日本と香港における特許分割出願に関する時期的要件の比較
日本における特許出願の分割出願に係る時期的要件
平成19年3月31日以前に出願された特許出願であるか、平成19年4月1日以降に出願された特許出願であるかによって、時期的要件が異なる。
平成19年3月31日以前に出願された特許出願については、下記の(1)の時または期間内であれば分割出願することができる。
平成19年4月1日以降に出願された特許出願については、下記の(1)~(3)のいずれかの時または期間内であれば分割出願することができる。
(1)願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内(第44条第1項第1号)
なお、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について、補正をすることができる時または期間は、次の(i)~(iv)である。
(i)出願から特許査定の謄本送達前(拒絶理由通知を最初に受けた後を除く)(第17条の2第1項本文)
(ii)審査官(審判請求後は審判官も含む。)から拒絶理由通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第1号、第3号)
(iii)拒絶理由通知を受けた後第48条の7の規定による通知を受けた場合の、指定応答期間内(第17条の2第1項第2号
(iv)拒絶査定不服審判請求と同時(第17条の2第1項第4号)
(2)特許査定(次の(i)および(ii)の特許査定を除く)の謄本送達後30日以内(第44条第1項第2号)
(i)前置審査における特許査定(第163条第3項において準用する第51条)
(ii)審決により、さらに審査に付された場合(第160条第1項)における特許査定
なお、特許「審決」後は分割出願することはできない。また、上記特許査定の謄本送達後30日以内であっても、特許権の設定登録後は、分割出願することはできない。また、(2)に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により第108条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第5項)。
(3)最初の拒絶査定の謄本送達後3月以内(第44条第1項第3号)
(3)に規定する3ヶ月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなされる(第44条第6項)。
条文等根拠:特許法第44条
日本特許法 第44条 特許出願の分割
特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一または二以上の新たな特許出願とすることができる。
一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面について補正をすることができる時または期間内にするとき。
二 特許をすべき旨の査定(第163条第3項において準用する第51条の規定による特許をすべき旨の査定および第160条第1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達があつた日から30日以内にするとき。
三 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から3月以内にするとき。
2~4(略)
5 第1項第2号に規定する30日の期間は、第4条または第108条第3項の規定により同条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
6 第1項第3号に規定する3月の期間は、第4条の規定により第121条第1項に規定する期間が延長されたときは、その延長された期間を限り、延長されたものとみなす。
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香港における特許出願の分割出願の時期的要件
香港における特許出願(標準特許出願)は、香港特許庁に直接出願するものではなく、指定特許庁に出願された特許出願(指定特許出願)が公開された段階で、香港特許庁へ記録請求手続きをするものである。その後、指定特許出願に対して指定特許庁で特許付与された段階で、その指定特許を香港特許庁へ登録付与請求手続きをすることで香港における標準特許が付与される。
標準特許出願からの分割出願を香港特許庁へ直接行うことはできないが、標準特許出願に対応する指定特許出願が指定特許庁で分割された場合に、所定の期間、その分割された指定特許出願を香港特許庁に記録請求することができる。
(指定特許出願の分割出願についての記録請求の時期的要件)
標準特許出願(親出願)に対応する指定特許出願(対応指定特許出願)が指定特許庁において分割された場合であって、その分割指定特許出願の公開日または記録請求公開日(親出願の記録請求公開日)のいずれか遅い方の後6ヶ月以内に、その分割指定特許出願の記録請求(親出願の分割出願に相当)をすることができる。
※なお、標準特許出願とは別に、香港特許庁へ直接出願する短期特許出願(日本の実用新案に相当、権利期間は出願から8年)もある。短期特許出願の場合には、その公開準備が完了する日付の前に、分割短期特許出願を行うことができる。
条文等根拠:特許条例第22条、116条
香港特許条例 第22条 分割指定特許出願の場合の記録請求の規定
(1)標準特許出願において、次に該当する場合は、出願人は、分割指定特許出願の公開日または本条例に基づく記録請求公開日の何れか遅い方の後6ヶ月以内に、登録官に対し、その分割指定特許出願を登録簿に記入するよう請求することができる。
(a)記録請求が第20条に基づき公開されており、かつ、拒絶されておらず、取り下げられておらず、または取下とみなされていない場合、および
(b)対応指定特許出願の出願人またはその権原承継人が指定特許庁において分割特許を出願(「分割対応指定特許出願」)した場合であって、その特許出願が、次に該当する場合
(i)同一の主題に係るものであって、指定特許庁に出願された対応指定特許出願の内容を超えないもの
(ii) 対応指定特許出願の出願日を出願日として有するもの
(iii) 対応指定特許出願と同一の優先権の利益を享受するもの
(2)本条に基づき分割指定特許出願の記録請求が提出される場合は、
(a)それは、先の記録請求の提出日にされたものとみなされ、標準特許出願は、優先権の利益を有する。
(b)(a)に従うことを条件として、本条例の規定は、第15条(1)に基づく記録請求に適用されるように、分割指定特許出願の記録請求に適用される。
(3)本条例の他の規定の本条への適用上、
(a)当該他の規定において対応指定特許出願というときは、(1)(b)に規定される分割指定特許出願をいうものと解釈する。
(b)当該他の規定において対応指定特許というときは、分割指定特許出願により付与される指定特許をいうものと解釈する。
香港特許条例 第116条 分割短期特許出願
短期特許出願がなされた後、特許明細書の公開の準備が完了する第122条に基づく日付の前に、短期特許の新規出願が、所定の規則に従い原出願人または当該人の権原承継人によりなされた場合であって、出願が次に該当する場合は、当該新規出願は、先の短期特許出願の出願日をその出願日として有するものとして取り扱い、如何なる優先権の利益をも有する。
(a) 先の短期特許出願に含まれる主題の何れかの部分に関するものである場合
(b) 規則に定める手続および期限を含む関連要件を遵守するものである場合、および
(c) 第103条に違反しないものである場合
日本と香港における特許分割出願に関する時期的要件の比較
日本 |
香港 |
|
分割出願の時期的要件(注) |
補正ができる期間 |
分割指定特許出願の公開日または記録請求公開日の何れか遅い方の6ヶ月以内 |
(注)査定(特許査定または拒絶査定)前の時期的要件の比較
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国、地域における分割出願の要件については、下記のとおりである。
分割出願の時期的要件および出願人による自発的な分割可否に関する各国比較
国 |
分割出願の可否(出願から審査請求まで) |
分割出願の可否(審査請求から最初の指令書(拒絶理由通知などの通知)まで) |
分割出願の可否(最初の指令書~査定まで) |
出願人による自発的な分割の可否 |
JP |
○ |
○ |
指令書応答期間のみ |
○ |
BR |
○ |
○ |
○ |
○ |
CN |
○ |
○ |
○ |
○ |
HK |
- |
- |
- |
○* |
ID |
○ |
○ |
○ |
○ |
IN |
○ |
○ |
○ |
○ |
KR |
○ |
○ |
指令書応答期間のみ |
○ |
MY |
○ |
○ |
審査報告書郵送から3ヶ月 |
○ |
PH |
○ |
○ |
○** |
○ |
RU |
○ |
○ |
○ |
○ |
SG |
○ |
○ |
○ |
○ |
TH |
× |
× |
分割指令発行から120日 |
× |
TW |
○ |
○ |
○ |
○ |
VN |
○ |
○ |
○ |
○ |
(*)香港の標準特許出願に対応する指定特許出願の分割についての可否
(**)単一性違反の指令後の非選択発明についての分割は、その指令書発行から4ヶ月以内または4ヶ月を超えない範囲で認められる追加の期間内
日本と香港における特許出願書類の比較
日本における特許出願の出願書類
(1)出願書類
所定の様式により作成した以下の書面を提出する。
・願書
・明細書
・特許請求の範囲
・必要な図面
・要約書
条文等根拠:特許法第36条
日本特許法 第36条 特許出願
特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名または名称および住所または居所
二 発明者の氏名および住所または居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。
5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
(2)手続言語
日本語
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
英語により作成した外国語書面を願書に添付して出願することができる。その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
条文等根拠:特許法第36条の2、特許法施行規則第25条の4
日本特許法 第36条の2
特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面および要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書または特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面および必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条第七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。
2 前項の規定により外国語書面および外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年二月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願が第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項もしくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願または第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合にあっては、本文の期間の経過後であっても、その特許出願の分割、出願の変更または実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。
3 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の同項に規定する翻訳文の提出がなかったときは、その特許出願は、取り下げられたものとみなす。
4 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第二項に規定する期間内に当該翻訳文を提出することができなかったことについて正当な理由があるときは、その理由がなくなった日から二月以内で同項に規定する期間の経過後一年以内に限り、同項に規定する外国語書面および外国語要約書面の翻訳文を特許庁長官に提出することができる。
5 前項の規定により提出された翻訳文は、第二項に規定する期間が満了する時に特許庁長官に提出されたものとみなす。
6 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲および図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は同条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。
日本特許法施行規則 第25条の4 外国語書面出願の言語
特許法第三十六条の二第一項 の経済産業省令で定める外国語は、英語とする。
(4)優先権主張手続
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を記載した書類を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
ただし、日本国特許庁と一部の外国特許庁、機関との間では、優先権書類の電子的交換を実施しており、出願人が所定の手続を行うことで、パリ条約による優先権主張をした者が行う必要がある書面(紙)による優先権書類の提出を省略することが可能となっている。
条文等根拠:特許法第43条
日本特許法 第43条 パリ条約による優先権主張の手続
パリ条約第四条D(1)の規定により特許出願について優先権を主張しようとする者は、その旨並びに最初に出願をしもしくは同条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をしまたは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の国名および出願の年月日を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。
2 前項の規定による優先権の主張をした者は、最初に出願をし、もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願をし、もしくは同条A(2)の規定により最初に出願をしたものと認められたパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面、その出願の際の書類で明細書、特許請求の範囲もしくは実用新案登録請求の範囲および図面に相当するものの謄本またはこれらと同様な内容を有する公報もしくは証明書であってその同盟国の政府が発行したものを次の各号に掲げる日のうち最先の日から一年四月以内に特許庁長官に提出しなければならない。
一 当該最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により当該最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により当該最初の出願と認められた出願の日
二 その特許出願が第四十一条第一項の規定による優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
三 その特許出願が前項または次条第一項もしくは第二項の規定による他の優先権の主張を伴う場合における当該優先権の主張の基礎とした出願の日
3 第一項の規定による優先権の主張をした者は、最初の出願もしくはパリ条約第四条C(4)の規定により最初の出願とみなされた出願または同条A(2)の規定により最初の出願と認められた出願の番号を記載した書面を前項に規定する書類とともに特許庁長官に提出しなければならない。ただし、同項に規定する書類の提出前にその番号を知ることができないときは、当該書面に代えてその理由を記載した書面を提出し、かつ、その番号を知ったときは、遅滞なく、その番号を記載した書面を提出しなければならない。
4 第一項の規定による優先権の主張をした者が第二項に規定する期間内に同項に規定する書類を提出しないときは、当該優先権の主張は、その効力を失う。
5 第二項に規定する書類に記載されている事項を電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によりパリ条約の同盟国の政府または工業所有権に関する国際機関との間で交換することができる場合として経済産業省令で定める場合において、第一項の規定による優先権の主張をした者が、第二項に規定する期間内に、出願の番号その他の当該事項を交換するために必要な事項として経済産業省令で定める事項を記載した書面を特許庁長官に提出したときは、前二項の規定の適用については、第二項に規定する書類を提出したものとみなす。
<参考URL>
(特許庁:優先権書類の提出省略について(優先権書類データの特許庁間における電子的交換について))
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/yuusennkenn_syouryaku.htm
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香港における特許出願の出願書類(標準特許出願)
(1)出願書類
香港における標準特許出願は、香港特許庁に直接出願するものでなく、指定特許庁に出願手続きを行い(指定特許出願)、指定特許出願が公開された段階で、香港特許庁に対して「記録請求手続き」を行うものである。その後、指定特許出願が指定特許庁により特許付与された段階で、その指定特許に基づき香港特許庁に対して「登録および付与請求」の手続きをすることで香港における標準特許が付与される。
(標準特許出願の出願書類)
香港特許庁に対する記録請求手続きは、前述の通り、指定特許出願が公開された事実に基づき行う。具体的には、指定特許庁での出願公開日から6ヶ月以内に、特許条例第15条(2)に定められた情報および書類の提出が求められる。
条文等根拠:特許条例第15条
香港特許条例 第15条 記録請求の提出
(1)第12条(1)に基づき発明の標準特許付与の出願をする権利を有する者は、当該発明の特許につき指定特許庁における出願公開日後6月以内のいつでも、登録官に対しその指定特許出願の記録を登録簿に記入するよう請求すること(本条例で「記録請求」という)ができる。
(2)個々の当該請求は、出願人により署名され、所定の様式で登録官に提出され、次のものを含むものとする。
(a)公開された指定特許出願の写真複写。すなわち、指定特許出願と共に公開された説明、クレーム、図面、調査報告または要約を含む。
(b)指定特許出願が発明者として何人かの名称を含まない場合は、出願人が発明者と信じる者を特定する陳述書
(c)請求人の名称および住所
(d)請求人が指定特許出願に出願人として記載されている者とは別の場合は、発明の標準特許付与出願の権利を説明する陳述書およびその陳述書を裏付ける所定の書類
(e)第98条に規定される、先の出願に基づき指定特許庁で享受される優先権に関し、同条に基づく優先権が主張されている場合は、次の詳細を示す陳述書
(i) 主張されている優先日
(ii) 先の出願が提出された国
(f)指定特許出願の出願時に、指定特許庁の法律の適用上新規性を害さない開示であった発明の先の開示について指定特許庁の法律に従って主張がなされた場合は、当該先の開示についての所定の詳細を示す陳述書、および
(g)書類送達のための香港における宛先
※指定特許庁/指定特許
指定特許庁として、以下の3つの特許庁が指定されている。
・中華人民共和国国家知識産権局
・欧州特許庁(英国を指定した特許に限る)
・英国特許庁
したがって、香港において標準特許の権利化を求める場合は、中国出願、英国出願あるいは(英国指定を含む)欧州出願を行う必要がある。
条文等根拠:香港特許条例第4条および第8条
香港特許条例 第4条 「指定特許」等の意味
(1)本条例で、文脈上別異の解釈を要する場合を除き、
「指定特許」とは、指定特許庁により付与された特許をいう。
「指定特許出願」とは、次のものをいう。
(a)指定特許庁での特許の出願であって、指定特許庁の法律に基づき公開されたもの
(b)公開された国際出願であって、指定特許庁で有効に国内段階に入ったもの
「指定特許庁」とは、第8条に基づき本条例の適用上指定された特許庁をいう。
(2)本条例で、文脈上別異の解釈を要する場合を除き、次の言及については、それぞれの意味の通りである。
(a)標準特許に係る「対応指定特許」というときは、標準特許付与出願において第27条に基づき登録された指定特許をいう。
(b)「対応指定特許出願」というときは、
(i)発明の標準特許出願については、その発明に係る指定特許出願をいい、
(ii)標準特許については、対応指定特許の付与をもたらした指定特許出願をいう。
香港特許条例 第8条 特許庁の指定
行政長官は、本条例の適用上、官報告示により、香港を除く国、領土もしくは地域の法律に基づき設立された特許庁または国際協定に基づき設立された特許庁を指定することができる。
※登録および付与請求
指定特許出願が指定特許庁により特許付与された段階で、その指定特許に基づき香港特許庁に対して「登録付与請求手続き」をすることで香港における標準特許が付与される。
条文等根拠:香港特許条例第23条
香港特許条例 第23条 登録および付与請求の提出
(1)標準特許出願において、次に該当する場合は、出願人またはその権原承継人は、(2)に従うことを条件として、登録官に対し、指定特許の公開された明細書に記載された発明に対して付与された指定特許の登録および標準特許の付与を請求すること(本条例で「登録および付与請求」)というができる。
(a)指定特許出願が登録簿に記録され、記録請求が公開されており、また記録請求が拒絶されず、または取下もしくは放棄とみなされない(この部に基づくか第III部に基づくかを問わない)場合、および
(b)指定特許出願により指定特許庁において特許が付与されている場合
(2)(1)に基づく登録および付与請求は、指定特許庁による指定特許付与の日付または記録請求の公開の日付の何れか遅い方の後6月以内に行わなければならない。
(3)個々の当該請求は、登録官に対し所定の様式で提出しなければならず、かつ、次のものを含まなければならない。
(a)指定特許の公開された明細書の認証謄本であって、指定特許庁により公開された説明、クレームおよび図面を含むもの
(b)請求人が発明の標準特許出願人として登録簿に記載されている者とは別の場合は、発明の標準特許付与出願の権利を前者が有することを説明する陳述書およびその陳述書を裏付ける所定の書類
(c)記録請求が、指定特許庁において主張された優先権を基礎にして、優先権が主張されている旨の第15条(2)(e)に基づく陳述書を含む場合は、指定特許庁に提出され、当該優先権を主張し、かつ、裏付ける書類の所定の複写
(4)個々の当該請求はまた、一方もしくは双方の公用語による情報の提供、または一方もしくは双方の公用語への書類の翻訳に係る本条例の要件をも遵守しなければならない。
(5)出願手数料および公告手数料は、登録および付与請求の一部の最先の提出後1月以内に納付しなければならない。何れか一方の手数料がその期間内または(6)で許可する延長期間内に納付されない場合は、特許出願は、取り下げられたものとみなされる。
(6)(5)に規定の期限内に納付されなかった出願手数料または公告手数料をなお有効に納付することができる猶予期間については、規則によりこれを定めることができる。
(7)本条の如何なる規定も、登録および付与請求が第24条に従って開始されることを禁じるものではない。
(2)手続言語
中国語または英語
条文等根拠:特許条例第104条(1)、 第104条(3)
香港特許条例 第104条 登録官に対する手続言語 (1)
(1)特許出願は公用語の1で行わなければならない。
(3)手続言語以外で記載された明細書での出願日確保の可否
可
条文等根拠:特許条例第104条(3)、特許規則第56条(4)
香港特許条例 第104条 登録官に対する手続言語
(3)発明に関する指定特許出願が公用語の1による場合は、本条の如何なる規定も、当該発明に関する標準特許出願が同一の公用語で出願されるよう求めるものと解釈してはならない。
香港特許規則 第56条 登録官に対する手続言語 (4)
(4)条例第15条(2)(a)にいう指定特許出願の、手続言語へのまたは公用語の1への翻訳文は、必要とされない。
(4)優先権主張手続
前述の記録請求時における優先権情報の提出、および登録付与請求時の所定の手続きを条件として優先権が与えられる。指定特許出願が享受する優先日が標準特許出願の優先日とみなされる。
条文等根拠:特許条例第98条、99条
香港特許条例 第98条 優先権
(1)本条は、パリ条約加盟国における同一の発明に対する特許またはその他の保護を求める先の出願を基礎として、指定特許庁の法律に基づき先の出願日の後12月の期間優先権を享受する、発明の指定特許の出願人に適用される。
(2)当該人またはその権原承継人は、指定特許庁の法律に基づく指定特許出願に関して享受するのと同一の優先権を、指定特許出願の主題である発明の標準特許出願の目的で享受する。
(3)(1)および(2)は、次の場合にも適用される。
(a)先の出願が、パリ条約加盟国でない国、領土または地域で行われた場合で、かつ
(b)指定特許庁において享受される優先権が、香港が加盟国である国際協定に基づいて、またはそうでないときは、その協定の加盟国が香港に適用する国際協定に基づいて付与される場合であって、この協定が、当該国、領土または地域においてもしくはそれに関して行われる最初の出願を基礎として、およびパリ条約に規定された条件と同等の条件に従うことを前提として、当該優先権付与を規定するものである場合
(4)本条における指定特許庁の法律への言及は、次の状況を取り扱う指定特許庁の法律への言及を含む。
(a)パリ条約加盟国における出願であって、その国の国内法または2国間もしくは多国間協定に基づく正規の国内出願と同等なものは、優先権を生じる。
(b)最初の出願と同一の対象に対する後の特許出願であって、同じパリ条約加盟国においてまたは関してなされるものは、優先権を決定する目的では、最初の出願とみなされる。
(c)指定特許出願に関しては、複数の優先権を主張することができる。
(5)本条により与えられる権利は、第15条(2)(e)および第23条(3)(c)に従うことを条件とする。
(6)本条において、「パリ条約加盟国」とは、香港を除くパリ条約加盟国である国もしくは領土またはパリ条約が及ぶ国の属領をいう。
香港特許条例 第99条 優先権の効力
(1)第98条に基づき与えられる優先権は、指定特許庁において享受される優先日が、本条例の適用上、標準特許出願の優先日とみなされる効力を有する。
(2)第98条に規定される優先権を出願人が享受する標準特許出願により付与された特許は、先の出願(すなわち、それを基礎として指定特許庁において優先権が享受される出願)において開示された主題が先の出願の日後何れかの時に公衆に利用可能となっていたという事実のみを理由としては無効とされない。
日本と香港における特許出願書類の比較
日本 |
香港 |
|
手続言語 |
日本語 |
中国語(簡体字)または英語 |
手続言語以外の明細書での出願日確保の可否 |
可(英語) その特許出願の日から1年2ヶ月以内に外国語書面および外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならない。 |
可
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優先権主張 手続 |
優先権主張の基礎となる出願の出願国と出願日を出願と同時に提出し、最先の優先権主張日から1年4ヶ月以内に特許庁長官に提出しなければならない。 |
指定特許出願が享受する優先権が適用される。 記録請求時および登録付与請求時に所定の手続きが必要
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新興国等知財情報データバンク 調査対象国・地域における特許出願書類については、下記のとおりである。
各国での手続き言語および日本語、英語明細書による出願可否に関する各国比較(※パリルートの場合)
国 |
手続言語 |
日本語明細書による出願可否 |
英語明細書による出願可否 |
JP |
日 |
○ |
○* |
BR |
葡 |
△*1 |
△*1 |
CN |
中 |
× |
× |
HK |
英or中 |
× |
○ |
ID |
尼 |
× |
○* |
IN |
英or印 |
× |
○ |
KR |
韓 |
× |
○* |
MY |
英 or馬 |
× |
○ |
PH |
英or比 |
× |
○ |
RU |
露 |
○* |
○* |
SG |
英 |
△*2 |
○ |
TH |
泰 |
○* |
○* |
TW |
中 |
○* |
○* |
VN |
越 |
× |
× |
○* :出願後に各国手続言語への翻訳文の補完が別途必要。
△*1:所定要件を満たせば規則上は認められる
△*2:規則上は認められる
日:日本語
葡:ポルトガル語
中:中国語
英:英語
尼:インドネシア語
印:ヒンディー語
韓:韓国語
馬:マレーシア語
比:フィリピン語
露:ロシア語
泰:タイ語
越:ベトナム語
PCTルートの有無
国 |
PCTルートの有無 |
JP |
有 |
BR |
有 |
CN |
有 |
HK |
(注) |
ID |
有 |
IN |
有 |
KR |
有 |
MY |
有 |
PH |
有 |
RU |
有 |
SG |
有 |
TH |
有 |
TW |
無 |
VN |
有 |
(注): 香港標準特許出願は、指定特許庁(中国特許庁もしくは英国特許庁(英国指定の欧州特許出願に関する欧州特許庁を含む))における特許出願(指定特許出願)の情報に基づき権利化を求めるものであり、指定特許出願である中国特許出願もしくは英国特許出願(英国指定の欧州特許出願を含む)はPCTルート有り。