと見なす。

 

専利審査指南第1部分第1章5.1.1.(3) 分割出願の提出日

 出願人は、専利局から原出願に対して専利権を付与する旨の通知書を受領した日より2ヶ月の期間(即ち登録手続きの期限)の経過前までに分割出願を提出しなければならない。前記期限が満了した後、或いは原出願が却下され、或いは原出願が取り下げられ、又は原出願が取下げとみなされかつその権利が回復されなかった場合は、一般的に分割出願を再び提出することができない。

 審査官により却下査定がなされた原出願に対して、出願人は却下査定を受領した日より3ヶ月以内に、復審請求の有無に拘わらず分割出願を提出することができる。復審請求の提出後および復審決定を不服とし、行政訴訟を提起している期間中でも、分割出願を提出することができる。

 方式審査において、分割出願の提出日が前記の規定に合致しない場合、審査官は分割出願が未提出とみなす通知書を発行し案件終了の処理を行う。

 出願人が分割出願した出願について更に分割出願を提出する場合、再度提出される分割出願の提出時間は、依然として原出願を基に審査する。再分割出願の出願日が上記の規定に合致しない場合、分割出願をすることができない。

 ただし、分割出願に単一性の欠陥があるため、出願人が審査官の審査意見に基づき再度分割出願をする場合は例外とする。このような例外の場合、出願人は再度分割出願をすると同時に、単一性の欠陥が指摘された審査官による審査意見通知書または分割通知書のコピーを提出しなければならない。上記規定に合致した審査意見通知書または分割通知書のコピーを提出しなかった場合は、例外として取り扱うことができない。上記規定を満たさないものに対して、審査官は補正通知書を発行し、出願人に補正するよう通知しなければならない。期間が経過しても補正されない場合、審査官は取下げとみなす通知書を発行する。出願人が補正した後も尚規定に合致しない場合、審査官は分割出願が未提出とみなす通知書を発行し案件終了の処理を行う。

 

日本と中国における特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本

中国

分割出願の時期的要件

1.補正ができる時または期間

(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)

(ii)審査官から拒絶理由通知を受けた場合の指定応答期間内

(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の指定応答期間内

(iv)拒絶査定不服審判請求と同時

 

2.特許査定の謄本送達後30日以内(以下の(i)(ii)の特許査定を除く)

(i)前置審査における特許査定

(ii)審決により、審査に付された場合における特許査定

 

3.最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内

 

1.出願係属中および出願人が特許査定通知を受領した日から2月(すなわち登録手続きの期限)の期間が満了するまで分割出願可能

 

2.拒絶査定通知を受領した日から3月以内であれば、不服審判請求提出後、または不服審判に対する審決取消訴訟期間中でも分割出願可能

 

3.二次分割出願をする場合、原出願の時期的要件が上記1、2を満たさなければ、一次分割出願がそれを満たしていても、分割出願が認められない

(ただし、一次分割出願の単⼀性の不備による審査官の拒絶理由通知書に基づく再度の分割出願をする場合は例外)

日本とロシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

<日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件>

 

 特許法第44条は、特許出願の分割に関する規定であり、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

 

(1) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)

 なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

 (i) 出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

 (ii) 審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

 (iii) 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号)

 (iv) 拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

 

(2) 特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

 (i) 前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)

 (ii) 審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定

 なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

 

(3) 最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

 (3)に規定する3か月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法 第44条(特許出願の分割)

 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。

 一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。

 二 特許をすべき旨の査定(第百六十三条第三項において準用する第五十一条の規定による特許をすべき旨の査定及び第百六十条第一項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から三十日以内にするとき。

 三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。

2 前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。ただし、新たな特許出願が第二十九条の二に規定する他の特許出願又は実用新案法第三条の二に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用及び第三十条第三項の規定の適用については、この限りでない。

3 第一項に規定する新たな特許出願をする場合における第四十三条第二項(第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定の適用については、第四十三条第二項中「最先の日から一年四月以内」とあるのは、「最先の日から一年四月又は新たな特許出願の日から三月のいずれか遅い日まで」とする。

4 第一項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第三十条第三項、第四十一条第四項又は第四十三条第一項及び第二項(これらの規定を第四十三条の二第二項(前条第三項において準用する場合を含む。)及び前条第三項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

5 第一項第二号に規定する三十日の期間は、第四条又は第百八条第三項の規定により同条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

6 第一項第三号に規定する三月の期間は、第四条の規定により第百二十一条第一項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

7 第一項に規定する新たな特許出願をする者がその責めに帰することができない理由により同項第二号又は第三号に規定する期間内にその新たな特許出願をすることができないときは、これらの規定にかかわらず、その理由がなくなった日から十四日(在外者にあっては、二月)以内でこれらの規定に規定する期間の経過後六月以内にその新たな特許出願をすることができる。

 

 

 

<ロシアにおける特許出願の分割出願の時期的要件>

 

 ロシアにおいて、特許出願を分割して出願するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要がある(民法第1381条第4項)。

(1) 原出願が取り下げられていないこと(取下げとみなされていないこと)

(2) 原出願について、拒絶査定に対する不服申立期間が満了していないこと

(3) 原出願について特許付与の査定がなされた場合、原出願に係る特許が登録されていないこと

 上記「取下げとみなされていないこと」に対して、「取下げとみなされる」状況とは、以下の点が考えられる。

(A)実体審査請求期限(出願から3年以内(2月の延長可))までに、実体審査請求がなされない場合(民法第1386条第1項)

(B)指令書に対する応答期限(3月以内(10月の延長可))までに、出願人が応答しない場合(民法第1386条第6項)

(C)審査結果通知に対する応答期限(6月以内)までに、出願人が応答しない場合(民法第1387条第1項、民法第1387条第2項)

(D)登録料納付期限(6月以内)までに、出願人が登録料を納付しない場合(民法第1393条第2項)

条文等根拠:民法第1381条第4項、民法第1386条第1項、第6項、民法第1387条第1項、第2項、民法第1393条第2項

 

ロシア民法 第1381条第4項(発明,実用新案又は意匠の優先権の確立)

  1. 分割出願のもとでの発明,実用新案又は意匠についての優先権は,知的財産権を所管する連邦行政機関に対し同一出願人が当該発明,実用新案又は意匠を開示する最初の出願を提出した日により決定され,原出願のもとでより早い優先権が存在している場合は,最先の優先権の日付により決定されるものとする。但し,分割出願の提出日において,発明,実用新案又は意匠に係る原出願が取り下げられておらず,かつ取り下げられたものと見なされていなかったこと,及び本法に定める原出願の下で特許の付与を拒絶する査定に対する不服申立期間満了前に,又は原出願を基礎として特許付与の査定がなされた場合は,当該発明,実用新案又は意匠の登録日の前に,分割出願が出願されたことを条件とする。

 

ロシア民法 第1386条第1項、第6項(発明出願の審査)

  1. 特許出願時又は出願日から3年以内に,かつ方式審査の結果が肯定的であることを条件として,出願人又は第三者が知的財産権を所管する連邦行政機関に申立を提出したときは,当該発明出願は,実体審査を受ける。当該連邦行政機関は,第三者から申立を受領したときは出願人に通知するものとする。

知的財産権を所管する連邦行政機関は,提出期限前に出願人が提出する請求に基づき,発明出願の実体審査に係る申立の提出期限を2月を越えない範囲で延長することができる。

発明出願の実体審査を求める申立が所定の期間内に提出されない場合は,出願は取り下げられたものとみなされる。

  1. 発明出願の実体審査の間,知的財産権を所管する連邦行政機関は,実体審査又は特許の付与に関する決定に不可欠な追加資料(補正されたクレームを含む)を,出願人に要求することができる。この追加資料は,出願の実体を変更することなしに,要求又は出願に反駁する資料の写しの送付から3月以内に提出されるものとする。ただし,当該写しに関しては,当該連邦行政機関による要求から2月以内に,出願人がこれを請求することを条件とする。所定の期間内に出願人が請求された資料を提出するか又は期間の延長を求める申立を提出しない限り,出願は取り下げられたものとみなされる。当該連邦行政機関は,請求資料の出願人による提出のために定められた期間を10月を越えない範囲で延長することができる。

出願の実体審査において,発明の単一性要件が満たされていないことが確認された場合は,本法第1384条第4段落の規定が適用される。

出願人が追加資料を提出した場合は,当該資料が出願の本質を変更する(第1378条)ものであるか否かが確認される。

出願の本質を部分的に変更する追加資料は検討されない。出願人は,かかる資料を独立出願として提出することができる。知的財産権を所管する連邦行政機関は,この旨を出願人に通知するものとする。

 

ロシア民法 第1387条第1項、第2項(発明特許の付与,付与拒絶又は出願取下の宣言に関する決定)

  1. 発明出願の実体審査により,出願人が提出した発明クレームにおいて提示されている請求された発明が,本法第1349条第4段落に記載されている客体に関連せず,本法第1350条に規定する特許性の条件及び本法第1375条第2段落第1副段落から第4副段落までに言及されかつ出願日に提出された出願書類中の請求された発明の本質に合致し,かつ,発明の形成を適切に開示すると認められた場合は,知的財産権を所管する連邦行政機関は,当該発明に特許を許可する旨を決定するものとする。当該決定は,発明出願の出願日及び発明の優先日を明記するものとする。

発明出願の実体審査において,出願人が提出した発明クレームに表示されている請求された発明が本段落第1副段落にいう少なくとも1つの特許性の要件若しくは条件の何れにも合致しないか又は本段落第1副段落にいう出願書類が本段落に定める要件に合致しないことが確認された場合は,知的財産権を所管する連邦行政機関は,特許の付与を拒絶するものとする。

知的財産権を所管する連邦行政機関は,特許の付与を拒絶する旨を決定する前に,請求された発明の特許性の確認の結果を通知すると共に,通知に記載された理由に応答する主張を求める。かかる理由に関する出願人の応答は,通知が送付された日から6月以内に提出しなければならない。

  1. 発明出願は,知的財産権を所管する連邦行政機関の決定に基づき,本章の規定に基づいて取り下げられたものとみなされる。

 

ロシア民法 第1393条第2項(発明,実用新案又は意匠の国家登録及び特許付与手続)

  1. 発明,実用新案又は意匠の国家登録及び特許付与は,適用される特許税の納付をもって完了する。出願人が所定の手続に基づいて特許税を納付しなかった場合は,当該の発明,実用新案又は意匠は登録されないものとし,対応する出願は,知的財産権を所管する連邦行政機関の決定により,取り下げられたものとみなされる。

発明特許,実用新案又は意匠の付与決定が本法第1248条の手続に従って争われたときは,出願取下の決定は行われない。

 

 

日本とロシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

 

日本

ロシア

分割出願の時期的要件

1.補正ができる時または期間

(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)

(ii)審査官から拒絶理由通知を受けた場合の指定応答期間内

(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の指定応答期間内

(iv)拒絶査定不服審判請求と同時

 

2.特許査定の謄本送達後30日以内(以下の(i)(ii)の特許査定を除く)

(i)前置審査における特許査定

(ii)審決により、審査に付された場合における特許査定

 

3.最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内

 

条文等根拠:特許法第44条

1.原出願が取り下げられていない、または取下げとみなされていないこと

 

2.拒絶査定に対する不服申立期間満了前

 

3.特許付与の査定がなされた場合、登録日の前

 

 取下げとみなされる状況は、

 (A)実体審査請求期限までに審査請求がなされない場合(出願から3年以内(2月の延長可))

 (B)指令書に対する応答期限までに応答しない場合(指令から3月以内(10月の延長可))

 (C)査定結果通知に対数応答期限までに応答しない場合(通知から6月以内)

 (D)登録料納付期限までに登録料を納付しない場合(査定から6月以内)

 

条文等根拠:民法第1381条第4項