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フィリピンにおける特許制度のまとめ-手続編

1.特許出願および実用新案登録出願に必要な書類
 知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならず、かつ、特許の付与を求める願書、発明の明細書、発明の理解に必要な図面、1以上のクレーム、要約を含まなければならない。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
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「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9413/

2.記載が認められるクレーム形式
 発明に関する規則415(d)に規定されるように、クレームは、明細書に記載する発明と一致しなければならない。また、クレームで用いる語句については、明細書中に明確な裏付または先例を記載して、当該明細書を参照することによりクレームの用語の意味を確認することができるようにしなければならない。絶対に必要な場合を除き、発明の技術的特徴に関してクレームが明細書または図面を引用することがあってはならない。特に、「明細書第xxx部に記載したように」または「図面第xxx図に例示したように」等の引用をしてはならない。
 また、発明に関する規則415(c)に規定されるように、多項従属クレーム(マルチクレーム)は、他の多項従属クレームの基礎としてはならない。
 また、発明に関する規則416に規定されるように、適切な場合、クレームには次の(a)~ (c)のものを含める。
(a) 発明の主題を指定する記述、およびクレームする主題の定義のために必要とするが、組み合わせると先行技術の一部をなす技術的特徴を示す文言
(b) (a)にいう特徴との組合せで保護を求める技術的特徴を、「を特徴とする」または「によって特徴付けられる」との表現を先行させて記述した特徴付けの部分、および
(c) 出願に図面が含まれる場合に、クレームを理解しやすくするときは、クレームに記載した技術的特徴の後に、これらの特徴と関連付ける参照記号を括弧に入れて付すことが望ましい。これらの参照記号は、クレームを限定するとは解されない。

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「フィリピンにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.17)
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「フィリピンにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈について」(2017.05.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13691/

3.特許出願および実用新案登録出願の言語
 知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならない。

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4.グレースピリオド
 知的財産法第25条に規定されるように、当該出願の出願日または優先日の前12月の間における当該出願に含まれている情報の開示は、(1) その開示が当該発明者によってなされた場合、(2) 特許庁によってなされ、当該情報が、当該発明者がした別の出願に記載され、かつ、当該庁によって開示されるべきではなかったかまたは当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者により当該発明者の認識もしくは同意なしになされた出願に記載されている場合、または、(3) その開示が当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者によってなされた場合に該当するときは新規性を失わないものとする。

関連記事:
「フィリピンにおける特許発明の新規性喪失の例外」(2017.06.01)
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5.審査および年金制度について
5-1.特許出願の実体審査
 知的財産法第48条に規定されるように、特許出願の実体審査の請求書は、対応する手数料とともに、特許出願の出願公開の日から6月以内に提出されなければならない。

5-2.早期審査(優先審査)
5-2-1.特許審査ハイウェイ
 フィリピン知的財産庁は、日本国特許庁(JPO)、米国特許商標庁(USPTO)、韓国特許庁(KIPO)、欧州特許庁(EPO)と、特許審査ハイウェイプログラムを実施している。
 フィリピン知的財産庁において特許審査ハイウェイを申請するためには、特許審査ハイウェイのリクエストフォーム、当該リクエストフォームに含まれているクレーム対応表、ガイドラインに記載されている他の関連文書を提出する必要がある。

5-2-2. ASEAN特許審査協力プログラム
 ASEAN特許審査協力プログラム(以下「ASPECプログラム」という。)は、参加地域の特許庁間で特許調査および審査結果を共有することによって業務の効率化を図る制度であり、加盟国は、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよびベトナムの9か国である。
 ASPECプログラムを申請するためには、ASPECリクエストフォームおよびクレーム対応表と、ASPECプログラムに参加する知財庁の対応する出願における、少なくとも1つのクレームが許可または特許可能であることを示す、特許付与、または、サーチおよび審査の結果を提出する必要がある。

5-3.出願の維持
特許維持年金(Philippine Pesos)
(参照:フィリピン知的財産庁より「SCHEDULE OF FEES ON PATENTS」https://www.ipophil.gov.ph/services/schedule-of-fees/patents/

年度(公開日より) 小規模企業 大規模企業
5 1,550.00 3,240.00
6 2,000.00 4,320.00
7 2,580.00 5,400.00
8 3,100.00 6,480.00
9 4,140.00 8,640.00
10 5,170.00 10,800.00
11 6,670.00 13,920.00
12 8,280.00 17,280.00
13 9,770.00 20,400.00
14 11,900.00 24,840.00
15 13,970.00 29,160.00
16 15,980.00 33,360.00
17 18,050.00 37,680.00
18 21,670.00 45,240.00
19 26,040.00 54,360.00
20 31,222.00 65,160.00
請求項の数が5を超える場合の1請求項毎の追加料金 210.00 420.00

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「フィリピンにおける特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究」(2020.03.17)
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「フィリピンにおける特許年金制度の概要」(2018.10.18)
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「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
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「フィリピンにおける特許権早期取得のテクニック」(2016.05.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11186/
「日本とフィリピンにおける特許審査請求期限の比較」(2015.08.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9372/
「ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム」(2022.07.26)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/24171/

6.特許出願から登録までのフローチャート
6-1.特許出願から登録までのフローチャート

6-2.フローチャートに関する簡単な説明
 特許出願後、知的財産法第42条および特許審査マニュアル2.1に規定されるように方式審査が行われ出願日が付与される。知的財産法第44条および第47条に規定されるように出願日または優先日から18月後、特許出願は、公衆の人々が発明の特許性についての所見を申し立てることができるようにするために、フィリピン知的財産庁の公報に公開される。特許性についての所見が申し立てられた場合、出願人にはその旨が通知され、出願人は見解を述べることができる。
 次に、知的財産法第48条に規定されるように特許出願の公開から6月以内に、出願人は所定の手数料を納付して審査請求を行う。これにより特許出願が実体審査される。審査官が拒絶理由を発見した場合、拒絶理由が通知される。知的財産法第50条に規定されるように審査官が拒絶理由を発見しないか、拒絶理由通知に対する出願人の応答によって拒絶理由が解消した場合、すべての手数料を所定の期間内に納付することを条件に特許が付与される。知的財産法第52条に規定されるように特許の付与は、他の関連する情報とともに公報によって公示される。

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[権利設定前の争いに関する手続]
7.拒絶査定不服申立
 2022 年特許・実用新案・意匠に関する改正施行規則(以下、施行規則という。)913に規定されているように、第2回目またはその後の審査もしくは審理において、審査官は拒絶または異論が確定されたと宣言することができる。その際の出願人の応答は、クレームの拒絶の場合は、局長に対し不服申立を行うことができる。クレームの拒絶を伴わない異論の場合は、局長に申請することができる。
 また、施行規則905に規定されているように、出願人は、拒絶の確定通知の郵送日から2月以内(延長不可)に、特許局長へ不服申立を行うことができる。

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8.権利設定前の異議申立
 施行規則803に規定されるように、特許出願の公開日または出願人が行った実体審査請求の日のいずれか遅い期日から6月以内に、何人も、関連先行技術を引用して、新規性、進歩性、産業上の利用可能性に関する事項を含む、その発明の特許性について、書面により意見を表明することができる。出願人は、当該意見について見解を述べることができる。意見、見解、協議における討議は、当該特許出願の審査において考慮される。

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9.上記7の判断に対する不服申立
 施行規則1308および1309に規定されるように、特許局長の決定が審査官による拒絶を支持する場合、出願人は特許局長の決定を受領してから1月以内であれば長官に不服申立できる。不服申立人は、不服申立の通知の提出日から30日以内に、その不服申立を維持するための論拠および主張の準備書面を提出する。
 また、施行規則1311に規定されるように、特許局長の決定を覆し出願を認める長官の決定は、直ちに確定される。これに対して、知的財産庁長官の決定が出願を拒絶する特許局長の決定を支持する場合、出願人は、15日以内に上訴裁判所へ上訴することができる(不服申立てに関する改正統一法(庁命令No.41/2020年)11条)。

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[権利設定後の争いに関する手続]
10.権利設定後の異議申立
 権利設定後の異議申立制度はない。

11.設定された特許権に対して権利の無効を申し立てる制度
 当事者系手続に関する規則3第1条(a)に規定されるように、利害関係人は、発明としてクレームされているものが特許性を有していないものであること、特許が当該技術の熟練者が実施することができる程十分に明確かつ完全な方法では当該発明を開示していないこと、特許が公序良俗に反すること、または特許に出願当時の出願に記載された開示の範囲にない事項が含まれていることを理由として、特許またはその何れかのクレームもしくはクレームの一部の取消を申請することができる。
 また、当事者系手続に関する規則3第1条(b)に規定されるように、裁判所の最終命令または決定により特許について権利を有すると宣言された者は、決定が確定した後3月以内に、既に発行されている特許の取消を求めることができる。
 申請書は書面によるものでなければならず、認証され、かつフォーラムショッピング(申請者に有利な管轄地の選択)がないことの証明書(certification of non-forum shopping)が添付されていなければならない。申請者は、記録されている被申請者または代表者/代理人への送達の証明とともに、申請書の原本のみを提出する。申請書には、次のものが記載されている必要がある。
(1) 申請者、および被申請者を含むその他の当事者の氏名および住所
(2) 取消を求められた特許、実用新案の登録番号、登録者の名称、および登録日
(3) 申請者の1つまたは複数の訴因および求められる救済を構成する事実。
 申請者は、フィリピンの弁護士の委任状、および適切にマークされた証拠の宣誓供述書、文書または客観的証拠を申請書に添付しなければならず、英語以外の文書については英語の翻訳を添付する必要がある。フィリピン国外で作成された文書については、アポスティーユ(公的認証)されているか、領事認証されている必要がある。

関連記事:
「フィリピンにおける特許、実用新案および意匠の無効手続を管轄する組織並びに統計データ」(2018.08.09)
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12.権利設定後の権利範囲の修正
 施行規則1209によると、特許の所有者は、当該特許により与えられている保護の範囲を限定すること、明白な錯誤を訂正しまたは事務的な誤りを訂正すること、および、善意でした錯誤または誤りを訂正することを目的として、特許に変更を施すことを特許局に請求する権利を有する。
 また、施行規則1210によると、特許の補正または訂正は、庁の印章により認証されて特許局長が署名した補正または訂正の証明書を伴わなければならず、その証明書は、当該特許証に添付するものとする。補正または訂正は、IPOPHL 電子公報において公告し、庁が交付する特許の謄本は、補正または訂正の証明書の謄本を含むものとする。

13.その他の制度
 特許権侵害事件において、被告は、特許が無効であるという答弁または反訴を行うことができる。フィリピン知的財産庁より発行された特許証は、矛盾するか、同じものが無効の方法で発行されたことを示す他の証拠によって克服されない限り、有効であると推定される。

関連記事:
「フィリピンにおける知的財産権エンフォースメント」(2020.01.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18187/
「フィリピンにおける産業財産権侵害対策」(2013.09.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/4462/

オーストラリアにおける特許出願書類

1.パリルート出願
 オーストラリアにおいてパリルート出願として特許出願を行う際に必要な書類は、以下の2つである(特許法第29条、特許規則3.1)。
・特許願書(出願人の氏名および住所、発明者の氏名、優先権出願の情報を含む)  下記URLの「P00001_0316」を参照
 https://www.ipaustralia.gov.au/tools-and-research/forms/Apply-for-a-standard-patent-patent-of-addition
・英語の明細書(クレームおよび要約書を含む)および図面(該当する場合)

 なお、オーストラリア特許庁に要求されない限り、優先権証明書の提出は不要である*1。また、出願人または発明者が特許願書に署名をする必要はない。

第29条 特許出願
(1) 何人も、規則に従って特許願書および所定の他の書類を提出することにより、発明に係わる特許出願をすることができる。
(2) 出願は、仮出願または完全出願とすることができる。
(3) 仮出願に関する特許願書は、次のものでなければならない。
(a) 承認様式によるものとすること、
(b) 英語で記載されていること、および
(c) 仮明細書が添付されていること
(4) (3)(c)に言及されている仮明細書は、次のものでなければならない。
(a) 承認様式によるものとすること、および
(b) 英語で記載されていること
(4A) 完全出願に関する特許願書は、次のものでなければならない。
(a) 承認様式によるものとすること、
(b) 英語で記載されていること、
(c) 完全明細書が添付されていること、および
(d) 第229条の方式要件を満たしていること
(4B) (4A)(c)に言及されている完全明細書は、次のものでなければならない。
(a) 承認様式によるものとすること、
(b) 英語で記載されていること、および
(c) 第229条の方式要件を満たしていること
(5) 本条においては、「何人も」は、それが法人であるか否かを問わず、団体を含む。

規則3.1 所定の書類:特許出願
(1) 法律第29条(1)の適用上、完全出願に関して作成された特許願書と共に、要約を提出しなければならない。
(2) 法律第29条(1)の適用上、標準特許*2を求める完全出願をする場合は、受理前に、次の書類を提出しなければならない。
(c) 微生物が所定の寄託機関に寄託されている場合において、
(i) その寄託が、ブダペスト条約の規則7.3の意味での原寄託または同条約の規則7.4の意味での再寄託であるとき-同条約の規則7に基づいて所定の機関が交付した受託証の写し、
(ii) 微生物の試料が、同条約の規則5.1(a)(i)に基づいて所定の機関に移送されたとき-同条約の規則7に基づいて当該機関が交付した受託証の写し、および
(iii) (i)または(ii)にいう受託証が英語によるものでないとき-受託証の英語翻訳文、
(d) 出願が法律第6条に依拠している場合-法律の適用上寄託に依拠することについての名義人の権原を記載した出願人による通知、
(e) 出願が法律第34条(2)の適用対象である出願である場合-出願人が明細書のクレームにおいてクレームされている範囲での発明に関する有資格者である旨を宣言する裁判所の命令の写し、
(f) 出願が法律第36条(4)の適用対象である出願である場合-出願人が明細書に開示された発明に関する有資格者である旨の局長の宣言書の写し、および
(g) 願書が追加特許に対するものであり、出願人または特許権者によって権原を付与された者によって作成されている場合-出願人または特許権者からの陳述であって、前記の者に権原を付与する旨のもの。

*1: 特許法、特許規則のいずれにも優先権証明書の提出を求める記載がない。ただし、オーストラリア特許庁から要求があった場合はこの限りではない。
*2: オーストラリアの「特許」には、「標準特許」と「イノベーション特許」があり、日本の「特許」に対応するものは、「標準特許」である。

2.PCTルート出願
 オーストラリアにおいてPCTルートを利用して特許出願を行う際に必要な書類は、以下の4つである(特許法第29A条、特許規則3.5AB、3.5AC)。
・PCT特許願書(国際出願番号または国際公開番号、国際予備審査請求の有無)
 【ソース】PCT特許願書(PCT Request)参照
・国際予備審査報告書(報告書がある場合)および付随書類として添付された補正(国際予備審査が請求された場合)
・明細書の英語の翻訳文(PCT出願が英語以外の言語で公開された場合)。なお、翻訳が正しい旨の宣誓書は不要である*3。ただし、オーストラリア特許庁が翻訳の品質に懸念を持った場合は、後日翻訳を確認するよう求められる場合がある。
・国際予備審査請求の際の条約第34条における補正(国際予備審査報告書の附属書類として添付された補正)の英語の翻訳文(補正が英語以外の言語の場合)。

 また、出願人または発明者が特許願書に署名をする必要はない。

第29A条 特許出願-PCT出願の特別規則
(1) PCT出願は、標準特許についての本法に基づく完全出願として扱われる。
(2) PCT出願に含まれる発明の説明、図面、グラフィックス、写真およびクレームは、出願に関して提出された完全明細書として扱われる。
(3) PCT出願の明細書は、規則に定める日におよび規則に定める方法で、状況により補正されるものとする。
(4) PCT出願は、標準特許出願に関する本法の所定の要件を満たすものとみなされるが、(1)または(2)を理由とするのみでは、本法の他の要件を満たすものとはみなされない。
(5) PCT出願の出願人は、所定の期間内に次のことをしなければならない。
(a) 受理官庁に英語で提出されなかった場合は、出願の英語翻訳文を提出すること
(b) 何れの場合にも、所定の書類を提出し、所定の手数料を納付すること
(6) 出願人は、(5)の下記要件が満たされていない限り(要件の適用を受ける事情にある場合)、PCT出願に関し、手続が行われることまたは同人が手続することを許容されるよう要求する権利を有さない。
(a) 出願に関する英語翻訳文が提出されていること
(b) 所定の書類が提出されていること
(c) 所定の手数料が納付されていること

規則3.5AB PCT出願:法律に基づく出願とみなされる国際出願
(1) 本規則は、次の場合は、PCT第4条(1)(ii)に基づいて、オーストラリア国を指定国として特定している国際出願に適用される:
(a) 受理官庁が、国際出願が取下げられたものとみなす旨を宣言した場合、または
(b) 国際事務局が、PCT第12条(3)に基づく認定をした場合。
(2) 国際出願は、宣言または認定がなされない場合のように、次の場合には、PCT出願とみなされる:
(a) 出願人が、PCTの規則51.1に特定されている期限内に、PCT第25条(1)(a)において言及された請求を行った場合、
(b) 局長が、PCTの規則51.3に特定されている期限内に、次のものを受領した場合:
(i) 法律第29A条(5)(b)に定める手数料、および
(ii) 出願が英語で提出されておらず、かつ、PCT第2条に基づいて英語で公開されていない場合-(PCT規則91に基づく訂正の有無に拘らず)提出されたPCT出願の明細書の英語翻訳文が提出されている、
(c) 局長が、次の事項について、合理的な根拠で信じていること:
(i) 宣言は、受理官庁の側における過誤または遺漏の結果であったこと、または
(ii) 認定は、国際事務局の側における過誤または遺漏の結果であったこと。

規則3.5AC PCT出願:補正
(1) 法律第29A条(3)に関して、本規則は、PCT出願の明細書が補正されたものとみなされる状況、方法およびその日付について規定する。
出願の英語翻訳
(2) 法律第29A条(5)(a)が、PCT出願に適用される場合:
(a) その出願に含まれる明細書、図面、グラフィックス、写真およびクレームは、翻訳文における明細書、図面、グラフィックス、写真およびクレームを差し替えることにより、補正されたものとみなされる、および
(b) その補正は、翻訳文が提出された日に発生したものとみなされる。

PCT第19条に基づいて補正された出願
(3) (3A)に従うことを条件として、次の場合:
(a) PCT出願がPCT第19条に基づいて補正された場合、および
(b) 出願人が法律第29A条(5)の要件を満たす前に、出願が補正された場合は、その出願に含まれる明細書、図面、グラフィックス、写真およびクレームは、補正がなされた日に補正されたものとみなされる。

第19条補正の英語翻訳
(3A) 次の場合:
(a) PCT出願がPCT第19条に基づいて補正された場合、
(b) 出願人が法律第29A条(5)の要件を満たす前に、出願が補正された場合、
(c) その補正が、PCT第21条に基づいて英語で公開されていない場合、および
(d) 出願人が法律第29A条(5)の要件を満たす時以前に、補正の英語翻訳文が提出された場合は、その出願に含まれる明細書、図面およびクレームは、補正の英語翻訳文が提出された日に補正されたものとみなされる。

PCT規則91に基づく訂正
(4) 次の場合:
(a) PCT出願が、PCT規則91に基づいて訂正された場合、および
(b) 出願人が法律第29A条(5)の要件を満たす前に、訂正がなされた場合は、その出願に含まれる明細書、図面、グラフィック、写真およびクレームは、訂正が有効となった日に補正されたものとみなされる。ただし、局長が、PCT規則91.3(f)に基づく訂正を無視する場合は、この限りではない。

PCT第34条に基づく補正
(5) (5A)および(6)に従うことを条件に、次の場合、
(a) PCT第II章に基づいてオーストラリア国が選択されているPCT出願が、PCT第34条に基づいて補正された場合、および
(b) 出願人が法律第29A条(5)の要件を満たす前に、国際予備審査報告書が作成された場合は、その出願に含まれる明細書、図面、グラフィック、写真およびクレームは、補正がなされた日に補正されたものとみなされる。

第34条補正の英語翻訳
(5A) 次の場合:
(a) PCT第II章に基づいてオーストラリア国が選択されているPCT出願が、PCT第34条に基づいて補正された場合、
(b) 出願人が法律第29A条(5)の要件を満たす前に、国際予備審査報告書が作成された場合、
(c) その補正が、PCT第21条に基づいて英語で公開されていない場合、および
(d) 出願人が法律第29A条(5)の要件を満たす時以前に、補正の英語翻訳文が提出された場合は、その出願に含まれる明細書、図面およびクレームは、補正の英語翻訳文が提出された日に補正されたものとみなされる。
(6) しかしながら、次の場合は、(5)は適用されない:
(a) 局長が規則3.17Cまたは10.2(1)(d)に基づいて、出願人に対し通知した場合、および
(b) 出願人が、次を行う場合:
(i) 3.17B(2)(b)または10.2(3)(c)(ii)に記述された通知を提供すること、または
(ii) 3.17B(2)(c)または10.2(3)(c)(iii)に基づいて、PCT第34条に基づいてなすことができた補正を放棄することを選択すること。

PCT規則13の2.4の表示
(7) 寄託された微生物に関する表示が、PCT出願にかかわるPCT規則13の2.4に従って提供される場合:
(a) 出願に含まれる寄託は、当該表示を含むように訂正されたものとみなされる、および
(b) その補正は、表示が国際事務局に提供された日に発生したものとみなされる。

不正確な翻訳文の訂正
(8) (3A)または(5A)に記述された補正の翻訳文における過誤または遺漏にPCT出願の出願人が気づく場合は、出願人は、補正の訂正翻訳文を提出することができる。
(9) 局長は、(3A)または(5A)に記述された補正の翻訳文が当該補正を正確に反映していないと合理的に信じる場合は、出願人宛の通知によって、出願人に対し、次の何れかを実行するよう要求することができる:
(a) 補正の訂正翻訳文および当該訂正翻訳文の確認証明書を提出すること、
(b) 翻訳文の確認証明書を提出すること。
(10) 出願人に対して、(9)に基づく通知が出された場合は、出願人は、当該通知が出された日から2月以内に当該通知を遵守しなければならない。
(11) 法律第142条(2)(f)の適用上、PCT出願は、次の場合は失効する:
(a) PCT出願の出願人に対して、(9)に基づく通知が出された場合、および
(b) 出願人が、(10)によって要求される期間内に当該通知を遵守しない場合。

訂正の効果
(12) 本規則に従うPCT出願の補正の訂翻訳文の提出は、法律第29A条(3)の適用上の補正ではない。

*3:知的財産法改正(PCT翻訳等)規則2019年版 規則3.5AF(2D)

3.標準特許明細書
 特許(特許書類様式要件)決定2022(Patents (Formalities Requirements for Patent Documents) Determination 2022、以下「様式要件」という。)では、出願書類に記載すべき要件が列挙されている。願書及び明細書の要件は以下のとおりである(様式要件11(1))。
(1) 特許願書
(2) 配列表を除く、発明の詳細な説明
(3) クレーム
(4) 要約
(5) 図面
(6) 該当する場合、配列表

 特許法第40条2項によると、標準特許の明細書は、当業者により実施されるのに十分明確で完全に発明を開示し、出願人の知る限り最良の発明の実施形態を開示しなければならない。

第40条 明細書
仮明細書に関する要件
(1) 仮明細書は、関連技術の熟練者が発明を実行するのに十分明瞭で、かつ、十分完全な方法で当該発明を開示しなければならない。

完全明細書に関する要件
(2) 完全明細書は次のとおりでなければならない。
(a) 関連技術の熟練者が発明を実行するのに十分明瞭で、かつ、十分完全な方法で当該発明を開示すること
(aa) 出願人が知る、発明実行の最善の方法を開示すること
(b) 標準特許出願に関係する場合は、発明を定義する1以上のクレームで終わること、および
(c) 革新特許出願に関係する場合は、発明を定義する少なくとも1で、5以下のクレームで終わること
(3) クレームは、明瞭、かつ、簡潔で、明細書に開示された事項により裏付けられていなければならない。
(3A) クレームは、発明を定義するために絶対的に必要な場合を除き、説明、図面、グラフィックスまたは写真を参照してはならない。
(4) クレームは、1の発明のみに係わるものでなければならない。

3-1.発明の詳細な説明
 詳細な説明の各ページには、ページの上部中央にアラビア数字で1から始まる連続した番号(1,2,3,…)を振らなければならない(様式要件11(2))。
 特許明細書の書き方(How to write a specification for your patent application)によれば、詳細な説明は、通常、以下の情報を(以下の順序で)含める。
・発明の題名
・分野(発明が関連する分野)
・発明の背景
・発明の要約
・図面の簡単な説明(図面がある場合)
・実施例の説明
・配列表(配列表がある場合)
・引用文献(引用文献がある場合)
 詳細な説明は図面を含んではならないが、化学式、数式、および表は含んでも良い(様式要件13(2))。

3-2.クレーム
 クレームは発明を規定する(特許法第40条2項(b))。クレームは詳細な説明とは別の用紙から始めなければならない(様式要件9(1))。各クレームは、1から連続して番号を振らなければならない(様式要件11(4))。クレームは図面を含んではならないが、必要に応じて化学式、数式、および表は含んでも良い(様式要件13(3))。
 特許法第40条3項、3A項および4項によると、クレームは、(a)明瞭かつ簡潔であり、明細書に開示された事項によりサポートされていなければならない(3項)。(b)発明を規定するために絶対的に必要でないかぎり、詳細な説明または図面を参照してはならない(3A項)。(c)単一の発明のみに関連するものでなければならない(4項)。
 なお、マルチクレームは、オーストラリアでは許可されている。

3-3.要約書
 要約書は別の用紙から始めなければならず(様式要件9(1))、規則3.3(1)および(2)によれば、要約書は好ましくは50語ないし150語であり、詳細な説明、クレームおよび図面に含まれる技術的な開示の簡潔な要約でなければならない。図面により記載される各主要な技術的特徴は、括弧に入れた参照符号を付さなければならない(例えば、「部材(10)」)(規則3.3(4))。さらに、要約書は図面を含まなくても良いが、必要に応じて化学式、数式、および表は含んでも良い(様式要件13(2))。

規則3.3 要約
(1) 要約は、次のものをもって構成しなければならない。
(a) 発明の説明、クレームおよび図面(あれば)に記載されている開示の概要であって、次の内容を有するもの
(i) その発明が属する技術分野を表示していること、および
(ii) 技術的課題、当該発明による課題解決についての要旨および当該発明の主要用途が明瞭に理解することができるように作成されていること、ならびに
(b) 該当する場合は、明細書に記載されている全ての化学式のうちで、発明の特徴を最も良く示しているもの
(2) 要約は、開示内容に応じてできる限り簡潔にし、望ましくは50語から150語までとしなければならない。
(3) 要約には、クレームされた発明について主張される長所若しくは価値、または推測的な用途に関する陳述を含めてはならない。
(4) 要約に記載され、かつ、明細書の図面に図示されている主要な技術的特徴の各々には、括弧に入れた参照記号を付さなければならない。
(5) 要約は、特定の技術分野を調査するための探査手段として有効に役立つように、特に前記の目的で明細書自体を検討する必要があるか否かについての意見を形成する上での支援になるように、作成されていなければならない。
(6) 要約は、その要約が関係する明細書の主題である発明の内容を解釈するに際しては、考慮に入れられない。
(7) 完全出願と共に提出された要約における情報は、法律第102条(1)の適用上、ある事項が提出された明細書に実質的に開示されていたか否かの決定に際しては、考慮に入れることができる。

3-4.図面
 図面は別の用紙から始めなければならない(様式要件9(1))。図面のページは、ページ番号と全体のページ数を示さなければならない(例えば1/5、2/5等)(様式要件11(3))。各図面は、詳細な説明とは別に1から番号を振らなければならない。(様式要件16(17))。
 図面は、耐久性があり、濃く、均一な太さおよび鮮明な線で作成しなければならない(様式要件16(1))。オーストラリア特許庁がデータ取り込みのためにスキャンした際に情報が失われる可能性があるので、グレースケールの画像は通常使用すべきではない。図面の各要素は、他の要素と互いに同じ寸法比率にしなければならない(様式要件16(11))。
 図面は、理解に必要な語以外の文言を含んではならない(様式要件14)。図面において参照符号が付される場合、その参照符号は発明の詳細な説明において言及されなければならない(様式要件16(18))。逆に図面に付されていない参照符号は発明の詳細な説明において言及されてはならない(様式要件16(19))。

4.イノベーション特許
 オーストラリアには、イノベーション特許と呼ばれる、標準特許とは異なる権利保護の制度が存在する。イノベーション特許は、通常短い商品サイクルの発明を保護するもので、20年間保護する標準特許と比較して、8年間という短い保護期間となっている。イノベーション特許は、最大で5つのクレームまでしか含むことはできず、上述の標準特許の書類に関する全ての要件を満たさなければならない。
 イノベーション特許には、特許査定前の審査制度がないため、通常は出願から1か月以内で特許査定される。イノベーション特許を権利行使するには、査定後に「認定」審査が必要となる。イノベーション特許は、進歩性に準ずる革新性を有するか評価はされるが、革新性のレベルは、標準特許で求められる進歩性よりも低い。イノベーション特許が「認定」されると、出願人は権利行使することができる。この認定審査のプロセスに通常およそ6か月かかる。
 なお、イノベーション特許出願制度は段階的な廃止が決定されており、2021年8月26日以降は新規の出願ができなくなっているが、存続している登録されたイノベーション特許については、引き続き審査請求可能である。

フィリピンにおける特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類
 知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならず、かつ、特許の付与を求める願書、発明の明細書、発明の理解に必要な図面、1以上のクレーム、要約を含まなければならない。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9413/

2. 記載が認められるクレーム形式
 発明に関する規則415(d)に規定されるように、クレームは、明細書に記載する発明と一致しなければならない。また、クレームで用いる語句については、明細書中に明確な裏付または先例を記載して、当該明細書を参照することによりクレームの用語の意味を確認することができるようにしなければならない。絶対に必要な場合を除き、発明の技術的特徴に関してクレームが明細書または図面を引用することがあってはならない。特に、「明細書第xxx部に記載したように」または「図面第xxx図に例示したように」等の引用をしてはならない。
 また、発明に関する規則415(c)に規定されるように、多項従属クレーム(マルチクレーム)は、他の多項従属クレームの基礎としてはならない。
 また、発明に関する規則416に規定されるように、適切な場合、クレームには次の(a)~(c)のものを含める。
(a)発明の主題を指定する記述、およびクレームする主題の定義のために必要とするが、組み合わせると先行技術の一部をなす技術的特徴を示す文言
(b)(a)にいう特徴との組合せで保護を求める技術的特徴を、「を特徴とする」または「によって特徴付けられる」との表現を先行させて記述した特徴付けの部分、および
(c)出願に図面が含まれる場合に、クレームを理解しやすくするときは、クレームに記載した技術的特徴の後に、これらの特徴と関連付ける参照記号を括弧に入れて付すことが望ましい。これらの参照記号は、クレームを限定するとは解されない。

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「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
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「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「フィリピンにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16395/
「フィリピンにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈について」(2017.05.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13691/

3. 出願の言語
 知的財産法第32条、第108条第1項に規定されるように、特許出願や実用新案登録出願は、フィリピン語または英語でなければならない。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17567/
「日本とフィリピンにおける特許出願書類の比較」(2015.09.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9413/

4. グレースピリオド
 知的財産法第25条に規定されるように、当該出願の出願日または優先日の前12月の間における当該出願に含まれている情報の開示は、(1)その開示が当該発明者によってなされた場合、(2)特許庁によってなされ、当該情報が、当該発明者がした別の出願に記載され、かつ、当該庁によって開示されるべきではなかったかまたは当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者により当該発明者の認識もしくは同意なしになされた出願に記載されている場合、または、(3)その開示が当該発明者から直接または間接に当該情報を得た第三者によってなされた場合に該当するときは新規性を失わないものとする。

関連記事:
「フィリピンにおける特許発明の新規性喪失の例外」(2017.06.01)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13772/

5. 審査
5-1. 実体審査
 知的財産法第48条に規定されるように、実体審査の請求書は、対応する手数料とともに、特許出願の出願公開の日から6月以内に提出されなければならない。

5-2. 早期審査(優先審査)
5-2-1. 特許審査ハイウェイ
 フィリピン知的財産庁は、日本国特許庁(JPO)、米国特許商標庁(USPTO)、韓国特許庁(KIPO)、欧州特許庁(EPO)と、特許審査ハイウェイプログラムを実施している。
 フィリピン知的財産庁において特許審査ハイウェイを申請するためには、特許審査ハイウェイのリクエストフォーム、当該リクエストフォームに含まれているクレーム対応表、ガイドラインに記載されている他の関連文書を提出する必要がある。

5-2-2. ASEAN特許審査協力プログラム
 ASEAN特許審査協力プログラム(以下「ASPECプログラム」という。)は、参加地域の特許庁間で特許調査および審査結果を共有することによって業務の効率化を図る制度であり、加盟国は、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよびベトナムの9か国である。
 ASPECプログラムを申請するためには、ASPECリクエストフォームおよびクレーム対応表と、ASPECプログラムに参加する知財庁の対応する出願における、少なくとも1つのクレームが許可または特許可能であることを示す、特許付与、または、サーチおよび審査の結果を提出する必要がある。

年度(公開日より)小規模企業大規模企業
51,550.003,240.00
62,000.004,320.00
72,580.005,400.00
83,100.006,480.00
94,140.008,640.00
105,170.0010,800.00
116,670.0013,920.00
128,280.0017,280.00
139,770.0020,400.00
1411,900.0024,840.00
1513,970.0029,160.00
1615,980.0033,360.00
1718,050.0037,680.00
1821,670.0045,240.00
1926,040.0054,360.00
2031,222.0065,160.00
請求項の数が5を超える場合の1請求項毎の追加料金210.00420.00

関連記事:
「フィリピンにおける特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究」(2020.03.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18368/
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17565/
「フィリピンにおける特許年金制度の概要」(2018.10.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15971/
「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15666/
「フィリピンにおける特許権早期取得のテクニック」(2016.05.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11186/
「日本とフィリピンにおける特許審査請求期限の比較」(2015.08.28)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9372/
「ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム」(2014.07.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6142/

6. 出願から登録までのフローチャート
6-1. 出願から登録までの特許出願フローチャート

6-2. フローチャートに関する簡単な説明
 特許出願後、まず方式審査が行われる。次に、出願日または優先日から18月後、特許出願は、公衆の人々が発明の特許性についての所見を申し立てることができるようにするために、フィリピン知的財産庁の公報に公開される。特許性についての所見が申し立てられた場合、出願人にはその旨が通知され、出願人は見解を述べることができる。
 次に、出願公開から6月以内に、出願人は所定の手数料を納付して審査請求を行う。これにより特許出願が実体審査される。審査官が拒絶理由を発見した場合、拒絶理由が通知される。審査官が拒絶理由を発見しないか、拒絶理由通知に対する出願人の応答によって拒絶理由が解消した場合、出願が許可され、登録料の納付後に特許証が発行される。付与された特許は、公衆の情報のためにフィリピン知的財産庁の公報に公開される。

関連記事:
「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
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「フィリピンにおける実用新案登録出願制度概要」(2019.07.23)
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「フィリピン知的財産権庁の特許審査体制」(2018.08.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15666/

[権利設定前の争いに関する手続]

7. 拒絶査定不服
 発明に関する規則913に規定されているように、第2回目またはその後の審査もしくは審理において、審査官は拒絶またはその他の処分を確定することができ、その際の出願人の応答は、クレームの拒絶の場合は不服申立または本規則に定める補正に限られる。クレームの拒絶を伴わない異論または要求の場合は、本規則に規定する通り局長に申請することができる。
 また、発明に関する規則905に規定されているように、出願人は、出願の審査の決定が確定した場合、決定通知の郵送日から4月以内に、局長へ申請または不服申立を行うことができる。

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「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
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8. 権利設定前の異議申立
 知的財産施行規則803に規定されるように、出願の公開日または出願人が行った実体審査請求の日のいずれか遅い期日から6月以内に、何人も、関連先行技術を引用して、新規性、進歩性、産業上の利用可能性に関する事項を含む、その発明の特許性について、書面により意見を表明することができる。出願人は、当該意見について見解を述べることができる。意見、見解、協議における討議は、当該特許出願の審査において考慮される。

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9. 上記7の判断に対する不服申立
 知的財産施行規則1308および1309に規定されるように、局長の決定が審査官による拒絶を支持する場合、出願人は局長の決定を受領してから30日以内であれば長官に不服申立できる。不服申立人は、不服申立の通知の提出日から30日以内に、その不服申立を維持するための論拠および主張の準備書面を提出する。
 また、知的財産施行規則1311に規定されるように、局長の決定を覆し出願を認める長官の決定は、直ちに確定される。これに対して、長官の決定が出願を拒絶する局長の決定を支持する場合、出願人は、15日以外に上訴裁判所へ上訴することができる。

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「フィリピンにおける特許出願制度概要」(2019.07.23)
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[権利設定後の争いに関する手続]

10. 権利設定後の異議申立
 権利設定後の異議申立制度はない。

11. 設定された特許権に対して権利の無効を申し立てる制度
 当事者系手続に関する規則3第1条(a)に規定されるように、利害関係人は、発明としてクレームされているものが特許性を有していないものであること、特許が当該技術の熟練者が実施することができる程十分に明確かつ完全な方法では当該発明を開示していないこと、特許が公序良俗に反すること、または特許に出願当時の出願に記載された開示の範囲にない事項が含まれていることを理由として、特許またはその何れかのクレームもしくはクレームの一部の取消を申請することができる。
 また、当事者系手続に関する規則3第1条(b)に規定されるように、裁判所の最終命令または決定により特許について権利を有すると宣言された者は、決定が確定した後3月以内に、既に発行されている特許の取消を求めることができる。
 申請書は書面によるものでなければならず、認証され、かつフォーラムショッピング(申請者に有利な管轄地の選択)がないことの証明書(certification of non-forum shopping)が添付されていなければならない。申請者は、記録されている被申請者または代表者/代理人への送達の証明とともに、申請書の原本のみを提出する。申請書には、次のものが記載されている必要がある。
(1)申請者、および被申請者を含むその他の当事者の氏名および住所
(2)取消を求められた特許、実用新案の登録番号、登録者の名称、および登録日
(3)申請者の1つまたは複数の訴因および求められる救済を構成する事実。
 申請者は、フィリピンの弁護士の委任状、および適切にマークされた証拠の宣誓供述書、文書または客観的証拠を申請書に添付しなければならず、英語以外の文書については英語の翻訳を添付する必要がある。フィリピン国外で作成された文書については、アポスティーユ(公的認証)されているか、領事認証されている必要がある。

関連記事:
「フィリピンにおける特許、実用新案および意匠の無効手続を管轄する組織並びに統計データ」(2018.08.09)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/15646/

12. 権利設定後の権利範囲の修正
 発明に関する規則1209によると、特許の所有者は、当該特許により与えられている保護の範囲を限定すること、明白な錯誤を訂正しまたは事務的な誤りを訂正すること、および、善意でした錯誤または誤りを訂正することを目的として、特許に変更を施すことを局に請求する権利を有する。
 また、発明に関する規則1210によると、特許の補正または訂正は、庁の印章により認証されて局長が署名した補正または訂正の証明書を伴わなければならず、その証明書は、当該特許証に添付するものとする。補正または訂正は、公報において公告し、庁が交付する特許の謄本は、補正または訂正の証明書の謄本を含むものとする。

13. その他の制度
 特許権侵害事件において、被告は、特許が無効であるという答弁または反訴を行うことができる。フィリピン知的財産庁より発行された特許証は、矛盾するか、同じものが無効の方法で発行されたことを示す他の証拠によって克服されない限り、有効であると推定される。

関連記事:
「フィリピンにおける知的財産権エンフォースメント」(2020.01.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/18187/
「フィリピンにおける産業財産権侵害対策」(2013.09.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/4462/

ロシアにおける特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

 発明または実用新案に関する出願は、以下を含まなければならない。
・特許付与を求める請求書(願書、弁理士が作成する。)
・クレームされた発明(または実用新案)を実施できるよう十分詳細に開示する明細書
・発明(実用新案)の本質的な特徴を記載し、明細書によって完全に裏付けられた特許請求の範囲
・発明(実用新案)を理解するために必要な図面その他の資料
・要約
(連邦民法第4法典第1375条、第1376条)

 出願は、1つの発明のみ、または単一の一般的な発明概念を形成するために関連付けられた一群の発明についてのみ行うことができる(発明の単一性の要件)。実用新案登録出願は、1つの実用新案(1つの独立請求項)についてのみ行うことができる。
(連邦民法第4法典第1375条、第1376条)

 出願日は、付与を求める請求書、明細書および明細書に図面の記載がある場合は図面を提出した日に成立するものとする。前述の書類が同時に提出されない場合、出願日は、それらの書類のうち最後のものを受領した日に与えられる。
 優先権書類の認証謄本は、優先日から16月以内にロシア特許庁に提出しなければならない。
(連邦民法第4法典第1375条、第1376条、第1382条)

関連記事:
「ロシアにおける優先権主張の手続」(2020.12.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19645/
「ロシアにおける特許・実用新案出願制度の概要」(2019.11.12)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17907/
「日本とロシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.09.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17715/

2. 記載が認められるクレーム形式

2-1. クレームの許容される形式
 以下の請求項が認められる。
・デバイス(装置・製品)のクレーム
・組成物(化合物)のクレーム
・方法(プロセス)クレーム
・プロダクト・バイ・プロセス・クレーム
・用途クレーム

 単一請求項と複数請求項の両方が認められる。請求項は、発明の目的を反映した前文と、発明の特徴を含む本文を含むべきである。本文は、特徴の前提部分と特徴部分から構成されてもよい(義務ではない)。特許請求の範囲は、発明の本質を定義し、明細書によって完全に裏付けられなければならない。発明の単一性の要件を満たせば、複数の独立請求項を記載することができる。

 独立請求項の数に制限はない。1つの独立請求項は、1つの発明のみを特定すべきである。代替的特徴(マーカッシュ形式による発明特定事項の記載)は、独立請求項と従属請求項の両方で使用することができる。1つの独立請求項は、1文であるべきである。プロダクト・バイ・プロセス・クレームが許容される。
 先行する独立請求項を引用する従属請求項が認められる。複数の請求項を引用する請求項は、他の複数の請求項を引用する請求項を引用してはならない(マルチ-マルチクレームは許容されない)。従属請求項は、付加的な特徴および/または詳細化した特徴を含むことができ、詳細化した特徴は、独立請求項の一部の特徴および/または特徴の前提部分の特徴を発展させたものである。従属請求項の数には制限はない。
(2016年5月25日付のロシア連邦経済開発省の命令第316号(以下「命令第316号」という) I.申請書を提出するための一般的な要件、IV.請求項の要件、発明の国家登録と発明特許の付与という公共サービスの提供の枠内での行政手続と行為に関するガイドライン 第5節(発明の単一性))

関連記事:
「ロシアにおけるプロダクト・バイ・プロセスクレーム解釈のプラクティス」(2017.05.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13689/
「ロシアにおける特許の審査基準・審査マニュアル」(2014.11.20)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/7134/

2-2. 認められないクレーム形式
 複数の請求項を引用する請求項は、他の複数の請求項を引用する請求項を引用してはならない。
(2016年5月25日付のロシア連邦経済開発省の命令第316号 IV.請求項の要件)

関連記事:
「ロシアにおける特許および実用新案登録を受けることができる発明とできない発明」(2020.12.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/19643/

3. 出願の言語

 特許出願は、外国語で行うことができる。ロシア語の翻訳文は、出願と一緒に提出することができ、正式なオフィスアクションに対応して後から提出することもできる。
(連邦民法第4法典第1374条、第1384条、命令第316号 II.申請書類の審査(第28条))

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「日本とロシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.09.17)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17715/

4. グレースピリオド

 出願日の6月前までのグレースピリオドが適用される。発明者、出願人、または発明者もしくは出願人から直接もしくは間接に情報を得た者による発明に関する情報の公開は、その情報が公開されてから6月以内に特許庁に発明が出願されれば、その発明の特許性を喪失させない。立証責任は出願人にある。
(連邦民法第4法典1350条第3項)

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https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/13706/

5. 審査

5-1. 方式審査
 特許出願は、方式審査の対象となる。方式審査では、以下の要件がチェックされる。
a) 必要な出願書類がすべて提出されており、すべての書類が方式要件を満たしていること。いずれかの要件が満たされていない場合、出願人に通知され、不備を修正するための3月の期間が与えられる(手数料の支払いで、期間延長を請求することができる)。出願人が期限内に不備を修正できない場合、修正または不足する書類を提出できない場合、出願は取下げられたものとみなされる。
b) 手数料が正しく支払われていること。
c) 発明の単一性の要件が満たされていること(発明の内容は確認されず、明らかな矛盾点のみが判断される)。発明の単一性の要件が満たされない場合、出願人は、審査官の要請により3月以内に請求された発明のどれを審査すべきかを示すことができる。この期間内に出願人が審査すべき発明を示さない場合、審査は最初にクレームされた発明に関してのみ行われる。
d) IPC(国際特許分類)が付されている場合、正しく付されていること(付されていない場合は、審査官が付与する)。
(連邦民法第4法典第1384条、命令第316号 II.申請書類の審査(第23条、第31条、第32条)およびIII.規則第3条に基づく請求書の審査(第108条))

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「ロシアにおける特許・実用新案出願制度の概要」(2019.11.12)
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5-2. 実体審査
 出願が方式審査に合格すると、出願人は実体審査請求書を提出し、手数料を支払わなければならない。ロシアでは、発明の繰延べ審査制度がある。
 審査請求は、出願人または第三者が行う。審査請求は、出願時または出願日(PCTの場合は国際出願日)から3年以内に行わなければならない。審査請求期間は,2月延長することができる。前記期間内に審査請求が行われなかった場合、出願は放棄される。期間徒過は、期間徒過の日から1年間は回復することができる。
 再審査および異議申立は行われない。しかし、ロシア特許庁によって出願中の発明に関する情報が公表された後、何人もロシア特許庁に対して発明の特許性に関する意見を提供する権利を有し、意見は出願の実体審査において考慮される。ただし、当該意見の提出は、出願の審査における手続上の権利を当該者に与えるものではない。
(連邦民法第4法典第1386条、1389条、命令第316号 I.発明の国家登録に関する法的措置の根拠となる文書の作成および提出(第8条))

関連記事:
「日本とロシアの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2019.08.29)
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「ロシアにおける特許制度」(2017.07.04)
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5-3. 早期審査(優先審査)
 特許出願から特許権取得までの期間は、短縮される傾向にあるが、案件によって大きく異なる。平均では、1年またはそれ以下となる場合もある。
 ロシアはPPH(特許審査ハイウェイ)制度に加盟している。ロシア特許庁は、オーストリア、カナダ、中国、デンマーク、ドイツ、エストニア、欧州(EPO)、ハンガリー、イスラエル、チリ、ペルー、ポルトガル、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、アイスランド、日本、韓国、ノルウェイ、ポーランド、フィンランド、スウェーデン、コロンビア、スペイン、トルコ、英国、米国の27か国・地域の特許庁と、PPH協定およびPPH-MOTTAINAI協定を締結している。また、上記27か国・地域から中国を除く26か国・地域の特許庁とPCT-PPH協定を、上記27か国・地域から中国、欧州(EPO)、トルコを除き北欧特許庁およびヴィシェグラード特許機構を加えた26か国・地域の特許庁とGlobal PPH協定を締結している。

注)2022年5月10日、日本国特許庁(JPO)は、ロシア連邦知的財産・特許・商標庁(ROSPATENT) の間の特許審査ハイウェイ(PPH)を一時停止することを決定いたしました。

参考情報:https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/japan_russia_highway.html

関連情報:
「PPHプログラム」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/patent-prosecution-highway
「PCT-PPHプログラム」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/pct-pph
「PPH-MOTTAINAIプログラム」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/pph-mottainai
「グローバルな優先特許手続(Global PPH)」(ロシア特許庁の公表、ロシア語)(2021.02.20)
https://rospatent.gov.ru/ru/activities/inter/bicoop/pph/gpph
「PPHネットワーク」(JPOの公表、日本語)(日付不明)
https://www.jpo.go.jp/toppage/pph-portal-j/network.html
※Global PPH加盟国については次の情報を参照されたい。
「PCT-特許審査ハイウェイプログラム(PCT-PPHおよびグローバルPPH)」(WIPOの公表、英語)(2022.01.26)
https://www.wipo.int/pct/en/filing/pct_pph.html

関連記事:
「ロシアにおける特許権早期取得のテクニック」(2016.06.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/11804/
「ロシアにおける特許および実用新案に関する統計」(2018.06.21)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/15360/

6. 出願から登録までのフローチャート

6-1. 出願から登録までの特許出願のフローチャート

フローチャート

6-2. フローチャートの簡単な説明
 発明に対する特許は、発明毎にされた特許出願の審査の肯定的な結果に基づいて、連邦知的財産庁(ロスパテント、ロシア特許庁、RUPTO)により特許証が発行される。特許出願は、一般に、出願に応じて作成された願書、明細書、図、請求の範囲および要約書を含み、願書はすべてロシア語で、その他の出願書類はロシア語または他言語(ロシア語による翻訳文を添付)で作成されなければならない(連邦民法第4法典第1374条)。
 出願は、ロシア特許庁に直接、郵送またはオンラインで行うことができる。

 発明の出願がロシア特許庁に受理された後、その出願は審査に付される。審査は、方式審査(連邦民法第4法典第1384条)および実体審査(連邦民法第4法典第1386条)から構成される(上記5.を参照)。
 発明の出願は、ロシア特許庁への出願日から18月を経過した後に公開される(連邦民法第4法典1385条)。実用新案出願は公開されず、方式審査を通過後、直ちに実体審査に移行する。
 出願公開後は、誰でも出願書類(審査経過を含む)を閲覧することができ、出願書類の写しを取り寄せることができる。
 特許審査ハイウェイ(PPH)は、ロシアで利用できる効率的な早期審査の機会であり、よく利用されている。PPHは、実体審査前または実体審査請求時に請求することが望ましい。

 最終的な決定に先立ち、通常、1~2回のオフィスアクションまたは通知が行われ、最初のオフィスアクションまたは通知(または、それがない場合は、肯定的な決定自体)は、通常、実体審査の開始から6~7月で行われる。前記早期審査を採用した場合、ロシア特許庁からの最初のコミュニケーションは2~3月で行われる。
 特許付与または拒絶の最終決定(および出願を取下げたとみなす決定)は、出願に関するそれぞれの決定の送付日から7月以内にロシア特許庁に審判請求することにより争うことができる(連邦民法第4法典第1387条第3項)。
 ロシアの法律では、実体審査の請求、オフィスアクションに対する応答の提出、またはロシア特許庁の決定に対する審判の提出のための期間を、期間徒過時から1年以内に再び延長するオプションがある(連邦民法第4法典第1389条第1項、2項)。
(連邦民法第4法典第1374条、第1384条~第1387条、第1389条)

関連記事:
「ロシアにおける特許制度の運用実態」(2015.11.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10074/
「ロシアにおける特許制度」(2017.07.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/13867/

[権利設定前の争いに関する手続]

7. 拒絶査定に対する手続

 審査官の決定に対する不服審判は、決定の日から7月以内にロシア特許庁に提出できる。不服審判は、審判部のメンバーおよびロシア特許庁の対応する審査部の審査官の双方から選ばれた3~5名の審査官/審判官で構成される審判体により審理される。ヒアリングには、出願人および審判請求された決定を出した審査官の双方が参加する。

 審理の結果、以下のような決定がされる。
拒絶査定に対して不服がある場合:

  • 請求を認容し、既存の請求項に対し特許の決定を下す。
  • 請求を不成立とし、ロシア特許庁の決定を維持する。
  • 請求を認容し、補正された請求項に対し特許の決定を下す。

特許査定に対して不服がある場合:

  • 請求を認容し、付与決定を取り消し、出願を追加審査に付す。
  • 請求を不成立とし、ロシア特許庁の決定を維持する。
  • 請求を一部認容し、補正された請求項に対し特許の決定を下す。

取り下げ決定に対して不服がある場合:

  • 請求を認容し、出願を回復させる。
  • 請求を不成立とし、ロシア特許庁の決定を維持する。

 決定は、ヒアリングにおいて審判部によって言い渡され、その後、ロシア特許庁の書面による決定が2月以内に作成されて出願人に送付される。
(連邦民法第4法典第1387条、第1389条)

8. 権利設定前の異議申立

 法律には、特許出願に対する異議申立に関する規定はない。しかし、出願公開後、何人もファイルを閲覧し、出願の特許性に関して意見をロシア特許庁に提出することができる。意見書を提出するための手数料はかからない。これらの意見は、審査官が審査手続において考慮する。意見の提出をした者は、出願を審査する際の手続には参加しない。
(連邦民法第4法典第1386条第5項)

9. 上記7.の判断に対する不服申立

 審決は、3月以内に知的財産権裁判所(IPR裁判所)で争うことができる。その結果、知的財産権裁判所は決定を支持するか、破棄することができる。破棄する場合、知的財産権裁判所は通常、ロシア特許庁に各請求を再度審理するよう命ずる。
(連邦憲法(ロシア連邦の仲裁裁判所について)第43条第4項、ロシア連邦仲裁手続法第198条)
 なお、上記「仲裁裁判所」(арбитражный суд)および上記「ロシア連邦仲裁手続法」(арбитражный процессуальный кодекс российской федерации)は、英語では、それぞれ「Commercial Court」および「Commercial Procedure Code」と表記される。

[権利設定後の争いに関する手続]

10. 権利設定後の異議申立

 ロシアには、付与後の異議申立制度はない。特許付与後、特許を無効とすることができる。

関連記事:
「ロシアにおける特許制度」(2017.07.04)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/13867/

11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度

 連邦民法第4法典第1398条によれば、発明に対する特許は、以下の場合に、その有効期間中いつでも、全部または一部を無効とすることができる。
(a) 特許された主題が特許性の条件を満たさないとき。
(b) 付与された特許請求の範囲が、当初の明細書および特許請求の範囲に出願日時点で存在しなかった特徴を含んでいる場合。
(c) 特許が、同一の優先日を有する同一の発明に対する複数の出願に対して付与された場合。
(d) 発明者または特許権者の表示を誤ったまま特許が付与された場合。

 (a)、(b)、(c)を理由とする無効の提起は、ロシア特許庁に提出する。
 (d)の無効の提起は、知的財産権裁判所に提出する。

 当事者(特許権者、異議申立人)および特許付与決定を行った審査官もヒアリングに参加する。
無効の提起を検討した結果、以下の決定を下すことがでる。

  • 無効の提起を不成立とし、特許を全て有効なまま残す。
  • 無効の提起を認容し、特許を全て無効とする。
  • 無効訴訟を一部認容し、特許を一部無効とする。特許が一部無効となった場合、新たな特許が付与される。  このような無効関連の審理期間の目安は、4~6月である。
     無効に関するロシア特許庁の決定は、知的財産権裁判所に出訴することができる。その結果、知的財産権裁判所は決定を支持するか、破棄することができる。破棄する場合、知的財産権裁判所は通常、ロシア特許庁に各請求を再度審理するよう命ずる。
    (連邦民法第4法典第1398条)

関連記事:
「ロシアにおける権利無効手続の統計データ」(2018.02.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/14554/

12. 権利設定後の権利範囲の修正

 無効の提起の審理中(上記11.参照)、特許権者は、それによって定義された範囲を拡張することなく、請求項を訂正する権利を有する。訂正された請求項が認容されると確認された場合、提起された特許の代わりに、上記請求項を有する新たな特許が付与されたものとする。
(ロシア特許庁による紛争の検討および解決のための規則、パラグラフ40)。

関連記事:
「ロシアにおける特許のクレームの変更」(2014.06.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6179/

13. その他の制度

 ロシアで技術的解決策に対して得ることができるもう一つのタイプの法的保護は、実用新案特許(UM)である。このような特許の有効期間は10年であり、延長の可能性はない。実用新案として保護されるのは、デバイス/装置のみである(空間的に分散したシステム(例:構造的に一体でない装置)は、実用新案として保護されるデバイス/装置として識別されてはならないことに留意されたい)。すべての実用新案特許出願のクレームは、1つの実用新案にのみ関係するものでなければならない(すなわち、代替語句のない1つの独立請求項のみが認められる)。一般的に、実用新案特許出願と特許は、基本的には発明に関する要件と同様の要件に従い、その詳細はすでに述べたとおりである。両者の根本的な違いは、実用新案の特許性基準には産業上の利用可能性と新規性だけが含まれることであり、すなわち、進歩性がない実用新案特許もあり得る。

 ロシアの現行法は以下のようなオプションを提供しており、これらは柔軟に利用することができる。

  • 未公開の発明の出願を実用新案出願に変更することができる(例:発明の進歩性に疑問がある場合)。
  • ロシア特許庁が発明に対する特許の無効審判を検討している間、所定の基準を満たせば、その特許を実用新案特許に変更するよう請求することができる。

 ロシアはユーラシア特許条約(EAPC)およびユーラシア特許条約の工業意匠の保護に関する議定書に加盟しており、ユーラシア特許庁(EAPO)が発行するユーラシア発明特許およびユーラシア意匠特許は、国内(RU)の発明特許および意匠特許と同様にロシアで有効である。
(連邦民法第4法典第1351条、第1363条、第1376条、第1379条)

関連記事:
「ロシアにおける実用新案制度の運用実態」(2016.01.12)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/10212/
「ロシアにおける特許取得-ユーラシア特許制度」(2017.07.11)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/13889/

インドネシアにおける特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

 特許法2016年の第25条、第30条、第33条、第34条、第35条および第122条、特許規則2018年第4、5、18、29、36、45、83、85および86条、および法務人権省通達HKI.3-KI.05.01-247に関連する記載がある。

 特許の最小要件は次のとおりである。
(1) 出願書(発明者および出願人の氏名、住所、市民権/国籍、発明のタイトル、優先権を主張して出願する場合は優先権書類、PCT出願から派生した国内段階出願の場合はPCTデータを含む)
(2) 英語の特許明細書(詳細な説明、請求項、要約、図面、および配列リスト)
(3) 公費の領収書(申請料、請求項が10項を超える場合は追加料金、明細書が30ページを超える場合は追加料金)

 出願後に提出してもよい書類およびその期限

明細書のインドネシア語翻訳 出願後30日以内
委任状 方式審査拒絶理由通知から3月以内(2月の延長、手数料支払いによりさらに1月の延長可)
発明者による発明の所有権の宣言1
譲渡証2
微生物寄託証(該当する場合)
優先権主張出願の場合、優先権証明書の写しとその表紙の英訳 優先日から16月以内

 1:発明者が何らかの理由で署名を提出できない場合の代替の文書
  a.発明者が元従業員である場合は、雇用契約書の写し、休暇申請書、または発明者が作成した書類等
 の従業員としての発明者の状況を証明する書類(機密情報でも可。発明者の氏名と署名が必要)。
  b.他の発明者の署名により裏付けられた、発明者の署名が欠落している理由を説明する出願人による
 声明および理由を裏付ける書類。
  c.優先権出願の譲渡書類の写し。
 2:発明者の署名を提出できない場合、上記1と同様

 実用新案(簡易特許)の最小要件は次のとおりである。
(1) 出願書(発明者および出願人の氏名、住所、市民権/国籍、発明のタイトル、優先権を主張して出願する場合は優先権書類、PCT出願から派生した国内段階出願の場合はPCTデータを含む)、審査請求。
(2) 英語およびインドネシア語の特許明細書(説明、クレーム、要約、図面、および配列リスト)
(3) 公的手数料(出願料、実体審査料、クレームが10項を超える場合は追加料金、明細書が30ページを超える場合は追加料金)
(4) 発明者による発明の所有権の宣言
(5) 譲渡証
(6) 微生物寄託の証明(該当する場合)
(7) 優先権を主張して出願する場合は、優先権証明書の写しとその表紙の英訳

 出願後に提出可能なその他の要件として、委任状の提出があり、提出期限は出願日から28日である。

関連記事:
「日本とインドネシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.12.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17977/
「インドネシアにおける特許制度の概要」(2014.10.24)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6834/

2. 記載が認められるクレーム形式

 特許規則2018年第7条、第8条は、請求項は発明の本質を明確かつ一貫して表現しなければならず、明細書によって裏付けられなければならないと規定している。請求項には表および/または化学式、数式が含まれてもよい。また、請求項は、発明の単一性を形成するために相互に関連しているものとされ、独立請求項および/または従属請求項の形式が可能である。
 容認されない請求項の形式として、特許規則2018年第7条は、請求項に図面やグラフを含めてはならないと規定している。

関連記事:
「インドネシアにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.15)
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「インドネシアにおけるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの解釈の実務」(2018.09.27)
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「インドネシアにおける医薬用途発明の保護制度」(2018.03.29)
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3. 出願の言語

 特許法2016年第24条は、特許出願はインドネシア語で提出されなければならいと規定している。

関連記事:
「日本とインドネシアにおける特許出願書類・手続の比較」(2019.12.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17977/
「日本とインドネシアにおける特許出願書類の比較」(2015.07.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/9396/

4. グレースピリオド

 特許規則2018年第44条は、PCTに基づく出願は、国際出願日また最も早い優先日から最大31月以内に出願されなければならいと規定している。申請書とともに追加手数料を支払うことにより、3月から12月の期間延長が認められる場合がある。

関連記事:
「インドネシアにおける特許出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17465/
「インドネシアにおける特許発明の新規性喪失の例外」(2017.04.25)
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「インドネシアにおけるパリ条約ルート出願とPCTルート出願の手続きの相違点」(2015.03.31)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8372/

5. 審査

(1) 実体審査
 特許法2016年第51条は、特許の審査請求は、出願日から36月以内に提出しなければならないと規定している。実体審査は公開期間が終了した後に行われる。実用新案については、特許法2016年第122条に規定があり、出願時に審査請求を提出する必要がある。

 特許法2016年第62条および特許規則2018年第73条、第74条は、出願人は実体審査報告書の日付から3月以内に回答する必要があると規定している。出願人は応答期間を2月、さらに手数料の納付により1月延長することができる。

 また、特許法2016年第62条は、緊急事態の場合は、出願人は6月の応答期間の延長を受けられると規定している。

(2) 早期審査(優先審査)
 特許規則2018年第80条、第81条は、地域(ASPEC、関連記事参照)および2国間(PPH、関連情報参照)協力に基づく実体審査の早期審査について規定している。早期審査申請は、実体審査報告書の発行前に提出しなければならない。

(3) 出願の維持
 特許法2016年第21条、第126条および政府規則2019年第28号に規定があり、特許が付与された場合、特許の維持年金は出願日に遡っての支払いが必要であり、出願日から付与後1年までの費用を、付与通知から6月以内に支払う必要がある。

特許維持年金

年(出願日より) 特許費用(IDR) 請求項費用
1~3 1,000,000 75,000
4,5 1,250,000 100,000
6 1,750,000 175,000
7,8 2,250,000 225,000
9 3,000,000 300,000
10 4,000,000 300,000
11~20 6,500,000 500,000

実用新案維持年金

年(出願日より) 特許費用(IDR) 請求項費用
1~4 750,000 50,000
5 1,250,000 50,000
6 1,700,000 50,000
7 2,300,000 50,000
8 2,800,000 50,000
9 3,500,000 50,000
10 4,000,000 50,000

関連記事:
「インドネシアにおける特許の早期権利化」(2021.06.22)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/20273/
「インドネシアにおける特許審査ハイウェイの実効性に関する調査研究」(2020.02.27)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/18319/
「日本とインドネシアにおける特許審査請求期限の比較」(2019.12.10)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17983/
「インドネシアにおける特許出願の実体審査と特許庁からの指令書に対する応答期間」(2019.09.03)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17669/
「インドネシアにおける特許年金制度の概要」(2018.10.16)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/15967/
「ASEAN特許審査協力(ASPEC)プログラム」(2014.07.18)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/6142/

関連情報:
「日インドネシア特許審査ハイウェイ試行プログラムについて」
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/japan_indonesia_highway.html

6. 出願から登録までのフローチャート

(1) 出願から登録までの特許出願フローチャート

(2) フローチャートに関する簡単な説明
 出願後、方式審査が行われる。提出された書類に不備がある場合、拒絶理由通知が出され、すべての正式な書類が完備されている場合は承認通知が出される。その後、公開される。公開期間は6月であり、第三者の異議申立があれば、法務人権大臣に提出する。
 実体審査は、公開期間終了後に行われ、拒絶理由通知への応答期間は3月、延長の場合はさらに2月、または手数料の支払いによりさらに追加の1月が認められる。
 拒絶査定となった場合、出願人は拒絶の通知から3月以内に審判請求ができる。
 特許査定となった場合、特許付与通知後、2月以内に証明書が交付される。

関連記事:
「インドネシア特許出願における条約に基づく優先権主張の手続」(2021.01.05)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/19667/
「インドネシアにおける実用新案出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17467/
「インドネシアにおける特許出願制度概要」(2019.06.25)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17465/
「インドネシアにおける特許権の取得」(2018.11.15)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16141/

[権利設定前の争いに関する手続]

7. 拒絶査定不服

 実体審査により拒絶査定となった場合、出願人は、特許法2016年第68条に規定されるように、拒絶の通知から3月以内に特許審判委員会に不服審判を請求できる。特許審判委員会は、審判請求から1月以内に審判の審理を行う。決定は審理から9月以内に下される。

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「インドネシアにおける特許権の取得」(2018.11.15)
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8. 権利設定前の異議申立

 特許法2016年第49条は、付与前の異議申立は、公開期間中に第三者により法務人権大臣に提出することができると規定している。出願人は、大臣からの異議申立通知から30日以内に、異議申立に対する回答を提出することを求められる。

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9. 上記7の判断に対する不服申立

 拒絶査定不服審判の審決に不服がある出願人は、特許法2016年第72条に規定されるように、特許審判委員会の拒絶の審決に対し、商務裁判所に訴訟を起こすことができる。訴訟手続きは、特許法2016年第144条に規定されている。

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[権利設定後の争いに関する手続]

10. 権利設定後の異議申立

 権利設定後の異議申立制度はない。

11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度

 特許付与後、第三者は、特許法2016年第70条に規定されているように、付与日から9月以内に、付与された特許に対して特許審判委員会に審判請求ができる。
 特許審判委員会は、審判請求が提出されてから1月以内に審判の審理を行い、審理後9月以内に決定が下される。

 特許の無効化は、特許法2016年第132条、第133条、第138条、第142条、および第144条で規定されている。
 第三者または検察官は、次の場合、商務裁判所を通じて特許権者に特許無効化を申し立てることができる。
 1.特許性の規定を満たしていない
 2.発明は付与された他の発明と同じである
 3.特許権者または強制ライセンシーによる特許の実施は、公共の利益にとって有害である
 4.特許権者は特許実施の義務を果たしていない

 特許無効化に対する訴訟は、被告居住地域の商務裁判所に提起される。いずれかの当事者が海外に居住している場合、中央ジャカルタ商務裁判所に訴訟が提起される。特許の無効化が1つ以上の特定の請求項にのみ関係する場合、無効化は関連する請求項に対してのみ行われ、その決定には永続的な法的効力がある。

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「インドネシアにおける特許実施の延期申請について」(2020.09.17)
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12. 権利設定後の権利範囲の修正

 特許付与後の明細書、請求項および/または図面の訂正に関する審判請求は特許法2016年第69条に規定されており、付与後の3月以内に請求することができる。訂正は、請求項の減縮は可能であるが、発明の保護範囲を広げることはできない。

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「インドネシアにおける特許出願の補正の制限」(2019.10.21)
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13. その他の制度

特になし。

インドにおける特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

 

 特許権を受けようとする者は、以下の書類および手数料を提出しなければならない。

 

(1) 有効出願日を確保するために必要な書類

・願書

・明細書(直接出願の場合、完全明細書または仮明細書。条約出願や国内段階出願の場合、完全明細書)

・発明者である旨の宣言書

・手数料

(2) 必要に応じて提出する書類

・出願権の証拠(出願人が発明者ではない場合)

・委任状(現地代理人に代理権を与える場合)

・外国出願に関する陳述書および誓約書(インド特許出願と実質的に同じ内容の外国出願がある場合)

・優先権書類と、その翻訳文(優先権を主張する場合)

 

関連記事:「インドにおける特許出願制度概要」(2019.6.13)

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関連記事:「日本とインドにおける特許出願書類の比較」(2015.7.24)

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2. 出願の言語

 

 ヒンディー語または英語(特許規則9)。外国語出願制度はない。

 

3. グレースピリオド

 

(1) 意に反する公開:出願人から取得され、その者の意に反して発明が公開された場合であって、その公開後、速やかに特許出願が行われた場合、当該発明は新規性を失わない(特許法29条(2)、特許法29条(3))。

 

(2) 政府への伝達:特許出願に係る発明は、当該発明もしくはその価値を調査するため政府もしくは政府により委任された者に当該発明を伝達した場合であっても、新規性を失わない(特許法30条)。

 

(3) 博覧会などにおける発表:特許出願に係る発明は、以下の行為が行われても、その最初の発表後12か月以内に特許出願を行った場合に限り、新規性を失わない(特許法31条)。

 (i) 中央政府によって官報で指定された博覧会において、真正かつ最初の発明者、または発明者から権原を取得した者の同意を得て行われた発明の展示、またはその開催場所において当該博覧会を目的としてその者の同意を得て行われた発明の実施

 (ii) 博覧会における発明の展示または実施の結果としての当該発明の説明の公開

 (iii) 発明が博覧会において展示もしくは実施された後、および博覧会の期間中、真正かつ最初の発明者などの同意を得ないで何人かが行った発明の実施

 (iv) 真正かつ最初の発明者が学会において発表した論文に記載されまたはその者の同意を得て当該学会の会報に公表した発明の説明

 

(4) 試験目的の実施:特許出願に係る発明は、特許出願の優先日前1年以内に、出願人またはその同意を得た者が、特許出願に係る発明の適切な試験目的のためにインドにおいて公然と実施したとしても、新規性を失わない(特許法32条)。ただし、発明の内容に鑑み、その試験を公然と実施する合理的必要性があった場合に限る。

 

(5) 仮出願の後の実施および公開による先発明:仮出願を行った場合、仮出願後、仮明細書に記載された事項がインドで実施され、またはインドまたは他の地域で公開されても新規性を喪失しない(特許法33条)。

 

関連記事:「インドにおける特許新規性喪失の例外」(2017.6.1)

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関連記事:「日本とインドにおける意匠の新規性喪失の例外に関する比較」(2015.7.24)

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4. 審査

 

(1) 実体審査

 実体審査:あり

 審査請求制度:あり(特許法11B条(1))

   審査請求期間:出願日(優先日)から48か月以内(特許法11B条(1))

   請求人:出願人および利害関係人(特許法11B条(1))

 

(2) 早期審査(優先審査)

 以下の要件のうちのいずれかに該当する場合、早期審査請求を行うことができる(特許規則24C条(1))。

(a) 出願人が国際出願の国際調査機関または国際予備審査機関としてインド特許意匠商標総局(the Office of the Controller General of Patents, Designs & Trade Marks (CGPDTM)、以下「インド特許庁」)を選択したこと

(b) 出願人が、インド国内外を問わず、スタートアップ企業であること(スタートアップ企業の定義:設立から5年以内で、年間売上高が2億5千万ルピー(約3億8千万円)未満の事業体、規則2(fb))

(c) 出願人が小規模団体(small entity)である

(d) 出願人が、全員が自然人であって、そのうち女性が含まれている

(e) 出願人が政府系機関である

(f) 出願人が、中央政府もしくは州政府によって設立された機関であって、中央政府が所有もしくは管理する機関である

(g) 出願人が会社法2013の項目45の2条に定義される「政府系企業」である

(h) 出願人が、政府が実質的に資金を提供している機関である

(i) 政府の要請に基づいて指定された産業に関連する出願である

(j) 出願人がインド特許庁と他国特許庁との合意に従って出願を処理するための資格を有する(いわゆるPPHを申請している)

 

(3) 出願を維持するための料金

 特許権を維持するためには所定の納付期間内に更新手数料を納付しなければならない(特許法53条(2))。

 

関連記事:「インドの特許関連の法律、規則、審査マニュアル」(2019.2.14)

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関連記事:「インド特許庁の特許審査体制」(2018.7.19)

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関連記事:「インドにおける特許審査および口頭審理」(2018.4.17)

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関連記事:「インドの特許出願審査における「アクセプタンス期間」」(2016.4.19)

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関連記事:「インドにおける迅速な特許審査着手のための出願実務の迅速化」(2015.9.1)

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5. 出願から登録までのフローチャート

 

(1) 出願から登録までの特許出願のフローチャート

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(2) フローチャートに関する簡単な説明

 

ⅰ) 特許出願の種類は、直接出願(本出願および仮出願)、国際出願、国際出願の国内段階移行出願、パリ条約に基づく条約出願がある。

 

ⅱ) 特許出願の出願日(優先日)から18か月が経過すると、特許出願は公開される。特許出願は公開される前に取下げることができる。

 

ⅲ) 審査請求がなされた出願は審査(方式的、実体的)される。審査請求を行わなかった場合、出願は取下げられたものとみなされる。

 

ⅳ) 審査の結果は、最初の審査報告(FER: First Examination Report)として出願人に通知される。FERの発送日は、拒絶理由解消期間(6か月)の起算日になる。出願人は、拒絶理由解消期間内に、特許出願が許可される状態にしなければならない(特許法21条)。後続の審査報告(SER: Subsequent Examination Report)が発行されても拒絶理由解消期間は延びない。拒絶理由解消期間は、最長3か月延長できる。特許出願が許可される状態にするというのは、すべての拒絶理由を解消するような応答書(意見書、補正書)を提出することを意味する。

 

ⅴ) 応答書が提出されていればインド特許庁はもう一度審査を行う。拒絶理由があり、拒絶理由解消期間が経過していない場合はSERが出願人に通知され、拒絶理由解消期間が経過している場合で出願人から聴聞申請があれば聴聞通知が出願人に発送される。聴聞が行われた後に、出願人に応答書(意見書、補正書)を提出する機会が与えられる。

 

ⅵ) 拒絶理由がすべて解消すると、特許査定(Notice of Grant)が通知され、特許公報(Publication of Grant)が発行される、特許証が交付され、設定登録によって特許権が発生する。拒絶理由が残っている場合、拒絶査定(Notice of Refusal)が通知される。

 

ⅶ) 特許権の存続期間は出願日(優先日)から20年である。特許権をこの存続期間維持するためには、特許権者は、更新手数料を納付しなければならない。

 

ⅷ) 何人も特許出願に対して、出願公開後、特許権付与前までに付与前異議申立て(特許法25条(1))を請求することができる。付与後異議申立ては、利害関係人が、特許公報発行後、1年以内に請求することができる(特許法25条(2))。

 

ⅸ) 特許庁の決定、指示、指令に対して不服がある場合、決定、指示、指令の通知日から3か月以内に知的財産審判委員会(IPAB: Intellectual Property Appellate Board)に審判請求を行うことができる(特許法117A条)。

 

ⅹ) 利害関係人は、所定の無効理由の1つまたは複数に基づいて、特許の取消をIPABに審判請求することができる(特許法64条(1))。

 

関連記事:「インドにおける特許制度の運用実態」(2015.12.4)

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関連記事:「日本とインドの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2015.7.17)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/9330/

 

 

[権利設定前の争いに関する手続]

 

6. 拒絶査定に対する不服

 

 出願人は、特許庁の(特許出願を拒絶する)決定に対して不服がある場合、決定の通知日から3か月以内にIPABに審判請求を行うことができる(特許法117A条)。

 

関連記事:「インドにおける特許出願から特許査定までの期間の現状と実態に関する調査」(2018.1.18)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/14428/

 

 

7. 権利設定前の異議申立て

 

 何人も特許出願に対して付与前異議申立て(特許法25条(1))を行うことができる。付与前異議申立ては、出願公開後、特許権付与前までに請求することができる。

 

 

8. 上記6の判断に対する不服申立て

 

 IPABによる拒絶査定維持の審決に不服がある場合、出願人は、この審決に対して高等裁判所に裁量不服申立て、または最高裁判所に特別許可申請を行うこともできる。IPABによる拒絶査定取消の審決に対して原則として不服を申し立てることはできない。

 

 

[権利設定後の争いに関する手続]

 

9. 権利設定後の異議申立て

 

 利害関係人が、特許公報発行後、1年以内に付与後異議申立てを請求することができる。

 

関連記事:インドにおける特許無効手続きに関する統計データ(前編:特許付与後の異議申立て)」(2018.3.15)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/14664/

 

 

10. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度

 

 利害関係人が、所定の無効理由の1つまたは複数に基づいて、特許の取消をIPABに審判請求することができる(特許法64条(1))。

 

関連記事:「インドにおける特許無効手続に関する統計データ(後編:取消請求および訴訟)」(2018.3.15)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/statistics/14680/

 

 

11. 権利設定後の権利範囲の修正

 

 特許出願の願書および明細書などの補正は、特許権付与前はもちろんのこと、特許権付与後においても行うことができる(特許法57条(1))。しかし、拒絶査定がなされた後は補正を行うことができない。明細書の補正は、権利の部分放棄、訂正、または釈明による方法で行わなければならず、事実の挿入を目的とするものでなければならない(特許法59条(1))。

 特許権付与後に補正申請が行われた場合、特許庁は、その補正の内容が本質的(実体的)なものか否かを審査し、補正内容が本質的なものである場合、補正申請の内容を公告する(特許法57条(3)、特許規則81条(3)(a))。補正内容が形式的なものである場合でも、管理官の裁量によって公告することもできる(特許法57条(3))。利害関係人は、補正の内容に異議がある場合、補正申請の公告の日から3か月以内に異議申立てを行うことができる(特許法57条(4)、特許規則81条(3)(b))。

 

 

12. その他の制度

 

(1) 外国出願許可(特許法39条)

 特許法は、外国へ特許出願を行おうとする「インドに居住する者」に対して、外国出願許可(FFL: Foreign Filing License)の取得を義務付けている。インドに居住する者は、原則として外国出願許可を取得しなければインド国外で特許出願を行い、またはさせてはならない(特許法39条(1))。また、当該発明が国防目的または原子力に関連する判断した場合、特許庁は、中央政府の事前承認なしに外国出願許可を付与できない(同第39条(2))。発明者および出願人の一人でもインドに居住する者であれば本法は適用される。ただし、保護を求める出願がインド国外居住者によりインド以外の国において最初に出願された発明に関しては本法は適用しない(同第39条(3))。外国出願許可の規定に違反した場合、対応するインド特許出願は放棄されたものとみなされ、付与された特許権は無効理由を有する(特許法64条(1)(n))。また、外国出願許可の規定に違反した者は、禁固もしくは罰金に処され、またはこれらが併科される(特許法118条)。

 

(2) 国内実施報告制度(特許法146条)

 インドには、特許発明の商業的実施状況を定期的に報告することを毎年、特許権者および実施権者に義務付ける独自の制度が存在する。排他的権利を有する特許権者に対してインドにおける特許発明の適正な実施を促すための制度である。実施状況の報告を怠ると罰金の対象となり、実施状況の虚偽報告を行った者には罰金刑または禁固刑、またはこれらが併科される。インド特許庁は、実施の状況を公開することができる。インドにおいて適正に実施されていない特許に対して、利害関係人が強制実施権を申請できる。

 

(3) 拒絶理由解消期間(特許法21条)

 特許法においては、所定の期間内(拒絶理由解消期間)に特許出願を特許権付与可能な状態にしなければ、特許出願は放棄されたものとみなされる。拒絶理由解消期間は、最初の審査報告(FER:First Examination Report、日本の拒絶理由通知書に相当)の発送日(The date of issue (dispatch):FERに記載された日)から6か月である(特許法21条、特許規則24B条(5))。

 

(4) 聴聞(特許法14条)

 インドにおいて聴聞(Hearing)は、特許審査手続を構成する重要な手続の1つである。出願人から聴聞の申請があれば、インド特許庁は出願人に不利な決定を行う前に出願人に聴聞を受ける機会を与えなければならない。インド特許庁は職権で聴聞を設定することもできる。出願人は、拒絶理由解消期間内に応答書を提出し、聴聞の申請を行えば、拒絶査定が行われる前に聴聞を受ける機会が出願人に付与され(特許法14条)、拒絶理由解消期間経過後も特許出願をインド特許庁に係属させることができる。

 

関連記事:「日本とインドの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2019.10.31)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/17841/

 

関連記事:「インド国内で生まれた発明の取扱い―インド国外への特許出願に対する制限」(2019.9.26)

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関連記事:「インドにおける特許の実施報告制度」(2015.3.31)

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タイにおける特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

 出願に必要な書類およびその内容は、タイ特許法第17条および省令21号第2条~15条に規定されている。願書、明細書(クレームと発明の詳細な説明とを含む。)、要約書、(必要な場合は)図面、さらに(必要な場合は)委任状や譲渡証、(優先権主張する場合)優先権証明書等を提出する。

 

関連記事:「タイにおける特許出願制度概要」(2019.06.20)

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2. 記載が認められるクレーム形式

(1)認められるクレーム形式

 装置、方法、システム等の形式については認められる。

 

(2)認められないクレーム形式

 プログラムは認められない(タイ特許法第9条)。

 

関連記事:「タイにおけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状」(2019.01.17)

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3. 出願の言語

 出願書類はいずれもタイ語で記載される必要がある(タイ特許規則省令21号第12条)。

 

関連記事:「タイにおける特許制度の概要」(2014.11.10)

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4. グレースピリオド

 タイ特許法6条には、「特許出願日前の12月間に、非合法的に発明の主題が取得されて行われた開示、または発明者が国際博覧会若しくは公的機関の博覧会での展示により行った開示は、開示とはみなされない。」と規定されている。

 

関連記事:「タイにおける特許の新規性喪失の例外」(2015.03.31)

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5. 審査

(1)実体審査

 実体審査請求された発明について、審査官が実体審査を行う(タイ特許法第33条)。

 2019年7月現在、他国で登録となった対応外国特許に合わせて補正をすることで新規性等の特許要件を満たしているものとして審査され登録を受けることができる、いわゆる修正実体審査が行なわれている。不特許事由についてはこれとは別に審査が行われる。

 

(2)早期審査(優先審査)

 早期審査のための手段としては、日本での特許に基づくPPH(特許審査ハイウェイ)申請が挙げられる。なお、2019年7月現在PPHはいわゆるノーマルPPHのみに限られており、PCT-PPH等は利用できない。また、日本以外の国とはPPHを試行していない。

 

(3)出願を維持するための費用は規定がない。

 

関連記事:「日本とタイにおける特許審査請求期限の比較」(2015.10.09)

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関連記事:「タイにおける特許審査ハイウェイ(PPH)の利用」(2016.01.22)

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6. 出願から登録までのフローチャート

 出願から登録までの特許出願のフローチャート

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[権利設定前の争いに関する手続]

 

7. 拒絶査定不服

 審査において拒絶されるべき(補正指令によっても治癒されない拒絶の事由がある等)と審査官が判断した場合、局長による拒絶命令(日本での拒絶査定に該当)が発出される(タイ特許法第28条)。拒絶命令に不服がある場合、特許委員会に不服申立(日本でいうところの審判)をすることができる(同第72条)。

 

関連記事:「日本とタイの特許の実体審査における拒絶理由通知への応答期間と期間の延長に関する比較」(2015.10.9)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/9350/

 

関連記事:「タイにおける特許出願の拒絶理由の解消」(2015.8.25)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/8592/

 

8. 権利設定前の異議申立

 第三者は、出願公開日から90日以内に異議申立をすることができる(同第31条)。

 

9. 上記7の判断に対する不服申立

 特許委員会への不服申立によっても問題が解消されなければ、通知の受領から60日以内にタイ国際取引および知的財産裁判所へ提訴することになる(同第74条)。裁判は三審制で、上級審として控訴審、最高裁がある。

 

[権利設定後の争いに関する手続]

 

10. 権利設定後の異議申立

 条文上規定はない。

 

11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度

 タイ特許法第5条(特許要件)、第9条(不特許要件)、第10条(特許を出願する権利)、第11条(職務発明)または第14条(出願人適格)の規定に違反して付与された特許に対しては、何人も特許の無効をタイ国際取引および知的財産裁判所に提訴することが可能である(タイ特許法第54条)。

 

12. 権利設定後の権利範囲の修正

 登録後の訂正については条文上規定がない。

 

関連記事:「タイにおける特許出願の補正」(2016.4.6)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/10423/

 

13. その他の制度

 特になし。

韓国における特許制度のまとめ-手続編

1. 出願に必要な書類

(1) 特許出願をする場合には、特許出願書、明細書、必要な図面及び要約書等を提出しなければならない(特許法第42条第1項及び第2項)。

(2) 個別委任状と包括委任状のうち、どちらか一つを提出しなければならない。

関連記事:「韓国における特許・実用新案出願制度概要」(2017.7.20)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13908/

 

2. 記載が認められるクレーム形式

(1) 認められるクレーム形式

・多項制を採択しており、独立項と従属項を区分し記載する。

・プログラムの場合、“プログラムを記録した記録媒体”、“記録媒体に保存されたコンピュータプログラム(アプリケーション)”の形式が認められる。

(2)認められないクレーム形式

・請求項の従属項の記載方法に関して、2以上の項を引用した請求項は、その請求項の引用された項が、更に2以上の項を引用する方式(マルチ-マルチクレーム)で記載することができない(特許法第42条第8項及び特許法施行令第5条第6項)。

・コンピュータプログラム言語自体、コンピュータプログラム自体、単純な情報が提示されたデータ、信号等は認められない。

 

関連記事:「韓国における特許出願の請求項の記載方式」(2013.3.01)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/2406/

関連記事:「韓国におけるコンピュータソフトウエア関連発明等の特許保護の現状および出願実務について」(2019.1.10)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/laws/16383/

3. 出願の言語

・特許出願に関する書類は韓国語で記載しなければならない(特許法施行規則第11条)。

・明細書及び図面(図面中の説明部分に限る。)については、英語で記載して提出することができる(特許法第42条の3第1項)。ただし、英語で特許出願をした場合には、出願日(最優先日)から1年2か月になる日まで明細書及び図面(図面中の説明部分に限る。)の韓国語翻訳文を提出しなければならない(特許法第42条の3第2項)。

 

関連記事:「韓国における特許・実用新案出願制度概要」(2017.7.20)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13908/

 

 

4. グレースピリオド

特許を受けることができる権利を有する者の発明が、特許を受けることができる権利を有する者によって公知等がされている場合、または特許を受けることができる権利を有する者の意思に反して公知等がされた場合には、その日から12か月以内に特許出願をすれば特許出願された発明に対して新規性及び進歩性を適用する際に、その発明は公知等がされていないものとみなす(特許法第30条)。

関連記事:「韓国の特許・実用新案出願における新規性喪失の例外規定」(2017.7.13)

https://www.globalipdb.inpit.go.jp/application/13896/

5. 審査

 

(1)実体審査

特許出願は、審査請求があるときに限り審査する。審査請求は、誰でもすることができ、審査請求期間は出願日から3年(2017年2月28日以前に特許出願された場合には5年)である(特許法第59条)。

(2)早期審査(優先審査)

特許出願が出願公開後、第三者の特許出願された発明の無断実施が認められた場合、または以下の事由に該当する出願について優先審査を申請することができる(特許法第61条)。

 1)防衛産業分野の特許出願

 2)緑色技術(温室ガス減縮技術、エネルギー利用効率化技術、清浄生産技術、清浄エネルギー技術、資源循環および親環境技術(関連融合技術を含む)等、社会・経済活動の全過程にわたり、エネルギーと資源を節約して効率的に 使用し、温室ガス及び汚染物質の排出を最小化する技術を言う)と直接関連した特許出願

 2の2)人工知能またはモノのインターネット(IoT)等、第4次産業革命と関連した技術を活用した特許出願

 3)輸出促進に直接関連する特許出願

 4)国家または地方自治団体の職務に関する特許出願

 5)ベンチャー企業の認定を受けた企業の特許出願

 5の2)技術革新型中小企業として選定された企業の特許出願

 5の3)職務発明補償優秀企業として選定された企業の特許出願

 5の4)知識財産経営認証を受けた中小企業の特許出願

 6)「科学技術基本法」による国家研究開発事業の結果物に関する特許出願

 7)条約による優先権主張の基礎となる特許出願

 7の2)特許庁が「特許協力条約」に基づく国際調査機関として国際調査を遂行した国際特許出願

 8)特許出願人が特許出願された発明を実施しているか、実施準備中である特許出願

 9)電子取引と直接関連した特許出願

 10)特許庁長が外国の特許庁長と優先審査することに合意した特許出願

 11)優先審査の申請をしようとする者が特許出願された発明に関して調査・分類専門機関のうち、特許庁長が定めて告示した専門機関に先行技術の調査を依頼した場合であって、その調査結果を特許庁長に通知するよう、該専門機関に要請した特許出願

 12)65歳以上の者、または健康に重大な異常がある者がした特許出願

※IP5 PPH、グローバルPPH、PCT-PPH等が利用可能である。

 

(3)出願を維持するための料金:不要

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6. 出願から登録までのフローチャート

(1)出願から登録までの特許出願のフローチャート

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(2)フローチャートに関する簡単な説明

ⅰ)特許決定(査定)の謄本を送達するまで明細書または図面を自発補正することができるが、意見提出通知書(拒絶理由通知)が送達された場合には、意見書の提出期間にのみ補正をすることができる(特許法第47条第1項)。

ⅱ)意見提出通知書(拒絶理由通知)に対する意見書提出期限は、通知書の発送日から2か月であるが、4か月までの期間延長を申請することができる。期間延長は1か月単位で4回まで、または、必要であれば4か月を超過しない範囲で2か月以上を一括して申請することができる。さらにまた、やむを得ない事由の発生で4か月を超過して指定期間の延長を受けようとする場合には、その事由を記載した疎明書を添付して延長申請をする必要がある(特許法施行規則第16条、特許・実用新案審査事務取扱規定第23条)。

ⅲ)拒絶決定(査定)謄本の送達を受けた後、補正書を提出し再審査を請求したり(特許法第67条の2)、補正をせずに拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる(特許法第132条の17)。再審査を請求した後、再拒絶決定(査定)を受けた場合には、再審査を請求することができず、補正なく拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる。

ⅳ)拒絶決定(査定)謄本の送達を受けた日から30日以内に再審査請求または拒絶決定(査定)不服審判を請求することができ、上記期間は30日ずつ2回の期間延長を申請することができる(特許法施行規則第16条)。

ⅴ)特許決定(査定)の謄本を受け取ったら、謄本を受けた日から3か月以内に最初の3年分の特許料を納付しなければならない(特許法第79条、特許料等の徴収規則第8条)。特許料納付期間が経過した後、6か月以内に追納することができるが、追納期間内にも納付しなければ特許出願は放棄したものとみなす(特許法第81条第3項)。

関連記事:「韓国での特許出願における拒絶理由通知に対する対応」(2013.10.8)

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[権利設定前の争いに関する手続]

 

7. 拒絶決定(査定)に対する不服

特許出願の拒絶決定(査定)に不服がある場合に、特許審判院に拒絶決定(査定)不服審判を請求することができる(特許法第132条の17)。

関連記事:「韓国における特許出願の拒絶査定不服審判請求時の留意点」(2017.9.14)

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8. 異議申立制度

権利設定前の異議申立制度はない。しかし、特許出願が公開されれば特許出願に関して誰でも拒絶理由に該当し特許されることができないという旨の情報を証拠とともに特許庁長に情報提供することができる(特許法第63条の2)。

9. 上記7の審決に対する不服

特許審判院の審決に対して不服がある場合には、特許法院に訴え(審決取消訴訟)を提起することができる(特許法第186条第1項)。

 また、特許法院の判決に不服がある場合には、判決が法令に違反したことを理由に大法院へ上告することができる(特許法第186条第8項)。

関連記事:「韓国における特許・実用新案・商標・意匠の審決取消訴訟制度概要」(2019.4.18)

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[権利設定後の争いに関する手続]

 

10. 権利設定後の異議申立

誰でも特許権の設定登録日から登録公告日後6か月になる日まで特許取消事由に該当する場合、誰でも特許審判院に特許取消申請をすることができる(特許法第132条の2第1項)。

特許取消申請の事由は、産業上の利用可能性、国内外の頒布された刊行物等による新規性、進歩性及び先願主義の違反等がある(特許法第132条の2第1項各号)。

関連記事:「韓国における特許取消申請」(2018.10.2)

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11. 設定された特許権に対して、権利の無効を申し立てる制度(無効審判)

利害関係人または審査官は、設定登録された特許権が無効事由に該当する場合、特許審判院に無効審判を請求することができる(特許法第133条第1項)。

無効事由:特許法第25条、第29条、第32条、第36条第1項から第3項、第42条第3項第1号または第4項、第33条第1項、第44条、第47条第2項前段、第52条第1項、第53条第1項、条約違反

関連記事:「韓国における特許無効審判に関する統計データ」(2018.2.15)

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12. 権利設定後の権利範囲の訂正審判

特許権者は、請求の範囲を減縮する場合、誤って記載された事項を訂正する場合、または明確に記載されていない事項を明確にする場合に、明細書または図面について特許審判院に訂正審判を請求することができる(特許法第136条第1項)。

特許取消申請、特許無効審判または訂正の無効審判が特許審判院に係属中である場合には、訂正審判を請求することができないが(特許法第136条第2項)、このときは訂正請求制度を利用して、補正が可能である(特許法第132条の3、第133条の2、第137条第3項及び第4項)。

関連記事:「韓国における補正および訂正に関連する制度ならびにその利用実態」(2018.1.16)

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13. その他の制度

特許決定(査定)の謄本の送達を受けた日から3か月以内の期間内(特許料納付前)に分割出願が可能である(特許法第52条第1項第3号)。