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メキシコにおける審決へのアクセス方法

1. 審判、訴訟の提起
(a) 行政確認請求
 第1段階として、権利の保有者はメキシコ産業財産庁(IMPI:Mexican Institute of Industrial Property、図1ではMPTO)に対して行政侵害の手続(行政確認の請求、request for an administrative declaration)を開始することができる。

図1. 第1段階(行政確認の請求)

(b) 審判請求
 第2段階として、当事者はIMPIによる最初になされた決定に対して異議を申し立てることができる。この申立は、IMPIに対しての審判請求、または連邦行政裁判所の知的財産特別法廷(the Specialized Chamber of Intellectual Property、図2ではSPECIALIZED COURT ON IP MATTER)に対して無効訴訟として任意に行うとこができる。

図2. 第2段階(審判請求または無効訴訟)

(c) 最終段階
 最終段階として、第2段階の決定に不服がある場合、巡回合議裁判所(Collegiate Circuit Courts、図3ではCIRCUIT COURTS/DISTRICT COURTS)に対し、アンパロ訴訟(憲法で保護された基本的人権を国が侵害した場合、その原因となった措置(行政・立法・司法措置)の無効を訴える裁判)の手続を通して上告が可能である。ほとんどの場合、これが第3段階であり、最終段階である。

図3. 第3段階(最終段階、アンパロ訴訟)

 上記の3つの各段階は担当当局の決定により確定され、確定された場合のみ公開される。それまでは、記録は当事者間でのみ保持される。

2. 決定の閲覧
 上記に関連して、以下は、IMPI(第1段階)、知的財産特別法廷(第2段階)、および巡回合議裁判所(第3段階)によって発行された決定を閲覧するためのアクセス方法を説明する。ファイルは、手続の当事者により許可された人物のみが物理的に参照できるものである。

(a) IMPIデータベースにアクセスするためのデジタルプラットフォーム(第1段階)
 IMPIの公開データベース(https://siga.impi.gob.mx/newSIGA/content/common/principal.jsf)では登録と請求の完全な記録を参照することが可能である。その手順を以下に示す。
(i) リンクにアクセスすると下記の図4が表示される。

図4. IMPIの検索ページ

ここで、画面上部の選択肢から「Búsqueda simple(簡易検索)」をクリックすると次の画面が表示される。
「Búsqueda(検索)」フィールド

図5. 簡易検索入力画面

(ii) 発明ファイル(意匠、特許、実用新案など)のデータベースにアクセスするためには、最初のボックス「Patentes(特許)」を選択する。「Búsqueda(検索)」フィールドに、出願番号、登録番号、所有者名、またはその他の検索するための希望する登録を識別できる文字を入力することができる。入力した後、右下の「Buscar(探す)」をクリックすると検索が開始される。この検索では、発明に関連する結果のみが表示され、訴訟関連のファイルは含まれない。

(iii) 識別可能な標識(商標、商業公告、商号)に関連するファイルを検索するためには2番目のボックス「Marcas(商標)」を選択する。上記(ii)と同様に「Búsqueda(検索)」フィールドに検索するための番号、文字を入力することができる。また、同様に訴訟関連のファイルは含まれない。

(iv) 訴訟および訴訟結果のファイルにアクセスするためには3番目のボックス「Contencioso(訴訟)」を選択する。上記(ii)と同様に、「Búsqueda(検索)」フィールドに出願番号、登録番号、原告または被告の名前、またはその他の検索文字を入力することができる。通常、訴訟の結果は検索結果の最後に表示されるが、結論が出ていない案件は公開されない。以下に例を示す。

<事例>
 「Búsqueda(検索)」欄に「PI/Y/2019/033836(MicrosoftおよびAutodesk 対 Sistemas de Fijacion Y Soporteria Sa De CVの事件番号)」を入力し、右下の「Buscar(探す)」をクリックすると同一画面の下部に検索結果(図6)が表示される。

図6. 事件番号PI/Y/2019/033836検索結果

 ここで、「Expedient(ファイル)」をクリックすると審判文書リスト(図7)が表示される。

図7. 事件番号PI/Y/2019/033836の審判文書リスト

(b) 知的財産特別法廷のデータベースにアクセスするためのデジタルプラットフォーム(第2段階)
(i) 連邦行政法裁判所(Tribunal Federal de Justicia Administrativa)知的財産特別法廷が下した最新の判決は以下の手順で閲覧できる。
①連邦行政法裁判所のウェブサイトにアクセスすると、図8が表示される。
https://www.tfja.gob.mx/

図8. TFJAウェブサイト トップ画面


②ウェブサイトの左に表示されるメニューから「ACUERDOS(合意)」をクリックし、表示されるプルダウンメニューから「Acuerdos y Resoluciones(合意と決議)」を[﹀]クリックすると、図9が表示される。なお、下記URLをクリックすると直接アクセスすることができる。
https://www.tfja.gob.mx/acuerdos/acuerdos_resoluciones

図9. 合意と決議検索画面

③表示される「Listado Aprobado de Acuerdos y Resoluciones(承認された合意と決議)」の画面の選択肢「REGION(領域)」のプルダウンで表示される選択肢から「MATERIA DE PROPIEDAD INTELECTUAL(知的財産の問題)」を選択する。
<事例>
例として「EXPEDIENTE(議事録)」に「2046/17-EPI-01-4」の議事録番号を入力して「Consultar」をクリックすると、図10の判決概要が表示される。

図10. 議事録番号2046/17-EPI-01-4検索結果

(ii) 連邦行政法裁判所でのもう一つの判決検索方法として、以下のリンクがある。
http://sentencias.tfjfa.gob.mx:8080/SICSEJLDOC/faces/content/public/consultasentencia.xhtml
 下記の図11に示す検索ボックスが表示されるので、「Buscar texto en el documento(検索したい語句)」を入力して「Buscar」をクリックすると、保存されている文書中にその語句が含まれている文書を検索することができる。なお、検索語句を入力せず「Buscar」をクリックすると最新の判決から順に表示される。

図11. 検索語入力画面

 また、右下の「Opciones avanzadas(高度な検索)」の選択肢をクリックして「Si(Yes)」とすると図12のような詳細な選択肢が表示される。

図12. 高度な検索、入力画面

詳細な連邦行政法裁判所での検索は関連記事「メキシコにおける判決へのアクセス方法」(2020.10.06)を参照されたい。

関連記事:
「メキシコにおける判決へのアクセス方法」(2020.10.06)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/etc/19494/

(c) 巡回合議裁判所のデータベースにアクセスするためのデジタルプラットフォーム(第3段階)
注)以下にメキシコ代理人より得られた情報を記載するが、現状では日本からの巡回合議裁判所ウェブサイトへのアクセスは遮断されているようである。

(i) 巡回合議裁判所が発行した手続および判決を検索するためには以下のリンクにアクセスする。
https://www.cjf.gob.mx/micrositios/dggj/paginas/serviciosTramites.htm?pageName=servicios%2Fexpedientes.htm
 リンクにアクセスした後、参照したいメキシコの州を選択する。

図13. メキシコの州の選択

 州が選択されると、新たな検索ボックスが表示される(図14)ので、担当する裁判所を選択する。

図14. 裁判所の選択

 通常、知的財産権は、行政案件を管轄する第1巡回法廷の23大法廷(Collegiate Court)のいずれかとなる。
 その後、i)検索するファイルの種類、ii)ファイル番号、iii)プライバシーコントロール(機械アクセスではないことを示す)の手順を示す必要がある(図15)。

図15. ファイル番号の入力

 ファイル番号の入力が終わると、事案の対応で実施されたアクションの概要が表示される(事案が終結していない場合でも参照可能である)。判決がある場合は、ページの最下部に表示される。

図16. 事案の表示(判決がある場合)

(ii) 国家最高司法裁判所(SCJN:Suprema Corte de Justicia de la Nación)の関連する基準や判例は、以下のリンクから参照できる。
https://sjf2.scjn.gob.mx/busqueda-principal-tesis

図17. 国家最高司法裁判所 判例等検索画面


 上に述べてきた検索サイトに関わらず、メキシコ政府が提供するあらゆる公共情報の相談のためのデジタル・アクセス・プラットフォームがあり、以下のリンクから利用可能である。
注)この情報はメキシコ代理人より得られた情報であるが、現状では日本からの巡回合議裁判所ウェブサイトへのアクセスは遮断されているようである。

https://www.plataformadetransparencia.org.mx/web/guest/home?p_p_id=com_liferay_login_web_portlet_LoginPortlet&p_p_lifecycle=0&p_p_state=normal&p_p_state_rcv=1
 利用するにあたり、ユーザー名とパスワードを取得するために登録する必要があるが、このサイトでは、探している情報が公開されている限り、メキシコのあらゆる当局に問い合わせることが可能である。

図18. メキシコ政府の提供する公共情報公開プラットフォーム

メキシコにおける判決へのアクセス方法

 メキシコ知的財産庁(IMPI)には審判部に相当する部署はなく、査定等に不服の場合は連邦行政裁判所(TFJA)に訴訟を提起することとなる。

 TFJAのウェブサイトでは、知的財産関連のものも含め、メキシコにおける直近1年分の判決が掲載されており、無料で閲覧可能である。

 

  1. TFJAのウェブサイト(http://www.tfjfa.gob.mx/)にアクセスする。まず、判決閲覧の手順を紹介する。上部の選択肢の左から4番目にある「Consulta de Sentencias(判決閲覧)」をクリックする(図1)。

01MX05_1

図1

 

  1. 「Consulta de Sentencias(判決閲覧)」のページが表示され、図2に示すように検索文字の入力を求められる。

01MX05_2

図2

 

  1. 前記図の右側にある「Opciones avanzadas(詳細検索)」の左にある「No」をクリックすると、図3に示すように、 「Si」に変わると同時に、詳細検索のオプション入力画面が表示される。01MX05_3

    図3

     

    1. 左列にある「Región(地域)」の入力欄をクリックすると、プルダウンメニューが39行ほど表示されるので、図4に示すように、31番目にある「SALA ESPECIALIZADA EN PROPIEDAD INDUSTRIAL(知的財産専門法廷)」を選択する。01MX05_4

    図4

     

    1. 次いで、その右隣にある「Sala(裁判所)」のプルダウンメニューから、同様に「SALA ESPECIALIZADA EN PROPIEDAD INDUSTRIAL(知的財産専門法廷)」を選択する(選択肢は1つのみ表示される)(図5)。

    01MX05_5

    図5

     

    1. この段階で、「Buscar(検索)」をクリックすると図6のように知的財産法廷で扱われた判決の閲覧できるリストが表示される。

    01MX05_6

    図6

     

     左端のPDFアイコンをクリックすると案件ごとにファイルのダウンロードが可能である。

     

    1. 3.で示した画面(図3)には図7のとおり種々の選択肢がある。知的財産に関連するものは少ないが、「Ley que funda la resolución impugnada:(判決に関する法律)」の選択肢から「Ley Federal del Derecho de Autor(著作権法)」や「Ley de la Propiedad Industrial(産業財産法)」を選択して絞り込むのは有用である(ただし、選択肢は100件以上あり、アルファベット順でもない)。

    01MX05_7

    図7

     

    1. なお、フリー検索の場合は、2.で示した「Buscar texto en el documento(書類内のテキスト検索」の入力欄に、スペイン語でテキストを入力し、「Buscar(検索)」をクリックすると、ヒットした案件のリストが表示される。

サウジアラビアにおける商標異議申立制度

1.異議申立の要件および異議理由

 

 サウジアラビア商標法16条の規定において、公告決定となった商標出願は、異議申立のために公告され、いかなる利害関係者も、異議理由に基づき異議申立書を提出することができる。異議申立期間は、公報における公告日から60日である。異議申立期限の延長を申請することはできない。

 

 異議申立は、商標局の審判部における行政手続である。異議申立手続での審議事項は、登録可能性の有無にほぼ限定され、書面記録に基づいて行われる。サウジアラビアは、先願主義の国であり、異議申立を審理する商標局の審判部は、異議申立人に対して異議申立の根拠である先行登録商標の使用証拠を提出するよう要求することはできない。先行登録商標の使用について論争するためには、出願人は別個に不使用取消訴訟を提起しなければならない。不使用取消訴訟において判決が出されるまでの間、異議申立手続が中断されることはなく、その逆もまた同様である。

 

 サウジアラビアにおいて先行権利が確立されていない場合でも、著名性を根拠に異議申立を提起できる。商標が著名とみなされる程度は通常、周知商標の保護に関する国際基準(パリ条約の第6条の2)に従い、さらに周知商標保護の国内基準に従い判断される。いかなる証明力のある証拠も受け入れられ、次の要因を含む証拠全体に基づいて判断が下される:(i)販売の期間および地理的範囲;(ii)売上高;(iii)広告支出および広告の見本;(iv)表彰、論評および報道;(v)国内の関連する業界および消費者団体における当該商標の評判;ならびに(vi)商標の認知度を評価するための専門家証言および調査。

 

 他に認められる異議理由として、次のものが挙げられる:絶対的拒絶理由;悪意;パリ条約第6条の7(商標所有者の代理人または他の代表者の名義による登録)に基づく権利;パリ条約第8条(商号)に基づく権利;パリ条約第6条の3(国章、公式証明印および政府間機関の紋章に関する禁制)に基づく権利;公序良俗に反するもの。ただし、これらの理由は、網羅的および確定的なものではない。

 

2.異議手続および取下

 

 サウジアラビアにおける業務処理の環境は、現在では、商標の電子出願は可能であるものの、異議申立人は電子的手段により異議申立書を提出することはできない。さらに、商標局の審判部は異議決定を電子的手段で発行することはできない。異議申立を提起するには、書面で提出すると共に、異議申立の公定料金を支払わなければならない。異議申立人は、異議対象の商標がサウジアラビア商標法第3条に基づき登録が認められない、または当該商標を保有し続けることができない理由に関して、有効な根拠があることを立証しなければならない。

 

 異議申立書には、当該商標の登録により異議申立人がどれほどの損害を受けるかについて説明する陳述を含めると共に、異議理由を添付しなければならない。異議申立は、絶対的拒絶理由または相対的拒絶理由に基づいて提起することができる。相対的拒絶理由を根拠とする場合、異議申立人は、当該商標が既存の登録商標と混同を生じるほど類似していること、または先に確立されたコモンロー上の権利と抵触することを明確に論じなければならない。相対的拒絶理由に基づく異議申立を提出できるのは、先行権利の所有者だけである。

 

 異議申立書が提出された場合、当該出願の出願人は、異議申立書を受領後、答弁書を提出できるが、答弁書を提出しない場合、当該出願は却下される。答弁は通常、異議申立書に対する複数の簡潔な否認で構成され、かかる答弁を裏づける証拠を提出する必要はない。

 

 双方の当事者は、異議対象の商標の使用に関する和解契約を締結することが一般的であるが、異議申立の取下条件について出願人または異議申立人が同意しているかどうかにかかわらず、異議申立の取下により、異議手続は自動的に終了する。異議申立手続は、どの時点であっても手続を取り下げることができるが、取下を証明する商標局の公式通知が発行されるまで、有効に存続する。

 

 各当事者により提出された証拠に基づいて、さらに特定の場合にはヒアリングに基づいて、商標局は異議対象の出願に対する異議決定を発行する。異議決定を不服とする場合は、異議決定の通知日から30日以内に行政裁判所(the Board of Grievances)に上訴できる。ただし、更なる上訴はできない。

サウジアラビア王国における商標権取得・行使に関する制度概要

「サウジアラビア王国における商標権取得・行使に関する制度概要調査」(2016 年6 月、日本貿易振興機構ドバイ事務所)

 

(目次)

第1章 – 概要 p.3

 第1節 – サウジアラビアにおいて施行される法と手続きの概要 p.3

 第2節 – 統計 p.4

 第3節 – 登録商標の必要条件 p.4

 第4節 – 登録期間 p.6

 第5節 – イスラム法(シャリーア) p.6

 第6節 – 商標登録出願の手続き(フローチャート付) p.7

第2章 – 商標登録出願 p.9

 第1節 – 商標登録出願の事前検索 p.9

 第2節 -商標登録出願の提出 p.9

 第3節 – 商標 登録の利点 p.10

第3章 – 商標登録後 p.11

 第1節 – 登録の取消 p.11

 第2節 – 合併または名前の変更 p.11

 第3節 – エンフォースメント p.12

 第4節 – 行政アクション p.12

 第5節 – 訴訟 p.12

 第6節 – 税関 p.13

 第7節 – 商標登録の譲渡 p.13

 第8節 – ライセンス p.14

 第9節 – オンラインにおける問題 p.14

付録A – 特定委任状サンプルp.15

エジプトにおける知的財産権関連制度の運用実態

【詳細】

 アフリカ諸国における知的財産権制度運用実態及び域外主要国による知財活動に関する調査研究報告書(平成26年2月、日本国際知的財産保護協会)4-(2)

 

(目次)

4 各調査対象国の知的財産権関連制度の運用実態

 (2) エジプト P.116

 

(添付資料5) エジプト特許庁の審査基準の概要