日本とベトナムにおける特許出願書類の比較
1.日本における特許出願の出願書類
1-1.出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 発明者の氏名及び住所又は居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
1-2.手続言語
日本語
1-3.手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年2か月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日(第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、同項に規定する先の出願の日、第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、最初の出願若しくはパリ条約(千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約をいう。以下同じ。)第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日、第四十一条第一項、第四十三条第一項、第四十三条の二第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による二以上の優先権の主張を伴う特許出願にあっては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。第六十四条第一項において同じ。)から一年四月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間(同項ただし書の規定により外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を提出することができるときは、同項ただし書に規定する期間。以下この条において同じ。)内に同項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文の提出がなかつたときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。
4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第二項に規定する翻訳文の提出がなかつたときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。
6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第四項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
7 第四項又は前項の規定により提出された翻訳文は、第二項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
8 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語は、英語とする。
1-4.優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし若しくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、若しくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、若しくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲及び図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報若しくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願若しくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項、次条第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)又は第四十三条の三第一項若しくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願若しくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知つたときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府又は工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。
6 特許庁長官は、第二項に規定する期間内に同項に規定する書類又は前項に規定する書面の提出がなかつたときは、第一項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。
8 第六項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。
9 第七項又は前項の規定により第二項に規定する書類又は第五項に規定する書面の提出があつたときは、第四項の規定は、適用しない。
<参考URL>
特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について)
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html
1-5.明細書の様式
特許法施行規則様式第29に明細書の作成様式を示している。
【発明の名称】
【技術分野】
【背景技術】
【先行技術文献】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【発明の効果】
【図面の簡単な説明】
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【産業上の利用可能性】
【符号の説明】
条文等根拠:特許法第36条、特許法施行規則様式第29
2.ベトナムにおける特許出願の出願書類(パリルート)
2-1.出願書類
知的財産法にて規定された以下の書面を提出する。
・願書
・保護を求める発明を特定する書類
(発明の説明書(日本における明細書)および要約書を含み、発明の説明書には必要な図面および特許請求の範囲が含まれる)
・委任状
条文等根拠:知的財産法第100条
ベトナム知的財産法 第100条 工業所有権登録出願に係る一般的要件
(1)工業所有権登録出願は、次の書類から構成される。
(a)所定の様式による願書
(b)第102条から第106条までの規定に従い保護を求めてクレームされた工業所有権を特定する書類、見本、情報
(c)出願が代理人を通じて行われるときは、委任状
(d)出願人が登録を受ける権利を他人から取得したときは、その権利を証明する書類
(dd)優先権を主張するときは、それを証明する書類
(e)所定の手数料および料金の領収書
(2)工業所有権登録出願書類および出願人と国家工業所有権庁との間の通信書類は、ベトナム語により作成しなければならない。ただし、次のものは例外として、他の言語により作成することができるが、国家工業所有権庁の請求があればベトナム語に翻訳しなければならない。
(a)委任状
(b)登録を受ける権利を証明する書類
(c)優先権を証明する書類
(d)当該出願を支持する他の書類
(3)工業所有権登録出願の優先権を証明する書類には、次のものを含める。
(a)受理官庁により認証された最初の出願書類の写し
(b)他人から取得したときは、優先権の譲渡証書
ベトナム知的財産法第102条 発明登録出願に係る要件
(1)発明登録出願において保護を求める発明を特定する書類は、発明の説明および保護の範囲から構成される発明の説明書並びに要約を含まなければならない。
(2)発明の説明は、次の条件を満たさなければならない。
(a)発明の内容について当該発明が当該技術の通常の知識を有する者により実施できる程度に開示すること
(b)発明の内容を更に明らかにするために図面が必要であるときは、当該図面を簡単に説明すること
(c)発明の新規性、進歩性および産業上の利用可能性を明らかにすること
(3)発明の保護の範囲は、その発明に対する権利の範囲を特定するのに必要かつ十分な技術的特徴の組合せの形態で表現するものとし、発明の説明書および図面に合致していなければならない。
(4)発明の要約は、発明の内容の本質的特徴を開示しなければならない。
2-2.手続言語
ベトナム語
条文等根拠:知的財産法第100条(2)(上記)
2-3.手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
不可
2-4.優先権主張手続
優先権主張を出願と同時に行う必要がある。出願と同時もしくは出願から3か月以内に優先権証明書を提出しなければならない。また、優先権証明書の表紙(certification)部分のベトナム語訳の提出が必要である。
条文等根拠:知的財産法第100条(1)(dd)(上記)、知的財産法第91条
ベトナム知的財産法 第91条 優先権の原則
(1)発明、工業意匠、または標章の登録出願人は、次の条件が完全に満たされるときは、同一主題の保護に係る最初の出願に基づいて優先権を主張することができる。
(a)最初の出願がベトナムにおいて、または優先権に関する規定を有し、ベトナム社会主義共和国が締約国である国際条約の締約国において、または当該規定の適用をベトナムと同意した国において行われたこと
(b)出願人が、ベトナムもしくは(a)にいう国の国民であるか、またはベトナムもしくは(a)にいう国における居住者であるかまたはそこに取引もしくは生産の事業所を有すること
(c)優先権の主張が出願書類に明確に記載されており、かつ、最初の出願書類の写しがその受理官庁により証明されていること
(d)ベトナムが締約国である国際条約に規定する期限内に出願が行われたこと
(2)単一の発明、工業意匠、または標章の出願において、出願人は、異なる先の出願に基づく複合優先権を主張することができる。ただし、当該先の出願および当該出願の対応する内容が表示されていることを条件とする。
(3)優先権を享受する工業所有権登録出願は、最初の出願日と同一の優先日を有するものとする。
2-5.明細書の様式
明細書には以下の順で構成されなければならない。
(i)発明の名称
(ii)発明技術分野
(iii)発明の先行技術
(iv)発明の目的*1
(v)発明の技術的本質
(vi)添付の図面の簡単な説明(もしあれば)
(vii)発明実施方法の詳細な明細書
(viii)発明の実施例(もしあれば)*1
(ix)期待される利点(効果)(もしあれば/発明の技術的本質に記載があれば)*1
条文等根拠:産業財産権に関する省令第01/2007/TT-BKHCN号、第16/2016/TT-BKHCN号
*1: 2018年1月15日施行の産業財産権に関する省令第16/2016/TT-BKHCN号により変更された。
日本とベトナムにおける特許出願書類の比較
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日本 |
ベトナム |
手続言語 |
日本語 |
ベトナム語 |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 |
可(英語) その特許出願の日から1年2か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 |
不可 (留意点) 優先期間内にベトナム語で出願書類を作成し、出願を行わなければならない。 |
優先権主張手続 |
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 |
優先権主張を出願と同時に行う。出願と同時もしくは出願から3か月以内に優先権証明書提出を提出しなければならない。優先権証明書の表紙(certification)部分のベトナム語訳の提出が必要である。 |
日本とインドネシアにおける特許出願書類・手続の比較
1. 日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条
日本特許法 第36条 特許出願 特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。 一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所 二 発明者の氏名および住所または居所 2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。 3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。 一 発明の名称 二 図面の簡単な説明 三 発明の詳細な説明 4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。 一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。 二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。 5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。 6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。 一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。 二 特許を受けようとする発明が明確であること。 三 請求項ごとの記載が簡潔であること。 四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。 7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。 |
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2 特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書または特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面および必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)ならびに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。 2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年四月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。 3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間内に同項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文の提出がなかつたときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。 4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。 5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第二項に規定する翻訳文の提出がなかつたときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。 6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第四項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。 7 第四項または前項の規定により提出された翻訳文は、第二項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。 8 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲および図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。 |
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語 特許法第三十六条の二第一項の経済産業省令で定める外国語は、英語その他の外国語とする。 |
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4か月または優先権主張出願日から4か月のいずれか遅い日までの間に特許庁長官に提出しなければならない。優先権証明書の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に提出が可能である。
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっているが、本稿作成時点ではインドネシアとの間では実施されていない。
条文等根拠:特許法第43条、特許法施行規則第27条の4の2、特許法施行規則第27条の3の3
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続 パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨ならびに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をしまたは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。 2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本またはこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日 二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日 三 その特許出願が前項、次条第一項(第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)または第四十三条の三第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日 3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。 4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。 5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府または工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。 6 特許庁長官は、第二項に規定する期間内に同項に規定する書類または前項に規定する書面の提出がなかつたときは、第一項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。 7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第二項に規定する書類または第五項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。 8 第六項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第二項に規定する書類または第五項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類または書面を特許庁長官に提出することができる。 9 第七項または前項の規定により第二項に規定する書類または第五項に規定する書面の提出があつたときは、第四項の規定は、適用しない。 |
特許法43条1項の「経済産業省令で定める期間」は、以下のとおりである。
日本特許法施行規則 第27条の4の2 1~2(略) 3 特許法第四十一条第四項および第四十三条第一項(同法第四十三条の二第二項(同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)および第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の経済産業省令で定める期間は、次に掲げる場合に応じ、当該各号に定める期間とする。 一 特許出願(特許法第四十四条第一項、第四十六条第一項もしくは第二項または第四十六条の二第一項の規定による特許出願を除く。)について、同法第四十一条第一項、第四十三条第一項または第四十三条の三第一項もしくは第二項の規定による優先権の主張をする場合(第三号に規定する場合を除く。)優先日(優先権主張書面を提出することにより優先日について変更が生じる場合には、変更前の優先日または変更後の優先日のいずれか早い日。次号において同じ。)から一年四月の期間が満了する日またはこれらの規定による優先権の主張を伴う特許出願の日から四月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求または出願公開の請求があつた後の期間を除く。) |
特許法第43条7項の「経済産業省令で定める期間」は、以下のとおりである。
日本特許法施行規則 第27条の3の3 5 特許法第四十三条第七項(同法第四十三条の二第二項(同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の経済産業省令で定める期間は、同法第四十三条第六項(同法第四十三条の二第二項(同法第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)及び第四十三条の三第三項において準用する場合を含む。)の規定による通知の日から二月とする。 |
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html
2. インドネシアにおける特許出願の出願書類(パリルート)
(1)出願書類
特許法および特許規則にて規定された以下の書面を提出する。
・願書
(出願の年月日、出願人の名称および住所、発明者の名称および国籍、代理人の名称および住所、および発明の名称、優先権主張などの情報を含む)
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
・委任状
条文等根拠:特許法第24条、第25条、特許規則第4条
インドネシア特許法 第24条 (1)特許は、出願に基づき付与される。 (2)(1)項の出願は、出願人または代理人により大臣に対して手数料の納付と共にインドネシア語による書面提出によってなされる。 (3)(略) (4)(2)項の出願は、電子媒体および/または非電子媒体により申請することができる。 |
インドネシア特許法 第25条 (1)第24条における特許出願は少なくとも以下を含む: (a)出願書の年月日; (b)発明者の氏名、完全な住所および国籍; (c)出願人が法人でない場合には、出願人の氏名、完全な住所および国籍; (d)出願人が法人の場合には、出願人の名称および完全な住所; (e)出願が代理人を通して行われる場合、代理人の氏名および完全な住所; (f)出願が優先権を伴って出願される場合、最初の出願の国名と出願日 (2)(1)項における特許出願には以下の要件を添付しなければならない: (a)発明の名称; (b) 発明の明細書; (c)特許請求の範囲; (d)発明の要約; (e)図面が出願と共に添付される場合、発明の説明に必要とされる明細書に記載される図面; (f)出願が代理人により行われる場合、委任状; (g)発明者による発明の所有を宣言した書類; (h)発明者でない出願人が出願する場合、発明の所有権を譲渡することを示す書類; (i)微生物に関する出願の場合、微生物の保管証明書 |
インドネシア特許規則 第4条 特許出願書類 特許出願は、次に掲げる事項からなるものとする。 (a)特許を取得するための願書 (b)発明に関する明細書 (c)発明に含まれる1または2以上の請求の範囲 (d)説明するために必要とされる明細書において述べられている1または2以上の図面 (e)発明に関する要約 |
(2)手続言語
インドネシア語
条文等根拠:特許法第24条(上記)
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
可(ただしインドネシア出願日から30日以内に明細書のインドネシア語の翻訳文の提出が必要)
条文等根拠:特許法第34条
インドネシア特許法 第34条 (1)最小要件を満たした出願は出願日を付与され大臣により記録される。 (2)(1)項における最小要件とは: (a)第25条(1)項に規定する出願データ; (b)第25条(2)項(a)号から(e)号にいう出願データ;および (c)出願手数料納付の証明 (3)第25条(2)項(b)号にいう発明に関する明細書が外国語で記載されている場合、インドネシア語に翻訳された明細書を伴うことを義務付けられ、(1)項の出願日から30日以内に提出されなければならない。 (4)発明に関する外国語の明細書にインドネシア語の翻訳が(3)項の期間内に提出されない場合には、当該出願は取下げられたものとみなされる。 |
(4)優先権主張手続
特許出願が優先権の主張を伴ってなされるという申立は出願時もしくは出願後4か月以内にしなければならない。また、優先権証明書については優先日から起算して16か月以内に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第30条、特許規則第42条~第44条
インドネシア特許法 第30条 (1)優先権を伴う出願は、優先日から起算して12か月以内に提出されなければならない。 (2)第25条に規定の要件に加え、(1)項における優先権を伴う出願には、その国の権限ある公務員により認証された優先権証明書を添付しなければならない。 (3)(2)項にいう該当国の権限ある公務員により認証された優先権証明書は、優先日から起算して16か月以内に大臣に提出されなければならない。 (4)(1)項、(2)項および(3)項の要件が出願人により満たされない場合には、出願は優先権を利用しない出願とみなされる。 |
インドネシア特許規則 第42条 認証謄本 (1)特許出願が優先権を伴ってなされる場合は、第4条にいう規定の遵守の他に、特許出願には、他の国で最初に提出された特許を取得するための願書の謄本を付さなければならない。 (2)(1)にいう願書の謄本とは、最初に特許出願を受理した国の権限ある当局により認証された謄本をいう。 |
インドネシア特許規則 第43条 認証謄本の提出不可 (1)第42条(2)にいう認証謄本が、特許法第29条(2)に定める期間内に提出され得ない場合は、特許出願は、当該謄本に対する認証の請求の証拠書類を付して、最初の特許出願についての願書の謄本の証拠書類を提出することにより行うことができる。 (2)(1)にいう完備された書類の提出は、特許法第29条(2)の規定の遵守とみなされるものとする。 |
インドネシア特許規則 第44条 要件 (1)第5条にいう要件の具備の他に、特許を取得するための願書は、次に掲げる事項も含むものとする。 (a)当該特許出願は、優先権の主張を伴ってなされるという申立 (b)当該優先権を伴う出願の基礎となる他の国における最初の特許出願の出願日 (c)当該特許出願がなされたインドネシア以外の国名 (2)(1)にいう申立は、特許局による特許出願についての願書の受理の日以後遅くとも4月以内にそのことが行われるという条件で、別個にすることもできる。 |
日本とインドネシアにおける特許出願書類・手続の比較
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日本 |
インドネシア |
出願書類 |
所定の様式により作成した以下の 書面を提出する。 ・願書 ・明細書 ・特許請求の範囲 ・必要な図面 ・要約書 |
特許法および特許規則に規定された以下の書面を提出する。 ・願書 ・明細書 ・特許請求の範囲 ・必要な図面 ・要約書 ・委任状 |
手続言語 |
日本語 |
インドネシア語 |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 |
・可(英語その他の外国語)。 ・その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 ・翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。 |
・可 ・出願日から30日以内に明細書の インドネシア語の翻訳文の提出が必要である。 |
優先権主張手続 |
・優先権主張の基礎となる出願国名と出願の年月日を記載した書面及び優先権証明書は、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 ・優先権証明書の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に提出が可能である。 ・日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっているが、本稿作成時点ではインドネシアとの間では実施されていない。 |
・優先権主張は出願時または、出願後4か月以内に可能。 ・優先権証明書を優先日から16か月以内に提出しなければならない。 |
日本とシンガポールにおける特許出願書類・手続の比較
1.日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。特許出願日の認定を受けるためには、特許法第38条の2第1項に規定する3つの要件を満たす必要がある。3つの要件を満たしていない場合、出願人に対してその旨の通知がされ、出願人は補完手続を行うことが可能であるが、手続補完書を提出した日が特許出願の日として認定されることに留意が必要である。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条、第38条の2
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所
二 発明者の氏名および住所または居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第29条第1項第3号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第2項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第2項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第2項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
日本特許法 第38条の2 特許出願の日の認定
特許庁長官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特許出願に係る願書を提出した日を特許出願の日として認定しなければならない。
一 特許を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。
二 特許出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が特許出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
三 明細書(外国語書面出願にあっては、明細書に記載すべきものとされる事項を第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語で記載した書面。以下この条において同じ。)が添付されていないとき(次条第1項に規定する方法により特許出願をするときを除く。)。
2 特許庁長官は、特許出願が前項各号のいずれかに該当するときは、特許を受けようとする者に対し、特許出願について補完をすることができる旨を通知しなければならない。
3 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、その補完をすることができる。
4 前項の規定により補完をするには、経済産業省令で定めるところにより、手続の補完に係る書面(以下「手続補完書」という。)を提出しなければならない。ただし、同項の規定により明細書について補完をする場合には、手続補完書の提出と同時に明細書を提出しなければならない。
5 第3項の規定により明細書について補完をする場合には、手続補完書の提出と同時に第36条第2項の必要な図面(外国語書面出願にあっては、必要な図面でこれに含まれる説明を第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語で記載したもの。以下この条において同じ。)を提出することができる。
6 第2項の規定による通知を受けた者が第3項に規定する期間内にその補完をしたときは、その特許出願は、手続補完書を提出した時にしたものとみなす。この場合において、特許庁長官は、手続補完書を提出した日を特許出願の日として認定するものとする。
7 第4項ただし書の規定により提出された明細書は願書に添付して提出したものと、第5項の規定により提出された図面は願書に添付して提出したものとみなす。
8 特許庁長官は、第2項の規定による通知を受けた者が第3項に規定する期間内にその補完をしないときは、その特許出願を却下することができる。
9 特許を受けようとする者が第2項の規定による通知を受ける前に、その通知を受けた場合に執るべき手続を執つたときは、経済産業省令で定める場合を除き、当該手続は、その通知を受けたことにより執った手続とみなす。
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語その他の外国語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。
条文等根拠:特許法第36条の2、第25条の7、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第2項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第3項から第6項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第7項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日(第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、同項に規定する先の出願の日、第43条第1項、第43条の2第一項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による優先権の主張を伴う特許出願にあっては、最初の出願若しくはパリ条約(1900年12月14日にブラッセルで、1911年6月2日にワシントンで、1925年11月6日にヘーグで、1934年6月2日にロンドンで、1958年10月31日にリスボンで及び1967年7月14日にストックホルムで改正された工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約をいう。以下同じ。)第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の日、第41条第1項、第43条第1項、第43条の2第1項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による2以上の優先権の主張を伴う特許出願にあっては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日。第64条第1項において同じ。)から1年4月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第44条第1項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第46条第1項若しくは第2項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から2月以内に限り、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 特許庁長官は、前項本文に規定する期間(同項ただし書の規定により外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を提出することができるときは、同項ただし書に規定する期間。以下この条において同じ。)内に同項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文の提出がなかったときは、外国語書面出願の出願人に対し、その旨を通知しなければならない。
4 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第2項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の第2項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、同項本文に規定する期間の経過の時に取り下げられたものとみなす。
6 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第4項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、第2項に規定する外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
7 第4項又は前項の規定により提出された翻訳文は、第2項本文に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
8 第2項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第2項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第2項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第2項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の7 翻訳文の様式等
4 特許法第36条の2第4項の経済産業省令で定める期間は、同条第3項の規定による通知の日から2月とする。
5 特許法第36条の2第6項の経済産業省令で定める期間は、同項に規定する正当な理由がなくなった日から2月とする。ただし、当該期間の末日が同条第4項に規定する期間の経過後1年を超えるときは、同項に規定する期間の経過後1年とする。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第36条の2第1項の経済産業省令で定める外国語は、英語その他の外国語とする。
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出し、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。優先権証明書の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に提出が可能である。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第4条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をし若しくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし又は同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名及び出願の年月日を記載した書面を経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、若しくはパリ条約第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、若しくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲及び図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する公報若しくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から1年4月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願若しくはパリ条約第4条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項、次条第1項(第43条の3第3項において準用する場合を含む。)又は第43条の3第1項若しくは第2項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第1項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願若しくはパリ条約第4条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願又は同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知つたときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第1項の規定による優先権の主張をした者が第2項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第2項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府又は工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第1項の規定による優先権の主張をした者が、第2項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前2項の規定の適用については、第2項に規定する書類を提出したものとみなす。
6 特許庁長官は、第2項に規定する期間内に同項に規定する書類又は前項に規定する書面の提出がなかったときは、第1項の規定による優先権の主張をした者に対し、その旨を通知しなければならない。
7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定める期間内に限り、第2項に規定する書類又は第5項に規定する書面を特許庁長官に提出することができる。
8 第6項の規定による通知を受けた者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内に第2項に規定する書類又は第5項に規定する書面を提出することができないときは、前項の規定にかかわらず、経済産業省令で定める期間内に、その書類又は書面を特許庁長官に提出することができる。
9 第7項又は前項の規定により第2項に規定する書類又は第5項に規定する書面の提出があったときは、第4項の規定は、適用しない。
特許法43条1項の「経済産業省令で定める期間」は、以下のとおりである。
優先日(優先権主張書面を提出することにより優先日について変更が生じる場合には、変更前の優先日又は変更後の優先日のいずれか早い日。次号において同じ。)から1年4月の期間が満了する日又はこれらの規定による優先権の主張を伴う特許出願の日から4月の期間が満了する日のいずれか遅い日までの間(出願審査の請求又は出願公開の請求があった後の期間を除く。)(特許法施行規則27条の4の2第3項1号の一部抜粋)。
特許法第43条7項の「経済産業省令で定める期間」は、以下のとおりである。
特許法第43条第6項(同法第43条の2第2項(同法第43条の3第3項において準用する場合を含む。)及び第43条の3第3項において準用する場合を含む。)の規定による通知の日から2月とする。(特許法施行規則27条の3の3第5項の一部抜粋)。
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/yusen/das/index.html
2.シンガポールにおける特許出願の出願書類(パリルート)
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約
・特許を受ける権利についての陳述書(様式8)を所定の期間内に提出
条文等根拠:特許法第25条(3)、第26条(1)、第24条(2)、特許規則第18条(1)、(1A)
シンガポール特許法第25条 出願手続
(3)各特許出願書類には、次のものを含めなければならないが、本項は、第26条(1)に従った書類による出願を妨げるものではない。
(a)特許付与を求める願書
(b)明細書、これに含まれる発明の説明、クレームおよび当該説明またはクレームにおいて言及される図面、ならびに
(c)要約
シンガポール特許法第26条 出願日
(1)本法の規定に従うことを条件として、特許出願の出願日は、出願を開始するために登録局に提出される書類が次の条件を満たす最初の日と解する。
(a)特許を求めていることが当該書類で示されていること
(b)当該書類で特許出願人が特定されること、ならびに
(c)当該書類に次のものが含まれていること
(i)当該特許出願を求める発明の説明となるか若しくは説明となると認められる事項、または
(ii)当該出願において若しくはそれに関連して第17条(2)に基づく宣言が行われている場合は、
(A)当該宣言で指定する先の関係出願の言及
(B)先の関係出願に関する所定の情報、および
(C)当該特許出願を求める発明の説明が、当該先の関係出願の引用により当該特許出願に組み入れられており、かつ、出願時での当該先の関係出願に完全に含まれている旨の陳述
「特許を受ける権利についての陳述書」は出願人と発明者が一致しない場合に提出する書類であって、出願人が、いかにして特許を受ける権利を有したかを示す陳述書であり、様式8により優先日から16か月以内に提出する必要がある。
シンガポール特許法第24条 発明者の明記
(2)特許出願人は,本項にいう情報を登録局に与えていない限り,所定の期間内に,
(a)発明者であると出願人が信じる者を特定し,かつ
(b)出願人が単独の発明者でなく又は複数出願人が共同発明者でない場合は,特許を付与されるべき権原を示す陳述書を登録局に提出しなければならず,
出願人がそれを怠るときは,当該出願は放棄されたものとして取り扱う。
シンガポール特許規則 第18条
(1)規則28並びに規則86(8)及び(8A)に従うことを条件として,第24条(2)適用上の所定の期間は,
(a)宣言された優先日が存在しない場合は,特許出願の出願日から16月,又は
(b)宣言された優先日が存在する場合は,当該宣言された優先日から16月,とする。
(1A)第24条(2)に基づいて提出する陳述書は,特許様式8によるものとする。
(2)手続言語
英語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
特許規則上は認められる。
翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。
条文等根拠:特許規則第19条(10)~(12)
シンガポール特許規則第19条 特許付与を求める出願
(10)(a)特許出願を開始するために登録局に提出された書類に、
(i)特許を求めている発明の説明である、もしくは説明であると認められる事項であって、
(ii)英語以外の言語によるものが含まれており、かつ
(b)出願人により当該事項の英語翻訳文が提出されていない場合は、
登録官は、当該事項の英語翻訳文が必要である旨を出願人に通知する。
(11)出願人は、(10)に基づいて通知を受けた場合は、当該通知の日付から2月以内に、当該事項の英語翻訳文を提出しなければならない。
(12)出願人が(11)に従わない場合は、登録官は、その特許出願を拒絶する。
(4)優先権主張手続
優先権主張を出願と同時に行う必要があるが、所定の場合には出願後に行うことができる(優先日から16か月以内)。優先権証明書は、特許庁より提出の要請があった場合には、要請の通知の日から2か月以内に提出する必要がある。
条文等根拠:特許法第17条、特許規則第9条、第9B条
シンガポール特許法第17条 優先日
(1)本法の適用上、特許出願に係わる発明の優先日および当該出願に含まれる何らかの事項(当該発明と同一であるか否かを問わない)の優先日は、本法の規定に定める場合を除き、当該出願の出願日とする。
(2)特許出願(本条において問題の出願という)においてまたはそれに関連して、出願人またはその前権利者が、規則の関連要件に従ってかつ当該出願人またはその前権利者により行われた1または2以上の先の関係出願を本条の適用上指定して宣言を行い、かつ、問題の出願が(2A)(a)または(b)にいう期間内に出願日を有する場合において、
(a)問題の出願の対象である発明が先の関係出願において開示された事項により裏付けられるときは、その発明の優先日は、問題の出願を行った日ではなく、当該事項が開示されていた関係出願の出願日とするか、または当該事項が2以上の関係出願で開示されていたときは、それらのうち最先の出願の出願日とし、
(b)問題の出願に含まれていて先の関係出願にも開示されていた事項の優先日は、当該事項が開示された先の関係出願の出願日とするか、または当該事項が2以上の関係出願で開示されていたときは、それらのうち最先の出願の出願日とする。
(2A)(2)の適用上、期間とは、
(a)指定された先の関係出願、もしくは関係出願が2以上あるときは、それらのうち最先のものの出願日直後12月の期間、または
(b)登録官が(2B)に基づく請求を認めた場合は、(a)にいう期間の直後に開始し、かつ、所定の期間の終了時に終了する期間、
をいう。
(2B)出願人は、登録官に対し、(2)にいう宣言を(2A)(a)にいう期間の経過後に行うことを請求することができる。
(2C)出願人が(2B)に基づく請求を行う場合において、問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったときは、問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったことが次の何れに該当するかを請求書中に示さなければならない。
(a)事情に応じて必要とされる当然の注意を払ったにも拘らず生じた。
(b)故意によるものではなかった。
(2D)登録官は、次の場合に、(2B)に基づく請求を認める。
(a)当該請求が所定の期間内に所定の方法で行われて、所定の要件を満たしており、かつ
(b)出願人が問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったときに、登録官が、出願人が問題の出願を(2A)(a)にいう期間内に行わなかったことが次の何れかに該当することを認めた場合
(i)事情に応じて必要とされる当然の注意を払ったにも拘らず生じた。
(ii)故意によるものではなかった。
シンガポール特許規則第9条 第17条(2)適用上の優先権の宣言
(1)(2)に従うことを条件として、特許出願(本条規則ならびに規則9Aおよび規則9Bにおいて「問題の出願」という)においてまたはこれと関連して行われる第17条(2)適用上の宣言は、問題の出願を行う時に行わなければならない。
(2)第17条(2)適用上の宣言は、次の場合は、出願日後に行うことができる。
(a)当該宣言を行うことにより、
(i)宣言された優先日を有さない問題の出願が優先日を有することになる場合、または
(ii)問題の出願の宣言された優先日がそれより前の日に繰り上げられることになる場合
(b)当該宣言を、
(i)(a)(i)が該当するときに、宣言された優先日から16月以内に行う場合、または
(ii)(a)(ii)が該当するときに、当該それより前の日から16月以内に行う場合
(c)当該宣言を特許様式57により行う場合
(d)所定の手数料を納付している場合、および
(e)(4)にいう条件を満たしている場合
シンガポール特許規則第9B条 第17条(2)に基づく宣言を裏付ける出願番号及び優先権書類の提出
(1)(3)に従うことを条件として,出願人は,宣言された優先日から16月の期間の終了前に,各優先出願の出願番号を登録局に提出しなければならない。
(2)(3)に従うことを条件として,出願人が優先出願に関して(1)に従わない場合は,第17条(2)適用上の宣言は,当該優先出願に関する限り無視される。
(3)当該出願が国際特許出願(シンガポール)である場合は,(1)及び(2)は,出願番号が特許協力条約に基づく規則の第4規則10(a)に従って表示されている優先出願に関しては適用されない。
(4)登録官が,出願人又は場合により所有者に送付する通知により,同人に対し,優先出願に関して,
(a)提出先の機関が認証している,又は
(b)それ以外で登録官が受理可能な,
優先出願の写しを登録局に提出するよう要求する場合は,出願人又は場合により所有者は,当該通知の日から2月以内に,
(i)登録官の要求に従うものとし,又は
(ii)当該優先出願の写しが登録局に保管されている場合は,登録官の要求に従う代わりに,(A)当該優先出願の写しが作成されるべき旨の請求書,及び
(B)作成された写しを認証するよう登録官に請求する様式CM12,
を提出しなければならない。
(5)出願人又は場合により所有者が優先出願に関して(4)に従わなかった場合は,第17条(2)適用上の宣言は,当該優先出願に関する限り,無視される。
日本とシンガポールにおける特許出願書類・手続の比較
|
日本 |
シンガポール |
出願書類 |
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。 ・願書 ・明細書 ・特許請求の範囲 ・必要な図面 ・要約書 |
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。 ・願書 ・明細書 ・特許請求の範囲 ・必要な図面 ・要約 ・特許を受ける権利についての陳述書(様式8)を所定の期間内に提出 |
手続言語 |
日本語 |
英語 |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 |
・可(英語その他の外国語)。 ・その特許出願の日から1年4か月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 ・翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。 |
・規則上は可能。 ・翻訳文の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に翻訳文の提出が可能である。 |
優先権主張手続 |
・優先権主張の基礎となる出願国名と出願の年月日を記載した書面及び優先権証明書は、最先の優先権主張日から1年4か月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 ・優先権証明書の提出がない場合には、出願人にその旨の通知が行われ、2か月以内に提出が可能である。 ・日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている |
・優先権主張は、原則、出願と同時に行う。所定の場合には出願後に行うことができる(優先日から16か月以内)。 ・優先権証明書は、特許庁より要請があった場合は、通知から2か月以内に提出しなければならない。 |
その他 |
(シンガポールにおける「特許を受ける権利についての陳述書」に相当する書類の提出は不要。) |
「特許を受ける権利についての陳述書」は出願人と発明者が一致しない場合に提出する書類であって、出願人が、いかにして特許を受ける権利を有したかを示す陳述書であり、様式8により優先日から16か月以内に提出する必要がある。 |
シンガポールにおける特許出願制度
シンガポールの特許制度は先願主義を採用している。また他の多くの国と同様、特許出願における優先権主張を認めている。パリ条約締約国または世界貿易機関(WTO)加盟国において先に出願されると、当該出願を後のシンガポール出願において優先権主張することができる。ただし当該シンガポール出願は、先行出願の出願日から12か月以内に出願されなければならない。
1.出願要件
出願に際しては、以下の情報を提出することが必要である。
1-1.特許明細書
・明細書、請求の範囲、要約および図面を含む、特許出願に関する英語で記載された明細
書
・明細書には、実施例と図面への参照を伴う、請求された発明を実施する少なくとも一つ
の方法が記載されなければならない
・発明の保護範囲を定める請求項は明細書によりサポートされなければならない
・図面は、明細書中または請求項中で言及されなければならない
・要約は、特許出願公開において記載される発明の要約である
出願日を確保するためには、特許出願の時点において請求項を提出することは要求されない。これは、一部の国において利用可能な仮出願の概念と同様のものである。しかしながら、特許出願を完了するためには、下記に示す所定期間内に請求項を提出しなければならず、これを怠ると、出願放棄となる。
(a)優先権主張されていない場合、当該出願の出願日から12か月;または
(b)優先権主張されている場合、以下のいずれか遅い方:
・主張された優先日から12か月
・出願日から2か月
1-2.優先権情報の詳細
優先権主張の基礎となる先行特許出願に関する以下の情報
(a)出願国
(b)出願日
(c)出願番号
1-3.出願人の詳細
(a)個人(自然人)である各出願人については以下の情報
・氏名
・住所
・居住する国
・国籍
(b)企業体(法人)である各出願人については以下の情報
・名称
・登記住所
・設立州(米国企業にのみ適用)
・設立国
1-4.発明者の詳細
各発明者についての以下の情報
・氏名
・住所
・永住権を有する国
・国籍
・発明者が発明の創造時のいずれかの時点でシンガポールに居住していたか否か
1-5.権利の由来
出願人が、各発明者から当該発明に対する権利をどのように得たかについての詳細
・雇用により
・譲渡により
・その他
1-6.その他
ブダペスト条約に基づく生物材料の寄託および国際展示会における先行開示が行われたか否かに関する情報の詳細
特許出願時に支払う超過請求項費用はなく、超過請求項費用は登録費用の支払い時点において25以上の請求項についてのみ納付することとなる。
2.出願日通知書および方式審査報告書の発行
2-1.出願日通知書
シンガポール知的財産局(Intellectual Property Office of Singapore : IPOS)が、下記に挙げる出願日付与に関する要件が満たされたと判断した場合、IPOSは、出願人に対して、出願日通知書を発行する。
(i)特許を求めていることが出願書類で示されていること
(ii)出願書類で特許出願人が特定されていること
(iii)明細書、優先権を主張する場合には優先権情報および優先権証明書が含まれていること
要件が満たされていないとIPOSが判断した場合、不備通知書が発行され、出願人は当該不備を回復するために2か月の期間が与えられ、これを怠ると当該出願は放棄されたものと見なされる。
2-2.方式審査報告書
方式審査において、IPOSは以下を判断する:
(i)優先権主張が、当該シンガポール出願の出願日前12か月以内である、先行する関連出願の出願日を特定しているか否か
(ii)図面または明細書の一部が出願から欠落しているか否か および
(iii)出願がすべての方式要件を満たしているか否か
すべての方式要件を満たしている場合、IPOSは方式審査通過報告書を発行する。
いずれかの方式要件が満たされないと、IPOSは、方式審査不備報告書を発行し、出願人は3か月間の応答期間を有し、これを怠ると当該出願は拒絶される。
3.出願公開
出願日が付与されると、優先権主張日または優先権主張がない場合は当該出願の出願日から18か月後に、特許公報において出願公開される。
4.調査および審査手続き
シンガポールにおいて、特許を取得するには4つの異なるルート(オプション)があり、それぞれ以下の通りである。
・オプション1:調査請求後の実体審査請求
・オプション2:調査および実体審査の同時請求
・オプション3:対応出願*1、対応国際出願または関連国内段階移行出願*2の最終調査
結果に基づく実体審査
・オプション4:対応出願、対応国際出願または関連国内段階移行出願の最終調査およ
び審査結果に基づく補充審査
なお、オプション4の補充審査は、2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願では、利用できなくなる(シンガポール特許法第29条(11A)、およびシンガポール特許規則43(4))。
*1 「対応出願」とは、米国、カナダ(英語での出願)、欧州特許庁(英語での出願)、英国、オーストラリア、ニュージーランド、日本または韓国における所定の特許庁に出願されたものを指す。進歩性について未審査のニュージーランド出願に依拠することは推奨されない。さらにシンガポール出願は当該外国出願と優先権関係を有し、当該外国出願について優先権を主張するか、当該外国出願が当該シンガポール出願について優先権を主張するか、両出願が別の出願について共通の優先権を主張しなければならない。
*2 シンガポール国内段階移行出願に関する「関連国内段階移行出願」とは、所定の特許庁のいずれかにおいて出願された国内段階移行出願を指し、シンガポール国内段階移行出願のPCT出願から派生するものである。
オプション1について、調査請求は、当該出願の優先日または出願日(優先日がない場合)から13か月以内に提出されなければならない。その後、実体審査請求は、同じ優先日または出願日(優先日がない場合)から36か月以内に提出されなければならない。
オプション2について、調査および実体審査請求を、優先日または出願日(優先日がない場合)から36か月以内に同時に提出されなければならない。
オプション3について、対応出願、対応国際出願または関連の国内段階移行出願のいずれかの最終調査結果に基づく実体審査請求は、優先日または出願日(優先日がない場合)から36か月以内に提出されなければならない。本請求に必要な書類には以下が含まれる。
・国際調査報告書(International Search Report:ISR)または所定特許庁の1つに
おいて出願された特許出願に関する最終調査報告書の写しおよび、
その証明付の英語訳(必要な場合)、およびISRまたは最終調査報告書で引用された
先行技術文献それぞれの写し
・これらにおいて引用された非英語文献のそれぞれに対応する特許ファミリーに対する
参照リスト
オプション4について、対応出願、対応国際出願または関連国内段階移行出願のいずれかの最終調査および審査結果に基づく補充審査の請求は、優先日または出願日(優先日がない場合)から54か月以内に提出されなければならない。本請求に必要な書類には以下が含まれる。
(i)対応する外国の特許付与証の謄本または、その結果において登録可能と言及された請求項を含む最終調査および審査結果、ならびにその証明付き英語訳(必要な場合)および
(ii)シンガポール出願の各請求項が、対応出願の登録可能請求項とどのように関連*3しているかを示す表
*3 以下の場合、請求項は、他の請求項に関連するものと見なされる
(i)2つの請求項が同一である または
(ii)後の出願の請求項における各限定が、先の出願における限定と同一である、または表現のみが異なり、内容が同一である
実体審査に際して、新規性、進歩性、産業上の利用可能性、および、または単一性に関して拒絶理由を有する場合、審査官は見解書(Written Opinion)を発行し、出願人に対して5か月の応答期間(延長不可)を与える。見解書に対する応答は、審査官の見解に対する書面応答、明細書の補正またはその両方の形態を取ることができる。
補充審査の場合において、請求項のサポート、追加事項、および、または二重特許等に関する拒絶理由を有する場合、各拒絶理由を詳述する見解書が発行される。見解書に対する応答は、見解書の発行から3か月以内に提出されなければならない。見解書に対する応答は、審査官の見解に対する書面応答、明細書の補正またはその両方の形態を取ることができる。なお補充審査において審査官は、新規性、進歩性および産業上の利用可能性について検討を行わない。
5.審査の終結:特許付与適格または拒絶意思
5-1.特許付与適格通知(Notice of Eligibility to Proceed to Grant)
実体審査また補充審査が完了すると、審査官は、審査報告書または補充審査報告書を、適格通知または拒絶意思通知とともに発行する。
審査報告書が肯定的な結果である場合、IPOSは、特許付与適格通知書を発行する。その後、出願人は、該通知の発行から2か月以内に登録費用を支払うことが要求される。
5-2.拒絶意思通知(Notice of Intention to Refuse)
審査報告書が否定的な結果である場合、IPOSは、当該出願の拒絶意思通知書を発行する。その後出願人は、当該通知の発行日から2か月以内に審査レビューを請求する、もしくは、さらなる措置を講じないことにより出願の拒絶を受け入れるオプションを有する。
6.審査レビュー(再審査)
出願人は、拒絶意思通知の日から2か月以内に審査レビューを請求することができる。出願人はこの請求を行う際に、意見書と(必要に応じて)補正書を提出しなければならない。
上記と同様に、審査レビュー報告書が肯定的な結果である場合、IPOSは、特許付与適格通知書を発行し、出願人は、当該通知の発行から2か月以内に登録費用を支払うことが要求される。
拒絶意思通知において提起された拒絶事項が解消されないため、審査レビュー報告書が否定的な結果である場合、IPOSは拒絶通知を発行し、これは通知の日から2か月後に効力を生じる。この2か月間、当該出願は依然として係属中であり、出願人は分割出願を行う機会を有する。拒絶通知の発行は、当該シンガポール出願の審査手続きの終了を意味する。
7.付与証明書
特許が付与されると、特許の権利期間は年金費用の納付を条件として、出願日から20年間である。
特許を維持するためには、出願日から4年度目の終了から始まり特許が失効するまでの間、出願人は毎年維持年金を納付する必要がある。維持年金は、出願日相当日の前3か月以内に納付することができる。
出願日から45か月以降に特許が付与された場合、すべての年金は、特許付与の日から3か月以内に支払うことができる。
以下のフローチャートに、シンガポールの特許審査手続きの概要を示す。
特許審査手続きフローチャート
シンガポールに国内移行した国際出願
国際出願におけるシンガポール国内段階への移行期限は、最先の優先権主張日から30か月、または優先権主張されていない場合は国際出願日から30か月である。
国際出願が英語以外の言語で出願・公開された場合、当該国際出願の英語訳を優先日から30か月以内に提出しなければならない。また、優先日から32か月までに翻訳文の確認証明書を提出する必要がある。
シンガポール国内段階に移行した国際出願に関する調査および審査手続は、優先権を主張したパリルートでの出願および優先権を主張しない出願と同一である。
台湾における商標関連手続に必要な書類
【詳細】
台湾特許庁(台湾智慧財產局)における商標の手続きは、出願、取り下げ、補完、変更出願、登録延長、商標権異動、争議処理等に分けることができ、商標出願人又は商標権者は、それぞれの手続において関連法律条文により定められた書類を提出しなければならない。例えば、各種商標の出願時には商標登録願を、当該商標を分割したい場合には分割願を提出しなければならない。以下では、商標出願人又は商標権者の各手続きにおける必要書類についてそれぞれ紹介し、関連法律条項を注記する。
(1) 出願時に必要な書類
商標法の出願客体には商標、団体商標、証明標章及び団体標章の4つのタイプがあり、いずれも文字、図形、記号、色彩、立体形状、動態、ホログラム、音声等又は前記を組み合わせたものを出願対象にできる。更に、商標法には出願対象について制限がないため、「におい」(中国語「氣味商標」)に至っても出願対象とすることができる(現時点では、商標登録審査を受けているものはあるが、登録された実例はない)他、各種形態を組み合わせることもできる(商標法第2条、第18条、第80条、第85条、第88条、第94条)。
このように出願の形態が多岐にわたるため、願書の書式は特に統一したものを求められることはないが、比較的よく見られる商標、団体商標、証明標章及び団体標章の出願時に必要な書類は以下の通りである。
・登録願
〇商標登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第12条)
〇色彩商標(中国語「顏色商標」)登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第14条)
〇立体商標登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第15条)
〇音声商標(中国語「聲音商標」)登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第18条)
〇全体図(Hologram marks)商標登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第17条)
〇動態(Motion marks)商標登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第16条)
〇その他商標登録願(商標法第18条第1項、商標法施行細則第12条)
〇団体商標登録願、色彩団体商標登録願、立体団体商標登録願、音声団体商標登録願、全体図団体商標登録願(※)、動態団体商標登録願(※)
(商標法第18条第1項、第88条、第94条、商標法施行細則第12条、第14至18条、第48条)、
〇証明標章登録願、色彩証明標章登録願、立体証明標章登録願、音声証明標章登録願、全体図証明標章登録願(※)、動態証明標章登録願(※)
(商標法第18条第1項、第80条、第94条、商標法施行細則第12条、第14至18条、第48条)
・委任状(商標法第6条、商標法施行細則第5条)
(2) 出願から公告に至るまでに必要な書類
(i) 出願取下時
出願取下願(商標法施行細則第6条)
(ii) 変更時
(a) 出願人及び代理人の基本資料の変更時
登録前における変更願(商標法第24条、商標法施行細則第24条)
(b) 登録前における図の変更又は商品・役務の減縮変更時(商標法第23条但書による変更を指し、当該商標の指定商品・役務の減縮、又は商標の図に実質上変更をきたさない変更に限られる*。)
登録前における図の変更又は商品・役務の減縮変更願(※)(商標法第23条、商標法施行細則第24条)
*:具体例としては以下の状況が挙げられる。
・識別性を有さないおそれがある箇所や公衆が商品又は役務の性質、品質又は産地を誤認・誤信するおそれがある箇所の削除。
・商品の重量又は成分標示、代理業者又は小売業者の電話番号、住所又はその他単なる情報に係る事項の削除。
・国際的に通用する商標又は登録番号の削除。
・商標に属さない部分を点線に変更する。
(c) 登録前における図の変更または商品・役務の減縮時(商標法第25条による変更を指す**)
登録前における図の変更又は商品・役務の減縮願(※)(商標法第25条、商標法施行細則第26条)
**:商標の同一性に影響せず、又は指定商品・役務の範囲を拡大しないことを前提とした、出願人の名称又は住所の誤り、文字・用語若しくは記入事項の誤り等について「訂正」を申請することができる。
(iii) 登録前における分割時
登録前における分割願(商標法第26条、商標法施行細則第27条)
(iv) 登録更新(中国語「延展」)時
登録更新願の書式(商標法第34条、商標法施行細則第35条第1項)
(v) 書類の補完時
出願書類補完願(実務において、各種商標、証明標章、団体商標、団体標章出願案、登録前における変更、出願案の分割、出願案の取り下げ願等の提出時に書類を補完するために使用)
(3) 公告後に必要な書類
(i) 商標権の分割時
分割願(商標法第37条、商標法施行細則第36条)
(商標権の分割とは、登録商標の指定商品・役務を分割するものであり、商標の図の構成部分を分割するものではない(商標法第37条)。団体商標、証明標章は、その性質上、指定商品・役務に関係するため分割申請ができるが、団体標章は商品・役務に関係しないので、分割申請することはできない)。
(ii) 商標権の異動時
・登録変更願(商標法第38条第2項、商標法施行細則第37条)
・登記移転願(商標法第42条、商標法施行細則第39条)
・登録商品・役務減縮願(商標法第38条第1項、商標法施行細則第37条)
・権利許諾登記願(商標法第39条第2項及び商標法施行細則第38条)
・権利許諾登記の廃止願(商標法第41条及び商標法施行細則第38条)
・権利再許諾登記願(商標法第40条第3項及び商標法施行細則第38条)
・権利再許諾登記の廃止願(商標法第41条及び商標法施行細則第38条)
・質権設定登記願(商標法第44条及び商標法施行細則第40条)
・質権消滅登記願(商標法第44条及び商標法施行細則第40条)
・商標権放棄願(商標法第45条)
(iii) 争議関連
(a) 審判等請求時
・異議申立(中国語「異議」)の請求書(商標法第48条、第49条)
・無効審判(中国語「評定」)の請求書(商標法第57条、第62条)
・取消審判(中国語「廃止」)の請求書(商標法第63条、第67条)
(b) 取下げ時
異議申立、無効審判及び取消審判請求の取下げ願(※)(商標法第53条、第62条、第67条)
(c) 異議申立、無効審判及び取消審判請求手続きにおける公聴
公聴願、(利害関係者)公聴出席願、一般民衆公聴出席願(行政手続法【中国語「行政程序法」】第107条)
(v) その他
・登録証の再発行(中国語「補発」)又は更新(中国語「換発」)願(商標法施行細則第41条)。
・商標併存同意書(商標法第30条第10号但書)
・中国語・英語による証明書の発行願
(※)台湾特許庁の申請書ダウンロードリストの中に含まれていない書類。
【留意事項】
(1) 台湾特許庁が提供するダウンロード式の申請書書式は、商標法及び商標法施行細則の改正または関連規定の改定によって、申請書の細部事項が更新された。このため、使用時には、当該申請書書式にアクセスして、最新版の書式をダウンロードすることが望ましい。
(2) 商標法又は商標法施行細則に記載のある申請書中、一部の申請書については、台湾特許庁の申請書ダウンロードリストの中に含まれていない(「※」マークにて表示)。
ダウンロードリストに含まれていない申請書については、特に形式上の制約はなく、申請事項を明確に表現することができる書式であればよい。また、台湾特許庁が提供する書式についても、必ずしも当該書式で申請しなければならないというわけではない。
中国における追加手数料に関する運用
・追加手数料は、出願時に提出した明細書(図面、序列表も含む)の頁数が30頁、請求項の数が10項を超えた場合に納付しなければならない。当該費用の金額は、頁数または請求項の数によって計算する(審査指南第5部分第2章1(1))。
・追加手数料は、中国特許庁(中国語「国家知识产权局」)が制定した料金基準に従う。具体的には、
(1) 請求項の数が10項を超えた場合、第11項から、1項毎に官庁手数料CNY150が加算される。
(2) 明細書の頁数が30頁を超えた場合、明細書第31頁以降、1頁毎に官庁手数料CNY50が加算される。
(3) 明細書の頁数が300頁を超えた場合、明細書第301頁以降、1頁毎に官庁手数料CNY100が加算される。
・出願時に提出した明細書と請求項がそれぞれ規定された頁数、項数を超えず、その後の補正により、請求項または明細書がそれぞれの規定された数を超えた場合、追加手数料は発生しないというのが、実務上の運用である。
・所定の期限(出願費の納付期限は出願日から起算して2カ月以内、又は受理通知書を受け取った日から起算して15日以内)に上記の追加手数料、公開印刷費も含めた出願費を納付しなければならない。所定の期限までに納付しない場合や、全額を納付していない場合には、当該出願は取下げられたものとみなされる(審査指南第5部分第2章1(1))。
【留意事項】
(1) 明細書の頁数は、図面及び序列表を含む、全体の頁数に基づいて計算する点に注意を要する(審査指南第5部分第2章1)。
(2) パリ優先出願の場合、出願原稿にマルチマルチの従属クレームがある(複数クレームを引用する多項従属クレームが、他の複数クレームを引用する多項従属クレームを引用する)場合、追加手数料の発生を避けるには、中国出願時に補正するのではなく、いったん出願してから自発補正または拒絶理由通知応答時に補正することも一案である。
(3) PCT出願の場合、追加手数料は、PCTの国際公開公報における請求項の数に基づいて計算する。そのため、中国移行時に請求項の数を減らしても、追加手数料の発生を回避することはできない点に留意すべきである。
ブラジルにおけるパリルート出願とPCTルート出願の手続きの相違点
【詳細】
1.パリルート出願
パリ条約加盟国として、ブラジルは特許出願に関する優先権の原則を採用している。最初の出願の中で全体として開示されている主題については優先権を主張することができ、基礎となる最初の出願とブラジル出願とのクレームの同一性は求められない。つまり、クレームする主題が基礎出願の明細書や図面にサポートされていれば、ブラジル出願のクレームは基礎出願のクレームと必ずしも同じである必要はない。さらに、基礎出願の主題に含まれていない新たな主題をブラジル出願に加えることも可能である。その場合、基礎出願に開示されていた主題にのみ優先権が適用される。パリ条約は、種別の異なる出願に基づく優先権の主張を可能としている。ブラジルでは発明特許と実用新案の2つの制度があり、第1国でなされた発明特許出願をブラジルにおける実用新案出願の基礎とすることも可能であり、その逆も可能である。
1-1.パリルート出願の手続き
パリルート出願としてブラジルで特許出願を行うために必要な書類は、出願時点では、原語で書かれた明細書と、ポルトガル語で作成されたクレームを提出すればよい。その他、出願人ならびに発明者に関する情報(氏名、住所、職業、国籍)と、優先権主張の基礎となる出願(以下、基礎出願)のクレームを提出する必要がある。
その後、明細書のポルトガル語訳文ならびに優先権証明書を提出する必要がある。基礎出願の出願人とは異なる個人もしくは企業がブラジル出願を行う場合、基礎出願に関してブラジルにて出願を行う権利の譲渡に合意して当事者双方が署名した譲渡証書を提出しなければならない。
出願人がブラジルに居住していない場合、ブラジル産業財産法(1996年5月14日施行 法令9279号、以下、ブラジルIP法)の第217条の規定により、行政手続のためにブラジル国内の代理人を指名する必要があり、ブラジル知財庁(国家産業財産庁INPI)に対する手続の代理人としての権限を指定の弁護士に与える旨の委任状を出願人が署名して提出しなければならない。委任状についての公証人による認証や領事認証は不要である。
これらの書類の提出期限としては、明細書の翻訳文はブラジル出願日から60日以内に提出することが望ましい。提出されない場合、ブラジル知財庁が発行する補完指令により翻訳文の提出が求められる。その場合、補完指令が公告されてから30日以内に翻訳文を提出しなければならない。期限までに提出しなかった場合、出願はなかったものとみなされる。
優先権証明書および譲渡証書(必要な場合)は、ブラジルでの出願日から180日以内に提出しなければならない。期限までに提出しなかった場合、優先権は失われる。
委任状はブラジルでの出願日から60日以内に提出されなければならない。期限までに提出しなかった場合、出願は却下とされる(ブラジルIP法第216条(2))。
パリルート出願としてブラジルで特許出願がなされると、まず、方式審査が行われる。出願書類に対する方式的要件がすべて満たされることが確認されれば、方式審査は終了する。実体審査は、実体審査の請求を待って行われる。実体審査の請求はブラジル出願日から3年以内に実施しなければならない。
2.PCTルート出願
ブラジルは1978年4月9日付で特許協力条約(PCT)に加盟し、今日ではブラジル国内での特許出願の大半がPCTルートで行われている。
ブラジルの国内段階への移行期限は、最先の基礎出願の出願日または国際出願日(優先権の主張がない場合)から30か月であり、この期限の延長は認められない。国内段階への移行の際には、特許出願として移行することも、実用新案出願として移行することも、出願人が選択できる。PCT出願についての優先権主張の基礎となる出願は、特許であっても実用新案であっても可能である。なお、パリルート出願とは異なり、ブラジル国内段階への移行手続書面には、国際出願当初の開示の範囲を超える新規事項を追加してはならない。
2-1.PCTルート出願の手続き
ブラジル国内段階に移行するために必要な書類としては、国内段階移行時点では、原語で書かれた国際出願明細書と、ポルトガル語による発明の目的を表明する書面を提出すればよい(発明の目的は発明の名称という形で表明してもよい)。その他、出願人ならびに発明者に関する情報(氏名、住所、職業、国籍)と、基礎出願のクレームを提出する必要がある。ブラジル国内段階移行日から60日以内に、明細書のポルトガル語訳文ならびに優先権証明書を提出する必要がある。基礎出願の出願人とは異なる個人もしくは企業がブラジルで出願する場合、基礎出願に関してブラジルにて出願を行う権利の譲渡に合意して当事者双方が署名した譲渡証書を提出しなければならない。
出願人がブラジルに居住していない場合、ブラジルIP法第217条の規定により、行政手続のためにブラジル国内の代理人を指名する必要があり、ブラジル知財庁(国家産業財産庁)に対する手続の代理人としての権限を指定の弁護士に与える旨の委任状を出願人が署名して提出することが求められる。公証人による認証や領事認証は不要である。
優先権証明書および譲渡証書(必要な場合)は、ブラジル国内段階移行日から60日以内に提出しなければならない。提出しなかった場合、優先権が失われる。
委任状はブラジル国内段階移行日から60日以内に提出しなければならない。提出しなかった場合、出願は却下とされる。
PCTルート出願としてブラジルで特許出願がなされると、まず、方式審査が行われる。出願書類に対する方式的要件がすべて満たされることが確認されれば、方式審査は終了する。実体審査の請求は国際出願日から3年以内に実施しなければならない。
【留意事項】
ブラジルにおいて、パリルート出願およびPCTルート出願の国内段階移行のいずれにおいても、原語で書かれた明細書で手続き可能であるが、所定期間内にポルトガル語の翻訳文を提出することが求められる。
PCTルート出願の国内段階移行では、国際出願当初の開示の範囲を超える新規事項を追加してはならない。
インドにおける遺伝資源の利用と特許制度
「各国における遺伝資源の利用と特許制度に関する調査研究報告書」(平成28年2月、日本国際知的財産保護協会)第Ⅰ部11.
(目次)
第Ⅰ部 各国・地域の名古屋議定書の実施状況
11. インド P.123
第Ⅲ部 概括表
概括表 各国における名古屋議定書の実施状況 P.201, 203, 205
ベトナムにおける遺伝資源の利用と特許制度
「各国における遺伝資源の利用と特許制度に関する調査研究報告書」(平成28年2月、日本国際知的財産保護協会)第Ⅰ部12.
(目次)
第Ⅰ部 各国・地域の名古屋議定書の実施状況
12. ベトナム P.138
第Ⅲ部 概括表
概括表 各国における名古屋議定書の実施状況 P.201, 203, 205
インドネシアにおける遺伝資源の利用と特許制度
「各国における遺伝資源の利用と特許制度に関する調査研究報告書」(平成28年2月、日本国際知的財産保護協会)第Ⅰ部13.
(目次)
第Ⅰ部 各国・地域の名古屋議定書の実施状況
13. インドネシア P.150
第Ⅲ部 概括表
概括表 各国における名古屋議定書の実施状況 P.201, 203, 205