日本とシンガポールの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
1.日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第17条の2第1項第1号または第3号に掲げる場合(同項第1号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第53条第1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第50条(第159条第2項(第174条第2項において準用する場合を含む。)及び第163条第2項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第50条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第50条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合
(2) 指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
a.意見書(特50条[特67条の4、意19条において準用]、商15条の2[商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用]、15条の3第1項、商附則7条[商附則23条])
日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合
(2) 指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、上記1.(2)コ.の国際意匠登録出願において拒絶の通報に応答する場合の意見書の提出及び意匠法第9条第4項に基づく応答書面の提出についての指定期間、及びサ.の国際商標登録出願における命令による手続補正書の提出についての指定期間を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、上記1.(2)ア.の手続をする者が在外者でない場合の期間と同様とする。
a.意見書(特50条[特67条の4、意19条において準用]、商15条の2[商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用]、15条の3第1項、商附則7条[商附則23条])
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能である。出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能である。
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。
日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
次に掲げる特許法及び実用新案法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.上記(2)ア.a.の意見書(特50条の規定によるものに限る)。ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
ウ.上記2.(2)ア.a.の特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
a.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができ、2回の請求により最長3月の期間延長をすることができる。
b.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2.シンガポールの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・シンガポール知的財産庁に審査を請求した場合、応答期間は5か月
・シンガポール知的財産庁に補充審査*1を請求した場合、応答期間は3か月
条文等根拠:特許規則46(4)、(4A)、(5)
シンガポール特許規則46 審査官の意見書等
(4)(a)第29条(4)に基づく審査報告、または
(b)第29条(5)に基づく調査および審査報告、
に関する、(3)に基づく最初の意見書に対する応答は、同意見書を伴った登録官の通知の日から5月以内に提出しなければならない。
(4A)第29条(6)に基づく補充審査に関する、(3)に基づく最初の意見書に対する応答は、同意見書を伴った登録官の通知の日から3月以内に提出しなければならない。
(5)出願人が(3)に基づいて第29条(4)に基づく審査報告又は第29条(5)に基づく調査および審査報告に関する意見書を提出した場合は、
(a)審査官は、その裁量により、自己の意見の理由を詳細に記載した追加の意見書を登録官に対し発出することができ、
(b)(2)および(3)がこれに従って適用され、また
(c)(3)に基づく追加の意見書に対する応答は、追加の意見書を伴った登録官からの通知の日から5月以内に提出しなければならない。
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
いかなる場合も延長することができない。
条文等根拠:特許規則108(2)(b)
シンガポール特許規則108 期限の変更
(1)登録官は、当事者からの書面による請求により、(2),(3)及び(4)並びに規則108Aに従うことを条件として,登録官は,期日又は期間の満了後6月以内になされる当事者からの書面による請求により,自己が適切と認める場合は,ある行為を実行するための又はある手続を取るための本規則による所定期間及び本規則に基づいて登録官が指定した期日又は期間について,自己の指示する当事者への通知により,かつ,自己の指示する条件に基づいて,延長することができる。
(2)次の規則に定められる期日または期間は、いかなる場合も延長することができない。
(中略)
(b)規則9(1)、(2)および(3)、規則9A(1)および(2)(a)、規則19(2)、規則26(5)、規則26A(1)および(5)(a)、規則28(a)、(b)、(c)および(d)、規則29(4)、規則34(2)、規則46(4)、(4A)および(5)(c)、規則49、規則51(1)、(2)および(2A)、規則51A(1)および(2)、規則52(2)、規則53(1)、規則73(1)、規則74(1)、規則75、規則85(1)、規則86(3A)、規則88(8)(a)、規則88A(11)、規則91(3)および(5)ならびに附則4の第4項(2)
日本とシンガポールの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
|
日本 |
シンガポール |
応答期間 |
60日 (ただし在外者は3か月) |
・IPOSに審査を請求した 場合:5か月 ・IPOSに補充審査*1を請求 した場合:3か月 |
応答期間の延長の可否 |
可 |
不可 |
延長可能期間 |
最大2か月 (在外者は最大3か月) |
– |
*1: 2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願から補充審査は利用できなくなる。(シンガポール特許法第29条(11A)、およびシンガポール特許規則43(4))。
日本とマレーシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
- 日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
1.1 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第五十条(第百五十九条第二項(第百七十四条第一項において準用する場合を含む。)及び第百六十三条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第四十八条の七の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第五十条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
日本方式審査便覧 04.10
- 手続をする者が在外者でない場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
ア.意見書(特50条*1、商15条の2*2、15条の3第1項、商附則7条*3)
*1 特50条: 特67条の4、意19条において準用
*2 商15条の2: 商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用
*3 商附則7条: 商附則23条
- 手続をする者が在外者である場合
(2)次に掲げる書類等の提出についての指定期間は1.(11)*4及び(12)*4を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、1.(2)の期間とする。
ア.意見書(1.(2)ア.において同じ。)
*4: 1.(11)は国際意匠登録出願において、(12)は国際商標登録出願においての指定期間。
1.2 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長*5
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能
*5: 平成28(2016)年4月1日から延長請求のための合理的な理由は不要になった。
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10 1.(17)、方式審査便覧04.10 2. (12)
日本特許法 第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長又は審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求により又は職権で、その期日を変更することができる。
日本方式審査便覧 04.10
- 手続をする者が在外者でない場合
(17)次に掲げる特許法及び実用新案法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。
ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.(2)ア.の意見書(特50条の規定によるものに限る。)
ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
- 手続をする者が在外者である場合
(12)特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
ア.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができ、2回の請求により最長3月の期間延長をすることができる。
イ.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。
ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
- マレーシアの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
2.1 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・応答期間は2か月
条文等根拠:特許法第30条(1)~(3)、特許規則27C(4)、27D(5)、Practice Direction No. 1/2016
マレーシア特許法 第30条 実体審査および修正実体審査
(1)第29A条(1)に基づいて実体審査の請求が行われたときは、登録官は、その出願を審査官に付託するものとし、審査官は、次に掲げることを行わなければならない。
(a)その出願が、本法および本法に基づいて制定される規則の要件であって、当該規則により本法適用上の実体要件として指定されているものを遵守しているか否かを決定すること、および
(b)同官の決定を登録官に報告すること
(2)第29A条(2)に基づいて修正実体審査の請求が行われたときは、登録官は、その出願を審査官に付託するものとし、審査官は、次に掲げることを行わなければならない。
(a)その出願が、本法および本法に基づいて制定される規則の要件であって、当該規則により本法適用上の修正実体要件として指定されたものを遵守しているか否かを決定すること、および
(b)同官の決定を登録官に報告すること
(3)審査官が(1)または(2)に従って、(1)または場合により(2)にいう要件の何れかが遵守されていない旨を報告したときは、登録官は出願人に対し、所定の期間内にその報告書について意見書を提出するためのおよびこれらの要件を遵守するために出願を補正するための機会を与えなければならず、また、出願人がこれらの要件を遵守したことを登録官に認めさせることができないか、またはこれらの要件を遵守するために出願を補正しないときは、登録官はその出願を拒絶することができる。
マレーシア特許規則 27C 実体審査*6
(4)特許法第30条(3)が適用される場合、登録官は、審査官の報告書の写しを出願人に送付するものとし、出願人は、かかる報告書の発行日から2か月以内に当該報告書に関して意見を述べもしくは出願を補正し、またはその両方を行わなければならない。
マレーシア特許規則 27D 修正実体審査*6
(5)特許法第30条(3)が適用される場合、登録官は、審査官の報告書の写しを出願人に送付するものとし、出願人は、かかる報告書の発行日から2か月以内に当該報告書に関して意見を述べもしくは出願を補正し、またはその両方を行わなければならない。
*6: 2016年6月1日(Practice Direction No. 1/2016)より補正書提出の起算日が「the date of mailing」から「the date of substantive/modified substantive examination report」に改正された。
2.2 特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
・1回に限り、1か月から最大6か月の期間、拒絶理由通知への応答期間を延長することが可能
条文等根拠:特許法第30条(4)、特許法第82条、Register’s Notice No. 2/2011
マレーシア特許法第30条 実体審査および修正実体審査
(4)登録官は、(3)にいう所定の期間についての延長を承認することができるが、その延長は一回に限り承認を受けることができ、かつ、その後の延長は、第82条の規定に基づく承認を受けることができない。
マレーシア特許法 第82条 期間の延長
第27条(1A)、第29A条(8)および第30条(4)に従うことを条件として、本法またはそれに基づいて制定される規則により、ある行為または事柄がなされるべき期間が定められている場合は、裁判所による別段の明示の指示があるときを除き、登録官は、所定の手数料の納付を受け、その期間満了の前または後の何れにおいても、その期間を延長することができる。
日本とマレーシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 |
マレーシア |
|
応答期間 |
60日(ただし在外者は3か月) |
2か月 |
応答期間の延長の可否 |
可 |
可 |
延長可能期間 |
2か月(在外者は最長3か月) |
最大6か月 |
マレーシアにおける特許の単一性要件と分割出願
(1)特許出願の単一性要件
マレーシアにおいて、特許出願は、発明の単一性を満たさなければならない(マレーシア特許法第26条)。
次の場合は、発明の単一性を満たしているとされる。
・対象となる製品に関する独立クレームに加えて、その製品の製造のために特に採用される方法についての独立クレーム、および、その製品の使用に関する独立クレーム
・対象となる方法に関する独立クレームに加えて、その方法を実施するために特に工夫された装置または手段に関する独立クレーム
・対象となる製品に関する独立クレームに加えて、その製品の製造のために特に採用された方法に関する独立クレーム、および、そのような方法を実施するために特に工夫された装置または手段に関する独立クレーム
(2)単一性要件の不備を是正するための分割出願*1
単一性要件を満たさない出願については分割出願によって、その不備を是正できる(マレーシア特許法第26B条(1))。
実体審査において、出願された特許が単一性の要件を満たしていないと判断された場合、単一性要件を満たしていない旨の報告書が審査官から発せられ(マレーシア特許法第30条(1)(2)に基づく報告書)、その報告書について意見書を提出するためおよびこれらの要件を遵守するために出願を補正するための機会を与えられる。出願人は、この報告書の発行日から3か月以内であれば、当該特許の分割出願を行うことができる(マレーシア特許規則19A(a))。
なお、単一性要件の不備を補うための分割出願を行う場合、分割出願について実体審査(または修正実体審査)を求める請求は、出願の分割を申し立てるときに行わなければならない。
(3)自発的な分割出願*1
上記(1)の単一性要件の不備を補うための分割出願のほか、出願人は自発的に分割出願することもできる。この場合、審査官から最初に送付される報告書(マレーシア特許法第30条(1)(2)に基づく報告書)の発行日から3か月以内に分割の申立てをしなければならない(マレーシア特許規則19A(b))。最初の報告書の受領前に自発的に出願を分割することはできない。
なお、自発的な分割出願を行う場合も、分割出願について実体審査(または修正実体審査)を求める請求は、出願の分割を申し立てるときに行わなければならない(マレーシア特許規則27(2)、27A(2))。
*1: 2016年6月1日発行のPractice Direction No. 2/2016により分割出願期限の起算日が「the date of mailing」から「the date of examination report」に改正された。
(4)分割出願の範囲
分割出願においては、原出願の明細書に記載された範囲を超えてはならない(マレーシア特許法第26B条(1))。分割出願に新規事項が含まれていると判断され、出願人が当該新規事項を除外することを拒んだ場合には、分割出願は拒絶される。
(5)分割出願の出願日
分割出願は、原出願の出願日に出願したものとして取り扱われる。(マレーシア特許法第30条(2))。
(6)分割出願の手数料
分割出願に係る手数料は、通常の特許出願と同じく、オンラインで行う場合には260マレーシアリンギット、それ以外の場合には290マレーシアリンギットである。
(7)留意事項
・一般的に、出願と関連する競業他社の製品を市場で発見し、他社製品を技術的範囲に含むようにクレームを構成したい場合、他社製品の構成が含まれるように親出願のクレームを補正しつつ、自社製品との関係でより広い特許を取得するべく分割出願を行う等の方法で分割出願を戦略的に利用し得る。
・ただし、マレーシアにおいて特許出願の分割を行うことができる時期は、上述の通り、限定的であるため、このような戦略的な分割出願が活用できる場面も限定的になる。
マレーシアにおける特許出願の審査手続
(1)出願日の確定
マレーシアでは、特許出願後直ちに、出願日を確定するための要件について審査される。必要書類の提出や手数料の納付等の要件を充足していない場合には3か月以内に補正するように求められ、適正に補正された場合には補正した日が出願日であるとして取り扱われる。期間内に補正しなければ、当該出願は最初からなかったものとされる。
なお、出願書類で言及されている図面が出願書類に含まれていない場合は、出願人は3か月以内に欠落している図面を提出するよう求められる。出願人が期間内に該当の図面を提出した場合は当該図面の受領日が出願日となり、期間内に該当の図面が提出されなかった場合には、出願書類受領の日が出願日となる(この場合、登録官は当該図面に言及しないので、当該図面が出願書類に含まれないまま権利化される)(マレーシア特許法第28条、特許規則25)。
(2)方式審査(予備審査)
出願日が確定された特許出願は、方式審査(予備審査)において、規則に定められる事項(願書の記載事項、様式等)が審査される。方式要件を充足していない場合は3か月以内に補正するように求められ、適正な補正が行われなければ、出願は拒絶される(同法第29条、同規則26)。
(3)実体審査
(i)実体審査
方式要件を具備していると認められると、出願日から18か月以内に、所定のフォーマット(様式5)により実体審査請求が行われた特許出願に対して実体審査が行われ、新規性、進歩性、産業上の利用可能性等が審査される(同法第29条A(1)、同規則27)。期間内に実体審査請求を行わない場合、出願は取り下げたものとみなされる。
実体審査請求に係る手数料は、オンライン出願の場合は950リンギット、オンライン出願によらない場合は1,100リンギットである。
実体審査に要する時間は、事案にもよるが通常、審査請求からおよそ2年から4年である。
(ii)修正実体審査
出願人または前権利者において、同一の発明について米国、英国、日本、豪州、韓国で特許権、または、欧州特許を取得している場合、出願人は出願日から18か月以内に、所定のフォーマット(様式5A)により、実体審査に代えて修正実体審査を請求することもできる(同法第29A条(2)、同規則27A条)。
修正実体審査請求の際には、出願人または前権利者に付与された特許証の証明付き謄本や証明付き英語翻訳文(日本の場合等)を添付しなければならない。
なお、審査請求手数料は、オンライン出願の場合は600リンギット、そうでない場合は640リンギットである。
修正実体審査の場合は、進歩性の要件充足性は通常審査されず、修正実体審査に要する期間は、審査請求からおよそ1年から2年程度である。
(iii)審査請求の猶予
出願人は、所定のフォーマット(様式5B)を用いて、実体審査請求または修正実体審査請求の請求期間について、1回限りの猶予を求めることができる。猶予期間の上限は、マレーシアでの出願日または国際出願日から5年である(同規則27B)。
猶予が認められるためには実体審査請求または修正実体審査請求を行うべき期間内に猶予を求める申請を行う必要があり、以下のような事情がある場合に猶予が認められ得る(同法第29A条(6))。
実体審査請求の場合:(a)当該出願人またはその前権利者によりマレーシア以外の国において提出された特許若しくは工業所有権保護に関するその他の権利を求める出願に関する情報または関係書類、(b)当該出願においてクレームされている発明と同一または基本的に同一の発明に関する特許協力条約に基づく国際調査機関による調査または審査結果に係る情報が入手できていないこと
修正実体審査請求の場合:根拠となる外国特許出願がまだ登録になっていない場合や、要求される証明書類が入手できない場合
(4)登録官による不利益通知(adverse report)への対応
実体審査・修正実体審査において、実体要件を具備しないと審査官が判断した場合、その旨の報告書が出願人に送付され、当該発行日から2か月以内に意見書または補正書を提出する機会が与えられる。実体要件不備を解消できない場合、当該出願は拒絶され得る(同法第30条(3)、同規則27C(5)、27D(5))。
この規定による補正の機会は1度のみである(自発補正については、回数制限はない)。
なお、不利益通知への対応期間については、1度だけ延長が認められ得る(同法第30条(4))。延長が認められる期間は、事案により異なるが、およそ1か月から6か月程度である。
期間延長を求める場合は所定のフォーマット(様式21)により申請し、手数料(基本費用:260マレーシアリンギット、1か月あたり70マレーシアリンギットを加算)を納付する必要がある(Registrar’s Notice No. 2/2011 regarding Extension of Time on Patent matters)。
(5)留意事項
分割出願を行う場合、さらなる実体審査または修正実体審査の請求(分割出願の実体審査または修正実体審査の請求)は当該分割出願時に行う必要がある(同規則27(2)、27A(2))。
なお、分割出願は実体審査・修正実体審査の審査報告書の発行日から3か月以内に行わなければならない。マレーシアでは、出願された特許は一般的に出願日の早いものから審査され、審査請求が早いからといって必ずしも審査も早くなる訳ではないようである。
日本とシンガポールの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
1. 日本の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、意見書および補正書の提出期間は60日
・出願人が在外者である場合(外国出願人)は、意見書および補正書の提出期間は3か月
条文等根拠:特許法第50条、第17条の2第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第50条 拒絶理由の通知
審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第17条の2第1項第1号または第3号に掲げる場合(同項第1号に掲げる場合にあっては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第53条第1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
日本特許法 第17条の2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面の補正
特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる。ただし、第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
一 第50条(第159条第2項(第174条第2項において準用する場合を含む。)及び第163条第2項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第50条の規定により指定された期間内にするとき。
二 拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合において、同条の規定により指定された期間内にするとき。
三 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第50条の規定により指定された期間内にするとき。
四 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。
日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合
(2) 指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、特許及び実用新案に関しては60日、意匠(国際意匠登録出願における拒絶の通報に応答する場合を除く。)及び商標(国際商標登録出願における命令による手続補正書を提出する場合及び暫定的拒絶の通報に応答する場合を除く。)に関しては40日とする。ただし、手続をする者又はその代理人が、別表に掲げる地に居住する場合においては、特許及び実用新案に関しては60日を75日と、意匠及び商標に関しては40日を55日とする。
a.意見書(特50条[特67条の4、意19条において準用]、商15条の2[商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用]、15条の3第1項、商附則7条[商附則23条])
日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合
(2) 指定期間
ア.次に掲げる書類等の提出についての指定期間は、上記1.(2)コ.の国際意匠登録出願において拒絶の通報に応答する場合の意見書の提出及び意匠法第9条第4項に基づく応答書面の提出についての指定期間、及びサ.の国際商標登録出願における命令による手続補正書の提出についての指定期間を除き、3月とする。ただし、代理人だけでこれらの書類等を作成することができると認める場合には、上記1.(2)ア.の手続をする者が在外者でない場合の期間と同様とする。
a.意見書(特50条[特67条の4、意19条において準用]、商15条の2[商65条の5、68条2項、商標法等の一部を改正する法律(平成8年法律第68号)附則12条において準用]、15条の3第1項、商附則7条[商附則23条])
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
出願人が在外者でない場合(国内出願人)は、最大2か月まで延長可能である。出願人が在外者である場合(外国出願人)は、最大3か月まで延長可能である。
条文等根拠:特許法第5条第1項、方式審査便覧04.10
日本特許法 第5条 期間の延長等
特許庁長官、審判長または審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期間を延長することができる。
2 審判長は、この法律の規定により期日を指定したときは、請求によりまたは職権で、その期日を変更することができる。
日本方式審査便覧 04.10、1. 手続をする者が在外者でない場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
次に掲げる特許法及び実用新案法並びに特許登録令、実用新案登録令及び意匠登録令の手続の指定期間については、指定期間内又は指定期間に2月を加えた期間内の請求により、2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。
ア.上記(2)ア.a.の意見書(特50条の規定によるものに限る)。ただし、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
日本方式審査便覧 04.10、2. 手続をする者が在外者である場合
(4)指定期間の延長(特・実・意)
ウ.上記2.(2)ア.a.の特許法第50条の規定による意見書の提出についての指定期間は、請求により延長することができる。延長する期間は以下のとおりとする。
a.指定期間内の延長請求は、1回目の請求により2月延長し、2回目の請求により1月延長することができ、2回の請求により最長3月の期間延長をすることができる。
b.指定期間経過後の延長請求は、指定期間に2月を加えた期間内の請求により2月延長することができる。ただし、指定期間内に延長請求した場合には、指定期間経過後の再度の延長請求を行うことはできない。また、当初の指定期間内に意見書を提出した場合又は特許法第17条の2第1項又は第3項に基づく補正を行った場合については、指定期間経過後の延長請求を行うことはできない。
2. シンガポールの実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間延長
(1)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間
・シンガポール知的財産庁に審査を請求した場合、応答期間は5か月
・シンガポール知的財産庁に補充審査を請求した場合、応答期間は3か月
条文等根拠:特許規則46(4)、(4A)、(5)
シンガポール特許規則46 審査官の意見書等
(4)(a)第29条(4)に基づく審査報告、または
(b)第29条(5)に基づく調査および審査報告、
に関する、(3)に基づく最初の意見書に対する応答は、同意見書を伴った登録官の通知の日から5月以内に提出しなければならない。
(4A)第29条(6)に基づく補充審査に関する、(3)に基づく最初の意見書に対する応答は、同意見書を伴った登録官の通知の日から3月以内に提出しなければならない。
(5)出願人が(3)に基づいて第29条(4)に基づく審査報告又は第29条(5)に基づく調査および審査報告に関する意見書を提出した場合は、
(a)審査官は、その裁量により、自己の意見の理由を詳細に記載した追加の意見書を登録官に対し発出することができ、
(b)(2)および(3)がこれに従って適用され、また
(c)(3)に基づく追加の意見書に対する応答は、追加の意見書を伴った登録官からの通知の日から5月以内に提出しなければならない。
(2)特許出願に対する拒絶理由通知への応答期間の延長
いかなる場合も延長することができない。
条文等根拠:特許規則108(2)(b)
シンガポール特許規則108 期限の変更
(1)登録官は、当事者からの書面による請求により、(2),(3)及び(4)並びに規則108Aに従うことを条件として,登録官は,期日又は期間の満了後6月以内になされる当事者からの書面による請求により,自己が適切と認める場合は,ある行為を実行するための又はある手続を取るための本規則による所定期間及び本規則に基づいて登録官が指定した期日又は期間について,自己の指示する当事者への通知により,かつ,自己の指示する条件に基づいて,延長することができる。
(2)次の規則に定められる期日または期間は、いかなる場合も延長することができない。
(中略)
(b) 規則9(1)、(2)および(3)、規則9A(1)および(2)(a)、規則19(2)、規則26(5)、規則26A(1)および(5)(a)、規則28(a)、(b)、(c)および(d)、規則29(4)、規則34(2)、規則46(4)、(4A)および(5)(c)、規則49、規則51(1)、(2)および(2A)、規則51A(1)および(2)、規則52(2)、規則53(1)、規則73(1)、規則74(1)、規則75、規則85(1)、規則86(3A)、規則88(8)(a)、規則88A(11)、規則91(3)および(5)ならびに附則4の第4項(2)
日本とシンガポールの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較
日本 | シンガポール | |
応答期間 | 60日
(ただし在外者は3か月) |
・IPOSに審査を請求した場合:5か月
・IPOSに補充審査を請求した場合:3か月 |
応答期間の延長の可否 | 可 | 不可 |
延長可能期間 | 最大2か月
(在外者は最大3か月) |
– |
インドネシアにおける特許出願の補正の制限
1.補正の制限に関するインドネシア特許法の条文
インドネシアにおける補正の制限については、インドネシア特許法(特許に関する法律第13/2016号)第39条に下記のように定められている。
インドネシア特許法第39条
(1)出願は、以下の場合補正することができる:
(a)第25条(1)項(b)号、(e)号および/または(f)号に規定する出願データ;および/または
(b)第25条(2)項(a)号から(e)号に規定する出願データ
(2)第25条(2)項(b)号および(c)号における発明の明細書および/または特許請求の範囲の補正は、その補正が原出願で申請された発明の範囲を拡大しないという条件で行うことができる。
(3)最初の出願に請求の範囲を追加して10項を超える補正の場合、当該超過した請求項に手数料が課される。
(4)出願において(3)項に規定する手数料が納付されない場合、超過分の特許請求の範囲は取下げられたとみなされる。
ここで、
第25条(1)項(b)号は、願書における発明者の氏名、完全な住所および国籍を意味し、
第25条(1)項(e)号は、出願が代理人を通して行われる場合、代理人の氏名および完全な住所を意味し、
第25条(1)項(f)号は、出願が優先権を伴って出願される場合、最初の出願の国名と出願日を意味する。
また、第25条(2)項(a)号から(e)号は、それぞれ、以下のものを意味する。
(a)発明の名称
(b)発明の明細書
(c)特許請求の範囲
(d)発明の要約
(e)図面が出願と共に添付される場合、発明の説明に必要とされる明細書に記載される図面
2.発明の明細書および特許請求の範囲の補正
インドネシア特許法第39条(2)項に規定されるように、発明の明細書および特許請求の範囲の補正に対する制限は、補正により、出願当初において請求された発明自体の範囲を拡大してはならないというものである。特許法第39条の説明において、「発明の範囲を拡大する」という場合、これは、明細書、図面またはクレームのいずれにおけるかを問わず、発明の範囲を拡大させるような、要旨や主題の追加、新規事項の追加、または発明の技術的特徴の削除を意味する。したがって、特許法第39条は、発明の明確化のみを認めている。
原則として、インドネシア出願の内容が当初明細書の開示範囲として取り扱われることに注意が必要である。ただし、インドネシア出願が他国の特許出願を基礎としてなされたものであって、誤訳により基礎出願とインドネシア出願で記載内容が一致しない場合には、実務上、誤訳訂正が認められる。
PCT出願の場合、国際出願の内容が当初明細書の範囲となり、国内移行段階で、インドネシア語明細書への誤訳があった場合は、誤訳訂正が認められる。
補正は、出願人が自発的に行うことも、審査官からの指示により行うこともできる。実体審査に入る前に出願人によって補正が行われる場合を、一般的に自発補正と呼ぶ。
一方、審査報告書の示唆に従い補正が行われる場合もある。審査官は実体審査において、審査報告書を発行するが、その中で出願人に出願書類の補正を要求する場合がある。審査官の要求する補正は、他国での対応特許出願での登録クレームと実質的に同様のクレームに補正することである場合が多い。
3.請求の範囲の追加により10項を超える補正
インドネシア特許法第39条(3)項に規定されるように、請求の範囲の追加により請求項数が10項を超える補正の場合、超過した請求項に手数料が課される。同条(4)項に規定されるように、(3)項に規定する手数料が納付されない場合、超過分の特許請求の範囲は取下げられたとみなされる。
シンガポールの庁指令に対する応答期間
特許出願の審査手続は、パリ条約に基づく出願、または特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の国内移行出願のいずれの出願形式を選択するかにより異なる。特に調査および審査の段階において、その相違は大きい。また、発行される庁指令および通知は、出願形式や以下に説明する調査および審査の種類により異なる。
パリ条約に基づく出願では、出願人は、審査請求について以下の選択肢(オプション)を有する。(図1のフロー参照)
(1)基準日から13か月以内に調査を請求し(第29条(1)(a))、その後、基準日から36か月以内に審査を請求する(第29条(3))。
(2)基準日から36か月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。
(3)基準日から36か月以内に、対応する出願または対応する国際出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。
(4)基準日から54か月以内に、対応する出願または対応する国際出願の肯定的な最終結果・審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A))*1。
*1:補充審査は、2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願では、利用できなくなる。(シンガポール特許法29条(11A)、およびシンガポール特許規則43(4))。
(図1)パリ条約に基づく出願の場合
PCTに基づく国内移行出願では、出願人は審査請求について以下の選択肢を有する。(図2のフロー参照)
(1)基準日から36か月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。
(2)基準日から36か月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。
(3)基準日から36か月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の国際調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(ii))。
(4)基準日から54か月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の肯定的な最終結果または審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A);補充審査は、上記*1のとおり、2020年1月1日以降の出願では利用できない。補充審査については、以下同じ。)。
(5)基準日から54か月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の特許性に関する国際予備報告(IPRP)に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(B))。
(図2)PCTに基づく国内移行出願の場合
1.不備を指摘する通知に対する応答期間
1-1.予備審査において指摘された不備
シンガポール特許規則33に基づいて規定された方式要件を満たしていない出願について登録官(Registrar)が、不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から2か月である。延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大18か月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。
登録官が、図面または明細書の一部が欠落した出願について不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から3か月である。この期限は延長することができない。
1-2.その他審査関連事項に関する不備
提出された書類または様式に何らかの不備が見つかった場合や、書類の提出に漏れがあった場合には、審査手続の様々な段階において、登録官により該不備が指摘されることがある。また、登録官は、以上のような類型に該当しない不備に関しても、該不備を指摘する通知を発行することができる。
このような不備に対応するための応答期間は、該通知に記載されている。応答期間は登録官の裁量であり、特許法または特許規則では規定されていない。
2.調査報告に対する応答期間
(図3)パリ条約に基づく出願の場合
(図4)PCTに基づく国内移行出願の場合
第29条(1)(a)または(b)に基づいて請求された調査報告により(図3および図4のフロー参照)、当該特許出願において、単一の発明概念に関する単一性の欠如が判明した場合、登録官は出願人にその旨を通知する必要がある。
出願人は、単一性を有しないと判断されたために調査が行われなかった発明について補足調査(Supplementary Search)を請求することができる。この請求は、登録官の通知の日から2か月以内に行う必要がある。この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大6か月延長することができる。
第29条(1)(a)に基づいて請求された調査報告が、審査請求期限の1か月前以降に出願人に送付された場合、審査請求期限は、調査報告が出願人に通知された日から1か月延長される。
3.調査見解書に対する応答期間
3-1.実体審査が請求される場合
(図5)パリ条約に基づく出願の場合
(図6)PCTに基づく国内移行出願の場合
特許法第29条(1)(b)もしくは(c)または第29条(3)に基づいて、審査または調査および審査が請求され(図5および図6のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から5か月であり、この期限は延長することができない。
3-2.補充審査が請求される場合*1
(図7)パリ条約に基づく出願の場合
(図8)PCTに基づく国内移行出願の場合
特許法第29条(1)(d)に基づいて補充審査が請求され(図7および図8のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から3か月であり、この期限は延長することができない。
3-3.見解書に対する応答
出願人は、見解書に対して、反論または補正を提出して応答することができる。
出願人が見解書に対して応答を行わない場合には、見解書に基づいて審査報告書(3-1の場合)または補充審査報告書(3-2の場合)が作成される。審査報告書または補充審査報告書に未解決の拒絶理由が含まれる場合、登録官は出願人に拒絶をする旨の通知を発行する。
4.拒絶をする旨の通知に対する応答期間
出願人は、未解決の拒絶理由が含まれる審査報告書に対し、再審査を請求することができる。再審査は、拒絶をする旨の通知の日から2か月以内に請求することができる。
延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大6か月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。
5.特許を付与する旨の通知に対する応答期間
登録官により特許を付与する旨の通知が発行される場合、出願人には、当該出願を整理し、登録料を納付するための期間として2か月が与えられる。
この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大18か月延長することができる。
応答を行わない場合、当該出願は放棄されたものとみなされる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。
6.特許付与後の応答期間
シンガポールにおいて最初に支払う年金は第5年次年金であり、第4年次までの年金を支払う必要は無い。第5年次年金の納付期限は特許出願日から4年目が満了する3か月前、すなわち、特許出願日から45か月である。
特許出願日から45か月が経過した後に特許が付与される場合、支払期限を迎えた年金(前年までに支払期限のある全ての費用を含む)は、特許付与の日から3か月以内であればいつでも納付することができる。
以降の各年の年金は毎年納付することとなり、期間満了前3か月以内に納付することができる。
【留意事項】
庁指令または通知に対する応答期間は、庁から発行される書面に記載されている。庁書面によっては、応答期間の延長が認められない場合もあり、そのような応答期間ついては、特に注意を払う必要がある。
シンガポールにおける特許出願の補正の制限
1.特許付与前の補正
シンガポール特許法(以下、「特許法」)の第31条は、特許付与前の出願の補正に関する一般的な権限を規定している。また、特許法第84条(2)には、補正に対する制限が定められている。
“特許法第84条(2)
特許出願の第31条に基づくいかなる補正も、その結果、当該出願が出願時での特許出願において開示された事項を超える事項を開示するに至る場合は、認められない。”
また、特許付与前の補正が認められない一定の期間があり、そのような期間は、シンガポール特許規則(以下、「規則」)の49(2)および49(3)に規定されている。
“規則49(2)
下記第(3)項に従い、出願人は、登録官から別段の要求がない限り、特許付与に係る手数料が支払われる前の任意の時期に、自らの意思により明細書、クレーム、図面および要約を補正することができる。”
“規則49(3)
特許法第29B条(2)に従い、以下の期間には本規則(2)項に基づく補正は行われないものとする。
(a)特許法第29条(1)(a)に基づく調査報告の請求が提出された後、出願人が当該報告を受領するまでの期間。
(b)特許法第29条(1)(b)に基づく調査兼審査報告の請求が提出された後の期間。ただし、当該報告に関して規則46(3)に基づき提出された答弁書の中に補正が含まれている場合はこの限りではない。
(c)特許法第29条(1)(c)もしくは(3)に基づく審査報告の請求が提出された後の期間。ただし、当該報告に関して規則46(3)に基づき提出された答弁書の中に補正が含まれている場合はこの限りではない。
(d)特許法第29条(1)(d)に基づく補充審査報告の請求が提出された後の期間。ただし、当該報告に関して規則46(3)に基づき提出された答弁書の中に補正が含まれている場合はこの限りではない。
(e)特許法第29B条(1)に基づくレビューの請求が提出された後の期間。”
なお、規則49(3)にいう「報告に対する答弁書」とは、調査兼審査報告、審査報告、または補充審査報告の請求に関連して審査官が発行した「意見書」に対する答弁書のことである。
2.特許付与後の補正
(1)特許法
特許法第38条は、特許付与後の明細書の補正(日本特許法の「訂正」に相当)に関する一般的な権限を規定している。また、特許法第83条は、侵害または取消手続における特許の補正について次のように定めており、特許法第84条(3)は、特許明細書の補正に関する2つの制限を定めている。
“特許法第83条(1)
特許の有効性を争点として裁判所または登録官の下で行われる手続において、裁判所または登録官は、本法第84条に従うことを条件として、かつ、補正案の公告および費用、経費その他について裁判所または登録官が適切と考える条件に従うことを前提として、裁判所または登録官が適当と考える方法で、当該特許明細書を補正することを特許の所有者に許可することができる。”
“特許法第84条(3)
特許明細書の特許法第38条(1)、第81条または第83条に基づく如何なる補正も、次の場合は、認められない。
その補正の結果、
(a)当該明細書において何らかの追加事項が開示されるに至る場合、または
(b)当該特許により与えられる保護が拡張される場合。”
(2)審査ガイドライン
2017年10月30日付で改正された審査ガイドラインの第7章E(特許付与後の訂正の許可性)7.36において、特許が明らかに無効である(obviously invalid)場合には、無効の可能性がある(potentially invalid)場合と異なり、新規事項の追加または権利範囲の拡張かどうかを考慮することなく、補正を認めないと規定されている。
3.新規事項の追加に関する判断基準
シンガポール控訴裁判所は、FE Global Electronics Pte Ltd and others v Trek Technology(Singapore)Pte Ltd [2006] 1 SLR 874の判決において、英国の判例Bonzel and Schneider(Europe)AG v Intervention Ltd [1991] PRC 553を引用して、特許明細書の補正が新規事項の追加にあたるか否かという問題の判断基準を示している。3段階からなるこの判断基準は以下のとおりである。
(1)当業者の目を通して、特許出願の出願時の開示内容を、明示的および黙示的の両面から確定する。
(2)補正の対象とされる特許について、補正後の開示内容を、同様の確定を行う。
(3)上の2つの開示内容を比較し、削除もしくは追加によって発明に関連する主題が新たに追加されているか否かを判断する。この比較により、補正に含まれる主題が当初の出願において明示的ないし黙示的に明瞭かつ明確に開示されていない限り当該主題が新規事項として追加されたと判断する。
4.登録官および裁判所の特許明細書の補正についての権限
登録官(Registrar)および裁判所が特許明細書を補正する権限は、裁量にしたがって行使される。
5.補正に対する異議申立
特許法第83条(2)に基づき、何人も、特許の所有者が申し入れた補正に対する異議の申立を裁判所もしくは登録官に対して提出することができる。訴訟が裁判所において係属中である場合、異議の陳述書は補正案が公告されてから所定の期間内に提出されなければならない(Rules of Court(裁判所規則), Order 87A r.11(1)(e))。登録官の下で手続が進行中である場合、異議申立は補正案が公告された日から2か月以内に提出されなければならない。
6.補正の効果
特許法第83条(3)によれば、特許法第83条に基づく特許明細書の補正は、常に、特許付与の時点で効果を発生したものとみなされる。
インドネシアにおける特許出願の実体審査と特許庁からの指令書に対する応答期間
2016年8月26日施行された2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)は、実体審査や方式の期間について、以下のように規定している。
1. 方式審査に対する応答期間
2016年特許に関する法律第13号(以下、特許法)第34条は、出願日を確保するために必要な最低要件を規定している。その最低要件とは以下のとおりである。
- 出願年月日、発明者の氏名・住所・国籍、 出願人の名称・住所、代理人の氏名・住所(第25条第1項)
- 発明の名称、明細書(外国語可)、特許請求の範囲、要約、存在する場合は図面(第25条第2項a~e号、第3項)
- 出願手数料納付の証明
最低要件の明細書は外国語で記載されていてもよいが、インドネシア語に翻訳された明細書は出願日から30日以内に提出されなければならず(第25条第3項)、期間内に提出されない場合、出願は取下げられたものとみなされる(第4項)。
これ以外の方式要件は、委任状、発明者宣言書、譲渡書、微生物寄託証明書である。方式要件が満たされていない場合、大臣は出願人に対し書面をもって、通知発送の日から起算して3か月以内に方式要件を充たすように通知する(第35条第1項)。この応答期間は最大2か月間延長でき(第2項)、さらに手数料の支払いにより1か月間延長できる(第3項)。また、自然災害等特別な事情のある場合はさらに6か月間の延長が可能である(第5項、第6項)。延長期間内に要件が満たされない場合、出願が取下げられたとみなされる(第36条)。
2. 審査請求期間
特許出願の実体審査は実体審査請求を待って行われる。出願人は特許法第51条第1項に定めるとおり、手数料を納付し、実体審査を請求しなければならない。実体審査請求のできる期間は、出願日から36か月以内である(第2項)。実体審査は、出願公開後6か月の異議申立期間(第48条第1項、第49条第1項)が経過した後着手される(第51条第5項)。
3. 実体審査と応答期間
実体審査官は、出願された発明の産業上利用性、新規性、進歩性、記載不備等を審査する(第54条)。審査官が特許出願された発明が登録要件を満たさないと報告した場合、大臣は出願人に対して書面によりその要件を満たすよう通知する(第62条第1項)。通知には、a)充足されるべき要件、b)実体審査において用いられる理由と引用文献が記載される(第62条第2項)。
実体審査を受ける出願が優先権を伴う場合、大臣は出願人に対して、他国での審査結果に関する書類の提出を求めることができる(第55条)。その特許出願の発明が既に他国において特許が付与されている場合には、後述のとおり、審査官から出願人に対して、係属中の出願を対応国で登録された特許に一致させるような補正を提案することが多い。発明が単一性を満たさない場合、審査官は分割出願を行うよう提案することもできる。
出願人は、通知書の日から3か月以内に意見書および/または補正書を提出しなければならない(第62条第3項)。その期間は、2か月延長でき(第4項)、さらに手数料の納付を条件として1か月延長できる(第5項)。また、自然災害等特別な事情のある場合はさらに6か月間の延長が可能である(第7項、第8項)。
期間内に応答しない場合、大臣は書面で出願人に対し2か月以内に出願は取下げられたとみなされる旨通知する(第10項)。
なお実情では、2回目の拒絶理由への応答期間は2か月のみである。2回目の拒絶理由通知の応答期間は、審査官の裁量により認められる場合がある。
特許法第57条は、実体審査請求日または公開期間満了日のうち遅い方から30か月以内に登録または拒絶の査定をするように規定している。この期限が迫っている場合は、応答期間の延長が認められない。
応答期間の起算日は、通知の送達日ではなく、通知の日である。現状として通知が起案されてから代理人等に送達するまで1か月程度要しているため、出願人が応答を準備するために与えられる時間は十分でないことがある。
審査官が、2回目の通知への応答を審査しても、やはり特許出願は特許要件を満たさないと判断した場合、審査官は拒絶査定書を発行する。拒絶査定を不服とする場合、出願人は、拒絶査定書の日から3か月以内に、当該拒絶査定に対して審判請求をすることができる。一方、通知に対する応答により、拒絶理由が解消されたと認められる場合、特許査定書が送付され、その後の特許付与の段階へと移行する。
4. 優先権を主張する特許出願および国際特許出願(PCTルート)の実体審査
特許法第55条では、優先権を主張する特許出願について、他国の審査において先行技術調査または実体審査が行われている場合、または特許査定が下されている場合、審査官は、他国の審査結果を参照することができる旨が定められている。ただし大臣令により、以下の国の官庁の審査結果は参照できない。
- ASEAN加盟国(シンガポールを除く)
- アフリカ諸国
- 東ヨーロッパ諸国(ロシアとEPO加盟国を除く)
- 台湾
PCTルートの場合、審査官は、国際調査報告、見解書または国際予備審査報告を、発明の特許性を判断するための主たる参考資料として参照する。ただし、これらは審査官を拘束するものではなく、特許査定の可否は、あくまでインドネシア特許法に定められた不特許事由を考慮した審査官の判断に委ねられるのは言うまでもない。
【留意点】
拒絶理由通知の発送に遅延が生じているため、出願人の応答準備期間が不十分になってしまうことがあるが、審査官は期間延長に柔軟に対応している。
シンガポールの庁指令に対する応答期間
【詳細】
特許出願の審査手続は、パリ条約に基づく出願、または特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の国内移行出願のいずれの出願形式を選択するかにより異なる。特に調査および審査の段階において、その相違は大きい。また、発行される庁指令および通知は、出願形式および/または以下に説明する調査および審査の種類により異なる。
パリ条約に基づく出願では、出願人は、審査請求について以下の選択肢を有する。(図1のフロー参照)
(1)基準日から13ヶ月以内に調査を請求し(第29条(1)(a))、その後、基準日から36ヶ月以内に審査を請求する(第29条(3))。
(2)基準日から36ヶ月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。
(3)基準日から36ヶ月以内に、対応する出願または対応する国際出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。
(4)基準日から54ヶ月以内に、対応する出願または対応する国際出願の肯定的な最終結果・審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A))。
PCTに基づく国内移行出願では、出願人は審査請求について以下の選択肢を有する。(図2のフロー参照)
(1)基準日から36ヶ月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。
(2)基準日から36ヶ月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。
(3)基準日から36ヶ月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の国際調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(ii))。
(4)基準日から54ヶ月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の肯定的な最終結果または審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A))。
(5)基準日から54ヶ月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の特許性に関する国際予備報告(IPRP)に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(B))。
1.不備を指摘する通知に対する応答期間
1-1.予備審査において指摘された不備
シンガポール特許規則第33条に基づいて規定された方式要件を満たしていない出願について登録官(Registrar)が、不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から2ヶ月である。延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大18ヶ月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。
登録官が、図面または明細書の一部が欠落した出願について不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から3ヶ月である。この期限は延長することができない。
1-2.その他審査関連事項に関する不備
提出された書類または様式に何らかの不備が見つかった場合や、書類の提出に漏れがあった場合には、審査手続の様々な段階において、登録官により該不備が指摘されることがある。また、登録官は、以上のような類型に該当しない不備に関しても、該不備を指摘する通知を発行することができる。
このような不備に対応するための応答期間は、該通知に記載されている。応答期間は登録官の裁量であり、特許法または特許規則では規定されていない。
2.調査報告に対する応答期間
第29条(1)(a)または(b)に基づいて請求された調査報告により(図3および図4のフロー参照)、当該特許出願において、単一の発明概念に関する単一性の欠如が判明した場合、登録官は出願人にその旨を通知する必要がある。 出願人は、単一性を有しないと判断されたために調査が行われなかった発明について補足調査(Supplementary Search)を請求することができる。この請求は、登録官の通知の日から2ヶ月以内に行う必要がある。この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大6ヶ月延長することができる。
第29条(1)(a)に基づいて請求された調査報告が、審査請求期限の1ヶ月前以降に出願人に送付された場合、審査請求期限は、調査報告が出願人に通知された日から1ヶ月延長される。
3.調査見解書に対する応答期間
3-1.実体審査が請求される場合
特許法第29条(1)(b)もしくは(c)または第29条(3)に基づいて、審査または調査および審査が請求され(図5および図6のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から5ヶ月であり、この期限は延長することができない。
3-2.補充審査が請求される場合
特許法第29条(1)(d)に基づいて補充審査が請求され(図7および図8のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から3ヶ月であり、この期限は延長することができない。
3-3.見解書に対する応答
出願人は、見解書に対して、反論または補正を提出して応答することができる。
出願人が見解書に対して応答を行わない場合には、見解書に基づいて審査報告書(3-1の場合)または補充審査報告書(3-2の場合)が作成される。審査報告書または補充審査報告書に未解決の拒絶理由が含まれる場合、登録官は出願人に拒絶をする旨の通知を発行する。
4.拒絶をする旨の通知に対する応答期間
出願人は、未解決の拒絶理由が含まれる審査報告書に対し、再審査を請求することができる。再審査は、拒絶をする旨の通知の日から2ヶ月以内に請求することができる。
延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大6ヶ月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。
5.特許を付与する旨の通知に対する応答期間
登録官により特許を付与する旨の通知が発行される場合、出願人には、当該出願を整理し、登録料を納付するための期間として2ヶ月が与えられる。
この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大18ヶ月延長することができる。
応答を行わない場合、当該出願は放棄されたものとみなされる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。
6.特許付与後の応答期間
シンガポールにおいて最初に支払う年金は第5年次年金であり、第4年次までの年金を支払う必要は無い。第5年次年金の納付期限は特許出願日から4年目が満了する3ヶ月前、すなわち、特許出願日から45ヶ月である。
特許出願日から45ヶ月が経過した後に特許が付与される場合、支払期限を迎えた年金(前年までに支払期限のある全ての費用を含む)は、特許付与の日から3ヶ月以内であればいつでも納付することができる。
以降の各年の年金は毎年納付することとなり、期間満了前3ヶ月以内に納付することができる。
【留意事項】
庁指令または通知に対する応答期間は、庁から発行される書面に記載されている。庁書面によっては、応答期間の延長が認められない場合もあり、そのような応答期間ついては、特に注意を払う必要がある。