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シンガポールにおける商号保護

【詳細】

(1)会社法および商業登記法による規定

 下記の場合、シンガポール会社法および商業登記法に基づき、それぞれ会社登記官および商業登記官に対して、特定の企業または事業に名称の変更を命じるよう求める申立を提出することができる。

 

(i)当該名称が他の商号と同一である場合(会社法第27条(1)(b)/商業登記法第13条(1)(b))。

(ii)当該名称がいずれかの商号に「極めて類似している」ため、「今度を生じる可能性がある」場合(会社法第27条(2)(b)/商業登記法第13条(4)(b))。

 

 シンガポール会計企業規制庁(Accounting and Corporate Regulatory Authority :ACRA)のガイドライン第10項(iii)は、被申立人に関する下記の詳細を申立書に記載しなければならないと定めている。

 

・名称

・事業登記番号

・住所(分かる場合)

・事業の種類

・申立の根拠、すなわち当該名称がどのように類似しているか、または混同を生じているかの説明

・混同の証拠(ある場合)

 

 類似の名称に関する申立は、被申立人が設立あるいは登記された日付から12ヶ月以内に提出しなければならない(会社法第27条(2A)/商業登記法第13条(6))。同一の名称については、申立期限はない。

 

 名称が同一であるか否かを判断する場合、下記の用語は無視される:「The」、「Private」、「Pte」、「Sendirian」、「Sdn」、「Limited」、「Ltd」、「Berhad」、「Bhd」、「Limited Liability Partnership」、「LLP」、「company」、「and company」、「corporation」、「Incorporated」、「Asia」、「Asia Pacific」、「International」、「Singapore」、「South Asia」、「South East Asia」および「Worldwide」(会社(同一名称)規則の規則2(a)/2009年商業登記(同一名称)規則の規則2(a))

 

 ACRAのガイドライン第4項は、下記の通り定めている。

 

 「特定の名称が登記簿上の既存の名称と似ており、別の名称と混同を生じる可能性があるか否かを判断する場合、ACRAは、類似の用語が同じ順序で使用されているか否か、識別力のある用語が含まれるか否か、さらに関連する事業の種類といった要素を考慮に入れる。類似の名称の例として、「PQRS Confectionery」と「PQRS Bakery」が挙げられる。二つの名称を比較する際、ACRAは辞書に示された共通の用語も考慮すると共に、用語のわずかな違いでも混同を回避するのに十分と判断する場合もある。」

 

(2)商標法による規定

 シンガポール商標法第55条(4)に基づき、周知商標の所有者は,全部またはその重要な部分が自己の商標と同一または類似の事業標章を使用することが次に該当する場合は、その事業標章を無許可で業としてシンガポールにおいて使用することを、差止命令により禁止する権利を有する。

 

(a)それが使用される事業と周知商標の所有者との関係を示す可能性があり、かつ、当該所有者の利益を害するおそれがある場合、または

(b)当該所有者の商標がシンガポールおいて国民全体に知られている場合には、

 (i)当該所有者の商標の識別性のある特徴を不当な方法で損なう可能性がある場合、または

 (ii)当該所有者の商標の識別性のある特徴を不当に利用する可能性がある場合

 

 しかし、所有者の商標がシンガポールにおいて周知となる前に使用が開始されていた商標または事業標章の場合は、当該商標または事業標章が悪意で使用されていない限り、所有者は上記の規定に依拠してその使用を禁じることはできない(商標法第55条(6))。

 

 さらに、所有者がシンガポールにおける当該商標または事業標章の使用を知りながら、連続する5年間にわたり黙認していた場合は、当該商標または事業標章が悪意で使用されていない限り、所有者は商標法第55条(4)に基づく自己の権利を行使することはできない(商標法第55条(7))。