韓国商標出願手続における期日管理
(1)商標出願
韓国での商標出願は、商標の使用前・使用中に関係なく、必要時に出願することができる。しかし、パリ条約による優先権主張をする場合には、最初の出願日から6ヶ月以内に出願しなければならない。この期間は不変期間である(商標法第46条)。
(2)委任状
商標出願時には、委任状を提出しなければならない。委任状を出願と同時に提出しない場合には、通常30日以内に委任状を提出することを要求する補正指示書が送付されるので、指定された期間内に委任状を提出する必要がある。この期間は1ヶ月ずつ4回の延長が可能である。韓国も包括委任制度を採択しており、包括委任状を一回提出すればその後の出願等の手続には委任状は必要ない。
(3)審査時の拒絶理由通知書
審査時に拒絶理由通知書を受け取った場合、意見書及び補正書の提出期日は、通常発送日から2ヶ月にあたる期日が明記・指定されている。この期日は、1ヶ月ずつ4回の延長が可能で、必要ならば、2ヶ月を一度に延長申請することも可能である。指定期間延長申請料は、1回目は2万ウォン、2回目は3万ウォン、3回目は6万ウォン、4回目は12万ウォンである。
(4)拒絶査定
審査で拒絶査定(韓国語「거절결정(拒絶決定)」)を受けた場合は、拒絶査定謄本の送逹日から30日以内に特許審判院に拒絶査定不服審判を請求することができる。この期間は、1回に限り2ヶ月まで同一金額で延長することができる(商標法第116条)。
また、拒絶査定不服審判を請求する場合、指定商品等の補正は、審判請求日から30日以内に限り、補正することができる(商標法第40条第1項第3号)。この期間は不変期間である。
審判請求書には請求の理由を記載しなければならないが、具体的な請求の理由は後に提出が可能である。具体的な請求の理由を記載しないで審判請求書を提出する場合は、補正命令を受けるので、該当補正命令書に記載されている期限までに請求の理由を提出すればよい(商標法第77条の3)。この期限は延長が可能である(延長回数や期間についての定めはない)。また、請求の理由を提出した後は、審理終結前までは自発的に何度でも請求の理由を補充することは可能である。
(5)出願公告および異議申立
出願公告がされた時には、公告日から2ヶ月以内に異議申立をすることができる(商標法第60条)。この場合、異議申立の理由および証拠は、異議申立の期間経過後30日以内であれば補正することができる。この期間は請求により、または職権で30日以内の延長をすることができる(商標法第17条第1項)。
(6)登録査定
審査で登録査定(韓国語「등록결정(登録決定)」)を受けた場合は、登録査定日から2ヶ月以内に登録料を納付しなければならない。この期日は、一回に限り30日間の延長が可能で、延長申請料は2万ウォンである(商標法第74条)。なお、期限内または延長期間内に納付しなかった場合は、権利を放棄したとみなされる。
(7)更新登録
商標権の存続期間更新登録申請は、商標権の存続期間満了前1年以内に提出しなければならない。ただし、この期間に商標権の存続期間更新登録申請をしなかった場合には、商標権の存続期間経過後6ヶ月以内であれば、更新追納手数料3万ウォンを支払って商標権の存続期間更新登録申請をすることができる(商標法第84条第2項)。
【留意事項】
(1)期間を延長する際、特に送達日から計算が必要な場合等、十分注意を払う必要がある。期間計算は、2ヶ月延長するのかまたは1ヶ月の期間延長を2回分まとめてするのかなど、様々な事情により少しずつ異なり得るため、考えられ得る候補日の中で一番直近の期日を念頭に置いて手続を行うのが安全である。なお、韓国では、期間計算方法は商標法第16条で定められており、原則として初日不算入である。
(2)期間延長申請手続は期限前に行っても期限の翌日から計算される。例えば、期日が25日である場合、5日前の20日に1ヶ月の期間延長申請をしたとしても、次の期日は翌月の(20日ではなく)25日となる。
日本とロシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較
日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
平成19年3月31日以前に出願された特許出願であるか、平成19年4月1日以降に出願された特許出願であるかによって、時期的要件が異なる。
平成19年3月31日以前に出願された特許出願については、下記の(1)の時または期間内であれば分割出願することができる。
平成19年4月1日以降に出願された特許出願については、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。
(1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。
(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
(ii)審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号
(iv)拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)
(2)特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)
(i)前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
(ii)審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。
(3)最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)
(3)に規定する3ヶ月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。
条文等根拠:特許法第44条
日本特許法 第44条 特許出願の分割
特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一または二以上の新たな特許出願とすることができる。
一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内にするとき。
二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定および第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から30日以内にするとき。
三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から3月以内にするとき。
2~4(略)
5 第1項第2号に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により同条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
6 第1項第3号に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
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ロシアにおける特許出願の分割出願の時期的要件
以下のいずれかの要件を満たす必要がある(民法第1381条第4項)。
(1)原出願が取り下げられていないこと(取下とみなされていないこと)
(2)原出願に係る特許が登録されていないこと
(3)原出願について、拒絶査定に対する不服申立期間が満了していないこと
出願の過程において、以下のような取下とみなされる状況が考えられる。
(A)実体審査請求期限までに、実体審査請求がなされない場合(民法第1386条第1項)
(B)指令書に対する応答期限までに、出願人が応答しない場合(民法第1386条第5項)
(C)審査結果通知に対する応答期限までに、出願人が応答しない場合(民法第1387条第1項、民法第1387条第2項)
(D)登録料納付期限までに、出願人が登録料を納付しない場合(民法第1393条第2項)
条文等根拠:民法第1381条第4項、民法第1386条第1項、民法第1386条第5項、民法第1387条第1項、民法第1387条第2項、民法第1393条第2項
ロシア民法 第1381条
第4項
分割出願のもとでの発明、実用新案または意匠についての優先権は、連邦の知的財産当局に対し同一出願人が当該発明、実用新案または意匠を開示する最初の出願を提出した日により決定され、原出願のもとでより早い優先権が存在している場合は、最先の優先権の日付により決定されるものとする。ただし、分割出願の提出日において、発明、実用新案または意匠に係る原出願が取り下げられておらず、かつ取り下げられたものと確認されていなかったこと、および、本法に定める原出願の下で特許の付与を拒絶する査定に対する不服申立期間満了前に、または、原出願を基礎として特許付与の査定がなされた場合は、当該発明、実用新案または意匠の登録日の前に、分割出願が出願されたことを条件とする。
ロシア民法 第1386条
第1項
出願人または第三者が発明の出願の提出時または出願の提出日から 3年以内に連邦の知的財産当局に対し提出することができる請求に応じ、かつ、当該出願の方式審査が肯定的な結果で完了したことを条件として、発明の出願の実体審査が行われるものとする。連邦の知的財産当局は、第三者から受理した請求を出願人に通知するものとする。 発明の実体審査を行うよう請求を提出する期間は、当該期間の満了前に提出された出願人の請求に応じて連邦の知的財産当局が2ヶ月を超えない範囲内でこれを延長することができる。ただし、当該請求は特許手数料の納付を証する書類の添付を条件とする。 発明の実体審査を行う請求が所定の期間内に提出されなかった場合、出願は取り下げられたとされるものとする。
ロシア民法 第1386条
第5項
発明の出願の実体審査の過程において、連邦の知的財産当局は、出願人に対し、審査の実施に不可欠な補充資料(修正された、発明に係る特許請求の範囲を含む。)を提供するよう出願人に請求することができる。この場合、発明の本質を変更しない補充資料は、出願人が請求を受領した日から、または請求された資料の写しを受領した日から 2ヶ月以内に提出されるものとするが、後者については、前記連邦当局からの請求を出願人が受領した日から 1ヶ月以内に出願人が複写を請求したことを条件とする。所定の期限までに、出願人が請求された資料の提出または当該期限の延長を請求することを怠った場合は、出願は取り下げられたとされるものとする。前記連邦当局は、出願人が請求資料を提出する所定の期限を、10ヶ月を超えない範囲で延長することができる。
ロシア民法 第1387条
第1項
発明の出願の実体審査の結果、出願人が請求項中の記載により特許請求した発明が、本法第 1350 条に定める特許性を満たす場合、連邦の知的財産当局は、前記請求に対応する発明の特許を付与する査定をなすものとする。発明の優先日は査定に明記されるものとする。発明の実体審査の過程において、出願人が請求項の記載により特許請求した発明が、本法第1350 条に定める特許性を満たさないと判断された場合、連邦の知的財産当局は、特許付与を拒絶する査定をなすものとする。 特許付与または特許付与の拒絶の査定が行われる前に連邦の知的財産当局は、特許請求された発明の特許性を審査した結果の通知を、当該通知中に明記された理由に対する意見を提出するよう求める勧告を添えて、出願人に送付するものとする。出願人の反論は、通知を受領した日から 6ヶ月以内に提出されたとき、査定が行われる際に斟酌されるものとする。
第2項
発明の出願は、出願人がこれを取り下げる場合を除き、連邦の知的財産当局が本条に定める査定をなした時に取り下げられたとされるものとする。
ロシア民法 第1393条
第2項
所定の特許手数料の納付を条件として、発明、実用新案または意匠の正式登録が行われ、その特許が付与されるものとする。出願人が所定の手続により特許手数料の納付を証する書類の提示を怠る場合、発明、実用新案または意匠の登録および特許付与はなされないものとし、かつ各出願は取り下げられたとされるものとする。
日本とロシアにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較
日本 | ロシア | |
分割出願の時期的要件(注) | 補正ができる期間 | 出願係属中 |
(注)査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における分割出願の要件については、下記のとおりである。
分割出願の時期的要件および出願人による自発的な分割可否に関する各国比較
国 | 分割出願の可否(出願から審査請求まで) | 分割出願の可否(審査請求から最初の指令書(拒絶理由通知などの通知)まで) | 分割出願の可否(最初の指令書~査定まで) | 出願人による自発的な分割の可否 |
JP | ○ | ○ | 指令書応答期間のみ | ○ |
BR | ○ | ○ | ○ | ○ |
CN | ○ | ○ | ○ | ○ |
HK | - | - | - | ○* |
ID | ○ | ○ | ○ | ○ |
IN | ○ | ○ | ○ | ○ |
KR | ○ | ○ | 指令書応答期間のみ | ○ |
MY | ○ | ○ | 審査報告書郵送から3ヶ月 | ○ |
PH | ○ | ○ | ○** | ○ |
RU | ○ | ○ | ○ | ○ |
SG | ○ | ○ | ○ | ○ |
TH | × | × | 分割指令発行から120日 | × |
TW | ○ | ○ | ○ | ○ |
VN | ○ | ○ | ○ | ○ |
(*)香港の標準特許出願に対応する指定特許出願の分割についての可否
(**)単一性違反の指令後の非選択発明についての分割は、その指令書発行から4ヶ月以内または4ヶ月を超えない範囲で認められる追加の期間内