インドにおける特許新規性喪失の例外
インド特許法第VI章の第29条から第33条において、別途に開示または公表された発明が後の発明の新規性を喪失させないとみなされる様々な例外が規定されている。新規性喪失の例外規定の適用を受けるために特別な申請は不要であり、指令書における拒絶や第三者からの無効化手続において引例による新規性の欠如を指摘された段階で、それに対する反論として新規性喪失の例外規定に該当することを主張可能である。
1. 先行開示による新規性喪失(第29条)
不正な入手に基づく開示:発明の特許権者または出願人(以下、特許権者/出願人)が、次のことを証明する場合には、当該発明は先行開示により新規性を喪失していないとみなされる。
(a)先行開示された内容が、特許権者/出願人またはその前権利者から入手されたものであって、(b)かかる内容が、特許権者/出願人またはその前権利者の同意を得ずに開示されており、さらに(c)特許権者/出願人が、かかる自己の発明の開示を知った後直ちに、実行可能な範囲で速やかに特許出願を提出したこと。
制限:この規定に基づく恩恵は、特許権者/出願人の発明がその優先日より前に、特許権者/出願人もしくはその前権利者により、または特許権者/出願人もしくはその前権利者の同意を得た他の者により、インドにおいて商業的に実施された場合には、適用されない。
権利に違反して提出された出願:別の特許出願の出願人の権利に違反して提出された特許出願、または当該違反して提出された特許出願の出願後に正当な出願人の同意を得ずに、その特許出願がカバーする発明が当該違反して提出された特許出願の出願人によってあるいは当該違反して提出された特許出願の出願人による発明の開示の結果として第三者によって開示または使用されたという事実によって、後の特許出願の新規性が喪失したとみなすことはできない。(前項が正当な出願人による特許出願よりも前の不正な入手に基づく他人の「開示」を対象としているのに対して、本項では、不正な出願人による「特許出願」やそのような「特許出願」が提出された後の不正な実施、開示を対象としている。)
2. 政府への先行伝達による新規性喪失(第30条)
発明内容またはその価値に関する調査中に、政府または政府により委任された者に対して行われた発明の伝達は、当該発明の新規性には影響を及ぼさないとみなされる。政府または政府により委任された者に対して行われた発明の伝達から、当該発明の特許出願の提出までの期限は特に定められていない。
3. 一般展示などによる新規性喪失(第31条)
一定の条件に基づき、出願人が自己の発明の展示、使用または開示の日から12か月以内に当該発明の特許出願を提出する場合には、当該発明はかかる展示、使用または開示により新規性を喪失していないとみなされる。詳しい説明を下記に示す。
(1)発明が展覧会で展示される場合、中央政府が官報における告示により第31条の恩恵を適用した展覧会に限り、かかる展覧会のための当該発明の使用および開示に対して、この例外が適用される。
(2)学会において発表された論文における、真正かつ最初の発明者による発明の記載、または学会の会報における当該論文の公表は、たとえかかる行為の後に特許出願が提出されたとしても、当該発明の新規性を喪失させないとみなされる。重要な点として、このカテゴリーに基づき例外適用の資格を与えられるのは、真正かつ最初の発明者による学会における発明の発表だけであって、真正かつ最初の発明者の同意を得た者による発表ではないことに注意すべきである。また、「学会」という用語はインド特許法において定義されていないものの、この規定は、全ての専門出版物、刊行物および雑誌が例外適用の資格を与えられるわけではないことを示唆している。
4. 公然実施による新規性喪失(第32条)
発明がその優先日前の12か月以内にインドにおいて公然実施されたが、かかる実施が適切な試験のためだけに行われ、当該発明の内容に照らしてその試験が合理的に必要であった場合には、かかる実施は当該発明の新規性を喪失させないとみなされる。ただし、かかる公然実施は、出願人/特許権者自身により、または出願人から必要な同意を得た第三者により行われなければならない。
5. 仮明細書の提出後における使用または開示による新規性喪失(第33条)
仮明細書に従い提出された完全明細書は、仮明細書に開示された発明が仮明細書の提出日の後にインドその他の場所において開示または使用された場合には、新規性を喪失しないとみなされる。同様の規定が、仮明細書の優先権を主張するPCT出願にも適用される。
インドネシアにおける特許発明の新規性喪失の例外
1.インドネシアにおける特許制度
インドネシアにおける特許制度は先願主義である。これは、インドネシアの法域において特許出願を行う最初の者が、すべての要件が満たされ出願が登録された時点で特許権を有することを意味する。インドネシア特許法第13/2016号の第37条において述べられている通り、「異なる日に異なる出願人による類似の発明に関する二以上の出願がある場合、最先の出願日を有する出願が、登録されるべきものとみなされる出願である」。したがって、特許出願の出願日に注意を払うことが極めて重要である。
2.特許における新規性とは?
新規性は、特許にとって最も重要な要件である。インドネシア特許法に基づき、出願の出願日時点において、発明が「従前の技術開示」とは「同一でない」場合に、当該発明は新規であるとみなされる。
ここで、「技術開示」とは、書面、口頭による説明、実演その他の方法により、インドネシアの国内外で発表されたものであり、出願日または優先日(優先権主張出願の場合)より前に当該発明を当業者が実施することを可能とするものをいう。
「従前の技術開示」には、審査対象である出願の出願日以降に公開され、実体審査を受けている他のインドネシア出願であって、その出願日が審査対象である出願の出願日または優先日より前であるものが含まれる(インドネシア特許法第13/2016号の第5条(3)に規定)。
「同一でない」という用語は、その一以上の技術的特徴においてすべての先行技術と異なることを意味するものである。「従前の技術開示」という用語は、特許文献と非特許文献の双方から成る最新技術または先行技術を意味する。
新規性の判断基準は、既に公衆に利用可能となっていない技術に対してのみ特許が付与されることを確実にする。すなわち、クレーム発明は、特許出願の出願日または優先日よりも前に、世界中のどこかで、例えば、刊行物により、または、公に製造され、実施され、口頭により提示され、または使用されたことの結果として、公衆に既に開示されていてはならない。
3.新規性喪失の例外
出願の新規性喪失は、以下の場合において例外とみなされ得る
3-1.自己開示
3-1-1. 試験としての実施
発明に関して特許を受ける権利を有する出願人が、インドネシア特許出願の出願日の前6ヶ月以内に研究または開発を目的として試験を実施した場合(インドネシア特許法第13/2016号の第6条(1))。
3-1-2. 展示会における公開
発明が、インドネシアまたは他国において開催された国際展示会、または公に認められた国内展示会において、インドネシア特許出願の出願日の前6ヶ月以内に公開された場合(インドネシア特許法第13/2016号の第6条(1))。
3-1-3.講演会その他科学技術会議における発表
発明が、インドネシア特許出願日の前6ヶ月以内に科学技術講演会またはその他科学技術会議において発明者により発表された場合(インドネシア特許法第13/2016号の第6条(1))。学術誌における発明の開示、例えば、論文、学位論文または学術論文を目的とした実験または実験段階における学術講義、および、大学や公の学術機関における研究結果に関する議論のための学術フォーラムは、特許出願が当該開示後6ヶ月以内に行われれば、発明の新規性を否定しない。
3-2.不正開示
当該発明に関して特許を受ける権利を有する出願人の意図に反して、インドネシア特許出願の出願日の前12ヶ月以内に発明が公知となった場合(インドネシア特許法第13/2016号の第6条(2))。
4.新規性喪失の例外の申請に関する手続
インドネシア特許法には、発明の公開が出願より前に行われたことを宣誓するための要件を定める明確な規定はない。しかし、第三者がその公開に乗じる可能性を回避するために、一定の時点において宣誓を行うことが推奨される。こうした宣誓書を提出する時期は、知的財産権総局により要求された時である。さらに、出願人がこうした宣誓書の提出を希望する場合、その提出物には、公開の詳細および状況が含まれなければならない。
5.新規性喪失の例外に関する証拠書面
新規性喪失の例外にかかる技術開示の証拠は、書面でなければならない。新規性の判断基準で述べた通り、「技術開示」は特許文献と非特許文献を含む。非特許文献の例としては、非言語の開示、実演、または観察された先の使用などの再現可能なあらゆる形態の情報、学術誌における論文、ビデオテープ、CD-ROM、テープその他の情報を保存する媒体に含まれる情報、およびオンライン調査結果からの抄録などのオンライン設備を通じて取得された情報(出願人は、当該発表のアクセス日を特定しなければならない)が含まれる。さらに、その他の方法で公衆に利用可能となった開示、例えば、実演、販売申し出、マーケティング活動、先の使用または一定の関連当事者に対するレクチャーなどであってもよい。