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ベトナムにおける特許出願の補正および補充

1. 補正または補充の内容
 特許出願に対するいかなる補正または補充も、(i)当初の出願書類で開示または記載された主題の範囲を拡張してはならず、(ii)出願において登録を求めた主題の内容を変更してはならず、(iii)発明の単一性の要件を満たす必要がある(ベトナム知的財産法(以下「知的財産法」という。)第115条第3項)。

2. 補正または補充ができる時期
 IP VIETNAMにおいて特許出願が係属中であれば、出願を補正または補充することができる。すなわち、出願日から特許査定または拒絶査定の日まで、出願人が自発的に、またはIP VIETNAMの通知を受けて補正または補充を行うことができる(知的財産法第115条第1項a)。

2-1. 自発的補正または補充
 具体的には、自発的補正または補充は、以下の場合に行うことができる。

(1) PCT出願がベトナムでの国内手続に移行するとき
(2) 方式審査結果通知の発行前または発行後
(3) 実体審査の請求前または請求後
(4) 実体審査結果通知(拒絶理由通知)の発行前または発行後

 なお、特許を付与する意向の実体審査結果通知(特許査定)の発行後であっても補正または補充の申請書を提出することは可能であるが、この場合、出願は再審査される(政令65/2023/ND-CP(以下「政令」という。)第16条第3項c、通達23/2023/TT-BKHCN(以下「通達」という。)第13条第1項b)。

2-2. 指令への応答による補正または補充
 出願人が、所定の期間内に出願を拒絶する旨の方式審査結果通知および/または実体審査結果通知(拒絶理由通知)へ応答する際に、出願を補正または補充をすることができる(知的財産法第109条第3項a、知的財産法第117条第3項a)。ここで、所定期間とは、方式審査結果通知の発送日から2か月(通達第9条第5項a)、実体審査結果通知(拒絶理由通知)の発送日から3か月である(通達第16条第8項a)。

3. 一般的な補正または補充
 当事務所の実務で多く見受けられる明細書および請求項の補正または補充を以下に紹介する。

(1) 人間または動物の病気の診断または治療の方法に関する請求項の削除、または可能な場合これらの請求項の認容可能な形への変更。
(2) 用途請求項の削除、または可能な場合、用途請求項の認容可能な形式への変更。
(3) 装置・機器・システムを動作させる方法、方法を実行するためのプログラムをインストールした装置・機器・システム、方法を実行するためのプログラムを格納した記憶媒体などの要件を満たす形式のコンピュータプログラム請求項への変更。
(4) 発明の名称、および/または要約の補正、人間または動物の病気の診断または治療の方法に関する記載、用途にかかる特許主題の削除。
(5) 方式要件を満たすため、同時に複数の独立請求項に関係する請求項を、複数の別々の請求項に分割。
(6) 審査料金を減額するために独立請求項の数を削減。
(7) 対応するベトナム特許出願の審査を迅速化するため、認められた外国特許庁で特許査定を受けた特許請求項に、係属中の請求項を一致させる補正。
(8) 要約を請求項の補正に一致するように補正。

4. 認められない補正または補充
 明細書および請求項について、以下のような補正および補充は認められない。

4-1. 修正・追加による補正または補充
(1) 補正した出願の請求項に記載された主題が、補正前の出願(以下「原出願」という。)中に含まれていない。
(2) 補正した出願の請求項に記載された主題が、原出願の明細書により完全にはサポートされていない技術的特徴を含む。
(3) 補正した出願において示される主題の主旨が、原出願に含まれる主題と異なっている。
(4) 補正した出願において当業者が見出した情報が原出願の明細書に含まれた情報と異なっており、その情報は原出願中の情報から直ちにかつ直接的には決定できない。
(ベトナム特許出願審査基準33.4)

4-2. 追加による補充
(1) 原出願の明細書(図面を含む)、請求項から直ちにかつ直接的には決定できない技術的特徴を、請求項および/または明細書へ追加する。
(2) 発明を明確に開示するために、または請求項を十分に開示するために、原出願の明細書(図面を含む)、請求項から直ちにかつ直接的には決定できない情報を追加する。
(3) 追加される内容が、図面に示される寸法要素を使用することにより得られる寸法要素に関係する技術的特徴である。
(4) 出願の当初の書類に記載されていない追加された部分または要素が、原出願に含まれない特別の効果を奏する。
(5) 当業者が原出願からは決定できない効果を追加する。
(ベトナム特許出願審査基準33.4.1)

4-3. 変更による補正
(1) 請求項の技術的特徴を、原出願の明細書に開示されていないか、原出願の明細書から直ちにかつ直接的には決定できない技術的特徴に変更する。
(2) 確定できない内容を確定できる特定の内容に変更することによって、新規の事項を導入する。
(3) 原出願において互いの関係は示されていないにもかかわらず、原出願の個々の特徴を組み合わせて新たな特徴に変更する。
(4) 原出願の明細書に示された技術的特徴と異なるようにするために、明細書におけるある特徴を変更する。
(ベトナム特許出願審査基準33.4.2)

4-4. 削除による補正
(1) 意図された課題を達成するために必要な技術的特徴、および/または削除すると請求項における他の特徴に変更が生じる技術的特徴を、請求項から削除する(ベトナム特許出願審査基準33.4.3)。

5. 補正または補充の方法
 補正または補充の申請は書面で行い、(i)請求項または発明の詳細な説明の最終版と、(ii)原出願の請求項および発明の詳細な説明とを比較した補正または補充の内容に関する詳細な説明、を添付しなければならない(政令第16条第2項đ)。

ベトナムにおける特許出願の補正および補充

【詳細】

ベトナム知的財産法第115条に基づき、特許出願が特許査定または拒絶査定を受ける前であれば、いつでも、出願人は、出願補正または補充をすることができる。ただし、補正は、(i)原出願明細書の保護範囲を超えず、(ii)当初開示された発明の本質を変更せず、(iii)発明の単一性の要件を満たすことが必要である。自発補正は、PCT出願の国内移行時、方式や実体審査通知の発行前、実体審査請求前に行うことができ、その他ベトナム国家知的財産庁(National Office of Intellectual Property of Vietnam : IP VIETNAM)からの指令を受けた場合に補正を行うことができる。

○補正または補充の時期

ベトナム知的財産法は、IP VIETNAMにおける特許出願の審査過程全体を通じて、明細書と請求項を補正または補充する機会を定めている。出願日から特許査定や拒絶査定の日まで、出願人が自発的に、またはIP VIETNAMの指令を受けて補正または補充を行うことができる。

自発補正および/または補充は、以下の場合に行うことができる。

・PCT出願がベトナムでの国内手続きに移行するとき

・方式審査通知発行前

・実体審査請求前

・実体審査通知発行前

さらに、IP VIETNAMの指令を受けた場合、出願人は所定の期間内に方式審査通知および/または実体審査通知へ応答する際に、当該出願を補正することができる。

○請求項および明細書の補正および補充

当事務所の実務で多く見受けられる明細書・請求項の補正および補充を以下に紹介する。

・人間または動物の病気の診断または治療の方法に関する請求項の削除、または可能な場合これらの請求項の認容可能な形への変更

・用途請求項の削除。IP VIETNAMは最近、用途請求項は法定の発明主題ではないとみなす決定を下した。または可能な場合、用途請求項の認容可能な形への変更

・発明の名称、詳細な説明および/または要約の補正、人間または動物の病気の診断または治療の方法に関する記載、用途にかかる特許主題の削除

・方式要件を満たすため、同時に複数の独立請求項に関係する請求項を、複数の別々の請求項に分割

・独立請求項の数を減らして審査料金を減額するための請求項補正

・ベトナム対応特許出願の審査を迅速化するため、認められた外国特許庁で特許査定を受けた特許請求項に係属中の請求項を一致させる補正

・発明の詳細な説明を請求項の補正に一致するように補正

○請求項および明細書の認められない補充

以下の補正または補充は認められない。

・当初の明細書で開示されてない主題を、請求項および/または発明の詳細な説明に補充すること

・当初の発明の詳細な説明(図を含む)および/または請求項で明確かつ直接的に確認できない技術的特徴を、請求項および/または発明の詳細な説明に補充すること

・原出願における発明の本質を変更すること

・当業者が見て、原出願の記載とは異なる情報であって、原出願から確実かつ直接的に導くことができない情報を補充すること

・図面を測定することで得られるパラメータに関連する技術的特徴を補充すること

・原出願に記載されていない構成要素であって、原出願に存在しない特別な効果をもたらす構成要素を補充すること

・当業者が原出願から直接的に導き出すことができない有用な効果を補充すること

・原出願の請求項と発明の詳細な説明の開示範囲を超えて、請求項の技術的特徴を変更すること

・不明瞭な情報を、明確で具体的な情報に変更すること

・原出願文書における複数の個別の特徴を、1つの新たな特徴としてまとめる場合であって、これら個別の特徴の相互関係が原出願文書に明確に記載されていない場合

・発明の詳細な説明に記載された特徴を変更して、原出願に記載された特徴とは異なるものとすること

・原出願において発明の技術的効果を得るために必要とされる技術的特徴を削除すること

○補正または補充の方法

補正または補充の申し立ては書面で行い、(i)請求項または発明の詳細な説明の最終版と、(ii)原請求項および発明の詳細な説明とを比較した補正または補充の詳細の説明、を添付しなければならない。