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インドにおける商標異議申立制度

 インドにおける商標異議申立手続は、2010年商標(改正)法第21条および2017年商標規則の規則42~51に規定されている。

1.異議申立
 何人も、登録出願の公告若しくは再公告のあった日から4か月以内に、所定の方法により所定の手数料を納付して書面をもって登録官に対して登録異議の申立てをすることができる(商標法第21条(1))。異議申立は「何人」も行うことができ、この点において、「当該登録によって被害を受ける者」のみが提起できる登録の取消(商標法第57条)とは異なっている。「何人」とは、必ずしも個人である必要はなく、法人または非法人組織であってもよい。
 異議申立は、商標法に定められた理由を根拠としなければならない。主として、絶対的拒絶理由について規定する商標法第9条、および相対的拒絶理由について規定する商標法第11条が適用される。
 商標法第9条には、(1)項から(3)項があり、商標法第9条(1)項は、出願商標の識別性の問題に関する(a)号から(c)号の規定を含んでおり、以下の商標は登録することができないとしている。

(a) 識別性を欠く商標、すなわち、ある者の商品もしくは役務を、他人の商品もしくは役務から識別できないもの
(b) 取引上、商品の種類、品質、数量、意図する目的、価格、原産地、当該商品生産の時期もしくは役務提供の時期、または当該商品もしくは役務の他の特性を指定するのに役立つ標章または表示からもっぱら構成されている商標
(c) 現行言語において、または公正な確立した取引慣行において慣習的となっている標章または表示からもっぱら構成されている商標

 商標法第9条(1)項にはただし書が設けられており、出願日より前に、商標が使用の結果として識別性を獲得している、または周知である場合には、登録を拒絶されることはない。

 商標法第9条(2)項は、公益および公序良俗の問題に言及する規定を含んでおり、以下の商標は登録することができないとしている。

(a) 公衆を誤認させるか、または混同を生じさせる内容のものであるとき
(b) インド国民の階級もしくは宗派の宗教的感情を害するおそれがある事項からなり、またはそれを含んでいるとき
(c) 中傷的もしくは卑猥な事項からなり、またはそれを含んでいるとき
(d) その使用が1950年紋章および名称(不正使用防止)法により禁止されているとき

 商標法第9条(3)項は、識別性があるとみなすことができない特定の形状からなる商標の登録を禁じており、以下の商標は登録することができないとしている。

(a) 商品自体の内容に由来する商品の形状
(b) 技術的成果を得るために必要な商品の形状
(c) 商品に実質的な価値を付与する形状

 相対的拒絶理由に関しては、商標法第11条(1)項に従い、(a)先の商標と同一、かつ商品又は役務が類似する場合、及び(b)先の商標と類似、かつ商品又は役務の同一性又は類似性により公衆に混同を生じさせるおそれがある場合、その商標は登録されない。

 商標法第11条(2)項はパリ条約第6条の2に対応するものであり、周知商標は、商品および役務が異なる場合であっても第三者の商標から保護される。

 商標法第11条(3)項は、コモン・ロー上の権利および著作権法の重要性を認め、詐称通用に関する法律または著作権法により商標の使用を阻止すべき場合には、当該商標は登録されないとしている。

 商標法第11条(6)項、(7)項は、商標が周知であるかどうかを判断する際に考慮すべき事実および証拠について説明している。以下に挙げるこれらの事項は、異議申立人または出願人が異議申立手続において、自己の商標が周知であると認定してもらい、それにより自己の主張を裏づけるための証拠の収集および提出の際の参考となる。

・当該商標の使用促進の結果として得られたインドにおける知識を含め公衆の関係階層における当該商標についての知識または認識
・当該商標の使用についての期間、範囲および地域
・当該商標が適用される商品もしくは役務についての博覧会もしくは展示会における広告または宣伝および紹介を含め、当該商標の使用促進についての期間、範囲および地域
・本法に基づく当該商標の登録、または登録出願についての期間および地域であって、当該商標の使用または認識を反映している範囲
・当該商標に関する諸権利の執行記録、特に、当該商標が当該記録に基づいて裁判所または登録官により周知商標として認識された範囲
・実際のまたは潜在的な消費者の数
・流通経路に介在する人員の数
・それを取り扱う業界

 商標法第11条(10)項では、「同一または類似の商標に対して周知商標を保護しなければならず、かつ、商標権に影響を及ぼす、出願人もしくは異議申立人の何れかに含まれた不誠実を参酌しなければならない」とし、周知商標と同一または混同を生じるほど類似の商標を採用する第三者に関連する「悪意」の概念について確認するとともに、周知商標を保護する必須義務を登録官に負わせている。

 商標法第11条(11)項は逆に、「商標が登録官に重要な情報を開示して公正に登録された場合または商標についての権利が本法の施行前に善意の使用を通じて取得された場合は、本法は、当該商標が周知商標と同一または類似するとの理由では、当該商標登録または当該商標使用の権利の有効性を一切害さない。」とし、善意で使用されている出願または登録商標を保護している。異議申立に対する抗弁として、この規定を用いることができる。

 なお、先行商標の所有者が既に後続商標に同意している場合には、商標法第12条による特別の状況があるものとして、後続商標の登録を許可している(商標法第11条(4)項)。商標法第12条では、「善意の同時使用」または他の「特別な事情」がある場合には、商標が商標法第11条に抵触するにもかかわらず、登録官は当該商標の登録を許可することができると定めている。

2.答弁書
 出願人は、登録官から異議申立書を受領した日から2か月以内に、答弁書を提出しなければならない。答弁書の提出期限は延長できないため、出願人が2か月以内に答弁書を提出しない場合、異議対象の出願は放棄されたとみなされる。(商標法第21条(2))

3.証拠
 出願人により提出された答弁書が、登録官により異議申立人に送達された後、異議申立人は、答弁書を受領した日から2か月(商標規則109により、1か月の延長が可能)以内に証拠を提出するよう要求される。異議申立人が証拠の提出を望まない場合、この2か月+1か月の期間内に異議申立書に明記された事実に依拠する旨を登録官に対して通知するとともに、出願人にも通知しなければならない。また、聴聞の希望がある場合には、登録官はその機会を与えなければいけない。これらの措置が取られない場合、異議申立人は自己の異議申立を放棄したとみなされる。(商標法第21条(4)、商標規則45)

 異議申立人が証拠を提出、または事実に依拠する旨を通知した後、出願人は、異議申立人の証拠を受領した日から2か月(商標規則109により、1か月の延長が可能)以内に、出願を裏づける証拠を提出、または答弁書に明記した事実に依拠する旨を登録官に対して通知するとともに、異議申立人にも通知するよう要求される(商標法第21条(4)、商標規則46)。異議申立人とは異なり、出願人がこれらの措置を取らなかったとしても、出願が放棄されたとみなされることはない。この場合、インドの法律に基づき、出願人は答弁書を提出することにより、自己の出願を防御する意思を示したと理解され、この防御は、出願人が証拠を提出しない場合でも、維持することができる。

 出願人が証拠を提出した場合、異議申立人は、出願人の証拠を受領後1か月(商標規則109により、1か月の延長が可能)以内に、弁駁証拠を提出することができる(商標規則47)。これをもって、異議申立手続における答弁および証拠段階は終了する。

 なお、いずれの側もこれ以上の証拠を提出することはできないが、登録官は、自己が適当と認めるときはいつでも、出願人または異議申立人の何れに対しても、登録官が適当と認める費用またはその他の条件を付して、証拠を提出することを許可することができる(商標規則48)。

 留意事項として、証拠の提出に関する期間の延長については、商標法第131条に「登録官において、所定の方法により、かつ、所定の手数料を添えた申請に基づき、指定期間の満了の前後を問わず、何らかの行為をする期間(本法に別途規定された期間を除く)を延長するに十分な理由があると納得したときは、登録官は、適当と認める条件を付して、その期間を延長し、かつ、この旨を当事者に通知することができる。」と規定されており、登録官の裁量に基づくものであることが挙げられる。

4.ヒアリング(聴聞)
 答弁書および証拠の提出段階が完了すると、登録官は口頭による意見陳述のために双方の当事者を招集するヒアリングの日程を定める(商標規則50(1))。ヒアリングの日付は、最初の通知の日から少なくとも1月後でなければならず(商標規則50(1))、また、ヒアリングの日の少なくとも3日前に、合理的な理由によるヒアリングの延期を請求することができるが、3回以上の延期は与えられず、かつ、各延期期間は30日を超えない(商標規則50(2))。双方の当事者は、口頭による意見陳述の代わりに、またはこれに追加して、抗弁書を提出することができる(商標規則50(5))。

5.異議申立手続の期間
 商標局にはかなりの未処理案件があり、多数の異議申立が係属中である。未処理案件を処理するために、長年にわたり様々な取り組みが行われてきた。しかし、異議申立の未処理案件は、2022年3月時点で、225,000件以上がインドの5か所の商標庁で係属中であり、これに対して聴聞官を大幅に増やすなどの対策が取られているとの情報がある
 また、インド特許意匠商標総局(the Office of the Controller General of Patents, Designs & Trade Marks (CGPDTM))ウェブサイトの商標「Quality Policy of Office」(http://www.ipindia.gov.in/quality-policy-of-office-tm.htm)では、案件の処理にあたっては時間制限のあるプロセスを順守するとともに、内部の相乗効果を活用して、迅速に結果を提供することを、商標審査における品質ポリシーの一つとしている。

6.審判請求
 商標法第21条に基づく登録官のあらゆる命令または決定を不服とする当事者は、商標法第91条(1)にもとづき、その命令または決定が当該当事者に通知された日から3か月以内に、知的財産審判部に審判請求を提出することができるとされていたが、2021年8月13日に2021年審判改革法(Tribunals Reforms Act, 2021)が制定され、知的財産審判部が廃止された。よって、今後は高等裁判所に設置された知的財産権に関連する案件を取り扱うための知的財産部において、不服申立てが管轄されることになる。
参考情報:
インドにおける知的財産審判委員会(IPAB)の廃止-その後-(2022.1.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/judgment/21344/

インドにおける特許異議申立制度-付与前異議申立と付与後異議申立

1.付与前異議申立
 付与前異議申立は、対象特許出願の公開の日から登録の日まで提出可能である。ただし、申立てられた異議について審査管理官(Controller)が検討するのは、当該出願について審査請求がなされた後である。付与前異議申立の制度は、特許に対して異議を申立てる機会を公衆に与えることを意図しているため、「何人も」申立てることができる(特許法第25条(1))。異議申立人が付与前異議申立を提出する十分な時間を確保するため、特許出願の公開から6か月間は特許権が付与されないことが、インド特許規則(以下、特許規則)に規定されている(特許規則55(1A))。

1-1.付与前異議申立の理由
 付与前異議申立は特許法第25条(1)に規定された11項目の異議理由に基づき、申立てが可能である。このうち代表的な異議理由として、以下の4点が挙げられる。

・出願の請求項に開示された発明が、出願人によって不正に取得された
・何れかの請求項で請求される発明が、当該請求項の優先日の前に公開されていた
・発明が、進歩性を有さない
・出願人が、インド特許法第8条の要求(たとえば、他国で出願された同一または実質的に同一発明に関する詳細情報のインド特許意匠商標総局への提出)を順守していない

1-2.付与前異議申立の手続
 付与前異議申立は、所定の書式(Form 7A)を用いて、インド特許意匠商標総局長官宛に提出する(特許法第25条、特許規則55(1))。申立を考慮した長官が当該出願を拒絶すべきという見解を持った場合、異議申立人が作成した異議申立書の副本を添えて出願人へ通知される(特許規則55(3))。出願人は異議の通知に対して、通知の発行日から3か月以内に、応答書を(証拠と共に)提出しなければならない(特許規則55(4))。出願人は、長官の付与前異議申立に対する決定が下されて手続が終了する前に口頭手続の機会を求めることができる(特許法第25条(1))。
 出願人の意見を考慮した後、長官は、出願の特許付与を拒絶するか、または、特許付与前に出願の補正を求めるか、あるいは異議申立を棄却するか、のいずれかを行う事ができ、通常、長官は、付与前異議申立手続の終了から1か月以内に、決定を下さなければならない(特許規則55(5))。長官による決定に対して、高等裁判所への不服申立が可能である(特許法第117A条、Tribunals Reforms Act 2021第13条)。

図1. 付与前異議申立の手続フロー

2.付与後異議申立
 付与後異議申立は、特許法第25条(2)に規定されている。付与後異議は、特許登録の公開の日から1年以内に申立てなければならない。付与前異議申立と異なり、付与後異議申立は、「利害関係人」のみが申立てることができる。特許法第2条(1)(t)によれば、「利害関係人」とは、当該発明が関係する同一分野の研究に従事している、または、これを促進する業務に従事する者を含む。Ajay Industrial Corporation v. Shiro Kanao of Ibaraki City事件(1983)においてデリー高等裁判所は、「利害関係人」とは、「登録された特許の存続によって、損害その他の影響を受ける、直接的で現実の、かつ具体的な商業的利害を有する」者と解釈している。付与後異議申立の異議理由は、付与前異議申立の異議理由と同様である(特許法第25条(2))。

2-1.付与後異議申立の手続
 付与後異議申立は、所定の書式(Form 7)を用いて、特許意匠商標総局長官宛に異議申立書を提出する(特許規則55A)。異議申立書の受領後、長官は付与後異議申立の合議体として審査管理官3名からなる異議委員会(異議部)を設置する(特許法第25条(3)、特許規則56(1))。当該出願を審査した審査官は、委員会メンバーとしての適格性をもたない(特許規則56(3))。通常は、次席審査管理官(Deputy Controller of Patents)または審査管理官補(Assistant Controller of Patents)が異議委員会の委員長として任命され、2名の上級審査官が残りのメンバーとして任命される。付与後異議申立手続において、異議申立人は、自らの利害や基礎となる事実、求める救済措置について述べる異議申立陳述書を作成し、証拠(ある場合)とともに異議申立書に添付して、長官宛に提出し、その異議申立陳述書と証拠(ある場合)の写しを特許権者に送付しなければならない(特許規則57)。
 特許権者が異議申立に対して争う場合、異議申立人から異議申立書を受領した日から2か月以内に、所轄庁に、証拠(ある場合)とともに異議に争う理由を記述した答弁書を提出し、その写しを異議申立人に送付しなければならない(特許規則58(1))。特許権者が答弁書を提出しない場合、特許は取り消されたものとみなされる(特許規則58(2))。特許権者の答弁書を受領した異議申立人は、受領の日から1か月以内に、弁駁書を提出できるが、そのような異議申立人の弁駁書は、特許権者が提出した証拠に関する内容に厳しく限定される(特許規則59)。両者(特許権者、異議申立人)からのさらなる答弁は、長官が許可した場合にのみ提出可能である(特許規則60、62)。答弁書の提出完了後3か月以内に、異議委員会は、異議委員会の勧告を長官に提出する(特許規則56(4))。
 その後、長官は、口頭手続の期日を指定する(特許法第25条(4))。口頭手続の通知は、口頭手続期日の10日以上前に両者(特許権者、異議申立人)に送付されなければならず、また、異議委員会の勧告について、審査管理官が口頭手続の期日を設定する前に、異議申立人と特許権者に通知しなければならない(特許規則62(1))。この異議委員会に対する手続上の要件は、知的財産審判部(IPAB、現在は廃止)の過去の決定で示されたものである(M/s. Diamcad N.V. v. Asst. Controller of Patent and Ors. (2012))。また、知的財産審判部(IPAB)は、異議申立手続における異議委員会の勧告および審査管理官の決定には、充分な理由づけが必要、と示した決定もある(Sankalp Rehabilitation Trust v. F Hoffmann-LA Roche AG (2012))。長官は、異議委員会メンバーに口頭手続への同席を指示することができる(特許規則62(1))。口頭審理後、長官は決定を下す(特許規則62(5))。決定に対しては、高等裁判所への不服申立が可能である(特許法第117A条、Tribunals Reforms Act 2021第13条)。

図2. 付与後異議申立の手続フロー

3.異議申立と取消手続との違い
 「利害関係人」は、特許法第64条に基づき特許の取消しを求めることができる。異議申立と取消手続との主な違いは、以下の通りである。

・異議申立の異議理由とは別に、取消手続には、取消理由が規定されており、異議理由には該当しないが、取消理由に該当する場合もある。たとえば、秘密保持指令(特許法35条)への違反は、異議理由とはならないが、取消理由となる。
・付与前異議申立は特許の登録前の申立てが必要であり、付与後異議申立は特許登録の公開の日から1年以内に申立てが必要となる。一方、取消手続は、特許の登録の後、いつでも申請が可能である。
・インド政府は、異議を申立てることができない(長官の指示・指令に対して、インド政府が異議を申立てる理由がない)。一方、取消手続はインド政府も申請することができる、例えば、原子力関連発明が誤って特許になった場合など、政府が自分で取り消すことができる(特許法第65条)。
 なお、異議申立(付与前、付与後)は、インド特許意匠商標総局(IPAB)への申請であったが、IPAB廃止後は高等裁判所への提訴となった。

インドネシアにおける商標異議申立制度

 インドネシアにおいて、商標出願に対する異議申立は、「商標及び地理的表示法」第20/2016号第14条、第15条、第16条および第17条に規定されている。以下に述べる異議申立手続は、2016年11月25日から実施されている。
 法律第11/2020号による改正(以下、「商標法2020」)により、これまでの実体審査が公開期間終了後30日以内に開始され、150日以内に完了とされていたものが、公開期間終了時に開始され、異議のない出願については30日以内、異議のあった出願については90日以内に終了しなければならないとされた。
 異議申立は、商標出願の公告期間中に提起することができる。商標法2020第13条に従い、商標出願は全ての方式要件を満たした時点で出願日が付与される。法定の公告期間は、遅くとも出願日の15日後から始まる2か月間である。
 商標出願が認可されると、インドネシア知的財産総局(Directorate General of Intellectual Property Rights;以下、「DGIP」)は商標公報およびDGIPのウェブサイトにおいて出願を公告する。公告は、2か月間にわたり実施される。
 商標法2020第16条(1)項に従い、上記の公告期間中に、何人も、DGIPに書面による異議申立を提起することができる。異議申立の際には、オフィシャルフィーを支払わなければならない。
 異議申立の際に要求されるオフィシャルフィーは、法務人権省(Ministry of Justice and Human Rights Affairs)内で適用される非課税収益の種類および料金に関する政令第28/2019号に定められており、金額は商標出願1件につき100万ルピアである。

1.異議申立の理由
 異議申立の理由は、商標法2020に下記のように規定されている。

(1) 商標法2020第20条

次の商標は登録できない:
a. 国家のイデオロギー、法規、道徳規範、宗教、倫理、公序良俗に反するもの;
b. 登録対象の商品/サービスと同じ名称、これを説明するもの、又はその単なる言及に過ぎないもの;
c. 登録対象の商品/サービスの出所、品質、形式、サイズ、種類、又はその使用目的について、公衆を誤認させる可能性のある要素を含んでいるもの、又は同類の商品/サービスに対し保護対象となっている植物品種の名称。
d. 生産された商品/サービスの品質、便宜又は効能と一致しない情報を含んでいる。
e. 識別性を有する特徴がないもの;
f. 一般名称、公有財産の象徴となっているもの;
g. 機能的な形態が含まれているもの。

 2020年の改正により、機能的な形態が含まれる標章の商標登録ができないとされた。

(2) 商標法2020第21条

1) 商標の要部又は全体が、次のいずれかと類似する場合、出願は拒絶される;
a. 同類の商品/サービスに関して既に登録又は出願されている、他者の所有する商標;
b. 同類の商品/サービスに関して、他者の所有する周知商標;
c. 特定の条件を満たす、同じ種類ではない商品/サービスに関して他者の所有する周知商標;又は
d. 登録済みの地理的表示
2) 次に該当する商標は拒絶される;
a. 有名人の名前、略称、写真又は他者が所有する法人の名称に相当する、又はこれと類似するもの。但し、正当な権利者の書面による同意がある場合を除く。
b. 国家又は国内もしくは国際機関の名称又は略称、旗、紋章、シンボル又は象徴を模倣する、又はこれと類似するもの。但し、管轄当局の書面による同意がある場合を除く;
c. 国家又は政府機関によって使用される公的な標識、印章又は証印を模倣する、又はこれと類似するもの。但し管轄当局の書面による同意がある場合を除く。
3) 出願人が悪意をもって提出した商標出願は拒絶される。
4) 1)項a項~c項までにいう、商標出願の拒絶に関する更なる詳細な規定は、大臣令により定められる。

2.異議申立の内容
 商標法2020第16条(2)項に従い、異議申立は、十分な理由と共に、出願商標が商標法2020に基づき登録されるべきではない、または拒絶されるべきであることを証明する証拠を提出することができる。

 異議申立は、異議理由を示す異議申立書に異議理由を裏付ける証拠を添付して提出される。異議申立を提出する際に必要な証拠の量に関する規定は存在しない。異議申立時に提出されなかった追加の証拠がある場合、異議申立人は、異議申立日から2週間以内であれば追加証拠を提出することができる。

商標法2020第16条

1) 第14条にいう公告期間中、何人もそれぞれ大臣宛の書面で手数料を支払い、当該の出願に異議を申立てることができる。
2) 1)項にいう異議申立ては,出願されている商標が本法に基づき、登録不可能又は拒絶されるべきであることが、証拠を伴う十分な理由がある場合に申立てることが出来る。
3) 1)項にいう異議申立てがあった場合,異議申立受理日から起算して14日間以内に,当該異議申立書の写しが出願人又は代理人宛に送達される。

3.異議申立の手続期間
 商標法2020第16条(3)項に従い、異議申立が提出されると、DGIPは異議申立を受領した日から遅くとも14日以内に、異議申立書の写しを出願人に送付する。
 出願人は、DGIPから送付された異議申立書の写しの送達日から2か月以内に、異議申立に対する答弁書を提出することができる(商標法2020第17条(2)項)。
 商標法2020に定められた異議申立手続は、3つの段階からなる。第1段階は異議申立人による異議申立書の提出であり、第2段階は出願人による答弁書の提出であり、最後の段階はDGIPにより下される異議決定である。さらに、異議申立人および出願人は、異議申立書または答弁書について説明するために、DGIPにヒアリングを要求することができる。ヒアリングはDGIPにおいて行われる。
 DGIPは、答弁書の提出期限から1か月以内に、当該出願の実体審査において、異議申立書および答弁書を審査資料として検討する(商標法2020第23条(2)項および(4)項)。
 DGIPは、公告期間の満了日もしくは答弁書提出期限から、異議のない場合は30営業日以内に、異議のあった場合は90営業日以内に、当該出願の実体審査を完了する。
 審査官が実体審査の結果、商標出願を認可できないと判断した場合、DGIPは出願人に対し、当該出願は登録できない、または拒絶される旨を書面で通知する。その場合、出願人は、当該通知の送達日から30日以内に応答する機会を与えられる(商標法2020第24条(3)項)。
 審査官が実体審査の結果、商標出願を認可できると判断した場合、当該出願は商標登録簿に登録される(商標法2020第24条1)項)。
 DGIPは、実体審査の結果について、異議申立人にも書面で通知する。

商標法2020第17条

1) 出願人又は代理人は、第16条にいう異議申立てに対する答弁書を提出する権利を持つ。
2) 1)項にいう答弁書は、大臣によって異議申立書の写しが送達された日付から起算して2カ月間以内に書面で提出されること。

商標法2020第23条

1) 実体審査とは、商標登録出願に対し、審査官が行う審査である。
2) 第16条及び第17条にいう異議申立て又は答弁は全て、1)項にいう実体審査において考慮対象とされる。
3) 公告期間満了日までに異議申立が提起されなかった場合、出願の実体審査が実施される。
4) 3)項にいう実体審査は、30日以内に完了するものとする。
5) 第17条にいう答弁書の提出期限最終日から起算して30日以内に、異議申立てが提起された場合、出願の実体審査が実施される。
6) 5)項にいう実体審査は、最長で90日以内に完了するものとする。
7) 実体審査実施のための必要に応じて、審査官以外の商標審査専門家を配置することが出来る。
8) 7)項にいう商標審査専門家によって行われた実体審査結果は、大臣の承認によって、審査官によって行われた実体審査結果と同等とみなすことが出来る。

商標法2020第24条

1) 審査官が、出願を登録可能であると決定すると、大臣は:
a. 当該商標を登録する;
b. 当該商標が登録されたことを出願人又は代理人に通知する;
c. 商標証書を発行する;及び
d. 当該商標の登録を、電子及び非電子媒体の商標官報上で公表する。
2) 審査官が、出願を登録不可能である又は拒絶すると判断した場合、大臣は出願人又は代理人に、拒絶理由通知書を送る。
3) 出願人又は代理人は,2)項にいう通知書を受け取った日付から30日以内に,その応答の理由を記載した応答書を提出することが出来る。
4) 出願人又は代理人が、3)項にいう応答書を提出しなかった場合、大臣は当該出願の拒絶を決定する。
5) 3)項にいう応答書を出願人又は代理人が提出し、審査官がその応答書を検討可能であると判断した場合、大臣は1)項に記載した規定を実施する。
6) 出願人又は代理人が3)項にいう応答書を提出し、審査官がそれを検討不可能であると判断した場合、大臣はその出願の拒絶を決定する。
7) 4)項及び6)項にいうような拒絶は、その理由を記載した文書により、出願人又は代理人に通知される。
8) 第16条にいう異議申立てのある場合、大臣は登録又は拒絶の通知書の写しを、当該異議申立の提起者宛てに送達する。

4.異議申立の取下げ
 異議申立人は、審査官が出願の実体審査結果を決定する前であれば、DGIPに対して、異議申立の取下げ書を提出することができる。異議申立を取下げる一般的な理由としては、異議申立人と出願人との間で、商標譲渡契約、共存合意契約などを締結した場合が挙げられる。

5.審査官の拒絶査定に対する不服
 審査官の拒絶査定に対して不服がある場合、出願人は、商標審判委員会に審判請求を提起することができ、その写しは、オフィシャルフィーの支払いをもってDGIPに送付される(商標法2020第28条2)項)。

商標法2020第28条

1) 第20条又は第21条にいうような理由に基づく出願の拒絶査定に対しては、審判請求を提出することが出来る。
2) 審判請求は有料で、出願人又は代理人から商標審判委員会宛に書面を提出し、その写しは大臣に届けられる。
3) 審判請求書は、拒絶査定に対する不服の理由を添え、完全に説明した上で提出すること。
4) 3)項にいう理由は拒絶された出願を改善又は補足するためのものではないこと。

 審判請求書は、出願の拒絶査定の送達日から3か月以内に提出しなければならない(商標法2020第29条(1)項)。

商標法2020第29条

1) 拒絶された出願に対する審判請求は、拒絶査定の送達日から数えて90日以内に提出されること。
2) 1)項にいう審判請求が提出されなかった場合は、拒絶査定が出願者により受入れられたものとみなされる。

 なお、異議申立以外に、関連当事者は商事裁判所に取消訴訟を提起することができる(商標法2020第76条)。

商標法2020第76条

1) 商標登録の取消訴訟は、第20条又は第21条にいう事由に基づき、関連当事者によって提訴することが出来る。
2) 登録されていない商標の所有者は、大臣宛に商標登録の出願を行った後、1)項にいうような訴訟を提訴することが出来る。
3) 登録商標所有者に対する取消訴訟は、商事裁判所に提訴する。

香港における商標異議申立制度

 商標条例第44条および商標規則の規則16(1)に従い、何人も、出願が公報に公告された日から起算して3ヵ月以内に、当該出願に対して異議申立を提起することができる。たとえば、ある出願が3月1日に公告されたとすると、異議申立の期限は6月1日ではなく5月31日を以て満了することになる。

 

 正当な理由がある場合、異議申立期間は1度だけ延長が可能であり、延長期間は2ヵ月とされる。実際には、異議申立手続を回避するため、異議申立を提起する前に出願の自発的取り下げを求める警告状を送付することが望ましい。警告状の送付は、異議申立手続に勝訴した場合に出願人に対する費用請求に有利な要因となり得るだけでなく、正式な異議申立書の提出期限の延長が必要になった場合に、期限延長を求める有効な理由として利用することができる。

 

異議申立書

 

 一般的な異議申立理由は、以下の相対的理由および絶対的理由に基づく。

 

相対的理由

 

 商標条例第12条に定める商標登録拒絶の相対的理由は、異議申立の対象となる商標が先行する別の商標と同一もしくは類似であり、かつ、出願に係る商品または役務が先行商標の保護に係る商品または役務と同一もしくは類似である場合に適用される。出願に係る商品または役務と先行商標の保護に係る商品または役務が類似しているが同一ではない場合、出願に係る商品または役務に関する商標の使用が公衆に混同を生じさせるおそれがあるという要件が加えられる。

 

 先行商標がパリ条約に基づき保護される周知商標であった場合、出願に係る商品または役務に関する商標の使用が公衆に混同を生じさせるおそれがあり、正当な理由なく周知商標の識別力もしくは名声を不当に利用し、または損なう限りにおいて、出願に関わる商品または役務が周知商標の保護に関わる商品または役務と同一もしくは類似である必要はない。

 

 商標条例のこの規定は、詐称通用(パッシングオフ)に関する法に基づき、または先行する他の権利によって(著作権もしくは登録意匠に関する法によって)、商標の使用が禁じられる場合にも適用することができる。

 

絶対的理由

 

 異議申立を提起する場合、商標条例第11条に定める以下のいずれかの商標登録拒絶の絶対的理由を適用することもできる。

 

(1)出願人の商品または役務を他と識別しえず、かつ視覚的に表示しえない標章。

(2)識別力を欠く標章。

(3)商取引または事業において、商品もしくは役務の種類、品質、数量、用途、価格、原産地、商品の生産時期もしくは役務の提供時期、またはその他の特徴を指定することに資する標識のみから構成される標章。

(4)現行の言語において、または確立された誠実な取引慣行において通例となっている標識のみから構成される標章。

(5)商品の性質に由来する形状、技術的な成果を得るために必要な形状、または商品に実質的な価値を付与する形状のみから構成される標章。

(6)一般に認められた道徳規範に反する標章、または公衆を欺罔するおそれのある標章。

(7)いずれかの法に基づき、または法によって香港における使用が禁止されている標章、または悪意でなされた出願。

(8)国旗、国章および一定の国際機関の記章から構成されるか、これらを含んでいる標章。

 

答弁書

 

 異議申立人が異議申立書を提出した後、出願人は、異議申立書のコピーを受領した日から3ヵ月以内に、答弁書を提出しなければならない。出願人が答弁書を提出しなかった場合、当該出願は取り下げられたものとして処理される。

 

証拠

 

 答弁書が提出された場合、異議申立人は、答弁書のコピーを受領した日から6ヵ月以内に異議理由を裏付ける証拠を提出しなければならない。裏付けとなる証拠は、宣誓供述書の形式で提出されなければならない。異議申立人が期限内に証拠を提出しなかった場合、異議申立は放棄されたものと見なされる。

 

 異議申立人が証拠を提出した後、出願人は、異議申立人の証拠のコピーを受領した日から6ヵ月以内に、自らの出願を防御する証拠を宣誓供述書の形式で提出することができる。出願人は、証拠を提出しない旨の陳述書を提出することにより、証拠を提出しない方針を選択することもできる。

 

 出願人が証拠を提出した場合、異議申立人は新たな証拠を提出する機会を与えられる。ここで提出される証拠は、出願人が提出した証拠に応答するものに厳しく限定される。これらの証拠は、異議申立人が出願人の証拠のコピーを受領した日から6ヵ月以内に提出されなければならない。それ以後はいずれの当事者も、登録官の許可を得ない限り新たな証拠の提出は許されない。

 

期限の延長

 

 答弁書および証拠の提出期限は、所定の期限までに書面によって期限延長を請求することができる。答弁書について認められる期限延長が2ヵ月であるのに対し、証拠について認められる期限延長は3ヵ月とされる。当事者の請求による前記の期限延長には、相手方の同意が要求される。

 

ヒアリング

 

 証拠の応酬が終わると、その事案は係属中のヒアリング・リストに記載され、商標登録所はヒアリングの日時を決定し、当事者に書面で通知する。現在のところ、商標登録所がヒアリングの日時を決定するまでには少なくとも証拠応酬段階の終了後18~24ヵ月の期間を要する。

 

 ヒアリングの日時が決定されると、異議申立人と出願人は、ヒアリングに出席するか否かを選択することができる。当事者の一方もしくは双方がヒアリングに出席しない方針を選択した場合、審問官は、それまでに提出された文書および証拠に基づいて異議決定を下すことになる。

 

 一般に、異議決定は、ヒアリングが行われなかった場合を含み、設定されたヒアリングの日から6~9ヵ月程度後に送達される。この異議決定に不服がある場合は高等裁判所に上訴することができるが、その場合、異議決定の日から28日以内に、不服申立書および上訴理由が提出されなければならない。

 

敗訴者負担

 

 香港は敗訴者負担制度を採用している、通常、勝訴者が被った費用の支払が敗訴者に命じられることになる。

 

手続の一時停止

 

 当事者双方が和解のための交渉を希望する場合、任意の時期に異議申立手続の一時停止を申請することができる。手続の一時停止は、出願人と異議申立人の両者によって共同で申請されなければならない。手続停止の期間は、当事者双方が合意した期間とすることができ、商標登録所は最大9ヵ月までの停止期間を認めることができる。いずれかの当事者が1ヵ月の猶予期間付きの通知書を相手方および登録官に送付することにより、停止期間が終了する前に手続を再開する許可が与えられる。上記最大9か月の間において、停止期間を更に延長する許可は、当事者双方が共同で新たな申請を提出することによって与えられる。

 

保証金

 

 香港に居住しておらず香港での営業も行っていない相手方に対し、当事者は手続費用の保証金を要求することができる。このような手続費用の保証金が認められた場合、相手方は、敗訴した当事者が手続費用について負う債務を賄うに十分な金額を所定の期間内に提供することを要求される。要求された保証金が提供されない場合、異議申立書、答弁書もしくは出願の放棄または取下げがなされたものとされる。この保証金は、限られた資産しか持たない当事者に異議申立手続の遂行もしくは抗弁を断念させるための有効な手段となり得る。だが、当事者双方がいずれも香港に居住しておらず香港での営業も行っていない場合、両当事者に対し手続費用の保証金が求められる可能性が高い。

インドにおける商標異議申立制度

インドにおける商標異議申立手続は、2010年商標(改正)法の第21条および2002年商標規則の規則47~57に規定されている。

 

異議申立書

 

商標出願に対して異議を申し立てたいと望む「いかなる者」も、登録官に対して異議申立書を提出することができる。それゆえ、インドにおいて「権利を害された者」のみが提起できる取消手続とは異なっている。「いかなる者」とは、必ずしも個人である必要はなく、法人または非法人組織であってもよい。

 

異議申立書は、商標出願が商標公報に公告されてから4ヵ月以内に提出する必要がある。

 

異議申立は、商標法に定められた理由を根拠としなければならない。主として、絶対的拒絶理由について詳述する第9条、および相対的拒絶理由について詳述する第11条が適用される。

 

第9条には、(1)項から(3)項が含まれている。第9条(1)項は、出願商標の識別性の問題に関する(a)号から(c)号の規定を含んでおり、以下の商標は登録することができないとしている。

 

(a)識別性を欠く商標、すなわち、ある者の商品もしくは役務を、他人の商品もしくは役務から識別できないもの

(b)取引上、商品の種類、品質、数量、意図する目的、価格、原産地、当該商品生産の時期もしくは役務提供の時期、または当該商品もしくは役務の他の特性を指定するのに役立つ標章または表示からもっぱら構成されている商標

(c)現行言語において、または公正な確立した取引慣行において慣習的となっている標章または表示からもっぱら構成されている商標

 

第9条(1)項には例外規定が設けられており、出願日より前に、商標が使用の結果として識別性を獲得している、または周知である場合には、登録を拒絶されることはない。

 

第9条(2)項は、公益および公序良俗の問題に言及する規定を含んでおり、以下の商標は登録することができないとしている。

 

(a) 公衆を誤認させるか、または混同を生じさせる内容のものであるとき

(b) インド国民の階級もしくは宗派の宗教的感情を害するおそれがある事項からなり、またはそれを含んでいるとき

(c) 中傷的もしくは卑猥な事項からなり、またはそれを含んでいるとき

(d) その使用が1950年紋章および名称(不正使用防止)法により禁止されているとき

 

第9条(3)項は、識別性があるとみなすことができない特定の形状からなる商標の登録を禁じており、以下の商標は登録することができないとしている。

 

(a) 商品自体の内容に由来する商品の形状

(b) 技術的成果を得るために必要な商品の形状

(c) 商品に実質的な価値を付与する形状

 

相対的拒絶理由に関しては、第11条(1)項に従い、先行商標との同一性または類似性、および商品または役務の同一性または類似性を理由に、公衆に混同を生じる可能性がある場合、その商標は登録されない。

 

第11条(2)項は、パリ条約の第6条の2を要約したものであり、本質的に異なる商品および役務に関して、周知商標が第三者の商標から保護される。

 

第11条(3)項では、コモンロー上の権利および著作権法の重要性を認め、詐称通用に関する法律または著作権法により商標の使用を阻止すべき場合には、当該商標は登録されないとしている。

 

第11条(6)項、(7)項は、商標が周知であるかどうかを判断する際に考慮すべき事実および証拠について説明している。以下に挙げるこれらの事項は、異議申立人または出願人が異議申立手続において、自己の商標が周知であると認定してもらい、それにより自己の主張を裏づけるための証拠の収集および提出の際の参考となる。

 

  • 当該商標の使用促進の結果として得られたインドにおける知識を含む公衆の関係階層における当該商標についての知識または認識
  • 当該商標の使用についての期間、範囲および地域
  • 当該商標が適用される商品もしくは役務についての博覧会もしくは展示会における広告または宣伝および紹介を含め、当該商標の使用促進についての期間、範囲および地域
  • 本法に基づく当該商標の登録、または登録出願についての期間および地域であって、当該商標の使用または認識を反映している範囲
  • 当該商標に関する諸権利の執行記録、特に、当該商標が当該記録に基づいて裁判所または登録官により周知商標として認識された範囲
  • 実際のまたは潜在的な消費者の数
  • 流通経路に介在する人員の数
  • それを取り扱う業界

 

第11条(10)項では、「同一または類似の商標に対して周知商標を保護しなければならず、かつ、商標権に影響を及ぼす、出願人もしくは異議申立人の何れかに含まれた不誠実を参酌しなければならない」とし、周知商標と同一または混同を生じるほど類似の商標を採用する第三者に関連する「悪意」の概念について確認すると共に、周知商標を保護する必須義務を登録官に負わせている。

 

第11条(11)項は逆に、「商標が登録官に重要な情報を開示して公正に登録された場合または商標についての権利が本法の施行前に善意の使用を通じて取得された場合は、本法は、当該商標が周知商標と同一または類似するとの理由では、当該商標登録または当該商標使用の権利の有効性を一切害さない。」とし、善意で使用されている出願または登録商標を保護している。異議申立における抗弁として、この規定を用いることができる。

 

なお、先行商標の所有者が既に後続商標に同意している場合には、後続商標の登録を許可している。(第11条(4)項)

 

また、第12条では、「善意の同時使用」または他の「特別な事情」がある場合には、商標が第11条に抵触するにもかかわらず、登録官は当該商標の登録を許可することができると定めている。

 

答弁書

 

出願人は、登録官から異議申立書を受領した日から2ヵ月以内に、答弁書を提出しなければならない。答弁書の提出期限は延長できないため、出願人が2ヵ月以内に答弁書を提出しない場合、異議対象の出願は放棄されたとみなされる。

 

証拠

 

出願人により提出された答弁書が、登録官により異議申立人に送達された後、異議申立人は、答弁書を受領した日から2ヵ月(1ヵ月の延長が可能)以内に証拠を提出するよう要求される。異議申立人が証拠の提出を望まない場合、この2ヵ月+1ヵ月の期間内に異議申立書に明記された事実に依拠する旨を登録官に対して通知すると共に、出願人にも通知しなければならない。これらの措置が取られない場合、異議申立人は自己の異議申立を放棄したとみなされる。

 

異議申立人が証拠を提出、または事実に依拠する旨を通知した後、出願人は、異議申立人の証拠を受領した日から2ヵ月(1ヵ月の延長が可能)以内に、出願を裏づける証拠を提出、または答弁書に明記した事実に依拠する旨を登録官に対して通知すると共に、異議申立人にも通知するよう要求される。異議申立人とは異なり、出願人がこれらの措置を取らなかったとしても、出願が放棄されたとみなされることはない。この場合、インドの法律に基づき、出願人は答弁書を提出することにより、自己の出願を防御する意思を示したと理解され、この防御は、出願人が証拠を提出しない場合でも、維持することができる。

 

出願人が証拠を提出した場合、異議申立人は、出願人の証拠を受領後1ヵ月(1ヵ月の延長が可能)以内に、弁駁証拠を提出することができる。

 

これをもって、異議申立手続における訴答および証拠段階は終了する。

 

なお、以下の2002年商標規則の規則53に基づき、最終審理の前に追加証拠を提出することが可能である。

 

追加の証拠は、何れの側に対しても提出してはならないが、登録官に対する何らかの手続においては、登録官は、自己が適当と認めるときはいつでも、出願人または異議申立人の何れに対しても、証拠を提出することについて、登録官が適当と認める費用またはその他の条件を付して、許可することができる。

 

しかしながら、商標規則に定められた証拠の提出期限については、追加の延長を請求することが可能であるかどうかが問題となる。この問題は2つの異なる高等裁判所で争われたが、それぞれの見解が分かれている。グジャラート高等裁判所は追加証拠の提出を認める立場を示したが(2006年)、デリー高等裁判所はこれを認めていない(2007年)。したがって、高等裁判所の上位の法廷が、追加証拠の提出を認める裁定を下すまでは、異議申立の当事者は十分な注意を払い、商標規則に定められた期限を厳守することが望ましい。

 

ヒアリング

 

答弁書および証拠の提出段階が完了すると、登録官は口頭による意見陳述のために双方の当事者を招集するヒアリングの日程を定める。双方の当事者は、口頭による意見陳述の代わりに、またはこれに追加して、主張の要約書を提出することができる。

 

異議申立手続の期間

 

商標局にはかなりの未処理案件があり、何千件もの異議申立が係属中である。未処理案件を処理するために、過去数年にわたり様々な取り組みが行われてきた。とりわけ異議申立もしくは出願が取り下げられた事件、出願人が期限内に答弁書を提出しなかった事件、または当事者間で和解したために異議決定が出されなかった事件が整理された。

 

このような取り組みの中でも目新しいのが、1987年法律サービス庁法に基づいて定められた仲裁または調停を通して係属中の事件を処理することを目的とした、商標局とデリー州法律サービス庁(DSLSA)との協力体制である。2016年当初に、未決の500件の異議申立についてパイロット・プロジェクトが実施されたが、現在では最終ヒアリングがまだ行われていない全ての異議申立に対して仲裁または調停手続が認められるようになっている。

 

審判請求

 

商標法第21条に基づく登録官のあらゆる命令または決定を不服とする当事者は、商標法第91条(1)にもとづき、その命令または決定が当該当事者に通知された日から3ヵ月以内に、知的財産審判部に審判請求を提出することができる。

インドネシアにおける商標異議申立制度

インドネシアにおいて、商標出願に対する異議申立は、新しい「商標及び地理的表示法」第20/2016号(以下、「新商標法」)第14条、第15条、第16条および第17条に規定されている。以下に述べる異議申立手続は、2016年11月25日から実施されている。

異議申立は、商標出願の公告期間中に提起することができる。新商標法第13条に従い、商標出願は全ての方式要件を満たした時点で、出願日を付与される。法定の公告期間は、遅くとも出願日の15日後から始まる2ヵ月間である。

商標出願が認可されると、インドネシア知的財産総局(Directorate General of Intellectual Property Rights;以下、「DGIP」)は商標公報およびDGIPのウェブサイトにおいて出願を公告する。公告は、2ヵ月間にわたり実施される。

新商標法第16条(1)項に従い、上記の公告期間中に、何人も、DGIPに書面による異議申立を提起することができる。異議申立の際には、オフィシャルフィーを支払わなければならない。

異議申立の際に要求されるオフィシャルフィーは、法務人権省 (Ministry of Justice and Human Rights Affairs)内で適用される非課税収益の種類および料金に関する2016年政令第45号に定められており、金額は商標出願1件につき100万ルピアである。

1.異議申立の理由

異議申立の理由は、新商標法に下記のように規定されている。

a.新商標法第20条:

商標が下記のいずれかに該当する場合、その商標は登録できず、拒絶される。

(a)国家のイデオロギー、法規、道徳規範、宗教、倫理または公序良俗に反するもの。

(b)登録対象の商品または役務に類するもの、これを説明するもの、またはその単なる言及にすぎないもの。

(c)登録対象の商品または役務の出所、品質、型式、サイズ、種類もしくは使用目的について、または類似の商品または役務に関して保護されている植物品種の名称について、公衆を誤認させるおそれのある要素を含んでいるもの。

(d)生み出された商品または役務の品質、恩恵または効能と一致しない情報を含んでいるもの。

(e)識別性を有する特徴がないもの。

(f)一般名称または公有財産の象徴となっているもの。

b.新商標法第21条:

(1)商標の要部または全体が下記のいずれかと類似する場合、その商標は拒絶される。

(a)同じ種類の商品または役務に関して既に登録または出願されている、他者により所有される商標と類似する場合。

(b)同じ種類の商品または役務に関して他者により所有される周知商標と類似する場合。

(c)特定の条件を満たすことを前提として、同じ種類ではない商品または役務に関して他者により所有される周知商標と類似する場合。

(d)既知の地理的表示と類似する場合。

(2)商標が下記のいずれかに該当する場合、その商標は拒絶される。

(a)有名人の名前、略称、写真または他者が所有する法人の名称に相当する、またはこれと類似するもの。ただし、正当な権利者の書面による同意がある場合を除く。

(b)国家または国内もしくは国際機関の名称、略称、旗、紋章、シンボルまたは象徴を模倣する、またはこれと類似するもの。ただし、管轄当局の書面による同意がある場合を除く。

(c)国家または政府機関により使用される公的な標識、印章または証印を模倣する、またはこれと類似するもの。ただし、管轄当局の書面による同意がある場合を除く。

(3)出願人が悪意をもって提出した商標出願は、拒絶される。

(4)上記(1)の(a)から(c)に言及された商標出願の拒絶に関連する追加の規定が、政令により定められている。

2.異議申立の内容

 

新商標法第16条(2)項に従い、異議申立は、十分な理由と共に、出願商標が新商標法に基づき登録されるべきではない、または拒絶されるべきであることを証明する証拠を提出することができる。

異議申立は、異議理由を示す異議申立書に異議理由を裏付ける証拠を添付して提出される。異議申立を提出する際に必要な証拠の量に関する規定は存在しない。異議申立時に提出されなかった追加の証拠がある場合、異議申立人は、異議申立日から2週間以内であれば追加証拠を提出することができる。

3.異議申立の手続期間

新商標法第16条(3)項に従い、異議申立が提出されると、DGIPは異議申立を受領した日から遅くとも14日以内に、異議申立書の写しを出願人に送付する。

出願人は、DGIPから送付された異議申立書の写しの送達日から2ヵ月以内に、異議申立に対する答弁書を提出することができる(新商標法第17条(2)項)。

新商標法に定められた異議申立手続は、3つの段階からなる。第1段階は異議申立人による異議申立書の提出であり、第2段階は出願人による答弁書の提出であり、最後の段階はDGIPにより下される異議決定である。さらに、異議申立人および出願人は、異議申立書または答弁書について説明するために、DGIPにヒアリングを要求することができる。ヒアリングはDGIPにおいて行われる。

DGIPは、答弁書の提出期限から1ヵ月以内に、当該出願の実体審査において、異議申立書および答弁書を審査資料として検討する(新商標法第23条(2)項および(4)項)。

DGIPは、公告期間の満了日もしくは答弁書提出期限から150営業日以内に当該出願の実体審査を完了する。

審査官が実体審査の結果、商標出願を認可できないと判断した場合、DGIPは出願人に対し、当該出願は登録できない、または拒絶される旨を書面で通知する。その場合、出願人は、当該通知の送達日から30日以内に応答する機会を与えられる(新商標法第24条(3)項)。

審査官が実体審査の結果、商標出願を認可できると判断した場合、当該出願は商標登録簿に登録される(新商標法第24条(5)項)。

DGIPは、実体審査の結果について、異議申立人にも書面で通知する。

4.異議申立の取下げ

異議申立人は、審査官が出願の実体審査結果を決定する前であれば、DGIPに対して、異議申立の取下げ書を提出することができる。異議申立を取り下げる一般的な理由としては、異議申立人と出願人との間で、商標譲渡契約、共存合意契約などを締結した場合が挙げられる。

5.審査官の拒絶査定に対する不服

審査官の拒絶査定に対して不服がある場合、出願人は、商標審判委員会に審判請求を提起することができ、その写しは、オフィシャルフィーの支払いをもってDGIPに送付される(新商標法第28条(2)項)。

審判請求書は、出願の拒絶査定の送達日から3ヵ月以内に提出しなければならない(新商標法第29条(1)項)。

なお、異議申立以外に、関連当事者は商務裁判所に取消訴訟を提起することができる。(商標法76条)

サウジアラビアにおける商標異議申立制度

1.異議申立の要件および異議理由

 

 サウジアラビア商標法16条の規定において、公告決定となった商標出願は、異議申立のために公告され、いかなる利害関係者も、異議理由に基づき異議申立書を提出することができる。異議申立期間は、公報における公告日から60日である。異議申立期限の延長を申請することはできない。

 

 異議申立は、商標局の審判部における行政手続である。異議申立手続での審議事項は、登録可能性の有無にほぼ限定され、書面記録に基づいて行われる。サウジアラビアは、先願主義の国であり、異議申立を審理する商標局の審判部は、異議申立人に対して異議申立の根拠である先行登録商標の使用証拠を提出するよう要求することはできない。先行登録商標の使用について論争するためには、出願人は別個に不使用取消訴訟を提起しなければならない。不使用取消訴訟において判決が出されるまでの間、異議申立手続が中断されることはなく、その逆もまた同様である。

 

 サウジアラビアにおいて先行権利が確立されていない場合でも、著名性を根拠に異議申立を提起できる。商標が著名とみなされる程度は通常、周知商標の保護に関する国際基準(パリ条約の第6条の2)に従い、さらに周知商標保護の国内基準に従い判断される。いかなる証明力のある証拠も受け入れられ、次の要因を含む証拠全体に基づいて判断が下される:(i)販売の期間および地理的範囲;(ii)売上高;(iii)広告支出および広告の見本;(iv)表彰、論評および報道;(v)国内の関連する業界および消費者団体における当該商標の評判;ならびに(vi)商標の認知度を評価するための専門家証言および調査。

 

 他に認められる異議理由として、次のものが挙げられる:絶対的拒絶理由;悪意;パリ条約第6条の7(商標所有者の代理人または他の代表者の名義による登録)に基づく権利;パリ条約第8条(商号)に基づく権利;パリ条約第6条の3(国章、公式証明印および政府間機関の紋章に関する禁制)に基づく権利;公序良俗に反するもの。ただし、これらの理由は、網羅的および確定的なものではない。

 

2.異議手続および取下

 

 サウジアラビアにおける業務処理の環境は、現在では、商標の電子出願は可能であるものの、異議申立人は電子的手段により異議申立書を提出することはできない。さらに、商標局の審判部は異議決定を電子的手段で発行することはできない。異議申立を提起するには、書面で提出すると共に、異議申立の公定料金を支払わなければならない。異議申立人は、異議対象の商標がサウジアラビア商標法第3条に基づき登録が認められない、または当該商標を保有し続けることができない理由に関して、有効な根拠があることを立証しなければならない。

 

 異議申立書には、当該商標の登録により異議申立人がどれほどの損害を受けるかについて説明する陳述を含めると共に、異議理由を添付しなければならない。異議申立は、絶対的拒絶理由または相対的拒絶理由に基づいて提起することができる。相対的拒絶理由を根拠とする場合、異議申立人は、当該商標が既存の登録商標と混同を生じるほど類似していること、または先に確立されたコモンロー上の権利と抵触することを明確に論じなければならない。相対的拒絶理由に基づく異議申立を提出できるのは、先行権利の所有者だけである。

 

 異議申立書が提出された場合、当該出願の出願人は、異議申立書を受領後、答弁書を提出できるが、答弁書を提出しない場合、当該出願は却下される。答弁は通常、異議申立書に対する複数の簡潔な否認で構成され、かかる答弁を裏づける証拠を提出する必要はない。

 

 双方の当事者は、異議対象の商標の使用に関する和解契約を締結することが一般的であるが、異議申立の取下条件について出願人または異議申立人が同意しているかどうかにかかわらず、異議申立の取下により、異議手続は自動的に終了する。異議申立手続は、どの時点であっても手続を取り下げることができるが、取下を証明する商標局の公式通知が発行されるまで、有効に存続する。

 

 各当事者により提出された証拠に基づいて、さらに特定の場合にはヒアリングに基づいて、商標局は異議対象の出願に対する異議決定を発行する。異議決定を不服とする場合は、異議決定の通知日から30日以内に行政裁判所(the Board of Grievances)に上訴できる。ただし、更なる上訴はできない。

アラブ首長国連邦における商標異議申立制度

1.異議申立の要件および異議理由

 

 アラブ首長国連邦商標法第14条の規定により、UAEにおいて、公告決定となった商標出願は、異議申立のために公告され、いかなる利害関係者も、異議理由に基づき異議申立書を提出することができる。異議申立期間は、公報およびアラビア語の日刊新聞2紙の最後の公告日から30日間である。異議申立期限の延長を申請することはできない。

 

 異議申立は、UAEにおける行政手続であり、基本的に訴訟手続ほど費用はかからない。異議申立手続は、登録可能性の問題にほぼ限定され、書面記録に基づいて行われる。

 

 UAEにおいて先行権利が確立されていない場合でも、著名性を根拠に異議申立を提起できる。商標が著名とみなされる程度は通常、周知商標の保護に関する国際基準(パリ条約の第6条の2)に従い、さらに周知商標保護の国内基準に従い判断される。いかなる証明力のある証拠も受け入れられ、次の要因を含む証拠全体に基づいて判断が下される:(i)販売の期間および地理的範囲;(ii)売上高;(iii)広告支出および広告の見本;(iv)表彰、論評および報道;(v)国内の関連する業界および消費者団体における当該商標の評判;ならびに(vi)商標の認知度を評価するための専門家証言および調査。

 

 他に認められる異議理由として、次のものが挙げられる:絶対的拒絶理由;悪意;パリ条約第6条の7(商標所有者の代理人または他の代表者の名義による登録)に基づく権利;パリ条約第8条(商号)に基づく権利;パリ条約第6条の3(国章、公式証明印および政府間機関の紋章に関する禁制)に基づく権利;公序良俗に反するもの。

 

2.異議手続および取下

 

 異議を提起する当事者として異議申立人は、異議理由を述べる責任がある。出願人は答弁書を提出できるが、出願人が答弁書を提出した場合、異議申立人は反駁書を提出する機会を与えられる。これらの書面に関しては、提出期限およびページ数の制限が設けられている。異議手続は書面記録のみで行われ、一方の当事者が要求する場合に限り、ヒアリングが開かれる。ヒアリングが設定されると、新たな証拠を提出することはできない。商標局は、ヒアリングを利用して、両当事者の書面において明確ではない事実や主張について質問する。

 

 異議申立書が提出された場合、当該出願の出願人は、異議申立書を受領後、答弁書を提出できるが、答弁書を提出しない場合、当該出願は却下される。答弁書は異議申立書内容に対する簡潔な否認で構成され、かかる答弁を裏づける証拠を提出する必要はない。

 

UAEは、先願主義の国であるので、異議申立において先行登録商標の使用を論点とすることはできない。先行登録商標の使用について論争するためには、出願人は別個に不使用取消訴訟を提起しなければならない。不使用取消訴訟において判決が出されるまでの間、異議申立手続が中断されることはなく、その逆もまた同様である。

 

 双方の当事者は、異議対象の商標の使用について和解契約を締結することがあるが、異議申立の取下条件について出願人または異議申立人が同意しているかどうかにかかわらず、異議申立の取下により、異議手続は自動的に終了する。異議申立人は、どの時点でも手続を取り下げることができるが、異議申立手続は、取下を証明する商標局の公式通知が発行されるまで、有効に存続する。

 

 各当事者により提出された書面に基づいて、さらに特定の場合にはヒアリングに基づいて、商標局は異議対象の出願に対する異議決定を発行する。異議決定を不服とする場合は、商標局の異議決定から15日以内に商標委員会に不服申立することができる。さらに商標委員会の決定を不服とする場合は、その決定の通知日から30日以内に、更なる上訴を民事裁判所に提起することができる。

マレーシアにおける商標異議申立制度

 マレーシアにおいては、商標出願に対する異議申立手続には「1975年商標法」(以下「商標法」と称する)の第28条および「1997年商標規則」(以下「商標規則」と称する)の規則37~49が適用される。商標出願が審査後に認可されると、登録官は当該出願を公報上で2ヵ月間にわたり公告することになっている。公告の目的は、当該出願に対して異議を申し立てる機会を万人に与えることである。

 

異議申立理由

 

 いかなる者も、商標法に規定された以下の理由の一ないし複数に基づき、商標出願に対して異議申立を提起することができる。

 

1.当該商標が公衆に誤認もしくは混同を生じさせる可能性があるか、法に違反するおそれがある。

2.当該商標が中傷的もしくは侮蔑的であるか、裁判所の保護を受けるに適格でない。

3.当該商標が、国益または国家の安全を害するおそれのある事項を含んでいる。

4.当該商標が、同一の商品または役務につきマレーシアにおいて周知である他の所有者の商標と同一であるか、それに極めて類似している。

5.当該商標が、出願の対象となった商品または役務と同一でない商品または役務につきマレーシアにおいて周知である他の所有者の商標と同一であるか、それに極めて類似している。

6.当該商標が、表示された地域を原産地としない商品に関する地理的表示を含んでおり、かつ、マレーシアにおいて当該商品につき当該表示を使用することが当該商品の真の原産地に関して公衆に誤認を生じさせるおそれがある。

7.当該商標が、ぶどう酒のための商標であってぶどう酒を特定する地理的表示を含んでいるか、蒸留酒のための商標であって蒸留酒を特定する地理的表示を含んでいるが、そのぶどう酒もしくは蒸留酒が当該地理的表示により表示される場所を原産地としていない。

8.同一であるか誤認もしくは混同を生ずる程度に互いに極めて類似している複数の商標につき、それぞれ別の者を所有者として登録することを求める複数の異なる出願が別個になされている。

9.同一の商品もしくは同一種類の商品またはこれらの商品に密接に関連する役務に関して、別の所有者に属する先行商標が存在し、当該商標がその先行商標と同一である。

10.当該商標に識別性がない。

11.当該商標が、特別もしくは独特な態様で表示される個人、会社または企業の名称を含んでおらず、そのような名称から構成されてもいない。

12.当該商標が、出願人の署名もしくは出願人の前事業主の署名を含んでおらず、そのような署名から構成されてもいない。

13.当該商標が、一ないし複数の造語を含んでおらず、そのような造語から構成されてもいない。

14.当該商標が、商品または役務の特徴もしくは品質に直接言及しておらず、かつ、その通常の意味では地理的名称でも人の姓でもないような言葉を含んでおらず、そのような言葉から構成されてもいない。

15.当該商標が、上記以外の識別性のある標章を含んでおらず、そのような標章から構成されてもいない。

 

異議申立手続

 

 異議申立書は、出願が公告された公報の日付から2ヵ月以内に、所定の料金の納付とともに、定められた書式を用いた書面によって提出されなければならない。問題の出願商標が既に登録されている商標または現在出願中の商標に類似しているという理由で異議申立がなされる場合には、その商標の番号および分類ならびにその商標が公告された公報の番号(当該商標がまだ公告されていない場合はこの限りではない)が異議申立書に記載されなければならない。

 

 異議申立に対して出願人が答弁しなかった場合、登録官は、異議申立人に費用の支払を命じる裁定を下すか否かを判断するにあたり、異議申立書の提出前に出願人に事前通知が送付されていたならば異議申立手続が回避しえたか否かを考慮しなければならない。したがって、異議申立人は、異議申立書の提出に先立って、自らが提起しようとしている異議申立に関する事前通知を出願人に送付することが勧められる。

 

 異議申立書の受領から2ヵ月以内に、出願人は定められた書式による答弁書を提出することができる。答弁書には、出願人が依拠する出願理由およびその事実が記載されるとともに、異議申立書において主張された事実のうち出願人が認める事実がある場合には、その自認が記載される。答弁書の提出と同時に、その写し1部が異議申立人に送付される。

 

 答弁書を受領した時点で、異議申立人および出願人は、各自の異議申立理由ないし出願理由を裏付ける証拠を宣誓書の形式で提出する。各当事者は、登録官に提出した宣誓書(添付証拠を除く)の写しを相手方に送付することを要求され、この送付を怠った場合、その当事者の異議申立もしくは出願は放棄されたものと見なされる。提出した宣誓書に証拠が添付されている場合、当該添付証拠を提出した当事者は、相手方の要求に従い、相手方の費用負担の下に、個々の添付証拠の写しを相手方に送付するものとする。いかなる場合にも、登録官に提出された証拠の原本は、相手方の自由な閲覧に供されるものとする。

 

 さらに、異議申立人は、出願人の証拠を受領した日から2ヵ月以内に、それに応答する証拠を宣誓書の形式で提出する。応答の対象は、出願人が自らの証拠に記載した事項に限定される。異議申立人の宣誓書が提出されると同時に、その写しが出願人に送付されるものとする。

 

 登録官が新たな証拠の提出を許可しない限り、いずれの当事者もそれ以上の証拠を提出することはできない。

 

 証拠の提出が終了した時点で、登録官は、両当事者に対して、追加の陳述書もしくは書類資料を登録官に送付することのできる期限を通知するものとする。陳述書もしくは書類資料の提出期限は、登録官が送付した通知を両当事者が受理する日より1月後の日でなければならない。異議申立手続が書面の提出によって進行する場合であって、出願人もしくは異議申立人は、当該異議申立に関してヒアリングを要求することができる。

 

期限延長

 

 異議申立手続について定められた上記2か月の全ての期限、つまり、異議申立書提出期限、答弁書提出期限、各当事者の証拠提出期限、異議申立人の応答証拠提出期限は、定められた書式を用いた申請書に基づき延長することが可能である。期限延長申請書の写しは、当該異議申立の当事者全員に送付されなければならない。いずれかの当事者による期限延長を認める場合、登録官は、所定の料金が納付されることを条件として、自らの判断に基づき、ヒアリングを行うことなく、その後の手続を行う際の期限について妥当な延長を認めることができる。

 

決定

 

 登録官は、当事者双方が提出した書類および証拠を検討した上で、最終書類の提出期限として定められた日から2ヵ月以内に、以下のいずれかの決定を下す。

1.当該商標の登録を拒絶する。

2.当該商標を登録する。

3.登録官が妥当と考える条件、補正、修正もしくは制限に従って当該商標を登録する。

 

上訴

 

 異議申立手続における登録官の決定に不服がある当事者は、高等裁判所に上訴を提起することができる。上訴は、当該決定の日から1ヵ月以内に、召喚状の発行を以て開始されなければならない。また、上訴請求の写しはすべての関係者に送付されなければならない。上訴は、裁判所の許可がある場合を除き、商標登録を拒絶する理由については、異議申立人および登録官の何れも、裁判所の許可を得ない限り、異議申立人によって既に主張されている理由以外のものは申し立てることができない。新たな異議申立理由が主張される場合、出願人は、裁判所に所定の届出をすることによって、異議申立人の費用を支払うことなく出願を取り下げることができる。

 

費用の担保

 

 異議申立人、出願人または上訴人がマレーシアに居住しておらず、かつ、マレーシア国内で営業を行っていない場合、登録官または裁判所は、異議申立手続の任意の段階において、異議申立手続に伴う費用ないし経費の担保を提供するよう当該当事者に請求することができる。登録官または裁判所は、担保として、その相応と考える金額をその相応と考える形式によって提供するよう求めることができる。担保が要求に従って提供されない場合、異議申立、出願もしくは上訴は放棄されたものとして処理される。

 

費用

 

 裁判所に係属する手続全般において、裁判所は、自らが合理的と判断する費用(登録官の費用を含む)をいずれかの当事者に裁定することができる。なお、登録官は、他のいずれの当事者の費用についても、その支払を要求されることはない。

 

 登録官は、合理的と思われる費用をいずれかの当事者に裁定し、それら費用をいずれの当事者がどのように支払うかを命じる権限を有する。費用の支払に関する登録官の命令は、裁判所の許可により、裁判所の判決もしくは命令と同様に執行することができる。

ブラジルにおける商標異議申立制度

 商標出願が提出されると、INPIは第三者に知らせるために、産業財産公報において出願を公告する。留意すべき点として、産業財産公報において商標出願が公告される時点まで、INPIはその出願の実体審査を行わない。

 

 ブラジル産業財産法(以下「IP法」)第158条に従い、法律上の利害関係を有するいかなる第三者も、商標出願が産業財産公報に公告された日から60日以内に、異議申立書を提出することができる。この60日間の異議申立書提出期限を延長することはできない。

 

 異議申立は、絶対的拒絶理由および/または相対的拒絶理由を根拠とすることができる。異議申立の根拠として主張可能な絶対的拒絶理由および相対的拒絶理由は、IP法第124条に示されている。最もよく利用される絶対的拒絶理由は、識別性の欠如である。相対的拒絶理由に関しては、下記の規定を根拠として異議申立を提出することができる。

 

 IP法第124条中の下記のものは、商標として登録することはできない。

 

(V)第三者の商号における識別性のある要部の複製または模倣であって、かかる識別性のある要部との混同または関連づけを生じるおそれがあるもの。

(XII)IP法第154条の規定に従って、第三者が団体標章または証明標章として登録している標識の複製または模倣。

(XIII)公式または公認のスポーツ、芸術、文化、社会、政治、経済または技術関連の行事の名称、褒賞または象徴、およびその模倣であって、混同を生じるおそれのあるもの。ただし、その行事を推進する管轄機関または団体の許可を得ている場合を除く。

(XV)第三者の個人名、署名、名字、父称および肖像。ただし、その所有者、所有者の相続人または承継人の同意を得ている場合を除く。

(XVI)著名な雅号または愛称および個人または集団の芸術上の名称。ただし、その所有者、所有者の相続人または承継人の同意を得ている場合を除く。

(XVII)著作権により保護される文学的、芸術的または科学的著作物およびその題名であって、混同または関連づけを生じるおそれがあるもの。ただし、その著作者または所有者の同意を得ている場合を除く。

(XIX)同一、類似または同種の商品または役務を識別または証明するために第三者により登録された商標の、付加物をも含めた、全体的または部分的な複製または模倣であって、当該第三者の商標との混同または関連づけを生じるおそれがあるもの。

(XXII)第三者の名義で工業意匠登録により保護されているもの。

(XXIII)出願人がその活動に照らして明らかに知っているはずの商標であって、ブラジルの領域内に、またはブラジルが相互協定を維持している、もしくは相互主義の待遇を保証している国に本拠または住所を有する者により所有されている商標を、全体的または部分的に模倣または複製する商標。ただし、かかる商標が同一、類似または同種の商品または役務を識別するためのものであり、当該第三者の商標との混同または関連づけを生じるおそれがある場合に限られる。

 

 また、異議申立は、先行出願が存在する場合であっても、周知商標を保護することを定めたIP法第126条を根拠とすることもできる。

 

 最後に、IP法第129条(1)項は、同一、類似または同種の商品および役務に関して、同一または混同を生じるほど類似の商標が第三者により出願される前に、少なくとも6ヵ月間にわたり当該商標を使用している者に対して、優先的な権利を与えている。この規定も、異議申立の根拠とすることができる。

 

 異議申立書が提出されると、INPIは産業財産公報において異議申立を公示する。出願人は、異議申立の通知から60日以内に、答弁書を提出することができる。この期間の満了後、答弁書が提出されたかどうかに拘わらず、INPIは異議申立の実体的事項について審査する。

 

 異議申立を認める場合、INPIは出願を拒絶し、出願人は60日以内に拒絶査定に対する審判請求をすることができる。審判において拒絶査定を維持する判断が下された場合、その出願の拒絶が確定する。この決定を不服とする場合、唯一の手段として連邦裁判所に不服申立を提起することができる。

 

 留意すべき点として、INPIは職権により出願の実体審査を行い、異議申立で提起された理由とは異なる理由で出願を拒絶することができ、または異議申立が提出されない場合でも出願を拒絶することができる。

 

 最後に、商標登録が許可された場合、登録通知の公示が180日間にわたり行われ、異議申立人またはいかなる第三者も、この登録に対する行政上の無効手続を提起することができる。行政上の無効手続は、先の異議申立とは無関係に提起することができる。

 

異議申立書の提出要件

 

 異議申立人は、異議申立書を提出する際に、下記の方式要件を遵守しなければならない。

 

(1)異議申立人の法律上の代表者により署名された委任状を提出する。認証の必要はない。

(2)異議申立の理由を提出する。

(3)必要であれば、証拠を提出する(例えば、商標が周知であることを証明するため、異議申立人の優先的な権利を証明するため、または出願人の悪意を証明するため)。

(4)政府料金を支払う。(INPIのオンラインシステムを通して提出される異議申立は、政府料金が割り引きされる。)

 

 さらにIP法第158条(2)項に従い、異議申立がIP法第124条(XXIII)項(悪意)またはIP法第126条(周知商標)を根拠とする場合、異議申立人は、当該商標に関する自己名義のブラジル出願を有していることを証明しなければならない。かかる証拠の提出期限は、異議申立書を提出した日から60日である。異議申立人がこの要件を満たさない場合、その異議申立はINPIにより却下される。

 

 異議申立書の提出時に委任状を提出できない場合、異議申立人は、委任状の提出を定めたIP法第216条(2)に従い、異議申立書を提出した日から60日以内に委任状を提出することができる。この期限内に委任状が提出されない場合、その異議申立はINPIにより却下される。

 

 異議申立人は、異議申立書を提出した日から60日以内に証拠を提出することもできるが、この期限後に提出された証拠については、INPIは考慮する義務はない。