オーストラリアで生まれた発明の取扱い(国家安全保障に関連する法規制)
【詳細】
1.一般ルール
オーストラリアには、特許出願をオーストラリアに第一国出願しなければならない、とする法規定は存在せず、出願人は自ら選択した国に第一国出願することができる。
ただし、オーストラリア国外へ出願するに際し、出願人は、当該出願対象の発明が以下の「戦略的技術」に該当するか否か検討しなければならない。「戦略的技術」に該当する場合、当該情報を国外に持ち出す前に政府の承認を得ることが必要となる。
2.戦略的技術
オーストラリアにとって戦略的に重要な情報の国外持ち出しを規制する法律として、2012年防衛取引管理法(the Defence Trade Control Act of 2012: DTCA)が存在する。DTCAは、戦略的かつ軍民の両用可能な物品・技術を適用対象とする。
DCTAは、防衛戦略上、機密扱いされるべき情報や技術を、輸出、提供または公開することを同法の違反行為としているが、オーストラリアで生まれた発明がかかる情報や技術に該当する場合、外国出願する目的で行われる発明情報のあらゆるやり取りに適用される可能性がある。
特定の物品、ソフトウェア、技術が「防衛戦略物資リスト(Defence and Strategic Goods List: DSGL)」に含まれているか否かを判断する際に、オーストラリア国防省のオンラインツール(https://dsgl.defence.gov.au)を参照することができる。特定の項目が規制対象であるのか、物品自体がリストアップされているのか、関連する材料、装備、ソフトウェア、技術がリストアップされているのか、について確認する必要がある。コンピュータやソフトウェアといった品目がリストアップされている場合、DSGLに規定された規制閾値と、当該物品の技術仕様や性能を比較し確認する必要がある。
対象技術がDSGLに含まれる場合、オーストラリア国防省に国外持ち出しの許可を申請しなければならない。オーストラリア国防省は、15日以内に承認または拒否を決めることとされている。
また、安全保障に関するさまざまの技術分野に対応した各種の法律が存在し、核兵器・生物兵器を含む大量破壊兵器に関しても、別途規定されている。
なお、オーストラリア特許法第152条および第173条の規定に基づき、オーストラリア特許庁長官は、「戦略的技術」については公開を禁止する命令を発することが可能とされている。ただし、当該規定は、あくまでオーストラリア特許庁に特許出願されたことを前提としており、外国に特許出願する前に安全保障上の確認を要求するものではない。