ロシアにおける商標権に基づく権利行使の留意点
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ロシアにおける「商標の使用」と使用証拠
【詳細及び留意点】
ロシア連邦民法第IV部第1484条には、商標がその権利者により使用され得る態様を、次のように規定している:
(1)以下にあげる商品(ラベルおよび包装を含む)における使用:
・ロシア連邦領域内での生産、市場への投入、販売される商品
・ロシア連邦領域内での展示会および見本市において展示される商品
・その他の形態で市場に流通する、または当該目的における保管、輸送される商品
・ロシア連邦領域内への輸入がなされる商品
(2)役務の提供における使用
(3)販売する商品を紹介する書類における使用
(4)商品または役務の市場への投入、ならびに、通知、看板および広告における使用
(5)インターネット上(ドメイン名を含む)の使用
商標は、以下の場合に使用されているものとみなされる。
(a)商標が登録された指定商品または指定役務に対して、当該商標が使用されている場合
(b)当該商標が付された商品または当該商標と関連付けられた役務が、ロシアにおいて販売を目的として使用されている場合
1.使用証拠
原則として、商標の使用証拠は、以下の場合において要求される。
(a)商標登録に対して、第三者が不使用取消請求を提起した場合
(b)商標を登録するために、出願人が、本来的に識別力を有していない商標について使用による識別力(セカンダリ・ミーニング)を立証する必要がある場合
(c)出願人が、ロシア連邦において、自らの商標について著名商標の認定を求める場合
使用証拠の範囲および種類は、その状況または目的によって異なる。実際の使用に関する具体的証拠を伴わない宣誓書は、使用証拠とはみなされない。
2.不使用取消手続における抗弁
ロシアにおいて、使用の開始または使用の意図は、商標の出願時、登録時、ならびに更新時の必須要件ではない。ロシア連邦民法第IV部第1486条に従い、商標登録は、その登録日の後3年以内に商標権者、排他的ライセンシー、非排他的ライセンシー、のいずれかによって、指定商品または指定役務に関して当該商標が使用されなかった場合、指定商品または指定役務の全部または一部が取り消される場合がある。商標の不使用に基づく商標登録の取消は、第三者の請求によってのみ生じる恐れがあり、第三者の請求無くロシア特許商標庁もしくは裁判所の職権で不使用に基づく取消請求がなされることは無い。
ロシアでは、不使用取消請求は、裁判所に提訴しなければならない。原告は、登録商標取消に対する理由を述べなければならない。理由としては、以下の様なものがある。
- 冒認登録の取消
- 原告の商標出願に対して引例となった先行登録の取消(取消により引例(拒絶理由)を克服する為)
一方、使用にかかる立証責任は、商標権者(被告)が負う。その登録商標を完全に有効なもとして維持するために、商標権者は以下の使用証拠を提出しなければならない。
(1)商標登録された商標と同一態様での商標に関する使用証拠
(2)商標権者の使用証拠。または商標権者の管理下(例えば、登録ライセンシー)による使用証拠
(3)ロシア市場に出された商品または役務に対する使用証拠(単なる広告または販売申入れは、市場に出すことにはあたらず、実際の使用を示すには十分ではない)
(4)指定商品または指定役務に対する使用証拠
(5)取消請求の提訴日前3年以内における使用証拠
商標権者は、不使用取消請求事件に勝訴するためには、上記(1)~(5)のすべての証拠を提出しなければならず、または当該商標が天災や輸出入規制等の自らの制御を超える事由により使用されなかったことを立証しなければならない。
不使用取消請求に対する抗弁において、ロシア連邦民法第IV部は、登録された態様とは実質的に異なる態様での商標の使用を、商標の適切な使用とみなす場合を認めている。多くの場合、登録された商標が白黒であった場合でも、カラーでの商標の使用は、登録された商標の使用としてみなされる。しかし、登録された商標が平易なブロック体商標で、実際の使用はデザイン化された態様の文字の商標であった場合には、登録された商標の使用とみなされないこともある。すなわち、商標が登録された態様で使用されていない場合、これを適切な使用であるとみなすか否かは、裁判所の裁量に委ねられる。
実務上、不使用取消請求を克服するためには、以下の証拠が必要である。
(1)商標が付されていることを明確に示す製品またはその包装の見本
(2)上記(1)における製品が商標権者によって生産されたことを立証する文書(例えば、製品証明書またはその他証明文書)
(3)上記(1)における製品が第三者により生産された場合、商標権者と当該生産者との間で締結されたライセンス契約書、または当該製品の製造業者について商標権者が支配していることを証明するその他文書
(4)上記(1)における製品が、取消請求の提訴日前3年以内に、ロシアにおいて合法的に供給されたことを示す文書(ロシア税関により押印された税関申告書、供給契約書の写し、インボイス、船積証券など)
(5)製品が、ロシア国内において、エンドユーザーまたは小売業者に流通した(販売された)ことを示す文書(契約書の写し、領収書、請求書など)
(6)ロシアのマスメディアに掲載された広告の写し、および当該広告が商標権者によりまたはその承認を得て掲載されたことを立証する付属文書
(7)商標が使用されていたこを示すその他文書
商標登録全体を維持するためには、商標権者は、その指定商品または指定役務に記載された全ての指定商品または全ての指定役務に関して、商標の使用証拠を提出しなければならない。使用証拠を提出できなかった指定商品または指定役務に関しては、裁判所は、その商標登録の一部を取り消し、その指定商品または指定役務を、当該商標の使用が立証された指定商品または指定役務に限定することができる。
3.使用による識別力(セカンダリ・ミーニング)
ロシア連邦民法第IV部は、本来的に識別力を欠く商標が使用された結果として識別力を有するに至った場合(例えば長年にわたる使用など)は、登録できると規定している。この場合、出願人は、当該出願人の商標としてロシア消費者により認識されていることを証明するために、出願人により当該商標が使用されてきたことを示すあらゆる情報および証拠を提出することができる。例えば、以下が挙げられる。
(a)当該商標が付された商品の生産量と販売量
(b)当該商標の使用期間
(c)広告費用
(d)当該商標に言及する現地の定期刊行物の写し
(e)ロシア消費者が、当該商標が付された商品の生産者として出願人を認識していることに関する情報(例えば、世論調査の結果)
(f)当該商標が付された商品および役務の展示を伴う、ロシア内外における製品展示会や専門フォーラムへの参加に関する情報等
上記に列挙された各種の証拠を全て提出する必要はないが、より多くの裏付け文書が審査官に提示されれば、識別力を欠くという拒絶理由を克服できる可能性がより高くなる。
4.著名商標
ロシアにおいて、著名商標の法的保護を得るためには、著名商標出願を行い著名商標としての認定を受けなければならない。著名商標であると認定するに値する証拠の一部として、出願人は、自らの商標が、ロシアにおいて、出願人により生産され、かつロシア連邦において流通された商品に関して、著名商標の出願日以前の一定期間にわたり当該商標が使用されてきたことを立証することが要求される。
登録された商標の態様とは異なる態様も使用証拠とみなされるのは、不使用取消訴訟における抗弁のみに適用される。不使用取消訴訟を除き、使用による識別力の立証または著名商標出願を含むその他の手続に関しては、登録見本と完全同一でない態様の商標の使用は、登録を求めている商標の使用とはみなされない。現在、ロシア特許商標庁(ROSPATENT)は、商標出願または著名商標出願に記載された商標と完全同一の形態で使用されていることの立証を求める。
結論として、ロシア法に基づき認められる商標の使用は、商品または役務に関する実際の使用である。法は、一定の場合において、完全同一でない態様での商標の使用を認めているものの、登録された態様で商標を使用することを推奨する。商標がライセンシーにより使用される場合、あらかじめロシア特許商標庁(ROSPATENT)にライセンス契約を登録することを強く推奨する。これはライセンス契約が登録されていない場合には、問題が生じてから証拠としてライセンス契約書を提出してもその契約は無効とみなされるためである。
ロシアにおける意匠制度の運用実態
【詳細】
ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-V-D
(目次)
第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果
V ロシア連邦
D 意匠 P.369
1 産業財産権制度の枠組 P.369
2 出願・登録の手続 P.380
3 審査業務 P.382
4 統計情報 P.383
5 ハーグ協定ジュネーブアクト P.385
参考資料 総括表
D 意匠 P.415
ブラジルにおける意匠制度の運用実態
【詳細】
ブラジル・メキシコ・コロンビア・インド・ロシアの産業財産権制度及びその運用実態に関する調査研究報告書(平成27年3月、日本国際知的財産保護協会)第2部-Ⅰ-D
(目次)
第2部 各国の産業財産権制度・運用調査結果
Ⅰ ブラジル連邦共和国
D 意匠 P.50
1 産業財産権制度の枠組 P.50
2 出願・登録の手続 P.58
3 審査業務 P.60
4 統計情報 P.65
5 ハーグ協定ジュネーブアクト P.69
参考資料 総括表
D 意匠 P.415
インドにおける意匠の表現に関する制度・運用
【詳細】
各国における意匠の表現に関する調査研究報告書(平成25年2月、日本国際知的財産保護協会)第II部、第III部、第Ⅳ部
(目次)
第II部 各国おける意匠の表現に関する制度・運用調査
インド p.101
第III部 海外アンケート調査
海外アンケート調査の目的と手法 p.193
海外アンケート調査の結果(一覧表及び別添資料) p.195
第Ⅳ部 海外ヒアリング調査
海外ヒアリング調査の目的と手法 p.213
海外ヒアリング調査の結果 p.215
香港における意匠の表現に関する制度・運用
【詳細】
各国における意匠の表現に関する調査研究報告書(平成25年2月、日本国際知的財産保護協会)第II部、第III部
(目次)
第II部 各国おける意匠の表現に関する制度・運用調査
香港 p.91
第III部 海外アンケート調査
海外アンケート調査の目的と手法 p.193
海外アンケート調査の結果(一覧表及び別添資料) p.195
日本とインドの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3ヶ月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号または第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)および第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
日本方式審査便覧 04.10
1 手続をする者が在外者でない場合
(3)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許および実用新案に関しては60日、意匠および商標に関しては40日とする。ただし、手続をする者またはその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許および実用新案に関しては60日を75日と、意匠および商標に関しては40日を55日とする。
ア 意見書
・特50条{特67条の4、159条2項〔特174条1項〕、特163条2項、意19条、50条3項〔意57条1項〕}
・商15条の2{商55条の2第1項〔商60条の2第2項(商68条5項)、商68条4項〕、商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条}
2 手続をする者が在外者である場合
(3)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1 (3)の期間とする。
ア 意見書
イ 答弁書
ウ 特許法第39条第6項※5、意匠法第9条第4項または商標法第8条第4項の規定に基づく指令書に応答する書面
エ 特許法第134条第4項もしくは実用新案法第39条第4項の規定により審尋を受けた者または特許法第194条第1項の規定により書類その他の物件の提出を求められた者が提出する実験成績証明書、指定商品の説明書等、ひな形・見本、特許の分割出願に関する説明書等
オ 命令による手続補正書(実用新案法第6条の2および第14条の3の規定によるものに限る。)
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大1ヶ月まで延長可能
ただし、拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験を行うとの理由(理由(1))を付して応答期間の延長を請求する必要がある
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3ヶ月まで延長可能
ただし、拒絶理由通知書や意見書・手続補正書等の手続書類の翻訳を行うとの理由または上記理由(1)を付して応答期間の延長を請求する必要がある
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。
日本方式審査便覧 01.10
1 手続をする者が在外者でない場合
(16)特許法第50条の規定による意見書または同法第134条第4項の規定による審尋に関しての回答書等の提出についての指定期間は、「拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験のため」という合理的理由がある場合、1月に限り、請求により延長することができる。
2 手続をする者が在外者である場合
(11)特許法第50条の規定による意見書または同法第134条第4項の規定による審尋に関しての回答書等の提出についての指定期間は、合理的理由がある場合に限り、請求により延長することができる。合理的理由と延長できる期間は以下のとおりとする。ただし、同法第67条の4に係る拒絶理由通知については、下記ア 対比実験のため)の理由による延長請求は認められない。
ア 「拒絶理由通知書で示された引用文献に記載された発明との対比実験のため」という理由により1月単位で1回のみ期間延長請求をすることができる。
イ 「手続書類の翻訳のため」という理由により1月単位で3回まで期間延長請求することができる。
ウ アおよびイの組み合わせによる期間延長請求は、合計3回までとする。
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インドの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・応答期間についての規定はない
・ただしアクセプタンス期間(最初の拒絶理由通知から12ヶ月)内に特許付与可能な状態とする必要がある
・そのため、拒絶理由通知への応答はアクセプタンス期間内に行う必要がある
・アクセプタンス期間内に答弁や補正が行われた場合、審査官は再度審査しなければならない
・2回目以降の拒絶理由通知に対しても応答はアクセプタンス期間内に行う必要がある
・なお、出願人の居所(在外、在内)に関わらず、アクセプタンス期間は12ヶ月である
条文等根拠:特許法第21条、規則24B(4)条、特許庁の特許実務および手続の手引08.04 第7パラグラフ
インド特許法 第21条 出願を特許付与の状態にする期間
(1)特許出願については、長官が願書もしくは完全明細書またはそれに係る他の書類についての最初の異論陳述書を出願人に送付した日から所定の期間内に、出願人が当該出願に関して完全明細書関連かもしくはその他の事項かを問わず、本法によりまたは基づいて出願人に課された全ての要件を遵守しない限り、これを放棄したものとみなす。
(説明)手続の係属中に、願書もしくは明細書、または条約出願もしくはインドを指定して特許協力条約に基づいてされる出願の場合においては出願の一部として提出された何らかの書類を長官が出願人に返還したときは、出願人がそれを再提出しない限り、かつ、再提出するまで、または出願人が自己の制御を超える理由により当該書類を再提出できなかったことを長官の納得するまで証明しない限り、かつ、証明するまで、当該要件を遵守したものとはみなさない。
インド特許規則 24B(4) 出願の審査
(4)第21条に基づいて出願を特許付与のために整備する期間は、要件を遵守すべき旨の異論の最初の陳述書が出願人に発せられた日から12月とする。
インド特許庁の特許実務および手続の手引 08.04 第7パラグラフ
出願人が12月以内に当該書類を再提出した場合には、審査官は当該出願を新たに審査しなければならない。当該審査において、法の定める要件が満たされていると認められた場合、特許権は付与される。
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・アクセプタンス期間は延長することができない
ただし、所定期間内にヒアリング(聴聞)の申請を行うことによって、アクセプタンス期間経過後も出願の係属を維持できる。なお、ヒアリングの申請はアクセプタンス期間満了の10日前までに行う必要がある。
条文等根拠:特許規則第138条、特許法第80条、特許法第14条
インド特許規則138条 所定の期間を延長する権限
(1)規則24B、規則55(4)および規則80(1A)に別段の規定がある場合を除き、本規則に基づく何らかの行為をするためまたは何らかの手続をとるために本規則に規定される期間は、長官がそうすることを適切と認めるとき、かつ、長官が指示することがある条件により、長官はこれを1月延長することができる。
(2)本規則に基づいてされる期間延長の請求は、所定の期間の満了前にしなければならない。
インド特許法第80条 長官による裁量権の行使
本法に基づいて手続当事者を長官が聴聞すべき旨または当該当事者に対して聴聞を受ける機会を与えるべき旨を定めた本法の規定を害することなく、長官は、如何なる特許出願人または明細書補正の申請人(所定の期間内に請求の場合に限る。)に対しても、本法によってまたはそれに基づいて付与された長官の何らかの裁量権をその者に不利に行使する前に、聴聞を受ける機会を与えなければならない。ただし、聴聞を希望する当事者は、当該手続について指定された期限の満了の少なくとも10日前に、長官に対して当該聴聞の請求をしなければならない。
インド特許法第14条 審査官の報告の長官による取扱い
特許出願について長官の受領した審査官の報告が、出願人にとって不利であるかまたは本法もしくは本法に基づいて制定された規則の規定を遵守する上で願書、明細書もしくは他の書類の何らかの補正を必要とするときは、長官は、以下に掲げる規定にしたがって当該出願の処分に着手する前に、異論の要旨を可能な限り早期に当該出願人に通知し、かつ、所定の期間内に当該出願人の請求があるときは、その者に聴聞を受ける機会を与えなければならない。
日本とインドの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 | インド | |
応答期間 | 60日(ただし在外者は3ヶ月) | 規定なし
(アクセプタンス期間(12ヶ月)内に特許付与可能状態にする必要有) |
応答期間の
延長の可否 |
条件付きで可 | 不可
(ヒアリングの申請により、 出願の係属状態は維持可能) |
延長可能期間 | 最大1ヶ月(在外者は最大3ヶ月) | - |
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における拒絶理由通知への応答期間の延長の可否等については、下記のとおりである。
特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する各国比較
国 | 応答期間 | 応答期間の延長の可否 | 延長可能期間 | 延長のための庁費用の要否 |
JP | 60日 | 可*1 | 最大1ヶ月 | 要 |
BR | 90日 | 不可 | - | - |
CN | 4ヶ月*2 | 可 | 最大2ヶ月 | 要 |
HK*3 | - | - | - | - |
ID | 通常3ヶ月 | 可 | 審査官の裁量による | 不要 |
IN | *4 | 不可*5 | - | - |
KR | 通常2ヶ月 | 可 | 最大4ヶ月 | 要 |
MY | 2ヶ月 | 可 | 最大6ヶ月 | 要 |
PH | 通常2ヶ月 | 可 | 通常4ヶ月 | 要 |
RU | 2ヶ月*6/3ヶ月 | 可 | 最大10ヶ月 | 要 |
SG | 5ヶ月/3ヶ月*7 | 不可 | - | - |
TH | 90日 | 可 | 最大120日 | 不要 |
TW | 3ヶ月 | 可 | 最大3ヶ月 | 無 |
VN | 2ヶ月 | 可 | 最大2ヶ月 | 要 |
*1(JP):延長の条件は上述の詳細を参照
*2(CN):再度の拒絶理由通知書の場合は2ヶ月
*3(HK):実体審査制度なし
*4(IN):アクセプタンス期限(最初の拒絶理由通知から12ヶ月)が設定される
*5(IN):ヒアリングの申請を行うことで係属状態は維持可能
*6(RU):旧法適用出願(2014年10月1日より前に出願されたもの)が2ヶ月、改正法適用出願(2014年10月1日以降に出願されたもの)が3ヶ月。
*7(SG):シンガポール特許庁に審査を請求した場合、応答期間は5月。シンガポール特許庁に補充審査を請求した場合、応答期間は3ヶ月。