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韓国における再審査請求制度の活用および留意点

 以下、特許出願の再審査請求制度について詳しく紹介するが、実用新案についても同様である(実用新案法第11条、第15条などにより準用されている)。また、韓国において日本の「査定」に対応するものは「결정」(決定)であり、韓国特許法の和訳においても「決定」と表記されていることから、以下、「査定」ではなく「決定」と表記する。

(a)出願人は、特許決定の謄本の送達を受けた日から設定登録を受ける前までの期間または特許拒絶決定謄本の送達を受けた日からから3か月以内に、明細書または図面を補正して再審査を請求することができる(特許法第67条の2第1項、以下、「再審査請求」という)。なお、再審査請求の期限は30日ずつ2回延長が可能である*1(特許法第15条第1項)。
補正は、再審査請求と同時にしなければならない。再審査請求時に行う補正は、新規事項の追加禁止だけでなく、請求範囲を減縮しなければならないなど補正の範囲が制限される(特許法第47条第1項から第3項、同法第51条第1項、特許・実用新案審査基準(以下、「審査基準」という)第4部第1章3.2および4.3、第4部第2章2および2.1)。また、補正とは、形式的な補正を意味するため、実質的な内容を補正しなかった場合であっても再審査請求の意思表示があったものとみなされる(審査基準第5部第4章2.2(2))。

*1:海外からの出願は、特許法第15条第1項の「交通が不便な地域」に相当するため、2回の延長が可能である。しかし、韓国国内からの出願は「交通が不便な地域」に相当する場合と相当しない場合があり、相当しない場合は1回しか認められない(特許法第15条第1項、実用新案は実用新案法第3条で準用、審判便覧第13編第2章第3節)。

(b)再審査請求は取下げることができない(特許法第67条の2第4項)。また、再審査請求がされた場合、その特許出願に対し従前になされた特許決定または特許拒絶決定は取り消されたものとみなされる(特許法第67条の2第3項)。したがって、再審査請求後に特許拒絶決定に対する審判請求(以下、「拒絶決定不服審判」という)をすることはできない。

(c)拒絶決定不服審判の請求があった出願は、再審査請求をすることができない(特許法第67条の2第1項ただし書第2号)。ただし、再審査を請求することができる期間内であれば、拒絶決定不服審判を取下げ、再審査請求をすることは可能である(審査基準第5部第4章2.2(4))。

(d)拒絶決定不服審判請求と同時に請求された再審査請求は、適法とみなされない(特許法第67条の2第1項ただし書第2号、特許法施行規則第11条第1項第19号)。ただし、出願人が拒絶決定不服審判請求を取下げれば、再審査請求が有効とされる(審査基準第5部第4章2.2(4))。

(e)再審査請求がされた場合、特許決定または特許拒絶決定は取り消される(特許法第67条の2第3項)が、それ以前に行われた審査手続は有効である(審査基準第5部第1章1.2(13))。

(f)再審査で以前の拒絶理由が解消されれば特許決定となり、解消されなければ特許拒絶決定となる(審査基準第5部第4章2.5(2))。

(g)再審査で以前の拒絶理由が解消されたが、他の拒絶理由が新たに発見されれば、拒絶理由通知が発行される(審査基準第5部第4章2.4(3))。

(h)再審査で提出された補正書により発生し、審査官に指摘されなかった拒絶理由がある場合は、最後の拒絶理由通知が発行される(審査基準第5部第3章5.3.2、第5部第4章2.4(3))。

(i)再審査で再度特許拒絶決定された場合、再び再審査請求を行うことはできない(特許法第67条の2第1項ただし書第1号)が、特許拒絶決定謄本の送達日から3か月以内に拒絶決定不服審判を請求することができる(特許法第132条の17)。なお、審判請求の期間は30日ずつ2回延長可能*2である(特許法第15条第1項)。ただし、拒絶決定不服審判時には明細書等の補正はすることができない(特許法第47条第1項に規定がない)。

*2:海外からの出願は、特許法第15条第1項の「交通が不便な地域」に相当するため、2回の延長が可能である。しかし、韓国国内からの出願は「交通が不便な地域」に相当する場合と相当しない場合があり、相当しない場合は1回しか認められない(特許法第15条第1項、実用新案は実用新案法第3条で準用、審判便覧第13編第2章第3節)。

(j)2022年4月20日から分離出願制度が導入された。分離出願は、拒絶決定不服審判請求で棄却された場合に、審決の謄本の送達を受けた日から30日(付加期間を定めた場合にも、その期間をいう。)以内に、特許拒絶決定で拒絶されていない請求項のみを分離して出願できる(特許法第52条の2第1項)制度である。なお、分離出願は新たな分離出願、分割出願または実用新案法第10条による変更出願の基礎となれない。(特許法第52条の2第4項第4号)

(k)2017年3月1日以降に特許決定された出願において、特許決定後、明らかな拒絶理由を発見した場合には、審査官は職権で特許決定を取消し再審査(職権再審査)することができる(特許法第66条の3第1項)。なお、審査官は特許決定を取消す事実を出願人に通知しなければならない(特許法第66条の3第2項)。

(l)留意事項
 特許拒絶決定を受けたら、まず、再審査対象かどうか確認をする。すなわち、特許または実用新案の出願日(国際出願、分割出願のすべての出願日)が2009年7月1日以降であれば、再審査請求の対象となる。再審査請求時の明細書等の補正は、補正できる最後の機会であり、再審査で再度特許拒絶決定を受ければ、拒絶決定不服審判請求時には補正をすることができない点を留意しなければならない。

 再審査請求は取下げることができない。また、拒絶決定不服審判後に再審査請求をすることはできない。よって、どちらを選択するのかを十分に検討しなければならないが、既に説明したように、再審査を経て再度特許拒絶決定が出た場合も拒絶決定不服審判(この審判手続に補正の機会は伴わない)を請求できるので、再審査請求を選択する方が特許決定を受ける可能性は高まるといえる。なお、再審査を経て出された再度の特許拒絶決定に対する拒絶決定不服審判の請求期間中に(特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から3か月以内に)、補正をしたい発明について分割出願手続を行えば、その分割出願に係る発明についてさらに補正の機会を得ることができる。