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ロシアにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレーム解釈のプラクティス

 ロシア連邦民法第4法典では、特定のクレーム形式に関する特異的な要件と考えられる内容が記載されていない。1375条では、明細書は、当該発明の本質を十分詳細に開示し、かつ、クレームは発明の本質的特徴を明確に表現するものであると定めている。

 

 発明に関するロシア特許庁規則には、プロダクト・バイ・プロセスのクレーム形式に特異的な要件と同様の要件を包含する規定が記載されている。規則パラグラフ38では、不定構造の化学成分は、特に、物理化学上その他の特徴により、特徴付けられると定めている。さらに、生産方法により、この成分を他と区別できるものである場合、その生産方法の特徴により、特徴づけられると定められている。規則パラグラフ41では、微生物菌株、細胞株または微生物共同体に関連した発明を、その培養条件により特徴づけることを認めている。上記のようにこれら要件は、化学およびバイオテクノロジー上の解決手段という狭い範囲に限られている。同規則では、プロダクト・バイ・プロセス形式のクレームに関する要件について、これ以上の記載はない。

 

 したがって、ロシア特許庁による審査では、上記パラグラフ38および41の規則を考慮したうえで、「プロダクト・バイ・プロセス」タイプのクレームに関する一般的なアプローチが適用されることが予想される。ロシア特許庁では、特別な手続に関する審査官向けの内部ガイドラインである審査マニュアルを定期的に更新している。しかし、これまでのマニュアルにおいて、このタイプのクレームについては一切触れられていない。

 

また、「プロダクト・バイ・プロセス」を含むクレームの扱いについて注目すべきは、事件番号第SIP-196/2014号における知的財産裁判所のN. Rassomagina判事の見解である。本件では、「空気除菌装置のケース」に関する実用新案権が無効であると認めたロシア特許庁審判部(特許紛争評議会)の審決が、知財裁判所へ控訴された。当該実用新案権のクレームでは、反射内部スクリーンが真空蒸着により製造されるという特徴を含んでおり、一方、先行技術文献ではアルミニウムの非真空蒸着を開示していた。蒸着の方法における差異は、本実用新案権の特徴のひとつではあるものの、権利化された実用新案の作用に影響を与えないとして、ロシア特許庁は、この文献は当該実用新案権の新規性を明らかに喪失させるものであるとみなした。「プロダクト・バイ・プロセス」形式を、化学分野やバイオテクノロジー分野ではなく、機械分野に適用することは、当時のロシア特許庁において想定していないことであったのである。その後、控訴審において、知的財産裁判所は、本件特許が無効であるとのロシア特許庁の結論に同意した。しかし、N. Rassomagina判事は、次の実用新案権者の主張を、ロシア特許庁も知的財産裁判所も見直していない、という自身の意見を表明した。その主張とは、金属の単なる蒸着と異なり、真空蒸着では装置の新しい要素を生み出すことが可能となること、すなわち、真空蒸着では、非真空の金属蒸着後よりも高い反射率を有する新規の反射面を得ることができるというものであった。

 

 後に、知的財産裁判所最高会議は、N. Rassomagina判事の意見に同意し、実用新案権者のさらなる控訴に基づき、ロシア特許庁の無効審決を取り消した。本実用新案権は有効に存続している。

 

 この判例は、「プロダクト・バイ・プロセス」形式のクレームの認識および審査に関するロシア特許庁のサポートが十分でないことを示すものである。「プロダクト・バイ・プロセス」形式のクレームは、特許権取得段階において、特別なアプローチを必要とする。特許庁の一般的なアプローチとしては、化学製品またはバイオテクノロジー製品に関するものを除いて、このタイプのクレームに例外的な対応をしていない。しかし、ロシア特許庁が、技術的観点および手続的観点の双方から、広範な意味において「プロダクト・バイ・プロセス」クレームを扱うためのロシア特許庁ガイドラインを詳細に定める必要性があることが、上記プラクティスにより示されていることは明らかである。

マダガスカルにおける知的財産保護の現状

【詳細】

 マダガスカルにおける知的財産権の取扱いについては、主に以下の法律に規定されている。

(1)産業財産保護に関する1989年7月31日付の法律第89-019号 (Ordinance No.89-019 Establishing Arrangements for the Protection of Industrial Property in Madagascar、以下、「産業財産権法」という)。この法律は、特許、商標、意匠、商号の保護、および不正競争について規定するものである。

(2)文学的および芸術的財産権に関する1995年9月18日付の法律第94-036号(Law No. 94-036 on Literary and Artistic Property、以下、「著作権法」という)。この法律は著作権を規定するものである。

 

 また、マダガスカルは、以下に挙げる知的財産権に関する国際条約に加盟している。

 (a)特許協力条約(1978年1月24日)

 (b)工業所有権の保護に関するパリ条約(1963年12月21日)

 (c)世界知的所有権機関(WIPO)(1989年12月22日)

 (d)標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書(2008年4月28日)

 (e)世界貿易機関(WTO)-知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)(1995年1月1日)

 

1.特許

 マダガスカルへの外国からの出願についてはパリルートおよびPCTルートによるマダガスカルへの国内移行が可能である。過去に出願された特許出願(原出願)に係る改良発明の特許出願を認める追加特許制度を備えている。また、発明者証に関する規定も設けられている。

 産業財産権法には、特許を受けることができない発明が規定されている。公序良俗に反する発明の他、ソフトウェア、医薬品、動物、化粧品、食品の発明は特許を受けることができない。

 さらに、出願時の絶対的新規性(出願日以前に国内外で公衆の知るところとなった技術に該当しないことを新規性の要件とし、国内および外国で公知、公用となった場合に新規性がないとすること)が求められる。ただし、出願日または優先権主張日の6ヶ月前以内に、国際博覧会等への展示を通じて発明が公表された場合に、新規性喪失の例外適用を受けることができる旨の規定も設けられている。

 マダガスカルでは、特許の存続期間は出願日から15年間である。この期間は、特許権者が申請することにより、さらに5年間延長することができる。追加特許は、原出願の登録特許(原特許)とともに失効する。特許年金については、出願日から2年目以降毎年支払うものとされている。

 マダガスカルにおける2014年の特許出願件数は24件であり、そのうち4件がマダガスカル人(内国人)による出願、20件が外国人による出願である。

 

2.意匠

マダガスカルでは、線もしくは色彩からなる構成、または線もしくは色彩との組み合わせの有無に関わらず、立体的意匠の外観形状も、意匠登録の対象になり得る。構成または形状は、工業製品または手工芸品に特別の外観を与えるものでなければならない。

 新規性については、明確かつ認識可能な形状であって、または独自な視覚的効果をもたらす、1つまたはそれ以上の装飾的特徴により、他の類似する意匠とは異なる意匠にのみ、意匠保護が与えられる。意匠は、先行意匠と比較して実質的に重要ではない特徴だけが相違しているという理由だけでは新規性要件は満たされない、または出願意匠とは異なる物品に適用されるというだけでも新規性要件は満たされない。意匠の新規な要素が、機能的・技術的効果を生み出すために必須な形状である場合、当該意匠は意匠保護を受けることができない。

 出願日の6ヶ月前以内にマダガスカルにおいて販売または他の方法によって意匠を公開した場合、新規性は喪失されないものとする。また、意匠出願日または意匠の優先権主張日の6ヶ月前以内にマダガスカルまたはパリ条約同盟国における公認の博覧会で意匠を開示した場合も、創作者等がかかる博覧会に参加したことを証明する公認証明書の作成を条件として、新規性は喪失されない。

 一意匠一出願が原則であり、意匠出願に対する実体審査が行われる。意匠登録は、出願日から5年間有効であり、所定の手数料を支払うことによりさらに2回にわたって5年間の更新が可能である(最長15年)。

 マダガスカルにおける2014年の意匠出願件数は207件である。

 

3.商標

 商標にはラベル、色彩、デザイン、図、スローガンが含まれると産業財産権法に規定されている。商標が登録されるためには、他社の商品またはサービスと識別されなければならず、使用により獲得される識別力も考慮される。

サービスマークおよび連合商標の登録に関する規定はあるが、防護標章および連続(シリーズ)商標に関する規定はない。国際商標登録もマダガスカルを指定することが出来る。存続期間は出願から10年間で、不使用取消の除斥期間は登録から3年である。

 商標出願は、登録可能性と先願の両面から審査される。先願については、登録局は同一または類似一の先願商標がある場合にのみ拒絶する。出願が先願商標権を理由に拒絶された場合、その拒絶判断が最終判断であり、登録局に対して不服を申立てることができない。登録局の拒絶理由が不当と考えられる場合、商標出願人は、控訴裁判所に決定の不服について訴訟を提起することができる。

 第三者が同一または類似の商標を既に登録している場合、商標登録を取り消すためには、取消訴訟を提起することができる。

 なお、マダガスカルの商標制度において、商標出願に対する異議申立の規定がない。

 

 商標権者が侵害訴訟を提起する権利は、登録が認められた商品またはサービスだけに留まらず、商標の希釈化に対しても認められる。産業財産権法は、許諾を受けていない商標の使用が「正当な事由を欠き」、「商標権者の利益を害するおそれがある」状況について定めている。

また、商号および不正競争についても規定しており、「工業、商業、手工芸、農業に関して誠実な慣行に反する如何なる行為」も違法と定めている。

 2014年の国内商標出願は約1,100件であり、そのうち約800件はマダガスカル人、300件は外国人によるものであった。また、同年の国際商標登録の出願においてマダガスカルが指定された件数は約900件である。

 

4.著作権

 著作権法により保護される著作権は文学的および芸術的作品だけに留まらず、たとえば音楽作品、映画フィルム、三次元創作物、ソフトウェア、データベース、フォークロア(伝統的文化表現)にも適用される。

 著作件法は、著作権を譲渡した著作者に対しても著作人格権を与え、彼らが著作者の表示を求めること、そしてその作品の同一性を侵害された場合に異議を唱えることを認めている。

 マダガスカルにおける著作権の存続期間は、通常、創作者の死亡日から起算して70年間である。