台湾における商品・役務の類否判断について(前編)
1.はじめに
台湾智慧財産局(日本の特許庁に相当、以下「知的財産局」という。)は、「誤認混同のおそれに関する審査基準(混淆誤認之虞審查基準)」を制定しており、そこで商品または役務の類否について解説している。ちなみに、知的財産局が、別途、「商品・役務分類及び相互検索参考資料(商品及服務分類暨相互檢索参考資料)」を作成、公開しており、商品・役務の類否判断に際し、重要な参考資料となっている。
本稿では、主にこの「誤認混同のおそれに関する審査基準」および「商品・役務分類及び相互検索参考資料」を参考にして主題を検討し、商品または役務の類否判断の基本的な考え方、商品間の類否、役務間の類否、商品・役務間の類否、の4点に分けて解説する。
2.基本的な考え方
(1) 台湾の審査手法について
知的財産局の商標審査実務では、商標が登録できるか否かを審査する際、日本と同様、まずは、①出願商標が識別力を有するか否かを判断し、次いで、②①で識別力を有すると判断した場合、出願商標の指定商品・役務と同一または類似する商品・役務において、同一または類似の先行商標が存在するか否かを調べ、かかる先行商標を発見した場合、最後に、③先行商標と出願商標とを比較対照し、同一または類似するか否かを判断する、という審査手法をとっている。
①の識別力の判断に関しては「商標識別性審査基準」に、③の商標の類否判断に関しては「誤認混同のおそれに関する審査基準」に従い、それぞれ判断が行われている。
ちなみに、商標の標識(mark)が同一または類似を構成し、またその指定商品・役務についても同一または類似関係を有すると判断された場合、次いで、誤認混同を引き起こすおそれがあるか否かについて判断されることになり、その結果、誤認混同のおそれがあると判断された場合、出願商標は拒絶されることになる。
「誤認混同のおそれに関する審査基準」2.には、基本的に、両商標の標識が同じで、さらに指定商品・役務も全く同じである場合、誤認混同のおそれがあると認められる、と規定されている。ただし、両商標の標識が同一でなく類似を構成し、その商品・役務が同一または類似関係を有する場合、さらに両標識の類似度合いおよび商品・役務の類似度合いを考慮し、「誤認混同のおそれ」があるか否かを判断しなければならない、と規定されている。
両商標の「標識が類似」および「指定商品・役務が類似」という2つの要素がそろった場合、誤認混同のおそれがないとはいえないが、必然的に誤認混同のおそれがあるといえるものではない。その他の重要な要素の存在により、誤認混同のおそれがないこともあり、例えば、2つの商標が市場において既に長期にわたり並存しており、かつ、いずれも商品・役務の関連消費者に熟知され、容易に区別できる場合、誤認混同のおそれはないと認定される。このように、「標識の類似」および「商品・役務の類似」という要素以外に、誤認混同のおそれの有無に影響しうる他の関連要素が存在するかしないかも考慮されるべきものである。
前述のように、商品・役務の類否判断の重要な参考資料として、「商品・役務分類及び相互検索参考資料」が作成されている。これは商品・役務が類似するか否かの実務上の判断において極めて重要な参考資料であり、同参考資料によって同じ類似群(類似群コード前4桁が同一)に属するものと、相互検索すべき類似群に属するものであれば、基本的に類似関係を有すると認められるが、商品・役務の類否については、個別案件において一般の社会通念および市場取引の状況を斟酌し、商品・役務の各種の関連要素を考慮しなければならない。
「誤認混同のおそれに関する審査基準」5.3.3および「商品・役務分類及び相互検索参考資料」によると、通常、類似商品・役務とは、同一もしくは似ている性質・効能・用途を備えていることが一般的である。よって、原則として、商品・役務の類似性を判断する際は、まず、商品・役務の性質・効能・用途から考慮すべきであり、そして、製造者・提供者、それから販売ルート・場所、および消費者層などの要素を考慮すればよい。
なお、日本国特許庁および日本台湾交流協会は、日本と台湾のそれぞれの商標審査で使用されている類似群コードの対応関係を示す一覧表(日台類似群コード対応表)を作成し、公表しているので参考にされたい。
3.商品間の類否について
(1) 商品間の類否判断における考え方
台湾における商品の類否判断について、前述のとおり、基本的に「商品・役務分類及び相互検索参考資料」に開示されている同じ類似群(類似群コード前4桁が同一)に属するものと、相互検索すべき類似群に属するものであるか否かをもって行われている。その具体的な判断原則としては、「誤認混同のおそれに関する審査基準」5.3.4、5.3.5において、「商品の性質・効能または用途に関する原則」および「完成品と部品、原料または半製品に関する原則」という2つが規定されている。
① 商品の性質・効能または用途に関する原則
商品の性質とは、商品の本質または特性を指す。例えば、「新鮮な果物」と「コーヒー」は、いずれも食用できる商品であるが、性質が異なる。一方、「炭酸水」と「ジュース」は、いずれも飲み物で、性質が同じである。
商品の効能または用途とは、主な使用予定の目的を指しており、使用可能な方法ではないので、一般の社会通念により判断されるべきである。例えば、「スリッパ」の効能・用途は足元を保護し、歩くことを補助することであって、ゴキブリを殺すことではない。よって、「スリッパ」と「ゴキブリ駆除器」は、性質が異なる商品である。同一の効能・用途を有する商品とは、例えば、「ボールペン」と「万年筆」のように、書くことが主な効能または用途であり、書くために使用されることによって消費者の需要を満足させるものである。
同審査基準では、更に「相互補完効能を有する商品」と「コーディネートして使用される商品」という2つの類型が取り上げられている。
A.「相互補完効能を有する商品」:
「万年筆」と「万年筆のインク」のように、消費者群が同一で、片方がないと、他方も影響を受け、一緒に使用する必要があり、互いに補い合うことにより、共同で消費者の特定の要求を満たすことができる商品をいう。相互補完関係が密接になればなるほど、類似程度も高くなる。
相互補完効能は、原則的に商品の使用のみに適用され、商品の製造過程には適用されない。また、完成品とその部品の間に類似関係があるとは限らない。(下記②を参照)
B.「コーディネートして使用される商品」:
2つの商品がコーディネートして使用されることは、概念上、相互補完関係を有することとは異なり、例えば、第9類の「眼鏡」と第14類の「宝石」は、スタイリングとコーディネートとして併せて使用される可能性があるが、両者の性質および主な用途は異なるので、類似商品とは認められない。「眼鏡」の主な目的は視力改善用で、「宝石」はアクセサリーとして付けられるもので、両者は販売ルートが異なるほか、競争性も相互補完関係も有さないと認められる。一方、第25類の「被服」と「靴」は、いずれも体を保護するために、通常コーディネートして使用される商品である。消費者が「被服」を買うときに、同じ売り場で「靴」が見つかることを期待でき、両者が同一業者により製造されることもよくあることから、類似関係があると認定される。
② 完成品と部品、原料または半製品に関する原則
商品自体とその製造材料には、必ずしも類似関係があるわけではない。当該材料が他人により製造・販売され、消費者は商品と材料が異なる出所であることを知っている場合、またはある材料が製造過程においてのみ使用され、一般人が買うことのできない場合、類似関係はないと認められる。
商品自体とその部品または半製品とが必要な依存関係を有する場合、例えば、部品または半製品がなければ、商品の経済上の使用目的を達成できない場合は、類似商品として認められる可能性が高くなる。例えば、「電気式歯ブラシ」と「電気式歯ブラシ用ヘッド」、「自動車」と「自動車用リム」がその例である。
一方、「皮革」と「皮革製被服;皮革製靴」のように、当該部品または半製品が製造過程において著しく変化し、完成品とは、その性質・用途、または消費者層・販売ルートも大きく異なる場合、前者(半製品)の購買者は製造産業であって、通常、消費者が直接買うことはなく、その販売ルートや消費者層も後者(完成品)とは異なるので、類似商品ではない。また、当該部品または半製品があらゆる商品に使われる場合、原則的に商品自体と類似しないと認められる。例えば、「酵母」と「パン」、「卵」と「ケーキ」も類似商品ではない。
また、上記のほか、両商品が同一の製造業者に由来するものである場合、類似関係を有すると認定される可能性は高い。例えば、第27類の「カーペット」と第24類の「タペストリー」、第9類の「電子出版物」と第16類の「本;雑誌」がその例である。
一方、両商品の販売ルートや売り場が同じであっても、類似関係があるとは限らない。例えば、第21類の「お皿;コップ」と第24類の「マットレスカバー;布団カバー」は、同じ売り場で販売されるにもかかわらず、商品の性質・効能または用途に差異が大きく、製造者も異なるので、類似しないと認められる。しかし、第7類の「家庭用ミキサー」と第11類の「電気コーヒー沸かし」は、同じ家電エリアで販売されるものなので、類似商品として認められる。
(2) 類見出し(Class Heading)の取り扱いについて
台湾では、類見出し(クラスヘッディング)の表記が認められているものもあれば、認められないものもある。「商品・役務分類及び相互検索参考資料」によると、類見出しの前に「#」記号を付けているものは、範囲が広すぎるため表記として認められないものであり、具体的な商品を指定しなければならない。
(3) 商品名を指定する際の留意事項について
「商標登録出願の方式審査基準(商標註冊申請案件程序審查基準)」2.1には、商品名を指定するときに、必ず具体的に指定しなければならず、「他の区分に属さない全ての商品」、「本区分に属する全ての商品」という範囲が広すぎる表記を指定することができない、と示されている。例えば、「台所用具」は、範囲が広すぎて不明確であるため、具体的に第8類の「台所用ナイフ」、第11類の「電気式ケトル」、または第21類の「コップ」を指定することが考えられる。
実務上、日本の商標実務者は、「電子応用機械器具及びその部品」、「測定装置」など日本で認められている商品を指定しがちであるが、台湾では、それらの範囲は広すぎて不明確であるとして、具体的に列挙するよう補正を求められる。
また、台湾の商標登録出願の政府手数料は、指定する商品が20個までの場合はNT$3,000となり、20個を超える場合は、1個ごとに政府手数料(割増料金)NT$200を納付する必要がある。よって、費用の面から、商品数は20個以内に抑えることも考えられる。
商品個数の計算基準として「商品と特定商品の小売・卸売の個数計算原則及び例示(商品及特定商品零售服務個數計算原則及例示)」が定められている。例えば、一つの商品に、形状/用途を説明する形容詞を付ける場合、形状/用途の数により個数が異なり、「粉状・粒状・ペースト状のプラスチック」の場合は計3個で、「写真複写機用及びプリンター用カートリッジ」の場合は計2個となる。
指定商品・役務の表現および所属区分は、実務変更により変わるほか、審査官により取り扱いも異なり、同一名称が過去に認められたことがあっても、後願で認められない場合もある。最新情報は、知的財産局の下記データベース、「商品・役務名分類照会(商品及服務名稱分類査詢)」を参照されたい。
(後編に続く)
台湾における商品・役務の類否判断について(後編)
(前編から続く)
4.役務間の類否について
(1) 役務間の類否判断における考え方
役務間の類否判断も、商品の類否判断と同様、前述のとおり、基本的に「商品・役務分類及び相互検索参考資料」に開示されている同じ類似群(類似群コード前4桁が同一)に属するものと、相互検索すべき類似群に属するものであるか否か、をもって行われている。その具体的な判断原則については、台湾における役務の類否判断に関し、「誤認混同のおそれに関する審査基準」5.3.9には、「役務の性質、内容又は提供者などの要素に関する判断原則」が示されている。
役務の性質、内容は、他人へ提供する労務または活動の類型により異なる。例えば、「タクシーによる輸送」と「バスによる輸送」はいずれも乗物による運輸役務を提供するほか、性質も同じであるため、類似関係を有すると認定される。
役務の目的は、消費者の特定の需要を満たすことである。その需要の類似性、または代替性が高くなれば、それだけ役務間の類似程度も高くなる。例えば、「英語専門の塾」と「数学・理科専門の塾」、「民宿における宿泊施設の提供」と「ホテルにおける宿泊施設の提供」は、類似役務に該当する。
さらに、通常、両役務が同一の業者によって提供される場合、類似関係があると認められる可能性は高い。例えば、「指圧マッサージ」と「サウナ」がその例である。
(2) 小売役務について
台湾では、役務名として「小売(retail services or wholesale services)」のみを指定することは認められない。
「商品・役務分類及び相互検索参考資料」では、「総合的小売」および「特定商品の小売」に分けて、それぞれ具体的に列挙して指定する必要がある、と明記されている。「総合的小売」の具体的な例としては、デパート、インターネットショッピング、スーパーマーケット等が挙げられる。
台湾では、「小売」の代わりに、特定商品の小売を指定しなければならないので、総合的小売の「デパート」と、特定商品の小売としての「被服の小売」とが類似を構成するか否かは、審査基準に関連規定はないが、審査実務上、原則的に類似しないとされている。一般の社会通念および市場取引状況に基づき、役務の受取人(消費者)に、その商品が同一、または同一ではないが出所に関連があると誤認されやすい場合、例外的に類似関係を有すると認められる。一方、「特定商品の小売」と「特定商品」とが類似するか否かは、下記5.を参照願いたい。
また、当該登録商標を使用していない商品に関し、不使用取消とされる可能性があるか否かについては、台湾商標法第63条第2項により、商標が登録された後に、正当な事由なくそれを使用せず、またはその使用を停止して既に3年を経過したとき、商標主務官庁は職権または請求により、その登録を取り消すことができる。即ち、特定商品を指定して登録を受けても、登録後3年以上の不使用という事実がある場合、当該商品における登録が取り消されるリスクがある。
(3) 役務名を指定する際の留意事項について
実務上、よく日本の実務者が「電子出版物の提供」のような名称を第41類で指定するが、それは日本で認められる表記であって、台湾では認められない。台湾では、役務として「(第41類)電子出版物のオンライン閲覧(ダウンロードできない)」を指定するか、または商品として「(第9類)ダウンロードできる電子出版物」を指定する必要がある。
商標登録出願の政府手数料は、役務の場合、第35類を除くその他の区分(第36類~第45類)は、区分ごとにNT$3,000であるが、第35類の「特定商品の小売・卸売り」を指定した場合、5個以内はNT$3,000で、5個を超えた場合、1個ごとに政府手数料NT$500の割増料金を納付する必要がある。第35類では、「特定商品の小売・卸売り」以外の役務を指定する場合、個数を問わず一律NT$3,000となる。
5.商品・役務間の類否について
(1) 商品・役務間の類否判断における考え方
台湾における商品・役務間の類否判断に関しても、基本的に「商品・役務分類及び相互検索参考資料」に開示されている相互検索すべき類似群に属するものであるか否かをもって行われている。具体的な判断原則について、「誤認混同のおそれに関する審査基準」5.3.10には、①通常、商品の製造・販売と役務の提供が同一の事業者によって行われるか、②商品と役務の効能又は使用目的が一致するかどうか、③商品の販売場所と役務の提供場所が同一であるかどうか、および④商品と役務の消費者層の範囲が重なるかどうか、などの要素を総合的に考慮して判断する、と示されている。
同審査基準では、以下の具体例が挙げられている。
① 第9類の「コンピュータハードウエア;コンピュータソフトウエア」商品と第42類の「コンピュータプログラミング;コンピュータデータ処理」役務は、類似関係を有する。
商品と役務の間には、効能上、相互補完関係が存在し、また、同じ情報技術分野に属すものであるので、性質・消費者層および販売ルートなどの要素において共通・関連しているので、類似関係を有すると認める。
② 第25類の「被服」商品と第35類の「被服の小売」役務は、類似関係を有する。
役務の目的が、特定商品の販売を提供する場合、両者は類似関係を有すると認められている。
「被服の小売」の目的は、「被服」の販売を提供することで、また、通常、商品の販売場所と役務の提供場所が同一であるほか、消費者層も同様であるため、類似関係を有すると認める。
台湾では、「『特定商品の小売り及び卸売り』および『当該特定商品』間の類似検索関係の参考表(「特定商品零售批發服務」與該「特定商品」間類似檢索關係參考表)」という参考資料があり、そこには、「一般社会通念及び取引の状況に照らして、役務又は商品の出所が同一である、または同一ではないが関連性があると誤認を生じやすい場合は、類似関係を有する、という一般的な原則が定められている。「被服」と「被服の小売」のほか、例えば、「飲料」と「コーヒー飲料の小売」、「薬剤」と「人用薬品の小売」も類似関係を有すると認められている。
一方、同審査基準では、「総合的小売」(デパート、インターネットショッピングなど)と、「特定商品」の間に類似関係を有するか否かについて、明確な規定がない。知的財産及び商業裁判所110年行商更(一)字第4号行政判決では、「インターネットショッピング」と「電気製品」とが非類似と認められた。その理由は、前者がインターネットを販売ルートとして、商品の小売を行い、ウェブサイトを通じて商品情報を提供し、インターネット上で注文を受けた後、顧客に商品を届ける、という一体性がある役務であり、これは後者の特定商品と性質が異なり、また、前者は取り扱う商品の範囲がかなり広く具体的に限定されず、消費者が、両者の出所が同一である、または同一ではないが関連性があると誤認することが予想できないからである、とされた。
韓国における商品・役務の類否判断について(前編)
1.記載個所
標章の類否基準(韓国商標法第34条第1項第7号)については、「商標審査基準」の第5部第7章および第10部第2章に記載されている。その概要(目次)は以下のとおり。
第5部第7章:先登録商標と同一・類似の商標 1. 適用要件 2. 国際登録基礎商標権との類否判断 3. 判断時の留意事項 4. (以下、省略) 補充基準:商標の同一・類似 1. 商標の同一 2. 商標の類似 3. 各商標別類否判断基準 4. 指定商品の類否判断基準 第10部第2章:外国語商標の審査 1. 規定の趣旨 2. 外国語商標に対する審査原則 |
2.基本的な考え方
日本の類似商品・役務審査基準(「類似商品・役務審査基準とは」 1ページ目「2」に対応する商標審査基準(韓国)の記載は、以下のとおりである。
(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
・商標審査基準第5部第7章 補充基準4. 指定商品の類否判断基準
・類似商品審査基準(特許庁例規第123号、2022年1月1日施行)
(2) 異なる事項または留意点
韓国においても日本と同じく類似群コードを導入して施行している。
類似群コードは、原則として商品・役務を区分するコード(商品はG、役務はS)、韓国分類コード(商品53個類、役務12個類)、商品群コード(01、02等の連続番号)等、5桁で構成されている。ただし、類似群の細分化により1つの類似群を2つ以上に細分化した場合、枝番号2桁(01、02等の連続番号)を追加して7桁で構成することができる(類似商品審査基準第7条第1項)。
類似群コードは、指定商品間の類似範囲を判断するために、商品自体の属性および取引実情等を反映して、同一・類似の商品および役務別に分類しコードを付与したもので、商標審査時に類否判断の参考資料として活用される。
(3) 韓国と日本とが同じ類似群制度であっても異なるグルーピングが行われている理由
指定商品の同一類否に関する一般原則は、類似群コードを参考にするが、商品の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、需要者の範囲等、取引の実情等を考慮して一般取引の通念によって判断している(類似商品審査基準第10条)。
審査官は、必要な場合、チーム長、分類政策担当者および各審査課の分類専門官と協議体を構成して、商品の類否を判断することができる(類似商品審査基準第11条第6項)。
また、類似商品審査基準と異なって判断した審・判決例および商品審事例が蓄積されて、これを商標登録出願審査に反映する必要がある場合に、商標デザイン審査局長は、その商品の目録(「商品関連審判決例および審査事例反映目録」という)を定めて、この基準とは別途で運営することができ、審査官は同目録が定めた基準によって審査するようになる(類似商品審査基準第11条第7項)。
3.商品の類否について
日本の類似商品・役務審査基準(「類似商品・役務審査基準とは」2ページ目「(1) 商品の類否について」に対応する商標審査基準(韓国)の記載は、以下のとおりである。
(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
・ 商標審査基準第5部第7章 補充基準4. 指定商品の類否判断基準
・ 類似商品審査基準(特許庁例規第123号、2022年1月1日施行)
(2) 異なる事項または留意点
商品に関する類似群コードは、原則として商品・役務を区分するコード(商品はG)、韓国分類コード(商品53個類)、商品群コード(01、02等の連続番号)等の5桁で構成されている。ただし、類似群の細分化により1つの類似群を2つ以上に分離した場合、枝番号2桁(01、02等の連続番号)を追加して7桁で構成されている(類似商品審査基準第7条第1項)。
・例示1)類似群コードG1301
G:Goods、13:韓国分類第13類(石けんと洗剤)、01:韓国分類第13類の第1群(石けん類)
・例示2)類似群コード390802
G:Goods、39:韓国分類第39類(電気機械機具、電気通信機械機具、電子応用機械機具)、08:韓国分類第39類の第8群(電子応用機械機具)、02:種類番号(ソフトウェア)
指定商品の同一類否は、上記のような類似群コードを参考にするが、商品の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、需要者の範囲等、取引の実情等を考慮して一般取引の通念によって判断している(類似商品審査基準第10条)。
上記に関する大法院(最高裁)判例(1994年5月24日言渡し94フ425判決、1996年4月26日言渡し95フ1586判決等参照)によれば、「指定商品の同一・類否は、商品自体の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、需要者の範囲等、取引の実情等を考慮して一般取引の通念によって判断すべきものである。」と判決している。
(*) 大法院の判決は、次のサイト(韓国語)で「94후425」(「フ」を「후」に置き換えた番号)を入力すると参照できる。以下、同様である。なお、韓国では全ての判例が公開されていなため、一部の判例については検出できない場合がある。
http://glaw.scourt.go.kr/
参考:「韓国の判例の調べ方」(2017.07.06)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/precedent/13872/
(3) 韓国でのClass Headingの商品を指定することを認めるか否かに関する審査基準について
Class Heading(包括名称という)は、狭義の包括名称と広義の包括名称に分類している。商品の記載において包括名称は許容されないが、商品の名称と類区分に関する告示で認める狭義の包括名称と広義の包括名称は記載することができる(特許庁告示2021-25号 「商品の名称と類区分に関する告示」第5条参照)。包括名称の定義および例示は次のとおりである(商標審査基準第2部第4章1.1.3)。
区分 | 狭義の包括名称 | 広義の包括名称 |
定義 | 同一の商品類区分内で同一の類似群に属するいくつかの商品を含む | 同一または複数の商品類区分内で複数の類似群に属する商品を含む |
包括名称事例 (商品類、類似群コード) |
履物(第25類、G270101) | 衣類(第25類、N25005)*1 |
該当する商品 | 運動靴、防寒靴、ゴルフ靴等 | スポーツ衣類(G430301)、上着(G450101)、下着(G4503)等 |
*1:従来、広義の包括名称は別のコード(例 衣類:N20006,医療機器:N10003)を使用していたが、現在は「類似商品審査基準」を参考に「旧(包括コード)」と表記されている。このため、G~のコードを用いることを勧める。
商品の類否判断に対する判例(大法院1996年4月26日言渡し95フ859判決)等によれば、「商品区分表のような類別に属しているとして、すぐに同一または類似の商品であると断定はできず、指定商品の同一、類否は商品の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、取引の実状等を考慮して一般取引の通念により判断すべきである。」と判決している。
■大法院1996年4月26日言渡し95フ859判決
商標法第10条第1項および同法施行規則第6条第1項による商品類区分は、商標の登録事務の便宜のために区分したものであり、商品の類似範囲を定めたものではないため(商標法第10条第2項)、商品区分表の同じ類別に属しているとして、そのまま同一または類似の商品と断定することはできず、指定商品の同一、類否は商品の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、需要者の範囲等取引の実情等を考慮して一般取引の通念によって判断すべきものである(当院1994年11月25日言渡し94フ1435判決、1994年12月2日言渡し93フ1285判決等参照)。
記録と関係法規によれば、両商標の指定商品は全て商標法施行規則第6条第1項の商品類区分表上の第39類に属してはいるが、本願商標の指定商品である集積回路は、そのうち第8群の電子応用機械に属し、そのうちでも第3号である半導体素子に属する反面、引用商標の指定商品は、上の第39類第7群の電気通信機械装置に属するものとして電話機(第1目の電話機器)、模写電送機(第2目の有線通信機器)があり、電子複写機は第39類の第8群電子応用機械のうち第1目の電子応用機器に属するため商品類区分表上の細目が互いに異なるといえ、本願商標の指定商品である集積回路は、大きさが極めて小さく、これは各種の電気電子製品の核心部品ではあるが、電子複写機、模写電送機等のような完成品のうちその材料や価格、生産過程で占める比重が極めて少ないため、両商標の指定商品はその品質、形状、用途が明白に互いに異なるもので、また、集積回路は主に特定の専門的な集積回路生産業者で注文生産され、電子製品を生産する業者に直接供給されるとするというものであるのに対し、引用商標の指定商品は、集積回路の生産業者とはまた別の専門的な製造業社で生産され主に代理店や一般商店街、百貨店等で販売されているため、生産と販売方法が顕著に互いに異なるというものであり、集積回路は、電子製品生産業者や修理業者等の専門取扱者のみが購入するが、引用商標の指定商品は、一般消費者が広く購入して使用していて、両商品は、その消費者や需要者層が互いに異なるといえるところ、結局、両商標の指定商品は、その商品の品質、形状、用途および生産と販売方法、需要者や取引先等の取引の実情等に照らしてみても、一般取引の通念上同一または類似のものということはできないものである。
■大法院判例(大法院1993年5月11日言渡し92フ2106判決)
旧商標法第11条第1項および同法施行規則第10条第1項による商品区分は、商標の登録事務の便宜のために区分したものであり、商品の類似範囲を定めたものではないため(同法第11条第2項)、商品区分表の同じ類別に属しているとして、そのまま同一または類似の商品と断定することはできないものであり、指定商品が同一または類似のものかの当否は、商品の生産部門・販売部門・用途・主原材料・需要者の範囲・完成品と部品との関係・取引実態等を総合考慮して一般取引の通念によって判断すべきものであるところ(1987年8月25日言渡し86フ152判決; 1990年7月10日言渡し89フ2090判決; 1990年11月27日言渡し90フ977判決; 1991年3月27日言渡し90フ1178判決; 1991年5月28日言渡し91フ35判決; 1992年5月12日言渡し92フ1793判決等参照)、本願商標と引用商標の指定商品が全て商標法施行規則による商品区分表の第39類に属してはいるが、本願商標の指定商品は、衛星放送用機器として第39類の第7群電気通信機械機具のうち第4細目の放送用機器に属するのに対し、引用商標の指定商品は、直流発電機・白熱電球・乾電池・電流計・被覆電線・電子レンジ・電話機・産業用X線機械機具・真空管・電熱テープ等であって全て本願商標の指定商品と異なる商品群や商標細目に属するだけでなく、その商品の品質・形状・用途および取引の実情等に照らしてみても、二つの商標の指定商品が取引の通念上同一または類似のものであると断定することもできない。
役務の類否について、商品役務間の類否については「韓国における商品・役務の類否判断について(後編)」をご覧ください。
韓国における商品・役務の類否判断について(後編)
標章の類否基準についての「商標審査基準」の記載個所、基本的な考え方、商品の類否については「韓国における商品・役務の類否判断について(前編)」をご覧ください。
4.役務の類否について
日本の商標審査基準(「類似商品・役務審査基準とは」2ページ目「(2) 役務の類否について」に対応する商標審査基準(韓国)の記載は、以下のとおりである。
(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
・ 商標審査基準第5部第7章 補充基準4. 指定商品の類否判断基準
・ 類似商品審査基準(特許庁例規第123号、2022年1月1日施行)
(2) 異なる事項または留意点
役務に関する類似群コードは、原則として商品・役務を区分するコード(役務はS)、韓国分類コード(商品53個類、役務12個類)、商品群コード(01、02等の連続番号)等の5桁で構成されている。ただし、類似群の細分化により1つの類似群を2つ以上に分離した場合、枝番号2桁(01、02等の連続番号)を追加して7桁で構成されている(類似商品審査基準第7条第1項)。
・例示1)類似群コードS050109
S:Services、05:韓国分類第105類(修理・修繕業)、01:韓国分類第105類の第1群(修理・修繕業)、09:枝番号(韓国分類第9類タバコと喫煙器具)
・例示2)類似群コードS100101
S:Services、10:韓国分類第110類(特殊加工業)、01:韓国分類第110類の第1群(特殊加工業)、01:枝番号(韓国分類第1類肥料)
・ 例示3)類似群コードS2001
S:Services、2:卸小売関連役務を示す代表記号、001:韓国分類第1類(肥料)
・役務の類否判断も、基本的には商品の類否判断と同じである。すなわち、類似群コードを参考にするが、商品の属性である品質、形状、用途と生産部門、販売部門、需要者の範囲等、取引の実情等を考慮して一般取引の通念によって判断している(類似商品審査基準第10条)。
ただし、役務の類否判断と関連して次のような特例がある(類似商品審査基準第11条(類否判断の特例)第2項および第3項) 。
② G390802(ソフトウェア)、G430301(スポーツ衣類、スポーツ用具等)、S2001~S2053(卸売業、小売業、販売代行業、販売斡旋業、商品仲介業、購買代行業)、S050109~S050153(修理業、修繕業、設置業、維持管理業)、S100101~S100114(特殊加工業)、S120999(就職および趣味関連教育サービス業)、S173599・S173699・S173799・S173999・S174099・S174299・S174399・S174499・S174599(第35・36・37・39・40・42・43・44・45類に属するその他役務)は、類似群コードが同一であっても、比較の対象となる商品の特性によって個別に判断しなければならず、枝番号が「00」である未分類コードは、種類番号を除いた類似群コードが同一のすべてのコードについて具体的、個別に類否を判断すべきである。 ③ 百貨店業、大型ディスカウントショップ業、スーパーマーケット業、コンビニ業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通販仲介業は、それぞれ互いに類似の役務と推定し、これら役務と個別商品に対する小売関連役務とは非類似であるものと推定する。 |
上記と関連した主要な大法院判例は次のとおりである。
(*) 大法院の判決は、次のサイト(韓国語)で「94후425」(「フ」を「후」に置き換えた番号)を入力すると参照できる。以下、同様である。なお、韓国では全ての判例が公開されていなため、一部の判例については検出できない場合がある。
http://glaw.scourt.go.kr/
参考:「韓国の判例の調べ方」(2017.07.06)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/precedent/13872/
(3) 韓国でのClass Headingの役務を指定することを認めるか否かに関する審査基準について
Class Heading(包括名称という)は、狭義の包括名称と広義の包括名称に分類している。役務の記載において包括名称は許容されないが、商品の名称と類区分に関する告示で認める狭義の包括名称と広義の包括名称は記載することができる(特許庁告示2021-25号「商品の名称と類区分に関する告示」第5条参照)。包括名称の定義および例示は次のとおりである(商標審査基準第2部第4章1.1.3、商標法施行規則第28条第1項「別表1」、商品の名称と類区分に関する告示「全体リスト」を参照して作成した)。
区分 | 狭義の包括名称 | 広義の包括名称 |
定義 | 同一の商品類区分内で同一の類似群に属するいくつかの商品を含む | 同一または複数の商品類区分内で複数の類似群に属する商品を含む |
包括名称事例 (商品類、類似群コード) | 運送業(第39類、S080101) | 商品の運送/保管および包装業(第39類、S080101, S090101, S173901) |
該当する商品 | 船舶運送業、航空運送業等 | 商品運送業、商品保管業、運送用商品包装業 |
指定サービス業の類否判断に対する判決(大法院2002年7月26日言渡し2002フ673判決)によれば「指定サービス業の類否は、提供されるサービスの性質や内容、提供手段、提供場所、サービス業の提供者および需要者の範囲等、取引の実状等を考慮して一般取引の通念に従って判断すべきであるところ、近年多くの種類のサービス業がインターネットを利用してインターネット上で広告が行われ、取引が成立する等のインターネットを道具に活用するとして、インターネット通信業自体とこれらサービス業を互いに類似しているとはみなせない。」と判決している。
また、上記判決とは逆に類似しているとした判決(大法院2018年11月9日言渡し2016フ1376判決)によれば、登録役務商標の指定サービス業である“デパート業、大型ディスカウントショップ業、スーパーマーケット業、コンビニ業”と先登録役務商標の指定サービス業である“衣類·帽子·靴等の販売代行業、衣類·帽子·靴小売業”の類否については、「需要者を相手に直接販売するサービスを提供するという点でサービスの性質、内容、提供方法が類似しており、サービス提供に係る物品と需要者も共通しているため、両サービス業に同一または類似した役務商標を使用する場合、一般取引の通念上、同一の営業主体によって提供されるサービスと誤認される恐れがあり、両サービス業が類似していると判断する。」と判決している。
■大法院2002年7月26日言渡し2002フ673判決
原審判決理由によれば、原審は、本件の登録された役務商標と引用役務商標が外観は異なるが「メタランド(MetaLand)」という呼称が同一であり、全体的に類似すると前提した後、無効審判が請求された本件の登録された役務商標の指定役務であるインターネットサイバーショッピングモール管理および賃貸業、インターネットを利用した各種物品の販売代行、斡旋業等、いわゆる「電子商取引」を主たるサービスとする役務と、引用役務商標の指定役務のうち「コンピュータを利用したインターネット通信業」の類否を対比して、本件登録された役務商標の指定役務内容が主に既に提供されているインターネット網を利用してオンライン上で財貨や用役の取引を仲介、斡旋するか販売を代行することであるのに対し、引用役務商標の指定役務は、使用者がインターネットを利用して通信ができるように通信設備と回線、接続を保証する一方、情報を交換することができるインターネット網または検索網を提供するか掲示板を運営することを核心とするサービスであって、両指定役務は、その役務の種類、内容、設備、提供の形態と主体を異にし、需要者もインターネットを利用して通信をしようとする人と、具体的にそれと共に具備されたインターネット通信環境を利用して財貨や用役の取引をしようとする人であって概念上区分されることができるため、結局、本件登録された役務商標の指定役務と引用役務商標の指定役務は、互いに類似するといえず、本件の登録された役務商標はその指定役務に関して無効になることができないという趣旨と判断した。
指定役務の類否は、提供される役務の性質や内容、提供手段、提供場所、役務の提供者および需要者の範囲等、取引の実情等を考慮して一般取引の通念によって判断すべきものであるところ(大法院1999年11月23日言渡し97フ2842判決等参照)、最近多くの種類の役務が、インターネット通信を利用してインターネット上で広告が行われ取引が成功する等、インターネット通信を道具として活用するとして、インターネット通信業自体とこれら役務を互いに類似するとみることはできない。
■大法院2018年11月9日言渡し2016フ1376判決
2)本件の登録された役務商標の指定役務と、先登録された役務商標1、2の指定役務のうち販売代行・斡旋業、および先登録された役務商標3の指定役務のうち販売代行業と小売業は、衣類およびファッション雑貨等を需要者を相手として直接販売するサービスを提供するという点で、サービスの性質、内容、提供方法が類似し、サービス提供に関わった物品と需要者も共通する。
3)本件の登録された役務商標の指定役務は、一定の場所で多様な製品を販売するという点で、先登録された役務商標の指定役務と差異がある。しかし、次のような事情に照らしてみると、両役務に同一または類似の役務商標を使用する場合、一般取引の通念上、同一の営業主体によって提供されるサービスと誤認されるおそれがある。
イ)本件の登録された役務商標の登録決定当時の取引の実情をみると、衣類を始めとして靴、帽子等のファッション雑貨等を1つの店鋪や建物または隣接した場所で陳列して販売するか、同一の営業主体が百貨店業、大型ディスカウントショップ業とともにスーパーマーケット業、コンビニ業を営業する傾向があった。
ロ)特に百貨店で衣類やファッション雑貨等が占める比重が高いという取引の実情を勘案すると、百貨店業と先登録された役務商標の指定役務が取扱う製品は、相当部分重複する。
ハ)原告が先登録された役務商標を出願する当時、百貨店業、大型ディスカウントショップ業、スーパーマーケット業等の「包括名称」を役務名称として指定することができなかったので、そのような包括名称の指定役務を営為しようとする場合には、取扱う商品に対する販売代行、卸・小売役務を1つ1つ列挙して役務として指定するしかなかった。
ニ)百貨店や大型ディスカウントショップ内部の店鋪は、製造業社から物品の供給を受けて需要者に直接販売し、百貨店や大型ディスカウントショップの営業主体に賃貸料や手数料を支給するのが大部分なので一般的な衣類、雑貨小売店と運営方式が類似する。
ホ)本件の登録された役務商標の審査当時に適用された特許庁の類似商品、役務審査基準には、本件の登録された役務商標の指定サービス業である包括サービス業名称と類似の例として化粧品・かばん・靴・下着販売代行・斡旋業等が記載されている。
4) それにもかかわらず原審は、本件の登録された役務商標と先登録された役務商標の指定役務が類似しないという等の理由で、本件の登録された役務商標が旧商標法(2016年2月29日法律第14033号で改正される前のもの)第7条第1項第7号に該当しないと判断した。
このような原審の判断には、役務の類似に関する法理を誤解して必要な審理を尽くさないことにより判決に影響を及ぼした誤りがある。
5.商品役務間の類否について
日本の商標審査基準(「類似商品・役務審査基準とは」2ページ目「(3) 商品役務間の類否について」に対応する商標審査基準(韓国)の記載は、以下のとおりである。
(1) 対応する事項が記載された審査基準の場所
・ 商標審査基準第5部第7章 補充基準4. 指定商品の類否判断基準
・ 類似商品審査基準(特許庁例規第123号、2022年1月1日施行)
(2) 異なる事項または留意点
商品と役務の類否について、類似商品審査基準第11条(類否判断の特例)第4項および第5項)に次のように規定されている。
④ 商品とサービス業間は、原則として類似度が低いものと推定する。ただし、次の各号の事項を総合的に考慮して出所の誤認・混同のおそれがある場合には、類似のものとみることができる。 1. 商品の製造、販売とサービス業提供が同一事業者によって行われることが一般的であるが、そして一般人がそのように考えるのが当然であると認められるか否か 2. 商品とサービス業の用途が一致するか否か 3. 商品の販売場所とサービス業の提供場所が一致するか否か 4. 需要者の範囲が一致するか否か 5. 両標章が全体的に同一であるか極めて類似するか否か ⑤ G390802(ソフトウェア)商品と第35類~第45類に属するサービス業間の同一類否は、第4項のうち第2号に特に重点を置き、第1号から第4号までを全て考慮するが、両標章が全体的に同一であるか極めて類似の場合に限って類似の商品と判断する。 |
上記に係る大法院判例(大法院1999年2月23日言渡し98フ1587判決)等によれば「商品とサービス間の同種・類似性は、役務と商品間の密接な関係の有無、商品の製造・販売とサービスの提供が同一事業者によってなされるのが一般的か、そして一般人がそのように考えるのが当然であると認められるか、商品と役務の用途が一致するか、商品の販売場所とサービスの提供場所が一致するか、需要者の範囲が一致するか、類似の標章を使用する場合に出所の混同を招くおそれがあるかという点等を考慮して、取引社会の通念によってこれを判断すべきである。」と判断している。
■大法院1999年2月23日言渡し98フ1587判決
原審判決理由によれば、原審は、本件の登録された役務商標の指定役務(理学療法業、健康診断業、医療保健装備販売斡旋業、検査機器および装備販売斡旋業、在宅医療機器販売斡旋業)は、その対象役務が引用商標の指定商品(内視鏡、脳波計、体温計、心電計、吸引器)を含んだ医療機器の使用、流通等に関連したものであるため、その取扱品目が同種の商品に属するもので密接な関連があり、医療用機械機具およびその部品を取扱う業界は、市場が狭く業種が細分化されず、その製造・販売業者が流通業等の関連役務にも多様に進出しており、一般需要者もそのように考える傾向がある点等の取引社会の実情に照らして、本件の登録された役務商標を上記各指定役務に使用する場合、一般需要者に上記指定役務が引用商標権者の営業として誤認・混同させるおそれがあるため、本件の登録された役務商標の指定役務と、引用商標の指定商品の間に、同種、類似性が認められると判示した。
しかし本件の登録された役務商標の指定役務のうち理学療法業および健康診断業と、引用商標の指定商品間の同種・類似性に関して察するに、上記役務で引用商標の指定商品等のような医療機器を使用するものであるという側面で、上記役務は引用商標の指定商品等と関連があるといえるが、取引社会の実情上、医療機器製造・販売業者等が業種の拡大を介して理学療法業や健康診断業にも進出しているのが一般的であるかどうか、一般需要者もそのように考える傾向があるかどうかについては、疑問をぬぐうことができず、理学療法業や健康診断業と医療機器取扱(製造・販売等)の場所が、相互一致する傾向があるものでもなく、理学療法ないし健康診断業の需要者の範囲と医療機器自体の需要者の範囲が相互一致するともみることができず、さらに、登録された役務商標を「理学療法業」、「健康診断業」の役務商標として使用するとしても、引用商標権者がその役務を運営するものと誤認・混同するおそれがあると断定することもできない点等に照らして、取引通念上、本件登録された役務商標の指定役務のうち理学療法業および健康診断業と引用商標の指定商品の間に、類似性が認められると容易に断定することはできない。原審が、理学療法業および健康診断業も引用商標の指定商品と類似すると判断して、上記理学療法業、健康診断業に係る本件登録された役務商標も引用商標と類似の役務商標として、旧商標法第46条第1項、第9条第1項第7号の規定により無効と判断したことは、商品と役務の類似性に関する法理を誤解して判決に影響を及ぼし違法といえ、この範囲内で控訴理由の主張は妥当である。
■大法院2006年7月28日言渡し2004フ1304判決
商標は商品そのものを、役務商標は役務の出所を識別させるための標章として、各々が果たす機能が異なるため、商品と役務間の同種・類似性を過度に広範囲に認めてはならないといえるものであり、したがって、商品と役務間の同種・類似性は、役務と商品間の密接な関係の有無、商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によってなされるのが一般的か、そして一般人がそのように考えるのが当然であると認められるか、商品と役務の用途が一致するか、商品の販売場所と役務の提供場所が一致するか、需要者の範囲が一致するか、類似の標章を使用する場合に出所の混同を招くおそれがあるかという点等を考慮して、取引社会の通念によってこれを認めなければならないものである(大法院1994年2月8日言渡し93フ1421、1438判決、1999年2月23日言渡し98フ1587判決等参照)。
韓国におけるメタバース内の仮想商品の商標出願審査処理指針について
記事本文はこちらをご覧ください。
韓国における商標情報検索方法―特許情報検索サービス(KIPRIS)
1.KIPRISのウェブサイト
図1に示すKIPRISのウェブサイトhttp://www.kipris.or.kr/khome/main.jspにアクセスし、画面左上のENGLISH(下図の赤丸箇所、以下同様)をクリックすると図2に示す英語版トップページが表示される。以下では、英語版サイトからの検索方法を示す。
図1. KIPRISのウェブサイト-韓国語版トップページ
図2. KIPRISのウェブサイト-英語版トップページ
2.検索方法
図2の英語版トップページで、上部の選択肢から「Trademark」をクリックすると、図3に示す商標検索画面が表示される。
検索方法には二通りあり、デフォルトでGeneral(一般)検索が表示される。
図3. 商標検索画面
2-1.一般検索
一般検索では、検索したいキーワードや出願番号をテキストボックス内に入力して、緑色の検索ボタン(虫眼鏡ボタン)をクリックする。主に、商標の名称や出願人名、出願番号等を入力して検索することができ、ハングル、英語、数字で入力する。論理演算子(*(and),+(or),!(not))を利用することができ、「””」を使用してフレーズ検索(例:”cellular case”)も可能である。
図3で、Trademark表示右側の入力欄に検索語を入力する。すぐ右のSpreadをクリックすると入力用の検索欄の幅が広くなり、より多くのキーワードを入力することができる。また、右端の「Search within search result」のチェックボックスにチェックを入れると、検索結果を対象にした絞り込み検索を行うことができる。
図4に示す画面左側の検索条件設定画面から①Trademark Type(商標の種類)、②③検索結果の並び替え、④商標の権利種別選択、⑤法的状態、⑥ライセンス状況の選択が可能である。
図4. 検索条件設定画面
①検索する商標の種類の選択(図5参照)
②並び替え対象項目の選択(下記から2項目選択可能)
出願番号、出願日、出願公開番号、出願公開日、登録番号、登録日、登録公告番号、登録公告日、国際登録番号、国際登録日、優先番号、優先日、法的状態、製品分類、絵柄コード、出願人、代理人、商標名
③並び替え順(昇順、降順)の選択
④権利種別の選択
(注)2016年9月1日施行の商標法改正により、2016年9月1日以降の出願はService mark(41)、Trademark/Service mark(45)での検索が商標(40)に統合された。
⑤法的状態の選択
⑥ライセンス状況(全体、排他的、非排他的)
また、各項目タイトル右側の「?」をクリックすると、項目の説明がポップアップして表示される。
図4の①で「Select the type of trademark(商標の種類の選択)」をクリックすると図5の選択肢が表示される。
図5. 商標の種類の選択
2-2.スマート検索
図3中央の「Smart Search > Click hear! for advanced search」をクリックすると、図6に示すスマート検索の画面が表示される。
図6. スマート検索画面
スマート検索における検索項目および入力方法は以下のとおりである。
(1) Category(権利種別):図4の④の選択肢と同じ。
(2) Type(商標の種類):図5で示した選択肢と同じ。
(3) Administrative Status(法的状態):図4の⑤の選択肢と同じ。
(4) Trademark Name(商標の名称):商標の名称が英語および日本語(ひらがな、カタカナ)の場合は、そのまま入力して検索可能である(例:さくら、ジャパン)が、漢字の場合はハングル表記を入力して調査しなければならない。商標名称と類似名称を「+」で組み合わせて検索することも可能(例:Aroma Waterを調査する場合「Aroma Water+Aroma+Water」)である。また、全く同一の商標を検索しようとする場合は右端の「Exact match search」にチェックを入れる。
また、図3上部左側の「Eng-Kor」ボタンをクリックすると、英語で構成された商標の場合、入力された英語が自動で韓国語に変換され、英語・韓国語ともに検索される。
(5) Full text(自由検索):キーワードをハングル、英語、数字で入力することができ、論理演算子(*,+,!)の使用やフレーズ検索が可能である。
項目名の右側の「help」をクリックすると、入力説明の画面がポップアップする。
(6) Classification(分類情報):「Classification」欄では、以下の項目を入力して検索することができる。
・Classification(商品・役務分類):商品・役務分類は新分類(国際分類)と旧分類(韓国分類)に区分されているため、二通りの分類コードを使用して検索する必要がある。
例1)「衣類」を検索しようとする場合:25(国際分類)+045(旧分類)
例2)「料食業」を検索しようとする場合:42+43(国際分類)+112(旧分類)
・Similar group(類似群コード):韓国は日本と同様に商品またはサービスの類似範囲を表示する識別記号で類似群コードを運用している。商品は「G(Goods)」、サービスは「S(Services)」で始まり、総5~6桁の文字と数字で構成されている。
例)化粧品:G1201B、料食業:S1206
・Designated Goods(指定商品・役務):例)化粧品、料食業等
・Vienna Code(ウィーンコード):ウィーン国際分類コードを入力して図形商標を検索できる。
項目名右側の「guide」をクリックすると、図7に示す上記4項目の使い方のガイドがポップアップで表示される。ただし、分類の内容は韓国語表記であり、分類内の検索も韓国語で行う必要がある。
図7. 分類情報入力ガイド画面
(7) Number(番号):出願番号、出願公開番号、登録番号、国際登録番号、公告番号を入力できる。出願番号と公告番号は、権利番号2桁(商標:40)+出願または公告年度(西暦4桁)+一連番号(7桁)で構成されており、登録番号は権利番号2桁+一連番号(7桁)で構成されている(例:出願番号40-1999-0001234、登録番号40-0001234)。
項目名右側の「guide」をクリックすると、図8に示す上記出願番号、出願公開番号、登録番号、公告番号のガイドがポップアップで表示される。
図8. 番号入力ガイド画面
左上でどの種類の番号を検索するかを選択し、年代を選択し、図9Aのように検索する番号を「Serial Number入力欄」に入力し、「Check Numbers」をクリックすると、図9Bのように知財種類(40)、年代(1999)を設定した番号が「Selected Serial Number」欄に表示される。次いで、「Query Selection」をクリックすると、図6のスマート検索画面に設定された番号が転写され、検索が可能となる。
図9A. Serial Numberを入力
図9B. Selected Serial Numberに表示
(8) Date(日付):出願日、登録日、出願公開日、公告日、国際出願日、優先日を入力できる。日付は、西暦4桁+月2桁+日2桁を入力します(例:出願日が2007年7月7日である場合、「20070707」)。
なお、項目名右側の「guide」をクリックすると、図10に示す日付入力画面がポップアップで表示される。この画面でカレンダー上の日付をクリックして検索範囲を選択することができる。
検索したい日付の種類を選択し、左側のカレンダーに範囲の開始日、右側のカレンダーに範囲の終了日をクリックすると、それぞれその下の入力欄に設定した日付が表示され、「Query Selection」をクリックすると、図6のスマート検索画面に設定された番号が転写され、検索が可能となる。
図10. 日付入力ガイド画面
(9) Priority(優先権)情報:優先権番号と優先日を入力できる。
項目名の右側の「help」をクリックすると、入力説明の画面がポップアップする。
(10) Name/No./Address(名前/識別番号/住所):出願人、代理人の名前/識別番号/住所、商標権者名を入力できる。出願人の名称は韓国語または英語での検索が可能です。しかしながら、商標権者名は韓国語名称での検索が推奨されており、英語と韓国語とではヒット件数に相当の違いがある。
例1)出願人:Sony、出願人コード:519980961547等
例2)登録権者:소니(ソニーのハングル表記)
また、Applicant(出願人)、Agent(代理人)、patentee(権利者)の右側の「guide」をクリックすると、図11に示す氏名、名称等の入力方法の説明がポップアップで表示される。検索する氏名、名称の種類を選択し、氏名、名称、住所の検索欄に入力し、「Search」をクリックすると、ヒットした内容について、識別番号(「P 」(特許庁顧客番号)、「B」(事業登録番号)、「C」(企業番号))、名称(氏名)、住所が表示される。
図11. 名前/識別番号/住所ガイド画面
3.検索結果(例)
例として、図6に示したスマート検索画面で、登録日に2022年8月1日を入力し、画面右下の「Search」をクリックしたときの検索結果一覧を図12に示す。
図12. 検索結果一覧画面
画面右側の「PUB」をクリックすると、図13に示す公報をPDF形式で閲覧でき、印刷・保存が可能である。
図13. 公報「Appl.Publ.Full Text(出願公開公報)」表示画面
図13で上部の選択肢、「Details(詳細)」、「Reg.Publ.Full Text(公告公報)」、「Registr.Details(登録状況)」、「Administrative Action(審査履歴)」をクリックすると、それぞれが表示される。
4.留意事項
出願された商標は通常、出願日から1~2週間以内にKIPRISウェブサイト上に掲載される。
韓国で商標調査する場合、通常は商標名称と商品・役務分類を入力して検索する。商標名称が英語および日本語(ひらがな、カタカナ)の場合は、そのまま入力して調査が可能であるが、漢字の場合はハングル表記での入力が必要である。
韓国における小売役務の保護の現状
韓国では、2007年以降「特定商品に対する小売業」をニース国際分類第35類の役務に指定して商標登録を受けることができるようになっており、2012年以降は「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業も役務として指定可能となっている。まずは、韓国における「小売業(Retail Services)」に関する商標法での保護を沿革的に見た後、現状を説明することとする。
2007年改正商標法施行規則の内容
旧商標法(全部改正 1990.1.13、1990.9.1施行、法律第4210号)第2条では、「サービスマーク」を「役務を営む者」が使用する標章として規定しており、卸売業および小売業を商標法上登録可能な役務としていなかったため、慣行的に「販売代行業、百貨店管理業、スーパーマーケット管理業」などで出願しなければならなかった。
これに関して、特許法院1999.5.27宣言98허(ホ)6612判決では、小売業者が指定役務を「生活必需品販売店管理業」としてサービスマーク登録を受けた後、自分が所有する生活必需品販売店に看板を掲げて直接運営した事案において、「生活必需品販売店管理業とは他人が所有または経営する生活必需品販売店の店舗の数が多いか少ないかに関わらず、役務に含まれないと解釈することが相当である。」と判示して不使用を理由としてサービスマーク登録の取消を認めた。
上記判決により、卸売業または小売業でありながら販売代行業、販売斡旋業または販売店管理業を指定役務として出願して登録を受けた場合、当該役務に対するサービスマーク的使用ではないとしてその登録が取り消される問題が生じた。これに対して、2007年1月1日に施行された改正商標法施行規則では、上記の問題点を解消して国際的な傾向に合わせるようにニース国際分類第9版の採用に合わせて、商標法施行規則別表2の第35類に卸売業と小売業を追加し、卸売業および小売業が商標法上第35類の役務として登録を受けることができるようになった。
2012年改正商標法施行規則の内容
2007年改正商標法施行規則によると、卸売業および小売業を出願するためには「特定商品に対する卸売業および小売業」または「同種の商品群に分類可能な商品集団に対する卸売業および小売業」のように役務の対象を具体的に記載しなければならず、総合卸売業および総合小売業は認められなかった。
しかし、2012年改正商標法施行規則では、ニース国際分類第10版の商品分類および取引実情を反映して、「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業を役務として認め、総合卸売業および総合小売業も商標として登録を受けることができるようになった。
2016年全部改正商標法による保護態様
また、2016年9月1日に施行された全部改正商標法は、商標の定義規定を「商標とは自己の商品(地理的表示が使用される商品の場合を除いて、役務または役務の提供に関連したものを含む。以下同じ。)と他人の商品を識別するために使用される標章をいう(第2条第1項第1号)」と改正して、商標とサービスマークの区別を廃止し、多様な形態の商品および役務を商標と一元化して保護できるようにしている。
2016年改正商標法施行規則では、従来包括名称と分類されていた「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業を類似群コードS2090から見て狭義の類似群コードに分類して、「特定商品に対する小売業」と「総合卸売業および総合小売業」の区分を明確にした。
小売業に対する保護の現状
現在は、韓国商標法に基づき、ニース国際分類第11版の商品分類基準により第35類の具体的な小売業を指定して商標として出願することができる。出願時に、指定役務を「小売業」と指定した場合には、役務の名称が不明確であるという拒絶理由が通知されるため、指定役務を「特定商品に対する小売業」、「同種の商品群に分類可能な商品集団に対する小売業」または「告示された包括商品名称に対する小売業」などと指定して出願しなければならない。
同種の商品群に分類可能な商品集団の範囲は、該当商品または商品集団の取引実態、需要者の範囲、供給取引先などを総合的に考慮して判断し、告示された商品の名称を基準に出願することが一般的である(例:家具小売業、靴小売業、文房具小売業など)。総合卸売業および総合小売業に対して出願する場合、「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業、コンビニエンスストア業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通信販売仲介業」の告示された名称を指定して出願することができる。
小売業に対して商標登録を受けた後は、商標としての独占的使用権、他人に対する使用禁止権および登録排除効を有する。特に、使用禁止権および登録排除効に関して、他人の商標および商品または役務と類似判断が問題となることがあるが、審査基準では役務間の類似判断において、総合卸売業および総合小売業である「百貨店業、大型割引店業、スーパーマーケット業、コンビニエンスストア業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通信販売仲介業」は互いに類似した役務と推定し、これら「総合卸売業および総合小売業」と「個別商品に対する小売業」は非類似と推定される(例えば、「百貨店業」と「化粧品小売業」は非類似と推定される)。
また、「小売業」と小売業の対象となる「商品」の類似は、商品と役務との間の同種性を基準に判断される。ここで、同種性とは「当該商品がなければ当該役務が存在できないほど極めて密接な関係がある場合」をいうが、特許法院2011.5.19宣告2011ホ1616判決では「ゴルフグローブ、ゴルフボール」と「スポーツ用具小売業」を類似と判断しており、特許法院2011.12.14宣告2011ホ8655判決では「人参ジュース、乳酸菌飲料、ヨーグルト、酵母」と「健康機能食品小売業」を類似と判断した。
したがって、一般的に「小売業」とその対象となる「商品」は、出所混同の恐れがあるとみて類似と判断されており、「小売業」に対する商標出願を行う場合は、小売業の対象となる商品に対する先行商標も調査する必要がある。
また、小売業は商品の流通過程で用役を提供するサービスに該当するため、販売の対象となる商品に商標を付する場合には、「小売業」とその対象となる「商品」の両方を出願することを検討する必要がある。
台湾における小売役務の保護の現状
- 台湾における小売役務の保護
台湾では、1997年12月23日から小売役務を指定役務とする商標登録出願の受理が開始され、1998年4月20日に、審査の根拠として「小売サービスマークの登録審査要点」が公告された。「小売サービスマークの登録審査要点」が施行された後、商標法が2回にわたり改正(2010年8月25日改正、2011年6月29日改正)されて「サービスマーク」という名称が削除されたほか、前記の「要点」に記載された小売役務の分類がニース国際分類表と異なったため、知的財産局は、「小売サービスマークの登録審査要点」に代わるものとして2012年4月に「小売役務審査基準」を制定、同年7月に実施し、小売役務の類型や小売役務とその他の商品および役務との類似関係の判断原則などについて詳しく説明し、審査の参考に供した。
「小売役務審査基準」によると、小売役務は、「総合性商品の小売役務」(多様な商品を一括して取り扱う)および「特定商品の小売役務」(特定商品のみを取り扱う)の二つの類型に分けられている。しかし、審査上、「総合性商品の小売役務」「特定商品の小売役務」という指定役務は、不明確で認められないため、経済部商業司が編集した「会社商号の営業項目コード」を参考にし、市場の経営形態に合わせ、受理される具体的な指定役務を例示している。例えば、「総合性商品の小売役務」については、「スーパーマーケット、デパート」が受理される指定役務であるのに対し、「特定商品の小売役務」においては、「時計の小売役務、農産物の小売役務」などが受理される指定役務である。
- 「小売役務」と「その他の商品・役務」との類似性の認定
「小売役務審査基準」で明示された類似関係の判断原則は、以下の通りである。
(1) 「総合性商品の小売役務」vs.「総合性商品の小売役務」
総合性商品の小売役務同士の間には、消費者のニーズを満足させるため、および役務の提供者などの要素において共通または関連するところがあるため、原則的には類似関係を有するものと認められる。
(2) 「総合性商品の小売役務」vs.「特定商品の小売役務」「商品」「その他の役務」
「総合性商品の小売役務」は、「特定商品の小売役務」「商品」「その他の役務」と性質が異なるため、原則的には非類似と認められる。
(3) 「特定商品の小売役務」vs.「特定商品の小売役務」
特定商品の小売役務同士の間は、取り扱う商品が違えば、原則的には非類似と認められる。例えば、「農産物の小売役務」と「家具の小売役務」の間では商品の性質がかなり異なり、明らかに市場を区別することができるので、お互い類似しないものである。しかし、取り扱う商品の種類または性質が極めて近い場合、例えば、「娯楽用品の小売役務」と「運動用品および器具の小売役務」の間は、原則的に類似関係を有するものと認められる。
(4) 「特定商品の小売役務」vs.「商品」
「特定商品の小売役務」については、「特定商品」が概括的なもので範囲が広ければ、原則的には、当該概括的「特定商品」でカバーできる個別の商品まで類似扱いされることはない。例えば、「農産物の小売役務」について、「農産物」は「野菜、果物、花」などの商品をカバーできるものの、「農産物の小売役務」と「野菜、果物、花」とは、原則として非類似と認められる。しかし、一般社会通念および取引の状況に照らして、役務または商品の提供者が同一または関連性があるという誤認が生じやすい場合は、類似関係を有すると認められる。その例としては、「飲料の小売役務」と「炭酸水、清涼飲料」が挙げられる。
知的財産局が公開した「『特定商品の小売役務』と『当該特定商品』の間の類似検索関係参考表」において、類似すると認められているものは、下記の通りである。
(5) 「特定商品の小売役務」vs.「その他の役務」
「特定商品の小売役務」と「その他の役務」は、互いに性質が異なるため、原則的には非類似と認められる。例えば、「販売代行」と「小売役務」は、原則として非類似と認められる。しかし、両者の出所が同一である、または同一ではないが出所の間に関係があるという誤認を容易に消費者に生じさせるものである場合、例えば、「被服の販売代行」と「被服の小売役務」は、原則的には類似するものと認めることができる。
- 商品商標、役務商標と小売役務商標の使用上の相違点
商品商標と役務商標は、保護対象が商品または役務そのものであるのに対し、小売役務商標は、保護対象が出願人の提供する販売に関する一連のサービスである。したがって、商標の使用をするのはどちらに該当するか疑義が発生する可能性がある。以下に事例を挙げて説明する。
(1) 事例1(商品商標との相違点)
「特定商品Aの小売」および「ネットショッピング」を指定して甲商標の登録を取得した場合、実際の甲商標を商品Aに表示し、実店舗およびインターネットで販売することが「特定商品Aの小売」あるいは「ネットショッピング」における商標使用に該当するかが問われた事例においては、商品Aに甲商標を表示し、実店舗およびネットで販売することは、甲商標の商品Aへの使用であって、「特定商品Aの小売」および「ネットショッピング」における使用には該当しないと認められた。
「登録商標の特定商品における使用」とは、例えば、家具、電気製品そのもの、および商品の包装パッケージに登録商標を表示することを指す。一方、「登録商標の小売役務における使用」とは、例えば、業者が実店舗またはインターネットで各種ブランドの家具、電気製品を取り扱い、消費者に選択・購入させるサービスを提供し、当該実店舗またはホームページで登録商標を表示する行為を指す。
(2) 事例2(役務商標との相違点)
「食品、飲料の小売」において商標の登録を取得し、自ら開設するレストランにおいて、客にジュースを販売するサービスを提供することは、「食品、飲料の小売」における使用とは認められない。
「食品、飲料の小売」とは、ある場所で食品、飲料を揃え、消費者にこれらの商品を見せて、選択・購入の便宜を図るサービスのことであり、例えば、食料品店、飲料店がこれに該当する。一方、「レストラン」は料理(食品)、ジュース(飲料)を客に提供(販売)するものの、主には、座席が設けられた環境で、消費者が注文して、その場で食事・喫茶できるというサービスである。両者の性質、効能は異なるため、商標権者は「食品、飲料の小売」において登録を取得したものの、実際にはレストランを開いて、料理、ジュースを提供している場合、「食品、飲料の小売」における商標の使用とは認められない。
- 小売役務に関する制度における日本と台湾の相違
(1) 台湾における政府料金の追加
日本では、小売役務商標を出願する場合、多くの小売役務を指定しても1区分の料金の納付で足りるが、台湾では、特定商品の小売役務を指定する場合、5個以内であれば1区分の料金で、5個を超えた場合は、料金(1個につきNT$500)が追加される。
(2) 日本における商標の使用または商標の使用の意思を確認するための審査
総合小売役務を指定する場合:台湾では、出願人が個人か法人かを問わず、総合小売役務を指定することができるが、日本では、個人が総合小売役務を指定して出願した場合、個人(自然人)が総合小売役務を行うことは通常考え難いという理由により、拒絶理由通知が発せられ、商標の使用または商標の使用の意思を確認するための証拠提出が要求される。一方、法人(会社)が総合小売役務を指定して出願した場合でも、総合小売役務が特定商品の小売役務と異なる特徴があることを理由に、「自己の業務に係る商品または役務についての使用」であるか否かについて調査が行われ、出願人が総合小売等役務を行っていると認められなかった場合、同様に証拠提出が求められる。
類似の関係にない複数の特定商品の小売役務を同時に指定する場合:台湾では、特定商品の小売役務をたくさん指定しても問題ないが、日本では、通常、同時に取り扱わない商品同士を取り扱う小売役務を指定した場合には(例えば、「書籍」と「魚介類」、「飲食料品」と「被服」など、類似する小売役務の分野を超えて複数の類似群に属する小売役務を同時に指定)、その商標を記載された役務に使用しているかまたは使用の意思があるかについて疑問が生じるので、商標の使用または商標の使用の意思を確認するため、拒絶理由通知が発せられ、証拠書類の提出が求められる。
韓国における小売役務の保護の現状
韓国では、2007年以降「特定商品に対する小売業」をニース国際分類第35類の役務に指定して商標登録を受けることができるようになっており、2012年以降は「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業も役務として指定可能となっている。まずは、韓国における「小売業(Retail Services)」に関する商標法での保護を沿革的に見た後、現状を説明することとする。
2007年改正商標法施行規則の内容
旧商標法第2条では、「サービスマーク」を「役務を営む者」が使用する標章として規定しており、卸売業および小売業を商標法上登録可能な役務としていなかったため、慣行的に「販売代行業、百貨店管理業、スーパーマーケット管理業」などで出願しなければならなかった。
これに関して、特許法院1999.5.27宣告98허6612判決では、小売業者が指定役務を「生活必需品販売店管理業」としてサービスマーク登録を受けた後、自分が所有する生活必需品販売店に看板を掲げて直接運営した事案において、「生活必需品販売店管理業とは他人が所有または経営する生活必需品販売店をその他人に代わって管理する役務を提供し、その対価をもらって自分の収入とすることを業とすることをいい、自分の生活必需品販売店を所有する者が自ら自分の販売店を運営することは、その生活必需品販売店の店舗の数が多いか少ないかに関わらず、役務に含まれないと解釈することが相当である。」と判示して不使用を理由としてサービスマーク登録の取消を認めた。
上記判決により、卸売業または小売業でありながら販売代行業、販売斡旋業または販売店管理業を指定役務として出願して登録を受けた場合、当該役務に対するサービスマーク的使用ではないとしてその登録が取り消される問題が生じた。これに対して、2007年1月1日に施行された改正商標法施行規則では、上記の問題点を解消して国際的な傾向に合わせるようにニース国際分類第9版の採用に合わせて、商標法施行規則別表2の第35類に卸売業と小売業を追加し、卸売業および小売業が商標法上第35類の役務として登録を受けることができるようになった。
2012年改正商標法施行規則の内容
2007年改正商標法施行規則によると、卸売業および小売業を出願するためには「特定商品に対する卸売業および小売業」または「同種の商品群に分類可能な商品集団に対する卸売業および小売業」のように役務の対象を具体的に記載しなければならず、総合卸売業および総合小売業は認められなかった。
しかし、2012年改正商標法施行規則では、ニース国際分類第10版の商品分類および取引実情を反映して、「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業を役務として認め、総合卸売業および総合小売業も商標として登録を受けることができるようになった。
2016年全面改正商標法による保護態様
また、2016年9月1日に施行された全面改正商標法は、商標の定義規定を「商標とは自己の商品(地理的表示が使用される商品の場合を除いて、役務または役務の提供に関連した物を含む。以下同じ。)と他人の商品を識別するために使用される標章をいう(第2条第1項第1号)」と改正して、商標とサービスマークの区別を廃止し、多様な形態の商品および役務を商標と一元化して保護できるようにしている。
2016年改正商標法施行規則では、従来包括名称と分類されていた「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業」などの総合卸売業および総合小売業を類似群コードS2090から見て狭義の類似群コードに分類して、「特定商品に対する小売業」と「総合卸売業および総合小売業」の区分を明確にした。
小売業に対する保護の現状
現在は、韓国商標法に基づき、ニース国際分類第11版の商品分類基準により第35類の具体的な小売業を指定して商標として出願することができる。出願時に、指定役務を「小売業」と指定した場合には、役務の名称が不明確であるという拒絶理由が通知されるため、指定役務を「特定商品に対する小売業」、「同種の商品群に分類可能な商品集団に対する小売業」または「告示された包括商品名称に対する小売業」などと指定して出願しなければならない。
同種の商品群に分類可能な商品集団の範囲は、該当商品または商品集団の取引実態、需要者の範囲、供給取引先などを総合的に考慮して判断し、告示された商品の名称を基準に出願することが一般的である(例:家具小売業、靴小売業、文房具小売業など)。総合卸売業および総合小売業に対して出願する場合、「百貨店業、スーパーマーケット業、大型割引店業、コンビニエンスストア業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通信販売仲介業」の告示された名称を指定して出願することができる。
小売業に対して商標登録を受けた後は、商標としての独占的使用権、他人に対する使用禁止権および登録排除効を有する。特に、使用禁止権および登録排除効に関して、他人の商標および商品または役務と類似判断が問題となることがあるが、審査基準では役務間の類似判断において、総合卸売業および総合小売業である「百貨店業、大型割引店業、スーパーマーケット業、コンビニエンスストア業、インターネット総合ショッピングモール業、電気通信による通信販売仲介業」は互いに類似した役務と推定し、これら「総合卸売業および総合小売業」と「個別商品に対する小売業」は非類似と推定される(例えば、「百貨店業」と「化粧品小売業」は非類似と推定される。)。
また、「小売業」と小売業の対象となる「商品」の類否は、商品と役務との間の同種性を基準に判断される。ここで、同種性とは「当該商品がなければ当該役務が存在できないほど極めて密接な関係がある場合」をいうが、特許法院2011.5.19宣告2011허1616判決では「ゴルフグローブ、ゴルフボール」と「スポーツ用具小売業」を類似と判断しており、特許法院2011.12.14宣告2011허8655判決では「人参ジュース、乳酸菌飲料、ヨーグルト、酵母」と「健康機能食品小売業」を類似と判断した。
したがって、一般的に「小売業」とその対象となる「商品」は、出所混同のおそれがあるとみて類似と判断されており、「小売業」に対する商標出願を行う場合は、小売業の対象となる商品に対する先行商標も調査する必要がある。
また、小売業は商品の流通過程で用役を提供するサービスに該当するため、販売の対象となる商品に商標を付す場合には、「小売業」とその対象となる「商品」の両方を出願することを検討する必要がある。