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中国の最高人民法院知的財産権法廷裁判要旨の解説

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中国の知的財産権訴訟の現状 - 知的財産権白書の分析

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中国における知的財産法院の最新動向

【詳細】

 知的財産法院の設置は、中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議による全体計画と中央による司法体制改革を実行するための重要な措置の一つであり、中国の知的財産分野においてマイルストーン的な意義を有する重要な出来事である。昨年末に北京、上海、広州で知的財産法院が相次いで設置されて以来、3つの知的財産法院では、中央の一元的計画に基づいて、最高人民法院の指導の下、鋭意向上の努力と探求がなされ、裁判活動が展開されている。改革の追求が進行して、司法の権威性と信頼性が向上していることで、中国の司法による知的財産権保護の新しい姿が示され、国家イノベーション主導型発展戦略の実施を推進する上で強力なサービスと保障の役割が果たされており、幸先のよい出だしをきっている。

 

1.人的構成の概要

 北京知的財産法院では、主審裁判官の定員30名のうち、第1期として22名の裁判官(院長1名、副院長2名を除く)が選任されているが、大学院卒以上の学歴を有する者が91%を占めていて、その平均年齢は40.2歳、知的財産訴訟に従事した平均年数は10年、最近5年間で1人あたりが担当した知的財産事件は438.5件である。第1期として選任された裁判官補は39名、任用制書記官は29名、司法行政官は12名である。

 上海知的財産法院は、上海市第三中級人民法院と合同で執務しているため、単独では知的財産法院主審裁判官の定員が定められていないが、第1期として10名の裁判官(院長1名、副院長1名、法廷長2名を除く)が選任され、裁判官の平均年齢は43.6歳、知的財産訴訟実務に従事した平均年数は8.4年で、修士または博士の学位を有する者が90%を占めている。また、裁判官補5名、司法補助官6名が選任されている。

 広州知的財産法院の主審裁判官の定員は30名で、第1期の主審裁判官として10名(院長1名、副院長2名を除く)が選任され、裁判官補および行政官として60名が選任されている。

 北京知的財産法院には、立件法廷、裁判第一法廷、裁判第二法廷、裁判監督法廷、総合事務局、技術調査室および司法警察支隊といった7つの機関が設置されている。そして、その指導層は、院長1名、副院長2名、規律検査班長1名から構成される。各裁判業務法廷には、法廷長のみが置かれて副法廷長は置かれず、集団制が採られ、裁判官を中核として「裁判官1名+裁判官補1名+書記官1名」の比較的固定的な裁判体が構成されている。また、裁判官および裁判官補から構成される研究・裁判管理事務局も設けられ、裁判の研究および管理の活動を行っている。

 上海知的財産法院は、上海市第三中級人民法院と合同で執務しているが、「裁判は独立、行政(党務)は合同」というモデルに従って運営されており、裁判第一法廷、裁判第二法廷および技術調査室の3つの機関が設けられている。その他の立件、執行、規律検査監察および総合管理などの事務は、いずれも上海市第三中級人民法院が行っている。

 広州知的財産法院には、立件法廷、特許裁判法廷、著作権裁判法廷、商標および競争裁判法廷、総合事務局、技術調査室および司法警察支隊の7つの機関が設置されている。そして、その指導層は、院長1名、副院長2名から構成される。インフラの建設も最終段階を迎えていて、北京、広州の両知的財産法院ではいずれも庁舎ビルの基本建設と付帯工事が完了して、上海知的財産法院では借上げ庁舎の改造作業がほぼ完了しており、それぞれの活動が整然と展開されるようによいインフラの土台が築かれてきている。

 

2.事件の受理、結審状況

 2015年8月20日までで、3つの知的財産法院における各種知的財産事件の新受件数の合計は10,795件である。そのうち、北京知的財産法院における各種事件の新受件数は6,595件(第一審事件5,622件、第二審事件973件)で、行政事件の割合が高く、特許権・商標権の拒絶査定不服審判、無効審判の審決を不服とする行政事件が全事件の4分の3以上を占めている。また、渉外事件も多く、第一審事件の総件数の39.4%を占めている。上海知的財産法院における各種事件の新受件数は1,052件(第一審事件612件、第二審事件440件)で、著作権事件の占める割合が高く、事件総件数の2分の1を超えている。広州知的財産法院における各種事件の新受件数は3,148件(第一審事件1,842件、第二審事件1,306件)で、特許事件の占める割合が高く、第一審事件全体の90.99%、事件総件数の53.24%を占めている。審理効率も明らかに向上しており、8月20日までで、3つの知的財産法院における各種事件の既済件数は4,160件となっている。そのうち、北京知的財産法院での既済件数は2,348件、上海知的財産法院での既済件数は409件、広州知的財産法院での既済件数は1,403件である。北京、広州の両知的財産法院の主審裁判官1人あたりで100件を超える既済件数となっている。

 

3.組織の特色

3-1.北京

 北京知的財産法院では、他に先駆けて訴訟サービスと裁判事務の活動にボランティアを参加させ、中国で初の知的財産法院ボランティアサービス団を設立している。これは、ボランティアにより相談、訴訟手続の教示、援助などのサービスを提供するものであるが、専門的なボランティアサービスの長期体制が構築されており、体制の運営も徐々に正常化、常態化している。

 人民陪審制度改革テストの要請に鑑み、人民陪審員の選任活動が幅広く実施され、これまでに既に106名の人民陪審員が選任されている。

 

3-2.上海

 上海知的財産法院では、知的財産法院および上海市第三中級人民法院の裁判委員会の統合会議体制が確立され、両法院間の業務連携上または裁判管理上の重大事項が検討、議論されており、合同執務のモデルが順調に進行している。

 初の特任科学技術諮問専門家および特任諮問員が招聘、任用され、知的財産裁判専門家陪審員バンクが設けられ、『特任諮問専門家使用規則』が制定された。

 

3-3.広州

 広州知的財産法院では、目標管理によって行政事務組織が構築されている。活動目標と職務分担に関連して、総合事務局には、政務センター、行政庶務センター、審務センター、情報センター、司法補助職員調整センターおよび司法事務センターといった6つの事務組織が設けられ、縦割りの管理階層が減少して、業務が確実に整然と流れるようにされている。