中国における特許を受ける権利を有する者の権利保護
特許を受ける権利を有する者の適切な権利の保護の在り方に関する調査研究報告書(2010年3月、日本国際知的財産保護協会)第3章VI-4
(目次)
第3章 諸外国の制度
VI. その他
VI-4.中国 p.135
シンガポールにおける職務発明・職務創作制度
【詳細】
ASEAN各国における職務発明制度等に関する調査(2013年4月、日本貿易振興機構バンコク事務所知的財産部)第2調査結果 8
(目次)
第2 調査結果
8. シンガポール p.8
(1) 発明 p.8
(2) 創作 p.9
(3) 小発明 p.9
我が国、諸外国における職務発明に関する調査研究報告書(2013年3月、知的財産研究所)II.5(2)(x iv)
(目次)
II.各国の従業者発明制度(職務発明制度)の状況
5.その他の国における従業者発明制度(職務発明制度)の状況
(2)従業者発明(職務発明)の各国における法制度の状況等
(x iv)シンガポール(特許法第49、50条) p.86
シンガポールにおける未登録知的財産権の保護
【詳細】
ASEANにおける特許権、意匠権、商標権などの産業財産権登録に拠らない発明、意匠、商標の保護に関する調査(2013年4月、日本貿易振興機構バンコク事務所知的財産部)第9章
(目次)
第9章 シンガポール p.80
1. 調査結果の概要 p.80
2. 無断使用行為に対する民事上及びその他の救済手段 p.81
(1) 発明等の技術思想の保護(営業秘密としてのノウハウの保護) p.81
(2) 周知・著名の意匠及び商標の保護 p.82
(3) 不法行為法による保護 p.84
(4) 刑事法による保護 p.85
(5) 注目すべき裁判例 p.85
3. 冒認登録された第三者の権利の無効及び取消の可否 p.86
(1) 冒認特許の無効/取消 p.86
(2) 冒認登録意匠の無効/取消 p.89
(3) 冒認商標の無効/取消 p.90
4. 冒認知的財産権を根拠とする第三者による権利行使に対する防御の可否 p.95
(1) 先使用権の抗弁 p.95
(2) 外国公知技術・意匠の抗弁 p.97
(3) 外国における周知/著名の抗弁 p.98
(4) 善意、権利濫用その他の抗弁 p.99
(5) 補論:根拠のない侵害手続の脅迫に対する救済 p.100
(中国)意匠の職務発明の認定について
【詳細】
高級人民法院は、職務発明について、「事業体の任務の実行又は主に事業体の物資・技術条件を利用して完成した発明創造」や「退職、休職又は職務変更後一年以内に創作し、元事業体の職務又は任務に関係する発明創造」は職務発明の創造に該当するとし、ここでいう事業体の物資・技術条件は、「事業体の資金、設備、部品、原材料又は外部に公開されていない技術資料などを指す」と、専利法実施細則の規定を確認した。
その上で、本件意匠は離職後2ヶ月以内に出願したものであることや、創作者が生産の職責を負う工場長で、製品部品の図面について修正し、最終的決定を下し、工場の技術力を監督する責務を負っていたこと、工場長として工場の図面等の技術資料を調査確認し、事業に関係する図面や資料、物質施設等を利用していた事実を認定し、問題の意匠が会社の生産経営活動に密接関連するものであったため、職務発明の具体的な時期、職責、関連などの相関要素と符合するとして、職務発明に該当するとした。
参考(広東省高級人民法院民事判決2006年12月15日付(2006)粤高法民三终字第139号より抜粋):
根据《中华人民共和国专利法》及其实施细则的有关规定,执行本单位的任务或者主要是利用本单位的物质技术条件所完成的发明创造为职务发明创造;退职、退休或者调动工作后一年内作出的,与其在原单位承担的本职工作或者原单位分配的任务有关的发明创造属于执行本单位的任务所完成的职务发明创造。本单位的物质技术条件,是指本单位的资金、设备、零部件、原材料或者不对外公开的技术资料等。职务发明创造申请专利的权利属于该单位,申请被批准后,该单位为专利权人。本案黄潮平的涉案专利是其在离开丽维丝公司后两个多月内申请的,黄潮平是丽维丝公司的负责生产的厂长,并对丽维丝公司工厂生产的储物架产品部件的图纸负有修改、拍板的职责,对工厂的技术有把关的义务。储物架产品是丽维丝公司经营的主要产品,作为厂长,黄潮平有了解、接触工厂的图纸等技术资料,利用单位有关的图纸、资料等物质条件等的便利条件。黄潮平在离任丽维丝公司后作出的“橱柜内置物架(一)”外观设计专利是与丽维丝公司的生产经营活动密切相关的发明创造,符合职务发明创造所具备的时间、职责、关联等相关因素,现黄潮平没有证据证明其在进厂前与丽维丝公司就有关发明创造与丽维丝公司另有合同约定,或黄潮平在任职丽维丝公司之前已经完成了涉案发明创造成果,由此可以认定本案的ZL200430059532.X号外观设计专利应属职务发明创造,专利权应属丽维丝公司所有。在单位担任有关技术工作时间的长短不是职务发明创造归属的决定性因素,本身是否专职的技术、设计人员也不是职务发明创造归属的唯一主体因素。本案中,虽然黄潮平只在丽维丝公司任职半年多,但黄潮平担任的是厂长职务,有负责工厂储物架产品技术图纸把关的职责,只要黄潮平的涉案发明创造符合职务发明创造的法定条件,仍然可以认定本案专利权的归属。黄潮平认为原审认定涉案专利是个人发明创造的上诉理由依据不足,本院不予采纳。
(参考訳)
《中華人民共和国専利法》及び実施細則の関連規定によれば、事業体の任務の実行又は主に事業体の物資・技術条件を利用して完成した発明創造は職務発明である。退職、休職又は職務変更後一年以内に創作し、元事業体の職務又は任務に関係する発明創造は事業体の任務を実行して完成した職務発明の創造に該当する。事業体の物資・技術条件というのは、事業体の資金、設備、部品、原材料又は外部に公開されていない技術資料などを指す。職務発明創造の専利出願の権利は事業体に帰属し、出願が認められた後は、同事業体が権利者になる。本件黄潮平の意匠は丽维丝公司離職後2ヶ月以内に出願したものであり、黄潮平は丽维丝公司の生産の職責を負う工場長で、丽维丝公司のストレージラック製品の部品の図面について修正し、最終的決定を下し、工場の技術力を監督する責務を負っていた。ストレージラックは丽维丝公司の経営上主要な製品であり、工場長として黄潮平は工場の図面等の技術資料を調査確認し、事業に関係する図面や資料、物質施設等を利用した。黄潮平が丽维丝公司離職後に創作した食器棚用の棚(1)の意匠権は、丽维丝公司の生産経営活動に密接関連する発明創造であり、職務発明の具体的な時期、職責、関連などの相関要素と符合する。黄潮平は、工場に赴任する前に丽维丝公司と関連発明創造について別途契約しているとか、丽维丝公司の勤務前に本件発明創造を既に完成していたことを証明する証拠を持っていないから、本件ZL200430059532X号の意匠は職務発明創造に該当し、意匠権は丽维丝公司が所有すると認定することができる。事業体において関連技術職務を担当する時間の長短は、職務発明の帰属を決定する要素ではなく、それ自体が専門職の技術であるか設計人員かについても職務発明創造の帰属の唯一の主体的要素ではない。本案では黄潮平は丽维丝公司に半年超だけ勤務したが、黄潮平が担当したのは工場長任務であり、工場のストレージラック製品技術図面管理の責任を負う職責を有し、黄潮平の本案発明創造が職務発明の法的要件を具備してさえすれば、本案専利権の帰属を認定することができる。原審は本件意匠を個人発明創造と認定すべきだったとする黄潮平の上訴理由は根拠が不足しており、当裁判所は支持しない。
【留意事項】
中国の職務発明は、主に専利法第6条と専利法実施細則第12条で規定されている。専利法第6条は「当該部門の職務を遂行して、又は主に当該部門の物質・技術条件を利用して完成した発明創造は職務発明創造とする」と定め、「職務発明創造の専利出願の権利は当該部門に帰属し、出願が認可された場合は当該部門を専利権者とする」としている。一方、専利法実施細則第12条は、職務発明として1) 本来の職務の中で行った発明創造、2) 所属機関から与えられた本来の職務以外の任務の履行によって行われた発明創造、3) 定年退職、元の所属機関から転職した後又は労働や人事関係終止後の1年以内に行った、元の所属機関で担当していた本来の職務又は元の所属機関から与えられた任務と関係のある発明創造の3態様を定め、専利法第6条の物質・技術条件を「所属機関の資金、設備、部品、原材料、又は一般的に開示されていない技術資料などを指す」とする。
本案では、意匠創作者が離職後2ヶ月以内に出願していたことや、創作者が生産の職責を負う工場長の立場であり、会社の施設を利用していたとして、本案意匠を職務発明に該当するとした。職務発明に該当すると結論付ける前に、判決は工場に赴任する前に会社側と関連発明創造について別途契約しているとか、勤務前に本件発明創造を既に完成していた事実の証明がないとしていることから、このような事実は、職務発明該当性の阻却事由になると思われる。
職務発明であると裁判所に認定されて判決が確定した場合、専利審査指南第1部分第1章6.7.2.2(1)及び専利法実施細則第14条の各規定により、職務発明に該当するとの判決を受けた事業主は、国務院専利行政部門に判決文を提出し、別途専利権移転手続を行う必要がある。
(中国)職務発明の該当性について
【詳細】
高級人民法院は、日昭公司(第一審原告・上訴人)と岑杰英(第一審被告・被上訴人)の間に労使関係があったことを認めた上で、岑杰英が日昭公司に勤務時の具体的な職務について、「職務発明における職務行為の解釈について過度に広げることはできず、関連技術等の創造や改良など研究開発に関係する職務又は職責を有する従業員であり、このような従業員が完成した関連発明創造は職責を履行して発明を完成したといえる」とし、「仮に日昭公司の岑杰英が在職中に機械設備の設置に職責を有していたとの主張について成立可能であったとしても、通常の機械設備を設置する人の職責と、専門家として負う研究開発設計の技術人員の職責は同一ではなく、発明創造の完成は機械設備を設置する人員の職責の範囲に属さず、その職務行為にも属さない」として、「日昭公司は未だ、岑杰英が在職中の本職務が関連技術の研究開発であったことについて何ら証拠を提出できていないから、ZL200320118153.3の特許は、岑杰英が日昭公司に在職中に負っていた職務行為に関連する職務発明には該当しない」と判断した。
参考(广東省高級人民法院民事判決2006年7月31日付(2006)粤高法民三終字第74号より抜粋):
首先,关于本案专利是否与岑杰英在日昭公司原承担的本职工作有关的问题。岑杰英于2003年4月18日应聘到日昭公司工作,于2003年7月离职,以上事实有日昭公司所提供的岑杰英2003年4-7月份的工资单为证,双方也均予承认,故可确认岑杰英与日昭公司在2003年4月-7月期间存在劳动关系。至于岑杰英在日昭公司的具体工作职务,日昭公司称公司并未具体为岑杰英安排职务,岑杰英实际主要负责技术安装工作,并以岑杰英一张借款理由为“出差电站安装”的借支单为证;而岑杰英则称其在日昭公司主要从事烧烟除尘工作。本院认为,对于职务发明中“本职工作”的理解,不能过于广泛,只有职工负有与创造、改进有关技术等研发工作有关的职务或职责的情况下,该职工所作出的有关发明创造才有可能属于履行其职责、完成其本职工作。在本案中,姑且不论日昭公司仅有一张借款理由为“出差电站安装”的借支单只能证明岑杰英曾经因出差电站安装而借款的事实,而不足以证明岑杰英的本职工作就是负责技术安装;即使日昭公司关于岑杰英在单位中负责技术安装工作的主张可以成立,作为一名普通技术安装人员的职责与作为一名专门负责研发、设计的技术人员的职责也是不一样的,完成一项发明创造并不属于普通技术安装人员的职责范围、不属于其本职工作。故在日昭公司未能提供任何关于岑杰英在本单位的本职工作就是研发有关技术的证据的情况下,本院认为,本案ZL 200320118153.3号专利并不属于与岑杰英在日昭公司原承担的本职工作有关的职务发明。
其次,关于本案所涉专利是否属于与岑杰英在执行本单位分配的专门任务有关的发明创造。日昭公司主张岑杰英是在执行江苏徐市、无锡安装电站的工作中掌握了日昭公司拥有的ZL03226611.1号专利技术,而该在先专利全面覆盖了本案专利的全部技术特征。本院认为,从日昭公司所提交的证据来看,其未能提交任何有关日昭公司组织研发或改进本案专利技术的立项计划、会议材料、进展报告等证据,其在一审时提交的证据仅仅是岑杰英出差电站安装时的借支单。而该借支单仅能反映岑杰英因出差安装电站而借款的事实,不能反映岑杰英出差安装电站的具体任务如何、与本案专利有何种关系。日昭公司于二审时补充提交了照片和6份报销单据。然而,该两证据一直留存于日昭公司内部,日昭公司本应在举证期限内向法院提供,其未有合理理由超过举证期限方予提交,不属于新的证据;而且,从该两证据的内容来看,照片不能反映其所拍摄的是何时何地的电站,也不能反映该电站所涉技术的内容;费用报销单据也仅是反映由岑杰英经手报销工程用料、差旅费等事实,不能证明日昭公司分配给岑杰英出差江苏徐市、无锡安装电站的具体任务涉及的就是与本案专利有关的工作。至于日昭公司主张岑杰英是从公司所分配的安装电站的实际工作任务中获取了日昭公司拥有的ZL03226611.1号专利技术,并在参考该专利技术方完成本案ZL 200320118153.3号专利发明成果的问题,本院认为,第一,本案日昭公司无论在一审还是二审均明确本案是专利权权属纠纷,而非专利侵权纠纷,日昭公司并明确选择其主张本案专利是“执行本单位任务所完成的发明创造”类型的职务发明,而非“主要利用本单位物质技术条件所完成的发明创造”,故本案ZL 200320118153.3号专利是否全面覆盖了在先ZL03226611.1号专利的特征与本案无关,也并非本案的审理范围。第二,即使日昭公司分配给岑杰英出差安装电站的工作涉及ZL03226611.1号专利技术,也不等同于日昭公司专门分配给岑杰英创造zL200320118153.3号专利技术的任务。况且,由于ZL03226611.1号专利技术作为专利已经公开,该专利的内容并不需要通过日昭公司才能接触到。故日昭公司以其分配给岑杰英的电站安装工作能接触到ZL03226611.1号专利技术内容为由进而主张日昭公司享有ZL200320118153.3号专利技术,缺乏事实依据和法律依据。此外,ZL03226611.1号专利证书上明确表明该专利的专利权人是罗志昭,在未有任何证据证明专利权人罗志昭将该专利转让或授权日昭公司使用的情况下,日昭公司主张自己拥有ZL03226611.1号专利,并进而主张自己对本案ZL200320118153.3号专利的权利,不能成立,本院不予采纳。
(参考訳)
第一に、本件特許が岑杰英の日昭公司における職務行為であるか否かという問題について。岑杰英が2003年4月18日に日昭公司の業務に従事し、2003年7月に離職したとの事実は、日昭公司が提出した岑杰英の2003年4月―7月分の給料明細に証拠として存在し、双方共に承認しているから、岑杰英と日昭公司は2003年4月-7月の期間労使関係にあったと認めることができる。岑杰英の日昭公司に勤務時の具体的な職務について、日昭公司は岑杰英に具体的な職務を割り振っておらず、岑杰英が実際に機械設備の設置に職責を主に負っていると主張し、岑杰英の借金の理由が「発電所設置の出張」であるとする前借り証一通をもって証拠とする一方、岑杰英は日昭公司在職中に排煙塵除去業務に主に従事していたと主張している。職務発明における職務行為の解釈について過度に広げることはできず、関連技術等の創造や改良など研究開発に関係する職務又は職責を有する従業員であり、このような従業員が完成した関連発明創造は職責を履行して発明を完成したといえる。本案において、日昭公司が所有する借金理由が「発電所設置の出張」とする前借り証は、かつて岑杰英が発電所設置の出張により前借りした事実を証明するものであり、岑杰英の本職務が機械設備の設置について職責を負っていることを証明するには足りない。仮に日昭公司の岑杰英が在職中に機械設備の設置に職責を有していたとの主張について成立可能でも、通常の機械設備を設置する人の職責と、専門家として負う研究開発設計の技術者の職責は同一ではなく、発明創造の完成は通常の機械設備を設置する人の職責の範囲に属さず、その職務行為にも属さない。日昭公司は未だ、岑杰英が在職中の本職務が関連技術の研究開発であったことについて何ら証拠を提出できていないから、ZL200320118153.3の特許は、岑杰英が日昭公司に在職中に負っていた職務行為に関連する職務発明には該当しない。
次に、本件特許が、岑杰英に割り振られた専門任務に関連する発明創造に該当するかについて。日昭公司は、岑杰英が江蘇省徐市、无錫において発電所を設置する作業中に日昭公司に関するZL03226611.1特許技術を把握し、同先行特許は本件特許の全ての技術的特徴を含んでいると主張している。日昭公司が提出した証拠から分かることは、日昭公司の研究開発組織や本件特許技術の改良の事業計画、会議資料、進捗報告書などの証拠を何ら提出できておらず、第一審で提出した証拠は岑杰英の発電所設置出張の前借り証だけである。この前借り証は単に岑杰英が発電所設置の出張により前借りした事実を示すものであり、岑杰英の発電所設置出張の具体的な任務がどのようなものなのか、本件特許がどのような関係にあるのかを示すことはできていない。日昭公司は第二審において写真と6部の領収書を補充提出した。しかし、2つの証拠は日昭公司社内に長い間存在し、日昭公司は挙証期限内に本証拠を当裁判所に提出すべきであるが、挙証期限を超過して提出する合理的理由は存在しないから、新規な証拠として認めない。これら2つの証拠からは、写真からはいつどこで発電所を撮影したのか分からず、発電所に関する技術内容についても分からない。費用精算書も岑杰英の手を経て工事材料や出張諸経費等が精算された事実を示すだけであり、日昭公司が岑杰英に江蘇省徐市、无錫への出張における発電所設置の具体的な任務と本件特許との関連を証明することもできない。岑杰英に割り振った発電所の設置の実際の勤務中に、日昭公司が所有するZL03226611.1号特許技術を取得したうえ、同特許技術を参考にして本件ZL200320118153.3号特許発明を完成させたという日昭公司の主張について、当裁判所は第一に、第一審及び第二審にかかわらず、いずれにおいても本件は権利帰属紛争であり、権利侵害紛争ではないと日昭公司は明確にしており、日昭公司はまた、本件特許は任務遂行により完成した発明創造という類型の職務発明であり、主に職場の物資技術条件を利用して完成した発明創造ではないという主張を明確に選択しており、本件ZL200320118153.3号特許が先行ZL03226611.1号特許技術を全て含んでいるか否かは本件とは無関係であり、本件の審理範囲でもない。第二に、仮に日昭公司が岑杰英に割り当てた発電所設置の出張の任務がZL03226611.1の特許技術に関係するとしても、日昭公司が岑杰英にZL200320118153.3号特許技術を生み出す任務を割り当てたと扱うことはできない。ZL03226611.1号特許は既に公開されており、同特許の内容について、日昭公司を通じて接する必要はない。よって、日昭公司が岑杰英に割り当てた発電所設置業務によってZL03226611.1号特許技術内容に接することができたことを理由に、その上さらに、日昭公司がZL200320118153.3号特許技術を保有すると主張することは、事実にも法律にも基づいていない。この他、ZL03226611.1号特許証書において特許権者は罗志昭であると明記しており、特許権者である罗志昭が同特許権を日昭公司に譲渡し、又は実施許諾したと証明する証拠を何ら保有していない状況では、日昭公司がZL03226611.1号特許を保有し、その上さらに、ZL200320118153.3号特許権に対して自己の権利を主張することは不可能であり、当裁判所は認めない。
【留意事項】
本件では、雇用主側は出張関連の書類のみを提出し、証拠の拡大解釈を行って職務発明であるとの主張を行った。これに対し、裁判所は「職務発明における職務行為の解釈について過度に広げることはでき」ないとして証拠を厳密に検討し、元従業員が完成させた発明は、研究開発に関係する職務又は職責を有する従業員が完成した発明でもなく、従業員に割り振られた専門任務に関連する発明でもないとした。
仮に、職務発明であるものが、証拠不十分で職務発明と認定されなかった場合、技術流出した上に、他者に独占権まで設定されてしまうことになる。このような事態を回避するためには、従業員の職務範囲を明確に規定し、研究開発の経過を記録する発明ノートを用意するなど、職務発明の裁判に備えた対応を行う必要がある。
(中国)無効実用新案権の職務発明報酬の扱いについて
【詳細】
上海高級人民法院は、外部機関の技術鑑定評価における技術貢献率を妥当とし、伊維公司が受領した使用料のうち30%を職務発明の報酬として翁立克へ支払うべきとした第一審判決を支持し、翁立克の50%かそれ以上とする要求について、第一審は既に30%まで引き上げて翁立克に配慮する一方、翁立克は根拠を示していないとして、退けた。
また、上柴公司に対する連帯責任について、「第一審法院は、上柴公司が伊維公司と一緒に連帯責任を負うべきではないとの事実や理由を既に十分論述し、翁立克は未だ新しい事実や理由を提出していない」として、翁立克の連帯責任の主張を退けた。
さらに、無効消滅後も本来の有効期間満了日までを報酬の算定期間に含めることを求める翁立克の主張について、「専利法及び実施細則の規定によれば、発明者又は設計者の報酬としての専利使用料の配分は、実施した特許が既に実現した利益に対する配分であって、期待利益に対する分配を含まない」とし、「上訴人は『報酬を計算する期間』を係争実用新案権の満了する2011年4月まで延長することを要求するが、期待利益の分配の実行を求めるものである」として、上海高級人民法院は退けた。
参考(上海市高級人民法院民事判決2008年4月18日付(2008)滬高民三(知)終字第23号より抜粋):
一审法院委托上海市科技咨询服务中心对涉案技术问题进行鉴定,程序合法,鉴定专家在充分听取各方当事人的意见、全面查阅了各方当事人提供的与鉴定相关的材料,并结合鉴定专家的专业知识与经验,所得出的鉴定结论应予以采信。翁立克称《技术鉴定报告书》与《补充鉴定报告书》不具可靠性和合理性,并无充分的事实与法律依据,本院不予支持。根据专利法实施细则的规定,伊维公司的义务是从许可实施涉案专利收取的使用费纳税后提取不低于10%作为报酬支付给翁立克,一审法院已经将专利使用费提取比例调高到30%,已经给涉案专利设计人翁立克充分的照顾,现翁立克要求将提取比例提高到50%,甚至更高,没有法律依据,本院不予支持。上诉人翁立克的第一条上诉理由不能成立。
根据财政部、国家税务总局《关于企业所得税若干优惠政策的通知》(财税[1994]001)的规定,企业事业单位进行技术转让,以及在技术转让过程中发生的与技术转让有关的技术咨询、技术服务、技术培训的所得,年净收入在30万元以下的,暂免征收所得税。但其前提条件是要经税务机关审核。根据财政部、国家税务总局《关于贯彻落实<中共中央国务院关于加强技术创新,发展高科技,实现产业化的决定>有关税收问题的通知》(财税字[1999]273号)的规定,对单位和个人(包括外商投资企业、外商投资设立的研究开发中心、外国企业和外籍个人)从事技术转让、技术开发业务和与之相关的技术咨询、技术服务业务取得的收入,免征营业税。但免税必须经过审批程序:纳税人从事技术转让、开发业务申请免征营业税时,须持技术转让、开发的书面合同,到纳税人所在地省级科技主管部门进行认定,再持有关的书面合同和科技主管部门审核意见证明报当地省级主管税务机关审核。翁立克并未提供其所称免税事项所涉及的审核方面的证据;况且,即使如翁立克所主张,伊维公司享受了相应的税收优惠,考虑到一审法院已经将专利使用费提取比例调高到30%,翁立克以是否纳税以及免税的情况未查清为由,要求增加其专利使用费提取数额的主张,本院亦不予支持。
一审法院已经充分地论述上柴公司不应当与伊维公司承担连带责任的事实与理由,翁立克并未提出新的事实与理由,上诉人翁立克要求上柴公司应当与伊维公司承担连带责任的主张,本院不予支持。
按照专利法及其实施细则的规定,作为发明人或者设计人报酬的专利使用费分成,是对实施相应专利已经实现利益的分成,并不包括对期待利益的分成。上诉人要求“计算报酬时间段”应延伸至涉案专利的届满期限2011年4月,以求对预期利益进行分成,没有法律依据,本院不予支持。
一审判决伊维公司支付翁立克的专利使用费分成,是涉案专利被宣告无效之前的专利使用费分成,该些专利使用费是伊维公司已经实现的涉案专利许可使用费,本案也不存在专利权人伊维公司的恶意给被许可人电装公司造成损失的情形,根据专利法的规定,伊维公司并无义务返还被许可人电装公司在涉案专利权被宣告无效之前已经收取的专利使用费。上诉人伊维公司关于涉案专利权已经无效,伊维公司不应支付相关报酬的上诉理由不能成立。
一审判决根据本案的具体情况,适当调整专利使用费分成比例,并酌情确定鉴定费分配比例,并未滥用自由裁量权,上诉人伊维公司相应的上诉理由,本院不予支持。
(参考訳)
第一審法院は上海市科学技術コンサルティングサービスセンターに関連技術問題の鑑定を行うように依頼し、その手続きは合法であり、鑑定専門家は十分に当事者の意見を聴取し、当事者が提供した鑑定に関する資料を全て調査し、さらに専門家の専門知識や経験に基づいているから、得られた鑑定の結論は信用できる。《翁立克は技術鑑定報告書》及び《補充鑑定報告書》が信頼性も合理性もないと述べているが、事実にも法律にも基づいておらず、当裁判所は支持しない。専利法実施細則の規定によれば、伊維公司の義務は係争中の実用新案権の実施許可として徴収した使用料支払金額の10%を下回らない額を翁立克に支払う報酬として徴収することであるが、第一審法院はすでに実用新案使用料の受取率を30%まで引き上げ、既に係争中の実用新案発明者である翁立克に配慮しており、翁立克による受取率を50%まで引き上げ、更に高くする要求には法的根拠がなく、当裁判所は支持しない。上訴人翁立克の第一条の上訴理由は成立しない。
中国財務省、国家税務総局による《企業所得税に関する若干の優遇政策通知》(財税[1994]001)の規定では、企業や公共機関が技術移転を行い、及び技術移転の過程において生じる技術移転に関係するコンサルティング、技術サービス、技術指導による所得は、年間純利益が30万元以下である場合、暫く所得税の徴収は免除される。ただし、その前提条件として、税務機関の審査批准を得るべきである。財務省、国家税務総局による《「技術革新の強化、ハイテク技術の発展、産業化実現に関する中共中央国務院の決定」の徹底的な執行に係る税収問題に関する通知》(財税字[1999]273号)の規定では、機関及び個人(外商投資企業、外商投資企業が設立した研究開発センター、外国企業及び外国籍個人を含む)に対し、技術移転、技術開発業務及び関連する技術コンサルティング、技術サービスに従事して得た収入には営業税を免除するとする。しかし、免税は承認審査手続きを経なければならない。技術移転や開発に従事する納税者が営業税の免税申請を行うときは、技術移転及び開発の契約書の認定を行う納税者所在の地方自治体の科学技術主管部門に持参し、次に、関連する契約書及び科学技術部門主管部門の審査意見証明報告の審査を行う当地の自治体の主管税務機関に持参する。翁立克は申立の免税事項に関係する審査の証拠を未だ提出していない。また、たとえ翁立克が主張するように、伊維公司が相当の税収優遇を享受していたとしても、第一審法院が既に実用新案使用料の受取率を30%まで高めていることを考慮すれば、翁立克の納税又は免税の状況であるかが未だ明らかになっていないから、その実用新案使用料受取率増加を求めるとの主張を、当裁判所は支持できない。
第一審法院は、上柴公司が伊維公司との連帯責任を負うべきではないとの事実や理由を既に十分論述し、翁立克は未だ新しい事実や理由を提出していないから、上訴人翁立克の上柴公司と伊維公司は連帯責任を負うとの主張を、当裁判所は支持しない。
専利法及び実施細則の規定によれば、発明者又は設計者の報酬としての専利使用料の配分は、実施した専利が既に実現した利益に対する配分であって、期待利益に対する分配を含まない。上訴人は「報酬を計算する期間」を係争実用新案の満了する2011年4月まで延長することを要求するが、期待利益の分配の実行を求めるものであり、法律に基づいておらず、当裁判所は支持しない。
第一審判決における伊維公司が翁立克に支払うべき実用新案使用料の配分は係争実用新案無効宣告がされる前の使用料の分配であり、この使用料は伊維公司が既に実現した係争実用新案使用許可費用で、本案でも実用新案権者の伊維公司の悪意によりライセンシーの電装公司が損失を被るという状況は存在しておらず、専利法の規定によれば、伊維公司はライセンシーの電装公司に、係争実用新案権が無効審判が請求される前に既に受けとっていた実用新案使用料を返還する義務はない。上訴人伊維公司は係争実用新案権が既に無効であることに関し、伊維公司は関連する報酬を支払うべきではないとの上訴理由は成立しない。
第一審判決は本案の具体的状況に基づき、実用新案使用料受取率を適切に調整し、鑑定の費用配分比率を斟酌して確定し、自由裁量権を乱用していないから、上訴人伊維公司の上訴理由を、当裁判所は支持しない。
【留意事項】
職務発明者は、職務発明の譲渡の対価やライセンス収入の一部を報酬として受けとることが法律上認められている。本案では、外部機関が本件実用新案の技術貢献率を鑑定し、それを斟酌しながら職務発明報酬の割合の水準を導く構図となっている。
このような鑑定評価の割合の妥当性についての判断は難しく、上海高級人民法院も「その手続きは合法であり、鑑定専門家は十分に当事者の意見を聴取し、当事者が提供した鑑定に関する資料を全て調査し、さらに専門家の専門知識や経験に基づいているから」信用できるとしており、鑑定評価の手続に不備があるか否かという観点で鑑定の妥当性を判断しており、内容そのものについて評価しているようには見えない。職務発明の報酬については、事前に報酬規程を整備しておくことが最善の策であろう。
なお、専利権が無効になる前に受領した使用料は原則返還しなくて良いため(専利法第47条)、その使用料に基づく職務発明報酬の支払義務も免れない点に注意を要する。