中国における意匠出願制度概要
意匠の出願手続フローチャート図
(1)出願手続
(i)出願
出願書類は、出願書、意匠の図面又は写真、意匠の簡単な説明書等(専利法第27条。専利法実施細則第27条・同第28条。以下単に「細則」とする)。
すべての書類は中国語で提出する必要があり、中国語でない場合は不受理となる(細則第3条・同第39条)。外国語出願制度はない。
パリ条約を利用した優先権主張は、第一国への出願から6か月以内にしなければならない(専利法第29条)。
なお、日本と異なり部分意匠制度や秘密意匠制度はない。
(ii)方式審査(中国語「初步审查(初歩審査)」)
願書や添付書類などが所定の方式に適合しているか否か、および、明らかに不登録事由に該当するか否かの審査が行われ、必要に応じ、指定期限内に意見の陳述または補正をするよう通知される(専利法第40条、細則第44条)。
新規性、先行する他人の権利と抵触するか否かの実体審査は行われず(登録後の無効請求により対応される)、出願公開制度、審査請求制度もない。
意匠出願が拒絶された場合には、出願人は拒絶査定の通知の日から3か月以内に審判部(中国語「专利复审委员会(専利復審委員会)」)に対して審判(中国語「复审(復審)」)を請求することが出来る(専利法第41条)。
(iii)登録・公告
審査の結果、出願を却下する理由が存在しない場合には権利付与決定の後、意匠権(中国語「外观设计专利权(外観設計専利権)」)が付与され、その旨が公告される。意匠権は公告日から有効となる(専利法第40条)。
意匠の登録手続を行う際には、登録料、公告印刷料及び特許付与年の年金を納付しなければならない(細則第97条)。
意匠権の存続期間は、出願日から10年(専利法第42条)。なお、出願日は初日に算入する(審査指南第五部分第九章2.1)。
(2)類似意匠(中国語「相似外观设计(相似外観設計)」)・組物意匠
原則として一出願一意匠であるが、同一製品における二つ以上の類似意匠、あるいは同一種類でかつセットで販売又は使用する製品の二つ以上の意匠は、一件の出願として提出することができる(専利法第31条、細則第35条)。なお、一件の意匠出願で最大10の類似意匠を出願できる(細則第35条)。
組物(中国語「成套产品」)の意匠の有効性については、場合に応じ、組物としての対比又は個々の構成物品としての対比により判断される(審査指南第四部分第五章5.2.1、同5.2.5.1)。
(3) GUI外観設計
国家知識産権局は2014年5月1日施行の「特許審査指南」において、通電後のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)表示に該当する製品を意匠の保護範囲に取り入れた。
また、2019年4月4日の「審査指南改正草案」において、GUIに関する記載要件(GUI外観設計の製品名称や簡単な説明の記載要件、意匠の図面または写真の提出に関して)を明確にする案が提出されている。(審査指南改正草案第一部分第三章4.2~4.4)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/ip/law/pdf/opinion/20190404_1.pdf
(4)自発補正
出願人は、出願日より2か月以内に、意匠出願を自発的に補正(中国語「修改」)することができる。書類の補正は、元の画像又は写真で表示した範囲を超えてはならない(専利法第33条、細則第51条)。
(5)評価報告書
意匠権の付与決定が公告された後に、意匠権者及び利害関係者は侵害訴訟における証拠となる意匠権の評価報告書(中国語「专利权评价报告(専利評価報告)」)の作成を中国特許庁に請求することができる(専利法第61条、細則第56条)。
利害関係者とは、裁判所に侵害訴訟を提起する権利を有する原告、例えば、意匠権、専用実施権者、及び意匠者から契約等により訴権を取得した通常実施権者をいう。