ブラジルにおける商標のコンセント制度について
1.商標コンセント制度に関する審査基準
商標審査基準「5.17 商標の共存」にコンセントに関する記載がある。
5.17 商標の共存 共存合意書 INPI/CPAPD技術見解書No.01/2012によれば,標章の「共在合意書」又は「共存合意書」と表示された書類は,商標登録出願の審査を支援する要素としてのみ機能し,標章の登録可能性に関して確信を得るための付加的要素と考えられる。 すなわち,庁がそのような書類が十分に説得力を有するか否かを評価することができるように,当該標章と他人の先に登録された商標との連携又は混同の可能性を排除することに加えて,この意味での先の権利の所有者による抗議の提出の可能性を排除して,その記された市場区分において抵触する標章が共存することを可能にすることが歓迎される。 そのような合意書の存在にも拘らず,当該商標について,抵触している商品若しくはサービス又は当該商標の構成に依存して,共存が実現不可能であるとみなされる場合は,当該商標間の混同又は連携の危険性を十分に回避する手段として,出願人又は先の権利の所有者に対して,所望の保護の範囲を制限するように,方式指令を設定することができる。例えばその商標として意図された記号に関連して,そのような指令を設定することができるが,ただし,項目9.1 商標の変更(自己の権利を守るための商標の登録不能部分の取下げ)に記載している指針に従って,一定の商標要素の削除により,記号の識別的性質を変更することなく,先の商標に対して十分な隔たりが生じる場合に限る。 同一の経済集団の所有者による商標の共存 INPI/PROC/DIRAD見解書No.12/08は,同一の経済集団に属する所有者による類似の標章が,示された商品又は役務の間に市場での親和性が認められる場合,先の登録の所有者の事前の許可なしに共存する可能性を定めている。同一の経済集団の企業間の関係は,適切な許可書類によって証明されなければならず,単なる宣言又は更に両方の企業が共通のパートナーを有することのみでは受理されないことに注目すべきである。そのような書類が存在しない場合は,利害関係人に対して,方式指令が設定される。 最後に,同一所有者による二重商標を禁止している,LPI(産業財産法)第124条第XX項の違反の可能性に留意することが必要である。 |
2.共存合意書の内容について
共存合意書は、商標出願の審査の補助的な要素としてのみ機能し、商標の登録可能性に関する確信を持つための追加要素を考慮する資料に過ぎない。
共存合意書は、審査中の商標と既に登録された第三者の商標との誤認または混同の可能性を排除するのに十分な説得力があるか否かを評価する際に用いられる。先行商標権者または先行出願人が実際に使用している標章と出願の標章とを比較して、市場で共存できることを示し、また、先行商標権者または先行出願人が実際に使用している商品・役務と出願商標の商品・役務とを比較して、市場で共存できることを示すためである。
3.審査官による出願商標の補正命令について
このような共存合意書を提示しても、抵触する商品・役務や審査対象の商標の構成により、先行商標との共存が不可能と判断される場合、審査官は当該商標間の誤認や混同のおそれを十分に排除するために、求める保護の範囲を限定するよう出願人および先行商標権者または先行出願人に要求することが可能である。しかし、実際には後出願が拒絶される例が大半である。
求める保護の範囲の限定に関する対策については、場合によって後行出願の商標の標章自体の補正を求めることが可能である。しかし、補正があったとしても、条件として後行出願の商標の標章の特徴的な部分が変更されてはならない。
なお、共存合意書の書式については特に定められたものはない。したがって、共存合意書に関する所定の要件はないが、両商標が特定され、共存することが認められるべき理由が明確であり、両商標の所有者または所有者に代わって署名する権限を有する者が署名していることが必要である。
4.同一の経済集団の所有者による商標の共存
審査基準は、先行商標権者または先行出願人と後行の出願人とが同一の経済集団に属する場合、先行商標の所有者の許可を得ることなく共存することが可能である旨の見解書について言及している。このことから、同一の経済集団に属していることを理由とする共存合意書を提出すれば、併存登録される可能性が高いと考えられる。
また、ブラジル産業財産権法第124条XX項に基づき、同一人による二重商標の所有は禁止されていることに留意すべきである。ブラジルの審査基準の5.17によると、標章同一で、同区分を指定していても、後行商標の指定商品が先行商標の指定商品の全てを排除して他の指定商品を指定する場合に登録が認められる。また、先行商標の指定商品と後行商標の指定商品が重複している場合に、先行商標の標章と後行商標の標章に差異がある場合(たとえば、先行には色の指定がない一方、後行には色の指定がある場合)に認められる。
5.共存合意書の提出時期について
共存合意書は、商標出願の審査の補助的な要素であるから、審査官の裁量にもよるが、通常、共存合意書を単独で提出しても、ブラジル産業財産庁は受理しない。特に提出時期は定められていないが、通常、拒絶理由通知の応答時および拒絶査定不服審判請求時に提出される。
6.コンセントによる併存登録後について
ブラジルでは、商標登録後、無効審判請求や不使用取消請求などによる取消等がない限り、登録付与日から10年間有効に存続する(LPI第133条)。また、更新申請すれば審査することなく次の10年間、同様に有効に存続する。すなわち、存続期間中や更新申請時に改めて共存合意書を提出する必要はない。
一方、先行登録商標権者または先行出願人が登録後に共存合意書を取り消すことは可能であるが、登録された後行商標の有効性には影響しない。可能か否かは不明であるが、他の手段で後行商標の無効化を図らなければならない。
香港における国際仲裁について(後編)
記事本文はこちらをご覧ください。
中国におけるオープン・イノベーションの知財財産に関する契約について
「日中オープン・イノベーション知財マニュアル―特許庁モデル契約書 日中クロスボーダー版―」(2022年3月、日本貿易振興機構 香港事務所(知的財産部))
〈目次〉
第一章 はじめに P.4
第二章 本マニュアルの構成 P.5
第三章 主要な追加・修正ポイント P.6
(【ケース1:日本スタートアップ・中国事業会社】の場合と、【ケース2:中国スタートアップ・日本事業会社】の場合を想定した契約上の留意点を解説している。また、日本貿易振興機構(以下、JETRO)が中国の法・制度の観点から「JPO モデル契約書 ver.1.0」の査読を行い、追加または修正した主要なポイントについて解説している。)
3.1. 技術輸出入の届け出(新素材編・AI編共通) P.6
3.2. 共同研究開発成果の帰属(新素材編・AI編共通) P.7
3.3. 改良発明の扱い(新素材編・AI編共通) P.8
3.4. 技術保証・特許保証(新素材編・AI編共通) P.9
3.4.1. 技術保証 P.9
3.4.2. 特許保証(第三者権利非侵害保証) P.10
3.5. ライセンス条件の期間・地域(新素材編) P.11
3.6. 個人情報保護、ネットワーク・データセキュリティ(AI編) P.11
3.7. 不争条項の有効性(新素材編・AI編共通) P.12
3.8. 紛争解決条項(新素材編・AI編共通) P.13
3.8.1. 紛争解決条項として裁判を選択する場合 P.13
3.8.2. 紛争解決条項として調停(及び裁判)を選択する場合 P.13
3.8.3. 紛争解決条項として仲裁を選択する場合 P.13
3.9. 契約言語(新素材編・AI編共通) P.15
3.10. その他の留意点 P.15
3.10.1. 中国において共同研究開発及び事業展開を目的とした合弁会社を設立する場合に特有の知財上の留意点 P.15
3.10.2. 日中間のオープン・イノベーションにおいて日本企業側が注意すべき知財の税制上の取り扱い P.16
第四章 日中オープン・イノベーション知財モデル契約書本編(リンク) P.18
(新素材編およびAI編の4つの契約書について、「JPO モデル契約書ver.1.0」に基づきJETROが中国の法・制度の観点から追加または修正した契約書逐条解説、契約書(日本語、中国語)、タイムシート(日本語、中国語)のリンクを紹介している。なお、中国語版はJETROにより作成されたものである。)
4.1. 新素材編P.18
4.1.1. 秘密保持契約書・解説・タームシート(新素材編) P.18
4.1.2. PoC(Proof of Concept)契約書・解説・タームシート(新素材編)P.18
4.1.3. 共同研究開発契約書・解説・タームシート(新素材編) P.18
4.1.4. ライセンス契約書・解説・タームシート(新素材編) P.18
4.2. AI編 P.19
4.2.1. 秘密保持契約書・解説・タームシート(AI編) P.19
4.2.2. PoC(Proof of Concept)契約書・解説・タームシート(AI編) P.19
4.2.3. 共同研究開発契約書・解説・タームシート(AI編) P.19
4.2.4. 利用契約書・解説・タームシート(AI編) P.19
モデル契約書(新素材編)
・秘密保持契約
〇契約書逐条解説
〇契約書(日本語)
〇契約書(中国語)
〇タームシート(日本語)
〇タームシート(中国語)
・技術検証(PoC)契約
〇契約書逐条解説
〇契約書(日本語)
〇契約書(中国語)
〇タームシート(日本語)
〇タームシート(中国語)
・共同研究開発契約
〇契約書逐条解説
〇契約書(日本語)
〇契約書(中国語)
〇タームシート(日本語)
〇タームシート(中国語)
・ライセンス契約
〇契約書逐条解説
〇契約書(日本語)
〇契約書(中国語)
〇タームシート(日本語)
〇タームシート(中国語)
モデル契約書(AI編)
・秘密保持契約
〇契約書逐条解説
〇契約書(日本語)
〇契約書(中国語)
〇タームシート(日本語)
〇タームシート(中国語)
・技術検証(PoC)契約
〇契約書逐条解説
〇契約書(日本語)
〇契約書(中国語)
〇タームシート(日本語)
〇タームシート(中国語)
・共同研究開発契約
〇契約書逐条解説
〇契約書(日本語)
〇契約書(中国語)
〇タームシート(日本語)
〇タームシート(中国語)
・利用契約
〇契約書逐条解説
〇契約書(日本語)
〇契約書(中国語)
〇タームシート(日本語)
〇タームシート(中国語)
香港における特許制度のまとめ-手続編
1. 出願に必要な書類
標準特許(O):特許条例の第37L条および特許規則の第31M~31S条は、標準特許(O)の適用のために提出される文書の要件を提供する。
標準特許(R):標準特許(R)を取得するための再登録システムには、「記録請求」を提出する段階1と「登録および付与請求」を提出する段階2の2つの段階がある。段階1の文書要件は、特許条例の第15~16条および特許規則の第8条に規定されており、段階2の申請に必要な文書は、特許条例の第23および特許規則の第19条に規定されている。
短期特許:短期特許の適用に関する文書要件は、特許条例の第113条および特許規則の第58~64条に記載されている。短期特許の特筆すべき点は、国際調査機関または指定された3つの特許庁のうちの1つが発行した発明に関する調査報告書を提出して、出願をサポートする必要があることである(特許条例第113条)。
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「香港における特許出願および意匠出願の優先権主張の手続(外国優先権)」(2020.04.07)
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「香港における実用新案(短期特許)出願制度概要」(2019.07.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17521/
「香港における特許出願制度概要」(2019.07.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17519/
「香港の特許・実用新案関連の法律、規則等」(2019.02.14)
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「日本と香港における特許出願書類の比較」(2015.11.20)
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2. 記載が認められるクレーム形式
特許条例は、特定の許容可能なクレームの形式を指定しておらず、特許可能な発明、特許されない発明を規定している。
(1) 認められる発明
特許条例の第9A条(1)は、発明が新規であり、進歩性を伴い、産業上の利用可能性がある場合、その発明は特許を受けることができると定めている。
(2) 認められない発明
特許条例の第9A条(2)~(6)は、以下は発明とみなされないと定めている。
・発見、科学理論または数学的方法
・美的創造
・精神的行為を実行する、ゲームをプレイする、またはビジネスを行うためのスキーム、規則、方法、またはコンピュータ・プログラム
・情報の提示
・人または動物の医学的治療方法および診断的方法
・公序良俗に反する発明
・植物または動物の品種、または植物または動物の生産のための生物学的なプロセス
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3. 出願の言語
特許条例の第104条では、特許の申請は公用語(中国語または英語)のいずれかで提出する必要があると規定しているが、特許条例には、出願人が指定された特許出願と同じ言語で標準特許(R)出願を提出することを要求する規定はない。
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4. グレースピリオド
特定の状況下では、発明の開示は不利益とはならない開示として扱われ、考慮されない。特許条例の第11A条、第37B条、および第109条は、それぞれ標準特許(R)、標準特許(O)、および短期特許の不利益とはならない開示の条件を次にように定めている。
・開示は、出願のみなし出願日または出願日の6月前までに行われるものであり、
・開示は、発明の出願人または所有者に関する明らかな悪意によるものであるか、または、
・発明の出願人または所有者が当面の間、所定の展示会または会議(すなわち、香港に適用される、1928年11月22日パリで署名された国際展示会条約の条件に該当する公式または公式に認められた国際展示会)で発明を展示した場合。
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5. 審査
(1) 一般の審査
3種類の特許出願について、方式審査はいずれの場合でも必須であるが、実体審査の要件は、特許の種類によって異なる。
・標準特許(O)
方式審査の詳細は、特許条例第37P条に記載されている。標準特許(O)には特許が適用される発明の特許性について実体審査も義務付けられており、登録官は出願が特許条例第37U条に定められた要件に準拠しているか否かを審査する。標準特許(O)の実体審査の詳細は、特許条例第37S条~第37Y条、および特許規則第31ZC条~第31ZP条に記載されている。
・標準特許(R)
標準特許(R)を取得するための再登録制度は2段階(「記録請求」と「登録および付与請求」)であるため、合計2回の審査があり、「記録請求」は特許条例第18~19条および特許規則第8条に、「登録および付与請求」は特許条例第25~26条および特許規則第19条に記載がある。一方、標準特許(R)は、指定特許庁(中国特許庁、英国特許庁、英国を指定した欧州特許の場合の欧州特許庁)による対応する特許の付与に依存しているため、実体審査は行われない。
・短期特許
特許条例第115条、第117条および特許規則第68条に短期特許の方式審査の詳細が記載されている。短期特許の付与には実体審査は必要ないが、特許権者または第三者は、付与後に実体審査の実施を要求することができる。特許権者が短期特許に基づき、執行措置を開始する場合、実体審査が前提条件とされる(特許条例第127A条~第127C条、特許規則第81A条~第81O条)。
(2) 早期審査(優先審査)
早期審査(優先審査)の規定はない。
(3) 出願の維持
特許条例の第33条に基づき、出願人は、指定特許出願が記録請求の公開から5年後に付与に進んでいない場合、係属中の標準特許出願(R)に対して年間維持費を支払う必要がある。年間維持費の支払い期日は、指定特許出願日と同月日である。
標準特許(O)および短期特許は、登録前の維持費用は存在しない。
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「香港知的財産局の特許審査体制」(2018.08.09)
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6. 出願から登録までのフローチャート
(1) 出願から登録までの特許出願フローチャート
・標準特許(O)
・標準特許(R)
・短期特許
(2) フローチャートに関する簡単な説明
・標準特許(O)
出願書を提出した後、登録官は出願書を調べて、出願書の記載要件および支払い要件に準拠しているかどうかを確認する。問題がなければ、出願日が与えられる。その後、登録官は、特許条例の第37L条に従って方式要件を検討する。出願が方式要件に準拠していることを確認した場合、出願を公開し、香港知的財産ジャーナルに公告を掲載する。
出願人は、出願日または優先権主張の最も早い日から3年以内に実体審査を申請する必要があり、実体審査請求がなければ出願は取り下げられたと見なされる。
登録官は、実体審査請求と所定の手数料を受け取った後、実体審査を実施し、出願が審査要件に準拠していない場合、その見解を出願人に通知し、出願人は、意見書を提出し、補正を要求することができる。登録官は、審査結果に応じて標準特許(O)を付与して公告するか、拒絶する。
詳細については、特許条例の第37L~37Y条、および特許規則の第31M~31ZP条を参照のこと。
・標準特許(R)
標準特許(R)を出願するための出願プロセスは、(1)指定された特許出願の記録請求の提出と(2)登録および付与の請求の2つの段階に分けられる。
<段階1(記録請求)>
出願人は、指定特許庁で指定された特許出願が公開されてから6月以内に記録請求を提出する必要がある。標準特許(O)と同様に、登録官は、出願人によって提出された書類を審査し、出願日を付与し、その後、方式要件について審査する。欠陥がないか、欠陥が修正された場合、記録請求は公開される。
<段階2(登録および付与請求)>
出願人は、記録請求の公開または指定特許庁による特許の付与後6月以内に、登録および付与請求を提出する必要がある。請求が提出されると、提出日と方式要件の審査が行われる。問題がなければ、登録官は指定された特許を登録し、標準特許(R)として特許を付与し、香港知的財産ジャーナルに公告する。
詳細については、特許条例第15~27条、および特許規則第8~24条を参照のこと。
・短期特許
標準特許と同様に、短期特許も出願時に出願日および方式要件の審査が行われる。登録官は、問題がないか、適正に補正された場合、短期特許を付与し、香港知的財産ジャーナルに公告する。
短期特許は、要求がなければ、実体審査は行われない。
詳細については、特許条例第112A~118条、および特許規則第58~68条を参照のこと。
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7. 付与前後の特許の有効性に異議を申し立てる手順
特許条例第49条は、何人も、付与された香港特許の有効性について、本発明の公表または実施が公序良俗または道徳に反することを根拠として、異議を申し立てることができ、登録官は、この特定の理由で、付与された特許を取り消す権限あることを規定している。
特許条例第91条は、裁判所が、何人かの申請に基づき、付与された特許を取り消すことができる理由を規定している(特許条例第91条(1)(a)~(f)を参照のこと)。
上記の根拠は、3種類の特許に適用されるが、以下に述べるように、特許の種類ごとに付与の前後に異議を申し立てる方法を規定する条項がある。
・標準特許(O)
特許条例第37R条は、標準特許(O)出願の公開時に、発明の特許性に異議を申し立てるために第三者の所見を登録官に提出することができると規定している。付与された標準特許(O)を無効にする具体的な理由については、特許条例の第91条を参照していただきたい。
・標準特許(R)
標準特許(R)に異議を申し立てるための付与前の規定はない。標準特許(R)の付与が指定特許庁の指定特許に基づいていることを考慮し、指定特許庁での所定の異議申立または取消手続の後に指定特許が取り消された場合、標準特許(R)の所有者は取消命令またはその他の所定の文書の検証済みコピーを登録官に提出する義務がある。このような状況では、標準特許(R)は取り消され、効力がなかったものとして扱われる(特許条例第44条)。
・短期特許
短期特許は、付与されるまで公開されず、付与前に異議を申し立てる条項はない。特許条例第126A条は、短期特許出願が特許付与、公開となった後、特許性に関して第三者は所見を登録官に提出できると規定している。
さらに、特許権者または合理的な理由または正当な事業利益を有する当事者が、特許の有効性を判断するための付与後の実体審査を申請するための規定がある(特許条例第127A~127C条、および特許規則第81A~81G条まで)。標準特許(O)と同様に、登録官が短期特許とその補正がすべての審査要件に準拠していないと判断した場合、登録官は特許を取り消さなければならない(特許条例第127G条)。登録官は、短期特許を取り消す暫定決定を発行し、暫定取消通知を発行する(特許規則第81H条)。特許権者は、暫定取消通知の日から2月以内に所定の手数料とともに取消に関する仮決定を検討するよう登録官に請求することができる(特許規則第81I条)。登録官が、それでもなお審査要件に準拠していないと判断した場合は、特許所有者に応答を要求する所見を発行する(特許規則第81J~81K条)。
登録官が必要であると判断した場合(特許規則第81L~81M条)、さらに数回の所見を通知することができる。特許が審査要件を満たせなかったと登録官が判断した場合、短期特許を取り消す最終決定を下し通知する(特許規則第81N条)。
特許所有者は、短期特許を取り消すという登録官の最終決定に対して第一審裁判所に控訴することができる(特許条例第130条)。
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8. 権利設定後の権利範囲の修正
・標準特許(O)
権利所有者は、付与後に特許の明細書を修正するように登録官または裁判所に申請することができる(特許条例第46条、および特許規則第38A条)。
・標準特許(R)
権利所有者は、異議申立または取消手続の後に指定特許庁で対応する指定特許の仕様に対する同じ修正が行われたことに基づいて、特許の修正を裁判所に申請するものとする。(特許条例第43条、46条、および特許規則第35条)。
・短期特許
権利所有者は、特許の実体審査の請求を提出するとき、実体審査中に庁指令に応答するとき、または実体審査証明書の発行後いつでも、特許の明細書の修正を登録官または裁判所に申請できるものとする(特許条例第46条、第127B条、第127D条、および特許規則第81P条)。
関連記事:
「香港における特許の権利取得手続」(2021.09.23)
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「香港における実用新案(短期特許)出願制度概要」(2019.07.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17521/
「香港における特許出願制度概要」(2019.07.02)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17519/
「香港の特許・実用新案関連の法律、規則等」(2019.02.14)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16532/
9. その他の制度
特になし。
タイにおける意匠権関連判例・審決例
「ASEAN主要国における司法動向調査」(2016年3月、日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所知的財産部)第2章第6-2
(目次)
第2章 判例の要旨
第6 タイ
2 意匠権関連判例・審決例 P.113
(1)自転車用泥除け意匠権侵害訴訟(Magic Cycle Industrial v. A N T Commercial & Others) P.113
(2)金網意匠無効請求訴訟(Thai Mesh v. Billion Mesh Industry) P.114
(3)ストロー意匠無効請求訴訟(B&B Straw Pack v. B.D. Straws & Anor) P.116
(4)コップ意匠異議申立訴訟(Thai Elephant Cup v. Department of Intellectual Property & Others) P.118
(5)テーブル脚意匠無効請求訴訟(Duriflex v. Practika) P.119
(6)天板意匠無効審決取消請求訴訟(DCON Products Public v. Department of Intellectual Property) P.121
ブラジルにおける特許権の行使-潜在的リスクの回避方法
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トルコにおける特許実施義務をめぐる問題と対処法
【詳細及び留意点】
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