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タイにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 タイにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(タイ特許法(以下「特許法」という。)第35条)。権利期間の延長制度は存在しない。

1-2. 年金の納付期限
 年金の納付義務は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)を起算日として5年度※1から発生するが、出願が特許査定を受けた場合のみ納付が求められる(特許法第43条第1段落)。したがって、出願から4年以上経過した場合であっても、審査中は年金納付手続は不要である。出願から特許査定まで4年以上を要した場合は、特許査定後に5年度から査定を受けた年までの年金を、特許の付与後60日以内に納付する必要がある(特許法第43条第2段落)。これを累積年金と言う※2。その後の年金納付は、各年毎に当該年度の開始後60日以内にしなければならない(特許法第43条第1段落)。

※1 ここでの「年度」とは、出願日を起算日とする特許期間における年度をいう。

※2 累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年度から査定された年度までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年度から査定された年度の次の年度の分までを納付することになる場合もある。

 タイの居住者でない者が年金を納付する場合は、その者の代理人として、タイ国内で行為する者として長官により登録された代理人を任命しなければならない(特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542)(以下「省令第21号」という。)第13条第1段落)。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 1-2に記載の定められた期間内に年金納付がなされなかった場合、納付期間の満了後120日以内であれば、所定の年金金額に加えて年金金額に対して30パーセントの割増手数料を同時に納付することを条件に年金の追納が可能である(特許法第43条第3段落)。

1-4. 権利回復制度
 1-3に記載の定められた追納期間内に、年金および割増手数料が納付されなかった場合、タイ特許庁長官は、特許の取消に関する報告書を特許委員会※3に提出しなければならない(特許法第43条第4段落)。
 特許委員会に対する手続として、特許権者は、特許の取消命令を受領した日から60日以内に、定められた期間内に年金および割増手数料を納付できなかったことが止むを得ない事情によるものであったことを記載した要請書を、特許委員会に提出することができる(特許法第43条第5段落)。要請書が提出された場合、特許委員会は、事情に応じて納付期間を延長するか、または特許を取り消すことができる。

※3 商務担当国務次官を議長とし、内閣に指名された科学,工学,工業,工業意匠,農業,薬学,経済および法律の分野における資格を有する12名以下の委員からなる委員会を言う(特許法第66条)。特許委員会は、審判請求についての決定等に関する権限および義務を有する(特許法第70条)。

 追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第53条)。

1-5. 年金の誤納
 意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合の誤納返還に関する明確な規定はないが、全額を一括して前納した場合において、その後権利を放棄しても年金の払い戻しを受けることはできないとの規定はある(特許法第44条)。

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 実用新案権(タイ特許法第65条の2に規定される小特許の権利をいう。)の権利期間は、出願日から最長10年である(特許法第65条の7)。実用新案権の登録時には、出願日を起算日として6年の存続期間が設定される(特許法第65条の7第1段落)。その後、6年度と8年度の満了前90日に、それぞれ2年間の存続期間の延長手続を行うことで、計10年の権利期間を得ることができる(特許法第65条の7第2段落)。

2-2. 年金の納付期限
 実用新案の規定である特許法第65条の10において、特許の年金を規定する特許法第43条を準用しているので、実用新案の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。
 年金の納付義務は、出願日を起算日として5年度から発生するが、出願が登録査定を受けた場合のみ納付が求められる(特許法第65条の10で準用する第43条第1段落)。したがって、出願から4年以上経過した案件であっても、審査中は、年金納付手続は不要である。出願から登録査定まで4年以上を要した場合は、5年度から査定を受けた年までの年金を、実用新案の付与後60日以内に納付する必要がある(特許法第65条の10で準用する第43条第2段落)。これを累積年金と言う(前記※1を参照)。累積年金の納付後は、各年毎に年度の開始後60日以内に年金を納付しなければならない(特許法第65条の10で準用する第43条第1段落)。

 タイの居住者でない者が年金を納付する場合は、その者の代理人として、タイ国内で行為する者として長官により登録された代理人を任命しなければならない(省令第21号第24条で準用する第13条第1段落)。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納制度は、5年度と6年度の年金納付については特許と同じである(特許法第65条の10で準用する第43条第3段落)。6年度と8年度の満了前の存続期間の延長手続については、特許のような追納の規定は適用されない。

2-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、5年度と6年度の年金納付については特許と同じである(特許法第65条の10で準用する第43条第4、5段落)。6年度と8年度の満了前の存続期間の延長手続については、特許のような権利回復の規定は適用されない。

 追納期間経過までに年金を納付しない場合、実用新案権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第65条の10で準用する第53条)。

2-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(特許法第65条の10で準用する第44条)

3. 意匠権
3-1. 存続期間
 意匠権の権利期間は、出願日から10年である(特許法第62条)。権利期間の延長制度は存在しない。

3-2. 年金の納付期限
 意匠の規定である特許法第65条において、特許の年金を規定する特許法第43条を準用しているので、意匠の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。
 年金は、出願日を起算日として5年度から発生するが、出願が登録査定を受けた場合のみ納付が求められる(特許法第65条で準用する第43条第1段落)。したがって、出願から4年以上経過した案件であっても、審査中は、年金納付手続は不要である。出願から登録査定まで4年以上を要した場合は、5年度から査定を受けた年までの年金を、意匠の付与後60日以内に納付する必要がある(特許法第65条で準用する第43条第2段落)。これを累積年金と言う(前記※1を参照)。その後の年金納付は、各年度の開始後60日以内にしなければならない(特許法第65条で準用する第43条第1段落)。

 タイの居住者でない者が年金を納付する場合は、その者の代理人として、タイ国内で行為する者として長官により登録された代理人を任命しなければならない(省令第21号第23条で準用する第13条第1段落)。

3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納制度は、特許と同じである(特許法第65条で準用する第43条第3段落)。

3-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(特許法第65条で準用する第43条第4、5段落)。

 追納期間経過までに年金を納めない場合、意匠権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第65条で準用する第53条)。

3-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(特許法第65条で準用する第44条)

インドにおける特許・意匠年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 インドにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(インド特許法(以下「特許法」という。)第53条(1))。権利期間の延長制度は存在しない。

1-2. 年金の納付期限
 年金は、出願日を起算日として3年度から発生するが※1、特許査定がなされた場合にのみ納付が求められる(特許法第45条(1)、インド特許規則(以下「特許規則」という。)80(1))。したがって、出願から2年以上経過した場合であっても、審査中は、年金納付手続は不要である。出願から特許査定までに2年以上を要した場合には、特許査定が下された後、特許が登録簿へ登録された日(登録日)から3か月以内に、3年度から査定された年までの年金を納付する必要がある(特許法第142条(4))。これを累積年金と言う※2。その後の年金は、各年度※3の前年度満了前に納付しなければならない。例えば、出願から3年半後に登録となった場合は、3年度および4年度の年金を登録日から3か月以内に納付しなければならず、次の5年度分の年金は、4年度満了前に納付しなければならない(特許法53条(2)、特許規則80(1))。

 ※1 特許規則80(1)にいう「特許証の日付」とは、納付期間を計算するための起算日であり、特許出願の日と定められている(特許法第45条(1))。 

 ※2 累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年度(※3を参照)から査定された年度までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年度から査定された年度の次の年度の分までを納付することになる場合もある。 

 ※3 ここでの「年度」とは「特許証の日付」を起算日とした年度をいうが、※1のとおり、特許法第45条(1)において「特許証の日付」とは特許出願の日と定められているので、出願日を起算日とした年度を表す。

 特許権者が小規模団体あるいは個人である場合は、年金金額が減額される(特許規則7、第1附則)。年金納付は、インド特許庁に対して代理人を通じて行うことができる(特許法第127条)。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 特許権が登録になった後に、納付期限日までに年金の納付が行われなかった場合、期限日から6か月以内であれば追納が可能である(特許法第53条(2)、第142条(4)、特許規則80(1A)、第1附則)。追納期間中は、所定の年金金額に加えて、追徴金も同時に納付しなければならない。

1-4. 権利回復制度
 6か月の追納期間を超えて年金納付がされない場合は、権利は納付期間の最終日をもって失効する(特許法第53条(2))。つまり、特許権は通常の納付期間満了時に遡及消滅する。ただし、権利失効から18か月以内であれば、インド特許庁に対して権利回復の請求を行うことが可能である(特許法第60条(1))。権利を回復するには、まず所定の書面を提出する必要がある(特許法第60条(3)、特許規則84(1))。その後、インド特許庁が権利の回復を認めた場合には、その旨が公報に掲載され一般に公告される(特許法第61条(1)、特許規則84(3))。公報掲載日から2か月の間は、権利回復に対する第三者からの異議を申し立てることが可能な期間であり(特許法第61条(1)、特許規則85(1))、この期間中に異議申立がなければ、当該特許権の特許権者はインド特許庁に未納付の更新手数料と追加手数料を納付することができる(特許法第61条(3)、特許規則86(1))。これらの金額の納付があった場合、インド特許庁は特許権の回復を公告する(特許規則86条(2))。

 上記の通り、追納期間を超えて年金納付がされなかった場合に特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面と所定の金額をインド特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第63条(1))。

1-5. 年金の誤納
 意図しない特許権に対して誤って年金を納付した場合、または所定の納付金額を超えて納付した場合などは、通常、返金されない(特許規則7(4))。

1-6. その他
 インドにおいて特許権を維持するには、上記の年金納付とは別に、インド特許庁に対して国内実施報告書を提出しなければならない(特許法第146条)。実施に関する書面の提出が行われなかった場合、最大で百万ルピーの罰金もしくは6か月以下の拘禁刑、またはこれらを併科される可能性がある(特許法第122条)。

 なお、2024年の特許規則の改正(2024年3月15日施行)により、国内実施報告書の提出頻度が、従来の「1会計年度ごとに1回」から、「3会計年度ごとに1回」に変更された(特許規則131(2))。

2. 意匠権
2-1. 存続期間
 意匠権の権利期間は、出願日もしくは優先権主張をしている場合は、優先権主張日から15年であり、年金は、意匠が登録査定を受けてから発生する。まず、意匠権が登録になると最初に、出願日もしくは優先権主張をしている場合は、優先権主張日を起算日として10年の権利期間が与えられる(インド意匠法(以下「意匠法」という。)第5条(6)、第11条(1)、インド意匠規則(以下「意匠規則」という。)30(3))。

 その後、5年分の年金納付を1回のみ行うことで、計15年の権利期間を得ることができる(意匠法第11条(2))。更なる権利期間の延長制度は存在しない。

2-2. 年金の納付期限
 10年間の満了前に意匠権期間の延長申請をした場合の5年分の年金は、最初の10年の権利期間が満了する前に納付しなければならない(意匠法第11条(2))。

 年金の納付は、インド特許庁に対して代理人を通じて行うことができる(意匠法第43条(1))。意匠権者が小規模団体あるいは個人である場合は、年金金額が減額される(意匠規則5、第1附則)。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 意匠権の場合、特許権と異なり追納制度が存在しない点に注意しなければならない。そのため、納付期限日までに年金の納付が行われなかった場合、権利は失効する(意匠法第12条(1))。

2-4. 権利回復制度
 権利失効から12か月以内であれば、権利回復の請求を行うことができる(意匠法第12条(1))。権利を回復するには、所定の書面を提出する必要がある(意匠法第12条(2)、意匠規則24(1))。その後、インド特許庁が権利の回復を認めた場合には、意匠権者による未納付の延長手数料と追加手数料の納付を条件に、その旨が公報に公告される(意匠規則25)。

2-5. 年金の誤納
 意図しない意匠権に対して誤って11年度の年金を納付した場合や、所定の納付金額を超えて納付した場合などは、通常は返金されない(意匠規則5(2)(c))。

ロシアにおける特許年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 特許権の存続期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。
 医薬品、害虫駆除剤、農薬に関する発明で、法律の規定に適合するものについては、権利を最長5年間延長することができる。
(ロシア連邦民法典第4部第1363条)

1-2. 年金の納付期日
 年金の支払いは、出願日を起算日として3年目から発生するが、出願日から2年以上経過していても、登録前であれば年金納付の必要はない。特許が付与された場合に初めて納付が必要となる(ロシア政令第941号付表1第1.21.1項)。
 年金の納付期限は、権利期間の起算日となる毎年の出願日に対応する日である。

1-3. 累積年金の納付
 出願から特許査定まで2年以上を要した場合は、特許登録手続時に納付する登録料に加えて、3年目から特許査定があった年までの年金(累積年金)を遡って納付する必要がある。
 この累積年金の納付は、登録料の納付と同時に行わなければならない。

注:ロシア政令第941号第10条では、翌年分の年金を前年中に納付することとされ、「累積年金」の直接的な記述はないが、出願日を起算日とした権利の有効期間に対応する年金(累積年金)の支払いが求められる。「累積年金」は、年金納付義務が特許査定前から存在するものの、特許査定が下された後、登録手続を行う際に同時に納付する必要がある。

1-4. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 特許権の登録後、年金の納付期限日までに年金が納付されなかった場合、年金の納付延長申請を行うことにより、納付期限日から6か月以内であれば、年金の追納が可能である。この場合、所定の年金額に加え、50%の割増手数料も同時に納付しなければならない(ロシア政令第941号第10条)。

1-5. 権利回復制度
 追納期間を過ぎても年金が納付されない場合、その権利は失効するが、年金納付期限日から3年以内に所定の金額を納付することにより、権利の回復が可能である(ロシア連邦民法第4部第1400条、ロシア政令第941号付表1第1.22項)。

1-6. 年金の誤納
 一旦ロシア特許庁によって受理された年金の返金は、年金が所定の額を超えて支払われた場合を除き行われない(ロシア政令第941号第6条)。
 また、納付金額に誤りがあった場合、納付は受理されないため、再度納付手続を行う必要がある。

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 実用新案権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく実用新案登録出願の場合は国際実用新案登録出願日)から10年である(ロシア連邦民法第4部第1363条)。

2-2. 年金の納付期日
 年金は出願日を起算日として初年度から発生するが、特許権と同様に、納付は実用新案登録査定を受けてから開始される(ロシア政令第941号付表1第1.21.2項)。
 維持年金の納付期限は、権利期間の起算日である毎年の出願日に対応する日となる。

2-3. 累積年金の納付
 実用新案登録手続の際には、設定登録料に加えて、登録査定を受けた年までの累積年金を納付する必要がある(1-3.注:参照)。

2-4. その他
 特許権と同じく追納制度、権利回復制度がある。

3. 意匠権
 法律改正により、意匠権の存続期間の変更があり、年金の納付時期については意匠出願日により異なる。

3-1. 存続期間
(i)<出願日が2015年1月1日以降の場合>
 意匠権の存続期間は出願日から5年であり、25年を上限として5年単位で延長することができる(ロシア連邦民法第4部(2014.03.12、No.35-FZ改正)第1363条)。

(ii)<出願日が2014年12月31日以前の場合>
 意匠権の存続期間は出願日から15年であり、さらに最大10年延長可能である(ロシア連邦民法第4部(2006.12.18、No.230-FZ新設)第1363条(https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10342974/www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/russia/minpou_no4.pdf))。

3-2. 年金の納付期日
 年金納付義務は、出願日から起算して3年目から発生するが、特許権と同様、年金納付は意匠出願の登録査定後に行われる(ロシア政令第941号付表1第1.21.1項)。

(i)<出願日が2015年1月1日以降の場合>
 出願から登録査定まで2年以上要した場合には、登録料に加えて、3~5年目の期間を含む最初の年金納付も必要となる(ロシア政令第941号第10条)。
 すなわち、登録料(3,000ルーブル)と、3~5年目の期間の年金(1,700+1,700+2,500ルーブル)の合計(8,900ルーブル)を納付する。
 存続期間を延長する場合には、5年ごとにロシア特許庁に延長申請書を提出し、5年目、10年目、15年目、20年目の満了前(または6か月の猶予期間内)に、延長に対応する5年分の年金を納付する(ロシア政令第941号第10条)。

(ii)<出願日が2014年12月31日以前の場合>
 出願日から3年目以降は維持年金が発生するので、出願から登録査定まで2年以上要した場合には、3年目から登録査定がなされた年までの維持年金(累積年金)を、登録料の支払と同時に納付する。その後の維持年金は毎年の出願日に対応する日までに納付する(ロシア政令第941号第10条)。

3-3. その他
 特許権と同じく追納制度、権利回復制度がある。

4. その他
4-1. オープンライセンスを宣言した特許権の維持年金
 特許権者が、その発明、実用新案または工業意匠を使用する権利を何人に対しても許諾する可能性がある旨の宣言(オープンライセンス)を提出した場合、特許維持年金の額は、ロシア特許庁がオープンライセンスに関する通知を公表した年の翌年から50%減額される(ロシア政令第941号第20条)。

4-2. 代理人による納付手続
 年金納付手続は、委任された手続代理人が行うことができる。

シンガポールにおける特許、意匠年金制度の概要

1.特許権
 シンガポールにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際出願日)から20年である。年金は出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際出願日)を起算日として5年次に発生するが、出願が特許査定を受けた場合のみ納付が求められる。したがって、出願から4年以上経過した案件であっても、審査中には年金は発生しない。出願から特許査定まで4年以上を要した場合は、特許登録手続の際に5年次から査定を受けた年までの年金を納付する必要がある。これを累積年金(*)という。その後の年金納付期限日は、出願応当日である。
 特許権の存続期間の延長制度として、特許が認可になるまでにシンガポール知的財産庁(IPOS)側に不合理な遅延があった場合、特許権者の申請により存続期間の延長を認める制度がある。
 また、特許出願に係る発明が市場売買にあたって承認を要する医薬品であり、当該承認を得るまでに不合理な遅延があった場合には、権利期間の延長申請を行うことが可能である。
(特許法第36条、第36A条、第85条、特許規則51、51A)

 シンガポール特許法第29条(1)(d)に規定される他国特許庁の出願の審査結果に基づくシンガポール特許出願(補充審査、外国ルート)の審査手続オプションについても存続期間の延長を認める制度があるが、本オプションによる出願は2020年1月1日以降の出願には適用されない。
(特許法第29条、特許規則43)

 納付期限日までに年金が納付されなかった場合、年金納付期限日から6か月以内であれば年金の追納が可能である。その場合、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付しなければならない。追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、権利は失効するが、納付期限日から18か月以内であれば回復の申請を行うことができる。回復の申請の際には、年金の未納付が特許権者の意図しないものであることを示す必要がある。
(特許法第36条、第39条、特許規則51、53)

 また、追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面をシンガポール知的財産庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。
(特許法第40条、特許規則54)

(*) 累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される場合において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年次から査定された年次までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年次から査定された年次の次の年次の分までを納付することになる場合もある。

2.意匠権
 意匠権の権利期間は出願日から15年である。シンガポールの意匠は出願日が登録日とみなされるため、登録日も出願日と同日として取り扱われる。まず、意匠が登録になると出願日(登録日)を起算日として5年の権利期間が与えられる、その後、6年次と11年次に年金の納付を行うことで、計15年の権利期間を得ることができる。年金納付期限日は出願応当日(登録応答日)である。
(意匠法第21条、意匠規則35)

 追納制度は特許と同様である。追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、権利は失効するが、納付期限日から12か月以内であれば回復の申請を行うことができる。
(意匠法第21条、意匠規則35C)

 また、追納期間経過までに年金を納めない場合、意匠権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面をシンガポール知的財産庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。
(意匠法第26条、意匠規則39)

3.年金の納付者
 年金の納付は、国籍は居住地によらず、だれでも可能であるが、シンガポール居住者ではない場合、シンガポール知的財産庁からの通信を受け取れるシンガポール国内の住所の提供が必要である。また、支払いにはシンガポール知的財産庁に登録されたアカウントが必要である。
 年金を誤納付した場合、返金の申請を行うことができる。

タイにおける特許年金制度の概要

  1. 特許権

 

 タイにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。権利期間の延長制度は存在しない。年金は出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)を起算日として5年次に発生するが、出願が特許査定を受けた場合のみ納付が求められる。したがって、出願から4年以上経過した場合であっても、審査中には年金は発生しない。出願から特許査定まで4年以上を要した場合は、特許査定後に5年次から査定を受けた年までの年金を特許庁が指定する期間内に納付する必要がある。これを累積年金と言う(*下記参照)。その後の年金納付は、各年毎に出願応当日から60日以内に行わなければならない。

 

 年金の納付はタイの法曹資格を有する者であれば可能である。意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合、返金の申請を行うことができる。

 

 納付期限日すなわち出願応当日から60日経過後、納付期限日から120日以内であれば、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付することを条件に年金の追納が可能である。

 

 追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、権利は失効し、タイ特許庁よりその旨を知らせる通知が発行される。特許権者は当該通知を受領した日から60日以内であれば権利回復の申請を行うことができる。回復の申請の際には、追納期間を超えて年金が納付されなかった理由を示す必要があり、権利が回復されるかどうかは当該理由に基づいて判断される。

 

 上記の通り、追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある。

 

  1. 実用新案権

 実用新案権(タイ特許法第66条の2に規定される小特許、以下、実用新案権とする。)の権利期間は出願日から最長10年である。実用新案権の登録時には、出願日を起算日として6年の存続期間が設定される。その後、7年次と9年次にそれぞれ2年分の存続期間の延長手続を行うことで、計10年の権利期間を得ることができる。年金は出願日を起算日として5年次に発生するが、出願が登録査定を受けた場合のみ納付が求められる。したがって、出願から4年以上経過した案件であっても、審査中には年金は発生しない。出願から登録査定まで4年以上を要した場合は、登録査定後に5年次から査定を受けた年までの年金を特許庁が指定する期間内に納付する必要がある。これを累積年金と言う(*下記参照)。累積年金後の、5年次、6年次は、各年毎に出願応当日から60日以内に納付を行わなければならない。

 

 年金の納付はタイの法曹資格を有する者であれば可能である。意図しない実用新案権に対して年金を誤って納付してしまった場合、返金の申請を行うことができる。

 

 5年次と6年次の年金の追納制度および回復制度は特許と同様である。権利期間延長後の7年次から9年次には年金の追納と回復の制度がないため、注意が必要である。

 

 追納期間経過までに年金を納付しない場合、実用新案権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある。

 

  1. 意匠権

 意匠権の権利期間は出願日から10年である。権利期間の延長制度は存在しない。年金は出願日を起算日として5年次に発生するが、出願が登録査定を受けた場合のみ納付が求められる。したがって、出願から4年以上経過した案件であっても、審査中には年金は発生しない。出願から登録査定まで4年以上を要した場合は、登録査定後に5年次から査定を受けた年までの年金を特許庁が指定する期間内に納付する必要がある。これを累積年金と言う(*下記参照)。その後の年金納付は、出願応当日から60日以内に行わなければならない。

年金の納付はタイの法曹資格を有する者であれば可能である。誤って意図しない意匠権に年金を納付してしまった場合、返金の申請を行うことができる。

 追納制度、回復制度ともに特許と同様である。

 追納期間経過までに年金を納めない場合、意匠権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある。

 

*累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、且つ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年次から査定された年次までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年次から査定された年次の次の年次の分までを納付することになる場合もある。

インドネシアにおける特許年金制度の概要

  1. 特許権

 

 インドネシアにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。権利期間の延長制度は存在しない。年金は出願の審査中には発生せず、特許査定が発行された場合に発生する。出願に対して特許査定が発行されると、出願年から特許査定発行の翌年次までの年金を特許発行日から6ヶ月以内に納付しなければならない。この特許発行時の納付年金を累積年金と言う(*下記参照)。累積年金の納付後の各年の年金は、出願応当日の1ヶ月前までに納付しなければならない。

 

 累積年金の納付期限は、旧法では登録日(特許証発行日)から1年であったが、2016年のインドネシア特許法の改正により、登録日(特許証発行日)から6ヶ月以内に変更された。

 

 年金の納付金額は請求項数により変動する。年金の納付は特許権者もしくはインドネシア国内の法曹資格を有する者であれば可能である。意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額以上の額を誤って納付した場合にも、一度納付した年金は返金されない。

 

 納付期限日までに年金が納付されなかった場合、権利は失効する。追納が認められるのは、年金納付期限日から遅くとも7日前までにインドネシア特許庁に所定の書面をあらかじめ提出した場合にのみである。納付期限日から最長12ヶ月の追納期間が認められる。

 

 追納の申請手続は納付期限経過前に行わなければならない点には注意が必要である。さらに、インドネシアには失効した特許権に対する権利回復の制度はない。

 

 追納は、認められた期間内に所定の納付年金に加えて、追徴金も同時に納付する必要がある。

 

 上記の通り、年金納付期限日もしくは追納期間経過までに年金が納付されない場合、特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面をインドネシア特許庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。書面提出による権利放棄の場合も、特許権の権利回復の制度はない。

 

 登録後の年金は、旧法においては、連続して3年間納付しなかった場合に初めて権利が消滅し、その間の年金は負債として残るという制度であったが、2016年のインドネシア特許法の改正により、納付されなかった場合には権利が消滅する制度となった。

 

  1. 実用新案権

 

 実用新案権(インドネシア特許法第104条に規定される小特許、以下単に実用新案権という)の権利期間は、出願日から10年である。権利期間の延長制度は存在しない。年金は出願の審査中には発生せず、登録査定を受けてから発生する。出願が登録査定を受けると、出願された年から査定を受けた年の翌年までの年金を登録証発行日から6ヶ月以内に納付する必要がある。これを累積年金と言う(*下記参照)。累積年金の納付後の各年の年金は、出願応当日の1ヶ月前までに納付しなければならない。

 

 年金の金額は請求項数により変動する。年金の納付は実用新案権者もしくはインドネシア国内の法曹資格を有する者であれば可能である。意図しない実用新案権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額以上の額を誤って納付した場合にも、一度納付した年金は返金されない。

 

 追納の申請手続は納付期限前に行わなければならない点は、特許権と同様に注意が必要である。特許権と同様、失効した実用新案権に対する権利回復の制度はない。

 

 上記の通り、年金納付期限日もしくは追納期間経過までに年金を納めない場合、実用新案権は自動的に失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面をインドネシア特許庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。書面提出による権利放棄の場合も、実用新案権の権利回復の制度はない。

 

  1. 意匠権

 

 意匠権の権利期間は、出願日から10年である。権利期間の延長制度は存在しない。インドネシアの意匠を維持するにあたっては、年金の納付は必要ない。

 

 権利を放棄したい場合は、その旨を記した書面をインドネシア特許庁に提出することにより積極的な放棄が可能である。特許権や実用新案権と同様、放棄された意匠権も権利回復の制度はない。

 

*累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年次から査定された年次までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年次から査定された年次の次の年次の分までを納付することになる場合もある。

 

【留意事項】

 本稿において、特許権及び実用新案権についての年金制度の説明は、インドネシア特許法(法律第13号 2016年新特許法)下での年金制度についての説明である。2016年8月26日以降、年金納付期限が新法に基づき設定されることとなった。

シンガポールにおける特許年金制度の概要

  1. 特許権

シンガポールにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。年金は出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)を起算日として5年次に発生するが、出願が特許査定を受けた場合のみ納付が求められる。したがって、出願から4年以上経過した件であっても、審査中には年金は発生しない。出願から特許査定まで4年以上を要した場合は、特許登録手続の際に5年次から査定を受けた年までの年金を納付する必要がある。これを累積年金と言う(*下記参照)。その後の年金納付期限日は、出願応当日である。

特許権の存続期間の延長制度として、特許が認可になるまでに特許庁側に不合理な遅延があった場合、特許権者の申請により存続期間の延長が認められる制度がある。同様に、シンガポール特許法29(1)(d)に規定される他国特許庁の出願の審査結果に基づくシンガポール特許出願の審査手続オプション(対応他国出願審査結果に基づく補充調査)において、対応他国出願が認可になるまでに他国特許庁側に不合理な遅延があり、かつ、当該対応他国での特許に対して当該他国特許庁が存続期間の延長が認めた場合に、本シンガポール特許についても特許権者の申請により存続期間の延長が認められる制度がある。

権利期間の延長申請を行うことが可能である。

(審査オプションについては、シンガポールにおける特許出願制度(https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10358/)を参照)

その他、特許出願に係る発明が市場売買にあたって承認を要する医薬品であり、当該承認を得るまでに不合理な遅延があった場合には、権利期間の延長申請を行うことが可能である。

年金の納付はシンガポールの法曹資格を有する者またはシンガポールに送達宛先を有する者もしくは団体であれば可能である。意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合、返金の申請を行うことができる。ただし、納付された金額が返金されるかどうかはシンガポール特許庁の裁量に委ねられている。

納付期限日までに年金が納付されなかった場合、年金納付期限日から6ヶ月以内であれば年金の追納が可能である。その場合、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付しなければならない。追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、権利は失効するが、納付期限日から18ヶ月以内であれば回復の申請を行うことができる。回復の申請の際には、年金の未納付が特許権者の意図しないものであることを示す必要がある。

上記の通り、追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面をシンガポール特許庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。

  1. 意匠権

意匠権の権利期間は出願日から15年である。シンガポールの意匠は出願日が登録日とみなされるため、登録日も出願日と同日として取り扱われる。まず、意匠が登録になると出願日(登録日)を起算日として5年の権利期間が与えられる、その後、6年次と11年次に年金の納付を行うことで、計15年の権利期間を得ることができる。年金納付期限日は出願応当日(登録応答日)である。

年金の納付はシンガポールの法曹資格を有する者またはシンガポールに送達宛先を有する者もしくは団体であれば可能である。意図しない意匠権に対して年金を誤って納付してしまった場合、返金の申請を行うことができる。ただし、納付された金額が返金されるかどうかはシンガポール特許庁の裁量に委ねられている。

追納制度は特許と同様である。追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、権利は失効するが、納付期限日から12ヶ月以内であれば回復の申請を行うことができる。

また、追納期間経過までに年金を納めない場合、意匠権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面をシンガポール特許庁に提出することにより、積極的に放棄を行うことも可能である。

*累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、且つ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録の手続きの際に納付すべき年金のことを指す。指定された年次から査定された年次までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年次から査定された年次の次の年次の分までを納付することになる場合もある。

ロシアにおける特許年金制度の概要

  1. 特許権

 ロシアにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。年金は出願日を起算日として3年次から発生するが、出願から3年以上経過していても登録前であれば年金納付の必要はない。特許査定を受けた場合に初めて納付が求められる。ただし、出願から特許査定まで3年以上を要した場合は、特許登録手続の際に納付する登録料とは別に、3年次から査定を受けた年までの年金を遡って納付する必要がある。これを累積年金と言う(*下記参照)。この累積年金は、登録料の納付と同時に行う。その後の年金納付期限日は、権利期間の起算日となる出願応当日である。

 

 年金納付が可能なのは手続代理人のみである。誤って納付された年金であっても、ロシア特許庁が一度受理した年金については返金はなされない。また、納付金額に誤りがあった場合、納付は受理されないため、再度納付手続を行う必要がある。

 

 特許権の登録後、年金納付期限日までに年金納付がされなかった場合、期限日から6ヶ月以内であれば年金の追納が可能である。その場合、所定の年金金額に加えて追徴金も同時に納付しなければならない。追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、権利は失効するが、追納期間最終日(すなわち年金納付期限日の6ヶ月後)から3年以内に所定の金額を納付することにより、権利の回復が可能である。

 

 上記の通り、追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、権利は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面と所定の金額をロシア特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある。特許庁に所定の書面を提出して権利者自らが権利放棄の手続を行った場合には、年金未納付による権利失効の場合とは異なり、権利の回復は不可能となる。

 

 なお、医薬、害虫などの駆除剤、農薬に関わる発明で法の規定に準ずるものは、最大5年間の権利延長が可能である。延長された権利の延長期間中の年金納付は通常と同様に行われる。

 

  1. 実用新案権

 実用新案権の年金制度は、権利期間と納付開始年次を除けば、特許権とほぼ同様である。権利期間は、出願日(PCT条約に基づく実用新案登録出願の場合は国際実用新案登録出願日)から10年であり、年金は出願日を起算日として1年次から発生するが、特許権と同じく、納付は実用新案の登録査定を受けてから開始される。そのため、実用新案の登録手続の際に、設定登録料とは別に累積年金として査定を受けた年次までの年金も納付する必要がある。年金納付期限は、権利期間の起算日となる出願応当日である。

 

 年金納付はロシアにおける法曹資格を有する者であれば納付手続が可能である。追納制度、回復制度ともに特許権の場合と同じである。

 

  1. 意匠

 意匠の権利期間は出願日から25年である。特許権と同じく、年金は意匠出願が登録査定を受けてから納付される。年金は出願日を起算日として3年次より発生するが、後述のように納付のタイミングは出願日によって異なっている。出願から登録まで3年以上かかった場合には、意匠の登録手続の際に登録料とは別に、累積年金として3年次から査定を受けた年次までの年金を納付しなければならない。年金の納付期限は、権利期間の起算日となる出願応当日である。

 

 意匠権を維持するためには、年金納付に加えて更新手続を行う必要がある。年金納付と更新手続は同時に行う必要があり、どちらも意匠出願がされた年によって回数および頻度が異なる点に注意を払わなければならない。

 

 出願日が2015年1月1日を含む同日以降の場合、最初に与えられる意匠の権利期間は5年である。その後、5年ごとの更新を最大4回まで行うことで、計25年の権利期間を得ることができる。すなわち、6年次、11年次、16年次、21年次が更新年にあたり、各年次には権利期間の更新を申請する文書をロシア特許庁に提出する必要がある。また、出願日が2015年1月1日を含む同日以降の意匠権の年金納付について、2017年10月6日より法改正が施行されたことにも注意されたい。最初の3年次に年金を納付した後は、前述の更新年に当たる6年次、11年次、16年次、21年次に年金の納付を行うことで権利を維持することができる。したがって、25年の権利期間を得るためには、年金の納付は計5回行う必要がある。

 

 一方で、出願日が2014年12月31日を含む同日以前の場合、最初に与えられる権利期間は15年である。その後、16年次の1回に限り、10年分の権利期間を得ることができる更新を行うことで、権利期間は計25年となる。そのため、前述の更新の申請文書は16年次にのみ提出する。なお、出願日が2014年12月31日を含む同日以前の場合、年金納付は3年次以降行う必要がある。

 

 年金納付はロシアにおける法曹資格を有する者であれば納付手続が可能である。追納制度、回復制度ともに特許権の場合と同じである。

 

*累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年次から査定された年次までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年次から査定された年次の次の年次の分までを納付することになる場合もある。

インドにおける特許年金制度の概要

  1. 特許権

 インドにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。権利期間の延長制度は存在しない。年金は出願日を起算日として3年次から発生するが、特許査定が下された場合にのみ納付が求められる。したがって、出願から3年以上経過した件であっても審査中には年金は発生しない。出願から特許査定までに3年以上を要した場合には、特許査定が下された後、特許庁が指定する期間内に3年次から査定された年までの年金を納付する必要がある。これを累積年金と言う(*下記参照)。その後の年金は出願応当日を納付期限として各年納付される。

 

 特許権者が小規模団体あるいは個人である場合は、年金金額が減額される。年金納付は現地代理人のみが可能である。

 

 また、権利を維持するには、上記の年金納付とは別に、インド特許庁に対して実施証明書を提出しなければならない。実施に関する書面の提出が行われなかった場合、最大で百万ルピーの高額な罰金もしくは禁固刑等の罰則が課される可能性がある。

 

 特許権が登録になった後に、納付期限日までに年金の納付が行われなかった場合、期限日から6ヶ月以内であれば追納が可能である。追納期間中は所定の年金金額に加えて追徴金も同時に納付しなければならない。6ヶ月の追納期間を超えて年金納付がされない場合は、権利は追納期間の最終日をもって失効する。ただし、権利失効から18ヶ月以内であれば、インド特許庁に対して権利回復の請求を行うことが可能である。権利を回復するには、まず所定の書面を提出する必要がある。その後、インド特許庁が権利の回復を認めた場合には、その旨が公報に掲載され一般に公開される。公報掲載日から2ヶ月の間は権利回復に対する第三者からの異議申し立てが可能な時期であり、この期間中に異議申し立てがなければ、当該特許権の権利者は特許庁に未納付分の年金と回復費用を納付することができる。これらの金額の納付をもって、権利は回復する。

 

 上記の通り、追納期間を超えて年金納付がされなかった場合に特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面と所定の金額をインド特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある。

 

  1. 意匠権

 意匠権の権利期間は出願日もしくは優先権主張をしている場合は優先権主張日から15年であり、年金は意匠が登録査定を受けてから発生する。まず、意匠権が登録になると最初に出願日もしくは優先権主張をしている場合は優先権主張日を起算日として10年の権利期間が与えられる。その後、11年次に5年分の年金納付を1回のみ行うことで、計15年の権利期間を得ることができる。権利期間の延長制度は存在せず、年金納付の期限日は出願応当日である。

 

 年金の納付に際して、インド特許庁に委任状等を提出する必要がある。意匠権者が小規模団体あるいは個人である場合は、年金金額が減額される。年金納付はインドにおける法曹資格を有する者であれば納付手続が可能である。

 

 意匠権の場合、特許権と異なり追納制度が存在しない点に注意しなければならない。そのため、納付期限日までに年金の納付が行われなかった場合、権利は失効する。ただし、権利失効から12ヶ月以内であれば権利回復の請求を行うことができる。権利を回復するには、まず所定の書面を提出する必要がある。その後、インド特許庁が権利の回復を認めた場合には、その旨が公報に掲載され一般に公開される。公報掲載日から2ヶ月の間は権利回復に対する第三者からの異議申し立てが可能な時期であり、この期間中に異議申し立てがなければ、当該意匠の権利者は特許庁に未納付分の年金と回復費用を納付することができる。これらの金額の納付をもって、権利は回復する。

 

*累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年次から査定された年次までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年次から査定された年次の次の年次の分までを納付することになる場合もある。