インドにおけるPCT出願国内移行時の補正
2012年7月2日、インド特許庁は、PCT出願の国内段階への移行手続きを簡素化する公示を行い、同日施行した。インドにおける国内段階移行期間は、優先日から31か月(多くの国では原則として30か月)以内である。
従来のインド特許実務では、PCT出願に関する明細書やクレーム等の書類がWIPO国際事務局のウェブサイトで公開されている場合であっても、国内段階に移行する際に、WIPO国際事務局ウェブサイトで公開された明細書やクレーム等を添付することが求められた。
国内段階への移行手続きを簡素化するため、インド特許庁はこの公示以降、明細書やクレーム等のコピー提出義務を廃止した。先に出願されたPCT出願(国内段階)に基づく優先権を主張するPCT出願を除き、インド特許庁はWIPO国際事務局のウェブサイトから関連書類を入手する。国内段階への移行時に出願人が提出を求められる書類は、最終ページに特許代理人または出願人が署名した所定様式、および「優先権書類送付の通知」(PCT/IB/304)および「変更記録の通知」(PCT/IB/306)の写し等の関連書類である。
ただし、英語以外の言語で公開された出願に関しては、これらの簡素化手続きは適用されない。つまり、国内段階に移行する際に、明細書やクレーム等の翻訳文、およびその翻訳内容が正確かつ完全であるという旨の出願人または出願代理人による証明書を提出することが求められる。
2012年7月の公示の重要な点の1つは、公示以降、PCT出願の国内段階への移行時(国内書面提出時)に補正が認められないという点である。インド特許庁は、補正された明細書やクレーム等が提出されても、国際事務局のウェブサイトで入手可能な文書のみを審査する。明細書やクレーム等の補正が認められるのは、国内段階移行後となる。
これまでは、法律上の明確な規定がなかったため、補正された明細書やクレーム等が国内段階への移行時に自発補正として提出されていたが、特許庁は、このような実務は適切ではなく、このような自発補正が受理されないことを明確にした。
ただし、2016年5月16日に改正された特許規則20(1)において、国内段階移行時にクレームを削除する補正が可能である旨の解説(Explanation)が追記された(【ソース】Patents (Amendment) Rules 2016参照、第9項にて特許規則20(1)に「解説」を追記する修正を実施)。
インド特許庁はWIPO国際事務局のウェブサイトから関連文書を直接入手することになるため、出願人の負荷が大幅に低減すると見込まれている。