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インドにおいて特許を受けることができない発明

【詳細】

 インド特許法第3条は、特許を受けることができない発明として、以下を規定する。

 

 1.取るに足らない発明(特許法第3条(a))

 取るに足らない発明、または確立された自然法則に明らかに反する事項を発明としてクレームしても特許を受けることができない。

 

 2.公序良俗(特許法第3条(b))

 その意図された用途が、公序良俗に反し、または人、動物、植物の生命もしくは健康または環境に深刻な害悪を引き起こす発明をクレームしても特許を受けることができない。

 

 3.発見(特許法第3条(c))

 科学的原理の「単なる」発見、または抽象的理論の形成、または現存する生物もしくは非生物物質の発見を発明としてクレームしても特許を受けることができない。

 なお、ここでいう基準は「単なる発見」に対してのみである。仮にその発明が単なる発見を超えるものであれば、特許を受けることができる。

 

 4.既知の物質についての新たな形態(特許法第3条(d))

 特許法第3条(d)は、以下のカテゴリーは特許を受けられないと規定する。

 ・既知の物質について何らかの新規な形態の単なる発見であって当該物質の既知の効能の増大にならないもの。

 ・既知の物質の新規特性もしくは新規用途の単なる発見。

 ・既知の方法、機械、もしくは装置の単なる用途の単なる発見。

 ただし、かかる既知の方法が新規な製品を作り出すことになるか、または少なくとも一の新規な反応物を使用する場合は、この限りでない。

 特許法第3条(d)では、適用に際して、「説明」も記載される。そこには「既知物質の塩、エステル、エーテル、多形体、代謝物質、純形態、粒径、異性体、異性体混合物、錯体、配合物、および他の誘導体は、それらが効能に関する特性上実質的に異ならない限り、同一物質とみなす」と記載される。

 

 5.混合(特許法第3条(e))

 物質の成分の諸性質についての集合という結果となるに過ぎない「単なる」混合によって得られる物質は、特許を受けることができる発明から除外される。当該物質を製造する方法もまた、特許を受けることができる発明から除外される。本項で用いられる「単なる」という用語は、ある程度の混合によっては特許を受けることができる可能性がある。

 

 6.再配置(特許法第3条(f))

 既知の装置の「単なる」配置もしくは再配置または複製であり、これを構成する各装置が既知の方法によって相互に独立して機能するものを発明としてクレームしても特許を受けることができない。

 

 7.農業についての方法(特許法第3条(h))

 農業または園芸についての方法は、特許を受けることができない。

 

 8.内科的または診断的な方法(特許法第3条(i))

 人や動物の内科的、外科的、治療的、予防的、診断的、療法的もしくはその他の処置方法であって,疾病から自由にしまたはそれらの製品の経済的価値を増進させるものは、特許を受けることができない。

 

 9.植物および動物(特許法第3条(j))

 植物、動物、種子、変種および種の全部または一部は、特許を受けることができない。ただし、微生物は除外されており特許を受けることができる。

 

 10.コンピュータプログラムおよびビジネス方法(特許法第3条(k))

 数学的もしくは営業の方法、またはコンピュータプログラムそれ自体もしくはアルゴリズムは、特許を受けることができない。コンピュータプログラムに関連した発明のうち、本項により、コンピュータプログラムそれ自体についての発明は特許の対象とはならないが、発明の一部としてコンピュータプログラムが存在するということによって、特許を受けることができなくなるわけではない。

 

 11.文学および芸術作品(特許法第3条(l))

 文学、演劇、音楽もしくは芸術作品、または映画作品およびテレビ制作品を含む他の何らかの審美的創作物は、特許を受けることができない。これらの創作物は著作権法により保護される。

 

 12.精神的行為をなすための方法(特許法第3条(m))

 精神的行為をなすための「単なる」計画もしくは規則もしくは方法、またはゲームをするための方法は、特許を受けることができない。

 

 13.情報の提示(特許法第3条(n))

 情報の提示に関する発明は特許を受けることができない。

 

 14.集積回路(特許法第3条(o))

 集積回路の回路配置をクレームする発明は特許を受けることができない。半導体の配置に関しては、2000年半導体集積回路配置法により保護される。

 

 15.伝統的知識(特許法第3条(p))

 事実上、古来の知識である発明、または古来知られた部品の既知の特性の集合もしくは複製である発明は、特許を受けることができない。

 

 また、特許法第4条では、1962年原子力法(Atomic Energy Act, 1962)第20条(1)に該当する原子力に関する発明には特許を付与しない旨を規定する。1962年原子力法第20条(1)は、「原子力の生産、制御、利用もしくは処分、または、指定物質もしくは放射性物質の探査、採鉱、抽出、生産、物理的もしくは化学的処理、加工、濃縮、被覆もしくは利用、または原子力操業の安全性確保のために有用な、またはそれらに関係する発明」に対して、特許の付与を禁止する。発明がこのようなカテゴリーに属するかどうかを判断する権限は、中央政府(インド原子力省、Department of Atomic Energy, Government of India)に委ねられている。