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香港における特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

 標準特許(O):特許条例の第37L条および特許規則の第31M~31S条は、標準特許(O)の適用のために提出される文書の要件を提供する。

標準特許(R):標準特許(R)を取得するための再登録システムには、「記録請求」を提出する段階1と「登録および付与請求」を提出する段階2の2つの段階がある。段階1の文書要件は、特許条例の第15~16条および特許規則の第8条に規定されており、段階2の申請に必要な文書は、特許条例の第23および特許規則の第19条に規定されている。

短期特許:短期特許の適用に関する文書要件は、特許条例の第113条および特許規則の第58~64条に記載されている。短期特許の特筆すべき点は、国際調査機関または指定された3つの特許庁のうちの1つが発行した発明に関する調査報告書を提出して、出願をサポートする必要があることである(特許条例第113条)。

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「香港における特許出願および意匠出願の優先権主張の手続(外国優先権)」(2020.04.07)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18432/
「香港における実用新案(短期特許)出願制度概要」(2019.07.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17521/
「香港における特許出願制度概要」(2019.07.02)
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「香港の特許・実用新案関連の法律、規則等」(2019.02.14)
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「日本と香港における特許出願書類の比較」(2015.11.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9392/

2. 記載が認められるクレーム形式

 特許条例は、特定の許容可能なクレームの形式を指定しておらず、特許可能な発明、特許されない発明を規定している。

(1) 認められる発明
 特許条例の第9A条(1)は、発明が新規であり、進歩性を伴い、産業上の利用可能性がある場合、その発明は特許を受けることができると定めている。

(2) 認められない発明
 特許条例の第9A条(2)~(6)は、以下は発明とみなされないと定めている。
・発見、科学理論または数学的方法
・美的創造
・精神的行為を実行する、ゲームをプレイする、またはビジネスを行うためのスキーム、規則、方法、またはコンピュータ・プログラム
・情報の提示
・人または動物の医学的治療方法および診断的方法
・公序良俗に反する発明
・植物または動物の品種、または植物または動物の生産のための生物学的なプロセス

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3. 出願の言語

 特許条例の第104条では、特許の申請は公用語(中国語または英語)のいずれかで提出する必要があると規定しているが、特許条例には、出願人が指定された特許出願と同じ言語で標準特許(R)出願を提出することを要求する規定はない。

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4. グレースピリオド

 特定の状況下では、発明の開示は不利益とはならない開示として扱われ、考慮されない。特許条例の第11A条、第37B条、および第109条は、それぞれ標準特許(R)、標準特許(O)、および短期特許の不利益とはならない開示の条件を次にように定めている。
・開示は、出願のみなし出願日または出願日の6月前までに行われるものであり、
・開示は、発明の出願人または所有者に関する明らかな悪意によるものであるか、または、
・発明の出願人または所有者が当面の間、所定の展示会または会議(すなわち、香港に適用される、1928年11月22日パリで署名された国際展示会条約の条件に該当する公式または公式に認められた国際展示会)で発明を展示した場合。

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5. 審査

(1) 一般の審査
 3種類の特許出願について、方式審査はいずれの場合でも必須であるが、実体審査の要件は、特許の種類によって異なる。

・標準特許(O)
 方式審査の詳細は、特許条例第37P条に記載されている。標準特許(O)には特許が適用される発明の特許性について実体審査も義務付けられており、登録官は出願が特許条例第37U条に定められた要件に準拠しているか否かを審査する。標準特許(O)の実体審査の詳細は、特許条例第37S条~第37Y条、および特許規則第31ZC条~第31ZP条に記載されている。

・標準特許(R)
 標準特許(R)を取得するための再登録制度は2段階(「記録請求」と「登録および付与請求」)であるため、合計2回の審査があり、「記録請求」は特許条例第18~19条および特許規則第8条に、「登録および付与請求」は特許条例第25~26条および特許規則第19条に記載がある。一方、標準特許(R)は、指定特許庁(中国特許庁、英国特許庁、英国を指定した欧州特許の場合の欧州特許庁)による対応する特許の付与に依存しているため、実体審査は行われない。

・短期特許
 特許条例第115条、第117条および特許規則第68条に短期特許の方式審査の詳細が記載されている。短期特許の付与には実体審査は必要ないが、特許権者または第三者は、付与後に実体審査の実施を要求することができる。特許権者が短期特許に基づき、執行措置を開始する場合、実体審査が前提条件とされる(特許条例第127A条~第127C条、特許規則第81A条~第81O条)。

(2) 早期審査(優先審査)
 早期審査(優先審査)の規定はない。

(3) 出願の維持
 特許条例の第33条に基づき、出願人は、指定特許出願が記録請求の公開から5年後に付与に進んでいない場合、係属中の標準特許出願(R)に対して年間維持費を支払う必要がある。年間維持費の支払い期日は、指定特許出願日と同月日である。
 標準特許(O)および短期特許は、登録前の維持費用は存在しない。

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6. 出願から登録までのフローチャート

(1) 出願から登録までの特許出願フローチャート
・標準特許(O)

・標準特許(R)

・短期特許

(2) フローチャートに関する簡単な説明
・標準特許(O)
 出願書を提出した後、登録官は出願書を調べて、出願書の記載要件および支払い要件に準拠しているかどうかを確認する。問題がなければ、出願日が与えられる。その後、登録官は、特許条例の第37L条に従って方式要件を検討する。出願が方式要件に準拠していることを確認した場合、出願を公開し、香港知的財産ジャーナルに公告を掲載する。
 出願人は、出願日または優先権主張の最も早い日から3年以内に実体審査を申請する必要があり、実体審査請求がなければ出願は取り下げられたと見なされる。
 登録官は、実体審査請求と所定の手数料を受け取った後、実体審査を実施し、出願が審査要件に準拠していない場合、その見解を出願人に通知し、出願人は、意見書を提出し、補正を要求することができる。登録官は、審査結果に応じて標準特許(O)を付与して公告するか、拒絶する。
 詳細については、特許条例の第37L~37Y条、および特許規則の第31M~31ZP条を参照のこと。

・標準特許(R)
 標準特許(R)を出願するための出願プロセスは、(1)指定された特許出願の記録請求の提出と(2)登録および付与の請求の2つの段階に分けられる。
<段階1(記録請求)>
 出願人は、指定特許庁で指定された特許出願が公開されてから6月以内に記録請求を提出する必要がある。標準特許(O)と同様に、登録官は、出願人によって提出された書類を審査し、出願日を付与し、その後、方式要件について審査する。欠陥がないか、欠陥が修正された場合、記録請求は公開される。
<段階2(登録および付与請求)>
 出願人は、記録請求の公開または指定特許庁による特許の付与後6月以内に、登録および付与請求を提出する必要がある。請求が提出されると、提出日と方式要件の審査が行われる。問題がなければ、登録官は指定された特許を登録し、標準特許(R)として特許を付与し、香港知的財産ジャーナルに公告する。
 詳細については、特許条例第15~27条、および特許規則第8~24条を参照のこと。

・短期特許
 標準特許と同様に、短期特許も出願時に出願日および方式要件の審査が行われる。登録官は、問題がないか、適正に補正された場合、短期特許を付与し、香港知的財産ジャーナルに公告する。
 短期特許は、要求がなければ、実体審査は行われない。
 詳細については、特許条例第112A~118条、および特許規則第58~68条を参照のこと。

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7. 付与前後の特許の有効性に異議を申し立てる手順

 特許条例第49条は、何人も、付与された香港特許の有効性について、本発明の公表または実施が公序良俗または道徳に反することを根拠として、異議を申し立てることができ、登録官は、この特定の理由で、付与された特許を取り消す権限あることを規定している。
 特許条例第91条は、裁判所が、何人かの申請に基づき、付与された特許を取り消すことができる理由を規定している(特許条例第91条(1)(a)~(f)を参照のこと)。

 上記の根拠は、3種類の特許に適用されるが、以下に述べるように、特許の種類ごとに付与の前後に異議を申し立てる方法を規定する条項がある。

・標準特許(O)
 特許条例第37R条は、標準特許(O)出願の公開時に、発明の特許性に異議を申し立てるために第三者の所見を登録官に提出することができると規定している。付与された標準特許(O)を無効にする具体的な理由については、特許条例の第91条を参照していただきたい。

・標準特許(R)
 標準特許(R)に異議を申し立てるための付与前の規定はない。標準特許(R)の付与が指定特許庁の指定特許に基づいていることを考慮し、指定特許庁での所定の異議申立または取消手続の後に指定特許が取り消された場合、標準特許(R)の所有者は取消命令またはその他の所定の文書の検証済みコピーを登録官に提出する義務がある。このような状況では、標準特許(R)は取り消され、効力がなかったものとして扱われる(特許条例第44条)。

・短期特許
 短期特許は、付与されるまで公開されず、付与前に異議を申し立てる条項はない。特許条例第126A条は、短期特許出願が特許付与、公開となった後、特許性に関して第三者は所見を登録官に提出できると規定している。
 さらに、特許権者または合理的な理由または正当な事業利益を有する当事者が、特許の有効性を判断するための付与後の実体審査を申請するための規定がある(特許条例第127A~127C条、および特許規則第81A~81G条まで)。標準特許(O)と同様に、登録官が短期特許とその補正がすべての審査要件に準拠していないと判断した場合、登録官は特許を取り消さなければならない(特許条例第127G条)。登録官は、短期特許を取り消す暫定決定を発行し、暫定取消通知を発行する(特許規則第81H条)。特許権者は、暫定取消通知の日から2月以内に所定の手数料とともに取消に関する仮決定を検討するよう登録官に請求することができる(特許規則第81I条)。登録官が、それでもなお審査要件に準拠していないと判断した場合は、特許所有者に応答を要求する所見を発行する(特許規則第81J~81K条)。
 登録官が必要であると判断した場合(特許規則第81L~81M条)、さらに数回の所見を通知することができる。特許が審査要件を満たせなかったと登録官が判断した場合、短期特許を取り消す最終決定を下し通知する(特許規則第81N条)。
 特許所有者は、短期特許を取り消すという登録官の最終決定に対して第一審裁判所に控訴することができる(特許条例第130条)。

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8. 権利設定後の権利範囲の修正

・標準特許(O)
 権利所有者は、付与後に特許の明細書を修正するように登録官または裁判所に申請することができる(特許条例第46条、および特許規則第38A条)。

・標準特許(R)
 権利所有者は、異議申立または取消手続の後に指定特許庁で対応する指定特許の仕様に対する同じ修正が行われたことに基づいて、特許の修正を裁判所に申請するものとする。(特許条例第43条、46条、および特許規則第35条)。

・短期特許
 権利所有者は、特許の実体審査の請求を提出するとき、実体審査中に庁指令に応答するとき、または実体審査証明書の発行後いつでも、特許の明細書の修正を登録官または裁判所に申請できるものとする(特許条例第46条、第127B条、第127D条、および特許規則第81P条)。

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9. その他の制度

特になし。

日本と香港における特許出願書類の比較

日本における特許出願の出願書類

(1)出願書類

所定の様式により作成した以下の書面を提出する。

・願書

・明細書

・特許請求の範囲

・必要な図面

・要約書

条文等根拠:特許法第36条

 

日本特許法 第36条 特許出願

特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。

一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所

二 発明者の氏名および住所または居所

2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。

3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

一 発明の名称

二 図面の簡単な説明

三 発明の詳細な説明

4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。

一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。

二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。

5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。

6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。

一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。

二 特許を受けようとする発明が明確であること。

三 請求項ごとの記載が簡潔であること。

四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。

7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。

 

(2)手続言語

日本語

 

(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否

 英語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。

条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4

 

日本特許法 第36条の2

特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書または特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面および必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。

2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年二月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。

3 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の同項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、取り下げられたものとみなす。

4 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第二項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなった日から二月以内で同項に規定する期間の経過後一年以内に限り、同項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。

5 前項の規定により提出された翻訳文は、第二項に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。

6 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲および図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。

 

日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語

 特許法第三十六条の二第一項 の経済産業省令で定める外国語は、英語とする。

 

(4)優先権主張手続

 優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。

 ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。

条文等根拠:特許法第43条

 

日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続

パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をしまたは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。

2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本またはこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。

一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日

二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日

三 その特許出願が前項または次条第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日

3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。

4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。

5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府または工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。

 

<参考URL>

(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))

http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/yuusennkenn_syouryaku.htm

 

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香港における特許出願の出願書類(標準特許出願)

(1)出願書類

香港における標準特許出願は、香港特許庁に直接出願するものでなく、指定特許庁に出願手続きを行い(指定特許出願)、指定特許出願が公開された段階で、香港特許庁に対して「記録請求手続き」を行うものである。その後、指定特許出願が指定特許庁により特許付与された段階で、その指定特許に基づき香港特許庁に対して「登録および付与請求」の手続きをすることで香港における標準特許が付与される。

(標準特許出願の出願書類)

香港特許庁に対する記録請求手続きは、前述の通り、指定特許出願が公開された事実に基づき行う。具体的には、指定特許庁での出願公開日から6ヶ月以内に、特許条例第15条(2)に定められた情報および書類の提出が求められる。

条文等根拠:特許条例第15条

 

香港特許条例 第15条 記録請求の提出

(1)第12条(1)に基づき発明の標準特許付与の出願をする権利を有する者は、当該発明の特許につき指定特許庁における出願公開日後6月以内のいつでも、登録官に対しその指定特許出願の記録を登録簿に記入するよう請求すること(本条例で「記録請求」という)ができる。

(2)個々の当該請求は、出願人により署名され、所定の様式で登録官に提出され、次のものを含むものとする。

 (a)公開された指定特許出願の写真複写。すなわち、指定特許出願と共に公開された説明、クレーム、図面、調査報告または要約を含む。

 (b)指定特許出願が発明者として何人かの名称を含まない場合は、出願人が発明者と信じる者を特定する陳述書

 (c)請求人の名称および住所

 (d)請求人が指定特許出願に出願人として記載されている者とは別の場合は、発明の標準特許付与出願の権利を説明する陳述書およびその陳述書を裏付ける所定の書類

 (e)第98条に規定される、先の出願に基づき指定特許庁で享受される優先権に関し、同条に基づく優先権が主張されている場合は、次の詳細を示す陳述書

  (i) 主張されている優先日

  (ii) 先の出願が提出された国

 (f)指定特許出願の出願時に、指定特許庁の法律の適用上新規性を害さない開示であった発明の先の開示について指定特許庁の法律に従って主張がなされた場合は、当該先の開示についての所定の詳細を示す陳述書、および

 (g)書類送達のための香港における宛先

 

※指定特許庁/指定特許

指定特許庁として、以下の3つの特許庁が指定されている。

・中華人民共和国国家知識産権局

・欧州特許庁(英国を指定した特許に限る)

・英国特許庁

したがって、香港において標準特許の権利化を求める場合は、中国出願、英国出願あるいは(英国指定を含む)欧州出願を行う必要がある。

条文等根拠:香港特許条例第4条および第8条

 

香港特許条例 第4条 「指定特許」等の意味

(1)本条例で、文脈上別異の解釈を要する場合を除き、

「指定特許」とは、指定特許庁により付与された特許をいう。

「指定特許出願」とは、次のものをいう。

 (a)指定特許庁での特許の出願であって、指定特許庁の法律に基づき公開されたもの

 (b)公開された国際出願であって、指定特許庁で有効に国内段階に入ったもの

「指定特許庁」とは、第8条に基づき本条例の適用上指定された特許庁をいう。

(2)本条例で、文脈上別異の解釈を要する場合を除き、次の言及については、それぞれの意味の通りである。

 (a)標準特許に係る「対応指定特許」というときは、標準特許付与出願において第27条に基づき登録された指定特許をいう。

 (b)「対応指定特許出願」というときは、

  (i)発明の標準特許出願については、その発明に係る指定特許出願をいい、

  (ii)標準特許については、対応指定特許の付与をもたらした指定特許出願をいう。

 

香港特許条例 第8条 特許庁の指定

行政長官は、本条例の適用上、官報告示により、香港を除く国、領土もしくは地域の法律に基づき設立された特許庁または国際協定に基づき設立された特許庁を指定することができる。

 

※登録および付与請求

指定特許出願が指定特許庁により特許付与された段階で、その指定特許に基づき香港特許庁に対して「登録付与請求手続き」をすることで香港における標準特許が付与される。

条文等根拠:香港特許条例第23条

 

香港特許条例 第23条 登録および付与請求の提出

(1)標準特許出願において、次に該当する場合は、出願人またはその権原承継人は、(2)に従うことを条件として、登録官に対し、指定特許の公開された明細書に記載された発明に対して付与された指定特許の登録および標準特許の付与を請求すること(本条例で「登録および付与請求」)というができる。

 (a)指定特許出願が登録簿に記録され、記録請求が公開されており、また記録請求が拒絶されず、または取下もしくは放棄とみなされない(この部に基づくか第III部に基づくかを問わない)場合、および

 (b)指定特許出願により指定特許庁において特許が付与されている場合

(2)(1)に基づく登録および付与請求は、指定特許庁による指定特許付与の日付または記録請求の公開の日付の何れか遅い方の後6月以内に行わなければならない。

(3)個々の当該請求は、登録官に対し所定の様式で提出しなければならず、かつ、次のものを含まなければならない。

 (a)指定特許の公開された明細書の認証謄本であって、指定特許庁により公開された説明、クレームおよび図面を含むもの

 (b)請求人が発明の標準特許出願人として登録簿に記載されている者とは別の場合は、発明の標準特許付与出願の権利を前者が有することを説明する陳述書およびその陳述書を裏付ける所定の書類

 (c)記録請求が、指定特許庁において主張された優先権を基礎にして、優先権が主張されている旨の第15条(2)(e)に基づく陳述書を含む場合は、指定特許庁に提出され、当該優先権を主張し、かつ、裏付ける書類の所定の複写

(4)個々の当該請求はまた、一方もしくは双方の公用語による情報の提供、または一方もしくは双方の公用語への書類の翻訳に係る本条例の要件をも遵守しなければならない。

(5)出願手数料および公告手数料は、登録および付与請求の一部の最先の提出後1月以内に納付しなければならない。何れか一方の手数料がその期間内または(6)で許可する延長期間内に納付されない場合は、特許出願は、取り下げられたものとみなされる。

(6)(5)に規定の期限内に納付されなかった出願手数料または公告手数料をなお有効に納付することができる猶予期間については、規則によりこれを定めることができる。

(7)本条の如何なる規定も、登録および付与請求が第24条に従って開始されることを禁じるものではない。

 

(2)手続言語

中国語または英語

条文等根拠:特許条例第104条(1)、 第104条(3)

 

香港特許条例 第104条 登録官に対する手続言語 (1)

(1)特許出願は公用語の1で行わなければならない。

 

(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否

条文等根拠:特許条例第104条(3)、特許規則第56条(4)

 

香港特許条例 第104条 登録官に対する手続言語

(3)発明に関する指定特許出願が公用語の1による場合は、本条の如何なる規定も、当該発明に関する標準特許出願が同一の公用語で出願されるよう求めるものと解釈してはならない。

 

香港特許規則 第56条 登録官に対する手続言語 (4)

(4)条例第15条(2)(a)にいう指定特許出願の、手続言語へのまたは公用語の1への翻訳文は、必要とされない。

 

(4)優先権主張手続

前述の記録請求時における優先権情報の提出、および登録付与請求時の所定の手続きを条件として優先権が与えられる。指定特許出願が享受する優先日が標準特許出願の優先日とみなされる。

条文等根拠:特許条例第98条、99条

 

香港特許条例 第98条 優先権

(1)本条は、パリ条約加盟国における同一の発明に対する特許またはその他の保護を求める先の出願を基礎として、指定特許庁の法律に基づき先の出願日の後12月の期間優先権を享受する、発明の指定特許の出願人に適用される。

(2)当該人またはその権原承継人は、指定特許庁の法律に基づく指定特許出願に関して享受するのと同一の優先権を、指定特許出願の主題である発明の標準特許出願の目的で享受する。

(3)(1)および(2)は、次の場合にも適用される。

 (a)先の出願が、パリ条約加盟国でない国、領土または地域で行われた場合で、かつ

 (b)指定特許庁において享受される優先権が、香港が加盟国である国際協定に基づいて、またはそうでないときは、その協定の加盟国が香港に適用する国際協定に基づいて付与される場合であって、この協定が、当該国、領土または地域においてもしくはそれに関して行われる最初の出願を基礎として、およびパリ条約に規定された条件と同等の条件に従うことを前提として、当該優先権付与を規定するものである場合

(4)本条における指定特許庁の法律への言及は、次の状況を取り扱う指定特許庁の法律への言及を含む。

 (a)パリ条約加盟国における出願であって、その国の国内法または2国間もしくは多国間協定に基づく正規の国内出願と同等なものは、優先権を生じる。

 (b)最初の出願と同一の対象に対する後の特許出願であって、同じパリ条約加盟国においてまたは関してなされるものは、優先権を決定する目的では、最初の出願とみなされる。

 (c)指定特許出願に関しては、複数の優先権を主張することができる。

(5)本条により与えられる権利は、第15条(2)(e)および第23条(3)(c)に従うことを条件とする。

(6)本条において、「パリ条約加盟国」とは、香港を除くパリ条約加盟国である国もしくは領土またはパリ条約が及ぶ国の属領をいう。

 

香港特許条例 第99条 優先権の効力

(1)第98条に基づき与えられる優先権は、指定特許庁において享受される優先日が、本条例の適用上、標準特許出願の優先日とみなされる効力を有する。

(2)第98条に規定される優先権を出願人が享受する標準特許出願により付与された特許は、先の出願(すなわち、それを基礎として指定特許庁において優先権が享受される出願)において開示された主題が先の出願の日後何れかの時に公衆に利用可能となっていたという事実のみを理由としては無効とされない。

 

日本と香港における特許出願書類の比較

 

日本

香港

手続言語

日本語

中国語(簡体字)または英語

手続言語以外の明細書での出願日確保の可否

可(英語)

その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。

 

 

 

優先権主張

手続

優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。

指定特許出願が享受する優先権が適用される。

記録請求時および登録付与請求時に所定の手続きが必要

 

 

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における特許出願書類については、下記のとおりである。

 

各国での手続き言語および日本語、英語明細書による出願可否に関する各国比較(※パリルートの場合)

手続言語

日本語明細書による出願可否

英語明細書による出願可否

JP

BR

*1

*1

CN

×

×

HK

英or中

×

ID

×

IN

英or印

×

KR

×

MY

英 or馬

×

PH

英or比

×

RU

SG

*2

TH

*

TW

VN

×

×

* :出願後に各国手続言語への翻訳文の補完が別途必要。

*1:所定要件を満たせば規則上は認められる

*2:規則上は認められる

 

日:日本語

葡:ポルトガル語

中:中国語

英:英語

尼:インドネシア語

印:ヒンディー語

韓:韓国語

馬:マレーシア語

比:フィリピン語

露:ロシア語

泰:タイ語

越:ベトナム語

 

PCTルートの有無

PCTルートの有無

JP

BR

CN

HK

(注)

ID

IN

KR

MY

PH

RU

SG

TH

TW

VN

(注): 香港標準特許出願は、指定特許庁(中国特許庁もしくは英国特許庁(英国指定の欧州特許出願に関する欧州特許庁を含む))における特許出願(指定特許出願)の情報に基づき権利化を求めるものであり、指定特許出願である中国特許出願もしくは英国特許出願(英国指定の欧州特許出願を含む)はPCTルート有り。