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シンガポールにおける商標出願の拒絶理由通知に対する応答

【詳細】

(1)絶対的理由に基づく拒絶理由に対する応答

 商標の定義を満たさない標識、識別性のない標章、記述的な標識もしくは表示だけで構成される標章、および取引上の普通名称である標識からなる標章は、登録されない(商標法第7条(1))。

 商品の性質の結果である形状、技術的成果を得るために必要な形状、または商品に実質的価値を与える形状は、登録されない(商標法第7条(3))。

 地理的表示で構成される標章、およびその場所を原産地としないワインまたは蒸留酒に使用される、または使用が意図される標章は、登録されない(商標法第7条(7))。

 公序良俗に反する、もしくは誤認を生じる標章は登録されない(商標法第7条(4))。

シンガポールにおいて法律により使用が禁じられている標章は登録されない(商標法第7条(5))。

悪意で出願された標章(商標法第7条(6))は、登録されない。

 

 出願人は、絶対的拒絶理由に基づく拒絶に対して応答書を提出することができる。提起された特定の拒絶理由に応じて、当該標識の登録可能性または当該標章の本来的識別性などに関する意見書を提出できる。世界の他の国で出願人の標章が承認または登録を受けている場合、これらの対応する標章の証拠を提出することもできる。シンガポール知的財産庁(IPOS)は、英国、米国、香港、欧州連合およびオーストラリアにおける登録または承認を重要視する傾向がある。これらの国や地域の先例は、有力な情報と見なされる傾向があるが、拘束力はない。

 

 また、標章が識別性を欠いている、または記述的であるという理由で拒絶された場合、当該標章が使用を通じて後天的識別性を獲得していると主張する応答書を提出することができる。その際、裏づけとなる証拠を提出しなければならない。審査官は、シンガポールにおける指定商品または役務に関する当該標章の出願前の使用のみを考慮する。このような証拠は、法定宣誓書の形式で提出しなければならない。

 

 一部の指定商品または役務を削除することで、出願人が拒絶理由を克服できる可能性がある場合、出願人は応答書においてかかる商品または役務の削除を提案することができる。

 

 特定の国、都市、政府機関、社会、法定機関、団体または人を含む、いずれかの機関や団体の名称、頭文字、旗章または紋章などと類似しているという理由で、標章が拒絶された場合(商標法第56条および第57条)、IPOSは、その機関や団体の同意書が提出される場合に限り、当該標章の登録を許可する。

 

(2)相対的理由に基づく拒絶理由に対する応答

 先の標章と類似または同一であり、先の標章が付される商品と類似または同一の商品を指定する標章は、公衆に混同を生じる可能性がある場合には、登録されない(商標法第8条(1)および(2))。

 

 相対的拒絶理由に対する応答書は、出願標章と引例標章との区別を示す意見書として提出することができる。他の国、特に英国、香港、米国、欧州連合およびオーストラリアの登録簿における共存の証拠は、審査官に対する拘束力はないが、多少なりとも重要視される。

 

 さらに出願人は、指定商品または役務が類似しないように、商品または役務を限定する提案を行うこともできる。

 

 もう一つの方法は、先の標章の所有者から出願に対する同意を得ることである。ただし審査官は同意書にかかわらず、引例を維持する裁量権を有するため、出願人が所有者からの同意を得ようとする際には、同意書があれば引例を放棄するという審査官の確認を得ておいた方がよい。また、先の標章の所有者に連絡を取ることは、その所有者が出願に同意しないリスクだけでなく、結果的に承認および公告された出願に対して異議を申し立てるリスクも伴う。

 

 出願日より前に指定商品または役務に関してシンガポールで出願標章が使用されていた場合、当該標章の正当な同時使用が行われていたことを証明する証拠を応答の際に提出することができる。この証拠は、法定宣誓書の形式で提出しなければならない。

 

(3)明細書中の誤記

 シンガポールは、ニース国際分類を採用している。標章の指定商品および役務は、ニース国際分類に適合していないと審査官が判断する場合、拒絶理由が通知される。

 出願人は、下記の方法で応答することができる。

(i)審査官により提案された補正案(ある場合)を受け入れる

(ii)指定商品もしくはサービスの説明または補正案を審査官に提出する

(iii)拒絶理由が通知された指定商品または役務は、ニース国際分類に基づく種目と類似または同様のものであると主張する

 

 出願人が指定商品もしくは役務の維持または補正案を主張する場合、シンガポール、英国、オーストラリア、香港、ニュージーランドおよび米国の先例は多少なりとも重要視される可能性があるため、これらの国の先例を強調することができる(通達第3/2014号)。ただし、これらの国の先例は審査官に拘束力を及ぼすものではない。全ての出願は、個別に審査される。

 

 指定商品あるいは役務が間違って分類されているという理由で、審査官が拒絶した場合、正しい区分への変更が認められるのは、まず正しい区分も出願に含まれており、次に正しい区分の明細に変更すべき種目が包含されている場合だけである。これにより、区分の変更による出願当初の指定商品や役務の拡大を防ぐことができる

シンガポールにおける「商標の使用」の定義と証拠【その2】

シンガポールにおける「商標の使用」の定義と証拠【その1】