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シンガポールにおける均等論に対する裁判所のアプローチ

1.シンガポールには、均等論に関する確立された理論があるか

 

 均等論の起源は米国であり、被告製品が特許権者のクレームを侵害したか否かを評価するにあたり米国裁判所が取るアプローチである。この法理に基づき、被告製品が、実質的に同一の結果を達成するために、実質的に同一の方法で実質的に同一の機能を果たす場合、被告製品は、特許権者のクレーム範囲内にあたるとみなされる。

 

 米国とは異なり、シンガポールには、制定法であるか判例法であるかを問わず、均等論がない。代わりに、シンガポール裁判所は、クレーム解釈に対して、イギリスで採用されている目的論的アプローチを支持してきた。

 

 実際、Bean innovation Pte Ltd & Anor v. Fexon (Pte) Ltd事件において、シンガポール控訴裁判所は、均等論を暗に拒絶したものと見受けられる。問題の特許は、個人向け郵便受け用のセントラル施錠システムを備えた郵便受けアセンブリ施錠システムに関するものであった。被告の郵便受けも、同一の結果を達成するセントラル施錠システムを有していた。特許権者は、被告製品が特許製品と同一の機能を果たすため侵害があったと主張した。控訴裁判所は、そのアプローチはクレームにおいて述べられていることを無視することと同等であるとして、本件クレーム全体を機能的に解釈する特許権者のアプローチに同意しなかった。

 

2.シンガポールにおける特許クレーム解釈に対する目的論的アプローチ

 

 クレーム解釈に関する法律は、シンガポール特許法第113条(1)に規定されており、特許により付与された保護範囲は、特許明細書に含まれる説明および図面により解釈された、明細書中のクレームにおいて指定されたものであると解されるものとすると定められている。本条に基づくクレーム解釈に際して、目的論的アプローチが採用される。

 

 目的論的アプローチはまた、Genelabs Diagnostics Pte Ltd v. Institut Pasteur(「Genelabs事件」)において、シンガポール控訴裁判所により支持された。本件特許におけるクレームは、ヒト免疫不全ウイルス2型(「HIV-2」)レトロウイルスに対する抗体との特定免疫反応を生じる18merのアミノ酸配列をカバーするものであった。被告の試験キットは、完全に同一の18mer配列と追加の5つのアミノ酸から成る23mer配列を含んでいた。侵害があったか否かの判断に際して、控訴裁判所は、Improver Corp v. Remington Consumer Products Ltdにおいて定められた精巧なテストにおいて要約された以下のプロトコルの質問事項に導かれた、Catnic Component Ltd v. Hill & Smith Ltdにおいて提示された目的論的解釈の法理を適用した。

 

(1)この異形は、本発明の作用方法に重大な効果を有するか。
Yesの場合、この異形はクレームの範囲外である。

 

Noの場合:(2)

(2)このこと(すなわち、この異形が重大な効果を有さない)は、当業者である読者にとって、特許の公開日時点において自明であったか。

Noの場合、この異形はクレームの範囲外である。

 

Yesの場合:(3)

(3)このこと(すなわち、この異形が重大な効果を有さない)にもかかわらず、当業者である読者は、クレームの文言から、特許権者が、主たる意味の厳格な遵守が本発明の重要な要件であることを意図していたと理解したか。

Yesの場合、この異形はクレームの範囲外である。

 

 控訴裁判所は、5つの追加のアミノ酸は、ニトロセルロース片上における18mer配列にとっての固着剤および安定剤以上のものではないため、23mer配列は、取るに足らない異形であると判断した。よって、裁判所は、被告の診断キットが本件特許を侵害したと判示した。

 

3.目的論的アプローチの制限

 

 しかし、採用されたクレーム解釈に対する目的論的アプローチには制限がある。

 

(1)クレームの本質的特徴を説明するために使用される用語が明確で明瞭な用語である場合、これら用語は無視されない。

(2)クレームが平易な意味を有する場合、クレームに異なる別の意味を持たせるように、明細書の本文において使用されている文言に依拠すべきではない。

 

4.包袋禁反言の法理

 

 米国裁判所によりやはり採用されている包袋禁反言の法理の存在および範囲は、均等論と関係がある。包袋禁反言の法理は、特許審査に際して縮減補正を行う特許権者が、当該補正により譲り渡した主題をカバーすべく自らのクレーム範囲を拡大するために均等論を発動し、特許付与を受けることを禁止するものである。

 

 シンガポールは、包袋禁反言を正式に認めていないが、Genelabs事件において、シンガポール控訴裁判所は、特許クレームの範囲を評価するにあたり、審査経過を考慮に入れた。

 

 Genelabs事件は、シンガポールで再登録された欧州(イギリス)登録特許の侵害認定に関するものであった。本件特許は、特に、HIV-2、その抗原、ならびにヒトHIV-2レトロウイルスに感染したヒト中で発現した抗原の存在にかかるin vitro検出の方法をカバーするものであった。控訴人は、HIV-2を検出する診断キットを製造、販売した。

 

 被告は、自身の診断キットはSIV抗原のアミノ酸配列を使用しているため、本件特許を侵害しないと主張した。この主張の裏付けとして、被告は、欧州特許庁(「EPO」)の通知書に対する特許権者の応答書の一部に裁判所の注意を向けさせ、この応答書に鑑みて、本件特許の範囲はHIV-2に限定されており、SIVを含むべきではないと主張した。

 

 特許によりクレームされた独占の範囲を決定するにあたり、控訴裁判所は、特許権者の応答書を検討し、特許権者の完全な応答書を審査した結果、特許権者の権利をHIV-2抗原のみに縮減し、SIV抗原を排除するようなものは応答書には一切ないと結論付けた。よって、裁判所は、被告の診断キットが本件特許を侵害したと判示した。

 

 まとめると、シンガポールにおいては、正式な包袋経過禁反言の法理はないが、裁判所は、特許クレームの範囲を決定するにあたり、審査経過を検討する用意があると考えられる。

ロシアにおける特許および実用新案に関する統計

1.特許出願および実用新案出願に関する統計

1-1.特許出願

 表1に2007年から2016年までのロシアにおける特許出願件数を表す。

 

表1:2007年から2016年までの年別の特許出願件数

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 2007年から2016年までの過去10年間を通じて、ロシアにおける特許出願件数は、38,500件から45,500件の間で推移している。ロシア特許庁への特許出願件数は五大特許庁(アメリカ合衆国特許商標庁(USPTO)、欧州特許庁(EPO)、日本国特許庁(JPO)、中国国家知識産権局(SIPO)、韓国特許庁(KIPO))と比べて著しく少ない。2016年のロシアにおける特許出願件数は前年比で8.6%減少している。

 

 外国の出願人による特許出願件数は、合計件数の35%程度である。ロシアで最も活発に特許出願を行っている外国は、アメリカ合衆国、ドイツ、日本、中国であり、この3か国に続き、以下、フランス、スイス、オランダの順である。

 

 外国の出願人による特許出願件数は、2009年から2015年にかけて毎年増加していたが、2016年には9%減少している。2016年の外国の出願人による特許出願件数は以下のようになっている。

  • アメリカ合衆国の出願人による特許出願件数は13%減少
  • ドイツの出願人による特許出願件数は12%減少
  • オランダの出願人による特許出願件数は21%減少

 

 それに対し、中国の出願人による特許出願件数は2016年に前年比で36%増加した。中国の出願人による特許出願件数は、2013年には458件であったが、2016年には1,171件に増加した。しかし、ロシアで最も活発に出願を行っているのはアメリカ合衆国の出願人である。アメリカ合衆国の出願人による2016年の特許出願は、主要な技術分野すべてにわたっており、その特許出願件数は4,296件に達している。

 

1-2.実用新案

 表2は、2007年から2016年までのロシアにおける実用新案出願件数を表す。

 

表2:2007年から2016年までの年別の実用新案出願件数

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 ロシアの実用新案制度が外国の出願人に広く知られていないためか、表2の2016年のデータを見ると、外国の出願人による実用新案出願件数は469件に過ぎない。これに対し、ロシアの出願人にロシアの実用新案制度は広く知られているようであり、ロシアの出願人による実用新案出願件数は、2008年以降毎年10,000件を超えている。

 

 ロシアでは、2009年以降、毎年11,000件を超える実用新案出願がされているが、外国の出願人による割合は全体の4%未満にとどまっている。

 

 ロシア特許庁は、2015年の年初から実用新案出願に対して新規性に関する実体審査を実施している。新規性に関する実体審査を経て付与された実用新案権は、新規で産業上利用可能な製造物に対する保護形態として妥当な強さを備え、ロシアの企業および法人によって尊重されている。

 

 さらに、実用新案出願の審査期間が短いという点にも注目すべきである。通常、実用新案出願から権利付与までに要する期間は12か月未満であり、特許出願の審査と比較して短く、費用の総額も安く抑えられる。実用新案権の短所は、保護の最長期間が特許権よりも短いこと(特許権の存続期間が20年であるのに対して、実用新案権の存続期間は10年)と、保護の対象が機器または装置に限定されることである。複雑なシステム、方式、方法、化合物、または微生物の菌株などは実用新案権によっては保護されない。

 

2.特許出願の実体審査-係属期間および迅速審査のオプション

2-1.実体審査請求の期限

 実体審査の段階に入った特許出願件数は、提出された特許出願件数と概ね相関している。ただし、ロシアでは実体審査の繰り延べが認められているため、明白な遅延が存在する。実体審査請求の期限は以下の通りである。

 

  • PCT出願の国際出願日から3年以内
  • パリ条約に基づく優先権期間の12か月以内にロシアで願書が提出された優先権主張を伴う特許出願の出願日または優先権主張を伴わない特許出願の出願日から3年以内

 

2-2.審査段階にある特許出願

 表3は、2007年から2016年までの、審査段階にある特許出願件数を表す。

 

表3:2007年から2016年までの年別の審査段階にある特許出願件数

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 2016年に実体審査の段階にあった特許出願件数は46,206件であった。この数は前年比で8.82%増加している。ロシア特許庁の年次報告書によれば、実体審査の請求から最初の拒絶理由通知の発行までに要した期間は、2016年の平均で見ると10.5か月である(2015年の平均は10.3か月)。通常、審査請求が提出された日から最初の拒絶理由通知の発行までの期間は10か月から11か月である。

 

 最初の拒絶理由通知に対する応答書が提出されてから2回目の拒絶理由通知または特許査定に至るまでの期間は、数か月から1年である。拒絶理由通知に対する応答書の提出期限が当該拒絶理由通知の発行日から3か月であることと、出願人は応答書の提出期限を最大10か月まで延長できることを考慮すると、ロシア特許庁の業務処理の状況だけでなく出願人自身の行為や延長期間の合計によっても、実体審査段階での所要期間に大きな違いが生じてくる。

 

2-3.早期審査

 2017年10月1日付で新たな規定が施行された。この規定によれば、出願人が特許出願の時点で実体審査請求を行い、審査請求料に公定の追加料金を上乗せした金額を支払った場合、ロシア特許庁は出願から7か月以内に調査報告書を発行しなければならない。この迅速な処理は、通常の処理と比較して所要時間が数か月短い。通常であれば、調査報告書の発行と出願人への送達は、出願から10か月から11か月以内に最初の拒絶理由通知の発行と同時に行われる。

 

 ロシアにおいて可及的速やかな特許権の取得を希望する出願人は、グローバル特許審査ハイウェイ(PPH)プログラムの要件を出願が満たしているのであれば、同プログラムを通じた早期審査の申請を検討してもよい。グローバルPPHを通じた早期審査には公定の追加料金が課されない。

 

 日本国特許庁のPPHポータルに公表された統計によれば、ロシア特許庁がPPH申請を審査した日から最初の拒絶理由通知の発行までに要する期間は平均で3.09か月である。PPHの申請から最終決定(特許付与または拒絶の決定)に至るまでに要する期間は平均して3.45か月である。ロシア特許庁は2017年2月に欧州特許庁(EPO)との間でPPH試行プログラムを開始した。

 

3.特許付与または拒絶の決定

 表4は、2007年から2016年までの特許付与の決定に関する統計をロシアの出願人と外国の出願人とで比較した表である。また、表5は、2007年から2016年までの拒絶の決定に関する統計をロシアの出願人と外国の出願人とで比較した表である。

 

表4:2007年から2016年までの年別の特許付与の決定件数

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表5:2007年から2016年までの年別の拒絶の決定件数

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 2016年に外国の出願人が受けた特許付与の決定は、全体(ロシアおよび外国両方の出願人を含む。)の38.6%を占めており、同年に外国の出願人が受けた拒絶の決定は、全体の22.8%に過ぎない。ロシアの出願人の場合、2016年に受けた特許付与の決定は全体の61.4%、同年に受けた拒絶の決定は全体の77.2%である。外国の出願人の場合、ロシアでの特許出願を決意する前に、国際調査報告または対応国出願の審査経過等に基づき、特許付与の可能性を検討しているようであり、それが上記の数字に表れている。

 

 参考までに、2007年から2016年までの年別の特許発行数を表6に示す。

 

表6:2007年から2016年までの年別の特許発行数

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4.特許出願の取下げ

 表7は、2007年から2016年までの取下げとなった特許出願件数を表す。表7に示す取下げとなった特許出願件数は、出願人が出願の取下げを請求したことにより、または期限を順守しなかったために(実体審査請求または拒絶理由通知に対する応答書の提出を怠った場合等)、取下げたものとみなされた特許出願の数を示す。

 

表7:2007年から2016年までの年別の取下げとなった特許出願件数

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 外国の出願人は、ロシアの出願人に比べて出願を放置したままにすることが多い。表7に示す2016年のデータによれば、外国の出願人による特許出願のうち取下げたものとみなされた件数は3,844件であるが、ロシアの出願人の場合には3,563件であった。

ロシアにおける特許取得-ユーラシア特許制度

 「模倣対策マニュアル ロシア編」(2016年3月、日本貿易振興機構)第1章第1節(2)

 

(目次)

第1章 ロシアにおける知的財産権の取得

 第1節 特許

  (2) ユーラシア特許制度 P.26

   (a) ユーラシア特許制度の特徴 P.27

   (b) 出願人適格及び特許要件 P.30

   (c) 出願から特許付与までの手続 P.30

   (d) 特許権 P.31

   (e) ユーラシア特許の審判 P.32

    1) 審判請求 P.32

    2) 行政無効手続 P.33

   (f) 手数料 P.34

   (g) 公告 P.35

ヨルダン・ハシェミット王国 における特許権取得に関する制度概要

「ヨルダン・ハシェミット王国における特許権取得に関する制度概要調査」(2016 年6 月、日本貿易振興機構ドバイ事務所)

 

(目次)

第1 章 – はじめに p.4

 第1 節 – 目的p.4

 第2 節 – 統計p.4

 第3 節 – 特許審査の未決係属p.6

 第4 節 – 特許の期間p.6

第2 章 – 特許登録のための必要条件 p.7

 第1 節 – 特許の対象p.7

 第2 節 – 特許要件p.8

第3 章 – 特許取得の手続き p.9

第4 章 – 特許出願の準備 p.11

 第1 節 – 言語 p.11

 第2 節 – 特許出願の構造p.11

 第3 節 – クレームを作成する際の留意点p.11

 第4 節 – 明細書を作成する際の注意点p.12

 第5 節 – 図面を作成する際の注意点p.12

 第6 節 – 他の箇所を作成する際の注意点p.13

第5 章 – 特許出願の提出 p.13

 第1 節 – 出願場所 p.13

 第2 節 – 優先権主張 13

 第3 節 – 外国出願・パリルート・PCT ルート p.13

 第4 節 – 費用および経費 p.14

 第5 節 – 特許出願に関する法律 p.14

第6 章 – 特許審査 p.15

 第1 節 – 早期審査 .p. 15

 第2 節 – オフィスアクションに対する応答 p.15

 第3 節 – 応答の作成 p.15

 第4 節 – クレームの認可 p.15

 第5 節 – 異議申立手続き p.16

 第6 節 – 特許付与 p.16

シンガポールにおける特許を受けることができる発明と特許を受けることができない発明

【詳細】

1. ソフトウェア

 1995年に特許法が施行された際に、第13条(2)によって「コンピュータプログラム」は、「発明」ではないと宣言された。

 

シンガポール特許法第13条(1995年施行時)では以下のように発明を規定していた。

「第13条 特許性のある発明

(1) (2)および(3)に従うことを条件として、特許性のある発明とは、次の条件を満たすものである。

 (a)発明が新規であること

 (b)発明に進歩性があること

 (c)発明が産業上利用できること

(2) 次のものから成るものは、本法を目的として、発明ではないことをここに宣言する。

 (a) 発見、科学的理論、数学的方法

 (b) 言語、戯曲、音楽または芸術作品、もしくはその他あらゆる審美的創作物

 (c) 精神活動、ゲームまたはビジネスのためのスキーム、ルールまたは方法、もしくはコンピュータプログラム

 (d) 情報の提示

ただし、前述の規定は、特許または特許出願に関する範囲内において、あらゆるものが本法における発明として取り扱われることを禁止するものである。」

 1996年1月1日に施行された改正により、第13条(2)は削除された。

 

 ソフトウェアクレームが特許を受けることができるかどうかを考察するために、First Currency Choice v Main-Line Corporate Holdings Ltd事件([2007] SGCA 50)を説明する。この事件において、クレジットカード取引を処理するために使用される希望通貨を、(データ処理方法を通じて)自動的に特定する通貨換算方法およびシステムに対して特許を付与することが適切かどうかが争点となった。最高裁判所の高等法廷(High Court)は、この特許は新規性と進歩性を有さないと判示し、この判決は、最高裁判所の上訴法廷(Court of Appeal)によって支持された。

 

 第13条(2)の削除とFirst Currency Choice v Main-Line Corporate Holdings Ltd事件の判決に基づき、シンガポールにおいてソフトウェアクレームは特許を受けることができるとの見解を持つ者がいるが、シンガポール知的財産庁は、この見解を認めていない。シンガポール知的財産庁の特許出願審査ガイドライン(以下、「知財庁ガイドライン」という)の段落8.5および8.6は、以下の通りである。

 「8.5 しかし、特許法は特許規則と合わせて解釈されなければならず、特許規則第19条によれば、発明が関連する「技術分野」および「技術的課題」を明細書で特定し、クレームは、「技術的特徴」として発明を定義しなくてはならない。

 8.6 したがって、規則第19条に定められた要件に鑑みて、発明は「技術的特徴」を含むことが要件である。」

 

2. 治療方法

 第16条(2)は、人もしくは動物の体の外科術または治療術による治療方法、または人もしくは動物の体について行う診断方法の発明は、産業上利用可能であるとは認められないと規定している。したがって、そうした発明は、特許不適格である。

 しかし、この除外は、人または動物の体について行う外科術、治療術または診断の方法にのみ適用される。

 第14条(7)は、第16条(2)により除外された治療方法において使用される既知の物質または組成物の場合、当該物質または組成物が技術水準の一部を構成するという事実は、当該物質または組成物の当該方法における使用が技術水準の一部を構成しないときは、発明を新規なものと認めることを妨げるものではないと規定している。

 第16条(2)および第16条(3)と合わせた第14条(7)の解釈に基づき、知財庁ガイドラインは、段落8.38において、以下の通り説明している。

 「したがって、既知の化合物の『第一医療用途』はクレーム可能であり、または、医療用途として従前に知られている物質または化合物の場合は、異なる『第二医療用途』がクレーム可能である。」

 

 知財庁ガイドラインの段落8.39において、認められる「第一医療用途クレーム」について例が示されている。

 (1)治療において使用される化合物X

 (2)薬品として使用される化合物X

 (3)健康状態Yの治療において使用される化合物X

 (4)抗生物質として使用される化合物X

 

 知財庁ガイドラインの段落8.42において、以下の「第二医療用途」クレームの形式が認められると述べられている。

 (1)健康状態Yの治療のための薬品の製造における化合物Xの使用 ― スイスタイプクレームの一般的形式

 (2)健康状態Yの治療または予防措置用の薬品を製造するための化合物Xの使用

 (3)健康状態Yの治療における使用指示とともにパッケージされる抗Y剤の製造における化合物Xの使用

 (4)健康状態Yの治療または予防のための使用準備が整った医薬形態の抗Y剤の調整における化合物Xの使用

 

2-3 特許を受けることができないその他の主題

 第13条(2)は削除されたが、知財庁ガイドラインは(パラグラグ8.7~8.25において)、以下のものを、特許を受けることができない主題として列記している。

 (1)発見

 (2)科学的理論および数学的方法

 (3)審美的創作物(言語、戯曲、音楽または芸術作品)

 (4)精神活動の遂行、ゲームの実行または事業の実施のための計画、規則または方法

 (5)情報の提示

ニュージーランドにおける特許を受けることができる発明と特許を受けることができない発明【その2】

【詳細】

 ニュージーランドにおける特許を受けることができる発明と特許を受けることができない発明について、全2回のシリーズで紹介する。(その2)

 

2-7.コンピュータプログラム

 コンピュータプログラムそのものは、発明あるいは「新規製造の態様」(manner of new manufacture:方法・製造物・製造方法などを含む広い概念)ではないとされているため、新法第11条に基づき、特許を受けることはできない。ただし、組込型コンピュータプログラムに関する発明、コンピュータプログラムを利用した発明、コンピュータプログラムを含む発明については、特許付与の対象になる可能性がある。

 

 しかし、特許付与の対象になるためには、発明の実際の寄与がコンピュータの外部に存在することが必要であり、コンピュータ自体に影響を与える発明である場合には、処理されているデータの種類または使用されている特定のアプリケーションに依存しないことが必要である。発明の実際の寄与を判断するに際して、長官または裁判所は、以下を考慮しなければならない。

  • 実体的なクレームの内容、および実体的なクレームの内容による実際の寄与(クレームの記述形式や出願人が主張する寄与ではない)
  • 解決または対処すべき課題または問題は何か
  • クレームに関連する実際の製品や方法が、どのように課題や問題を解決しているか
  • 解決または対処すべき課題または問題を解決することによる利点や利益
  • 長官または裁判所が考慮すべきと判断するその他事項

 

 ニュージーランド知的財産庁が発行した特許審査基準は、コンピュータプログラムに関連した発明が特許を受けることができるか否かを判断するための5つの指針について言及している。この5つの指針は、AT&T Knowledge Ventures LP, Re [2009] EWHC 343 (Pat)において、以下のように定められている。

  1. クレームされた技術的効果が、コンピュータ外部で実施されるプロセスに技術的効果を有するか否か
  2. クレームされた技術的効果が、コンピュータアーキテクチャのレベルで動作するか否か、すなわち、処理されているデータまたは動作しているアプリケーションにかかわらず、その効果が生じるか否か
  3. クレームされた技術的効果の結果として、コンピュータが新規の方法で動作するか否か
  4. コンピュータの速度または信頼性の向上が見られるか否か
  5. 発明が解決しようとする課題が、単に回避されるのではなく、クレームされた発明により実際に課題が克服されているか否か

 

クレームされた発明が、5つの指針を全て満たす場合には、その発明が単なるコンピュータプログラムそのものではなく、特許を受けることができる発明に相当する可能性があることを示している。

 

 新法第11条は、ニュージーランドにおいて特許適格性の有無を特定するために役立つ具体例を2つ例示している。第一の例は、特許適格性があるとされる例であり、第二の例は、特許適格性がないとされる例である。この二つの例について、以下に論じる。

 

特許適格性があるとされる具体例

 出願中のクレームは、既存洗濯機を使用する際の改良された衣料の洗濯方法に関するものである。この方法は、洗濯機に組み込まれたコンピュータチップ上のコンピュータプログラムによって実現される。このコンピュータプログラムは、洗濯機の動作を制御する。洗濯機は、この発明を実施するために、何ら大きく変更されていない。

 この発明について、実際の寄与は、衣料をより綺麗にし、少ない電力を使用する洗濯機の新規かつ改善された操作方法であると考えられる。

 この洗濯機に関して従来とは異なる唯一の点が、コンピュータプログラムである一方、実際の寄与は、(コンピュータプログラムそのものではなく)コンピュータプログラムによって制御される洗濯機の動作ということになる。コンピュータプログラムは、プロセッサによって実行されることで、実際の寄与に相当する「洗濯機の動作」を制御するものでしかない。

 この例においては、実際の寄与は、コンピュータプログラムそのものに存在するわけではないため、当該クレームは、特許を受けることができる発明(すなわち、衣料を洗濯する新規方法を使用する際の洗濯機)に関するものである。

特許適格性がないとされる具体例

 発明者は、会社登記に必要な法律文書を自動的に完成するプロセスを開発した。

 クレームされたプロセスは、ユーザーに質問するコンピュータに関するものである。その回答は、データベースに保存され、その情報はコンピュータプログラムを使用して処理され、必要な法律文書が作成され、ユーザーに送付される。

 使用されるハードウェアは従来のものである。唯一の新規な点はコンピュータプログラムである。

 この発明について、実際の寄与は、コンピュータプログラムであること自体にのみ存在すると考える。コンピュータ内における方法の単なる実施により、当該方法を特許化することはできない。したがって、このプロセスは、新法の目的における発明ではない。

2-8.ビジネス方法に関する発明

 新法においても旧法においても、ビジネス方法特許は、明確に除外されていない。ビジネス方法特許に関する具体的なガイドラインはない。旧法では、経済的努力の分野における有用性を持つ「人為的に創造された状態(artificially created state of affairs)」を実現することを条件として、ビジネス方法特許を認めてきた。「人為的に創造された状態」を生じない純粋なビジネス方法(すなわち、単なるスキームや計画)は、通常、旧法下でも認められていない。「人為的に創造された状態」の要件を満たすために、旧法下での出願人が取り得る戦略は、コンピュータプログラムまたはコンピュータを実現するビジネス方法をクレームすることである。

 

 しかし、コンピュータプログラムそのものは、新法では特許付与の対象外とされているため、純粋なビジネス方法に関するクレームだけでなく、コンピュータを付随的に利用するだけのビジネス方法に関するクレームも、新法に基づき特許を受けることができない可能性が極めて高く、ビジネス方法に関するクレームは、コンピュータプログラムそのものとみなされることになる。

 

2-9.ボードゲームに関する発明

 旧法に基づく出願について、ボードゲーム「ボード(盤)上にコマやカードを置いたり、動かしたり、取り除いたりして遊ぶゲームの総称」に関する発明は、クレームに以下の点が含まれている場合、一般的に特許を受けることができるとみなされる。

  • 装置
  • ゲーム用の駒
  • (明細書に添付された図面において示された通り)そのマーキングの特徴に新規性を有するボード
  • 明細書に開示された規則に従って関係するゲーム用の駒

 新法は、ボードゲームの特許性を除外していないため、新法に基づくボードゲームの特許性に関する要件は、旧法に基づく要件と同じになると考えられる。

 

2-10.マオリ族の伝統的知識に関する発明またはマオリ族の価値観に反する発明

 マオリ族は、ニュージーランドの先住民族である。マオリ族の伝統的知識に由来する発明、またはその利用がマオリ族の価値観に反するとみなされる発明は、新法に基づき、拒絶される。マオリ族諮問委員会には、ニュージーランド特許庁からの要請に応じて、特許出願においてクレームされた発明が、マオリ族の伝統的知識、原産植物・原産動物に由来するか否かについて、意見を提供する機会が与えられている。そして、マオリ族の伝統的知識、原産植物・原産動物に由来する場合には、当該発明の商業的利用がマオリ族の価値観に反するか否かについて、意見を提供することもできる。

ニュージーランドにおける特許を受けることができる発明と特許を受けることができない発明【その1】

【詳細】

 ニュージーランドにおける特許を受けることができる発明と特許を受けることができない発明について、全2回のシリーズで紹介する。(その1)

 

1.はじめに

 2013年ニュージーランド特許法(「新法」)は、2014年9月13日より施行された。2014年9月13日以降にニュージーランドで出願されたすべての特許出願は、新法の規定に基づき審査されるが、2014年9月13日より前にニュージーランドで出願された特許出願は1953年特許法(「旧法」)に基づき審査される。

 以下、新法における特許を受けることができる発明について説明する。

 新法はニュージーランドにおいて特許を受けることができる発明を定義している。新法第14条に基づき、クレームに記載の発明が以下を全て満たす場合に限り、発明は特許を受けることができる。

 (a)専売条例(Statute of Monopolies)の第6条における「新規製造の態様」(manner of new manufacture:方法・製造物・製造方法などを含む広い概念)であり、

 (b)先行技術と比較した際に新規であり、また進歩性も有し、

 (c)有用であり、かつ

 (d)第15条または第16条に基づく特許を受けることができる発明から除外されていない

 したがって、特許を受けることができるためには、発明が、専売条例第6条の意味における「新規製造の態様」でなければならない。この専売条例は、1623年にイングランドで制定されたものであり、第6条は、以下の通り規定されている。

 

専売条例第6条

 前述の宣言は、いかなる特許状(現在の特許証に相当するもの)に対しても一切適用されず、今後14年またはそれ以下の期間について、王国内において、あらゆる「新規製造の態様」を独占的に実施または製造する特権を、当該製造物の真正かつ最初の発明者に付与することを定め、これを宣言し、制定する。ただし、当該特許状の発行または付与の時点において、他者が当該製造物を使用していてはならず、国内における商品の価格が上昇されたり、取引を阻害したり、その他一般的な不都合を生じさせることにより、法律に反したり、国家に損害を与えてはならないものとする。

 

 この専売条例は、コモンローを成文化したものであり、特許を受けることができる発明に関して、約400年にわたるイギリスの司法解釈の基礎となるものである。ただし、イギリス連邦を構成する国々の中でも、特にオーストラリアおよびニュージーランドでは、特許を受けることができる発明に関する重要な規定を独自に追加している。

 

 新法第15条及び第16条は、特許を受けることができない発明について、以下の通り規定している。

 (i商業的利用が公序良俗に反する発明

 (ii)人間およびその産生のための生物学的方法

 (iii)人間を診断する方法

 (iv)植物品種

 さらに、新法第11条は、コンピュータプログラムを、ニュージーランドにおける特許を受けることができる発明から除外している。

 

2.発明の特許性

2-1. 公序良俗に反する発明

 商業的理由が公序良俗に反する発明に関するクレームは、認められない。

 ニュージーランド知的財産庁(Intellectual Property Office of New Zealand :IPONZ)が発行した特許審査基準によると、発明の利用が犯罪行為、不道徳または反社会的行為を助長することが想定される発明については、特許は付与されない。公序良俗に反するとみなされるものは、社会情勢の変化により変わるものであるが、審査官自身の個人的信条で判断してはならない。

 人間のクローンを作成する方法、または人間の生殖細胞について遺伝的同一性を改変する方法に関するクレームは認められない。工業的または商業的目的におけるヒト胚の使用に関するクレームは認められない。また、動物の遺伝的同一性を改変する方法に関するクレーム、または、こうした方法により生じる動物である発明に関するクレームは認められない。

 

2-2.生物学的材料

 遺伝子を改変または組み換えされた植物および人間以外の動物は、自然に発生した生物学的材料がクレームの範囲に含まれないことを条件として、特許を受けることができる主題であるとされている。

 人間およびその産生のための生物学的方法は、特許性から除外されている。また、無傷ヒト細胞(intact human)またはヒト全能幹細胞を含むクレームは認められない。

 微生物学的方法および当該方法による生成物、ならびに微生物自体は、特許を受けることができる。また、遺伝子配列は特許を受けることができる。

 

2-3.医薬品および化学組成物

 医薬品および化学組成物は、特許を受けることができる。

 

2-4.既知の物質の新規医療用途

 病気の治療用途として既に知られている化合物の第二以降の用途(「第二用途」)に関する発明は、そのクレームが、以下のようなスイスタイプの形式で作成されていることを条件として、特許を受けることができる。

 病気Yの治療用の薬剤製造のための化合物Xの使用

 

2-5.治療方法

 人間以外の動物に対する処置方法は特許を受けることができる。

 しかし、人間に対する治療方法または人間に対する診断方法を含むクレームは、特許を受けることができない。

 人間の治療方法に関する特許クレームが拒絶された場合、「スイスタイプ」クレームに補正する必要がある。

 

2-6.植物品種

 植物品種については、特許を受けることはできないが1987年植物品種権法に基づいて保護を受けることができる。植物品種法は、菌類を含むすべての植物に適用される。藻類および細菌は、植物とはみなされない。なお植物品種権法に基づく保護は、特許法による保護と同じように、登録された特定の植物品種を業として育成することができる権利(育成者権)を定めるものである。

 

 コンピュータプログラムとビジネス方法の取り扱いについて、【その2】で説明する。

アフリカ知的所有権機関(OAPI)における知的財産権関連制度の運用実態

日本とインドにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件

平成19年3月31日以前に出願された特許出願であるか、平成19年4月1日以降に出願された特許出願であるかによって、時期的要件が異なる。

平成19年3月31日以前に出願された特許出願については、下記の(1)の時または期間内であれば分割出願することができる。

平成19年4月1日以降に出願された特許出願については、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。

(1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)

なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。

(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)

(ii)審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)

(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号

(iv)拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)

 

(2)特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)

(i)前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)

(ii)審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定

 

なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。

 

(3)最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)

(3)に規定する3ヶ月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。

条文等根拠:特許法第44条

 

日本特許法 第44条 特許出願の分割

特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一または二以上の新たな特許出願とすることができる。

一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内にするとき。

二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定および第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から30日以内にするとき。

三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から3月以内にするとき。

2~4(略)

5 第1項第2号に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により同条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

6 第1項第3号に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。

 

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インドにおける特許出願の分割出願の時期的要件

・特許付与前であれば、いつでも分割出願を行うことができる。

出願人は、自発的に分割出願を行うこともできるし(特許法第16条(1))、単一性違反の拒絶理由(特許法第10条(5))を解消するために分割出願を行うこともできる。

条文等根拠:特許法第10条(5)、第16条

 

インド特許法 第10 明細書の内容

(5)完全明細書の1または2以上のクレームは、単一の発明、または単一の発明概念を構成するように連結した一群の発明に係るものとし、明確かつ簡潔であり、また、明細書に開示された事項を適正に基礎としなければならない。

 

インド特許法 第16 出願の分割に関する命令を発する長官権限

(1)本法に基づいて特許出願を行った者は、特許付与前にいつでもその者が望む限り、または完全明細書のクレームが2 以上の発明に係るものであるとの理由により長官が提起した異論を除くために、最初に述べた出願について既に提出済みの仮明細書または完全明細書に開示された発明について、新たな出願をすることができる

(2)(1)に基づいて新たにされる出願には、完全明細書を添付しなければならない。ただし、当該完全明細書には、最初に述べた出願について提出された完全明細書に実質的に開示されていない如何なる事項も、一切包含してはならない。

(3)長官は、原出願または新たにされた出願の何れかについて提出された完全明細書に関して、これら完全明細書の何れも他の完全明細書にクレームされている何れかの事項のクレームを包含しないことを確実にするために必要な補正を要求することができる。

説明--本法の適用上、新たにされた出願およびそれに添付された完全明細書については、最初に述べた出願がされた日に提出されたものとみなし、また新たにされた出願については、独立の出願としてこれを取り扱い、所定の期間内に審査請求が提出されたときに審査する。

 

日本とインドにおける特許分割出願に関する時期的要件の比較

日本 インド
分割出願の時期的要件(注) 補正ができる期間 特許付与前まで

(注)査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較

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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における分割出願の要件については、下記のとおりである。

分割出願の時期的要件および出願人による自発的な分割可否に関する各国比較

分割出願の可否(出願から審査請求まで) 分割出願の可否(審査請求から最初の指令書(拒絶理由通知などの通知)まで) 分割出願の可否(最初の指令書~査定まで) 出願人による自発的な分割の可否
JP 指令書応答期間のみ

BR
CN
HK ○*
ID
IN
KR 指令書応答期間のみ
MY 審査報告書郵送から3ヶ月
PH ○**
RU
SG
TH × × 分割指令発行から120日 ×
TW
VN

(*)香港の標準特許出願に対応する指定特許出願の分割についての可否

(**)単一性違反の指令後の非選択発明についての分割は、その指令書発行から4ヶ月以内または4ヶ月を超えない範囲で認められる追加の期間内