中国における商標事件の管轄および法適用の問題に関する解釈の公布
【詳細】
商標事件を正しく審理するために、2014年4月10日、最高人民法院は「最高人民法院による商標法改正の施行後における商標事件の管轄および法適用の問題に関する解釈」を公布した。本司法解釈は9つの条文があり、2014年5月1日より施行された。
本司法解釈は、2013年8月30日に第12回全国人民代表大会常務委員会第4回会議で許可された「中華人民共和国商標法の改正に関する決定」および改めて公布された「中華人民共和国商標法」、「中華人民共和国民事訴訟法」、「中華人民共和国行政訴訟法」などの法律規定に基づいて制定されたものである。
本司法解釈では、国家工商行政管理総局 商標評審委員会が下した不服審判決定または裁定を不服とする行政不服事件、国家工商行政管理総局が下した商標その他の具体的行政行為を不服とする事件、商標権の帰属を巡る係争事件など13種類の案件について、人民法院(日本における裁判所に相当)が管轄する、と提示されている。
本司法解釈の規定によれば、商標評審委員会が下した不服審判決定または裁定を不服とする行政事件および国家工商行政管理総局商標局が下した商標に係る拒絶査定等の国家工商行政管理総局商標局による行政行為を不服とする事件の場合、北京市第一中級人民法院が管轄する。第一審の商標民事案件については、中級以上の人民法院および最高人民法院が指定した基層人民法院が管轄する。著名商標の保護に係る民事、行政事件の場合は、省、自治区の人民政府所在地の市、計画単列市、直轄市轄区の中級人民法院および最高人民法院が指定したその他の中級人民法院が管轄する。
本司法解釈では、「中華人民共和国商標法の改正に関する決定」が施行される前に受理された商標事件について、商標局および商標評審委員会は同決定の施行後において決定または審決を下し、当事者が行政訴訟を提起し、人民法院が、当該決定又は審決が商標法の審査期限に関する規定に適合するか否かを認定するときには、改正施行決定の日から当該審査期限を計算しなければならないと示されている。
本司法解釈では、別途定めがある場合を除き、「中華人民共和国商標法の改正に関する決定」の施行後において人民法院が受理した商標民事事件で、当該決定の施行前に発生した行為に係る場合、改正前の商標法の規定が適用され、当該決定の施行前に発生し、該決定の施行後まで持続する行為の場合、改正後の商標法の規定が適用される、と強調している。
「最高人民法院による商標法改正の施行後における商標事件の管轄および法適用の問題に関する解釈」(2014年2月10日最高人民法院審判委員会第1606次会議で決議)全文訳は以下の通り。
法解釈〔2014〕4号
中華人民共和国最高人民法院公告
「最高人民法院による商標法改正の施行後における商標事件の管轄および法適用の問題に関する解釈」は2014年2月10日に最高人民法院審判委員会第1606次会議での許可により公布され、2014年5月1日より施行開始する。
最高人民法院
2014年3月25日
正しく商標事件を審理するために、2013年8月30日第12回全国人民代表大会常務委員会第4次会議で認可された《最高人民法院による商標法改正の施行後における商標事件の管轄および法適用の問題に関する解釈》および改めて公布される《中華人民共和国商標法》、《中華人民共和国民事訴訟法》および《中華人民共和国行政訴訟法》などの法律規定に基づき、人民法院の審理する商標案件の管轄と法適用等についての問題を、以下のように解釈を制定する。
第1条
人民法院は以下の商標案件を管轄する:
- 国務院工商行政管理部門商標評審委員会(以下「商標評審委員会」と略称)が下した決定あるいは裁定に不服である行政案件
- 工商行政管理部門が下した商標についての具体的行政行為が不服である案件
- 商標専用実施権の帰属を巡る係争案件
- 商標専用実施権侵害を巡る係争案件
- 商標専用実施権不侵害の確定を巡る係争案件
- 商標専用実施権および譲渡契約を巡る係争案件
- 商標使用許諾契約を巡る係争案件
- 商標代理契約を巡る係争案件
- 訴訟前に商標専用実施権侵害の停止を申請する案件
- 訴訟前における商標専用実施権侵害の停止の申請による損害責任事件
- 商標係争による訴訟前に財産保全を申請する事件
- 商標係争による訴訟前に証拠保全を申請する事件
- その他の商標事件
第2条
商標評審委員会が下した不服審判決定または裁定を不服とする行政事件および、国家工商行政管理総局商標局(以下、商標局と称する)が下した商標に係る具体的行政行為に関する事件は、北京市関連中級人民法院が管轄する。
第3条
第一審の商標民事案件については、中級以上の人民法院および最高人民法院が指定した基層人民法院が管轄する。
著名商標の保護に係る民事、行政案件の場合は、省、自治区の人民政府所在地の市、計画単列市、直轄市轄区の中級人民法院および最高人民法院が指定したその他の中級人民法院が管轄する。
第4条
工商行政管理機構が商標権侵害行為を取り締まる際に、当事者が関連商標について商標権の帰属または商標専用実施権侵害を巡る民事訴訟を提起する場合、人民法院は管轄しなければならない。
第5条
商標法改正決定の施行前に提出された商標登録および更新登録請求につき、商標局が施行後に該商標出願を受理しない、または更新登録しない旨の決定を下し、当事者が行政訴訟を提起した場合、人民法院は審査時に改正後の商標法を適用する。
商標法改正決定の施行前に提出された商標異議申立てについて、商標局が施行後に該異議申立てを受理しない旨の決定を下し、当事者が行政訴訟を提起した場合、人民法院は審査時に改正前の商標法を適用する。
第6条
商標法改正施行前に当事者が許可登録されていなかった商標出願につき、不服審判を請求し、商標評審委員会が施行後に不服審判決定または裁定を下し、当事者が行政訴訟を提起した場合、人民法院は審査するときに改正後の商標法を適用する。
商標法改正施行前に受理した商標不服審判請求について、商標評審委員会が施行後に許可登録の決定を下し、当事者が行政訴訟を提起した場合、人民法院はそれを受理しない。商標評審委員会が施行後に許可登録をしない決定を下し、当事者が行政訴訟を提起した場合、人民法院は訴権および主体資格に関する問題を審査するときに改正前の商標法を適用する。
第7条
商標法改正施行前に既に許可登録された商標につき、商標評審委員会が施行前に受理し、施行後に不服審判決定または裁定を下し、当事者が行政訴訟を提起した場合、人民法院は関連手続き問題を審査するときに改正後の商標法を適用し、実体問題を審査するときに改正前の商標法を適用する。
第8条
商標法改正決定が施行される前に受理された関連商標事件について、商標局および商標評審委員会は同決定の施行後において決定または裁定を行い、当事者が行政訴訟を提起し、人民法院が当該決定または裁定が商標法の関連審査期限に関する規定に適合しているか否かを認定する場合、改正決定の施行日より起算して当該審査期限を算出しなければならない。
第9条
本解釈に別途規定がある場合を除き、商標法改正施行後に人民法院の受理した商標民事案件が、該当施行前に発生した行為に係る場合には、改正前の商標法の規定を適用する。該当施行前に発生し、該当施行後まで持続した行為に係る場合には、改正後の商標法の規定を適用する。