中国におけるAI関連発明の特許審査に関する調査
「近年の判例等を踏まえたAI関連発明の特許審査に関する調査研究報告書」(令和4年2月、日本国際知的財産保護協会)第2部 各国・機関のAI関連発明に関する制度・運用 第5章 中国
第1部 調査研究の概要
第3 調査研究結果
1 各国・機関のAI関連発明に関する制度・運用
(中国におけるAI関連発明に関する制度を紹介している。詳細は第2部 第5章に記載されている。)
(5)中国 P.8
第2部 各国・機関のAI関連発明に関する制度・運用
第5章 中国 P.127
(中国におけるAI関連は発明に関連する法律、規則、審査指南の該当する条文等を解説している。また、2件の審決例および1件の判例を紹介している。)
第1 法律・審査基準 P.127
1 発明の定義(発明該当性及び専利適格性) P.127
2 新規性及び創造性(進歩性) P.129
(1)新規性 P.129
(2)創造性(進歩性) P.130
(3)その他(実用性) P.133
3 記載要件 P.134
(1)実施可能要件 P.134
(2)サポート要件 P.135
(3)明確性 P.135
4 発明者 P.136
第2 AI関連発明に関する法律・規則・審査基準 P.137
1 AI関連発明の定義に関する規定等 P.137
2 AI関連発明の発明該当性 P.138
(1)発明該当性の判断基準 P.138
(2)審査例 P.141
3 AI関連発明の新規性・創造性 P.147
(1)創造性があると判断される場合 P.148
(2)創造性がないと判断される場合 P.150
4 AI関連発明の記載要件 P.152
(1)実施可能要件 P.152
(2)サポート要件・明確性要件 P.153
5 AI生成発明 P.155
6 五庁における事例研究について P.155
(1)事例1(発明該当性) P.155
(2)事例2(進歩性) P.155
7 その他 P.156
(1)AI関連発明のカテゴリー P.156
(2)パブコメ:2020年11月10日及び2021年8月3日 P.157
第3 AI関連発明に関する審決・判決 P.157
1 発明該当性に関する判断 P.157
(1)専利復審委員会1第43664号復審決定 P.157
2 記載要件に関する判断 P.158
(1)最高法行再34号判決 P.158
3 進歩性に関する判断 P.159
(1)専利復審委員会2第260508号復審決定 P.159
*1、2:中国国家知識産権局第295号公告(https://www.cnipa.gov.cn/art/2019/2/18/art_2073_143035.html)により、原国家知識産権局専利復審委員会は国家知識産権局専利局に統合された。
中国における意匠出願に関する統計
- はじめに
工業意匠の法的保護に係る国際的な歴史は数百年にわたる。対して、中国における工業意匠(以下「意匠」という。)の法的保護は、中国専利法が施行された1985年4月1日にようやく始まった。
- 意匠出願、審査および認可
2-1. 意匠出願
中国専利法の施行から10年後に意匠出願の年間件数はかろうじて1万件を上回り、その間の平均年間増加数は1,000件であったが、直近の10年間(2007年‐2016年)では、中国経済の急速な発展に伴い、意匠出願の年間件数は26万件から65万件に増加した。その間の平均年間増加数は4万件となる。
表1 2007年‐2016年の意匠出願件数
意匠出願のもう一つの特徴は、中国国内の企業または個人による意匠出願の年間件数が、外国の企業または個人による件数をはるかに上回ることである。2007年‐2016年の間の中国国内の企業または個人による意匠出願の割合は、一貫して全体の94%を超える。
表2 2007年‐2016年の中国国内の企業または個人による意匠出願件数
2-2. 審査
中国国家知識産権局(State intellectual Property Office of the P.R.C:SIPO)は、意匠出願に関して予備審査のみを行う(すなわち、実体審査は行われない)。具体的には、予備審査において、中国の審査官は、通常、意匠出願に方式上の不備および明白かつ重大な不備が含まれているかについてのみ審査するが、意匠出願が認可可能かを調査に基づき判断することはしない。
このような審査制度のため、意匠出願の審査係属期間は一般的に短い。過去10年(2007年‐2016年)の間に、意匠出願の審査係属期間は7か月から3か月に短縮した。審査係属期間の短縮は、中国における意匠の短い保護期間(10年)に適している。
表3 2007年‐2016年の意匠出願の審査係属期間
2-3. 認可
過去10年間(2007年‐2016年)の意匠出願件数は、安定して増加傾向にある。このため、認可された意匠出願も年を追って増加している。過去10年(2007年‐2016年)の間に、認可された意匠出願は約13万3,000件から44万6,000件に増加した。
表4 2007年‐2016年の認可された意匠出願件数
- 復審請求および無効請求
3-1. 復審請求
中国専利法によれば、出願人が中国国家知識産権局による拒絶査定を不服とする場合、出願人は、拒絶査定の受領日から3か月以内に、専利復審委員会(Patent Reexamination Board:PRB)に復審(拒絶査定不服審判)を請求できる(中国専利法第41条)。膨大な数の意匠出願と比べて、過去10年間(2007年‐2016年)に請求された意匠出願に係る復審の数は少ない。
表5 2007年‐2016年の意匠出願に係る復審請求件数
3-2. 無効請求
中国専利法によれば、専利権の付与日以降、この専利権の付与が中国専利法の関連規定に反すると考えるあらゆる法人または個人は、当該専利権の無効宣告を専利復審委員会に請求することができる(中国専利法第45条)。
過去10年間(2007年‐2016年)において、意匠権の無効宣告請求件数も着実に増加している。
表6 2007年‐2016年の意匠権の無効宣告請求件数
中国における特許無効手続に関する統計データ
1. 背景情報
中国専利法およびその実施細則に従い、国務院専利行政部門により特許権付与が公告された日から、当該特許権の付与が専利法または実施細則の関連規定に反すると考えるあらゆる事業体または個人は、専利復審委員会(Patent Reexamination Board: PBR、日本における審判部に相当)に当該特許権の無効審判を請求できる。
特許権の完全無効または一部無効を請求するあらゆる者は、審判請求書および必要な添付書類2部を専利復審委員会に提出しなければならない。特許権の無効または維持を宣告する専利復審委員会の審決を不服とする当事者は、当該通知の受領後3か月以内に北京知識産権法院に訴訟を提起できる。
2. 過去5年間における中国の特許無効審判の件数
2012年‐2016年に審決が下された特許無効審判の件数
3. 専利復審委員会が受領した特許無効審判請求の件数
2011年以降、専利復審委員会が受領した特許無効審判請求の年間件数は、2015年には2749件から3724件に増加しており、平均年間増加率は9.1%である。
4. 特許無効審判の平均所要期間
中国中央人民政府のウェブサイトに記載のデータによれば、2015年における特許無効審判の平均所要期間は約5.8か月で、2016年における特許無効審判の平均所要期間は約5.1か月であった。
5. 2016年4月22日から2017年8月7日までの特許無効審判の統計分析
下記のすべてのデータは、専利復審委員会により発表されたものである。
5-1. 特許無効審判請求における特許権者と請求人の関係
特許無効審判の合計件数 v. 発明特許の無効審判請求
特許無効審判請求の合計(左)と発明特許の無効審判請求(右)
実用新案の無効審判請求(左)と意匠特許の無効審判請求(右)
上記統計データによれば、発明特許の無効審判請求では、企業の請求人が企業の特許権者に対して無効審判を請求するケースが最も多いのに対し、研究機関により出願された特許に対する無効審判請求は最も少なかった。同様の状況が実用新案特許にも当てはまる。一方、意匠特許の場合、個人の意匠特許権者が最も多く無効審判を請求されていた。
5-2. 特許無効審判請求件数に関する上位12の産業分野
各産業分野において無効化された発明特許、実用新案、意匠特許の件数
上記表を参照すると、無効化された発明特許の数が最も多い分野は、化学および材料分野であり、次に設備および機器製造分野の特許も多く無効化されている。実用新案では、一般設備製造および特定設備製造分野での無効化件数が最も多い。無効化された意匠特許が最も多いのは、電子機器、工学機器製造分野である。
6. 医薬品分野における特許無効の統計データ
Chinese Journal of New Drugs*に掲載された記事「医薬品分野における復審および無効審判事件の統計分析」に、以下のデータが提示されている。
6-1. 1990年‐2010年に医薬品分野において専利復審委員会によりなされた特許無効審判における審決
医薬品分野における147件の特許無効審判審決の統計分析(1990-2010)
6-2. 医薬品分野における発明特許の無効理由
主な無効理由は、中国専利法第22条違反、第25条違反、第26条違反および第33条違反である。特に中国専利法第26条4項に基づき「クレームは明細書により裏づけられていない」という無効理由が、専利復審委員会の審決で最も多く引用されている。次に多いのが、中国専利法第22条に基づき「当該特許には新規性、進歩性または実用性が欠けている」という理由であり、その次が中国専利法第33条に基づき「特許明細書に対して行われた補正は出願当初の開示の範囲を超えている」という理由であった。なお、中国専利法第25条では、特許を受けることができない発明が例示されており、それらに該当する場合は無効理由となる。
7. 司法審理に付託された特許無効審判審決の分析
専利復審委員会により審決が下された後、その結果を不服とする審判請求人または特許権者は、北京知識産権法院に上訴できる。過去5年間において、専利復審委員会により処理されたすべての事件に対する、専利復審委員会が被告として当裁判所に出頭した事件の比率を以下に示す。
司法審理に付託された特許無効審判審決の比率(2012年‐2016年)
中国における専利無効宣告請求の口頭審理(期日・場所の決定、争点整理など)
「『日中韓における特許無効審判についての制度及び統計分析に関する調査研究』報告書」(平成28年11月、日本国際知的財産保護協会)第II部4.2.3
(目次)
第II部 調査研究結果
4 ヒアリング
4.2 中国におけるヒアリング調査結果の詳細
4.2.3 口頭審理について(期日・場所の決定、争点整理など) P.112