シンガポールの庁指令に対する応答期間
特許出願の審査手続は、パリ条約に基づく出願、または特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の国内移行出願のいずれの出願形式を選択するかにより異なる。特に調査および審査の段階において、その相違は大きい。また、発行される庁指令および通知は、出願形式や以下に説明する調査および審査の種類により異なる。
パリ条約に基づく出願では、出願人は、審査請求について以下の選択肢(オプション)を有する。(図1のフロー参照)
(1)基準日から13か月以内に調査を請求し(第29条(1)(a))、その後、基準日から36か月以内に審査を請求する(第29条(3))。
(2)基準日から36か月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。
(3)基準日から36か月以内に、対応する出願または対応する国際出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。
(4)基準日から54か月以内に、対応する出願または対応する国際出願の肯定的な最終結果・審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A))*1。
*1:補充審査は、2017年10月30日付けで改正された特許法により、2020年1月1日以降の出願では、利用できなくなる。(シンガポール特許法29条(11A)、およびシンガポール特許規則43(4))。
(図1)パリ条約に基づく出願の場合
PCTに基づく国内移行出願では、出願人は審査請求について以下の選択肢を有する。(図2のフロー参照)
(1)基準日から36か月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。
(2)基準日から36か月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。
(3)基準日から36か月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の国際調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(ii))。
(4)基準日から54か月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の肯定的な最終結果または審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A);補充審査は、上記*1のとおり、2020年1月1日以降の出願では利用できない。補充審査については、以下同じ。)。
(5)基準日から54か月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の特許性に関する国際予備報告(IPRP)に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(B))。
(図2)PCTに基づく国内移行出願の場合
1.不備を指摘する通知に対する応答期間
1-1.予備審査において指摘された不備
シンガポール特許規則33に基づいて規定された方式要件を満たしていない出願について登録官(Registrar)が、不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から2か月である。延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大18か月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。
登録官が、図面または明細書の一部が欠落した出願について不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から3か月である。この期限は延長することができない。
1-2.その他審査関連事項に関する不備
提出された書類または様式に何らかの不備が見つかった場合や、書類の提出に漏れがあった場合には、審査手続の様々な段階において、登録官により該不備が指摘されることがある。また、登録官は、以上のような類型に該当しない不備に関しても、該不備を指摘する通知を発行することができる。
このような不備に対応するための応答期間は、該通知に記載されている。応答期間は登録官の裁量であり、特許法または特許規則では規定されていない。
2.調査報告に対する応答期間
(図3)パリ条約に基づく出願の場合
(図4)PCTに基づく国内移行出願の場合
第29条(1)(a)または(b)に基づいて請求された調査報告により(図3および図4のフロー参照)、当該特許出願において、単一の発明概念に関する単一性の欠如が判明した場合、登録官は出願人にその旨を通知する必要がある。
出願人は、単一性を有しないと判断されたために調査が行われなかった発明について補足調査(Supplementary Search)を請求することができる。この請求は、登録官の通知の日から2か月以内に行う必要がある。この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大6か月延長することができる。
第29条(1)(a)に基づいて請求された調査報告が、審査請求期限の1か月前以降に出願人に送付された場合、審査請求期限は、調査報告が出願人に通知された日から1か月延長される。
3.調査見解書に対する応答期間
3-1.実体審査が請求される場合
(図5)パリ条約に基づく出願の場合
(図6)PCTに基づく国内移行出願の場合
特許法第29条(1)(b)もしくは(c)または第29条(3)に基づいて、審査または調査および審査が請求され(図5および図6のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から5か月であり、この期限は延長することができない。
3-2.補充審査が請求される場合*1
(図7)パリ条約に基づく出願の場合
(図8)PCTに基づく国内移行出願の場合
特許法第29条(1)(d)に基づいて補充審査が請求され(図7および図8のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から3か月であり、この期限は延長することができない。
3-3.見解書に対する応答
出願人は、見解書に対して、反論または補正を提出して応答することができる。
出願人が見解書に対して応答を行わない場合には、見解書に基づいて審査報告書(3-1の場合)または補充審査報告書(3-2の場合)が作成される。審査報告書または補充審査報告書に未解決の拒絶理由が含まれる場合、登録官は出願人に拒絶をする旨の通知を発行する。
4.拒絶をする旨の通知に対する応答期間
出願人は、未解決の拒絶理由が含まれる審査報告書に対し、再審査を請求することができる。再審査は、拒絶をする旨の通知の日から2か月以内に請求することができる。
延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大6か月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。
5.特許を付与する旨の通知に対する応答期間
登録官により特許を付与する旨の通知が発行される場合、出願人には、当該出願を整理し、登録料を納付するための期間として2か月が与えられる。
この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大18か月延長することができる。
応答を行わない場合、当該出願は放棄されたものとみなされる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。
6.特許付与後の応答期間
シンガポールにおいて最初に支払う年金は第5年次年金であり、第4年次までの年金を支払う必要は無い。第5年次年金の納付期限は特許出願日から4年目が満了する3か月前、すなわち、特許出願日から45か月である。
特許出願日から45か月が経過した後に特許が付与される場合、支払期限を迎えた年金(前年までに支払期限のある全ての費用を含む)は、特許付与の日から3か月以内であればいつでも納付することができる。
以降の各年の年金は毎年納付することとなり、期間満了前3か月以内に納付することができる。
【留意事項】
庁指令または通知に対する応答期間は、庁から発行される書面に記載されている。庁書面によっては、応答期間の延長が認められない場合もあり、そのような応答期間ついては、特に注意を払う必要がある。
香港における商標異議申立制度
商標条例第44条および商標規則の規則16(1)に従い、何人も、出願が公報に公告された日から起算して3ヵ月以内に、当該出願に対して異議申立を提起することができる。たとえば、ある出願が3月1日に公告されたとすると、異議申立の期限は6月1日ではなく5月31日を以て満了することになる。
正当な理由がある場合、異議申立期間は1度だけ延長が可能であり、延長期間は2ヵ月とされる。実際には、異議申立手続を回避するため、異議申立を提起する前に出願の自発的取り下げを求める警告状を送付することが望ましい。警告状の送付は、異議申立手続に勝訴した場合に出願人に対する費用請求に有利な要因となり得るだけでなく、正式な異議申立書の提出期限の延長が必要になった場合に、期限延長を求める有効な理由として利用することができる。
異議申立書
一般的な異議申立理由は、以下の相対的理由および絶対的理由に基づく。
相対的理由
商標条例第12条に定める商標登録拒絶の相対的理由は、異議申立の対象となる商標が先行する別の商標と同一もしくは類似であり、かつ、出願に係る商品または役務が先行商標の保護に係る商品または役務と同一もしくは類似である場合に適用される。出願に係る商品または役務と先行商標の保護に係る商品または役務が類似しているが同一ではない場合、出願に係る商品または役務に関する商標の使用が公衆に混同を生じさせるおそれがあるという要件が加えられる。
先行商標がパリ条約に基づき保護される周知商標であった場合、出願に係る商品または役務に関する商標の使用が公衆に混同を生じさせるおそれがあり、正当な理由なく周知商標の識別力もしくは名声を不当に利用し、または損なう限りにおいて、出願に関わる商品または役務が周知商標の保護に関わる商品または役務と同一もしくは類似である必要はない。
商標条例のこの規定は、詐称通用(パッシングオフ)に関する法に基づき、または先行する他の権利によって(著作権もしくは登録意匠に関する法によって)、商標の使用が禁じられる場合にも適用することができる。
絶対的理由
異議申立を提起する場合、商標条例第11条に定める以下のいずれかの商標登録拒絶の絶対的理由を適用することもできる。
(1)出願人の商品または役務を他と識別しえず、かつ視覚的に表示しえない標章。
(2)識別力を欠く標章。
(3)商取引または事業において、商品もしくは役務の種類、品質、数量、用途、価格、原産地、商品の生産時期もしくは役務の提供時期、またはその他の特徴を指定することに資する標識のみから構成される標章。
(4)現行の言語において、または確立された誠実な取引慣行において通例となっている標識のみから構成される標章。
(5)商品の性質に由来する形状、技術的な成果を得るために必要な形状、または商品に実質的な価値を付与する形状のみから構成される標章。
(6)一般に認められた道徳規範に反する標章、または公衆を欺罔するおそれのある標章。
(7)いずれかの法に基づき、または法によって香港における使用が禁止されている標章、または悪意でなされた出願。
(8)国旗、国章および一定の国際機関の記章から構成されるか、これらを含んでいる標章。
答弁書
異議申立人が異議申立書を提出した後、出願人は、異議申立書のコピーを受領した日から3ヵ月以内に、答弁書を提出しなければならない。出願人が答弁書を提出しなかった場合、当該出願は取り下げられたものとして処理される。
証拠
答弁書が提出された場合、異議申立人は、答弁書のコピーを受領した日から6ヵ月以内に異議理由を裏付ける証拠を提出しなければならない。裏付けとなる証拠は、宣誓供述書の形式で提出されなければならない。異議申立人が期限内に証拠を提出しなかった場合、異議申立は放棄されたものと見なされる。
異議申立人が証拠を提出した後、出願人は、異議申立人の証拠のコピーを受領した日から6ヵ月以内に、自らの出願を防御する証拠を宣誓供述書の形式で提出することができる。出願人は、証拠を提出しない旨の陳述書を提出することにより、証拠を提出しない方針を選択することもできる。
出願人が証拠を提出した場合、異議申立人は新たな証拠を提出する機会を与えられる。ここで提出される証拠は、出願人が提出した証拠に応答するものに厳しく限定される。これらの証拠は、異議申立人が出願人の証拠のコピーを受領した日から6ヵ月以内に提出されなければならない。それ以後はいずれの当事者も、登録官の許可を得ない限り新たな証拠の提出は許されない。
期限の延長
答弁書および証拠の提出期限は、所定の期限までに書面によって期限延長を請求することができる。答弁書について認められる期限延長が2ヵ月であるのに対し、証拠について認められる期限延長は3ヵ月とされる。当事者の請求による前記の期限延長には、相手方の同意が要求される。
ヒアリング
証拠の応酬が終わると、その事案は係属中のヒアリング・リストに記載され、商標登録所はヒアリングの日時を決定し、当事者に書面で通知する。現在のところ、商標登録所がヒアリングの日時を決定するまでには少なくとも証拠応酬段階の終了後18~24ヵ月の期間を要する。
ヒアリングの日時が決定されると、異議申立人と出願人は、ヒアリングに出席するか否かを選択することができる。当事者の一方もしくは双方がヒアリングに出席しない方針を選択した場合、審問官は、それまでに提出された文書および証拠に基づいて異議決定を下すことになる。
一般に、異議決定は、ヒアリングが行われなかった場合を含み、設定されたヒアリングの日から6~9ヵ月程度後に送達される。この異議決定に不服がある場合は高等裁判所に上訴することができるが、その場合、異議決定の日から28日以内に、不服申立書および上訴理由が提出されなければならない。
敗訴者負担
香港は敗訴者負担制度を採用している、通常、勝訴者が被った費用の支払が敗訴者に命じられることになる。
手続の一時停止
当事者双方が和解のための交渉を希望する場合、任意の時期に異議申立手続の一時停止を申請することができる。手続の一時停止は、出願人と異議申立人の両者によって共同で申請されなければならない。手続停止の期間は、当事者双方が合意した期間とすることができ、商標登録所は最大9ヵ月までの停止期間を認めることができる。いずれかの当事者が1ヵ月の猶予期間付きの通知書を相手方および登録官に送付することにより、停止期間が終了する前に手続を再開する許可が与えられる。上記最大9か月の間において、停止期間を更に延長する許可は、当事者双方が共同で新たな申請を提出することによって与えられる。
保証金
香港に居住しておらず香港での営業も行っていない相手方に対し、当事者は手続費用の保証金を要求することができる。このような手続費用の保証金が認められた場合、相手方は、敗訴した当事者が手続費用について負う債務を賄うに十分な金額を所定の期間内に提供することを要求される。要求された保証金が提供されない場合、異議申立書、答弁書もしくは出願の放棄または取下げがなされたものとされる。この保証金は、限られた資産しか持たない当事者に異議申立手続の遂行もしくは抗弁を断念させるための有効な手段となり得る。だが、当事者双方がいずれも香港に居住しておらず香港での営業も行っていない場合、両当事者に対し手続費用の保証金が求められる可能性が高い。
マレーシアにおける商標異議申立制度
マレーシアにおいては、商標出願に対する異議申立手続には「1975年商標法」(以下「商標法」と称する)の第28条および「1997年商標規則」(以下「商標規則」と称する)の規則37~49が適用される。商標出願が審査後に認可されると、登録官は当該出願を公報上で2ヵ月間にわたり公告することになっている。公告の目的は、当該出願に対して異議を申し立てる機会を万人に与えることである。
異議申立理由
いかなる者も、商標法に規定された以下の理由の一ないし複数に基づき、商標出願に対して異議申立を提起することができる。
1.当該商標が公衆に誤認もしくは混同を生じさせる可能性があるか、法に違反するおそれがある。
2.当該商標が中傷的もしくは侮蔑的であるか、裁判所の保護を受けるに適格でない。
3.当該商標が、国益または国家の安全を害するおそれのある事項を含んでいる。
4.当該商標が、同一の商品または役務につきマレーシアにおいて周知である他の所有者の商標と同一であるか、それに極めて類似している。
5.当該商標が、出願の対象となった商品または役務と同一でない商品または役務につきマレーシアにおいて周知である他の所有者の商標と同一であるか、それに極めて類似している。
6.当該商標が、表示された地域を原産地としない商品に関する地理的表示を含んでおり、かつ、マレーシアにおいて当該商品につき当該表示を使用することが当該商品の真の原産地に関して公衆に誤認を生じさせるおそれがある。
7.当該商標が、ぶどう酒のための商標であってぶどう酒を特定する地理的表示を含んでいるか、蒸留酒のための商標であって蒸留酒を特定する地理的表示を含んでいるが、そのぶどう酒もしくは蒸留酒が当該地理的表示により表示される場所を原産地としていない。
8.同一であるか誤認もしくは混同を生ずる程度に互いに極めて類似している複数の商標につき、それぞれ別の者を所有者として登録することを求める複数の異なる出願が別個になされている。
9.同一の商品もしくは同一種類の商品またはこれらの商品に密接に関連する役務に関して、別の所有者に属する先行商標が存在し、当該商標がその先行商標と同一である。
10.当該商標に識別性がない。
11.当該商標が、特別もしくは独特な態様で表示される個人、会社または企業の名称を含んでおらず、そのような名称から構成されてもいない。
12.当該商標が、出願人の署名もしくは出願人の前事業主の署名を含んでおらず、そのような署名から構成されてもいない。
13.当該商標が、一ないし複数の造語を含んでおらず、そのような造語から構成されてもいない。
14.当該商標が、商品または役務の特徴もしくは品質に直接言及しておらず、かつ、その通常の意味では地理的名称でも人の姓でもないような言葉を含んでおらず、そのような言葉から構成されてもいない。
15.当該商標が、上記以外の識別性のある標章を含んでおらず、そのような標章から構成されてもいない。
異議申立手続
異議申立書は、出願が公告された公報の日付から2ヵ月以内に、所定の料金の納付とともに、定められた書式を用いた書面によって提出されなければならない。問題の出願商標が既に登録されている商標または現在出願中の商標に類似しているという理由で異議申立がなされる場合には、その商標の番号および分類ならびにその商標が公告された公報の番号(当該商標がまだ公告されていない場合はこの限りではない)が異議申立書に記載されなければならない。
異議申立に対して出願人が答弁しなかった場合、登録官は、異議申立人に費用の支払を命じる裁定を下すか否かを判断するにあたり、異議申立書の提出前に出願人に事前通知が送付されていたならば異議申立手続が回避しえたか否かを考慮しなければならない。したがって、異議申立人は、異議申立書の提出に先立って、自らが提起しようとしている異議申立に関する事前通知を出願人に送付することが勧められる。
異議申立書の受領から2ヵ月以内に、出願人は定められた書式による答弁書を提出することができる。答弁書には、出願人が依拠する出願理由およびその事実が記載されるとともに、異議申立書において主張された事実のうち出願人が認める事実がある場合には、その自認が記載される。答弁書の提出と同時に、その写し1部が異議申立人に送付される。
答弁書を受領した時点で、異議申立人および出願人は、各自の異議申立理由ないし出願理由を裏付ける証拠を宣誓書の形式で提出する。各当事者は、登録官に提出した宣誓書(添付証拠を除く)の写しを相手方に送付することを要求され、この送付を怠った場合、その当事者の異議申立もしくは出願は放棄されたものと見なされる。提出した宣誓書に証拠が添付されている場合、当該添付証拠を提出した当事者は、相手方の要求に従い、相手方の費用負担の下に、個々の添付証拠の写しを相手方に送付するものとする。いかなる場合にも、登録官に提出された証拠の原本は、相手方の自由な閲覧に供されるものとする。
さらに、異議申立人は、出願人の証拠を受領した日から2ヵ月以内に、それに応答する証拠を宣誓書の形式で提出する。応答の対象は、出願人が自らの証拠に記載した事項に限定される。異議申立人の宣誓書が提出されると同時に、その写しが出願人に送付されるものとする。
登録官が新たな証拠の提出を許可しない限り、いずれの当事者もそれ以上の証拠を提出することはできない。
証拠の提出が終了した時点で、登録官は、両当事者に対して、追加の陳述書もしくは書類資料を登録官に送付することのできる期限を通知するものとする。陳述書もしくは書類資料の提出期限は、登録官が送付した通知を両当事者が受理する日より1月後の日でなければならない。異議申立手続が書面の提出によって進行する場合であって、出願人もしくは異議申立人は、当該異議申立に関してヒアリングを要求することができる。
期限延長
異議申立手続について定められた上記2か月の全ての期限、つまり、異議申立書提出期限、答弁書提出期限、各当事者の証拠提出期限、異議申立人の応答証拠提出期限は、定められた書式を用いた申請書に基づき延長することが可能である。期限延長申請書の写しは、当該異議申立の当事者全員に送付されなければならない。いずれかの当事者による期限延長を認める場合、登録官は、所定の料金が納付されることを条件として、自らの判断に基づき、ヒアリングを行うことなく、その後の手続を行う際の期限について妥当な延長を認めることができる。
決定
登録官は、当事者双方が提出した書類および証拠を検討した上で、最終書類の提出期限として定められた日から2ヵ月以内に、以下のいずれかの決定を下す。
1.当該商標の登録を拒絶する。
2.当該商標を登録する。
3.登録官が妥当と考える条件、補正、修正もしくは制限に従って当該商標を登録する。
上訴
異議申立手続における登録官の決定に不服がある当事者は、高等裁判所に上訴を提起することができる。上訴は、当該決定の日から1ヵ月以内に、召喚状の発行を以て開始されなければならない。また、上訴請求の写しはすべての関係者に送付されなければならない。上訴は、裁判所の許可がある場合を除き、商標登録を拒絶する理由については、異議申立人および登録官の何れも、裁判所の許可を得ない限り、異議申立人によって既に主張されている理由以外のものは申し立てることができない。新たな異議申立理由が主張される場合、出願人は、裁判所に所定の届出をすることによって、異議申立人の費用を支払うことなく出願を取り下げることができる。
費用の担保
異議申立人、出願人または上訴人がマレーシアに居住しておらず、かつ、マレーシア国内で営業を行っていない場合、登録官または裁判所は、異議申立手続の任意の段階において、異議申立手続に伴う費用ないし経費の担保を提供するよう当該当事者に請求することができる。登録官または裁判所は、担保として、その相応と考える金額をその相応と考える形式によって提供するよう求めることができる。担保が要求に従って提供されない場合、異議申立、出願もしくは上訴は放棄されたものとして処理される。
費用
裁判所に係属する手続全般において、裁判所は、自らが合理的と判断する費用(登録官の費用を含む)をいずれかの当事者に裁定することができる。なお、登録官は、他のいずれの当事者の費用についても、その支払を要求されることはない。
登録官は、合理的と思われる費用をいずれかの当事者に裁定し、それら費用をいずれの当事者がどのように支払うかを命じる権限を有する。費用の支払に関する登録官の命令は、裁判所の許可により、裁判所の判決もしくは命令と同様に執行することができる。
シンガポールの庁指令に対する応答期間
【詳細】
特許出願の審査手続は、パリ条約に基づく出願、または特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の国内移行出願のいずれの出願形式を選択するかにより異なる。特に調査および審査の段階において、その相違は大きい。また、発行される庁指令および通知は、出願形式および/または以下に説明する調査および審査の種類により異なる。
パリ条約に基づく出願では、出願人は、審査請求について以下の選択肢を有する。(図1のフロー参照)
(1)基準日から13ヶ月以内に調査を請求し(第29条(1)(a))、その後、基準日から36ヶ月以内に審査を請求する(第29条(3))。
(2)基準日から36ヶ月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。
(3)基準日から36ヶ月以内に、対応する出願または対応する国際出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。
(4)基準日から54ヶ月以内に、対応する出願または対応する国際出願の肯定的な最終結果・審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A))。
PCTに基づく国内移行出願では、出願人は審査請求について以下の選択肢を有する。(図2のフロー参照)
(1)基準日から36ヶ月以内に調査と審査を同時に請求する(第29条(1)(b))。
(2)基準日から36ヶ月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(i))。
(3)基準日から36ヶ月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の国際調査報告書に基づく審査を請求する(第29条(1)(c)(ii))。
(4)基準日から54ヶ月以内に、対応する出願、対応する国際出願、国内段階に移行した関連特許または国内段階に移行した関連特許出願の肯定的な最終結果または審査結果に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(A))。
(5)基準日から54ヶ月以内に、シンガポール国内移行出願の元となるPCT国際出願の特許性に関する国際予備報告(IPRP)に基づく補充審査を請求する(第29条(1)(d)(i)(B))。
1.不備を指摘する通知に対する応答期間
1-1.予備審査において指摘された不備
シンガポール特許規則第33条に基づいて規定された方式要件を満たしていない出願について登録官(Registrar)が、不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から2ヶ月である。延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大18ヶ月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。
登録官が、図面または明細書の一部が欠落した出願について不備を指摘する場合、該不備に対応するための応答期限は、通知の日から3ヶ月である。この期限は延長することができない。
1-2.その他審査関連事項に関する不備
提出された書類または様式に何らかの不備が見つかった場合や、書類の提出に漏れがあった場合には、審査手続の様々な段階において、登録官により該不備が指摘されることがある。また、登録官は、以上のような類型に該当しない不備に関しても、該不備を指摘する通知を発行することができる。
このような不備に対応するための応答期間は、該通知に記載されている。応答期間は登録官の裁量であり、特許法または特許規則では規定されていない。
2.調査報告に対する応答期間
第29条(1)(a)または(b)に基づいて請求された調査報告により(図3および図4のフロー参照)、当該特許出願において、単一の発明概念に関する単一性の欠如が判明した場合、登録官は出願人にその旨を通知する必要がある。 出願人は、単一性を有しないと判断されたために調査が行われなかった発明について補足調査(Supplementary Search)を請求することができる。この請求は、登録官の通知の日から2ヶ月以内に行う必要がある。この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大6ヶ月延長することができる。
第29条(1)(a)に基づいて請求された調査報告が、審査請求期限の1ヶ月前以降に出願人に送付された場合、審査請求期限は、調査報告が出願人に通知された日から1ヶ月延長される。
3.調査見解書に対する応答期間
3-1.実体審査が請求される場合
特許法第29条(1)(b)もしくは(c)または第29条(3)に基づいて、審査または調査および審査が請求され(図5および図6のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から5ヶ月であり、この期限は延長することができない。
3-2.補充審査が請求される場合
特許法第29条(1)(d)に基づいて補充審査が請求され(図7および図8のフロー参照)、見解書が発行された場合、その見解書に対する応答期限は、見解書の通知の日から3ヶ月であり、この期限は延長することができない。
3-3.見解書に対する応答
出願人は、見解書に対して、反論または補正を提出して応答することができる。
出願人が見解書に対して応答を行わない場合には、見解書に基づいて審査報告書(3-1の場合)または補充審査報告書(3-2の場合)が作成される。審査報告書または補充審査報告書に未解決の拒絶理由が含まれる場合、登録官は出願人に拒絶をする旨の通知を発行する。
4.拒絶をする旨の通知に対する応答期間
出願人は、未解決の拒絶理由が含まれる審査報告書に対し、再審査を請求することができる。再審査は、拒絶をする旨の通知の日から2ヶ月以内に請求することができる。
延長に関する手数料を納付することにより、この期限は最大6ヶ月延長することができる。この延長手続きは、最初の期限の前または後のいずれにおいても行うことができる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。
5.特許を付与する旨の通知に対する応答期間
登録官により特許を付与する旨の通知が発行される場合、出願人には、当該出願を整理し、登録料を納付するための期間として2ヶ月が与えられる。
この期限は、延長に関する手数料を納付することにより、最大18ヶ月延長することができる。
応答を行わない場合、当該出願は放棄されたものとみなされる。最初の期限より後に期限延長を請求する場合、期限延長を請求するまでの間、当該出願は放棄された状態となる。
6.特許付与後の応答期間
シンガポールにおいて最初に支払う年金は第5年次年金であり、第4年次までの年金を支払う必要は無い。第5年次年金の納付期限は特許出願日から4年目が満了する3ヶ月前、すなわち、特許出願日から45ヶ月である。
特許出願日から45ヶ月が経過した後に特許が付与される場合、支払期限を迎えた年金(前年までに支払期限のある全ての費用を含む)は、特許付与の日から3ヶ月以内であればいつでも納付することができる。
以降の各年の年金は毎年納付することとなり、期間満了前3ヶ月以内に納付することができる。
【留意事項】
庁指令または通知に対する応答期間は、庁から発行される書面に記載されている。庁書面によっては、応答期間の延長が認められない場合もあり、そのような応答期間ついては、特に注意を払う必要がある。
南アフリカでの商標出願の拒絶理由通知への対応策【その2】
【詳細及び留意点】
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南アフリカでの商標出願の拒絶理由通知への対応策【その1】
【詳細及び留意点】
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