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インドネシアにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 インドネシアにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。権利期間は延長できない(インドネシア特許法第22条(1)および(2) )。
 なお、以下、本記事の根拠規定の表示において、単に「特許法」とある場合は、本記事末にある【ソース】に紹介する「インドネシア特許法(2016年法律第13号)および解説(英語または日本語)」を参照し、「2024年特許法」とある場合は、同じく【ソース】に紹介する「インドネシア特許法改正法(2024年法律第65号)および解説(インドネシア語または日本語)」を参照されたい。

1-2. 年金の納付期限
 年金の納付手続は、出願の審査中には発生せず、特許が付与されてから発生する。出願に対して特許が付与されると、出願日から起算した初年度分から特許が付与された年の翌年分までの年金を特許付与日から6か月以内に納付しなければならない。この特許付与時の納付年金を累積年金と言う(*下記参照)。累積年金の納付後の各年の年金は、毎年の出願日に対応する日の1か月前までに、次年度分を納付しなければならない(2024年特許法第126条(1)から(3)、およびこれに添付の「解説」の「II.逐条解説」第126条の説明参照)。

*累積年金とは、一般的には、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年度から査定された年度までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年度から査定された年度の次の年度の分までを納付することになる場合もある。インドネシアにおける累積年金の納付に関する規定には、納付時期等やや異なる面もあり、詳細は上記のとおりである。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 納付期限日までに年金が納付されなかった場合、権利は取消となる(2024年特許法第128条(1)))。なお、期限までに年金を納付しなかった場合、6か月間の猶予期間が与えられるが、未納付に係る年金に対し100パーセントの罰金(倍額納付)が科される(2024年特許法126条(4))。なお、非常事態が生じたことにより納付期限を徒過した場合は、特許権者は緊急事態の期間終了後の3日の期間内に年金を納付することができる(特許出願に関するインドネシア共和国法務・人権省令 2018年第38号)第101条)。

1-4. 権利回復制度
 商務裁判所の判決に基づいて行われる場合を除き、インドネシアには、失効した特許権に対する権利回復手続は原則ない(特許法第141条)。

1-5. 年金の誤納
 実務上、意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額以上の額を誤って納付した場合にも、一度納付した年金は返還されないことがあるため注意されたい。

1-6. その他
 年金の納付金額は、請求項の数により変動する(インドネシア知的財産総局(以下、「知的財産総局」という。)サイト内 料金表)。年金の納付は、特許権者または代理人により行うことができるが、特許権者がインドネシア共和国内に住所または居所を有さない場合は、インドネシア在住の代理人により行われなければならない(特許法第127条(1)、(2))。

 上記の通り、年金納付期限日または猶予期間経過までに年金が納付されない場合、特許権は取消となるが、権利の取消を求める内容の法務人権大臣宛の書面を知的財産総局に提出することにより、自発的に権利の放棄を行うことも可能である(特許法130条(a)、131条(1))。特許権者の申立てによる権利の取消の場合も、特許法141条が適用されるため、特許権の権利回復手続は、原則ない。

 登録後の年金は、旧法においては、連続して3年間納付しなかった場合に初めて権利が消滅し、その間の年金は負債として残るという制度であったが、2016年のインドネシア特許法の改正により、1年度分だけでも納付されなかった場合には権利が消滅する制度となった。

なお、2024年特許法128条(1)は、納付期限までに特許年金の納付がなかった場合は、「取消しが宣言される(dinyatakan dihapus)」と規定しており(旧法から変更なし)、日本の特許法第112条5項または6項のように、期限までに納付しなかった場合に遡って権利が消滅した又は初めから権利が存在しなかったものとみなされるという規定になっていないため、納付期限経過後も権利が消滅せず、年金債務が発生する可能性があるという点は注意する必要がある。また、権利消滅後も既に発生した年金債務(未納分)については支払義務があるところ、完納しない限り当該権利者の新規の出願が処理されないという事態が発生している。2024年特許法も、権利消滅後の既発生の未納年金債務について特段の規定を設けていないため、今後も同様の事態が発生する可能性があることに注意が必要である。

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 実用新案権の権利期間は、出願日から10年である。権利期間の延長はできない(特許法第23条(1)および(2))。

2-2. 年金の納付期限
 特許法121条により、原則として同法の特許に関する規定は実用新案権にも準用されることから、年金に関する規定は、特許権の場合と同じである。年金の納付手続は、出願の審査中には発生せず、実用新案権が付与されてから発生する。出願が登録を受けると、出願日から起算した初年度分から実用新案権が付与された年の翌年分までの年金(累積年金)を実用新案付与日から6か月以内に納付する必要がある(2024年特許法第126条(1)、(2))。累積年金の納付後の各年の年金は、毎年の出願日に対応する日の1か月前までに、次年度分を納付しなければならない(同条(3))。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 追納に関する規定は、特許と同様である(特許法第128条)。

2-4. 権利回復制度
 特許権と同様、商務裁判所が決定した場合を除き、取消された実用新案権に対する権利回復の手続は原則ない(特許法第141条)。

2-5. 年金の誤納
 実務上、意図しない実用新案権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額以上の額を誤って納付した場合であっても、一度納付した年金は返還されないことがあるため注意されたい。

2-6. その他
 年金の金額は請求項の数により変動する(知的財産総局サイト内 料金表)。年金の納付は、実用新案権者または代理人により行うことができるが、実用新案権者がインドネシア共和国内に住所または居所を有さない場合は、インドネシア在住の代理人により行われなければならない(特許法第127条(1)、(2))。

 上記の通り、年金納付期限日または猶予期間経過までに年金を納めない場合、実用新案権は取消されるが、権利を放棄したい旨を記した法務人権大臣宛の書面を知的財産総局に提出することにより、自発的に放棄を行うことも可能である。書面提出による権利放棄の場合も、実用新案権の権利回復手続は原則ない。

3. 意匠権
3-1. 存続期間
 意匠権の権利期間は、出願日から10年である(インドネシア意匠法第5条(1))。権利期間の延長に関する規定はない。

3-2. 年金の納付期限
 インドネシアにおいて意匠権を維持するための年金納付に関する規定はなく、納付の必要はない。

3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 該当なし。

3-4. 権利回復制度
 該当なし。

3-5. 年金の誤納
 該当なし。

3-6. その他
 意匠権者が権利を放棄したい場合は、意匠登録の取消を求める旨を記載した書面を知的財産総局に提出することにより、自発的な放棄が可能である(インドネシア意匠法37条(1)、43条)。意匠法には権利回復に関する規定が設けられていない。

日本と香港における意匠権の権利期間および維持に関する比較

1. 日本における意匠権の権利期間
 日本における意匠権の権利期間は、出願日から最長25年をもって終了する(意匠法第21条第1項)。ただし、平成19年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から15年間、平成19年4月1日から令和2年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から20年間である。

 なお、関連意匠の意匠権の権利期間は、その基礎意匠の出願日から25年である(意匠法第21条第2項)。ただし、本意匠および関連意匠の双方が、平成19年3月31日以前の出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から15年間であり、本意匠が平成19年3月31日以前の出願で、関連意匠が平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から20年間である。

 権利維持を希望する場合は、登録日を年金納付起算日として、2年次分から毎年、年金を支払う必要がある(意匠法第42条第1項、第43条第2項)。

日本意匠法第21条 存続期間
意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録の出願の日から25年をもって終了する。
2 関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から25年をもって終了する。

 意匠法第42条および第43条は、省略(【ソース】の「日本国意匠法」を参照されたい。)。

2. 香港における意匠権の権利期間
 香港における意匠権の権利期間は、出願日から最長25年をもって終了する(香港意匠条例第28条第1項、第2項)。

 なお、最長25年までの権利維持を希望する場合には、出願日を起算日として、5年ごと(5、10、15、20年次の満了前3か月以内)に年金を支払う必要がある(香港意匠条例第28条第3項)。

香港意匠条例 第28条 登録の存続期間
登録の存続期間
(1) 意匠登録の最初の存続期間は、登録出願の出願日に始まる5年間である。
(2) 意匠登録の存続期間は、各5年の期間追加延長することができる。ただし、登録の全期間が登録出願の出願日に始まる25年を越えることはできない。
(3) 登録意匠の所有者が更に5年間の登録期間の更新を希望する場合は、所定の年金を、現在の登録期間の終了前に納付しなければならない。ただし、現在の登録期間の終了日の直前3月より前であってはならない。
(4) (3)に定める年金納付がされない場合は、当該意匠登録は、現在の登録期間終了時に効力を失うものとする。
(5) (4)に定める期間終了の直後6月の期間内に、年金および所定の追徴金が納付される場合は、当該意匠登録は、効力を失わなかったものとして取り扱われ、したがって、
(a) 当該期間中所有者によりまたは当該人の同意を得て、当該意匠に係る権利に基づきもしくは関してなされる事柄は、効力を有するものとみなされ、
(b) 登録が効力を失っていなかったならば意匠の侵害を構成したであろうと考えられる行為は、かかる侵害を構成するとみなされ、また
(c) 登録が効力を失っていなかったならば当該意匠の政府使用を構成したであろうと考えられる行為は、政府使用を構成するとみなされる。

 日本と香港における意匠権の権利期間および維持に関する比較

日本香港
権利期間出願日から25年出願日から最長25年
権利維持登録日を年金納付起算日として、2年次分から毎年、年金の支払い要出願日を起算日として、5年ごと(5、10、15、20年次の満了前3か月以内)に年金の支払い要

日本とベトナムにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較

1. 日本における意匠権の権利期間
 日本における意匠権の権利期間は、出願日から最長25年をもって終了する(意匠法第21条第1項)。ただし、平成19年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から15年間、平成19年4月1日から令和2年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から20年間である。

 なお、関連意匠の意匠権の権利期間は、その基礎意匠の出願日から25年である(意匠法第21条第2項)。ただし、本意匠および関連意匠の双方が、平成19年3月31日以前の出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から15年間であり、本意匠が平成19年3月31日以前の出願で、関連意匠が平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から20年間である。

 権利維持を希望する場合は、登録日を年金納付起算日として2年次分から毎年、年金を支払う必要がある(意匠法第42条第1項、第43条第2項)。

日本意匠法 第21条 存続期間
意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録の出願の日から25年をもって終了する。
2 関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から25年をもって終了する。

 意匠法第42条および第43条は、省略(【ソース】の「日本国意匠法」を参照されたい。)。

2. ベトナムにおける意匠権の権利期間
 ベトナムにおける意匠権の権利期間は、出願日から5年の終りに満了となるが、5年を単位として2回の更新が可能であり、出願日から最長15年をもって終了する(ベトナム知的財産法第93条(4))。

 最長15年までの権利維持を希望する場合には、出願日を年金納付起算日として5年ごと(5、10年次の満了前6か月以内)に年金および手数料を支払う必要がある(知的財産法第93、94条、知的財産法に関する政令第65/2023/ND-CP号(以下「政令」という。)第31条(1),(2))。5年次まで、および10年次までの存続期間が満了する6か月前から満了日までの間に、次の5年分の存続期間の更新申請手続を行うことができる。期限徒過後6か月以内であれば、追加申請料を納付することを条件に更新可能である(政令第31条(3))。

ベトナム知的財産法 第93条 保護証書の効力
(4) 工業意匠特許は、付与日に始まり出願日から5年の終りに満了し、5年を単位とする2連続期間更新可能な効力を有する。
((1)から(3)、(5)から(9)省略)
ベトナム知的財産法 第94条 保護証書の効力の維持および更新
(2) 工業意匠特許または商標登録証の効力を更新させるためには、その所有者は、効力更新の手数料、料金を納付しなければならない。
(3) 保護証書の手数料、料金ならびに維持および更新の手続は、政府がこれを規定する。
((1)省略)
知的財産法に関する政令第65/2023/ND-CP号 第31条
(1) 工業意匠登録証は、1回の更新につき5年間効力を発揮し、最大2回まで更新することが可能である。保護される工業意匠に複数のバリエーションがある場合、基本バリエーションを含む全部または一部のバリエーションに対して登録証の更新を行うことが可能である。(以下省略)
(3) 保護証書の効力の更新に関する請求書類、更新請求にかかる審査手数料、更新手数料、保護証書使用料、登記手数料および保護証書の効力更新決定の公表にかかる手数料に関して、当該工業意匠登録証、商標登録証の所有者は、工業意匠登録証、商標登録証における有効期間終了前6か月以内に(*)国家知的財産庁に提出すること。当該請求は、上記の所定期間後でも提出することが可能であるが、保護証書の有効期間の終了日から6か月を超えてはならないほか、保護証書の所有者は、料金・手数料に関する法律の規定に従って、遅延した月ごとに罰金を納付すること。
((2)、(4)省略)
(*)この提出期間は、稿末【ソース】の(ベトナム語)の記載に従うものである。

 日本とベトナムにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較

日本ベトナム
権利期間出願日から25年出願日から最長15年
権利維持登録日を年金納付起算日として2年次分から毎年、年金の支払い要出願日を年金納付起算日として、5年ごと(5、10 年次の満了前6か月以内)に年金の支払い要

日本とインドネシアにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較

1. 日本における意匠権の権利期間
 日本における意匠権の権利期間は、出願日から最長25年をもって終了する(意匠法第21条第1項)。ただし、平成19年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から15年間、平成19年4月1日から令和2年3月31日までに出願された意匠権は、設定登録日から20年間である。

 なお、関連意匠の意匠権の権利期間は、その基礎意匠の出願日から25年である(意匠法第21条第2項)。ただし、本意匠および関連意匠の双方が、平成19年3月31日以前の出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から15年間であり、本意匠が平成19年3月31日以前の出願で、関連意匠が平成19年4月1日から令和2年3月31日までの出願の場合は、関連意匠の意匠権の権利期間は、その本意匠の意匠権の設定登録日から20年間である。

 権利維持を希望する場合は、登録日を年金納付起算日として2年次分から毎年、年金を支払う必要がある(意匠法第42条第1項、第43条第2項)。

日本意匠法 第21条 存続期間
意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録の出願の日から25年をもって終了する。
2 関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から25年をもって終了する。

 意匠法第42条および第43条は、省略(【ソース】の「日本国意匠法」を参照されたい。)。

2. インドネシアにおける意匠権の権利期間
 インドネシアにおける意匠権の権利期間は、出願日から最長10年をもって終了する(インドネシア意匠法第5条)。登録時には登録料の納付手続はなく、登録証が発行される。登録証は、出願日から有効となる(インドネシア意匠法第29条(2))。

 権利期間の間に、年金納付や更新などの意匠権を存続させるための手続はない。

インドネシア意匠法 第5条
(1) 意匠の保護は、出願日から10年間与えられる。
(2) (1)の規定における保護の開始日は、意匠一般登録簿に記録され、意匠公報により公開される。

 インドネシア意匠法第29条は、省略(【ソース】の「インドネシア意匠法」を参照されたい。)。

日本とインドネシアにおける意匠権の権利期間および維持に関する比較

日本インドネシア
権利期間出願日から25年出願日から10年
権利維持登録日を年金納付起算日として2年次分から毎年、年金の支払い要なし(更新不可)

マレーシアにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 マレーシアにおける特許権の権利期間は、特許出願が行われた日によって次のように異なっている。出願日が2001年8月1日を含み同日以降の場合、権利期間は出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である。出願日が2001年8月1日より前の場合は、権利期間は出願日から20年もしくは特許付与日から15年のいずれか長い方となる。権利期間の延長に関する規定はない(マレーシア特許法第35条(1)、(1B)、(1C))。

1-2. 年金の納付期限
 年金の納付義務は、特許の登録後、登録日(特許付与日)を起算日として第2年度分から発生し、特許付与日から2 年およびその後各年の満了日前12か月の間に所定の年金を納付しなければならない (マレーシア特許法第35条 (2))。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 納付期限日までに年金納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば年金の追納が可能である。その場合、所定の年金金額に加えて割増手数料を同時に納付しなければならない(マレーシア特許法第35条(2))。

1-4. 権利回復制度
 追納期間を超えて年金が納付されなかった場合や割増手数料の納付漏れがあった場合、権利は消滅する(マレーシア特許法第35条(3))。年金の未納により権利が消滅した場合は、公報にその旨が掲載されるが、公報に公告された日から12か月以内であれば権利回復の請求を行うことが可能である(マレーシア特許法(2022年改正法)第35条A(1))。権利を回復するには、未納分の年金と割増手数料に加えて回復手数料を納付すること、および登録官に対し、登録官が定めた様式に期限内に年金を納付することができなかった理由等を記しし申請し認定されなければならない(マレーシア特許法(2022年改正法)第35条A(2)、マレーシア特許規則(2022年改正規則) 規則33A(1)およびマレーシア特許規則 規則33A(2))。

1-5. 年金の誤納
 意図しない特許権に対して誤って年金を納付した場合や、所定の納付金額を超えて納付した場合など、納付された年金は返金されない(マレーシア特許規則 規則33(3))。

1-6. その他
 マレーシア国内に居所を有していない者は、マレーシアの特許代理人に年金の納付手続を委任する必要がある。代理人に納付を委任する場合、委任状の提出と手数料の納付が必要となる(マレーシア特許法(2022年改正法)第86条(5)、マレーシア特許規則 規則45Bおよび45C、マレーシア知的財産公社HP 特許料金表 https://www.myipo.gov.my/en/patent-forms-and-fees/)。

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 実用新案権の権利期間は、出願日から10年である(マレーシア特許法第2附則[第17A条]で適用される第35条(1))。なお、期間の満了前に5年の追加期間を求める延長申請を2回提出することができる(マレーシア特許法第2附則[第17A条]で適用される第35条(2))。すなわち、10年および15年の権利期間満了前に、それぞれ5年分の権利期間の延長手続(延長申請および年金納付)を行うことで、最長20年の権利期間を得ることができる。

2-2. 年金の納付期限
 年金の納付義務は、実用新案の登録後、登録日(実用新案証発行日)を起算日として第3年度分から発生し、登録日から3年およびその後各年の満了日前12か月の間に所定の年金を納付しなければならない(マレーシア特許法第2附則[第17A条]で適用される第35条(1A)、(4))。
 延長手続には、権利者の宣誓供述書、当該実用新案が商業上もしくは工業上使用されていることを示すもの、または不使用の事情を十分に説明するものをマレーシア知的財産公社に提出し、延長手数料(年金)を納付しなければならない(マレーシア特許法第2附則[第17A条]で適用される第35条(3))。年金納付期限日は登録応当日である一方、延長手続の期限日は出願応当日である点に注意が必要である。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 特許権と同様に、追納制度がある(マレーシア特許法第2附則[第17A条]で適用される第35条(4)、(5))。

2-4. 権利回復制度
 特許権と同様に回復制度がある(マレーシア特許法第17A条で適用されるマレーシア特許法(2022年改正法)第35条A(1))。

2-5. 年金の誤納
 意図しない実用新案権に対して年金を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額を超えて納付を行った場合など、納付された年金は返金されない(マレーシア特許規則 規則45(3)で適用される規則33(3))。

2-6. その他
 マレーシア国内に本拠も居所も有していない者は、マレーシアの特許代理人に年金の納付手続を委任する必要がある。代理人に納付を委任する場合、委任状の提出と手数料の納付が必要となる(マレーシア特許法第17条A(1)で適用される第86条(5)、マレーシア特許規則 規則45(3)で適用される規則45Bおよび45C、マレーシア知的財産公社HP 特許料金表 https://www.myipo.gov.my/en/patent-forms-and-fees/)。

3. 意匠権
3-1. 存続期間
 意匠権の権利期間は出願日もしくは優先権を主張している場合は優先権主張日から5年である(マレーシア意匠法第25条(1)および第17条)。なお、権利期間の満了前に5年の追加期間を求める延長申請を4回提出することができる(マレーシア意匠法(英語)第25条(2))。すなわち、5年、10年、15年、20年の権利期間満了前にそれぞれ5年分の権利期間の延長手続(延長申請および年金納付)を行うことで、出願日(優先権主張がある場合は優先日)から最長25年の権利期間を得ることができる。

3-2. 年金の納付期限
 年金は延長手続を行う場合に発生する。年金納付期限の起算日は、出願日もしくは優先権を主張している場合は優先権主張日である(マレーシア意匠法第25条(1)および第17条)。延長手続を行う場合は、起算日から5年、10年、15年、20年の権利期間満了前にそれぞれ5年分の権利期間の延長手数料(年金)を支払う必要がある(マレーシア意匠法(英語)第25条(2))。

3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 納付期限日までに延長手数料(年金)納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば延長手数料(年金)の追納が可能である。その場合、未納の延長手数料(年金)に加えて所定の追徴金を同時に納付しなければならない(マレーシア意匠法第25条(3))。追徴金は納付期限日から時間が経過するにしたがって増額する(マレーシア意匠規則 附則1 手数料 第1部 番号2 (規則23)の項目)。

3-4. 権利回復制度
 追納期間を超えて延長申請がされなかった場合または延長手数料が納付されない場合、権利は失効する。年金の未納により権利が失効した場合は、公報にその旨が掲載されるが、公報掲載日から1年以内であれば権利回復の請求を行うことが可能である。権利を回復するためには、延長手続できなかった事情を記した陳述書を提出し、未納分の年金に加えて回復費用、追徴金を納付し、登録官に認定される必要がある(マレーシア意匠法第25条(4)、第26条(1)、マレーシア意匠規則 規則24(1)、マレーシア意匠規則 附則1 手数料 第1部 番号3の項目)。

3-5. 年金の誤納
 意図しない意匠権に対して延長手数料(年金)を誤って納付してしまった場合や、所定の納付金額を超えて納付を行った場合など、納付された延長手数料(年金)は返金されない(マレーシア意匠規則23(5))。

3-6. その他
 延長手数料(年金)の金額は、意匠の数によって変動する(マレーシア意匠規則 附則1 手数料 第1部2の項目)。出願人がマレーシア国内に居住または主要事業所を有しない場合は、代理人を選任し、年金納付手続を委任する必要がある(マレーシア意匠法第14条(2))。延長手数料(年金)の納付はマレーシア国内の法曹資格を有する者であれば可能であるが、代理人に納付を委任する場合、委任状の提出と手数料の納付が必要となる(マレーシア意匠規則 規則32、規則33、マレーシア知的財産公社HP 意匠料金表 https://www.myipo.gov.my/en/industrial-design-form-fees/?lang=en)。

ベトナムにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 ベトナムにおける特許権は登録により発生し、権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(ベトナム知的財産法(以下「知的財産法」という。)第93条第2項)。権利期間の延長制度は存在しない。

1-2. 年金の納付期限
 特許査定が下されると、特許を登録するための要件として、登録許可の通知の日から1か月以内に初年度※1の年金(権利の有効性を維持するための手数料)を登録料とともに納付することが求められる(科学技術省通達(以下「通達」という。)01/2007/TT-BKHCN 15.7 a)(iii))。

 2年度以降の年金は、各年の前年度の満了前6か月以内に納付する(知的財産法第94条第1項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。

※1 ここでの「年度」とは、特許の登録日を起算日とした、年金納付の期限を定める年度をいう。

 ベトナムにおいて恒久的に居住していない外国人は、工業所有権代理人を通して特許手続を行わなければならないので(知的財産法第89条第2項)、日本の出願人は、ベトナムの工業所有権代理人に依頼して年金納付を行う必要がある。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 納付期限までに年金納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば年金の追納が可能である(通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。その場合、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付しなければならない。

1-4. 権利回復制度
 追納期間内に年金納付がされなかった場合、権利は失効する(知的財産法第95条第1項a))。ベトナムには、年金の未納が原因で失効した特許権の権利回復の制度はない。

 上記の通り、追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は失効するが、権利を放棄したい旨をベトナム特許庁に宣言することにより、自主的に放棄を行うことも可能である(知的財産法第95条第1項b))。

1-5. 年金の誤納
 所定の納付金額を超えて年金を納付した場合、返還の請求を行うことができる(通達01/2007/TT-BKHCN 8.3 a))

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 実用新案権※2は登録により発生し、権利期間は、出願日から10年である(知的財産法第93条第3項)。権利期間の延長制度は存在しない。

※2 ここでの実用新案とは、知的財産法第58条第2項で規定される「実用新案特許」をいう。したがって、実用新案の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。

2-2. 年金の納付期限
 登録査定がなされると、実用新案を登録するための要件として、登録許可の通知の日から1か月以内に初年度の年金を登録料とともに納付することが求められる(通達01/2007/TT-BKHCN 15.7 a)(iii))。

 2年度以降の年金は、納付期限日から6か月以内に納付する(知的財産法第94条第1項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。

 ベトナムにおいて恒久的に居住していない外国人は、工業所有権代理人を通して実用新案手続を行わなければならないので(知的財産法第89条第2項)、日本の出願人は、ベトナムの工業所有権代理人に依頼して年金納付を行う必要がある。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納制度は、特許と同じである(通達01/2007/TT-BKHCN 20.3)。

2-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(知的財産法第95条第1項a)、b))。

2-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(通達01/2007/TT-BKHCN 8.3 a))。

3. 意匠権
3-1. 存続期間
 意匠権は登録により発生し、権利期間は、出願日から5年で満了する。ただし、5年を単位として更新を2回行うことができるので、最長で出願日から15年の権利となる(知的財産法第93条第4項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 a))。

3-2. 年金の納付期限
 登録査定がなされると、意匠を登録するための要件として、登録許可の通知の日から1か月以内に登録料(最初の5年分の年金を含む)を納付することが求められる(通達01/2007/TT-BKHCN 15.7 a)(iii)、15.7 c))。

 5年度または10年度に更新手続を行う場合、その手続は、権利の有効期間の満了前6か月以内に行わなければならない(通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 b))。更新手続と同時に更新料(次の5年分の年金を含む)を納付する(知的財産法第94条第2項、通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 c)(iv))。

 ベトナムにおいて恒久的に居住していない外国人は、工業所有権代理人を通して意匠手続を行わなければならないので(知的財産法第89条第2項)、日本の出願人は、ベトナムの工業所有権代理人に依頼して年金納付を行う必要がある。

3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 納付期限までに更新料の納付が行われなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば追納手続が可能である。その場合、所定の更新料に加えて追徴金を同時に納付しなければならない(通達01/2007/TT-BKHCN 20.4 b))。

3-4. 権利回復制度
 追納期間内に更新料の納付がされなかった場合、権利は失効する(知的財産法第95条第1項a))。ベトナムには更新料の未納が原因で失効した意匠権の権利回復の制度はない。

3-5. 年金の誤納
 所定の納付金額を超えて年金を納付した場合、返還の請求を行うことができる(通達01/2007/TT-BKHCN 8.3 a))。

タイにおける特許・実用新案・意匠年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 タイにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(タイ特許法(以下「特許法」という。)第35条)。権利期間の延長制度は存在しない。

1-2. 年金の納付期限
 年金の納付義務は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)を起算日として5年度※1から発生するが、出願が特許査定を受けた場合のみ納付が求められる(特許法第43条第1段落)。したがって、出願から4年以上経過した場合であっても、審査中は年金納付手続は不要である。出願から特許査定まで4年以上を要した場合は、特許査定後に5年度から査定を受けた年までの年金を、特許の付与後60日以内に納付する必要がある(特許法第43条第2段落)。これを累積年金と言う※2。その後の年金納付は、各年毎に当該年度の開始後60日以内にしなければならない(特許法第43条第1段落)。

※1 ここでの「年度」とは、出願日を起算日とする特許期間における年度をいう。

※2 累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録の手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年度から査定された年度までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年度から査定された年度の次の年度の分までを納付することになる場合もある。

 タイの居住者でない者が年金を納付する場合は、その者の代理人として、タイ国内で行為する者として長官により登録された代理人を任命しなければならない(特許法(B.E.2522)に基づく省令第21号(B.E.2542)(以下「省令第21号」という。)第13条第1段落)。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 1-2に記載の定められた期間内に年金納付がなされなかった場合、納付期間の満了後120日以内であれば、所定の年金金額に加えて年金金額に対して30パーセントの割増手数料を同時に納付することを条件に年金の追納が可能である(特許法第43条第3段落)。

1-4. 権利回復制度
 1-3に記載の定められた追納期間内に、年金および割増手数料が納付されなかった場合、タイ特許庁長官は、特許の取消に関する報告書を特許委員会※3に提出しなければならない(特許法第43条第4段落)。
 特許委員会に対する手続として、特許権者は、特許の取消命令を受領した日から60日以内に、定められた期間内に年金および割増手数料を納付できなかったことが止むを得ない事情によるものであったことを記載した要請書を、特許委員会に提出することができる(特許法第43条第5段落)。要請書が提出された場合、特許委員会は、事情に応じて納付期間を延長するか、または特許を取り消すことができる。

※3 商務担当国務次官を議長とし、内閣に指名された科学,工学,工業,工業意匠,農業,薬学,経済および法律の分野における資格を有する12名以下の委員からなる委員会を言う(特許法第66条)。特許委員会は、審判請求についての決定等に関する権限および義務を有する(特許法第70条)。

 追納期間経過までに年金を納めない場合、特許権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第53条)。

1-5. 年金の誤納
 意図しない特許権に対して年金を誤って納付してしまった場合の誤納返還に関する明確な規定はないが、全額を一括して前納した場合において、その後権利を放棄しても年金の払い戻しを受けることはできないとの規定はある(特許法第44条)。

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 実用新案権(タイ特許法第65条の2に規定される小特許の権利をいう。)の権利期間は、出願日から最長10年である(特許法第65条の7)。実用新案権の登録時には、出願日を起算日として6年の存続期間が設定される(特許法第65条の7第1段落)。その後、6年度と8年度の満了前90日に、それぞれ2年間の存続期間の延長手続を行うことで、計10年の権利期間を得ることができる(特許法第65条の7第2段落)。

2-2. 年金の納付期限
 実用新案の規定である特許法第65条の10において、特許の年金を規定する特許法第43条を準用しているので、実用新案の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。
 年金の納付義務は、出願日を起算日として5年度から発生するが、出願が登録査定を受けた場合のみ納付が求められる(特許法第65条の10で準用する第43条第1段落)。したがって、出願から4年以上経過した案件であっても、審査中は、年金納付手続は不要である。出願から登録査定まで4年以上を要した場合は、5年度から査定を受けた年までの年金を、実用新案の付与後60日以内に納付する必要がある(特許法第65条の10で準用する第43条第2段落)。これを累積年金と言う(前記※1を参照)。累積年金の納付後は、各年毎に年度の開始後60日以内に年金を納付しなければならない(特許法第65条の10で準用する第43条第1段落)。

 タイの居住者でない者が年金を納付する場合は、その者の代理人として、タイ国内で行為する者として長官により登録された代理人を任命しなければならない(省令第21号第24条で準用する第13条第1段落)。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納制度は、5年度と6年度の年金納付については特許と同じである(特許法第65条の10で準用する第43条第3段落)。6年度と8年度の満了前の存続期間の延長手続については、特許のような追納の規定は適用されない。

2-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、5年度と6年度の年金納付については特許と同じである(特許法第65条の10で準用する第43条第4、5段落)。6年度と8年度の満了前の存続期間の延長手続については、特許のような権利回復の規定は適用されない。

 追納期間経過までに年金を納付しない場合、実用新案権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第65条の10で準用する第53条)。

2-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(特許法第65条の10で準用する第44条)

3. 意匠権
3-1. 存続期間
 意匠権の権利期間は、出願日から10年である(特許法第62条)。権利期間の延長制度は存在しない。

3-2. 年金の納付期限
 意匠の規定である特許法第65条において、特許の年金を規定する特許法第43条を準用しているので、意匠の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。
 年金は、出願日を起算日として5年度から発生するが、出願が登録査定を受けた場合のみ納付が求められる(特許法第65条で準用する第43条第1段落)。したがって、出願から4年以上経過した案件であっても、審査中は、年金納付手続は不要である。出願から登録査定まで4年以上を要した場合は、5年度から査定を受けた年までの年金を、意匠の付与後60日以内に納付する必要がある(特許法第65条で準用する第43条第2段落)。これを累積年金と言う(前記※1を参照)。その後の年金納付は、各年度の開始後60日以内にしなければならない(特許法第65条で準用する第43条第1段落)。

 タイの居住者でない者が年金を納付する場合は、その者の代理人として、タイ国内で行為する者として長官により登録された代理人を任命しなければならない(省令第21号第23条で準用する第13条第1段落)。

3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納制度は、特許と同じである(特許法第65条で準用する第43条第3段落)。

3-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(特許法第65条で準用する第43条第4、5段落)。

 追納期間経過までに年金を納めない場合、意匠権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面をタイ特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第65条で準用する第53条)。

3-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(特許法第65条で準用する第44条)

インドにおける特許・意匠年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 インドにおける特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(インド特許法(以下「特許法」という。)第53条(1))。権利期間の延長制度は存在しない。

1-2. 年金の納付期限
 年金は、出願日を起算日として3年度から発生するが※1、特許査定がなされた場合にのみ納付が求められる(特許法第45条(1)、インド特許規則(以下「特許規則」という。)80(1))。したがって、出願から2年以上経過した場合であっても、審査中は、年金納付手続は不要である。出願から特許査定までに2年以上を要した場合には、特許査定が下された後、特許が登録簿へ登録された日(登録日)から3か月以内に、3年度から査定された年までの年金を納付する必要がある(特許法第142条(4))。これを累積年金と言う※2。その後の年金は、各年度※3の前年度満了前に納付しなければならない。例えば、出願から3年半後に登録となった場合は、3年度および4年度の年金を登録日から3か月以内に納付しなければならず、次の5年度分の年金は、4年度満了前に納付しなければならない(特許法53条(2)、特許規則80(1))。

 ※1 特許規則80(1)にいう「特許証の日付」とは、納付期間を計算するための起算日であり、特許出願の日と定められている(特許法第45条(1))。 

 ※2 累積年金とは、年金納付義務が特許査定前から存在し、かつ特許査定が下されてから納付が開始される国において、登録手続の際に納付すべき年金のことを指す。指定された年度(※3を参照)から査定された年度までをカバーする年金をまとめて納付し、それ以降は年払いに移行する。なお、査定された時期と年金納付日の関係によっては、指定された年度から査定された年度の次の年度の分までを納付することになる場合もある。 

 ※3 ここでの「年度」とは「特許証の日付」を起算日とした年度をいうが、※1のとおり、特許法第45条(1)において「特許証の日付」とは特許出願の日と定められているので、出願日を起算日とした年度を表す。

 特許権者が小規模団体あるいは個人である場合は、年金金額が減額される(特許規則7、第1附則)。年金納付は、インド特許庁に対して代理人を通じて行うことができる(特許法第127条)。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 特許権が登録になった後に、納付期限日までに年金の納付が行われなかった場合、期限日から6か月以内であれば追納が可能である(特許法第53条(2)、第142条(4)、特許規則80(1A)、第1附則)。追納期間中は、所定の年金金額に加えて、追徴金も同時に納付しなければならない。

1-4. 権利回復制度
 6か月の追納期間を超えて年金納付がされない場合は、権利は納付期間の最終日をもって失効する(特許法第53条(2))。つまり、特許権は通常の納付期間満了時に遡及消滅する。ただし、権利失効から18か月以内であれば、インド特許庁に対して権利回復の請求を行うことが可能である(特許法第60条(1))。権利を回復するには、まず所定の書面を提出する必要がある(特許法第60条(3)、特許規則84(1))。その後、インド特許庁が権利の回復を認めた場合には、その旨が公報に掲載され一般に公告される(特許法第61条(1)、特許規則84(3))。公報掲載日から2か月の間は、権利回復に対する第三者からの異議を申し立てることが可能な期間であり(特許法第61条(1)、特許規則85(1))、この期間中に異議申立がなければ、当該特許権の特許権者はインド特許庁に未納付の更新手数料と追加手数料を納付することができる(特許法第61条(3)、特許規則86(1))。これらの金額の納付があった場合、インド特許庁は特許権の回復を公告する(特許規則86条(2))。

 上記の通り、追納期間を超えて年金納付がされなかった場合に特許権は失効するが、権利を放棄したい旨を記した書面と所定の金額をインド特許庁に提出することにより自発的に放棄する手続もある(特許法第63条(1))。

1-5. 年金の誤納
 意図しない特許権に対して誤って年金を納付した場合、または所定の納付金額を超えて納付した場合などは、通常、返金されない(特許規則7(4))。

1-6. その他
 インドにおいて特許権を維持するには、上記の年金納付とは別に、インド特許庁に対して国内実施報告書を提出しなければならない(特許法第146条)。実施に関する書面の提出が行われなかった場合、最大で百万ルピーの罰金もしくは6か月以下の拘禁刑、またはこれらを併科される可能性がある(特許法第122条)。

 なお、2024年の特許規則の改正(2024年3月15日施行)により、国内実施報告書の提出頻度が、従来の「1会計年度ごとに1回」から、「3会計年度ごとに1回」に変更された(特許規則131(2))。

2. 意匠権
2-1. 存続期間
 意匠権の権利期間は、出願日もしくは優先権主張をしている場合は、優先権主張日から15年であり、年金は、意匠が登録査定を受けてから発生する。まず、意匠権が登録になると最初に、出願日もしくは優先権主張をしている場合は、優先権主張日を起算日として10年の権利期間が与えられる(インド意匠法(以下「意匠法」という。)第5条(6)、第11条(1)、インド意匠規則(以下「意匠規則」という。)30(3))。

 その後、5年分の年金納付を1回のみ行うことで、計15年の権利期間を得ることができる(意匠法第11条(2))。更なる権利期間の延長制度は存在しない。

2-2. 年金の納付期限
 10年間の満了前に意匠権期間の延長申請をした場合の5年分の年金は、最初の10年の権利期間が満了する前に納付しなければならない(意匠法第11条(2))。

 年金の納付は、インド特許庁に対して代理人を通じて行うことができる(意匠法第43条(1))。意匠権者が小規模団体あるいは個人である場合は、年金金額が減額される(意匠規則5、第1附則)。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 意匠権の場合、特許権と異なり追納制度が存在しない点に注意しなければならない。そのため、納付期限日までに年金の納付が行われなかった場合、権利は失効する(意匠法第12条(1))。

2-4. 権利回復制度
 権利失効から12か月以内であれば、権利回復の請求を行うことができる(意匠法第12条(1))。権利を回復するには、所定の書面を提出する必要がある(意匠法第12条(2)、意匠規則24(1))。その後、インド特許庁が権利の回復を認めた場合には、意匠権者による未納付の延長手数料と追加手数料の納付を条件に、その旨が公報に公告される(意匠規則25)。

2-5. 年金の誤納
 意図しない意匠権に対して誤って11年度の年金を納付した場合や、所定の納付金額を超えて納付した場合などは、通常は返金されない(意匠規則5(2)(c))。

韓国における特許・実用新案・意匠年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 韓国における特許権の存続期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年である(韓国特許法(以下「特許法」という。)第88条第1項)。年金の納付義務は、特許査定が発行された場合に発生し、審査係属中は発生しない(特許法第79条第1項)。
 特許権の存続期間の延長制度として、特許出願に係る発明の実施にあたって他の法令による許可が必要であり、当該許可を受けるまでに特許発明の実施をすることができない期間がある場合には、実施をすることができない期間に対して最長5年の期間まで存続期間延長出願を行う制度がある(特許法第89条第1項)。

1-2. 年金の納付期限
 特許査定が発行されると、特許査定を受領した日から3か月以内に初回の年金納付として、1年度から3年度の3年分の年金の納付が求められる(特許法第79条1項、特許料等の徴収規則第8条第5項)。なお、韓国では、2回目以降、すなわち4年度以降の年金は、設定登録日に該当する日を基準として毎年1年分ずつ、その前年度に納付しなければならず(特許法79条第1項、特許料等の徴収規則第8条第8項)、毎年の設定登録日に対応する日が納付期限となる。4年度以降の年金は1年ごとの納付、および複数年分の一括納付どちらも可能である(特許法第79条第2項)。

※ ここでの年度とは、設定登録日を基準とした年金納付の年度をいう。期間の計算において初日は算入しないので(特許法第14条第1項第1号)、各年度の最終日は設定登録日に対応する日となる。

 年金の納付金額は、年度が上がるに従って増額し、また請求項数により変動する(特許料等の徴収規則第2条第2項第1号 別表1)。年金は、特許権者もしくは利害関係人であれば納付することができる(特許法第80条第1項)。

 年金納付額に不足がある場合、韓国特許庁より補填命令が下され、補填命令を受けた日から1か月以内であれば不足分の年金を納付することができる(特許法第81条の2)。

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 納付期限日までに年金が納付されなかった場合、納付期限日から6か月以内であれば年金の追納が可能である(特許法第81条第1項)。年金の一部が追納期間内に納付されていない場合は、前述のように韓国特許庁より補填命令が下され、補填命令を受けた日から1か月以内であれば年金を納付することができる(特許法第81条の2)。追納期間中や補填期間中は、所定の年金金額に加えて追徴金を同時に納付する必要がある(特許法第81条第2項、第81条の2第3項)。

1-4. 権利回復制度
 6か月の追納期間を超えて年金および追徴金が納付されなかった場合、または、1か月の補填期間を超えて不足分の年金および追徴金が納付されなかった場合、特許権は消滅したものとみなされる(特許法第81条第3項)。ただし、追納期間の最終日もしくは補填期間の最終日から3か月以内であれば、権利回復の申請が可能である(特許法第81条の3第3項)。権利回復の申請の際には、当初の年金と追徴金に加え、回復費用を納付する必要がある。

 上記の通り、追納期間経過までに年金を納付しない場合、特許権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面を韓国特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある。なお、特許権の放棄は、請求項ごとに行うことができる(特許法第215条の2第1項)。

1-5. 年金の誤納
 所定の年金よりも多く納付した場合、韓国特許庁に過払い金の返還請求を行えば返金される(特許法第84条第1項第1号)。ただし、韓国特許庁から返還事例に該当する旨の通知を受領した日から5年を経過した後は、返還請求をすることができない(特許法第84条第3項)。

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 実用新案権の存続期間は、出願日(PCT条約に基づく実用新案出願の場合は国際特許出願日)から10年である(韓国実用新案法(以下「実用新案法」という。)第22条第1項)。出願日から4年、あるいは出願審査請求日から3年のうちどちらか遅い日よりも後に実用新案の設定登録がされた場合、遅延した期間分の延長登録出願を行うことができる(実用新案法第22条の2第1項、第22条の3)。

2-2. 年金の納付期限
 年金の納付義務は、出願が登録査定を受けてから発生し、審査係属中は発生しない(実用新案法第16条第1項、特許料等の徴収規則第8条第5項)。特許権と同様、出願が登録査定を受けると、登録査定を受領した日から3か月以内に初回の年金納付として1年度から3年度の3年分の年金の納付が求められる(実用新案法第16条第1項、特許料等の徴収規則第8条第8項)。2回目以降、すなわち4年度以降の年金は、設定登録日が該当する日を基準として毎年1年分ずつ、その前年度に納付しなければならず、毎年の設定登録日に対応する日が納付期限となる。4年度以降の年金は一年ごとの納付および複数年分の一括納付どちらも可能である(実用新案法第16条第2項)。

 年金の納付金額は、年度が上がるに従って増額し、請求項数により変動する(特許料等の徴収規則第3条第2項第1号 別表2)。年金は、実用新案権者もしくは利害関係人であれば納付することができる(実用新案法第20条で準用する特許法第80条第1項)。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納制度は、特許と同じである(実用新案法第20条で準用する特許法第81条第1項、第81条の2)。

2-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(実用新案法第20条で準用する特許法第81条の3第3項)。

 追納期間経過までに年金を納めない場合、実用新案権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面を韓国特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある(実用新案法第44条で準用する特許法第215号の2第1項)。

2-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(実用新案法第20条で準用する特許法第84条)

3. 意匠権
3-1. 存続期間
 意匠権の存続期間は、出願日から20年である(韓国デザイン保護法(以下「デザイン保護法」という。)第91条第1項)。存続期間の延長制度は存在しない。

3-2. 年金の納付期限
 年金の納付義務は、出願が登録査定を受けてから発生し、審査係属中は発生しない(デザイン保護法第79条第1項、特許料等の徴収規則第8条第5項)。特許と同様、出願が登録査定を受けると、登録査定を受領した日から3か月以内に初回の年金納付として1年度から3年度の3年分の年金の納付が求められる(デザイン保護法第79条第1項、特許料等の徴収規則第8条第8項)。2回目以降、すなわち4年度以降の年金は、設定登録日が該当する日を基準として毎年1年分ずつ、その前年度に納付しなければならず、毎年の設定登録日に対応する日が納付期限となる。なお、4年度以降の年金は一年ごとの納付および複数年分の一括納付どちらも可能である(デザイン保護法第79条第2項)。

 年金の納付金額は、年度が上がるに従って増額し、また意匠の数により変動する(特許料等の徴収規則第4条第2項第1号 別表3)。年金は、意匠権者もしくは利害関係人であれば納付することができる(デザイン保護法第81条第1項)。

3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納については、特許と同様の制度がある(デザイン保護法第82条、第83条)。

3-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復については、特許と同様の制度がある(デザイン保護法第84条)。追納期間経過までに年金を納めない場合、意匠権は消滅するが、権利を放棄したい旨を記した書面を韓国特許庁に提出することにより積極的に放棄する手続もある(デザイン保護法第105条)。なお、複数の意匠が登録された意匠権は、意匠権ごとに分離して放棄することができる(デザイン保護法第105条)。

3-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還についても、特許と同様の制度がある(デザイン保護法第87条)。

中国における特許・実用新案・意匠年金制度の概要

1. 特許権
1-1. 存続期間
 中国における特許権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく特許出願の場合は国際特許出願日)から20年(専利法第42条第1項、専利審査指南(以下「審査指南」という。)第5部第9章4.1)である。

1-2. 年金の納付期限
 最初の年金の支払い義務は、特許権の設定登録時に発生し、特許が付与された年度の年金を納付する(専利法実施細則(以下「実施細則」)という。)第114条)。ここで、年度とは、出願日を基準とした年度をいう(審査指南第5部第9章4.2.1.1)。従って、例えば、4年度に特許が付与されたとした場合、登録時に第4年度の金額の年金を納付すれば、第1年度から第3年度は出願後、審査係属中であったので、この期間の維持年金の支払いは必要ない。

 最初の年金は、国家知識産権局が設定する期限内(専利権付与通知書および登録手続実行通知書の受領日から2か月以内)(審査指南第5部第2章1.(6))に登録手続において納付しなければならず、登録手続を行う時に登録手続通知書の要求に従って権利付与年の年金を納付しなければならない。期限までに登録手続が行われた場合、特許証書が発行されると同時に登録、公告が行われ、公告日から特許権の効力が生じる(審査指南第5部第9章1.1.2から1.1.4)。

 2回目以降の年金は、前年度の満了前に納付しなければならず(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1)、納付期限は各年の出願日に対応する日となる(審査指南第5部第9章4.2.1、4.2.1.1、4.2.1.2)※1

※1 納付期限については、前年度の最終日ではなく、その翌日(各年の出願日に対応する日・各年度の初日)となる旨が、審査指南において、以下のように説明されている。
「出願日から起算される専利年度は、優先日や権利付与日に関係なく、暦年とも必然的な関連性はない。例えば、ある専利出願の出願日が1999年6月1日である場合、当該専利出願の第1年度は 1999年6月1日から 2000年5月31日であり、第2年度は2000年6月1 日から 2001年5月31日になる(審査指南第5部第9章4.2.1.1)。
(中略)例えば、 ある専利出願の出願日が1997年6月3日である場合、当該専利出願が2001年8月1日に専利権付与され(専利権の権利付与公告日)、そして出願人が登録手続を行う際に、すでに第5年度(2001年6月3日から2002年6月2日)の年金を納付していれば、当該専利権者は遅くとも2002年6月3日までに第6年度(2002年6月3日から2003年6月2日)の年金を納付しなければならない(審査指南第5部第9章4.2.1.2、一部追記)。」

 年金の金額は、年度が上がるに従って増額する(専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド 付録2)※2。中国に常駐住所または営業場所を持たない外国人、外国企業、またはその他外国組織が年金納付する場合、法に基づき設立された専利代理機関に委託して処理する必要がある(専利法第18条第1項)。

※2 各年度の年金額は、下記の関連記事を参照されたい。
【関連記事】「中国における専利(特許、実用新案、意匠)出願関連の料金表」(2022.11.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/27104/

1-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 登録後、年金納付期限日までに年金納付がされない場合や納付金額に不足がある場合、国家知識産権局より、その旨を知らせる通知が発行される。どちらの場合でも、納付期限日から6か月以内であれば追納が可能である(実施細則第115条)。追納期間中は、所定の年金金額や不足分の金額に加えて、追徴金も同時に納付する必要がある。追徴金は、納付期限日から時間が経過するに従って増額する(審査指南第5部第9章4.2.1.3)。6か月の追納期間を超えて年金納付がされない場合や、追徴金の納付漏れがあった場合、権利は納付すべき期間の最終日から失効とされ、国家知識産権局から権利喪失確認通知が発行される(審査指南第5部第9章4.2.2)。

1-4. 権利回復制度
 追納期間内に年金納付がなされず権利失効となった場合でも、権利喪失確認通知書の受領日から2か月以内であれば、権利の回復が可能である。権利回復の際には、当初の年金と追徴金に加え、回復費用も納付する必要がある(実施細則第6条、審査指南第5部第2章1.(4)、第9章4.2.1.3)。

 上記のとおり、追納期間を超えて年金納付がされなかった場合、特許権は年金を納付すべき期限の満了日に終了する(審査指南第5部第9章4.2.2)が、権利を放棄したい旨を記した宣誓書を国家知識産権局に提出することにより積極的に放棄する手続もある(専利審査指南第5部第9章4.3)。

1-5. 年金の誤納
 意図しない特許権に対して誤って年金を納付した場合、または所定の納付金額を超えて納付した場合などは、国家知識産権局に返還請求をすることができる(実施細則第111条)。

1-6. その他
 1-1.「存続期間」に関連して、中国には日本の「特許権の存続期間の延長」に相当する制度として「特許期間の補償」がある。
 発明専利(特許)の出願日から4年、かつ実体審査請求日から3年経過後に発明専利が付与された場合、国家知識産権局は、専利権者の請求に応じて、発明専利の権利付与過程における不合理な遅延について特許権の期間に補償を与える。ただし、出願人に起因する不合理な遅延は除外する(専利法第42条第2項)。
 なお、2023年の実施細則と審査指南の改正により、特許権の期間補償の請求期限、補償期間の計算方式、合理的な遅延、および出願人に起因する不合理な遅延に該当する場合などが規定された(実施細則第77条から第79条、第84条、審査指南第5部第9章2.1から2.4)。

 また、中国で発売許可を得られた新薬に関連する発明専利(特許)について、新薬の発売承認審査にかかった時間を補償するため、国家知識産権局は、特許権者の請求に応じて、特許権の存続期間について補償を与える。補償の期間は5年を超えず、新薬発売承認後の専利権の合計存続期間が14年を超えないものとする(専利法第42条第3項)。
 なお、2023年の実施細則と審査指南の改正により、新薬に関連する発明専利の定義、医薬品専利権期限の補償を請求できる条件と期限、補償期間の計算方式、補償期間における特許権の保護範囲などが規定された(実施細則第80条から第84条、審査指南第5部第9章3.1から3.8)。

2. 実用新案権
2-1. 存続期間
 中国における実用新案権の権利期間は、出願日(PCT条約に基づく実用新案登録出願の場合は国際実用新案登録出願日)から10年である(専利法第42条第1項)。

2-2. 年金の納付期限
 実用新案の年金制度は、権利期間を除き特許とほぼ同様である。最初の年金の支払い義務は、実用新案権の設定登録時に発生し、実用新案が付与された年度の年金を納付する(実施細則第114条)。出願日を基準とする年度の考え方は特許と同じである。
 最初の年金は、国家知識産権局による専利権付与通知と登録手続実行通知書に基づき遅滞なく納付期限日までに納付しなければならない(審査指南第5部第8章1.2.2.1)。

 2回目以降の年金は、特許と同様で、前年度の満了前に納付しなければならず(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1)、納付期限は各年の出願日に対応する日となる(審査指南第5部第9章4.2.1、4.2.1.1、4.2.1.2)。

 年金は、年度が上がるに従って増額し(専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド 付録2)、中国に常駐住所または営業場所を持たない外国人、外国企業、またはその他外国組織が年金納付する場合、法に基づき設立された専利代理機関に委託して処理する必要がある(専利法第18条第1項)。

2-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納制度は、特許と同じである(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1.3)。

2-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(実施細則第6条、審査指南第5部第2章1.(4)、第9章4.2.1.3)。

2-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(実施細則第111条)。

3. 意匠権
3-1. 存続期間
 中国における意匠権の権利期間は、出願日から15年である(専利法第42条第1項)。

3-2. 年金の納付期限
 意匠の年金制度は、特許のそれとほぼ同様である。最初の年金の支払い義務は、意匠権の設定登録時に発生し、意匠が付与された年度の年金を納付する(実施細則第114条)。出願日を基準とする年度の考え方は特許と同じである。
 最初の年金は、国家知識産権局による専利権付与通知と登録手続実行通知書に基づき遅滞なく納付期限日までに納付しなければならない(審査指南第5部第8章1.2.3.1)。

 2回目以降の年金は、特許と同様に、前年度の満了前に納付しなければならず(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1)、納付期限は各年の出願日に対応する日となる(審査指南第5部第9章4.2.1、4.2.1.1、4.2.1.2)。

 年金は、年度が上がるに従って増額し(専利および集積回路設計に関する支払手続ガイド 付録2)、中国に常駐住所または営業場所を持たない外国人、外国企業、またはその他外国組織が年金納付する場合、法に基づき設立された専利代理機関に委託して処理する必要がある(専利法第18条第1項)。

3-3. 納付期限を徒過した場合(追納制度)
 年金の追納制度は、特許と同じである(実施細則第115条、審査指南第5部第9章4.2.1.3)。

3-4. 権利回復制度
 追納期間を徒過した場合の権利回復制度は、特許と同じである(実施細則第6条、審査指南第5部第2章1.(4)、第9章4.2.1.3)。

3-5. 年金の誤納
 年金の誤納返還に関する制度も特許と同じである(実施細則第111条)。