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ロシアにおける商標出願の拒絶理由通知に対する対応策

 実体審査の結果、商標出願に拒絶理由があると審査官が判断したときは、直ちに拒絶査定をすることなく、拒絶理由を出願人に通知する。応答期間は拒絶理由の発送日から6か月である(ロシア民法第1499条第3項)。拒絶理由通知に対する対応策としては、以下のものがある。

 

(1)意見書の提出

 (i)識別力を有しないとの拒絶理由の場合

  出願商標が指定商品等の品質表示に過ぎないと認定されたが、当該認定は審査官の誤解によるものであって不適切なものである場合は、意見書にてその旨を主張する。

  出願商標の一部に識別力がない部分が含まれている場合も拒絶理由が通知されるが、当該部分が当該出願商標の主要部分でなく、当該出願商標全体として識別力を有する場合は、当該部分について、権利不要求をするとともに、その旨を意見書にて主張することにより、拒絶理由の克服を狙うこともできる(ロシア民法第1483条第1項)。

  また、識別力を有しないとの拒絶理由の場合、長年の使用により識別力を獲得したことの主張および立証を行うことにより、拒絶理由の克服を狙うこともできる(ロシア民法第1483条第1項)。

 

 (ii)他人の先願登録商標と類似する、との拒絶理由の場合

  他人の先願登録商標と類似する、と認定された場合は、称呼、観念および外観のいずれの点からも出願商標とは非類似である旨の反論を意見書で行うことにより、拒絶理由の克服を試みることができる。

  また、後述する指定商品・役務(以下、「指定商品等」という)の補正や不使用取消訴訟等により拒絶理由が解消した場合には、意見書にてその旨を主張する。

 

 (iii)先行する商号・取引上の表示と類似する場合

  この理由は職権審査の対象ではなく、第三者より情報提供された場合に限り、先行する商号・取引上の表示と類似する、との拒絶理由が通知される。商号は、ロシアで登記されている場合に限り保護され、取引上の表示に関する権利は、識別力がありロシアの特定の地域で使用され知られるようになった場合に発生し、1年間全く当該地域で使用されない場合は消滅する。したがって、引用された先行する商号がロシアでは未登記の場合や引用された取引上の表示が1年以上不使用の場合は、意見書にてその旨を主張することにより争うことができる。また、引用された先行する商号や取引上の表示が使用される商品等が指定商品と非類似の場合も意見書にて争い、拒絶理由の克服を試みることができる。

 

(2)指定商品等の補正

 指定商品等の補正により拒絶理由を克服することもできる。例えば、指定商品等の一部のみが先願登録商標の指定商品等や先行する商号等を使用する商品等と類似する場合に、当該類似する指定商品等を削除することにより、拒絶理由を克服できる。

 

(3)商標出願の分割

 拒絶理由のない指定商品等については、分割出願を行うことにより、早期に登録を受けるとともに、拒絶理由を有する指定商品等については、別途争うという対応を取ることもできる。

 

(4)先願商標権者または登録周知商標の所有者(以下、「先願商標権者等」という)との交渉

 拒絶理由が先願登録商標または登録周知商標と類似することを根拠とする場合、先願商標権者等と交渉を行うことにより、拒絶理由の克服を試みることができる。交渉の内容としては、以下のものがある。

 (i)商標登録を受けることについて、先願商標権者等の同意を受けるための交渉

 交渉により後願の出願商標の登録を受けることについて先願商標権者等より同意を受けることができれば、拒絶理由を克服できる可能性がある(ロシア民法第1483条第6項)。ただし、先願商標権者等の同意に審査官は拘束されず、同意を受けて拒絶理由を解消させるか否かは審査官の裁量に委ねられているので、前記同意を受けたとしても、拒絶理由を克服できない場合もある。

 また、先願登録商標と後願の出願商標が同一であって、かつ、先願の指定商品等と後願の指定商品等も同一の場合には、先願商標権者の同意を受けたとしても、拒絶理由を克服することはできない。

 

 (ii)先願商標権を譲り受けるための交渉

  上記交渉により、先願商標権を譲り受けることできれば、先願商標権者と後願の出願人が同一人となるため、拒絶理由を克服することができる。

  先願商標権者等の交渉の結果、同意書を得ることができたとしても、これだけでは拒絶理由は解消せず、当該同意書を上記意見書とともに提出しなければならない。

  同様に、先願商標権の譲り受けの交渉に成功した場合も、これだけでは拒絶理由は解消しない。譲渡契約は書面により締結していなければならず、登録しなければならない(ロシア民法第1234条および第1490条)。譲渡契約が書面によらない場合や登録されていない場合は、いずれも商標権の譲渡は無効である(ロシア民法第1234条第6項)ため、前記譲り受けの交渉が成功した場合は、譲渡契約書を作成の上、移転登録申請を行って移転登録をしなければならない。

 

(5)不使用取消訴訟の提起、無効審判の請求

 拒絶理由が先願商標と類似することを根拠とする場合、当該先願商標の登録に対して不使用取消訴訟の提起や無効審判の請求をし、当該商標登録を消滅させることにより拒絶理由の克服を試みることが可能である(ロシア民法第1483条第6項第2項、第1486条、第1512条)。

 

(6)留意事項

 (i)上記のような先願商標権者等との交渉を行っている場合や不使用取消訴訟の提起や無効審判の請求を行っている場合であっても、応答期間経過後に審査手続が中止されないため、交渉成立や不使用取消訴訟の判決前に拒絶査定が出されてしまう可能性がある点に留意する必要がある。

 

 (ii)先願商標権の放棄か譲渡を求める書簡を権利者に送付し、2か月以内に放棄申請の提出、譲渡契約の締結のいずれもされなかった場合に、前記2か月経過後30日以内に不使用取消訴訟が提起可能である点に留意が必要である。

 

 (iii)無効審判の請求や不使用取消訴訟の提起をするためには、取消、無効にすることについて利害関係を有することを要するが、無効審判等の被請求登録商標を引例とした拒絶理由通知がされた、という事実のみでは「利害関係あり」とはいえない点に留意が必要である。例えば、ロシア以外の国で使用しており、ロシアで使用意図がある、といった事実があれば、利害関係を有すると認められる。

タイにおける「商標の使用」と使用証拠

 タイ商標法に基づき登録が可能な商標は、「識別性」のある商標であり、商標法に基づき禁止されていない商標、他人が登録した商標と同一または類似でない商標である。タイでは、近年、2つ以上の定義語を含む多くの独創的な商標が、商標登録を認められず、困難に直面している。これは、登録官が商標を個々の要素ごとに分解して、当該商標出願の指定商品もしくは指定役務の特徴や品質と関連づけて、識別性の欠如を理由に、商標登録を認めないためである。しかし、当該商標が使用を通じて識別性を獲得したことを出願人が証明できれば、商標登録が認められる可能性がある。

 本稿では、「使用」の判断基準および使用を通じて識別性を獲得したことを証明するために必要な証拠について論述する。また、商標の使用の認定に関する知的財産局とCIPITCの異なるアプローチについても述べる。

 現行のタイ商標法の正式名称は、「B.E.2559(2016年)法律(No.3)により改正されたB.E.2534(1991年)10月28日法律」であり、旧商標法「B.E.2534」が改正され、2016年7月28日に施行されたものである。タイ商標法の第7条によれば、識別性が欠如している商標を、通商大臣が定めた規定に従い、当該商標の指定商品および指定役務について、広く販売または宣伝されている商品に使用されており、かつその規定が正しく遵守されている場合、その商標は識別性を有するとみなされることがある。

 タイ商標法の第7条に加えて、2003年3月12日付商務大臣告示では、出願された商標を付した商品もしくは役務は、公衆が十分に商品および役務を認識できるようになるまで、継続して適切に販売もしくは宣伝をされなければならないと規定されていた。この2003年3月12日付商務大臣告示はその後2012年10月11日付商務大臣告示によって改正され、タイ商標法第7条における「公衆に広く知られるまでに商標,サービスマーク等が付された商品またはサービスが,販売,頒布または広告によって識別性を獲得したこと」の証明については下記のような内容となっている。

 

・商品または役務が,一般公衆または関連分野の公衆が当該商品または役務が他のものと異なることを認識し理解できる程度にまで,一定期間,継続的に販売されまたは頒布されなければならない。

・商品または役務の販売,頒布または広告によって標章がタイで広く知られるようになった場合,当該標章はその標章が付された商品または役務についてのみ識別性を有するものとみなす。

・この告示に基づいて識別性が証明された標章は,登録された商標と同一でなければならない。

 

 この識別性の証明について,出願人は,登録しようとする標章が使われた商品または役務の販売,頒布または広告に関する証拠を提出しなければならず、この証拠とは,商品や役務を購入した領収書の写し,商品やサービスの広告費用の領収書の写し,請求書の写し,商品または役務の注文書の写し,工場の認可証の写し,メディアを使った広告の証拠の写し,商品のサンプルまたは必要に応じて証人(もしあれば)を含むその他の証拠などをいう。

 

 使用証拠提出の時期は、前記2003年3月12日付商務大臣告示においては出願と同時にされなければならないとされており、その後の追加は認められていなかったが、2012年10月11日付商務大臣告示においては、商標出願に添付して期間延長請求を提出すれば出願後60日以内に使用証拠の追加提出が認められるようになり、柔軟な対応が認められるようになった。

 使用証拠を審査する機関は2つある。商標委員会とCIPITCである。商標の使用の判断基準に関しては、これら2つの機関は似たような見解を示している。だが、CIPITCは、通常、商標委員会に比べて寛大でビジネス寄りのアプローチを採用する。商標委員会の決定に不服がある場合には、CIPITCへ抗告することができる。また、この抗告によって、出願人が使用を通じて識別性を獲得したことの立証に成功する可能性は高くなると考えられる。

 商標委員会の近年の審決を踏まえていえば、タイにおいて商標を付した商品もしくは役務の使用、宣伝もしくは販売がなされてきた期間を出願人がはっきりと証明できない場合、商標委員会はそれを十分な使用とはみなさないと推測することができる。基本的に、継続した(3年以上)使用の証拠の量に着目する商標委員会とは異なり、CIPITCは、タイにおける商標の使用の量や期間だけに頼ることはしない。逆に、他の国での使用証拠も認容するだけでなく、掘り下げた理由付けを適用し、様々な要因(当該商標の外国での登録等)を考慮するのである。商標委員会の審決を不服としてCIPITCへ抗告を行い、そこでも主張が認められない場合には、最高裁判所へ上告するという選択肢がある。ただし、すべての申請が受理されるわけではなく、多額の費用と時間がかかることにも留意すべきである。

 2017年にタイはマドリッド協定議定書への加盟を行い、これに伴う国内法の改正を行った。しかし、識別力獲得に関する商標委員会やCIPITCの判断傾向は、現在のところ、これらの改正に伴う影響は受けていないようである。

 タイ商標法第7条に関する直近の判例として、商標権侵害が争われた最高裁判決2766/2559号(原告:TOA Paint (Thailand) Co., Ltd. 被告:Cera C-Cure Co., Ltd.)がある。本事件では、原告が建物用ペンキ等に「Supershield」という商標を保有していたところ、被告がこれに類似する「Super-shield」という商標を使用していたため原告が商標権侵害を主張した事案である。

 本事案において被告は、「Supershield」という名称は「高い保護機能を有する」程度の内容を需要者に想起させるに過ぎないと主張し、その語について原告は専用権を独占する権利を有しないと主張した。

 しかしながら最高裁判所は、2006年に出願された原告商標が出願時に1984年(B.E.2527)からの使用証拠を提出していること等を考慮し、このような長期間にわたる使用の結果、原告商標は識別力を獲得していると判断し、被告の主張を退けた上で原告の請求を認めた。

 本事件は法改正前から争われていた事案ではあるが、このように使用の期間が最も重視される識別性獲得判断の傾向は、法改正後もしばらく変わらないことが予想される。

 

韓国における指定商品役務に関わる留意事項

【詳細】

 韓国は1998年3月1日から、「標章の登録のための商品およびサービスの国際分類に関するニース協定」(以下、ニース協定)を導入し、それに基づき指定商品および指定役務の区分を分類した、ニース分類の第10版を採用している。商標権の権利範囲は指定された商品や役務の内容によって決まるため、指定商品および指定役務を具体的かつ明確に記載しなければならない。特許庁では、「商品および役務の記述と類区分に関する告示」(以下「商品告示」)に記載されている商品役務記述を活用することを推奨している。また1出願で多区分を指定した出願が可能である。

 

 指定商品および指定役務が明確か否かは、「商品告示」に記載された名称を基準として、「商品告示」に記載された名称以外の商品および役務の場合には、複数の区分に該当しないことが明確なほどに、その商品役務が具体的に記載されていることが要求される。同じニース分類を採用している日本と韓国でも、各商品役務でカバーされる権利範囲が異なることがあるため注意が必要である。例えば、日本では「被服」には帽子が含まれるとみなすが、韓国では「被服」という商品名称自体が「商品告示」に記載されていない。韓国では「衣類」には帽子、靴が含まれないので、日本における「被服」のような権利範囲を希望する場合には、韓国では「衣類、帽子、靴」を指定して出願する必要がある。

 

1.指定商品および指定役務記載時の留意点

 指定商品および指定役務の記載には、商品名ごとにコンマ(,)で仕切る必要がある。また、「他区分に属しない…」、「その他…」、「各種…」のような表現は認められない。「商品告示」に記載されている名称以外には、「…部品」、「…付属品」のような記載方法は認められない。そのため、具体的な部品名および付属品名を記載しなければならない。指定商品および指定役務の名称に他人の登録商標が用いられた場合は、商品や役務の範囲が不明瞭、もしくは指定商品および指定役務の記載が不明瞭とみなされる。例えば、指定商品を「iPhone用コンピュータプログラム」との記載では不明確とされ、「携帯電話用コンピュータプログラム」と記載しなければならない。。

 

2.ニース分類上の類見出し(クラスヘディング)および包括名称

 ニース分類上の類見出し(クラスヘディング)またはニース分類上の具体的な商品リスト(アルファベット順リスト)に記載された商品や役務の韓国語表記に該当する名称であっても、「商品告示」の名称と同一でない場合や、分類される区分が「商品告示」とは相違する他の類に該当する場合には認められない。狭義の包括的名称および広義の包括的名称は商品告示に明記されているもののみが認められる。

 

3.指定商品および指定役務の補正可能範囲

 出願人は願書に記載された指定商品および指定役務を自発補正することができるが、補正を通して指定商品および指定役務を削除または不明瞭とさた記載を具体的記載に補正することは可能でも、出願時の権利範囲を超える指定商品および指定役務を追加することは認められない。商品役務補正に関する要旨変更の判断基準は、願書に記載された指定商品および指定役務を基準とする。ただし、2016年改正審査基準施行後の出願からは、出願時の権利範囲内で指定商品および指定役務を追加する補正は認められることになり、これにより包括的名称はそのまま残しつつ、細分化された名称を追加することが可能になった。例えば、「衣類」を、「衣類、下着、ズボン」へ補正することが可能となった。

 

4.指定商品および指定役務の外国語併記が可能

 指定商品および指定役務は、韓国語表記が原則であり、韓国語表記された指定商品および指定役務の名称を明確にしたり、具体的に説明したりする必要がある場合には、括弧書きで漢字または英語を併記することができる。この場合、審査官は韓国語で表記された商品の名称を基準として権利範囲を解釈する。

 

5.指定商品および指定役務の追加出願が可能

 出願中の商標または登録商標に指定商品および指定役務を追加して登録を受ける、「指定商品および指定役務追加登録出願」が可能であり、追加される商品および役務の範囲には制限がない。これにより出願時に指定商品および指定役務に抜け落ちがあり、登録後に指定商品および指定役務の範囲を拡大する必要性が生じた場合でも、新規出願の必要なしに既存の商標登録と合体させて追加登録を受けることができる。指定商品追加登録出願が登録された場合、新しい登録証は発行されず、原出願又は原登録に合体される。指定商品追加登録の存続期間は、原登録の存続期間と同一であるため、効率的に商標権を管理できるという利点がある。

 

6.出願手数料および登録料

 分類の1区分ごとに出願料62,000ウォン、登録料211, 000ウォンが発生する。「商品告示」に記載された商品名や役務名のみを使用して出願する場合には、出願料が1区分につき6,000ウォン減額される。

 

7.指定商品および指定役務数が20個を超える場合、加算金が発生

 出願、登録、更新時に分類の1区分内の指定商品および指定役務の記載数が20個を超える場合、超過する記載数ごとに2000ウォンの加算金が追加される。補正によって指定商品および指定役務の記載数が増加して20個を超える場合にも同様である。ただしマドリッド出願の場合は加算金はない。

 

8.使用意思確認制度

 指定商品および指定役務の中に出願人に使用の意思がないと疑われるものが含まれている場合や、法令等によって客観的に使用することができないと合理的に疑われる場合、審査官は拒絶理由通知にて確認することができる。出願人が使用することができないと合理的に疑われる例としては、以下が挙げられる。

 

(1)個人が、大規模な資本および施設などにとって必要な商品名や役務名を記載した場合(例:デパート業、大型割引店業、銀行業など)

(2)関連性のない非類似の商品名や役務名を多数記載した場合(関連性のない類似商品群を3個以上指定した場合等)

(3)個人が資格等の必要となる役務に関し、関連性のない役務名2個以上を指定した場合(例:病院業、法務サービス業、建築設計業)

タイにおける「商標の使用」と使用証拠

【詳細】

タイ商標法に基づき登録が可能な商標は、「識別性」のある商標であり、商標法に基づき禁止されていない商標、他人が登録した商標と同一または類似でない商標である。タイでは、近年、2つ以上の定義語を含む多くの独創的な商標が、商標登録を認められず、困難に直面している。これは、登録官が商標を個々の要素ごとに分解して、当該商標出願の指定商品もしくは指定役務の特徴や品質と関連づけて、識別性の欠如を理由に、商標登録を認めないためである。しかし、当該商標が使用を通じて識別性を獲得したことを出願人が証明できれば、商標登録が認められる可能性がある。

 

本稿では、「使用」の判断基準および使用を通じて識別性を獲得したことを証明するために必要な証拠について論述する。また、商標の使用の認定に関する知的財産局とCIPITCの異なるアプローチについても述べる。

 

現行のタイ商標法の正式名称は、「B.E.2543(2000 年)法律(第 2 号)により改正された B.E.2534(1991 年)10 月 28 日法律」であり、旧商標法「B.E.2534」が改正され、2000年6月30日に施行されたものである。タイ商標法の第7条によれば、識別性が欠如している商標を、通商大臣が定めた規定に従い、当該商標の指定商品および指定役務について、大々的に広告したり、使用したりした場合、その商標は識別性を獲得したとみなされることがある。

 

タイ商標法の第7条に加えて、2003年3月12日付商務省告示では、出願された商標を付した商品もしくは役務は、公衆が十分に商品および役務を認識できるようになるまで、継続して適切に販売もしくは宣伝をされなければならないと規定している。

タイ商標法によれば、商標は、知的財産局に出願された態様と同一の態様で、登録出願の指定商品もしくは指定役務に使用されなければならない。提出が要求される使用証拠の種類や形式は定められていない。ある商標が、指定商品もしくは指定役務に対して実際に使用されたと証明できる限り、それは使用証拠とみなされる。一般的に、使用証拠には、商標が付された製品サンプルの写真や、商標が付された出願対象商標の指定商品もしくは指定役務の宣伝広告等が含まれる。宣伝広告には、印刷媒体(新聞、雑誌)等の各種媒体を通じた宣伝ならびに放送メディア(テレビ、ラジオ、インターネット)による宣伝が含まれる。宣伝広告が公衆に広く提供されていない場合、出願人は、年間のマーケティング予算および支出に関する情報や、その他の詳細情報(売上情報の細目、利用者のレビュー、対象となるマーケットでの認知度調査等)を宣伝広告の代わりに提出することができる。

 

使用証拠を審査する機関は2つある。商標委員会とCIPITCである。商標の使用の判断基準に関しては、これら2つの機関は似たような見解を示している。だが、CIPITCは、通常、商標委員会に比べて寛大でビジネス寄りのアプローチを採用する。商標委員会の決定に不服がある場合には、CIPITCへ抗告することができる。また、この抗告によって、出願人が使用を通じて識別性を獲得したことの立証に成功する可能性は高くなると考えられる。

 

商標委員会の最近の審決を踏まえて言えば、タイにおいて商標を付した商品もしくは役務の使用、宣伝もしくは販売がなされてきた期間を出願人がはっきりと証明できない場合、商標委員会はそれを十分な使用とはみなさないと推測することができる。基本的に、継続した(3年以上)使用の証拠の量に着目する商標委員会とは異なり、CIPITCは、タイにおける商標の使用の量や期間だけに頼ることはしない。逆に、他の国での使用証拠も認容するだけでなく、掘り下げた理由付けを適用し、様々な要因(当該商標の外国での登録等)を考慮するのである。商標委員会の審決を不服としてCIPITCへ抗告を行い、そこでも主張が認められない場合には、最高裁判所へ上告するという選択肢がある。ただし、すべての申請が受理されるわけではなく、多額の費用と時間がかかることにも留意されるべきである。

 

現在、タイではマドリッドプロトコルに加盟するための手続きが進められており、商標の国際登録制度に期待が寄せられている。これを契機として、商標委員会には、CIPITCのように、商標の使用を判断する際に、より寛大なアプローチを採用することが期待される。

シンガポールにおける商標出願の拒絶理由通知に対する応答

【詳細】

(1)絶対的理由に基づく拒絶理由に対する応答

 商標の定義を満たさない標識、識別性のない標章、記述的な標識もしくは表示だけで構成される標章、および取引上の普通名称である標識からなる標章は、登録されない(商標法第7条(1))。

 商品の性質の結果である形状、技術的成果を得るために必要な形状、または商品に実質的価値を与える形状は、登録されない(商標法第7条(3))。

 地理的表示で構成される標章、およびその場所を原産地としないワインまたは蒸留酒に使用される、または使用が意図される標章は、登録されない(商標法第7条(7))。

 公序良俗に反する、もしくは誤認を生じる標章は登録されない(商標法第7条(4))。

シンガポールにおいて法律により使用が禁じられている標章は登録されない(商標法第7条(5))。

悪意で出願された標章(商標法第7条(6))は、登録されない。

 

 出願人は、絶対的拒絶理由に基づく拒絶に対して応答書を提出することができる。提起された特定の拒絶理由に応じて、当該標識の登録可能性または当該標章の本来的識別性などに関する意見書を提出できる。世界の他の国で出願人の標章が承認または登録を受けている場合、これらの対応する標章の証拠を提出することもできる。シンガポール知的財産庁(IPOS)は、英国、米国、香港、欧州連合およびオーストラリアにおける登録または承認を重要視する傾向がある。これらの国や地域の先例は、有力な情報と見なされる傾向があるが、拘束力はない。

 

 また、標章が識別性を欠いている、または記述的であるという理由で拒絶された場合、当該標章が使用を通じて後天的識別性を獲得していると主張する応答書を提出することができる。その際、裏づけとなる証拠を提出しなければならない。審査官は、シンガポールにおける指定商品または役務に関する当該標章の出願前の使用のみを考慮する。このような証拠は、法定宣誓書の形式で提出しなければならない。

 

 一部の指定商品または役務を削除することで、出願人が拒絶理由を克服できる可能性がある場合、出願人は応答書においてかかる商品または役務の削除を提案することができる。

 

 特定の国、都市、政府機関、社会、法定機関、団体または人を含む、いずれかの機関や団体の名称、頭文字、旗章または紋章などと類似しているという理由で、標章が拒絶された場合(商標法第56条および第57条)、IPOSは、その機関や団体の同意書が提出される場合に限り、当該標章の登録を許可する。

 

(2)相対的理由に基づく拒絶理由に対する応答

 先の標章と類似または同一であり、先の標章が付される商品と類似または同一の商品を指定する標章は、公衆に混同を生じる可能性がある場合には、登録されない(商標法第8条(1)および(2))。

 

 相対的拒絶理由に対する応答書は、出願標章と引例標章との区別を示す意見書として提出することができる。他の国、特に英国、香港、米国、欧州連合およびオーストラリアの登録簿における共存の証拠は、審査官に対する拘束力はないが、多少なりとも重要視される。

 

 さらに出願人は、指定商品または役務が類似しないように、商品または役務を限定する提案を行うこともできる。

 

 もう一つの方法は、先の標章の所有者から出願に対する同意を得ることである。ただし審査官は同意書にかかわらず、引例を維持する裁量権を有するため、出願人が所有者からの同意を得ようとする際には、同意書があれば引例を放棄するという審査官の確認を得ておいた方がよい。また、先の標章の所有者に連絡を取ることは、その所有者が出願に同意しないリスクだけでなく、結果的に承認および公告された出願に対して異議を申し立てるリスクも伴う。

 

 出願日より前に指定商品または役務に関してシンガポールで出願標章が使用されていた場合、当該標章の正当な同時使用が行われていたことを証明する証拠を応答の際に提出することができる。この証拠は、法定宣誓書の形式で提出しなければならない。

 

(3)明細書中の誤記

 シンガポールは、ニース国際分類を採用している。標章の指定商品および役務は、ニース国際分類に適合していないと審査官が判断する場合、拒絶理由が通知される。

 出願人は、下記の方法で応答することができる。

(i)審査官により提案された補正案(ある場合)を受け入れる

(ii)指定商品もしくはサービスの説明または補正案を審査官に提出する

(iii)拒絶理由が通知された指定商品または役務は、ニース国際分類に基づく種目と類似または同様のものであると主張する

 

 出願人が指定商品もしくは役務の維持または補正案を主張する場合、シンガポール、英国、オーストラリア、香港、ニュージーランドおよび米国の先例は多少なりとも重要視される可能性があるため、これらの国の先例を強調することができる(通達第3/2014号)。ただし、これらの国の先例は審査官に拘束力を及ぼすものではない。全ての出願は、個別に審査される。

 

 指定商品あるいは役務が間違って分類されているという理由で、審査官が拒絶した場合、正しい区分への変更が認められるのは、まず正しい区分も出願に含まれており、次に正しい区分の明細に変更すべき種目が包含されている場合だけである。これにより、区分の変更による出願当初の指定商品や役務の拡大を防ぐことができる

ブラジルにおける商標制度の運用実態

【詳細】

 ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-Ⅰ-E

 

(目次)

第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果

 Ⅰ ブラジル連邦共和国

  E 商標 P.71

   1 産業財産権制度の枠組 P.71

   2 出願・登録の手続 P.81

   3 審査業務 P.84

   4 統計情報 P.88

 参考資料 総括表

  E 商標 P.418

ロシアにおける商標制度の運用実態

【詳細】

 ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-V-E

 

(目次)

第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果

 V ロシア連邦

  E 商標 P.387

   1 産業財産権制度の枠組 P.387

   2 出願・登録の手続 P.396

   3 審査業務 P.398

   4 統計情報 P.399

 参考資料 総括表

  E 商標 P.418

インドにおける商標制度の運用実態

【詳細】

 ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-IV-E

 

(目次)

第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果

 IV インド共和国

  E 商標 P.305

   1 産業財産権制度の枠組 P.305

   2 出願・登録の手続 P.316

   3 審査業務 P.317

   4 統計情報 P.320

 参考資料 総括表

  E 商標 P.418

中国改正商標法及び実施条例の主な改正点

【詳細】

 中国・改正商標法マニュアル(2015年3月、日本貿易振興機構 進出企業支援・知的財産部 知的財産課)一の1、2

 

(目次)

一 改正法及び関連規定の主な改正点

 1 商標法 P.1

  (1) 第一章 総則  P.2

   ① 第4条:商標登録出願条件の確立 P.2

   ② 第7条:誠実信用の原則の追加 P.2

   ③ 第8条:音声商標の導入 P.3

   ④ 第14条:馳名商標の認定と保護 P.3

   ⑤ 第15条:冒認出願対策の強化 P.5

   ⑥ 第19条:代理機構への管理強化 P.6

  (2) 第二章 商標登録の出願 P.7

   ① 第22条第2項:「一出願多区分」制度を導入 P.7

   ② 第22条第3項:電子出願の導入 P.7

  (3) 第三章 商標登録の審査及び認可 P.8

   ① 第28条:審査期限の規定 P.8

   ② 第29条:審査手続きの改善 P.9

   ③ 第33条:異議申立の主体資格の制限 P.10

   ④ 第35条:異議後の救済手続きの変化 P.11

  (4) 第四章 登録商標の更新、変更、譲渡及び使用許諾 P.13

   ① 第40条:更新期間の延長 P.13

  (5) 第五章 登録商標の無効宣告 P.13

   ① 第44条~第47条 P.13

  (6) 第六章 商標使用の管理 P.15

   ① 第57条:新たな商標権侵害行為を定義 P.15

  (7) 第七章 登録商標専用権の保護 P.16

   ① 第58条:新たな不正競争行為を追加 P.16

   ② 第59条:先使用主義への適当な配慮 P.16

   ③ 第60条第2項:商標権侵害行為の再犯への処罰の追加 P.17

   ④ 第63条:懲罰規定の新設及び権利者の挙証責任の軽減 P.17

   ⑤ 第64条:商標権者の賠償要求時における使用義務の規定の追加 P.19

  (8) その他 削除された元の商標法の3つの条文 P.19

   ① 旧商標法第42条 P.19

   ② 旧商標法第45条 P.20

   ③ 旧商標法第50条 P.20

 2 商標法実施条例 P.21

  (1) 第一章 総則 P.21

   ① 第3条:馳名商標認定の立法趣旨の明確化 P.21

   ② 第5条:外国出願人が受取人を明記する規定の追加 P.22

   ③ 第8条:「電子データ」の形式で商標登録出願に関する規定の追加 P.22

   ④ 第9条、第10条:出願人が書類を提出する日付、要求及び送達に関する規定 P.23

   ⑤ 第11条:審査・審理期間に含まれない状況 P.24

   ⑥ 第12条:期間の計算方法について P.25

  (2) 第二章 商標登録の出願 P.25

   ① 第13条:商標登録願書に関する要件 P.25

   ② 第14条:商標登録出願人の身分証明に関する規定 P.27

   ③ 第18条:商標出願の受理条件に関する規定 P.27

  (3) 第三章 商標登録出願の審査 P.28

   ① 第22条:商標分割出願に関する規定 P.28

   ② 第23条:商標登録出願の内容に対する説明及び修正に関する規定 P.28

   ③ 第24~第28条:商標異議申立に関する規定 P.28

   ④ 第29条:出願又は登録書類の訂正に関する規定 P.30

  (4) 第四章 登録商標の変更、譲渡、更新 P.30

   ① 第30条:商標権者の名義変更に関する規定 P.30

   ② 第31条:商標譲渡について P.31

   ③ 第32条:商標権の移転について P.32

  (5) 第五章 商標国際登録 P.32

  (6) 第六章 商標審判 P.33

   ① 第51条:商標審判の定義について P.34

   ② 第52条~第56条:商標審判案件の審理範囲の規定について P.34

   ③ 第59条:商標審判案件の請求又は答弁の補足証拠に関する規定について P.36

   ④ 第61条、第62条:請求人が審判請求を取り下げること及び取り下げた結果に関する規定について P.36

  (7) 第七章 商標使用の管理 P.37

   ① 第65条:通用名称になった商標を取消す規定について P.37

   ② 第66条:正当理由なしで連続して三年不使用の登録商標を取消す規定について P.37

   ③ 第67条:3年連続不使用の登録商標の正当な理由について P.38

   ④ 第69 条:登録商標使用許諾届出の規定について P.38

   ⑤ 第70条:商標専用権の質権設定の規定について P.38

   ⑥ 第71条:被許諾者の名称と原産地を明記しない法律責任の規定について P.38

   ⑦ 第73条、第74条:商標抹消請求の規定について P.39

  (8) 第八章 登録商標専用権の保護 P.40

   ① 第75条:他人の商標専用権を侵害する行為に、便宜を提供する行為の定義 P.40

   ② 第78条:違法経営額を計算する考慮要素の規定について P.40

   ③ 第79条:権利侵害製品が合法的に取得されたことを証明する情況の規定 P.41

   ④ 第80条:商標権侵害の製品であることを知らずに販売し、当該商品を合法的に取得したことを証明できる法的責任の規定 P.41

   ⑤ 第81条:商標権帰属に争議がある情況の定義について P.41

   ⑥ 第82条:商標権侵害案件における商標権侵害製品に対する鑑定手続きの規定 P.42

  (9) 第九章 商標代理 P.42

  (10) 第十章 附則 P.43

 

参考資料

 1 改正法の条文・対照表

  (1) 商標法全文 P.87

  (2) 商標法対比表 P.104

  (3) 商標法実施条例 P.130

インドにおけるRマーク「®」とTM、SMマークの使用