中国における知財関連訴訟件数
2023年4月20日、中国最高人民法院は「中国法院知的財産司法保護状況(2022)」を公式HPに公表した。毎年3月~4月に前年の統計が公表される。
2022年の全国人民法院の各種知的財産関連事件(第一審、第二審、再審を含む)の新受件数は526,165件(対前年比18.17%減)、既済件数は543,379件(対前年比9.67%減)となっている。
民事事件、行政事件、刑事事件について、過去の公表資料に基づく統計情報を掲載する。中国の統計で公表されている各種の訴訟件数の推移は以下のとおりである。
1.民事訴訟
1-1.民事訴訟提訴件数
2013年~2022年の過去10年間の中国における全国地方法院への民事訴訟提訴件数は表1および表2のとおりである。2022年は、前年まで右肩上がりに上昇していた民事訴訟提訴件数の傾向が一変している。
表1:年度・区分別 中国民事訴訟提訴件数(件)
表2:年度・区分別 中国民事訴訟提訴件数グラフ(件)
1-2.民事訴訟の新受・既済件数
2018年~2022年の過去5年間の地方法院と最高人民法院それぞれの知的財産権関係民事事件の新受・既済件数は表3のとおりである。
表3:年度・審級別 知的財産権関係民事訴訟の新受・既済件数表(件)
*1:二審案件、再審案件(再審理の一種)を含む。
*2:同上。
1-3.2022年民事訴訟動向
2022年、前年まで緩やかに増加していた人民法院の新受と既済の知的財産権案件の件数の傾向が一変している。案件の種類別では、従来通り著作権案件の占める比率が大きく、新受と既済の著作権民事一審案件の知的財産権民事一審事件に占める比率が半分以上となっている。地域別では、東南部と比べて、中西部地域の新受と既済の件数は増加傾向であり、例えば山西、河北、江西、遼寧法院の受理した各種の知的財産権案件の件数は、いずれも増加している。
2.刑事訴訟
2013年~2022年の過去10年間の中国地方法院における刑事訴訟一審件数は表4のとおりである。2017年を境に、増加傾向に転じているが、2022年は再び減少に転じた。
表4:年度別 知的財産権関係刑事訴訟第一審の新受・既済件数表
2-1.2022年刑事訴訟動向
2022年の中国地方法院の知的財産関連刑事事件第一審の新受件数と既済件数はそれぞれ5,336件(対前年比14.98減)と5,456件(対前年比9.76%減)となっており、共に減少傾向にある。新受件数のうち、登録商標権侵害事件が4,971件(対前年比15.3%減)、著作権侵害事件が304件(対前年比8.71%減)である。地方各級人民法院の知的財産権に関する刑事二審事件の新受件数が979件、既済件数が977件となっており、対前年比でそれぞれ6.76%、2.01%上昇した。
3.行政訴訟
2013年~2022年の過去10年間の中国地方法院における行政訴訟件数は表5のとおりである。ここ数年、件数が安定している傾向がある。
表5:年度別 知的財産権関係行政訴訟第一審の新受・既済件数表
3-1.2022年行政訴訟動向
2022年の中国地方法院の知的財産関連行政事件第一審の新受件数は20,634件であり(対前年比0.35%増)、その内訳は、専利1,876件(対前年比3.65%増)、商標18,738件(対前年比4件増)、著作権12件(対前年比7件減)、その他8件となっている。また、既済件数は17,630件で,2021年より8.85%減少した。
中国地方法院の知的財産関連行政事件第二審の新受件数と既済件数はそれぞれ5,897件(対前年比28.22%減)と7,285件(対前年比1.79%減)であり、既済事件の判決のうち、原判決維持が5,518件、原判決変更が1,650件、差戻しが3件、取下げが78件、却下が10件、その他が26件であった。
中国における知財関連訴訟件数
2021年4月22日、中国最高人民法院は「中国法院知的財産司法保護状況(2020)」を公式HPに発表した。毎年3月~4月に前年の統計が公表される。
2020年の全国人民法院の各種知的財産関連事件(第一審、第二審、再審を含む)の新受件数は525,618件(対前年比9.1%増)に、既済件数は524,387件(対前年比10.2%増)に達している。
民事事件、行政事件、刑事事件について、過去の公表資料に基づく統計情報を掲載する。中国の統計で公表されている各種の訴訟件数の推移は以下のとおりである。
1.民事訴訟
1-1.民事訴訟提訴件数
2011年~2020年の過去10年間の中国における全国地方法院への民事訴訟提訴件数は表1および表2のとおりである。近年、上昇率は鈍化しているものの、依然として増加傾向にある。
表1:年度・区分別 中国民事訴訟提訴件数(件)
表2:年度・区分別 中国民事訴訟提訴件数グラフ(件)
1-2.民事訴訟の新受・既済件数
2016年~2020年の過去5年間の地方法院と最高人民法院それぞれの知的財産権関係民事事件の新受・既済件数は表3のとおりである。
表3:年度・審級別 知的財産権関係民事訴訟の新受・既済件数表(件)
*1:二審案件、再審案件(再審理の一種)を含む。
*2:同上。
1-3.2020年民事訴訟動向
2020年人民法院の新受と既済の知的財産権案件の件数の増幅は緩やかなものであるが、依然として10%程度の伸び率を維持していた。案件の種類別では、著作権案件の占める比率が大きく、新受と既済の著作権民事一審案件の知的財産権民事一審事件に占める比率が70%を超えている。地域別では、東南部地域の新受と既済の件数が穏やかに増え、例えば上海法院の受理した各種の知的財産権案件の件数は40,214件、既済件数は37,514件で、対前年比それぞれ70.54%、59.57%増となる。広東法院の受理した各種の知的財産権案件の件数は196,070件、既済件数は193,019件であり、対前年比それぞれ24.6%、26.07%増である。
2.刑事訴訟
2011年~2020年の過去10年間の中国地方法院における刑事訴訟一審件数は表4のとおりである。2017年を節目に、増加傾向に転じている。
表4:年度別 知的財産権関係刑事訴訟第一審の新受・既済件数表
2-1.2020年刑事訴訟動向
2020年の地方各級人民法院の知的財産関連刑事事件第一審の新受件数と既済件数はそれぞれ5,544件(対前年比5.76%増)と5,520件(対前年比8.77%増)であり、共に増加傾向にある。新受件数のうち、登録商標権侵害事件が5,203件(対前年比4.44%増)、著作権侵害事件が288件(対前年比37.14%増)である。既済の知的財産権侵害刑事一審事件のうち、登録商標詐称刑事事件が2260件であり(対前年比5.9%増)、登録商標詐称商品の販売刑事事件が2528件であり(対前年比10.93%増)、登録商標の不法製造、不法製造の登録商標標章の販売刑事事件が395件であり(対前年比6.62%減)、特許詐称刑事事件2件であり、著作権侵害刑事事件が273件であり(対前年比42.93%増)、権利侵害複製品の販売刑事事件が17件で、2019年より9件増加した。営業秘密侵害刑事事件が45件で、2019年より6件増加した。地方各級人民法院の知的財産権に関する刑事二審事件の新受件数が869件、既済件数が854件であり、対前年比それぞれ7.55%と5.82%上昇した。
3.行政訴訟
2011年~2020年の過去10年間の中国地方法院における行政訴訟件数は表5のとおりである。刑事訴訟と同様、近年増加傾向にある。
表5:年度別 知的財産権関係行政訴訟第一審の新受・既済件数表
3-1.2020年行政訴訟動向
2020年の地方各級人民法院の知的財産関連行政事件第一審の新受件数は18,464件であり(対前年比14.44%増)、具体的には、専利1,417件(対前年比14.69%減)、商標17,035件(対前年比17.83%増)、著作権12件、2019年より4件減少した。また、既済件数は17,942件,2019年より4件増加した。
地方各級人民法院の知的財産関連行政事件第二審の新受件数と既済件数はそれぞれ6,092件(対前年比16.59%減)と6,183件(対前年比4.06%増)であり、既済事件の判決のうち、原判決維持が4,828件、原判決変更が1,214件、差戻しが2件、取下げが114件、却下が4件、その他が21件であった。
中国の知的財産権訴訟の現状 - 知的財産権白書の分析
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中国における知的財産専門裁判所(北京、上海、広州)の現状
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中国における知的財産法院の最新動向
【詳細】
知的財産法院の設置は、中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議による全体計画と中央による司法体制改革を実行するための重要な措置の一つであり、中国の知的財産分野においてマイルストーン的な意義を有する重要な出来事である。昨年末に北京、上海、広州で知的財産法院が相次いで設置されて以来、3つの知的財産法院では、中央の一元的計画に基づいて、最高人民法院の指導の下、鋭意向上の努力と探求がなされ、裁判活動が展開されている。改革の追求が進行して、司法の権威性と信頼性が向上していることで、中国の司法による知的財産権保護の新しい姿が示され、国家イノベーション主導型発展戦略の実施を推進する上で強力なサービスと保障の役割が果たされており、幸先のよい出だしをきっている。
1.人的構成の概要
北京知的財産法院では、主審裁判官の定員30名のうち、第1期として22名の裁判官(院長1名、副院長2名を除く)が選任されているが、大学院卒以上の学歴を有する者が91%を占めていて、その平均年齢は40.2歳、知的財産訴訟に従事した平均年数は10年、最近5年間で1人あたりが担当した知的財産事件は438.5件である。第1期として選任された裁判官補は39名、任用制書記官は29名、司法行政官は12名である。
上海知的財産法院は、上海市第三中級人民法院と合同で執務しているため、単独では知的財産法院主審裁判官の定員が定められていないが、第1期として10名の裁判官(院長1名、副院長1名、法廷長2名を除く)が選任され、裁判官の平均年齢は43.6歳、知的財産訴訟実務に従事した平均年数は8.4年で、修士または博士の学位を有する者が90%を占めている。また、裁判官補5名、司法補助官6名が選任されている。
広州知的財産法院の主審裁判官の定員は30名で、第1期の主審裁判官として10名(院長1名、副院長2名を除く)が選任され、裁判官補および行政官として60名が選任されている。
北京知的財産法院には、立件法廷、裁判第一法廷、裁判第二法廷、裁判監督法廷、総合事務局、技術調査室および司法警察支隊といった7つの機関が設置されている。そして、その指導層は、院長1名、副院長2名、規律検査班長1名から構成される。各裁判業務法廷には、法廷長のみが置かれて副法廷長は置かれず、集団制が採られ、裁判官を中核として「裁判官1名+裁判官補1名+書記官1名」の比較的固定的な裁判体が構成されている。また、裁判官および裁判官補から構成される研究・裁判管理事務局も設けられ、裁判の研究および管理の活動を行っている。
上海知的財産法院は、上海市第三中級人民法院と合同で執務しているが、「裁判は独立、行政(党務)は合同」というモデルに従って運営されており、裁判第一法廷、裁判第二法廷および技術調査室の3つの機関が設けられている。その他の立件、執行、規律検査監察および総合管理などの事務は、いずれも上海市第三中級人民法院が行っている。
広州知的財産法院には、立件法廷、特許裁判法廷、著作権裁判法廷、商標および競争裁判法廷、総合事務局、技術調査室および司法警察支隊の7つの機関が設置されている。そして、その指導層は、院長1名、副院長2名から構成される。インフラの建設も最終段階を迎えていて、北京、広州の両知的財産法院ではいずれも庁舎ビルの基本建設と付帯工事が完了して、上海知的財産法院では借上げ庁舎の改造作業がほぼ完了しており、それぞれの活動が整然と展開されるようによいインフラの土台が築かれてきている。
2.事件の受理、結審状況
2015年8月20日までで、3つの知的財産法院における各種知的財産事件の新受件数の合計は10,795件である。そのうち、北京知的財産法院における各種事件の新受件数は6,595件(第一審事件5,622件、第二審事件973件)で、行政事件の割合が高く、特許権・商標権の拒絶査定不服審判、無効審判の審決を不服とする行政事件が全事件の4分の3以上を占めている。また、渉外事件も多く、第一審事件の総件数の39.4%を占めている。上海知的財産法院における各種事件の新受件数は1,052件(第一審事件612件、第二審事件440件)で、著作権事件の占める割合が高く、事件総件数の2分の1を超えている。広州知的財産法院における各種事件の新受件数は3,148件(第一審事件1,842件、第二審事件1,306件)で、特許事件の占める割合が高く、第一審事件全体の90.99%、事件総件数の53.24%を占めている。審理効率も明らかに向上しており、8月20日までで、3つの知的財産法院における各種事件の既済件数は4,160件となっている。そのうち、北京知的財産法院での既済件数は2,348件、上海知的財産法院での既済件数は409件、広州知的財産法院での既済件数は1,403件である。北京、広州の両知的財産法院の主審裁判官1人あたりで100件を超える既済件数となっている。
3.組織の特色
3-1.北京
北京知的財産法院では、他に先駆けて訴訟サービスと裁判事務の活動にボランティアを参加させ、中国で初の知的財産法院ボランティアサービス団を設立している。これは、ボランティアにより相談、訴訟手続の教示、援助などのサービスを提供するものであるが、専門的なボランティアサービスの長期体制が構築されており、体制の運営も徐々に正常化、常態化している。
人民陪審制度改革テストの要請に鑑み、人民陪審員の選任活動が幅広く実施され、これまでに既に106名の人民陪審員が選任されている。
3-2.上海
上海知的財産法院では、知的財産法院および上海市第三中級人民法院の裁判委員会の統合会議体制が確立され、両法院間の業務連携上または裁判管理上の重大事項が検討、議論されており、合同執務のモデルが順調に進行している。
初の特任科学技術諮問専門家および特任諮問員が招聘、任用され、知的財産裁判専門家陪審員バンクが設けられ、『特任諮問専門家使用規則』が制定された。
3-3.広州
広州知的財産法院では、目標管理によって行政事務組織が構築されている。活動目標と職務分担に関連して、総合事務局には、政務センター、行政庶務センター、審務センター、情報センター、司法補助職員調整センターおよび司法事務センターといった6つの事務組織が設けられ、縦割りの管理階層が減少して、業務が確実に整然と流れるようにされている。