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中国における専利代理人資格試験と代理人の役割

【詳細】

1.中国専利(特許・意匠・実用新案)代理人資格試験について

 中国で専利(特許・意匠・実用新案)代理人となるには、資格証書を取得しなければならず、その資格試験を受けるためには、以下の要件を全て満たさなければならない。

 (i)満18歳以上の中国国民であること。

 (ii)理系専攻の大学卒業以上であること。(または同等の学歴を認められた者)

 (iii)科学技術または法律に関する業務に2年以上従事した経験を有すること。

 

 専利代理人の資格試験は1992年に始められ、2005年からは毎年一回、11月に実施されている。試験科目には、専利(特許・意匠・実用新案)に関する法律知識(150点満点)、専利関連法する法律知識(100点満点)および専利代理実務(150点満点)の3科目がある。試験は、辞書などの一切の参考書の会場への持込が禁止されている。専利に関する法律知識と関連する法律知識の二科目では選択式(マークシート方式)が採用され、専利代理実務については、記述式と選択式が併用されている。

 

 現行では、専利に関する法律知識と関連する法律知識の二科目はその合計点(「法律知識」分野という)、専利代理実務(「代理実務」分野という)については単独で採点されている。毎年、試験委員会が、専利実務の需要とその年の試験の難易度を踏まえて、法律知識と代理実務の合格ラインを決定する。受験者の法律知識または代理実務の成績のいずれかが、その年の合格ラインに達していれば、試験委員会事務室から科目毎の試験合格通知が発行され、合格の有効期間は3年以内と定められている。

 

 受験者が3年以内に不合格だった科目の試験に合格できないと、合格している科目の有効期間も無効となる。「法律知識」と「代理実務」の双方に合格すれば「専利代理人資格証書」が授与される。その後1年間の実習を経て、正式な専利代理人となるための研修を修了した後、専利代理人として実務に従事することが認められる免状が授与される。

 

 2014年には、第16回試験が中国国内23か所の試験会場にて実施された。受験者は過去最高の3万人を数え、2014年の合格ラインは、法律知識分野が150点、代理実務分野が90点であった。2014年の合格者は4777人と中国特許庁により公表されている。

 

2.中国の専利代理機構及び代理人の役割

 中国専利法第19条は、「中国国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しない外国人、外国企業または外国のその他の組織が、中国で専利出願し、そのほかの専利事務手続きを取り扱う場合、法により設立された専利代理機構に処理を委任しなければならない。中国の機関または組織あるいは個人が国内で専利出願し、その他の専利事務手続をする場合、法により設立された専利代理機構に処理を委任することができる」と定めている。

 

 中国の専利代理機関は、パートナー制の専利代理機関、有限責任制の専利代理機関と法律事務所の三種類に分けられる。パートナー制の専利代理機関は、3名以上のパートナーが共同出資して、発起人となり設立されたものである。有限責任制の専利代理機関は、5名以上の株主が共同で出資して発起人となり、パートナーまたは株主は専利代理業務に2年以上従事した経験がなければならない。

 

 パートナー制が法人格をもたない組合形式の組織であるため、パートナー制専利代理機関のパートナーは債務について無限の連帯責任(個人の資産も対象となる)を負う。有限責任制の専利代理機関は、当該機関の全ての資産を以ってその債務について責任を負う。法律事務所が専利代理業務を取扱う場合には、弁護士資格と弁理士資格の双方を保持する弁護士が当該法律事務所に所属していなければならない。法律事務所は、パートナーが発起人となり設立されるもので、パートナーは当該法律事務所の債務について無限の連帯責任を担う。

 

 専利代理機関の取扱い事項は以下のとおり。

 (i)専利実務に関するコンサルティング

 (ii)専利出願文書の代理作成。専利出願手続き。実体審査または復審の請求に関する事務

 (iii)異議申立て、専利権無効宣告の請求に関する事務

 (iv)専利出願権、専利権の譲渡および専利許諾に関する事務

 (v)依頼を受け、専利代理人を派遣し、専利顧問を担当させること

 (vi)その他の関連事務

 

 専利権侵害をめぐる訴訟は民事訴訟の範疇に含まれる。2013年1月1日に改正後の民事訴訟法が施行され、その第58条は「当事者および法定代理人は、1名または2名の訴訟代理人を委任することができる。弁護士、当事者の近親者、中華全国専利代理人協会等の加盟団体または所属する企業や大学等が推薦する者、人民法院が許可するその他の公民は、いずれも訴訟代理人として委任されることができる」と定めている。原則として、専利代理人が専利権侵害事件のような案件の訴訟代理をすることはできないが、中華全国専利代理人協会が最高裁に推薦し、認められた専利代理人であれば、訴訟代理を務めることができる。