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タイにおける特許法改正に向けた動き

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ロシアにおける特許、実用新案および意匠特許の審査手続にかかる法改正

ベトナムにおける冒認商標出願への対抗手段

【詳細】

 ベトナムでは、2005年知的財産法により、商標出願に対する異議申立制度が導入公布された。異議申立手続は、商標審査を補完すると共に、増加する商標の冒認出願に対抗する有効な行政手段となっている。

 

 商標登録証書の付与に対する異議申立請求は、ベトナム国家知的財産庁(National Office of Intellectual Property of Vietnam : NOIP)に直接提出することができ、異議対象の商標出願の審査と合わせて、その審査中にNOIPにより処理される。

 

○異議申立を請求する権利

 知的財産法第112条に従い、あらゆる第三者はNOIPに異議申立を請求する権利を有する。異議申立請求は書面で提出しなければならず、添付された証拠資料の情報源を明記しなければならない。

 

○異議申立理由

 ベトナムの商標規則は、異議申立手続について規定しているが、異議申立の理由については具体的に定めていない。しかし、運用上および実務上の観点から、異議申立理由は下記のように要約される。

 

(1)当該出願商標が、当該出願意匠よりも早い優先日を有する先行登録商標と混同を生じるほど類似している。

 

(2)悪意の出願(出願人は当該出願を行う「権利」がない、または他者に帰属する同一または類似の商標に気づいていた、もしくは気づいていたはずである)。

 

(3)当該出願商標が、国際的に有名な、または名声のある未登録商標と混同を生じるほど類似している。

 

(4)当該出願商標が、既に使用されている他者の商標と同一または類似であり、当該商標が使用されると、商品またはサービスの出所に関して消費者に混同を生じる可能性がある。

 

(5)当該出願商標が、識別性を欠いている。

 

 第三者は異議申立において、上記の一つまたはそれ以上の理由を主張することができる。

 

○異議申立請求期限

 ベトナム国内商標出願またはマドリッドプロトコル協定議定書に基づく国際商標に対する異議申立は、知的財産法第112条に基づき、商標出願が産業財産公報に公開された日から、商標登録証書の付与決定日までに、NOIPに請求しなければならない。したがって異議申立請求は、商標出願の実体審査中にNOIPにより検討される。商標登録証書の付与決定日より後に提出された異議申立請求は、受理されない。

 

 ベトナム商標制度に従い、国内商標出願は、その公開日から9ヶ月以内にNOIPにより実体審査が行われる。ただし、実務上、出願人は所定の9ヶ月より早期の審査を請求することができる。そのため、異議申立は、商標出願の公開日からできる限り早く請求すべきである。

 

 下記の図は、ベトナムにおける国内商標出願に対する異議申立期間を示すものである。

商標出願から登録までの簡易フロー

商標出願から登録までの簡易フロー

 

 ベトナムの商標規則は、ベトナムを指定したマドリッド国際商標登録に対する異議申立期限を定めていない。しかし、実務上、商標の実体審査中に異議申立を検討するという原則、および2007年2月14日付の科学技術省・省令第01/2007/TT-BKHCN号第41条に定められた国際商標登録の審査規則に基づき、国際商標登録に対する異議申立は、WIPOの通報日から12ヶ月以内にNOIPに請求されなければならない

 

○異議申立の種

 ベトナムの商標規則は、異議申立の種類について規定していない。しかし、実務上、第三者は、異議申立を請求し、出願商標の一部の登録、指定商品または役務の一部の登録、または全ての指定商品または役務に関する出願商標全体の登録を拒絶するようNOIPに請求することが認められている。したがって、部分的異議申立であれるか全体的異議申立であるかを問わず、全ての異議申立が、同じ商標審査原則に基づいて考慮されるものと考えられる。

 

○代理人の指名と委任状

 知的財産法第89条に基づき、(i)ベトナム国外の者が、NOIPに直接、異議申立を請求することは認められないため、異議申立の請求手続をベトナムにおける代理人に委任しなければならず、(ii)ベトナムの団体や個人、ベトナムに永住する外国人および生産または営業拠点を有する外国の企業や個人は、NOIPに直接、異議申立を請求することができる。ただし、これらの者も異議申立請求の手続をベトナムにおける代理人に委任する場合もあるが、その際には、異議申立の請求時に、委任状の原本を添付しなければならない。

 

 ベトナムの実務上、異議申立の請求時には委任状のコピーでも受理されるが、委任状の原本を後に提出する際に、NOIPは追加の公定料金を徴収する。また、委任状の原本が提出され、全ての方式要件が満たされるまで、NOIPは異議申立を考慮しない。

 

○異議申立手続のフロー

 2007年2月14日付け科学技術省・省令第01/2007/TT-BKHCN号第41条に従い、NOIPは、第三者からの異議申立請求を受領後1ヶ月以内に、当該請求を出願人に通知し、当該通知日から1ヶ月以内に書面で意見を提出するよう出願人に要求する。出願人の意見を受領後、必要に応じて、NOIPは当該意見を当該第三者に通知し、当該通知日から1ヶ月以内に書面で応答するよう当該第三者に要求する。NOIPは、出願人および当該第三者により提出された証拠および意見書ならびに当該出願に含まれる書類に基づいて、両者の意見を考慮する。

 

 第三者の意見に根拠がないと判断した場合、NOIPは当該意見を出願人に通知する必要はないが、当該第三者に対しては、当該意見に対する拒絶およびその理由を通知しなければならない。

 

 第三者の意見が登録商標に関するものであって、NOIPが当該意見の是非を判断できないと認める場合には、その旨を当該第三者に通知し、当該第三者は裁判所に審理を求める申立を提出することができる。NOIPが当該通知を発行してから1ヶ月以内に、当該第三者が審理を求める申立を裁判所に提出したことをNOIPに届け出ない場合、NOIPは当該第三者が異議申立請求を取り下げたものとみなす。当該第三者が上記期間内にNOIPに届け出た場合、NOIPは、裁判所による紛争解決の結果が出されるまで、当該出願の手続を保留する。裁判所による紛争解決の結果が出された後、その結果に従い異議申立手続が再開される。

 

 必要な場合および双方の当事者が要求する場合は、NOIPは、異議申立により提起された問題をより明確にするため当該第三者と出願人との当事者同士の面接協議を設定する。第三者の異議申立に対する応答のために出願人に設定した期間は、NOIPが規則に従い関連手続を遂行するために出願人に与える他の応答期間の算出に含めてはならない。

 

 異議申立の処理手順は、上記のように具体的に規定されているものの、NOIPは非常に多くの業務を抱えているために異議申立の審理期間が延長されたり、異議申立が実体審査の中で同時に考慮されたりする場合もある。

 

 さらに、異議申立を処理する手順が、NOIPの商標部門ごとに異なる面もある。NOIPには、商標出願の審査および異議申立の処理を担当する、第一部門と第二部門の二つの商標部門がある。科学技術省省令第01/2007/TT-BKHCN号第41条の規定に基づき、第一および第二商標部門は、事例ごとに異なる手順で検討することが認められている。例えば、第一商標部門は、異議申立請求を受領後1~3ヶ月以内に出願人に通知することが多いが、第二商標部門は、実体審査の最終段階で異議申立請求を出願人に通知することが多い。

 

 上記のように検討手順が異なってはいるものの、異議申立手続は常に、商標出願の実体審査の終了前に完了されている。したがって、NOIPは異議申立を承認または拒絶する通知を発行し、この通知は異議申立の結果とみなされる。

 

 第三者にとって不利な決定が下された場合、当該第三者は、科学技術省省令第01/2007/TT-BKHCN号第16条に定められた規定を適用し、審理をやり直すべき新たな事情が明らかになった場合には、商標出願の再審査をNOIPに請求することができる。再審査の手続は、異議申立手続の延長手続とみなすことができる。

 

○その他の対抗手段

 異議申立手続は、冒認商標出願の登録に対抗する上で極めて有効であるが、時間と費用を要する場合もある。そのため、第三者は異議申立の請求を決定する前に、冒認商標出願に対抗する上で有効な、下記の手段を検討することもできる。

 

(1)警告

 現行規則には第三者と出願人との交渉を禁じる規定はない。そのため、異議申立の請求を決める前に、出願人との友好的な交渉を通じて、冒認商標出願を取り下げるよう出願人に要請することが望ましい。あるいは、商標出願を取り下げ、冒認商標または混同を生じるほど類似の他のあらゆる商標の使用を中止するよう求める警告状を出願人に送付することも考えられる。

 

(2)商標出願の譲渡

 第三者は商標権を保護し、ベトナムにおける以後の侵害を防止するために、出願人に商標出願の譲渡を要求することもできる。この措置が成功するかどうかは、交渉および出願人が要求する支払いにかかっている。両者がこの措置について合意する場合、かかる譲渡をNOIPに登録する必要があり、当該第三者はその商標出願の新しい出願人になる。

 

【留意事項】

(1)あらゆる模倣商標を発見し、それらに対して異議申立やその他必要な手段を講じる必要がある。商標の模倣はますます増加し、深刻度を増しており、合法的な商標所有者の財務と名声の双方に損害を及ぼしている。異議申立請求の機会を逸したために、模倣商標の一つが登録された場合、第三者にとって商標登録の取消を要求するのは極めて難しく、不利な状況となる。

 

(2)未登録の著名商標が模倣された場合、その著名性を証明する十分な裏づけ資料を準備しなければならない。未登録の著名商標はベトナムで保護されており、模倣商標の類似性や同一性を根拠に異議申立を提起することができる。しかし、全ての商標審査官が全ての著名商標を認識しているわけではない。そのため多くの大企業にとっても異議申立手続における著名商標の立証は大きな負担となる。このような場合、著名商標および出願人の悪意を立証するために多くの裏づけ資料や証拠が必要となる。

 

(3)商標の使用実態に注意を払うべきである。なぜなら多くの個人や団体が登録商標を模倣する商標出願した上で、知的財産法第95条に規定される商標の不使用を根拠とする登録商標の無効請求を提出するからである。そのため、異議申立を請求する前に、商標の使用を確認することが望ましい。

ベトナムにおける特許出願に関する方式審査上の拒絶理由通知

【詳細】

 ベトナム知的財産法の下では、方式審査段階で特許出願に不備が認められた場合、方式上の拒絶理由通知が出願日から1ヶ月以内に発行される(省令01/2007/TT-BKHCN、規則13.8.a)。方式上の拒絶理由通知に対する応答期限は、当該拒絶理由通知の署名日から1ヶ月間である(省令01/2007/TT-BKHCN、規則13.3)。出願人が応答内容の検討にさらに長い時間を必要とする場合、1ヶ月の延長申請を書面により一度だけ行うことができる。実務上は、ベトナム国家知的財産庁(National Office Of Intellectual Property Of Vietnam : NOIP)副長官により承認されれば二度目の延長申請が認められる場合がある。出願人が期限内に応答しなかった場合、または応答によっても拒絶理由通知に示された要件が充足されなかった場合、NOIPは当該出願の受理を拒絶することができる。

 

 方式審査は省令01/2007/TT-BKHCN、規則13.1に定める手続に従って行われる。方式審査では、出願に含まれる全ての書類の方式が審査され、それら書類の内容について予備審査が行われる。出願時に必要な書類、出願する権利、優先権、明細書の書式、クレームの書式等に関する様々な方式上の拒絶理由が存在する。

 

 ここでは、出願時に必要な書類、明細書の書式、クレームの書式等、方式審査段階で通常取り上げられる主な内容について説明する。

 

(1)出願時の必要書類

 特許出願時に求められる書類としては以下のものが挙げられる。

願書、明細書、要約、委任状、出願する権利を証明する書類もしくは(優先権を主張する場合には)優先権を証明する書類、出願費用の領収書(省令01/2007/TT-BKHCN、規則7.1、7.2.b、13.2、13.3)

 

提出される書類はベトナム語で作成されなければならない(出願する権利を証明する書類や優先権を証明する書類は例外であるが、審査官の要請によりこれら書類のベトナム語訳が要求されることがある)。

 

 上記のいずれかの書類が不足している場合、または書類がベトナム語以外の言語で作成されている場合、審査官は出願人に対し、不足書類もしくはベトナム語訳の提出を要求する。

 

 実務上は、委任状など複数の書類を出願後に提出することができる。特許協力条約に基づく出願(PCT出願)に関しては、最先の優先日から34ヶ月以内に委任状を提出する。その他の特許出願の場合、委任状は、委任状提出を要求する拒絶理由通知をNOIPの審査官が発行した日から起算して1ヶ月以内に提出しなければならない。

 

 さらに、方式上の拒絶理由通知に記載されるその他の不備としては、出願人や発明者の名称や住所に関する誤記もしくは不明瞭性、書誌データに関わる不備等が挙げられる。このような不備は、情報の説明や訂正、追加書類の提出によって解消される。

 

(2)明細書の書式

 ベトナム知的財産法および規則の下では、特許出願の明細書は発明の説明、クレーム一式、要約、図面(図面がある場合)から構成されていなければならない。

 

 発明の説明には、次の事項が含まれていなければならない。

発明の名称、発明の技術分野、発明の背景技術(先行技術)、発明の要約、図面に関する簡潔な説明(図面がある場合)、実施形態に関する詳細な記述、発明の実施例および有益な効果(省令01/2007/TT-BKHCN、規則23.6)

 

上記事項のいずれかが発明の説明から欠落している場合、NOIPの審査官は方式上の拒絶理由通知を発行し、欠落している事項を追加するよう出願人に求める。

 

 さらに、NOIPの審査官は発明の名称について異議を唱える場合が多い。ベトナム知的財産法によれば、発明の名称は特許出願の発明内容を簡潔に説明するものでなければならず、誇大な名称ないし宣伝的な名称であってはならない。発明の名称に関する異議を解消するためには、主たる発明内容を反映する名称に変更する必要がある。

 

(3)クレームの書式

 特許出願におけるクレームの書式がベトナム知的財産法および規則に適合しているか否かを判断するにあたり、審査官はクレーム一式を吟味し、以下のいずれかに該当するクレームがある場合には、当該クレームについて方式上の拒絶理由通知を発行する。

 

・以下の不特許事由に関連するクレーム。

(1)科学的な発見もしくは理論、数学的方法、(2)精神活動の遂行、ペットの訓練、ゲームの実行および事業の遂行に関する計画、規格、規則および方法、コンピュータプログラム、(3)情報の提示、(4)審美的特徴のみの解決、(5)植物および動物の品種、(6)植物および動物の生産方法であって主として生物学的な性質を有するもの(微生物学的な方法を除く)、(7)ヒトおよび動物の疾病予防、診断および治療に関する方法(知的財産法第59条)

これらの不特許事由を含むクレームは、適宜形式を変更する、または削除する必要がある。

 

 不特許事由について実務上、論議の的になるのは、「用途」および「疾病の治療に関わる方法」に関するクレームである。これらクレームの問題を回避するため、クレームを別の形式に書き換えることが考えられる。たとえば、「用途(use)」に関するクレームは「用途のための化合物(a compound for use)」に関するクレームに書き換えることができ、「疾病の治療方法(method of treatment disease)」に関するクレームは「治療に使用される化合物(a compound for use in treating)」に関するクレームに書き換えることができる。ただし、「用途のための化合物」ないし「治療に使用される化合物」という形式への書き換えにより既存のクレームとの重複が生じる場合には、不特許事由を含むクレームを削除すべきである。このような補正は方式審査上では認められるが、実体審査においては書き換えられた用途クレームが拒絶される可能性もあるので注意が必要である。

 

 クレームの技術的解決手段が政府の規制に反している(麻薬使用のための機器、偽造通貨製造のための装置等)、社会道徳および公の秩序に反しており、公共の利益にとって有害である(クローニングによる複製方法等)、または国防もしくは安全保障を損なうものである(知的財産法第8条(1))として拒絶された場合、これを解消することはできず、これらに該当するクレームを全面的または部分的に削除する必要がある。

 

 クレームに関するその他の拒絶理由としては、1つのクレームに複数の発明が含まれているという指摘がある(省令01/2007/TT-BKHCN、規則23.6.k)。このような拒絶理由を解消するためには、1クレーム1発明となるように問題のクレームを分割すべきである。

 

 さらに、クレームが発明の説明や図面に言及している場合、当該クレームは拒絶される(ただし、ヌクレオチドとアミノ酸の配列表、屈折率チャート、状態フローチャートなど言語では正確に説明できない部分について言及がなされている場合を除く)(省令01/2007/TT-BKHCN、規則23.6.g)。このような拒絶を解消するためには、発明の説明および図面に言及したクレームを削除すべきである。

 

 方式上の拒絶理由がすべて解消されると、方式上の受理決定が発行される。方式上の受理決定の受領により、方式審査段階は終結する。その後、(パリ条約に基づいて提出された特許出願の場合には)最先の優先日もしくは(優先日が存在しない場合には)出願日から19ヶ月以内、もしくは(PCT出願の場合には)当該出願が正式に受理された日から2ヶ月以内のいずれか遅い方の期間内に、特許出願は「工業所有権官報」に公開される(省令01/2007/TT-BKHCN、規則14.2)。その後、実体審査請求がされると、当該特許出願について実体審査が行われる。