マダガスカルにおける知的財産保護の現状
【詳細】
マダガスカルにおける知的財産権の取扱いについては、主に以下の法律に規定されている。
(1)産業財産保護に関する1989年7月31日付の法律第89-019号 (Ordinance No.89-019 Establishing Arrangements for the Protection of Industrial Property in Madagascar、以下、「産業財産権法」という)。この法律は、特許、商標、意匠、商号の保護、および不正競争について規定するものである。
(2)文学的および芸術的財産権に関する1995年9月18日付の法律第94-036号(Law No. 94-036 on Literary and Artistic Property、以下、「著作権法」という)。この法律は著作権を規定するものである。
また、マダガスカルは、以下に挙げる知的財産権に関する国際条約に加盟している。
(a)特許協力条約(1978年1月24日)
(b)工業所有権の保護に関するパリ条約(1963年12月21日)
(c)世界知的所有権機関(WIPO)(1989年12月22日)
(d)標章の国際登録に関するマドリッド協定議定書(2008年4月28日)
(e)世界貿易機関(WTO)-知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)(1995年1月1日)
1.特許
マダガスカルへの外国からの出願についてはパリルートおよびPCTルートによるマダガスカルへの国内移行が可能である。過去に出願された特許出願(原出願)に係る改良発明の特許出願を認める追加特許制度を備えている。また、発明者証に関する規定も設けられている。
産業財産権法には、特許を受けることができない発明が規定されている。公序良俗に反する発明の他、ソフトウェア、医薬品、動物、化粧品、食品の発明は特許を受けることができない。
さらに、出願時の絶対的新規性(出願日以前に国内外で公衆の知るところとなった技術に該当しないことを新規性の要件とし、国内および外国で公知、公用となった場合に新規性がないとすること)が求められる。ただし、出願日または優先権主張日の6ヶ月前以内に、国際博覧会等への展示を通じて発明が公表された場合に、新規性喪失の例外適用を受けることができる旨の規定も設けられている。
マダガスカルでは、特許の存続期間は出願日から15年間である。この期間は、特許権者が申請することにより、さらに5年間延長することができる。追加特許は、原出願の登録特許(原特許)とともに失効する。特許年金については、出願日から2年目以降毎年支払うものとされている。
マダガスカルにおける2014年の特許出願件数は24件であり、そのうち4件がマダガスカル人(内国人)による出願、20件が外国人による出願である。
2.意匠
マダガスカルでは、線もしくは色彩からなる構成、または線もしくは色彩との組み合わせの有無に関わらず、立体的意匠の外観形状も、意匠登録の対象になり得る。構成または形状は、工業製品または手工芸品に特別の外観を与えるものでなければならない。
新規性については、明確かつ認識可能な形状であって、または独自な視覚的効果をもたらす、1つまたはそれ以上の装飾的特徴により、他の類似する意匠とは異なる意匠にのみ、意匠保護が与えられる。意匠は、先行意匠と比較して実質的に重要ではない特徴だけが相違しているという理由だけでは新規性要件は満たされない、または出願意匠とは異なる物品に適用されるというだけでも新規性要件は満たされない。意匠の新規な要素が、機能的・技術的効果を生み出すために必須な形状である場合、当該意匠は意匠保護を受けることができない。
出願日の6ヶ月前以内にマダガスカルにおいて販売または他の方法によって意匠を公開した場合、新規性は喪失されないものとする。また、意匠出願日または意匠の優先権主張日の6ヶ月前以内にマダガスカルまたはパリ条約同盟国における公認の博覧会で意匠を開示した場合も、創作者等がかかる博覧会に参加したことを証明する公認証明書の作成を条件として、新規性は喪失されない。
一意匠一出願が原則であり、意匠出願に対する実体審査が行われる。意匠登録は、出願日から5年間有効であり、所定の手数料を支払うことによりさらに2回にわたって5年間の更新が可能である(最長15年)。
マダガスカルにおける2014年の意匠出願件数は207件である。
3.商標
商標にはラベル、色彩、デザイン、図、スローガンが含まれると産業財産権法に規定されている。商標が登録されるためには、他社の商品またはサービスと識別されなければならず、使用により獲得される識別力も考慮される。
サービスマークおよび連合商標の登録に関する規定はあるが、防護標章および連続(シリーズ)商標に関する規定はない。国際商標登録もマダガスカルを指定することが出来る。存続期間は出願から10年間で、不使用取消の除斥期間は登録から3年である。
商標出願は、登録可能性と先願の両面から審査される。先願については、登録局は同一または類似一の先願商標がある場合にのみ拒絶する。出願が先願商標権を理由に拒絶された場合、その拒絶判断が最終判断であり、登録局に対して不服を申立てることができない。登録局の拒絶理由が不当と考えられる場合、商標出願人は、控訴裁判所に決定の不服について訴訟を提起することができる。
第三者が同一または類似の商標を既に登録している場合、商標登録を取り消すためには、取消訴訟を提起することができる。
なお、マダガスカルの商標制度において、商標出願に対する異議申立の規定がない。
商標権者が侵害訴訟を提起する権利は、登録が認められた商品またはサービスだけに留まらず、商標の希釈化に対しても認められる。産業財産権法は、許諾を受けていない商標の使用が「正当な事由を欠き」、「商標権者の利益を害するおそれがある」状況について定めている。
また、商号および不正競争についても規定しており、「工業、商業、手工芸、農業に関して誠実な慣行に反する如何なる行為」も違法と定めている。
2014年の国内商標出願は約1,100件であり、そのうち約800件はマダガスカル人、300件は外国人によるものであった。また、同年の国際商標登録の出願においてマダガスカルが指定された件数は約900件である。
4.著作権
著作権法により保護される著作権は文学的および芸術的作品だけに留まらず、たとえば音楽作品、映画フィルム、三次元創作物、ソフトウェア、データベース、フォークロア(伝統的文化表現)にも適用される。
著作件法は、著作権を譲渡した著作者に対しても著作人格権を与え、彼らが著作者の表示を求めること、そしてその作品の同一性を侵害された場合に異議を唱えることを認めている。
マダガスカルにおける著作権の存続期間は、通常、創作者の死亡日から起算して70年間である。
ブラジルにおける指定商品または役務に関わる留意事項
【詳細及び留意点】
ブラジルにおいては多区分出願が認められず、区分毎に独立した出願を行わなければならない。
さらに、各出願には、INPIにより現在採用されているニース国際分類の版(第10版)に従った商品または役務の指定を記載しなければならない。
電子商標出願書式への記入に際して、出願人は、(a)INPIにより公表されたリスト(ニース国際分類の商品および役務リストと一致する)から商品または役務を選択する、または、(b)出願人が固有に作成した商品または役務の記載を提出する、という2つのオプションがある。オプション(a)には、庁による商品または役務の審査が不要となる事から、約20%公費が低く抑えられることと、商品または役務の記載についてオフィスアクションの発生を回避できる(当該リストがINPIにより事前承認されているため)という利点がある。
INPIは、商品または役務の広範な記載を認めていない。類見出し(クラスヘディング)や広範な記載が出願に含まれている場合、拒絶理由通知がくる可能性が高く、この対応のために意見書を送り再度審査するために手続の遅延が生じるおそれがある。また、この手続きのために新たな費用の発生も生じる。
商品または役務の適切な分類について疑義が生じた場合、所定の公費を納付することにより、商品および役務分類委員会(Goods and Services Classification Commission : CCPS)に照会することが可能である。照会内容を検討後、CCPSは、ブラジル産業財産権公報(RPI)においてその回答を公示する。
出願がパリ条約の優先権を含む場合、商品または役務の記載は、海外の優先権基礎出願と同一または基礎出願の商品または役務記載に含まれる限定的記載でなければならないことにも注意を要する。
なお、2000年以前に認可または更新された登録については、商品および役務の広範な記載を認める古い国内分類のままとなっている。
採用されているニース国際分類の版
INPIは、ニース国際分類第10版を使用しており、第11版の採用は2017年と見込まれる。
審査基準
INPIの審査官は、ニース国際分類を基準として、出願に示された商品または役務が、出願された区分にしたがっているか否かを確認する。
出願後、新たな商品または役務を追加する補正は認められない。しかし、商品または役務を縮減する補正は認められる。
INPIの審査官は審査の過程において、その職権により、出願された区分へ適合させるために、指定商品または役務の記載にマイナーな変更を行うことができる。通常、これらの変更は何らかの表現を含めること(例えば「医療用」や「医療用を除く」など)、または、出願された区分に属さない一部商品または役務を除外することである。
INPIの審査官が、出願区分と指定商品または指定役務との間の不一致を確認した場合(例えば、指定商品が2以上の区分を包含する場合など)、拒絶理由通知を発行し、出願人に対して不一致を明らかにし、不適切な商品または役務を除外するよう求める。除外された商品または役務を保護するには新規出願を行わなければならない。分割出願による対応は認められていない。
拒絶理由通知は、商品または役務に関してあいまいな記載がある場合にも発行されることがある。この場合、出願人は、拒絶理由通知に応じ、希望する商品または役務を明確に示さなければならない。
さらに、ブラジルの商標出願では、出願時に事業内容を宣誓するが、INPIの審査官は、審査の過程において、指定商品または指定役務が、出願人が出願時に宣言した事業内容に沿うものであるか否かについても審理する。指定商品または役務と事業内容とが一致しない場合も拒絶理由通知が発行され、出願人に対して、自身の事業内容に関する証拠を提出するよう要求されることがある。
拒絶理由通知が発行された理由にかかわらず、期限内に応答がない、または期限内に指令内容に応じない場合、当該出願は失効したものとみなされ、拒絶査定が発行される。
指定商品または指定役務が公費に与える影響
商品または役務の数により、公費が変わることはない。つまり、例えば一つの指定商品の出願と15の指定商品の出願は同じ公費を納付することになる。
公費は、出願の提出方法により異なる。現在、INPIは、(INPIのウェブシステムを通じた)電子出願と紙媒体による出願を認めているが、電子出願は紙媒体による出願よりも安価である(約20%安い)。
電子出願では、INPIにより公表されたリスト(ニース国際分類の商品および役務リストと一致する)を使うか、または、出願人が固有に作成した商品または役務の表記を使うか、自由である。公費は、電子出願制度の中でも変わり、公費を比較すると、前者は、後者に比べて約20%安価となる。紙媒体による出願においては、このような公費の相違は発生しない。
CCPS(商品および役務分類委員会)に対する商品または役務記載に関する相談は有料であり、その相談に対する公費は、照会する商品または役務の数に応じて異なる。
留意事項
商品の補正に起因する公費や代理人検討料の新たな費用の発生や、拒絶理由対応などオフィスアクションによる余分な時間の経過を回避するため、希望する商品または役務を正確に記載することを推奨する。INPIにより公表されたリスト(ニース国際分類の商品および役務リストと一致する)に則ることが望ましい。これにより、オフィスアクションの回数が増えることを避け、手数料を必要最小限に抑えることができる。
ブラジルでは、商標登録出願、商標登録更新のいずれにおいても、商標の使用証拠の提出は要求されない。