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メキシコにおける特許の分割出願についての留意点

1.分割出願についての基本的な要件
 2020年11月5日施行の改正産業財産法では、特許の分割出願について、その基本的な要件が第100条に定められている。

メキシコ産業財産法 第100条
自発的又は本庁の要請により分割出願を行う場合、出願人は以下の要件を充足しなければならない。
(1) 各出願に必要な、明細書、クレーム及び図面を提出する。ただし、原出願にすでに含まれている優先権主張に関する書類とその翻訳文、および、該当する場合は、権利の譲渡書ならびに代理人委任状は省略できる。
提出された図面及び明細書において、原出願で意図された発明を修正するような変更をしてはならない。
(2) 分割出願においては、追加の発明主題や最初に提出された範囲を超えた発明主題を含むことなく、原出願とは異なる発明をクレームしなければならない。
分割出願においてクレームされず、原出願にも分割出願にも含まれなくなった発明又はそのような一群の発明は、原出願又は当該分割出願において再びクレームすることはできない。
(3) 分割出願は、本法第111条に定める期間内、または自発的な分割の場合は本法第102条に定める期間内に提出しなければならない。
本法第113条の期間内において、本庁の意見で分割出願が適切であると認められるか、または出願人が要求するかのいずれかでない限り、分割出願に基づいて分割出願をすることはできない。
本法第105条に基づいて出願日とみなされる原出願日の利益は、分割出願が本条に定められた要件を充足しない場合には享受することができない。

※引用条文にいう「本庁」とは、「メキシコ産業財産庁」のことである。

 産業財産法第100条の分割要件を満たしていない場合は、産業財産法第105条の出願日の認定要件を満たして認められた原出願の出願日の利益を享受できないことになるので、注意が必要である。

2.分割出願の方式要件
 分割出願では、明細書、クレームおよび図面を提出する必要がある(産業財産法第100条(1))。ここで、明細書および図面において、原出願で意図された発明を修正するような変更をしてはならないことに留意しなければならない。
 原出願にすでに含まれている優先権主張に関する書類とその翻訳文、権利の譲渡書ならびに代理人委任状は省略できる(産業財産法第100条(1))。
 また、通常の出願において必要とされる要約(産業財産法第106条(6)(c))は、分割出願では必須ではないものと解される。

3.分割出願の時期的要件
3-1.自発的に提出される分割出願

 従来から、特許出願の手続中および特許の付与まで、いつでも自発的な分割出願を提出できたものの、その明文規定がなかったところ、改正により自発的な分割出願が可能であること、および提出期限が明確に規定された(産業財産法第100条(3)、第102条)。

メキシコ産業財産法 第102条
出願人は、本法第100条の規定に従い、必要に応じて、優先権主張して原出願日を各分割出願の出願日として、係属中の原出願を自発的に分割することができる。
前項の目的のために、原出願が不受理、拒絶、放棄又は取下の査定発行前、若しくは、特許協力条約に基づく国際出願の取下とみなされる前、までは原出願は係属中であるとみなす。
出願人は、特許査定又は登録査定を通知された場合でも、本法第110条に規定されている2月以内に原出願を自主的に分割することができる。

 出願人は、原出願が係属中は分割出願することができ、特許査定や登録処理が通知された場合でも、特許許可の通知から2か月以内であれば分割することができる。この2か月は、産業財産法第110条に規定されている、登録のために公報発行の料金および初年度の年金の支払証明を提出することができる期間である。

3-2.単一性欠如の拒絶に対する応答時に提出される分割出願
 改正前の産業財産法第44条には、出願が発明の単一性を満たしていない場合に、分割出願の通知が出願人になされる旨が規定されていたが、改正された産業財産法では、当該規定は第113条に規定されている。

メキシコ産業財産法 第113条
本法第111条記載の拒絶理由が、発明の単一性要件を満たさない場合、本庁はクレームの第1クレーム記載の発明のみを主発明とみなし、それから、本法で定められた他の要件の充足性を評価する。
この場合、本庁は出願人に主発明のクレームに限定することを要求し、必要があれば、本法第111条に記載の期限内に対応する分割出願を要求する。
分割出願は、本法に定められた要件に準拠している場合、当初の出願日及び必要な場合には適切な優先権主張日を保持する。

 産業財産法第111条に記載の期限とは、いわゆる拒絶理由通知の応答期限のことである。実体審査の結果、請求された特許の付与に対する拒絶理由が発見された場合、メキシコ産業財産庁は出願人に対して、2か月の期間内に応答することを要求することができる(産業財産法第111条)。

メキシコ産業財産法 第111条
実体審査の結果、請求された特許の付与に対する拒絶理由が発見された場合、本庁はその権限により、出願人に対して、2月の期間内に、応答すること、情報又は書類を提示することを要求することができ、必要な場合には、該当する補正箇所を示して補正することを要求することができる。(以下省略)

 また、産業財産法第113条に規定される単一性違反の拒絶理由通知を受けた場合にのみ、分割出願からさらに分割出願をすることが可能になった点に注意する必要がある(産業財産法第100条(3))。これは、分割出願を親出願とする分割は、自発的には行うことができなくなったことを意味し、分割出願の実務における大きな変更点の一つである。

4.分割出願のクレームに関する要件
 従来から、分割出願は、原出願にて開示された事項のみを含むものでなければならず、さらに、分割出願でクレームされる発明は親出願でクレームされる発明とは異なるものでなければならないとされていた。この点が改正法では明確にされ、分割出願においては、追加の発明主題や最初に提出された範囲を超えた発明主題を含むことなく、原出願とは異なる発明をクレームしなければならないとされた(産業財産法第100条(2))。

 さらに、分割出願のクレームに関する実務における留意点は、分割出願においてクレームされず、原出願にも分割出願にも含まれなくなった発明またはそのような一群の発明は、原出願または当該分割出願において再びクレームすることはできないと条文に明記されたことである(産業財産法第100条(2))。したがって、例えば、発明の単一性違反の拒絶理由通知を受けて分割出願を検討する際に、事業との関連で発明の保護を求める範囲が変動する可能性のある場合は、分割出願において必要なクレームを全て記載しておくことが望ましい。

5.分割出願の公開
 分割出願の公開は、方式審査が承認された後、出願日または場合によっては優先日から18か月の期間が経過した後に行われる(産業財産法第107条)。

6.分割出願と無効理由
 分割出願の結果、産業財産法第100条の規定に違反して行われた事項に対応するクレームを含む場合、特許は無効とされる(産業財産法第154条(4))。無効審判は、公報で特許が公示された日からいつでも請求することができる。

マレーシアにおける2022年特許法改正の概要(後編)

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韓国におけるパリ条約ルートおよびPCTルートの特許出願の相違点

1.パリ条約ルートによる特許出願
 パリ条約ルートによる特許出願とは、パリ条約の同盟国の国民または韓国の国民がパリ条約の同盟国に特許出願をした後、同一の発明をパリ条約による優先権を主張して韓国に出願した特許出願のことをいう(特許法第54条第1項)。

2.PCTルートによる特許出願
 PCTルートによる特許出願とは、特許協力条約によって国際出願日が認められた国際出願として特許を受けるために大韓民国を指定国に指定した国際出願(その国際出願日に出願された特許出願とみなされる国際特許出願)のことをいう(特許法第199条)。

3.両特許出願ルートの相違点
(1) 優先権主張について
 パリ条約ルートによる特許出願は、その定義上、基礎出願の優先権主張を伴う(特許法第54条)。これに対して、PCTルートによる特許出願は、パリ条約に基づく優先権主張も可能であるが、1つの出願願書を特許協力条約に従って提出することにより、条約加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果を得ることを目的としたものであるから、優先権主張を伴わない場合がある。

(2) 韓国特許出願における期限の違い
 パリ条約ルートによる特許出願の場合、優先権主張の基礎となる出願の最初の出願日から1年以内に特許出願をしなければ、優先権を主張することができない(特許法第54条第2項)。なお、韓国語ではない言語で特許出願した場合は、優先権主張の基礎となる出願の最初の出願日から1年2か月以内に韓国語翻訳文を提出しなければならない(特許法第42条の3第2項、第64条)。

 PCTルートによる特許出願の場合、国内段階への移行手続を優先日(優先日は特許協力条約第2条(xi)に規定されており、国際出願が優先権主張を伴う場合には同優先権の基礎となる出願の日、国際出願が2以上の優先権主張を伴う場合にはそれらの優先権の主張の基礎となる出願のうち最先のものの日、国際出願が優先権主張を伴わない場合には国際出願日である)から2年7か月以内に行わなければならない。ここで、国内段階に移行する際の韓国語翻訳文は優先日から2年7か月(韓国内書面提出期間)以内に提出しなければならなかったが、2015年1月1日以降は、国内書面提出期間満了日前1か月からその満了日までに韓国語翻訳文の提出期間の延長を申請することにより、国内書面提出期間の満了日から1か月となる日まで韓国語翻訳文の提出期限を延ばすことが可能となった。したがって、翻訳文の補完期限は最大32か月となる(特許法第201条第1項)。

 以上のとおり、PCTルートによる特許出願の場合、出願人としては、パリ条約ルートによる特許出願よりも長い韓国語翻訳文の提出期限の利益を享有することができる。例えば、韓国での事業メリットや経営状況、韓国の経済状況、韓国での登録可能性等を十分考慮した上で韓国語翻訳文の提出(国内段階への移行)の要否を決定することができる。

(3) 出願日について
 パリ条約ルートによる特許出願の場合、優先権主張を伴う出願の出願日は基礎出願の出願日に遡及しない。したがって、審査請求期限や特許権の存続期間等は、現実の出願日から起算される。ただし、特許法第29条(新規性、進歩性、拡大先願)および特許法第36条(先願)の判断時点は、基礎出願の出願日に遡及(*)する(特許法第54条第1項、特許・実用新案審査基準 第5部第1章8(3)、特許・実用新案審査基準 第6部第3章7.4(2))。
(*) 韓国の特許・実用新案審査基準では、「遡及」という用語が用いられている。

 PCTルートによる特許出願の場合、出願は、国際出願の出願日(国際出願日)に出願されたものとみなされる。したがって、審査請求期限や特許権の存続期間等は国際出願日から起算される。なお、優先権主張を伴う出願の場合の特許法第29条(新規性、進歩性、拡大先願)および特許法第36条(先願)の判断時点は、基礎出願の出願日に遡及する(特許法第199条、特許・実用新案審査基準 第5部第1章8(2))。

(4) 国際調査報告および国際予備審査報告を受けた補正について
 PCTルートの場合、出願人は国際出願について、国際調査報告を受け取った後に特許協力条約第19条に基づいて請求の範囲を補正したり、または国際予備審査報告が作成される前に特許協力条約第34条に基づいて明細書、請求の範囲および図面について補正したりすることができる。ここで、出願人は国内段階に移行した後、基準日(基準日は国内書面提出期間の満了日と同一であるが、その期間内に出願人が審査の請求をしたときにはそのときをいう)までに特許協力条約第19条および第34条に基づく補正書の翻訳文(外国語で出願した場合)または補正書の写し(韓国語で出願した場合)を、韓国特許庁に提出しなければならない(特許法第204条第1項、第205条第1項)。また、補正書の翻訳文または写しが提出された場合は、請求の範囲、明細書または図面が補正されたものとみなされる(特許法第204条第2項、第205条第2項)。なお、補正書の翻訳文または写しを提出しなかった場合は、原則として補正されたものとみなされない(特許法第204条第4項、第205条第3項)。
 したがって、出願人は国際調査報告および国際予備審査報告の特許性についての見解を受けて、登録可能性を高めるために補正書の翻訳文または写しを韓国での審査前にあらかじめ提出することができる。

 これに対して、パリ条約ルートによる特許出願の場合、出願人は国際調査報告や国際予備審査報告を受けることができない。出願人は、基礎出願の審査結果または韓国での審査結果に基づいて対応するしかない。パリ条約ルートによる特許出願は、PCTルートによる特許出願に比べて非効率的な面がある。

(5) 自発補正期間の違い
 パリ条約ルートによる特許出願の場合、出願から特許決定の謄本を送達する前までは、拒絶理由通知を受けた場合を除き、いつでも自発的に明細書(**)または図面を補正することができる(特許法第47条第1項)。
(**) 明細書には、発明の詳細な説明および特許請求の範囲が含まれる。

 これに対して、PCTルートによる特許出願の場合、基準日(***)が経過するまでは、特許協力条約第19条および第34条に基づく補正書の提出のみが可能であり、この意味において自発補正が可能な期間が限られている(特許法第208条)。
(***)基準日:(基準日は国内書面提出期間の満了日と同一であるが、その期間内に出願人が審査の請求をしたときにはそのときをいう)(特許法第201条第5項)

インドネシアにおける商標異議申立制度

 インドネシアにおいて、商標出願に対する異議申立は、「商標及び地理的表示法」第20/2016号第14条、第15条、第16条および第17条に規定されている。以下に述べる異議申立手続は、2016年11月25日から実施されている。
 法律第11/2020号による改正(以下、「商標法2020」)により、これまでの実体審査が公開期間終了後30日以内に開始され、150日以内に完了とされていたものが、公開期間終了時に開始され、異議のない出願については30日以内、異議のあった出願については90日以内に終了しなければならないとされた。
 異議申立は、商標出願の公告期間中に提起することができる。商標法2020第13条に従い、商標出願は全ての方式要件を満たした時点で出願日が付与される。法定の公告期間は、遅くとも出願日の15日後から始まる2か月間である。
 商標出願が認可されると、インドネシア知的財産総局(Directorate General of Intellectual Property Rights;以下、「DGIP」)は商標公報およびDGIPのウェブサイトにおいて出願を公告する。公告は、2か月間にわたり実施される。
 商標法2020第16条(1)項に従い、上記の公告期間中に、何人も、DGIPに書面による異議申立を提起することができる。異議申立の際には、オフィシャルフィーを支払わなければならない。
 異議申立の際に要求されるオフィシャルフィーは、法務人権省(Ministry of Justice and Human Rights Affairs)内で適用される非課税収益の種類および料金に関する政令第28/2019号に定められており、金額は商標出願1件につき100万ルピアである。

1.異議申立の理由
 異議申立の理由は、商標法2020に下記のように規定されている。

(1) 商標法2020第20条

次の商標は登録できない:
a. 国家のイデオロギー、法規、道徳規範、宗教、倫理、公序良俗に反するもの;
b. 登録対象の商品/サービスと同じ名称、これを説明するもの、又はその単なる言及に過ぎないもの;
c. 登録対象の商品/サービスの出所、品質、形式、サイズ、種類、又はその使用目的について、公衆を誤認させる可能性のある要素を含んでいるもの、又は同類の商品/サービスに対し保護対象となっている植物品種の名称。
d. 生産された商品/サービスの品質、便宜又は効能と一致しない情報を含んでいる。
e. 識別性を有する特徴がないもの;
f. 一般名称、公有財産の象徴となっているもの;
g. 機能的な形態が含まれているもの。

 2020年の改正により、機能的な形態が含まれる標章の商標登録ができないとされた。

(2) 商標法2020第21条

1) 商標の要部又は全体が、次のいずれかと類似する場合、出願は拒絶される;
a. 同類の商品/サービスに関して既に登録又は出願されている、他者の所有する商標;
b. 同類の商品/サービスに関して、他者の所有する周知商標;
c. 特定の条件を満たす、同じ種類ではない商品/サービスに関して他者の所有する周知商標;又は
d. 登録済みの地理的表示
2) 次に該当する商標は拒絶される;
a. 有名人の名前、略称、写真又は他者が所有する法人の名称に相当する、又はこれと類似するもの。但し、正当な権利者の書面による同意がある場合を除く。
b. 国家又は国内もしくは国際機関の名称又は略称、旗、紋章、シンボル又は象徴を模倣する、又はこれと類似するもの。但し、管轄当局の書面による同意がある場合を除く;
c. 国家又は政府機関によって使用される公的な標識、印章又は証印を模倣する、又はこれと類似するもの。但し管轄当局の書面による同意がある場合を除く。
3) 出願人が悪意をもって提出した商標出願は拒絶される。
4) 1)項a項~c項までにいう、商標出願の拒絶に関する更なる詳細な規定は、大臣令により定められる。

2.異議申立の内容
 商標法2020第16条(2)項に従い、異議申立は、十分な理由と共に、出願商標が商標法2020に基づき登録されるべきではない、または拒絶されるべきであることを証明する証拠を提出することができる。

 異議申立は、異議理由を示す異議申立書に異議理由を裏付ける証拠を添付して提出される。異議申立を提出する際に必要な証拠の量に関する規定は存在しない。異議申立時に提出されなかった追加の証拠がある場合、異議申立人は、異議申立日から2週間以内であれば追加証拠を提出することができる。

商標法2020第16条

1) 第14条にいう公告期間中、何人もそれぞれ大臣宛の書面で手数料を支払い、当該の出願に異議を申立てることができる。
2) 1)項にいう異議申立ては,出願されている商標が本法に基づき、登録不可能又は拒絶されるべきであることが、証拠を伴う十分な理由がある場合に申立てることが出来る。
3) 1)項にいう異議申立てがあった場合,異議申立受理日から起算して14日間以内に,当該異議申立書の写しが出願人又は代理人宛に送達される。

3.異議申立の手続期間
 商標法2020第16条(3)項に従い、異議申立が提出されると、DGIPは異議申立を受領した日から遅くとも14日以内に、異議申立書の写しを出願人に送付する。
 出願人は、DGIPから送付された異議申立書の写しの送達日から2か月以内に、異議申立に対する答弁書を提出することができる(商標法2020第17条(2)項)。
 商標法2020に定められた異議申立手続は、3つの段階からなる。第1段階は異議申立人による異議申立書の提出であり、第2段階は出願人による答弁書の提出であり、最後の段階はDGIPにより下される異議決定である。さらに、異議申立人および出願人は、異議申立書または答弁書について説明するために、DGIPにヒアリングを要求することができる。ヒアリングはDGIPにおいて行われる。
 DGIPは、答弁書の提出期限から1か月以内に、当該出願の実体審査において、異議申立書および答弁書を審査資料として検討する(商標法2020第23条(2)項および(4)項)。
 DGIPは、公告期間の満了日もしくは答弁書提出期限から、異議のない場合は30営業日以内に、異議のあった場合は90営業日以内に、当該出願の実体審査を完了する。
 審査官が実体審査の結果、商標出願を認可できないと判断した場合、DGIPは出願人に対し、当該出願は登録できない、または拒絶される旨を書面で通知する。その場合、出願人は、当該通知の送達日から30日以内に応答する機会を与えられる(商標法2020第24条(3)項)。
 審査官が実体審査の結果、商標出願を認可できると判断した場合、当該出願は商標登録簿に登録される(商標法2020第24条1)項)。
 DGIPは、実体審査の結果について、異議申立人にも書面で通知する。

商標法2020第17条

1) 出願人又は代理人は、第16条にいう異議申立てに対する答弁書を提出する権利を持つ。
2) 1)項にいう答弁書は、大臣によって異議申立書の写しが送達された日付から起算して2カ月間以内に書面で提出されること。

商標法2020第23条

1) 実体審査とは、商標登録出願に対し、審査官が行う審査である。
2) 第16条及び第17条にいう異議申立て又は答弁は全て、1)項にいう実体審査において考慮対象とされる。
3) 公告期間満了日までに異議申立が提起されなかった場合、出願の実体審査が実施される。
4) 3)項にいう実体審査は、30日以内に完了するものとする。
5) 第17条にいう答弁書の提出期限最終日から起算して30日以内に、異議申立てが提起された場合、出願の実体審査が実施される。
6) 5)項にいう実体審査は、最長で90日以内に完了するものとする。
7) 実体審査実施のための必要に応じて、審査官以外の商標審査専門家を配置することが出来る。
8) 7)項にいう商標審査専門家によって行われた実体審査結果は、大臣の承認によって、審査官によって行われた実体審査結果と同等とみなすことが出来る。

商標法2020第24条

1) 審査官が、出願を登録可能であると決定すると、大臣は:
a. 当該商標を登録する;
b. 当該商標が登録されたことを出願人又は代理人に通知する;
c. 商標証書を発行する;及び
d. 当該商標の登録を、電子及び非電子媒体の商標官報上で公表する。
2) 審査官が、出願を登録不可能である又は拒絶すると判断した場合、大臣は出願人又は代理人に、拒絶理由通知書を送る。
3) 出願人又は代理人は,2)項にいう通知書を受け取った日付から30日以内に,その応答の理由を記載した応答書を提出することが出来る。
4) 出願人又は代理人が、3)項にいう応答書を提出しなかった場合、大臣は当該出願の拒絶を決定する。
5) 3)項にいう応答書を出願人又は代理人が提出し、審査官がその応答書を検討可能であると判断した場合、大臣は1)項に記載した規定を実施する。
6) 出願人又は代理人が3)項にいう応答書を提出し、審査官がそれを検討不可能であると判断した場合、大臣はその出願の拒絶を決定する。
7) 4)項及び6)項にいうような拒絶は、その理由を記載した文書により、出願人又は代理人に通知される。
8) 第16条にいう異議申立てのある場合、大臣は登録又は拒絶の通知書の写しを、当該異議申立の提起者宛てに送達する。

4.異議申立の取下げ
 異議申立人は、審査官が出願の実体審査結果を決定する前であれば、DGIPに対して、異議申立の取下げ書を提出することができる。異議申立を取下げる一般的な理由としては、異議申立人と出願人との間で、商標譲渡契約、共存合意契約などを締結した場合が挙げられる。

5.審査官の拒絶査定に対する不服
 審査官の拒絶査定に対して不服がある場合、出願人は、商標審判委員会に審判請求を提起することができ、その写しは、オフィシャルフィーの支払いをもってDGIPに送付される(商標法2020第28条2)項)。

商標法2020第28条

1) 第20条又は第21条にいうような理由に基づく出願の拒絶査定に対しては、審判請求を提出することが出来る。
2) 審判請求は有料で、出願人又は代理人から商標審判委員会宛に書面を提出し、その写しは大臣に届けられる。
3) 審判請求書は、拒絶査定に対する不服の理由を添え、完全に説明した上で提出すること。
4) 3)項にいう理由は拒絶された出願を改善又は補足するためのものではないこと。

 審判請求書は、出願の拒絶査定の送達日から3か月以内に提出しなければならない(商標法2020第29条(1)項)。

商標法2020第29条

1) 拒絶された出願に対する審判請求は、拒絶査定の送達日から数えて90日以内に提出されること。
2) 1)項にいう審判請求が提出されなかった場合は、拒絶査定が出願者により受入れられたものとみなされる。

 なお、異議申立以外に、関連当事者は商事裁判所に取消訴訟を提起することができる(商標法2020第76条)。

商標法2020第76条

1) 商標登録の取消訴訟は、第20条又は第21条にいう事由に基づき、関連当事者によって提訴することが出来る。
2) 登録されていない商標の所有者は、大臣宛に商標登録の出願を行った後、1)項にいうような訴訟を提訴することが出来る。
3) 登録商標所有者に対する取消訴訟は、商事裁判所に提訴する。

フィリピンにおける商標の使用宣誓書

 商標出願に際して商標の使用証拠は必要とされないが、商標の実際の使用に関する宣誓書(Declaration of Actual Use : DAU)およびフィリピンにおける当該商標の商業的使用の証拠を提出することが義務づけられている。DAUは、以下に示す期間内に提出しなければならない。

(a)出願日から起算して3年以内

(b)商標の登録日から起算して5年を経過した日から1年以内

(c)商標の更新日から起算して1年以内

(d)商標の更新日から起算して5年を経過した日から1年以内

 出願人または登録人は、上記期限満了前に、上記(a)のDAU提出期限について1回に限り6ヶ月の延長を請求することができる。ただし、上記(b)(c)(d)のDAUの提出期限については延長することはできない。

 DAUが提出されない場合、自動的に当該商標出願は拒絶され、または登録が取消される。使用宣誓書の提出についてまとめると以下の通りとなる。

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 日本の権利者が提出すべき書類

(1)商標の実際の使用に関する宣誓書(Declaration of Actual Use : DAU)

宣誓書フォームに商標権者による署名が必要。署名後、公証人による公証(notarization)が必要である。

宣誓書フォーム

https://drive.google.com/file/d/1IVF-3-l6zkjHGQiPLA6ng8umnemBMEpq/view

(アクセス出来ない場合には、フィリピン知的財産庁(IPOPHL)申請書ページhttps://www.ipophil.gov.ph/application-forms/の「TRADEMARK-Declaration_of_Actual_Use」をクリックしてください。

(2)商標使用の証拠

商標規則に基づき、商標の実際の使用を示す証拠として、下記のものを提出することができる。

(a)商標の使用を示すラベル

(b)フィリピンで商品が販売されている、またはサービスが提供されていることを明確に示す出願人または登録人のウェブサイトからの出力

(c)商標の付した商品の写真、もしくはサービスが提供されている店舗の写真

(d)フィリピンにおける商標の実際の使用を示す販促資料

(e)商品もしくはサービスがフィリピンで入手可能であることを示す商品もしくはサービス提供に関する領収書または請求書

(f)商標の使用を示すサービスに関する契約書の写し

(3)不使用の宣誓

 下記のいずれかの場合には、DAUに代わり、不使用に関する宣誓書を提出することができる。

(a)出願人または登録人が、商品を上市する、またはサービスを提供する前に、別の政府機関により課せられた要件のために、商標を商業的に使用することを禁じられた場合

(b)商標の使用を禁じる禁止命令または差止命令が、法務局、裁判所、または準司法機関により出された場合

(c)商標が異議申立または取消訴訟の対象となっている場合

 商標の不使用は、商標所有者の意思とは無関係に生じる状況により引き起こされた場合に許容される。ただし、資金不足は商標の不使用の正当な理由とはならない。不使用に関する宣誓書は、宣誓の上、商標の実際の商業的使用を妨げている事実を明確に示さなければならない。

フィリピンにおける分割出願に関する留意点

【詳細】

1.自発的な分割出願

 自発的な分割出願は、親出願が取り下げられるか、または特許が付与される前であればいつでも行うことができる。特許に関する改正施行規則規定(IRR)の規則611では、自発的な分割出願が以下のように規定されている。

 

「規則611 自発的な分割出願

 出願人は、親出願が取り下げられる前か、または特許が付与される前に、係属中の出願に基づき自発的に分割出願を行うことができる。ただし、分割出願の内容は親出願の内容を超えてはならない。

 自発的な分割出願は、親出願と同じ出願日が付与され、優先権の利益が得られる。(以下、省略)」

 

2.庁指令に応じて行う分割出願

 フィリピン知的財産権局(IPOPHL)の局長は、発明の単一性を満たさない出願に対して単一の発明に限定するよう要求する庁指令(限定要求)を発することができる。限定要求に応じて、出願人は分割出願をすることができるが、その分割出願は限定要求が確定した(*)日から4か月以内に行わなければならない。限定要求に応じて行う分割出願については、IRRの規則604に以下のように規定されている。

 

「規則604 発明の単一性

(a)出願は、一の発明または単一の発明概念を形成する一群の発明に関連しなければならない。(フィリピン知的財産法(IP法)第38条1)

(b)単一の発明概念を形成しない複数の独立した発明が一の出願においてクレームされている場合、局長は、当該出願を単一の発明に限定するよう要求することができる。分割した発明についてなされる後の出願は、最初の出願と同日に出願されたものとみなされる。ただし、分割の要求が確定した後4か月以内、または4か月を超えない範囲で認められる追加期間内に、後の出願がなされることを条件とする。更に、各分割出願は、当初の出願における開示の範囲を超えてはならない。(IP法第38条2)」

 

(*)出願人は限定要求に対して、理由を挙げて、その再考を請求することができる。再考の結果、限定要求が繰り返された場合には、当該限定要求は確定する。(IRR規則606)

 

3.分割出願における審査請求の期限

 IP第44条によれば、分割出願は、実体審査段階の手続に入る前に、IPOPHLの公報において公開される。IP法第48条に基づき、公開から6か月以内に、出願人は書面による実体審査の請求をしなければならない。出願人が6か月以内に実体審査の請求をしなかった場合、分割出願は取り下げられたものとみなされる。

 

4.更なる分割出願

 一つの親出願から複数の分割出願(子出願)を行うことができる。ただし、フィリピンにおける実務では、これら複数の分割出願は全て、親出願の係属中に行わなければならず、分割出願(子出願)から更なる分割出願(孫出願)を行うことは認められていない。

 

5.分割出願のクレーム範囲および二重特許に関する問題

 IRRの規則604および611に従い、分割出願のクレーム範囲は、親出願に開示される範囲、すなわち、親出願の出願時の内容を超えてはならない。

 

 親出願と同一のクレームを含む分割出願は、原則として上記の要件には違反しない。ただし、フィリピンでは、二重特許、すなわち、一つの発明に対して二つの特許を同一の者に付与することは認められていないので、親出願のクレーム範囲と同一範囲のクレームを含む分割出願を行っても、これらの親出願と分割出願の審査は並行して進めることはできない。

 

 したがって、分割出願のクレーム範囲は、親出願のクレーム範囲と重複しないようにすべきである。もし親出願と同一のクレームで分割出願が行う場合には、親出願との二重特許の問題を避けるために、親出願のクレームを補正する必要がある。

台湾における特許分割出願実務

【詳細】

 台湾では、2013年1月1日の「専利法」(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)改正以降、分割出願の提出期限に関する規制が緩和され、原出願の初審審査特許査定書の送達後30日以内に分割出願を行うことが可能となった。しかし、依然として、原出願の特許査定前に分割出願を提出することが推奨される。

 

 その理由の1つは「専利法施行細則」第29条である。この規定によれば、原出願の特許査定後に分割出願する場合、その明細書または図面に開示されかつ原出願の特許査定された特許請求の範囲でない発明につき、分割出願しなければならない。

 

 2つ目の理由は、「専利審査基準」によれば、原出願の初審審査特許査定後に分割出願を提出する場合、原出願がすでに特許査定を受けている以上、分割を理由に原出願の明細書、特許請求の範囲および図面を変更することはできず、原許可内容に基づき公告しなければならないためである。つまり、査定後の分割出願は、原出願の明細書または図面の開示範囲内に限り、かつ特許権による保護をまだ取得していない技術内容についてのみ行うことができる。

 

 特に、原出願に上位概念発明と下位概念発明または一般式で表される化合物(以下、「一般式化合物」)と特定の化合物(以下、「特定化合物」)が含まれており、下位概念発明または特定化合物がすでに原出願の特許請求の範囲において具体的に開示されならびに含まれている場合において、特許戦略、技術ライセンシング、許可証および特許権権利存続期間の延長などの要素に基づいて分割出願の提出を考える場合、原出願の初審審査特許査定書が送達されるのを待ってその30日以内に分割出願を提出すると上記規定の制限を受ける。

 

 したがって、特に分割出願するものが原出願特許査定の特許請求範囲に属さなければ、原出願と分割出願のそれぞれの特許権保護範囲を柔軟に作成することができない。極端な場合では、原出願の特許査定の特許請求範囲と区分できない部分があるため、分割出願を提出することができない。以上より、分割出願する場合、原出願の特許査定前に提出することが推奨される。

 

 化学発明については、原出願に一般式化合物と商業化された特定化合物が含まれている場合、1特許1特許権権利存続期間延長かつ最大限の特許権権利存続期間延長を考慮すれば、商業化された特定化合物を原出願に保留し、かつ、当該出願につき、できるだけ早く特許を取得し、一般式化合物とその他の特定化合物を分割出願することが推奨される。以上に述べた措置によって、出願人は多面的に考慮された特許保護を獲得することができる。

 

 台湾では、第2世代分割出願は第1世代分割出願の初審審査特許査定書の送達後30日以内に提出することができ、原出願が依然として審査過程にあるか否かとは関係がない。

 

 分割出願によって特許戦略の選択肢を増やすことができ、出願人は、質の高い計画と保護を手にすることができるよう、その出願期間と権利範囲についてはっきり理解しておくべきである。

オーストラリアにおける分割出願に関する留意事項

【詳細】

最初に、オーストラリアにおける標準特許出願とイノベーション特許出願を説明する。標準特許出願とは実体審査を経て標準特許が付与される特許出願であり、標準特許の権利期間は出願から20年である。イノベーション特許出願とは実体審査を経ずにイノベーション特許が付与される特許出願であり、イノベーション特許の権利期間は出願から8年である。イノベーション特許は実体審査を経ずに付与されるが、権利行使をするには、審査請求を行い実体審査されたことの証明(certificate)(以下、「審査証明」と称する)を得る必要がある。

 

オーストラリアでは、下記の理由により分割出願が行われる。

・発明の単一性に係る拒絶理由への対応のため

・出願認可後に、より狭いクレームまたは代替のクレームでの権利化を目指すため

・侵害者への権利行使を行う目的で、速やかにイノベーション特許の付与とその審査証明を得るため

・出願が認可期限(最初の審査報告書の日から12か月)までに認可されなかった場合に審査を継続するため

 

オーストラリアの分割出願は、標準特許出願、イノベーション特許出願、分割出願(標準特許)、分割出願(イノベーション特許)、およびPCT出願に基づき出願することができる。親出願が標準特許出願であるかイノベーション特許出願であるかに応じて、分割出願に適用される法律や規則が異なる。以下、これらの点について詳細に論じる。

 

1.標準特許出願に基づく分割出願を行うことができる時期

標準特許出願に基づく分割出願の出願期限は、標準特許出願の認可の公告日から3ヶ月である。この期限を延長することはできない。分割出願は、標準特許出願として行うこともできるし、またはイノベーション特許出願として行うこともできる。

この出願期限は、特許付与に対する異議申立人からの異議申立期限と同じである。なお、異議申立を行った際に、出願人に代替のクレーム(例えば、より広範なクレーム)で分割出願を行うことができる期間を与えないために、実務上、異議申立は期限当日に行うのが一般的である。

 

2.イノベーション特許出願に基づく分割出願を行うことができる時期

イノベーション特許出願に基づく分割出願を行うことができる時期としては、下記の2つの期間が存在する。

(1)イノベーション特許出願の出願から特許付与までの期間

この期間は標準特許出願またはイノベーション特許出願として分割出願を行うことができる期間である。イノベーション特許出願は、通常極めて迅速に(例えば、若干の方式審査の後、出願から2~4週間で)権利付与されるため、分割出願を希望する場合には、親イノベーション特許出願後、直ちに分割出願を行う必要がある。なお、親出願が下記(2)に示す期間に出願された分割イノベーション特許出願である場合、この(1)に示される期間は適用されない。

(2)イノベーション特許の審査請求後から審査証明の公告後1ヶ月間

この期間はイノベーション特許出願としてのみ分割出願を行うことができる期間であり、親出願に開示されていた発明についてのみ分割出願を行うことができる(例えば、出願人が、親出願に対して発明の単一性に係る拒絶理由を受けた場合)。

 

3.分割出願の出願要件

分割出願としての地位が認められるためには、分割出願の出願時点において親出願が有効に存続している(すなわち、親出願が、失効しておらず、拒絶または取り下げもされていない)必要がある。しかし、分割出願の出願日以降に親出願が失効、拒絶または取り下げられても、分割出願は無効とならず、分割出願としての地位を失うことはない。

また、分割出願は、親出願に対して優先権の主張ができるクレームを少なくとも1つ含む必要がある。

 

4.分割出願における主題の追加(新規事項)

分割出願には新規事項を含めることが可能である。しかし、この新規事項に関するクレームには、分割出願の優先日が適用され、親出願の優先日は適用されない。

 

5.その他

特許出願の優先日以降に発明に小さな改良または変更が行われた場合、出願人は、これらの改良または変更を保護するために追加特許出願を行うことができる。追加特許出願のクレームは、親特許および親特許出願の開示に対して新規性がなければならないが、親特許および親特許出願の開示に対して進歩性を有する必要はない。

 

追加特許出願については、下記の点に注意する必要がある。

(a)親出願でクレームされた発明の改良または変更に関するものでなくてはならない。

(b)標準特許または標準特許出願に基づき出願できる。

(c)親特許の付与後に権利が付与される。

(d)親特許が有効に存続している間のみ、有効に存続する。

インドネシアにおける特許の分割出願に関する留意点

【詳細】

1. 分割出願に関する特許法上の規定

2001年8月1日付で施行された特許法(2001年法律第14号)では、第36条において分割特許出願が以下のように規定されている。

 

「第36条

  1. 出願が第21条にいう発明の単一性を構成しない複数の発明を含んでいる場合、出願人は、出願の分割を請求することができる。
  2. (1)にいう出願の分割は、一以上の出願として別々に提出できるが、各出願において求められる保護範囲が原出願において求められる保護範囲を拡大していないことを条件とする。
  3. (1)にいう出願の分割は、原出願について第55条(1)または第56条(1)に示した決定が下されるまで請求することができる。
  4. (1)または(2)に定める出願の分割の請求が、第21条および第24条の要件を満たしている場合、当該請求は原出願日と同じ日に提出されたものとみなされる。
  5. 出願人が(3)に定める期間内に出願の分割を請求しない場合、原出願のクレームに記載された発明についてのみ実体審査が行われるものとする。」

 

2. 分割出願における留意点

出願人は、インドネシアでの分割出願にあたって以下の点に注意すべきである。

 

  1. 出願が発明の単一性を満たしていない複数の発明が含まれる場合、その出願からの分割出願を行うことができる。一方、発明の単一性の要件が満たされている場合には、製造物クレームと方法クレームの両方を一つの出願に含めることができるが、それらのクレームを分割出願によって分割することも可能である。
  2. 出願人は自発的に分割出願を行うこともできる(特許規則(1991年政府規則第34号)第7条(a))、審査官が実体審査報告書の中で挙げた発明の単一性欠如の拒絶理由に応じて分割出願を行うこともできる(特許規則第10条(1))。
  3. 分割出願は、原出願に対して特許付与の決定(第55条(1))または拒絶の決定(56条(1))が下される前であれば、いつでも行うことができる。
  4. 分割出願では、原出願の開示の範囲の拡大や、原出願に開示されない新規事項の追加は認められない。
  5.  分割出願では、以下の書類の提出が要求される。
    • 願書(特許規則第4条)
    • 委任状(特許規則第2条)。委任状について公証人認証は必要ない。署名済みの委任状であれば十分である。新たな(分割でない)出願の場合と同様、この委任状は、出願日から3か月以内であれば出願後に提出することができる。
    • 英語の明細書(クレーム及び要約を含む)および発明の説明に必要な図面があれば図面(特許規則第17条)。
    • インドネシア語の明細書(クレーム及び要約を含む)および発明の説明に必要な図面があれば図面(特許規則第2条、第4条)。新たな出願の場合と同様、インドネシア語の明細書及び図面は、出願日から1か月以内であれば出願後に提出することができる。
    • 実体審査請求書。インドネシア知的財産権総局(DGIPR)が2011年9月5日付で発行した通達HKI-77.OT.03.01号によれば、実体審査請求は分割出願の願書と同時に提出されなければならない。

 

3. 特許出願戦略としての分割出願

分割出願は、発明者や企業にとって、自らの発明を有利な権利として保護するための特許出願戦略としても利用することができる。

 

例えば、原出願でのクレームよりも広い範囲のクレームに基づき、分割出願を行うことができる。原出願の明細書には記載されているが、原出願のクレームに含まれていない別の発明を分割出願することで、さまざまな観点での権利化を図ることができる。

 

また、複数の関連する発明を含む明細書で1件の出願として出願し、出願後、特許付与までの期間をインドネシアでの対象製品の市場動向を見極め、権利化すべき発明を選択するための準備期間として利用することもできる。出願人はこの期間に、自発的に分割出願を行うことや、または実体審査における発明の単一性欠如の拒絶理由に対しする応答として分割出願を行うことが可能である。これにより、重要度が高い発明のみを権利化し、出願後に重要度の低下した発明に対しては別途権利化しないという判断を行うことができる。このような手続きの進め方であれば、同時に複数の出願を行う場合と比較して手続き費用の削減が期待できる。

メキシコにおける特許の分割出願についての留意点

【詳細】

メキシコ産業財産法には、特許の分割出願に関して詳細な規定はない。実務上、出願の分割の根拠として言及されるのは、以下に示す第43条および第44条のみである。

・第43条 特許出願は、単一の発明に関するもの、または相互に関連して単一の発明概念を構成する複数の発明に関するものでなければならない。

・第44条 出願が第43条の要件を満たさない場合、産業財産庁は、出願人が2ヶ月以内に当該出願を複数の出願に分割し、分割された各出願の出願日および優先日として当初の出願日および優先日を維持できることを、出願人に書面により通知する。この2ヶ月の期間内に出願人が出願を分割しなかった場合、当該出願は放棄されたものとみなされる。

 

1. 分割出願の提出期限

メキシコにおける分割出願は、下記の期間内に提出することができる。

・単一性欠如の拒絶理由が指摘された庁指令への応答時に提出できる。期限は、庁指令の受領から2か月以内であり、出願人からの申請により、さらに2か月の延長が可能である。

・メキシコ特許出願の手続中および特許の付与までいつでも、自発的な分割出願を提出できる。

自発的な分割出願の提出期限について、メキシコ産業財産法に明文規定はないものの、現行のメキシコ特許実務では、元のメキシコ特許出願の最終的な特許料納付まで、すなわち、特許認可通知の発行後、特許料納付の期間として与えられる2ヶ月の期間内に、分割出願を提出することができるとされている。

 

2. 単一性欠如の拒絶に対する応答時に提出される分割出願

出願が発明の単一性の要件を満たしていない場合、メキシコ産業財産法第44条の規定に基づき、審査官は、出願に含められている複数の発明を特定し、単一性欠如の拒絶理由に基づく庁指令を発行する。出願人は、審査官により特定された発明について、当該出願から、1つあるいは複数の分割出願を提出する判断が求められる。

メキシコ産業財産法第44条によれば、単一性欠如の拒絶を含む庁指令への応答の際に、または当該庁指令への応答期間内に、出願人は1つあるいは複数の分割出願を提出しなければならない。分割出願を提出しなければならない時期に関して、この第44条の規定には、複数の解釈が可能である。第44条を最も厳格に解釈した場合には、庁指令の応答時に、親出願で選択されない発明を、その数に応じてそれぞれ、1つあるいは複数の分割出願として提出しなければならない。

しかしながら、現在のメキシコ産業財産庁の運用は、上記よりは寛容な解釈に基づくものとなっている。例えば、3つ以上の発明が含まれているという単一性欠如の拒絶理由に基づく庁指令の場合には、庁指令への応答時に、選択されなかったその他複数の発明に関するクレームをすべて含めて一つの分割出願として提出することを認めている。その後、分割出願の審査において、複数の発明が含まれていると認められる場合は、単一性欠如の拒絶理由に基づく庁指令が新たに発行され、更なる分割出願の提出期限が設定される。この時点で、出願人が複数の発明の保護を望む場合には、庁指令への応答として再び発明のうちの1つを本分割出願の発明として選択し、選択しなかったその他発明に関して更なる分割出願を提出することができる。

 

3. 分割出願での審査対象クレームと重複特許の問題

メキシコにおいて、分割出願は、原出願にて開示された事項のみを含むものでなければならないが、さらに、分割出願でクレームされる発明は親出願でクレームされる発明とは異なるものでなければならない。すなわち、分割出願は、原出願に含まれていた1以上のクレームにより提出することも可能であるが、既に実体審査の対象とされたクレーム(親出願または先の分割出願のクレーム)と同一のクレームを含む分割出願を提出した場合には、出願人は、後の審査において、既に審査されたクレームとは異なる発明を記載するようにクレームの補正を要求されることとなる。最近の審査では、分割出願における発明が親出願または先の分割出願で既に審査されたものと同じ発明である場合には、新たな審査を行わない審査官もいる。しかし、出願人は、他の出願(親出願または先の分割出願)において未審査のクレーム(既に親出願または分割出願において削除されたクレームを含む)に記載された発明の権利化を分割出願で求めることができる。

したがって、メキシコにおいて特許の分割出願を提出する際、出願人は、親出願または先の分割出願において既に審査された発明を考慮して、分割出願として提出すべきクレームを検討することが望ましい。一方、出願人は、原出願時に提出したすべてのクレームを単一の分割出願として提出した後、手続中または庁指令への応答時に自発的にクレームを補正することも、手続き上は可能である。

 

4. 分割出願の提出要件

分割出願を提出するには、下記の書類が必要である。

・明細書、図面(必要な場合)、塩基配列またはアミノ酸配列に関する配列表(必要な場合)

・1つ以上のクレーム

・正式に署名された譲渡証および委任状(出願人が特許出願に関する権利を第三者に譲渡または移転した場合のみ)

 

5. 分割出願の審査および公開

分割出願は、通常提出日の古い順に審査されるが、親出願で行われた審査の影響を受け、分割出願が比較的早く審査されることがある。

なお、分割出願は、特許付与まで公開されることはない。そのため、メキシコの実務上、出願から分割出願が提出されているかどうかを、第三者が出願公開の情報から知ることはできない。